【実施例1】
【0021】
図1は実施例1に係る電圧プローブヘッドの構成を模式的に示す平面図であり、
図2は実施例1に係る電圧プローブヘッドを用いた測定システムのブロック構成図である。
【0022】
図1において、本実施例1の電圧プローブヘッド10は、変調電極への印加電圧に依存して入射光を強度変調して出力する光変調器1と、光変調器1に接続された入出力光ファイバ2と、被測定点に接触可能に構成された接触端子3と、接触端子3と基準点との間の電圧信号を変調電極に導く信号線路とを備えている。
本実施例1においては、光変調器1は、入射光を内部で反射して折り返す反射型光変調器であって、光変調器1への入力光ファイバと光変調器1からの出力光ファイバは1本の入出力光ファイバ2で構成されている。光変調器1の変調電極は外部電極との接続のため、信号電極用の電極パッド11とグランド電極用の電極パッド12とを備えている。
また、本実施例1においては、被測定点に用いる接触端子3と同様な接触端子4を設け、接触端子4により検出した電位を基準点の電位としている。すなわち、2つの接触端子3、4間の電圧信号が信号線路により変調電極に導かれる。
【0023】
光変調器1は筐体5内に設置され、光変調器1に隣接して接続基板6が筐体5内に固定されている。接続基板6上には、接触端子3から電極パッド11に至る信号線路の一部として接続線路部7と、基準点となる接触端子4から電極パッド12に至る線路の一部として接続線路部8が設置されている。
接続線路7は、接触端子3と接続された信号側電極7aと、電極パッド11に接続された変調器側電極7bと、信号側電極7a、変調器側電極7b間に直列に挿入され接続されたチップコンデンサ9とを備えている。接続線路部8は接触端子4と電極パッド12間を接続している。
ここで、筐体5及び接続基板6の材料としては、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属やプラスチック、アクリル等の樹脂、及びガラス材料等を用いることができる。筐体5の形状は、側面のみ囲った断面がコの字状の形状、上面が開放された箱型、光ファイバ2と接触端子3及び4のみを飛び出させた密閉型、等、様々な形態が可能である。
【0024】
以上のように、本実施例1においては、接触端子3からの電圧信号は直列に配置されたチップコンデンサ9を有する接続線路部7を介して信号電極に導かれ、基準点の電位は接触端子4から接続線路部8を介してグランド電極に導かれる。
【0025】
ここで、チップコンデンサ9の容量をC1、光変調器1の変調電極の電極パッド11、12間の容量をC2とすると、変調電極に印加される電圧信号の振幅は、C1/(C1+C2)倍に縮小されることになる。例えば、変調電極として分割電極を用いた場合、C2の値は1〜5pF程度とできるので、チップコンデンサ9の容量をC1=0.5pFに設定すれば、変調電極に印加される電圧信号の振幅は、接触端子3及び4間の電圧振幅に対して1/3〜1/11に縮小される。
なお、
図1において、基準点となる接触端子4から接続された接続線路部8とグランド電極用の電極パッド12との間にチップコンデンサ9を接続し、接続線路部7のチップコンデンサ9を除いて信号側電極7aと変調器側電極7bとを直結させても、上記と同様な本発明の効果が得られる。
【0026】
次に、本実施例1の電圧プローブヘッド10を用いた測定システムについて説明する。
図2に示すように、電圧プローブヘッド10には、光送受信ユニット21より入出力光ファイバ2を通して入射光14が送られ、光変調器1より出力される光強度変調信号15が同じ入出力光ファイバ2より送受信ユニット21に入力される。
光送受信ユニット21は、半導体レーザ等の光源22、O/E変換器23、入射光14と光強度変調信号15を分離するための送受分離器24、アンプ25を備えている。光源22からの出射光は送受分離器24を通して入出力光ファイバ2に結合し、入出力光ファイバ2からの光強度変調信号15は送受分離器24を通してO/E変換器23に入力する。O/E変換器23において光強度変調信号15は電気信号に変換され、アンプ25により増幅されて出力端子26に出力される。その電気信号はオシロスコープ等の測定器27の入力端子28に入力される。送受分離器24は、光サーキュレータ、光ファイバ分岐、半透過ミラーのいずれかを用いて構成することができる。
【0027】
図2は、被測定点として、電気回路基板13上に組み込まれた電気部品16に印加されている電圧信号を測定する場合を示している。電気部品16の信号線路側に電圧プローブヘッド10の接触端子3を接触させ、アース電位側に接触端子4を接触させる。接触端子3及び4の先端は、測定する電気信号の周波数に合わせて様々な形態が可能である。通常の電気プローブの接触部分と同様な構造を用いることができる。
【0028】
以上のように、接触端子3及び4で検出された電圧信号は光変調器1で光強度変調信号15に変換され、その光強度変調信号15は光送受信ユニット21内で電気信号に変換される。測定器27によりその電圧波形を観測等することにより電気部品16に印加されている電圧信号波形を把握することができる。
【0029】
図3は、本実施例1の電圧プローブヘッド10に内蔵される反射型の光変調器1の構成の一例を模式的に示す図であり、
図3(a)は平面図、
図3(b)は断面図である。
【0030】
図3において、光変調器1は、電気光学効果を有する結晶であるニオブ酸リチウム(LiNbO
3)結晶からXカットで切り出して作られた基板41と、基板41の上面側にTi拡散によって作られた分岐干渉型光導波路42と、基板41の上面側に成膜されたバッファ層43と、バッファ層43の上に成膜された変調電極44と、基板41の一方の端部に設置された光反射部45とから構成されている。変調電極44は、スパッタリング等によって成膜されたクロム(Cr)と金(Au)の2層膜である。
【0031】
分岐干渉型光導波路42は、入力光の入射側に延びる1本の入出力光導波路42aと、入出力光導波路42aから二股に分岐して延びる2本の位相シフト導波路42b,42cとから形成されている。入出力光導波路42aや位相シフト光導波路42b,42cでは、延伸方向に垂直な方向の幅Wはすべて等しい。また、位相シフト光導波路42b,42cは、それらの延伸方向の長さはほぼ等しい。
【0032】
これらの光導波路の幅Wは、5〜12μmの範囲にある。位相シフト光導波路42b,42cの延伸方向の長さは、10〜30mmの範囲にある。位相シフト光導波路42bと42cは、その中央部分が幅方向へ所定の間隔で離間し、互いに平行に延びている。中央部分における位相シフト光導波路42bと42cの間の間隔は、15〜50μmの範囲にある。なお、入出力光導波路42a、位相シフト光導波路42b、42cの幅W、位相シフト光導波路42b,42cの長さ、位相シフト光導波路42b、42c間の間隔について特に限定はなく、それら寸法を任意に設定することができる。
【0033】
バッファ層43は、光導波路42を伝播する光の一部が変調電極44に吸収されることを防止する目的で設けられる。バッファ層43は、主として二酸化ケイ素(SiO
2)膜等から作られ、その厚さは0.1〜1.0μm程度である。
【0034】
光変調器1においては、変調電極44は、分岐干渉型光導波路42の長手方向に分割され互いに容量結合した3つの電極46、47、48からなる分割電極により構成されている。信号入力側の電極パッド11を有する電極46は、位相シフト光導波路42bと42cの間に配置された電極部46aを有している。電極47は、位相シフト光導波路42b,42cを挟んで電極部46aの両側に配置された電極部47bと、位相シフト光導波路42bと42cの間に配置された電極部47aを有している。アース側の電極パッド12を有する電極48は、位相シフト光導波路42b,42cを挟んで電極部47aの両側に配置された電極部48bを有している。電極パッド11と12間で、電極46と47、及び電極47と48は互いに容量結合して直列に配置されていることになる。
【0035】
基板41の入出力光導波路42aの光入出射端には入出力光ファイバ2の入出射端面が結合している。光反射部45は、入出力光導波路42aから入射して位相シフト光導波路42b,42cを伝播した光を反射し、位相シフト光導波路42b,42cから入出力光導波路42aへ戻して伝播させる。変調電極44への電圧印加により、電極部46aと47bとの間、及び電極部47aと48bとの間の2つの位相シフト光導波路42b,42c中に互いに逆向きに電界が印加される。これにより、位相シフト光導波路42bと42cには互いに逆向きの屈折率変化が生じ、それらを通過する光に互いに逆極性の位相シフトが生じ、それらの光が合流するときに互いに干渉して強度変化が生ずる。これにより変調電極44への印加電圧に対応した光強度変化を有する光強度変調信号が得られる。
【実施例2】
【0036】
図4は実施例2に係る電圧プローブヘッドの構成を模式的に示す平面図である。
図4に示すように、本実施例2の電圧プローブヘッド20において、実施例1と同様な光変調器1が筐体35内に設置され、光変調器1に隣接して接続基板36が筐体35内に固定されている。筐体35は金属材料で構成され、筐体35の外側には同軸コネクタ37が固定されている。同軸コネクタ37の中心導体37aには接触端子3が接続固定され、同軸コネクタ37の外周導体には接触端子4が接続固定されている。
【0037】
接続基板36上には、同軸コネクタ37の中心導体37aに接続された信号側電極17aと、電極パッド11に接続された変調器側電極17bと、信号側電極17a、変調器側電極17b間に直列に挿入され接続されたチップコンデンサ19とを備えた接続信号線路17が配置されている。また、接続信号線路17の両側には、同軸コネクタ37の外周導体に接続されたグランド電極38が配置されている。接続信号線路17とグランド電極38とがコプレーナ線路よりなる接続線路部を形成している。
【0038】
本実施例2の電圧プローブヘッド20においても、接触端子3及び4間の電圧信号の振幅がチップコンデンサ9と変調電極の容量により決まる所定の比率で縮小され、変調電極に印加される。本実施例2においては、接続線路部をコプレーナ線路により構成することにより、マイクロ波領域の電圧信号の測定にも対応可能となる。
【実施例3】
【0039】
図5は実施例3に係る電圧プローブヘッドの構成を模式的に示す平面図である。
図5に示すように、本実施例3の電圧プローブヘッド30において、実施例2と同様に、光変調器1が筐体35内に設置され、光変調器1に隣接して接続基板36が筐体35内に固定されている。筐体35は金属材料で構成され、筐体35の外側には同軸コネクタ32が固定されている。同軸コネクタ32は、同軸コネクタ33と接続可能に構成され、同軸コネクタ33の中心導体33aに接触端子3が固定され、同軸コネクタ33の外周導体には接触端子4が接続固定されている。本実施例3においては、同軸コネクタ33を同軸コネクタ32より取り外すことにより、接触端子3,4を電圧プローブヘッドより容易に取り外すことが可能となる。同軸コネクタ32に接続可能であって、測定目的に応じた種々の接触端子を備えた同軸コネクタ33を用意しておけば、被測定点の形状に応じて容易に接触端子を交換することができる。
【0040】
なお、本実施例3においても、実施例2と同様に、接続基板36上には、直列に挿入され接続されたチップコンデンサ19を備えた接続信号線路17と、その両側に配置されたグランド電極38により、コプレーナ線路よりなる接続線路部が形成されている。
【0041】
本実施例3の電圧プローブヘッド30においても、接触端子3及び4間の電圧信号の振幅がチップコンデンサ9と変調電極の容量により決まる所定の比率で縮小され、変調電極に印加される。
【0042】
上記のように、本発明においては、信号線路に挿入するコンデンサの容量を選択することにより、変調電極に印加する電圧信号の振幅を変化させることができ、コンデンサの容量の選択により、検出可能な電圧信号の大きさの範囲を選択することができる。
さらに、最初の測定において、信号線路に挿入するコンデンサの容量を十分に小さな値に設定して電圧感度を十分に小さくしておき、被測定点のおおよその電圧振幅を把握した後、コンデンサの容量をその測定に適した値に変更すれば、変調電極に対して過大な電圧信号が印加されるのを防ぐことが可能となる。
【0043】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではないことは言うまでもなく、目的に応じて様々な変形が可能である。例えば、使用する光変調器の方式は反射型だけでなく、通常の透過型光変調器であってもよい。また、変調電極に分割電極を使用する場合、その分割数は、目的とする測定電圧の周波数、振幅などに応じて任意に設定可能である。変調電極は分割電極でなくともよい。光変調器を収納する筐体も様々な材料、様々な構造が可能である。信号線路に挿入されるコンデンサの設置場所は接続線路部内に限定されず、例えば変調電極の電極パッドに接続してもよい。また、線路内に挿入するコンデンサの形態としては、チップコンデンサ等の個別部品を挿入する方法に限定されず、例えば、接続線路部内に電極ギャップ等を設けてコンデンサとしての機能を有する部分を形成してもよい。接触端子の形状、構造、接続及び固定方法なども目的に合わせて選択可能である。