特許第6883234号(P6883234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883234
(24)【登録日】2021年5月12日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】電圧プローブヘッド
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/24 20060101AFI20210531BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20210531BHJP
   G01R 1/06 20060101ALI20210531BHJP
   G01R 29/08 20060101ALI20210531BHJP
   G02F 1/03 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   G01R15/24 A
   G01R19/00 V
   G01R1/06 F
   G01R29/08 F
   G02F1/03 502
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-132696(P2018-132696)
(22)【出願日】2018年7月12日
(65)【公開番号】特開2020-8537(P2020-8537A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2020年11月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】大沢 隆二
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−285866(JP,A)
【文献】 特開平09−033572(JP,A)
【文献】 特開平09−281165(JP,A)
【文献】 特開平10−115644(JP,A)
【文献】 特開2002−207054(JP,A)
【文献】 特開平05−036551(JP,A)
【文献】 特開平01−270679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/24
G01R 19/00
G01R 1/06
G01R 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調電極への印加電圧に依存して入射光を強度変調して出力する光変調器と、
前記光変調器に接続された入力光ファイバ及び出力光ファイバと、
電気回路又は電気配線上の被測定点に接触可能に構成された接触端子と、
前記接触端子を前記被測定点に接触させることにより前記接触端子と基準点との間に生ずる電圧信号を前記変調電極に導く信号線路と、
を備え、前記電圧信号を前記光変調器により光強度変調信号に変換して前記出力光ファイバより出力する電圧プローブヘッドであって、
前記信号線路、又は前記基準点と前記変調電極とを接続する線路のいずれかに直列に挿入されたコンデンサを有し、
前記電圧信号の振幅は、前記コンデンサの容量と前記変調電極の有する容量とに依存した所定の割合で縮小されて前記変調電極に印加されることを特徴とする電圧プローブヘッド。
【請求項2】
前記光変調器は、ニオブ酸リチウム結晶基板上に形成された光導波路を用いた分岐干渉型光変調器であることを特徴とする請求項1に記載の電圧プローブヘッド。
【請求項3】
前記光変調器は、入射光を内部で反射して折り返す反射型光変調器であって、前記入力光ファイバと出力光ファイバは1本の入出力光ファイバで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の電圧プローブヘッド。
【請求項4】
前記変調電極は、前記光導波路の長手方向に分割され互いに容量結合した複数の電極からなる分割電極であることを特徴とする請求項2又は3に記載の電圧プローブヘッド。
【請求項5】
前記光変調器は筐体内に設置され、前記信号線路は、前記筺体に固定され一端が前記変調電極に接続された接続線路部を有し、前記コンデンサは前記接続線路部のいずれかに直列に挿入されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の電圧プローブヘッド。
【請求項6】
前記接続線路部は、コプレーナ線路により構成されていることを特徴とする請求項5に記載の電圧プローブヘッド。
【請求項7】
前記筺体に固定された同軸コネクタを有し、該同軸コネクタの中心導体の一端は前記接触端子に導通され、他端は前記接続線路部に導通されていることを特徴とする請求項6に記載の電圧プローブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触端子から得られる電圧信号を光変調器に印加して光変調信号に変換し、光ファイバによりその光変調信号を出力する電圧プローブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速のCPU等を用いた様々な制御装置が開発されており、誤動作の防止対策のため、その電気回路基板等で発生するノイズ信号の検出や、電気回路基板等のノイズ耐性試験等が行われている。これらの試験においては、電気回路基板上に設置された電気部品の入出力信号や配線上を伝わる電気信号を正確に測定することが要求されている。
電気部品や配線の電気信号を測定する一般的な方法は、接触端子を有する電気プローブにより被測定点の電気信号をオシロスコープ等の測定器に導いてその伝達された電圧波形等を測定する方法である。しかし、被測定点のグランドレベルが測定器と異なる場合や、グランドされていない2点間の電圧信号を測定する場合等には、アースからの信号の混入や電気プローブの有する容量の影響などのため、正確な電圧波形の測定が困難となる。特に高周波領域においては上記のグランドや容量の影響は大きい。
【0003】
この問題を解決する手段として、電圧信号を光信号に変換し、その光信号を光ファイバにより測定器に導く方式の測定器が開発されている。この方式では、電気プローブの有する容量の影響がなく、被測定点と測定器が電気的に完全に分離されるため、グランドの影響や途中での電気信号ノイズの混入等を防ぐことができる。
【0004】
このような従来の測定器の例が特許文献1及び2に記載されている。
特許文献1にはバルク型の光変調器を用いた電圧プローブが記載されている。すなわち、電気光学効果を有する結晶に接触端子の電圧信号を印加し、上記結晶中で光ファイバより送られた入射光を反射させて偏光状態を変化させ、その変化分を検光子を通して光強度変調光とし、光ファイバでO/E変換器に導く構成である。
特許文献2には導波路型の光変調器を用いた電圧プローブが記載されている。ニオブ酸リチウム結晶基板上に形成した分岐干渉型光変調器の変調電極に接触端子の電圧信号を印加して光強度変調信号を得るものである。光源とO/E変換器とを備えた装置と電圧プローブヘッドは光ファイバで接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−196863号公報
【特許文献2】特開平8−35998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の導波路型の光変調器により光信号に変換して電圧信号を測定するプローブでは、測定対象の電圧信号の大きさに依存して最適な変調電極を設計することが可能である。この設計により、広い範囲の大きさの電圧信号に対応することができる。しかし、電圧プローブヘッドに使用する光変調器が固定されると、印加電圧の振幅に対する光強度変調信号の変調度が決まり、検出可能な電圧信号の大きさの範囲は限られてしまう。
また、導波路型の光変調器では、変調電極は微細構造を有し、電極間隔は数〜十数μm程度と非常に狭いので、測定において、変調電極に対して接触端子より想定以上の大きな電圧信号が印加されると変調電極が破壊されてしまう。この結果、電圧プローブヘッドが壊れてしまうというリスクを有していた。
【0007】
以上のように、従来の光変調器により光信号に変換して電圧信号を測定する電圧プローブヘッドでは、その測定電圧範囲が限られること、接触端子からの想定外の電圧入力により破壊のリスクがある、という問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、固定された光変調器に対して検出可能な電圧信号の範囲を大きく設定でき、想定外の電圧入力による破壊のリスクを軽減することが可能な電圧プローブヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1の観点では、本発明による電圧プローブヘッドは、変調電極への印加電圧に依存して入射光を強度変調して出力する光変調器と、前記光変調器に接続された入力光ファイバ及び出力光ファイバと、被測定点に接触可能に構成された接触端子と、前記接触端子と基準点との間の電圧信号を前記変調電極に導く信号線路とを備え、前記電圧信号を前記光変調器により光強度変調信号に変換して前記出力光ファイバより出力する電圧プローブヘッドであって、前記信号線路、又は前記基準点と前記変調電極とを接続する線路のいずれかに直列に挿入されたコンデンサを有し、前記電圧信号の振幅は、前記コンデンサの容量と前記変調電極の有する容量とに依存した所定の割合で縮小されて前記変調電極に印加されることを特徴とする。
【0010】
本発明の電圧プローブヘッドにおいては、接触端子と基準点との間の電圧信号を光変調器の変調電極に導く信号線路、又は基準点と変調電極とを接続する線路のいずれかに直列に挿入されたコンデンサを有している。このコンデンサの存在により、接触端子で検出された電圧信号の振幅は、コンデンサの容量と変調電極の有する容量とに依存した所定の割合で縮小されて変調電極に印加される。信号線路、又は基準点と変調電極とを接続する線路に挿入するコンデンサの容量をC1、変調電極の有する容量をC2、接触端子で検出された電圧信号の振幅をVoとすると、変調電極に印加される電圧信号の振幅Vmは、理論上、Vm=Vo・C1/(C1+C2)となる。すなわち、変調電極への印加電圧は、C1/(C1+C2)倍に縮小されることになる。その倍率は、C1の値の選択により、例えば、1/2倍、1/10倍、1/100倍等、任意に選択可能である。実際には信号線路や変調電極の周囲の構造等により付加される浮遊容量等の影響を考慮する必要がある。
なお、本発明において、被測定点に用いるものと同様な接触端子により検出した電位を基準点の電位としてもよい。この場合には、2つの接触端子間の電圧信号が信号線路により変調電極に導かれる。
【0011】
上記のように、本発明においては、信号線路、又は基準点と変調電極とを接続する線路に挿入するコンデンサの容量C1を選択することにより、変調電極に印加する電圧信号の振幅を変化させることができ、コンデンサの容量C1の選択により、検出可能な電圧信号の大きさの範囲を選択することができる。
さらに、最初の測定において、信号線路、又は基準点と変調電極とを接続する線路に挿入するコンデンサの容量C1を十分に小さな値に設定して電圧感度を十分に小さくしておき、被測定点のおおよその電圧振幅を把握した後、コンデンサの容量C1をその測定に適した値に変更すれば、変調電極に対して過大な電圧信号が印加されるのを防ぐことが可能となる。
【0012】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点の電圧プローブヘッドにおいて、前記光変調器は、ニオブ酸リチウム結晶基板上に形成された光導波路を用いた分岐干渉型光変調器であることを特徴とする。本観点の発明は、光変調器として、従来から用いられているニオブ酸リチウム結晶上に形成された光導波路による分岐干渉型光変調器を用いるものである。分岐干渉型光変調器の基本構成は、光の入射側から延びる入力光導波路と、入力光導波路から二股に分岐して延びる2本の位相シフト導波路と、その2本の位相シフト光導波路が合流して光の出射側につながる出力光導波路と、位相シフト導波路に並行に配置された変調電極により構成される。電圧信号を変調電極を介して位相シフト導波路に印加し、位相シフト光導波路の屈折率を変化させ、その2つの位相シフト光導波路を通過した光が合流して干渉し、光強度が変調される。小型、高効率、広帯域の光変調器が得られるので、本発明の電圧プローブヘッドに適している。
【0013】
第3の観点では、本発明は、前記第2の観点の電圧プローブヘッドにおいて、前記光変調器は、入射光を内部で反射して折り返す反射型光変調器であって、前記入力光ファイバと出力光ファイバは1本の入出力光ファイバで構成されていることを特徴とする。
本観点の発明の反射型光変調器は、入射光を位相シフト導波路において反射させて入射側の光導波路に戻す構成を用いる。このような反射型の光変調器の構成を用いることにより、透過型の光変調器に比べて同じ電極長に対して2倍の長さ光が透過するので、光変調器の高効率化、広帯域化が可能となり、かつ小型化が可能となる。
【0014】
第4の観点では、本発明は、前記第2又は第3の観点の電圧プローブヘッドにおいて、前記変調電極は、前記光導波路の長手方向に分割され互いに容量結合した複数の電極からなる分割電極であることを特徴とする。一般的に、変調電極の光導波路に沿った長さを長くすると変調効率が高くなり、電圧プローブヘッドにおける検出電圧感度は大きくなる。しかし、変調電極の長さを長くすると電気容量は増加してしまう。電極容量が大きいと電気信号の周波数が高くなるにつれて等価的なインピーダンスが低下し、電極に印加される電圧が低下することにより変調効率が低下する。そこで、高周波の信号検出のためには、電極の容量はできるだけ小さいことが望ましい。この変調電極の長さと電気容量のトレードオフの関係を改善する有力な手段が、1つの変調電極を容量結合した複数の電極に分割した分割電極である。この分割電極を使用することにより、高効率、広帯域の光変調器を得ることができる。
【0015】
第5の観点では、本発明は、前記第2乃至第4の観点の電圧プローブヘッドにおいて、前記光変調器は筐体内に設置され、前記信号線路は、前記筺体に固定され一端が前記変調電極に接続された接続線路部を有し、前記コンデンサは前記接続線路部のいずれかに直列に挿入されていることを特徴とする。
本観点の発明では、光ファイバが接続された強度的に不安定な光変調器を筐体内に設置することにより、電圧プローブヘッドの取り扱いが容易になり、さらに、コンデンサを設置する接続線路部をその筐体に固定することにより、コンデンサの設置や交換を容易に行うことができる。
ここで、筐体の材料はアルミニウム、銅、ステンレス等の金属やプラスチック、アクリル等の樹脂等を用いることができる。筐体の形状は内部に光変調器を収納可能であればよい。また、接続線路は、筐体内部に固定して収納するか、又は筐体の外側に固定することも可能である。
なお、2つの接触端子間の電圧信号を測定する場合、接続線路は2つあり、その1つはコンデンサを直列に接続して一端が変調電極の信号入力側に接続され、他方の一端は変調電極のグランド側に接続される。それらの他端はそれぞれの接触端子に接続される。
【0016】
第6の観点では、本発明は、前記第5の観点の電圧プローブヘッドにおいて、前記接続線路部は、コプレーナ線路により構成されていることを特徴とする。本観点の発明では、接続線路部をコプレーナ線路により構成することにより、マイクロ波領域の電圧信号の測定にも対応可能となる。この場合、挿入するコンデンサとしてはチップコンデンサが望ましい。
【0017】
第7の観点では、本発明は、前記第6の観点の電圧プローブヘッドにおいて、前記筺体に固定された同軸コネクタを有し、該同軸コネクタの中心導体の一端は前記接触端子に導通され、他端は前記接続線路部に導通されていることを特徴とする。本観点の発明では、同軸コネクタが固定される筐体は金属材料であることが望ましい。この場合、被測定点からの電圧信号が接触端子を介して同軸コネクタの中心導体に導かれ、基準点の電位が外周導体となる。筐体に固定された同軸コネクタの中心導体に接触端子を直接固定してもよい。または、筐体に固定する同軸コネクタを他の同軸コネクタと接続可能とし、その接続される同軸コネクタに接触端子を固定してもよい。この場合、接続端子を電圧プローブヘッドより容易に取り外すことが可能となり、測定目的に応じた接触端子の交換が容易となる。
【発明の効果】
【0018】
上記のように、本発明により、固定された光変調器に対して検出可能な電圧信号の範囲を大きく設定でき、想定外の電圧入力による破壊のリスクを軽減することが可能な電圧プローブヘッドが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1に係る電圧プローブヘッドの構成を模式的に示す平面図。
図2】実施例1の電圧プローブヘッドを用いた測定システムのブロック構成図。
図3】実施例1の電圧プローブヘッドに内蔵される反射型の光変調器の構成の一例を模式的に示す図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は断面図。
図4】実施例2に係る電圧プローブヘッドの構成を模式的に示す平面図。
図5】実施例3に係る電圧プローブヘッドの構成を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の電圧プローブヘッドを実施例により詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、その重複した説明を省略する。
【実施例1】
【0021】
図1は実施例1に係る電圧プローブヘッドの構成を模式的に示す平面図であり、図2は実施例1に係る電圧プローブヘッドを用いた測定システムのブロック構成図である。
【0022】
図1において、本実施例1の電圧プローブヘッド10は、変調電極への印加電圧に依存して入射光を強度変調して出力する光変調器1と、光変調器1に接続された入出力光ファイバ2と、被測定点に接触可能に構成された接触端子3と、接触端子3と基準点との間の電圧信号を変調電極に導く信号線路とを備えている。
本実施例1においては、光変調器1は、入射光を内部で反射して折り返す反射型光変調器であって、光変調器1への入力光ファイバと光変調器1からの出力光ファイバは1本の入出力光ファイバ2で構成されている。光変調器1の変調電極は外部電極との接続のため、信号電極用の電極パッド11とグランド電極用の電極パッド12とを備えている。
また、本実施例1においては、被測定点に用いる接触端子3と同様な接触端子4を設け、接触端子4により検出した電位を基準点の電位としている。すなわち、2つの接触端子3、4間の電圧信号が信号線路により変調電極に導かれる。
【0023】
光変調器1は筐体5内に設置され、光変調器1に隣接して接続基板6が筐体5内に固定されている。接続基板6上には、接触端子3から電極パッド11に至る信号線路の一部として接続線路部7と、基準点となる接触端子4から電極パッド12に至る線路の一部として接続線路部8が設置されている。
接続線路7は、接触端子3と接続された信号側電極7aと、電極パッド11に接続された変調器側電極7bと、信号側電極7a、変調器側電極7b間に直列に挿入され接続されたチップコンデンサ9とを備えている。接続線路部8は接触端子4と電極パッド12間を接続している。
ここで、筐体5及び接続基板6の材料としては、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属やプラスチック、アクリル等の樹脂、及びガラス材料等を用いることができる。筐体5の形状は、側面のみ囲った断面がコの字状の形状、上面が開放された箱型、光ファイバ2と接触端子3及び4のみを飛び出させた密閉型、等、様々な形態が可能である。
【0024】
以上のように、本実施例1においては、接触端子3からの電圧信号は直列に配置されたチップコンデンサ9を有する接続線路部7を介して信号電極に導かれ、基準点の電位は接触端子4から接続線路部8を介してグランド電極に導かれる。
【0025】
ここで、チップコンデンサ9の容量をC1、光変調器1の変調電極の電極パッド11、12間の容量をC2とすると、変調電極に印加される電圧信号の振幅は、C1/(C1+C2)倍に縮小されることになる。例えば、変調電極として分割電極を用いた場合、C2の値は1〜5pF程度とできるので、チップコンデンサ9の容量をC1=0.5pFに設定すれば、変調電極に印加される電圧信号の振幅は、接触端子3及び4間の電圧振幅に対して1/3〜1/11に縮小される。
なお、図1において、基準点となる接触端子4から接続された接続線路部8とグランド電極用の電極パッド12との間にチップコンデンサ9を接続し、接続線路部7のチップコンデンサ9を除いて信号側電極7aと変調器側電極7bとを直結させても、上記と同様な本発明の効果が得られる。
【0026】
次に、本実施例1の電圧プローブヘッド10を用いた測定システムについて説明する。
図2に示すように、電圧プローブヘッド10には、光送受信ユニット21より入出力光ファイバ2を通して入射光14が送られ、光変調器1より出力される光強度変調信号15が同じ入出力光ファイバ2より送受信ユニット21に入力される。
光送受信ユニット21は、半導体レーザ等の光源22、O/E変換器23、入射光14と光強度変調信号15を分離するための送受分離器24、アンプ25を備えている。光源22からの出射光は送受分離器24を通して入出力光ファイバ2に結合し、入出力光ファイバ2からの光強度変調信号15は送受分離器24を通してO/E変換器23に入力する。O/E変換器23において光強度変調信号15は電気信号に変換され、アンプ25により増幅されて出力端子26に出力される。その電気信号はオシロスコープ等の測定器27の入力端子28に入力される。送受分離器24は、光サーキュレータ、光ファイバ分岐、半透過ミラーのいずれかを用いて構成することができる。
【0027】
図2は、被測定点として、電気回路基板13上に組み込まれた電気部品16に印加されている電圧信号を測定する場合を示している。電気部品16の信号線路側に電圧プローブヘッド10の接触端子3を接触させ、アース電位側に接触端子4を接触させる。接触端子3及び4の先端は、測定する電気信号の周波数に合わせて様々な形態が可能である。通常の電気プローブの接触部分と同様な構造を用いることができる。
【0028】
以上のように、接触端子3及び4で検出された電圧信号は光変調器1で光強度変調信号15に変換され、その光強度変調信号15は光送受信ユニット21内で電気信号に変換される。測定器27によりその電圧波形を観測等することにより電気部品16に印加されている電圧信号波形を把握することができる。
【0029】
図3は、本実施例1の電圧プローブヘッド10に内蔵される反射型の光変調器1の構成の一例を模式的に示す図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は断面図である。
【0030】
図3において、光変調器1は、電気光学効果を有する結晶であるニオブ酸リチウム(LiNbO)結晶からXカットで切り出して作られた基板41と、基板41の上面側にTi拡散によって作られた分岐干渉型光導波路42と、基板41の上面側に成膜されたバッファ層43と、バッファ層43の上に成膜された変調電極44と、基板41の一方の端部に設置された光反射部45とから構成されている。変調電極44は、スパッタリング等によって成膜されたクロム(Cr)と金(Au)の2層膜である。
【0031】
分岐干渉型光導波路42は、入力光の入射側に延びる1本の入出力光導波路42aと、入出力光導波路42aから二股に分岐して延びる2本の位相シフト導波路42b,42cとから形成されている。入出力光導波路42aや位相シフト光導波路42b,42cでは、延伸方向に垂直な方向の幅Wはすべて等しい。また、位相シフト光導波路42b,42cは、それらの延伸方向の長さはほぼ等しい。
【0032】
これらの光導波路の幅Wは、5〜12μmの範囲にある。位相シフト光導波路42b,42cの延伸方向の長さは、10〜30mmの範囲にある。位相シフト光導波路42bと42cは、その中央部分が幅方向へ所定の間隔で離間し、互いに平行に延びている。中央部分における位相シフト光導波路42bと42cの間の間隔は、15〜50μmの範囲にある。なお、入出力光導波路42a、位相シフト光導波路42b、42cの幅W、位相シフト光導波路42b,42cの長さ、位相シフト光導波路42b、42c間の間隔について特に限定はなく、それら寸法を任意に設定することができる。
【0033】
バッファ層43は、光導波路42を伝播する光の一部が変調電極44に吸収されることを防止する目的で設けられる。バッファ層43は、主として二酸化ケイ素(SiO)膜等から作られ、その厚さは0.1〜1.0μm程度である。
【0034】
光変調器1においては、変調電極44は、分岐干渉型光導波路42の長手方向に分割され互いに容量結合した3つの電極46、47、48からなる分割電極により構成されている。信号入力側の電極パッド11を有する電極46は、位相シフト光導波路42bと42cの間に配置された電極部46aを有している。電極47は、位相シフト光導波路42b,42cを挟んで電極部46aの両側に配置された電極部47bと、位相シフト光導波路42bと42cの間に配置された電極部47aを有している。アース側の電極パッド12を有する電極48は、位相シフト光導波路42b,42cを挟んで電極部47aの両側に配置された電極部48bを有している。電極パッド11と12間で、電極46と47、及び電極47と48は互いに容量結合して直列に配置されていることになる。
【0035】
基板41の入出力光導波路42aの光入出射端には入出力光ファイバ2の入出射端面が結合している。光反射部45は、入出力光導波路42aから入射して位相シフト光導波路42b,42cを伝播した光を反射し、位相シフト光導波路42b,42cから入出力光導波路42aへ戻して伝播させる。変調電極44への電圧印加により、電極部46aと47bとの間、及び電極部47aと48bとの間の2つの位相シフト光導波路42b,42c中に互いに逆向きに電界が印加される。これにより、位相シフト光導波路42bと42cには互いに逆向きの屈折率変化が生じ、それらを通過する光に互いに逆極性の位相シフトが生じ、それらの光が合流するときに互いに干渉して強度変化が生ずる。これにより変調電極44への印加電圧に対応した光強度変化を有する光強度変調信号が得られる。
【実施例2】
【0036】
図4は実施例2に係る電圧プローブヘッドの構成を模式的に示す平面図である。
図4に示すように、本実施例2の電圧プローブヘッド20において、実施例1と同様な光変調器1が筐体35内に設置され、光変調器1に隣接して接続基板36が筐体35内に固定されている。筐体35は金属材料で構成され、筐体35の外側には同軸コネクタ37が固定されている。同軸コネクタ37の中心導体37aには接触端子3が接続固定され、同軸コネクタ37の外周導体には接触端子4が接続固定されている。
【0037】
接続基板36上には、同軸コネクタ37の中心導体37aに接続された信号側電極17aと、電極パッド11に接続された変調器側電極17bと、信号側電極17a、変調器側電極17b間に直列に挿入され接続されたチップコンデンサ19とを備えた接続信号線路17が配置されている。また、接続信号線路17の両側には、同軸コネクタ37の外周導体に接続されたグランド電極38が配置されている。接続信号線路17とグランド電極38とがコプレーナ線路よりなる接続線路部を形成している。
【0038】
本実施例2の電圧プローブヘッド20においても、接触端子3及び4間の電圧信号の振幅がチップコンデンサ9と変調電極の容量により決まる所定の比率で縮小され、変調電極に印加される。本実施例2においては、接続線路部をコプレーナ線路により構成することにより、マイクロ波領域の電圧信号の測定にも対応可能となる。
【実施例3】
【0039】
図5は実施例3に係る電圧プローブヘッドの構成を模式的に示す平面図である。
図5に示すように、本実施例3の電圧プローブヘッド30において、実施例2と同様に、光変調器1が筐体35内に設置され、光変調器1に隣接して接続基板36が筐体35内に固定されている。筐体35は金属材料で構成され、筐体35の外側には同軸コネクタ32が固定されている。同軸コネクタ32は、同軸コネクタ33と接続可能に構成され、同軸コネクタ33の中心導体33aに接触端子3が固定され、同軸コネクタ33の外周導体には接触端子4が接続固定されている。本実施例3においては、同軸コネクタ33を同軸コネクタ32より取り外すことにより、接触端子3,4を電圧プローブヘッドより容易に取り外すことが可能となる。同軸コネクタ32に接続可能であって、測定目的に応じた種々の接触端子を備えた同軸コネクタ33を用意しておけば、被測定点の形状に応じて容易に接触端子を交換することができる。
【0040】
なお、本実施例3においても、実施例2と同様に、接続基板36上には、直列に挿入され接続されたチップコンデンサ19を備えた接続信号線路17と、その両側に配置されたグランド電極38により、コプレーナ線路よりなる接続線路部が形成されている。
【0041】
本実施例3の電圧プローブヘッド30においても、接触端子3及び4間の電圧信号の振幅がチップコンデンサ9と変調電極の容量により決まる所定の比率で縮小され、変調電極に印加される。
【0042】
上記のように、本発明においては、信号線路に挿入するコンデンサの容量を選択することにより、変調電極に印加する電圧信号の振幅を変化させることができ、コンデンサの容量の選択により、検出可能な電圧信号の大きさの範囲を選択することができる。
さらに、最初の測定において、信号線路に挿入するコンデンサの容量を十分に小さな値に設定して電圧感度を十分に小さくしておき、被測定点のおおよその電圧振幅を把握した後、コンデンサの容量をその測定に適した値に変更すれば、変調電極に対して過大な電圧信号が印加されるのを防ぐことが可能となる。
【0043】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではないことは言うまでもなく、目的に応じて様々な変形が可能である。例えば、使用する光変調器の方式は反射型だけでなく、通常の透過型光変調器であってもよい。また、変調電極に分割電極を使用する場合、その分割数は、目的とする測定電圧の周波数、振幅などに応じて任意に設定可能である。変調電極は分割電極でなくともよい。光変調器を収納する筐体も様々な材料、様々な構造が可能である。信号線路に挿入されるコンデンサの設置場所は接続線路部内に限定されず、例えば変調電極の電極パッドに接続してもよい。また、線路内に挿入するコンデンサの形態としては、チップコンデンサ等の個別部品を挿入する方法に限定されず、例えば、接続線路部内に電極ギャップ等を設けてコンデンサとしての機能を有する部分を形成してもよい。接触端子の形状、構造、接続及び固定方法なども目的に合わせて選択可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 光変調器
2 入出力光ファイバ
3,4 接触端子
5,35 筐体
6,36 接続基板
7.8 接続線路部
7a,17a 信号側電極
7b、17b 変調器側電極
9,19 チップコンデンサ
10,20,30 電圧プローブヘッド
11,12 電極パッド
13 電気回路基板
14 入射光
15 光強度変調信号
16 電気部品
17 接続信号線路
21 光送受信ユニット
23 O/E変換器
24 送受分離器
25 アンプ
26 出力端子
27 測定器
28 入力端子
32,33,37 同軸コネクタ
33a,37a 中心導体
38 グランド電極
41 基板
42 分岐干渉型光導波路
42a 入出力光導波路
42b,42c 位相シフト光導波路
43 バッファ層
44 変調電極
45 光反射部
46,47,48 電極
46a,47a,47b,48b 電極部
図1
図2
図3
図4
図5