特許第6883238号(P6883238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6883238-駐車支援装置 図000002
  • 特許6883238-駐車支援装置 図000003
  • 特許6883238-駐車支援装置 図000004
  • 特許6883238-駐車支援装置 図000005
  • 特許6883238-駐車支援装置 図000006
  • 特許6883238-駐車支援装置 図000007
  • 特許6883238-駐車支援装置 図000008
  • 特許6883238-駐車支援装置 図000009
  • 特許6883238-駐車支援装置 図000010
  • 特許6883238-駐車支援装置 図000011
  • 特許6883238-駐車支援装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883238
(24)【登録日】2021年5月12日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/06 20060101AFI20210531BHJP
   B60W 30/188 20120101ALI20210531BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20210531BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   B60W30/06
   B60W30/188
   G08G1/00 X
   B60T7/12 C
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-9618(P2017-9618)
(22)【出願日】2017年1月23日
(65)【公開番号】特開2018-118550(P2018-118550A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 友一
(72)【発明者】
【氏名】大平 哲也
【審査官】 ▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−078744(JP,A)
【文献】 特開2016−094112(JP,A)
【文献】 特開2007−118804(JP,A)
【文献】 特開2003−206780(JP,A)
【文献】 特開2016−002957(JP,A)
【文献】 特開2007−030746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 − 60/00
G08G 1/00 − 99/00
B60T 7/12 − 8/1769
B60T 8/32 − 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在の位置から駐車目標位置までの移動距離を取得する距離取得部と、
前記移動距離と、予め設定された車速および加減速度と、に基づいて、前記駐車目標位置に到達するまでの時間経過に伴った目標車速を算出する車速算出部と、
前記時間経過に伴った前記目標車速に基づき、前記駐車目標位置に到達するまでの時間に応じた前記車両の移動目標位置を算出する位置算出部と、
前記車両が前記目標車速で前記移動目標位置に移動するように車両走行状態を制御する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記車両の現在の位置と前記移動目標位置とに基づいて当該移動目標位置に追従走行不能と判定された場合で、前記車両の走行操作が検出された場合は、前記車両走行状態の制御を中断し、前記走行操作が検出されなかった場合は、前記車両の前記移動目標位置に対する追従状態に応じて修正された前記目標車速にしたがい前記車両走行状態の制御を継続する、駐車支援装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記車両の現在の位置と前記移動目標位置との乖離が所定の第1乖離値以上の場合で、前記車両の駆動力が駐車支援で許容される第1駆動力値に到達し、かつ前記車両に制動力が発生していない場合に、前記車両が前記移動目標位置に追従走行不能と判定する請求項に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記追従走行不能と判定されている場合、前記乖離が前記第1乖離値より所定量少ない第2乖離値になった場合、前記車両の駆動力が前記第1駆動力値より所定量低い第2駆動力値になった場合、前記車両の制動力が所定の制動力値以上になった場合、のうち少なくとも1つが満たされた場合、追従走行可能と判定する請求項に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記追従走行不能と判定された場合で、前記車両の前記移動目標位置に対する追従状態に応じて修正された前記目標車速にしたがい前記車両走行状態の制御を継続する場合、前記車両の現在の車速を修正された前記目標車速とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の駐車支援装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記走行操作が検出されなくなり、前記車両走行状態の制御を復帰させる場合に、前記車両の現在位置を制御復帰のときの移動目標位置とする請求項に記載の駐車支援装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記追従走行不能と判定されて前記車両走行状態の制御を中断している場合に、前記車両が前記駐車目標位置に対して所定の減速開始位置に到達した場合、前記目標車速に基づく前記車両走行状態の制御を再開する請求項から請求項のいずれか1項に記載の駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された各種センサによって、自車両が駐車できる駐車スペースを探して、その駐車スペースに設定した駐車目標位置までの最適な車両軌道を算出して、その車両軌道にしたがって自車両を誘導することにより、ドライバにおける駐車操作の負担を軽減する駐車支援装置(走行支援装置)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−94112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の駐車(走行)支援装置は、算出した移動経路に追従できるように、車両の駆動力や制動力を逐次制御している。そのため、駐車(走行)支援中に加速状態や減速状態の切り替わりが発生しやすく、車両の搭乗者の乗り心地性を低下させてしまう場合がある。そこで、駐車目標位置までの移動をよりスムーズに実現できる駐車支援装置が提供できれば有意義である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態にかかる駐車支援装置は、例えば、車両の現在の位置から駐車目標位置までの移動距離を取得する距離取得部と、上記移動距離と、予め設定された車速および加減速度と、に基づいて、上記駐車目標位置に到達するまでの時間経過に伴った目標車速を算出する車速算出部と、上記時間経過に伴った上記目標車速に基づき、上記駐車目標位置に到達するまでの時間に応じた上記車両の移動目標位置を算出する位置算出部と、上記車両が上記目標車速で上記移動目標位置に移動するように車両走行状態を制御する制御部と、を備え、上記制御部は、例えば、上記車両の現在の位置と上記移動目標位置とに基づいて当該移動目標位置に追従走行不能と判定された場合で、上記車両の走行操作が検出された場合は、上記車両走行状態の制御を中断し、上記走行操作が検出されなかった場合は、上記車両の上記移動目標位置に対する追従状態に応じて修正された上記目標車速にしたがい上記車両走行状態の制御を継続する。この構成によれば、例えば、車両の目標速度を乗り心地がよいと感じる(不快を感じ難い)滑らかな加速、減速となるように算出し、その目標速度に基づいて移動目標位置を算出するので、過剰な加減速を回避してスムーズに駐車目標位置まで車両を移動させることができる。また、自車が移動目標位置に追従走行不能と判断された場合に、その原因が運転者(利用者)の走行操作、例えば、アクセル操作やブレーキ操作によるものなのか、または路面勾配や凹凸状態等の外的要因によるものかによって、制御を切り換える。その結果、運転者の意志を反映した現在の状況に適した制御が実行できる。
【0007】
実施形態にかかる駐車支援装置の上記制御部は、例えば、上記車両の現在の位置と上記移動目標位置との乖離が所定の第1乖離値以上の場合で、上記車両の駆動力が駐車支援で許容される第1駆動力値に到達し、かつ上記車両に制動力が発生していない場合に、上記車両が上記移動目標位置に追従走行不能と判定してもよい。この構成によれば、例えば、複数の条件を満たした場合に追従走行不能と判定するため、車両の状態や車両周囲の状況をセンサ等で検出する際にノイズ等が影響した場合でも、移動目標位置に追従走行不能と誤判定して直ちに制御状態が切り替わってしまう可能性を低減できる。
【0008】
実施形態にかかる駐車支援装置の上記制御部は、例えば、上記追従走行不能と判定されている場合、上記乖離が上記第1乖離値より所定量少ない第2乖離値になった場合、上記車両の駆動力が上記第1駆動力値より所定量低い第2駆動力値になった場合、上記車両の制動力が所定の制動力値以上になった場合、のうち少なくとも1つが満たされた場合、追従走行可能と判定するようにしてもよい。この構成によれば、例えば、追従走行不能と判定された後、乖離状態が縮まり第1乖離値に至っても追従走行可能の判定に切り替わらず、第2乖離値以上で追従走行可能と判定する。つまり、第1乖離値付近で追従可能か否かの判定が繰り返し発生して、それに基づき制御が繰り返し切り替わってしまう不都合を回避することができる。
【0009】
実施形態にかかる駐車支援装置の上記制御部は、例えば、上記追従走行不能と判定された場合で、上記車両の上記移動目標位置に対する追従状態に応じて修正された上記目標車速にしたがい上記車両走行状態の制御を継続する場合、上記車両の現在の車速を修正された上記目標車速としてもよい。この構成によれば、過剰な加減速を伴うことなく、移動目標位置に対する追従を継続することができる。また、現在の車速を目標車速とすることで追従しやすい新たな移動目標位置を設定できるとともに、移動目標位置に対する乖離の拡大が防止しやすくなる。
【0010】
実施形態にかかる駐車支援装置の上記制御部は、例えば、上記走行操作が検出されなくなり、上記車両走行状態の制御を復帰させる場合に、上記車両の現在位置を制御復帰のときの移動目標位置としてもよい。この構成によれば、運転者(利用者)の操作により現在の車両の位置が当初の移動目標位置から大きく乖離している場合でも、無理にその位置に戻すことなく新たな移動目標位置で制御を継続する。その結果、過剰な加減速を伴うことなく、追従制御を継続することができる。
【0011】
実施形態にかかる駐車支援装置の上記制御部は、例えば、上記追従走行不能と判定されて上記車両走行状態の制御を中断している場合に、上記車両が上記駐車目標位置に対して所定の減速開始位置に到達した場合、上記目標車速に基づく上記車両走行状態の制御を再開してもよい。この構成によれば、駐車目標位置に近づいた場合には、運転者(利用者)の操作に拘わらず車両走行状態の制御を再開するので、車両を駐車目標位置に確実に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態の駐車支援装置を搭載する車両の車室の一部が透視された状態が示された例示的な斜視図である。
図2図2は、実施形態の駐車支援装置を搭載する車両の例示的な平面図である。
図3図3は、実施形態の駐車支援装置を含む駐車支援システムの構成の例示的なブロック図である。
図4図4は、実施形態の駐車支援システムのCPUの構成の例示的なブロック図である。
図5図5は、実施形態の駐車支援装置を搭載する車両が駐車目標位置に移動する際の移動状態を模式的に示した上面視の図である。
図6図6は、実施形態の駐車支援装置により算出される目標車速の推移を説明するための車速と経過時間の関係の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態の駐車支援装置により算出される移動目標位置の推移を説明するための車両の位置と経過時間の関係の一例を示す図である。
図8図8は、実施形態の駐車支援装置による減速開始位置の算出を説明するための目標車速と経過時間の関係の一例を示す図である。
図9図9は、実施形態の駐車支援装置による制御において、追従遅れが発生した場合の移動目標位置と実際の車両の位置との関係の一例を示す図である。
図10図10は、実施形態の駐車支援装置による制御において、車両走行状態を制御する追従制御に復帰した際に移動目標位置を現在の位置から算出し直す例を説明する図である。
図11図11は、実施形態の駐車支援装置により支援処理の詳細を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0014】
本実施形態において、駐車支援装置を搭載する車両1は、例えば、不図示の内燃機関を駆動源とする自動車、すなわち内燃機関自動車であってもよいし、不図示の電動機を駆動源とする自動車、すなわち電気自動車や燃料電池自動車等であってもよいし、それらの双方を駆動源とするハイブリッド自動車であってもよいし、他の駆動源を備えた自動車であってもよい。また、車両1は、種々の変速装置を搭載することができるし、内燃機関や電動機を駆動するのに必要な種々の装置、例えばシステムや部品等を搭載することができる。また、車両1における車輪3の駆動に関わる装置の方式や、数、レイアウト等は、種々に設定することができる。
【0015】
図1に例示されるように、車体2は、不図示の乗員が乗車する車室2aを構成している。車室2a内には、乗員としての運転者の座席2bに臨む状態で、操舵部4や、加速操作部5、制動操作部6、変速操作部7等が設けられている。操舵部4は、例えば、ダッシュボード25から突出したステアリングホイールであり、加速操作部5は、例えば、運転者の足下に位置されたアクセルペダルであり、制動操作部6は、例えば、運転者の足下に位置されたブレーキペダルであり、変速操作部7は、例えば、センターコンソールから突出したシフトレバーである。なお、操舵部4や、加速操作部5、制動操作部6、変速操作部7等は、これらには限定されない。
【0016】
また、車室2a内には、表示出力部としての表示装置8や、音声出力部としての音声出力装置9が設けられている。表示装置8は、例えば、LCD(liquid crystal display)や、OELD(organic electroluminescent display)等である。音声出力装置9は、例えば、スピーカである。また、表示装置8は、例えば、タッチパネル等、透明な操作入力部10で覆われている。乗員は、操作入力部10を介して表示装置8の表示画面に表示される画像を視認することができる。また、乗員は、表示装置8の表示画面に表示される画像に対応した位置で手指等により操作入力部10を触れたり押したり動かしたりして操作することで、操作入力を実行することができる。これら表示装置8や、音声出力装置9、操作入力部10等は、例えば、ダッシュボード25の車幅方向すなわち左右方向の中央部に位置されたモニタ装置11に設けられている。モニタ装置11は、スイッチや、ダイヤル、ジョイスティック、押しボタン等の不図示の操作入力部を有することができる。また、モニタ装置11とは異なる車室2a内の他の位置に不図示の音声出力装置を設けることができるし、モニタ装置11の音声出力装置9と他の音声出力装置から、音声を出力することができる。なお、モニタ装置11は、例えば、ナビゲーションシステムやオーディオシステムと兼用されうる。
【0017】
また、車室2a内には、表示装置8とは別の表示装置12(図3参照)が設けられている。表示装置12は、例えば、ダッシュボード25の計器盤部26(図1参照)に設けられ、計器盤部26の略中央で、速度表示部と回転数表示部との間に位置されている。表示装置12の画面の大きさは、表示装置8の画面の大きさよりも小さい。この表示装置12には、主として車両1の駐車支援に関する情報を示す画像が表示されうる。表示装置12で表示される情報量は、表示装置8で表示される情報量より少なくてもよい。表示装置12は、例えば、LCDや、OELD等である。なお、表示装置8に、表示装置12で表示される情報が表示されてもよい。
【0018】
また、図1図2に例示されるように、車両1は、例えば、四輪自動車であり、左右二つの前輪3Fと、左右二つの後輪3Rとを有する。これら四つの車輪3は、いずれも転舵可能に構成されうる。図3に例示されるように、車両1は、少なくとも二つの車輪3を操舵する操舵システム13を有している。操舵システム13は、アクチュエータ13aと、トルクセンサ13bとを有する。操舵システム13は、ECU14(electronic control unit)等によって電気的に制御されて、アクチュエータ13aを動作させる。操舵システム13は、例えば、電動パワーステアリングシステムや、SBW(steer by wire)システム等である。操舵システム13は、アクチュエータ13aによって操舵部4にトルク、すなわちアシストトルクを付加して操舵力を補ったり、アクチュエータ13aによって車輪3を転舵したりする。この場合、アクチュエータ13aは、一つの車輪3を転舵してもよいし、複数の車輪3を転舵してもよい。また、トルクセンサ13bは、例えば、運転者が操舵部4に与えるトルクを検出する。
【0019】
また、図2に例示されるように、車体2には、複数の撮像部15として、例えば四つの撮像部15a〜15dが設けられている。撮像部15は、例えば、CCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。撮像部15は、所定のフレームレートで動画データを出力することができる。撮像部15は、それぞれ、広角レンズまたは魚眼レンズを有し、水平方向には例えば140°〜220°の範囲を撮影することができる。また、撮像部15の光軸は斜め下方に向けて設定されている。よって、撮像部15は、車両1が移動可能な路面や車両1が駐車可能な領域を含む車体2の周辺の外部の環境を逐次撮影し、撮像画像データとして出力する。
【0020】
撮像部15aは、例えば、車体2の後側の端部2eに位置され、リヤトランクのドア2hの下方の壁部に設けられている。撮像部15bは、例えば、車体2の右側の端部2fに位置され、右側のドアミラー2gに設けられている。撮像部15cは、例えば、車体2の前側、すなわち車両前後方向の前方側の端部2cに位置され、フロントバンパー等に設けられている。撮像部15dは、例えば、車体2の左側、すなわち車幅方向の左側の端部2dに位置され、左側の突出部としてのドアミラー2gに設けられている。ECU14は、複数の撮像部15で得られた画像データに基づいて演算処理や画像処理を実行し、より広い視野角の画像を生成したり、車両1を上方から見た仮想的な俯瞰画像を生成したりすることができる。
【0021】
また、ECU14は、撮像部15の画像から、車両1の周辺の路面に示された区画線等を識別し、区画線等で示された駐車区画を検出する。
【0022】
また、図1図2に例示されるように、車体2には、複数の測距部16,17として、例えば四つの測距部16a〜16dと、八つの測距部17a〜17hとが設けられている。測距部16,17は、例えば、超音波を発射してその反射波を捉えるソナーである。ソナーは、ソナーセンサ、あるいは超音波探知器とも称されうる。ECU14は、測距部16,17の検出結果により、車両1の周囲に位置された障害物等の物体の有無や当該物体までの距離を測定することができる。すなわち、測距部16,17は、物体を検出する検出部の一例である。なお、測距部17は、例えば、比較的近距離の物体の検出に用いられ、測距部16は、例えば、測距部17よりも遠い比較的長距離の物体の検出に用いられうる。また、測距部17は、例えば、車両1の前方および後方の物体の検出に用いられ、測距部16は、車両1の側方の物体の検出に用いられうる。
【0023】
また、図3に例示されるように、駐車支援システム100では、ECU14や、モニタ装置11、操舵システム13、測距部16,17等の他、ブレーキシステム18、舵角センサ19、アクセルセンサ20、駆動システム21、車輪速センサ22、シフトセンサ23等が、電気通信回線としての車内ネットワーク24を介して電気的に接続されている。車内ネットワーク24は、例えば、CAN(controller area network)として構成されている。ECU14は、車内ネットワーク24を通じて制御信号を送ることで、操舵システム13、ブレーキシステム18、駆動システム21等を制御することができる。また、ECU14は、車内ネットワーク24を介して、トルクセンサ13b、ブレーキセンサ18b、舵角センサ19、測距部16,17、アクセルセンサ20、シフトセンサ23、車輪速センサ22等の検出結果や、操作入力部10等の操作信号等を、受け取ることができる。
【0024】
ECU14は、例えば、CPU14a(central processing unit)や、ROM14b(read only memory)、RAM14c(random access memory)、表示制御部14d、音声制御部14e、SSD14f(solid state drive、フラッシュメモリ)等を有している。CPU14aは、例えば、表示装置8,12で表示される画像に関連した画像処理や、駐車支援を実行する際の車両1の駐車目標位置の決定、移動距離の演算(算出)、時間ごとの目標車速や移動目標位置の演算(算出)、物体との干渉の有無の判定、車両1の制御の切り換え(自動制御と自動制御の解除の切り換え)等の、各種の演算処理および制御を実行することができる。
【0025】
CPU14aは、ROM14b等の不揮発性の記憶装置にインストールされ記憶されたプログラムを読み出し、当該プログラムにしたがって演算処理を実行することができる。RAM14cは、CPU14aでの演算で用いられる各種のデータを一時的に記憶する。また、表示制御部14dは、ECU14での演算処理のうち、主として、撮像部15で得られた画像データを用いた画像処理や、表示装置8で表示される画像データの合成等を実行する。また、音声制御部14eは、ECU14での演算処理のうち、主として、音声出力装置9で出力される音声データの処理を実行する。また、SSD14fは、書き換え可能な不揮発性の記憶部であって、ECU14の電源がOFFされた場合にあってもデータを記憶することができる。なお、CPU14aや、ROM14b、RAM14c等は、同一パッケージ内に集積されうる。また、ECU14は、CPU14aに替えて、DSP(digital signal processor)等の他の論理演算プロセッサや論理回路等が用いられる構成であってもよい。また、SSD14fに替えてHDD(hard disk drive)が設けられてもよいし、SSD14fやHDDは、ECU14とは別に設けられてもよい。
【0026】
ブレーキシステム18は、例えば、ブレーキのロックを抑制するABS(anti-lock brake system)や、コーナリング時の車両1の横滑りを抑制する横滑り防止装置(ESC:electronic stability control)、ブレーキ力を増強させる(ブレーキアシストを実行する)電動ブレーキシステム、BBW(brake by wire)等である。ブレーキシステム18は、アクチュエータ18aを介して、車輪3ひいては車両1に制動力を与える。また、ブレーキシステム18は、左右の車輪3の回転差などからブレーキのロックや、車輪3の空回り、横滑りの兆候等を検出して、各種制御を実行することができる。ブレーキセンサ18bは、例えば、制動操作部6の可動部の位置を検出するセンサである。ブレーキセンサ18bは、可動部としてのブレーキペダルの位置を検出することができる。ブレーキセンサ18bは、変位センサを含む。
【0027】
舵角センサ19は、例えば、ステアリングホイール等の操舵部4の操舵量を検出するセンサである。舵角センサ19は、例えば、ホール素子などを用いて構成される。ECU14は、運転者による操舵部4の操舵量や、自動操舵時の各車輪3の操舵量等を、舵角センサ19から取得して各種制御を実行する。なお、舵角センサ19は、操舵部4に含まれる回転部分の回転角度を検出する。舵角センサ19は、角度センサの一例である。
【0028】
アクセルセンサ20は、例えば、加速操作部5の可動部の位置を検出するセンサである。アクセルセンサ20は、可動部としてのアクセルペダルの位置を検出することができる。アクセルセンサ20は、変位センサを含む。
【0029】
駆動システム21は、駆動源としての内燃機関(エンジン)システムやモータシステムである。駆動システム21は、アクセルセンサ20により検出された運転者(利用者)の要求操作量(例えばアクセルペダルの踏み込み量)にしたがいエンジンの燃料噴射量や吸気量の制御やモータの出力値を制御する。また、利用者の操作に拘わらず、車両1の走行状態に応じて、操舵システム13やブレーキシステム18の制御と協働してエンジンやモータの出力値を制御しうる。
【0030】
車輪速センサ22は、各車輪3に設けられ各車輪3の回転量や単位時間当たりの回転数を検出するセンサであり、検出した回転数を示す車輪速パルス数を検出値として出力する。車輪速センサ22は、例えば、ホール素子などを用いて構成されうる。CPU14aは、車輪速センサ22から取得した検出値に基づき、車両1の車速や移動量などを演算し、各種制御を実行する。CPU14aは、各車輪3の車輪速センサ22の検出値に基づいて車両1の車速を算出する場合、4輪のうち最も小さな検出値の車輪3の速度に基づき車両1の車速を決定し、各種制御を実行する。また、CPU14aは、4輪の中で他の車輪3に比べて検出値が大きな車輪3が存在する場合、例えば、他の車輪3に比べて単位期間(単位時間や単位距離)の回転数が所定数以上多い車輪3が存在する場合、その車輪3はスリップ状態(空転状態)であると見なし、各種制御を実行する。車輪速センサ22は、ブレーキシステム18に設けられている場合もある。その場合、CPU14aは、車輪速センサ22の検出結果をブレーキシステム18を介して取得する。
【0031】
シフトセンサ23は、例えば、変速操作部7の可動部の位置を検出するセンサである。シフトセンサ23は、可動部としての、レバーや、アーム、ボタン等の位置を検出することができる。シフトセンサ23は、変位センサを含んでもよいし、スイッチとして構成されてもよい。
【0032】
なお、上述した各種センサやアクチュエータの構成や、配置、電気的な接続形態等は、一例であって、種々に設定(変更)することができる。
【0033】
CPU14aは、ROM14b等の記憶装置にインストールされ記憶されたプログラムを読み出し、それを実行することで実現される各種モジュールを備える。例えばCPU14aは、図4に示されるように、周辺情報取得部30、センサ値取得部32、操作受付部34、駐車領域検出部36、駐車目標位置決定部38、距離取得部40、車速算出部42、目標位置算出部44、現在位置推定部46、減速開始位置算出部48、制駆動力制御部50、追従判定部52、モード切替部54等を備える。
【0034】
周辺情報取得部30は、撮像部15、測距部16,17から提供される情報を取得する。例えば、車両1の周囲の障害物の有無やその位置や大きさ等に関する情報、路面の枠線、区画線等に関する情報等、車両1の周囲の情報を取得する。センサ値取得部32は、ブレーキセンサ18b、舵角センサ19、アクセルセンサ20、車輪速センサ22、シフトセンサ23等の各種センサが出力する検出値、すなわち車両1の状態を示す情報を取得する。なお、センサ値取得部32は、GPS(Global Positioning System)から車両1の位置情報を取得してもよい。また、別の実施形態では、車輪速センサ22の検出値と車輪3の直径と車輪3の回転数から車両1の移動距離、すなわち、車両1の現在位置を算出してもよい。取得された各種センサ値に基づきCPU14aは、操舵システム13、ブレーキシステム18、駆動システム21等の制御および駐車支援のための演算および制御を実行する。操作受付部34は、操作部14gの操作入力による信号を取得する。操作部14gは、例えば、押しボタンやスイッチ等であり、駐車支援の要求やキャンセルを行うことができる。なお、駐車支援の要求やキャンセルは、表示装置8の操作入力部10を介して行うようにしてもよい。
【0035】
駐車領域検出部36は、周辺情報取得部30が検出した障害物や枠線、区画線等に基づき、車両1の周辺領域に駐車可能領域を検出する。図5に示すように、運転者は、車両1を駐車場Pに進入させると低速で走行させる。操作受付部34は、所定速度以下(低速)で操作部14gの操作を受け付け可能となり、CPU14aに対する駐車支援開始の要求を受け付ける。操作受付部34が操作部14gを介して駐車支援要求信号を受け付けると、駐車領域検出部36は、周辺情報取得部30が取得した撮像部15及び測距部16,17からの情報を用いて車両1の周辺領域に駐車可能領域となり得る駐車区画またはスペースの探索を行う。例えば、車両1は、駐車場P内を区画線102の配列方向に沿って矢印R方向に低速で走行する間に、測距部16,17で取得した周囲情報を用いて、駐車のために車両1を誘導するときに障害物となる物体、例えば他の車両104等の位置や大きさを検出する。この場合、車両1の左側面の測距部16a,16d等からの情報を用いて検出処理を行う。また、主として車両1の左側面の撮像部15dからの情報を用いて、測距部16,17で検出し難い区画線102等の位置や間隔、また区画線102の奥行き等を検出する。駐車領域検出部36は、測距部16,17で検出した情報に基づき障害物が検出されない場合に駐車区画に空きがある、すなわち駐車可能領域の候補が存在すると判定することができる。このとき区画線102の間の距離が車両1の車幅に車側両側に確保すべき所定の余裕距離を加算した駐車可能値L1より大きいか否かも検出する。区画線102の間の距離が駐車可能値L1以上の場合、駐車領域検出部36は、駐車可能領域の候補と判定する。逆に区画線102の間の距離が駐車可能値L1未満の場合、駐車可能領域の候補から除外する判定をする。
【0036】
また、例えば、他の車両104が既に駐車区画に駐車している場合は、この2台の車両104の間のスペースSの車幅方向の離間距離が、駐車可能値L1以上と判定した場合に、このスペースSを駐車可能領域の候補として検出する。このような駐車可能領域の候補は、複数検出してもよく、複数検出した中から一つを例えば運転者に選択させるようにしてもよいし、検出した候補の中から最も条件のよい駐車可能領域を駐車支援システム100が選択するようにしてもよい。また、最初に駐車可能領域が検出された時点で検出を終了し、そこを誘導する駐車可能領域としてもよい。
【0037】
駐車目標位置決定部38は、決定された駐車可能領域に車両1の大きさに対応する駐車枠Mを設定するとともに、駐車目標位置Nを設定する。駐車目標位置Nは、車両1を駐車枠Mに駐車させた場合に、例えば、車両1の左右の後輪3Rを結ぶ線の中央位置(基準位置G)に対応する位置とすることができる。なお、駐車目標位置Nは、例えば、車両1の現在位置Na(支援開始位置)における基準位置Gを原点とする座標上で駐車枠Mが決定されれば、一義に決定することができる。したがって、基準位置Gが駐車目標位置Nと一致するように車両1を移動(誘導)すれば、駐車枠Mの適切な位置に車両1を駐車することができる。
【0038】
距離取得部40は、車両1の現在位置Naから駐車目標位置Nまでの距離を取得する。例えば、車両1の現在位置Naと駐車目標位置Nが決まれば、周知の経路案内の技術を用いて最適経路Tを算出することができる。距離取得部40は、周辺情報取得部30が取得した周辺情報(障害物や他の車両104等)を参照し、障害物や他の車両104と接触せず、十分な安全間隔を確保した状態で現在位置Naから駐車目標位置Nまでに移動できる最も合理的な最適経路Tを算出する。したがって、距離取得部40は、経路算出部としての機能も備える。そして、距離取得部40は、算出した最適経路Tに基づき、車両1が当該最適経路Tに沿って移動する際に予想される移動距離Hを取得する。なお、距離取得部40は、最適経路Tに加えて、他の移動経路を併せて算出して運転者に選択させるようにしてもよい。この場合、距離取得部40は、選択された移動経路に基づく移動距離Hを取得することになる。この場合、運転者の望む経路に基づく駐車支援を行うことができる。
【0039】
車速算出部42は、距離取得部40が取得した移動距離Hと、予め設定された車速および加減速度(±加速度)と、に基づいて、現在位置Naから駐車目標位置Nに到達するまでの時間経過に伴った目標車速を算出する。予め設定された車速および加減速度は、例えば、駐車支援において許容される最大車速VM(m/s)以下の速度および最大加減速度aM(±aM)(m/s)以下の加減速度であり、車両1の自動走行(駐車支援)が実行される際に運転者に不安感や違和感を与えず、かつ合理的に自動走行が実行できる範囲内の車速および加減速度である。図6は、目標車速の推移を説明するための車速と経過時間の関係の一例を示す図である。図6に示すように、最大車速VMと、+加速度a(m/s)および−減速度a(m/s)と、現在位置Naから駐車目標位置Nまでの移動距離Hと、が決まれば、時間経過に伴った目標車速Vを決定することができる。なお、図6の場合、乗り心地がよいと感じられるように、滑らかな加速および減速となるように目標車速Vを算出した例であり、一定加速度(+a)で加速した後、一定の速度(例えば最大車速VM)で走行し、一定の減速度(−a)で減速して停止する例である。
【0040】
別の実施形態では、加減速度を徐々に変化させてもよい。例えば、加速初期を緩やかな加速とし、加速中期で最大加速とし、加速終期で再び緩やかな加速としてもよい。減速の場合も同様である。また、加速時を図6と同様にリニアに加速し、減速を上述したように徐々に変化させるようにしてもよい。また、その逆でもよい。また、車速の推移を加速期間と減速期間とで形成し一定車速期間を省略してもよい。このように、速度の推移パターンは、運転者や駐車支援装置の供給者、車両供給者等によって適宜選択可能としてもよい。同様に、最大車速VMや最大加減速度±aMも適宜選択可能としてもよい。このように、安全に駐車支援ができる範囲内で設定変更を可能にすることで、利用者の好みに合った速度や加減速度の駐車支援を実現することができる。
【0041】
また、車速算出部42は、駐車支援中の車両1の現在の車速を推定する。現在の車速の推定は、例えば周辺情報取得部30が取得した車輪速センサ22の検出値に基づき推定することができる。なお、車両1が速度センサを備える場合、速度センサの検出値を用いて現在の車速を推定してもよい。
【0042】
目標位置算出部44は、車速算出部42が算出した時間経過に伴った目標車速Vに基づき、駐車目標位置Nに到達するまでの時間に応じた車両1の移動目標位置Nbを算出する。目標位置算出部44は、車速算出部42が算出した目標車速Vを逐次積分することで、移動目標位置Nbを算出することができる。図7は、図6に示す目標車速Vに対応する移動目標位置Nbの推移を説明する図であり、車両1の位置と経過時間の関係の一例を示す図である。
【0043】
現在位置推定部46は、例えば、車両1の現在の位置を推定する。現在位置推定部46は、センサ値取得部32が取得するGPSからの位置情報を用いて車両1の駐車支援中の各時間における位置を推定することができる。
【0044】
減速開始位置算出部48は、車両1が駐車目標位置Nに停止する際に運転者等に不快感を与えないような減速を開始する減速開始位置Ncを算出する。例えば、車両1が最大車速VMで走行している状態から一定の減速度(−a)で減速して駐車目標位置Nに到達するように減速開始位置Ncを算出する。図8は、減速開始位置Ncの算出を説明するための目標車速Vと経過時間の関係の一例を示す図である。図6図7で説明したように、目標車速Vの積分(時間0〜tまでの台形部分の面積)が移動目標位置Nbになることを考慮すると、減速部分の傾きが目標減速度(−a)となる。したがって、減速開始時間trから減速度−aで減速して停止させようとすると、図8中のハッチングを付した部分の面積だけ進んで停止することになる。つまり、減速開始からの停止距離Dsは、以下の(式1)となる。
Ds=(V/2)*(t−tr)・・・・(式1)
また、速度の傾きが減速度になるので、以下の(式2)が成り立つ。
a=V/(tr−t)・・・(式2)
(式1)に(式2)を代入すると、
Ds=−V/2a・・・(式3)
となる。したがって、駐車目標位置Nに対する残りの距離がV/2a(式3)を満たすタイミングで減速を開始すれば、車両1は駐車目標位置Nで停止することになる。
【0045】
なお、駐車支援中に運転者が加速操作部5(アクセルペダル)を操作し、現在の車速が増加して車速Vpに変更される場合がある。この場合、減速開始位置Ncに到達していない場合、駐車支援(追従制御)は運転者の操作意志を優先させて一旦中断される。後述するが、この場合でも、車両1が運転者の操作により駐車目標位置Nに接近した場合、駐車支援(追従制御)が復帰される。つまり、駐車目標位置Nに対する残りの距離が(式3)を満たすタイミング(tp)で減速を開始すれば(修正減速開始位置Nc1)、車両1は駐車目標位置Nで停止することができる。この場合、減速が当初(アクセル操作が行われなかった場合)の減速開始時間trより早めに開始されるが、駐車支援を完了させることができる。逆に、駐車支援中に運転者が制動操作部6(ブレーキペダル)を操作し、現在の車速が減少して車速Vqに変更される場合も駐車支援が一旦中断される。その後復帰する場合、駐車目標位置Nに対する残りの距離が(式3)を満たすタイミング(tq)で減速を開始すれば(修正減速開始位置Nc2)、車両1は駐車目標位置Nで停止することになる。この場合、減速が当初の減速開始時間trより遅めに開始されることになるが、駐車支援を完了させることができる。
【0046】
制駆動力制御部50は、目標位置算出部44が算出した移動目標位置Nbに現在位置推定部46が推定する車両1の現在の位置が一致(追従)するように、駆動システム21およびブレーキシステム18を制御して、車両1の位置制御(速度制御)を行う。なお、このとき、CPU14aは、距離取得部40が算出した最適経路Tに沿って車両1が走行するように、操舵システム13を制御し、車両1(車輪3)の進行方向を制御する。
【0047】
ところで、車両1を最適経路Tに沿って走行させる場合、種々の原因によって、車両1の現在の位置(移動位置Nd)が移動目標位置Nbに対して遅れることがある。図9は、追従遅れが発生した場合の移動目標位置Nbと実際の車両1の移動位置Ndとの関係の一例を示す図である。例えば、路面が上り勾配であったり、路面に凹凸が存在していたりした場合、制駆動力制御部50が移動目標位置Nbにしたがい制御した出力では不足する場合がある。つまり、車両1の移動が遅れる(例えば、時間td)。また、運転者が制動操作部6(ブレーキペダル)を踏んだ場合にも、車両1の移動が遅れる。つまり、図9に示す領域Wの部分で追従遅れが発生する。追従判定部52は、このような追従遅れを挽回して移動目標位置Nbへの追従が可能か否かを判定することができる。
【0048】
追従判定部52は、追従可能か否かの判定を、車両1に搭載された各種センサの検出信号に基づき実施することができる。図9に示すような追従遅れが発生した場合、移動目標位置Nbに車両1を追従させるためには、車両1に対する指示駆動力を大きくすることが考えられる。つまり、追従判定部52は、アクセルセンサ20の検出信号に基づき現在の要求駆動力の大きさと、ブレーキセンサ18bの検出信号に基づき現在の制動力の有無に関する情報を取得し、駐車支援中の指示駆動が増加できるか否かを判定する。具体的には、車両1の現在の移動位置Ndと移動目標位置Nbとの乖離が所定の第1乖離値以上の場合(条件1)で、車両1の駆動力が駐車支援で許容される第1駆動力値に到達し(条件2)、かつ車両1に制動力が発生していない(条件3)、という3つの条件が満たされた場合に、車両1が移動目標位置Nbに追従走行不能と判定する。なお、第1乖離値や第1駆動力値は、予め試験等により決定することができる。
【0049】
つまり、条件1は、追従遅れが第1乖離値以上となり、駆動力の増加が必須であるか否かを判定する条件である。追従遅れが第1乖離値未満の場合、測定誤差等による遅れと見なすことができる。また、条件2は、加速操作部5(アクセルペダル)の操作により駐車支援中に許容される駆動力の増加が可能であるか否かを判定する条件である。加速操作部5の操作による駆動力が第1駆動力値未満の場合、加速操作部5の追加操作が可能であり、駆動力の増加により乖離を軽減することが可能になる。一方、駆動力が既に第1駆動力値に到達している場合、これ以上の駐車支援中に駆動力の増加が望めない。条件3は、制動操作部6(ブレーキペダル)の開放、つまり制動力の消失による駆動力の増加が可能か否かを判定する条件である。3つの条件が満たされた場合、追従判定部52は、現在の乖離が大きく、またこれ以上の駆動力の増加ができないと判定し、挽回不可能な追従遅れが発生していると判定する。一方、3つの条件が同時に満たされていない場合は、制駆動力制御部50による自動制御を継続する。例えば、乖離が小さい場合や追加のアクセル操作が可能な場合、ブレーキペダルの開放による減速の軽減、つまり加速が可能な場合、追従判定部52は、移動目標位置Nbへの追従が可能と判定する。なお、追従判定部52は、移動目標位置Nbと車両1の現在の移動位置Ndとの比較に基づき、実際に車両1が移動目標位置Nbに追従しているか否かの判定も行うことができる。
【0050】
モード切替部54は、追従判定部52による追従可能か否かの判定結果、および車両1の現在の移動位置Nd、走行操作状態等を参照して、走行状態の制御(追従制御)を中断するか否か、補正を加えて追従制御を継続するか、または中断していた追従制御を再開(復帰)させるか等を切り替える。なお、当初の目標車速Vに基づく追従制御のモードを「通常モード」と称し、目標車速Vや移動目標位置Nbに修正を加えて追従制御を継続するモードを「制限モード」と称する場合がある。したがって、モード切替部54は、「通常モード」と「制限モード」との切り替え、および追従制御を中断する「中断モード」の3モードの切り替えを行うことができる。
【0051】
具体的には、上述した条件1、条件2、条件3が同時に満たされて、追従走行不能と判定された場合でも、まだ減速開始位置算出部48の算出した減速開始位置Nc(図8参照)に到達していない場合がある。この場合、周辺情報取得部30により運転者の加速操作部5(アクセルペダル)や制動操作部6(ブレーキペダル)の操作(走行操作)を示す信号が検出された場合、モード切替部54は、移動目標位置Nbに基づく追従制御(駐車支援制御、位置制御、自動制御)を一旦中断する(中断モード)。つまり、駐車目標位置Nから遠い場合は、運転者の要求にしたがう走行を許容し運転者に違和感や不安感を与え難くする。また、追従走行不能と判定された場合でも、走行操作が検出されなかった場合は、モード切替部54は、車両1の移動目標位置Nbに対する追従状態に応じて修正された新たな目標車速Vにしたがい車両走行状態の制御を継続する(制限モード)。この場合、例えば、路面が上り勾配であったり、路面に凹凸が存在していたりすると推定できる。したがって、車両1の現在の車速を新たな目標車速Vとすることで、路面の状態を反映した追従制御(駐車支援制御、追従制御、自動走行)が継続できる。
【0052】
また、モード切替部54は、追従走行不能と判定されている状態で、条件1、条件2、条件3のいずれかが満たされなくなった場合、例えば、乖離値が減少した場合、車両1の駆動力が減少した場合、制動力が所定値以上発生した場合、追従走行可能と判定する。追従判定部52は、上述した条件1、条件2、条件3が満たされなくなったと判定する場合に、同じ閾値を用いた場合、その閾値の付近では、「追従走行不能」の判定と「追従走行可能」の判定が繰り返し行われてしまう場合がある。そこで、追従判定部52は、乖離が第1乖離値より所定量少ない第2乖離値になった場合、車両1の駆動力が第1駆動力値より所定量低い第2駆動力値になった場合、車両1の制動力が所定の制動力値以上になった場合、のうち少なくとも1つが満たされた場合に追従走行可能の判定に切り替える。つまり、一度、追従走行不能と判定した場合、追従走行可能と判定し直す条件を厳しくして、追従判定に基づく「通常モード」と「制限モード」の切り替わり(制御の切り替わり)が繰り返し頻繁に発生しないようにしている。つまり、頻繁な制御状態の切り替わりを抑制し、運転者等に違和感を与え難くしている。
【0053】
また、モード切替部54は、車両1の走行状態の制御(追従制御)を中断している場合(中断モード)に、車両1が駐車目標位置Nに対して所定の減速開始位置Ncに到達した場合、目標車速Vに基づく車両走行状態の制御を再開(復帰)する。つまり、駐車目標位置Nに近づいた場合には、利用者(運転者)の操作に拘わらず車両走行状態の制御(通常モードまたは制限モード)に復帰させて、車両1を駐車目標位置Nに確実に移動させる。なお、この場合でも、周辺情報取得部30を介して撮像部15、測距部16,17の検出結果に基づき、車両1の周囲に車両1と接触の可能性のある障害物が存在するとCPU14aが判定した場合には、車両1を停止するとともに、障害物の存在を表示装置8や音声出力装置9を用いて利用者に通知する。
【0054】
ところで、モード切替部54が追従制御を復帰させる場合、それまで運転者により加速操作部5(アクセルペダル)や制動操作部6(ブレーキペダル)の操作が行われていた結果、移動目標位置Nbに対して移動位置Ndが大きくずれている場合がある。この場合、追従制御の中断前の移動目標位置Nbに移動位置Ndを復帰させようとすると、過剰な加速や減速が行われて乗り心地を低下させてしまう場合がある。そこで、目標位置算出部44は、車両走行状態の制御を追従制御に復帰させる場合に、車両1の現在位置を制御復帰のときの移動目標位置Nbとすることができる。
【0055】
図10は、追従制御に復帰した際に移動目標位置Nbを車両1の現在位置を算出し直す例を説明する図である。上述したように、例えば、モード切替部54は、運転者による加速操作部5(アクセルペダル)もしくは制動操作部6(ブレーキペダル)の操作があると判定した場合、追従制御(位置制御)を中断する(中断モード、例えば、時間t1)。追従制御が中断された場合、復帰条件を満たすまでは追従制御の中断は継続される。追従制御の中断の間に、ブレーキ操作が解除された(復帰条件1)かつアクセル操作が解除された(復帰条件2)、または、車両1の現在の移動位置Ndが減速開始位置Ncに到達した(復帰条件3、図8参照)場合(例えば、時間t2)、追従判定部52は追従制御に復帰させる。この場合、図10に示すように、追従制御が中断されることなく継続されていた場合の移動目標位置Nb1(時間t2)から追従制御に復帰する際に車両1が実際に存在する現在の移動位置Nd1を基準に新たな移動目標位置Nbaを算出し直す。この場合、例えば、移動目標位置Nbの推移の傾きを新たな移動目標位置Nbaの推移の傾きとしてもよい。その結果、移動目標位置Nb1と車両1の移動位置Nd1が乖離した状態で、追従制御に復帰する場合でも急な加減速の発生を防止することができる。この場合、制限モードでの復帰となる。なお、移動目標位置Nbaを算出し直した結果、車両1が駐車目標位置Nに到着する時間は当初の移動目標位置Nbで予定していた時間より遅れることがある。なお、図9の場合は、追従遅れが発生して、「通常モード」から「制限モード」に切り替わっているが、「制限モード」で車両1が移動している間に、移動目標位置Nbと移動位置Ndの乖離が縮まり(解消され)、減速開始位置Ncに到達する前に「通常モード」に切り替わっている。したがって、図9の例の場合、駐車目標位置Nに到着する時間は、当初の移動目標位置Nbで予定していた時間と同じになる。
【0056】
なお、上述した各モジュールは、一例であり、CPU14a全体として、同様の機能が実現できればよい。例えば、複数のモジュールを統合してもよい。一例として、制駆動力制御部50、追従判定部52、モード切替部54を「制御部」として1つのモジュールで構成してもよい。逆に各モジュールを機能別にさらに細分化して複数のモジュールに分割してもよい。
【0057】
上述のように構成される駐車支援装置(駐車支援システム100)による支援処理の詳細を図11のフローチャートに基づいて説明する。
【0058】
駐車支援は、駐車場や駐車が許可された領域に車両1が進入し、運転者による駐車支援開始を要求するスイッチ(例えば操作部14g、駐車支援SW)操作が操作受付部34によって受け付けられた場合(S100のYes)、駐車支援制御が開始される。なお、操作受付部34により駐車支援開始を要求するスイッチの操作が受け付けられない場合(S100のNo)、このフローを一旦終了する。駐車支援開始の要求が操作受付部34によって受け付けられると、駐車目標位置決定部38は、周辺情報取得部30が取得した車両1の周囲の状況情報に基づいて駐車領域検出部36が検出した駐車領域に駐車目標位置Nを設定する(S102)。駐車目標位置Nが設定されると、距離取得部40は、車両1の現在の現在位置Naから駐車目標位置Nまでの最適経路Tを周知の経路設定手法を用いて設定するとともに、現在位置Naから駐車目標位置Nまでの移動距離Hを取得する(S104)。続いて、車速算出部42は、移動距離Hと、予め設定された最大車速および最大加減速度と、に基づいて、駐車目標位置Nに到達するまでの時間経過に伴った目標車速Vを算出する(S106)。
【0059】
さらに、目標位置算出部44は、車速算出部42が算出した目標車速Vを逐次積分することで、経過時間ごとの移動目標位置Nbを算出する(S108)。また、減速開始位置算出部48は、図8で説明したように、車両1が駐車目標位置Nに停止するために減速を開始する減速開始位置Ncを算出する(S110)。現在位置推定部46は、センサ値取得部32が取得するGPSからの位置情報を用いて車両1の駐車支援中の各時間における移動位置Nd(実際の位置)を推定する(S112)。車速算出部42は、周辺情報取得部30が取得した車輪速センサ22の検出値に基づき現在の車両1の車速を推定する(S114)。なお、駐車支援が開始される前、例えば、車両1が停止している場合は、現在位置として停止位置が推定され、現在車速として車速「0」が推定される。
【0060】
続いて、追従判定部52は、追従判定を行う(S116)。すなわち、追従判定部52は前述したように、車両1の現在の移動位置Ndと移動目標位置Nbとの乖離が所定の第1乖離値以上の場合(条件1)で、車両1の駆動力が駐車支援で許容される第1駆動力値に到達し(条件2)、かつ車両1に制動力が発生していない(条件3)、という3つの条件が満たされた場合に、車両1が移動目標位置Nbに追従走行不能と判定する(S116のNo)。逆に3つの条件が満たされない場合には、追従可能と判定する(S116のYes)。追従可能と判定された場合、制駆動力制御部50は、車両1を移動目標位置Nbに移動できるように、ブレーキシステム18や駆動システム21を制御して位置制御(追従制御、通常モード)を実行する(S118)。位置制御が実行されると、図6図8で説明したように、目標車速Vを実現するために、例えば、加速制御、定速制御を実行し、減速開始位置Ncに到達した場合には、減速制御を実行する。そして、駐車目標位置Nに到達した場合には(S120のYes)、駐車支援が完了したと判定しこのフローを終了する。一方、駐車目標位置Nに到達していない場合(S120のNo)、S112に戻り、現在の車両1の移動位置Ndの推定を行い、以降の処理を繰り返すことにより、車両1を駐車目標位置Nの位置まで自動的に移動させる。なお、このフローにおいて、S116の初回の処理は、移動目標位置Nbと移動位置Ndの乖離は存在しないと見なせるので、追従可能と判定される。
【0061】
このように、本実施形態の駐車支援装置によれば、例えば、車両1の目標車速Vを乗り心地がよいと感じる(不快を感じ難い)滑らかな加速、減速となるように算出し、その目標車速Vに基づいて移動目標位置Nbを算出するので過剰な加減速を回避してスムーズに駐車目標位置Nまで車両1を移動させることができる。
【0062】
S116において、追従判定部52が、条件1から条件3が満たされて追従走行不能と判定した場合(S116のNo)、つまり、追従遅れが発生していると判定した場合、追従判定部52は、車両1の現在の移動位置Ndが減速開始位置算出部48の算出している減速開始位置Ncに到達したか否か判定し、減速開始位置Ncに車両1が到達している場合(S122のYes)、S118に移行し位置制御を継続する。すなわち、追従遅れが発生している場合でも駐車目標位置Nから所定距離の位置まで接近している場合、減速の必要があるため、追従制御を継続し車両1を駐車目標位置Nに移動させて、駐車支援を完了させる。この場合、追従遅れにより減速開始が遅れるため、駐車支援完了は追従遅れがない場合に比べて遅れるが、駐車支援は完結する。
【0063】
一方、車両1が減速開始位置Ncに到達していない場合(S122のNo)、モード切替部54は、センサ値取得部32の取得している各種センサの検出結果を参照し、現在走行操作が行われているか否か判定する(S124)。走行操作がある場合(S124のYes)、例えば、加速操作部5(アクセルペダル)の操作や制動操作部6(ブレーキペダル)の操作がある場合、運転者が何らかの理由により自動走行を解除して自ら走行操作を行いたいと望んだと推定され、モード切替部54は、位置制御(追従制御)を一旦OFFする(S126)。つまり、「中断モード」に切り替える。この場合、制御OFFとなるのは、制駆動力制御であり、CPU14aは、距離取得部40が算出した最適経路Tに沿って車両1が移動できるように、操舵システム13の制御を継続するようにしてもよい。
【0064】
モード切替部54が位置制御をOFFした場合でも、復帰条件が満たされれば、位置制御が復帰される場合がある。そのため、現在位置推定部46は、センサ値取得部32が取得するGPSからの位置情報等に基づき制御OFF(中断)時の車両1の現在の移動位置Ndの推定を継続的に行う(S128)。同様に、車速算出部42は、センサ値取得部32が取得する車輪速センサ22からの検出情報に基づき制御OFF時の車両1の現在の車速の推定を継続的に行う(S130)。さらに、駐車目標位置決定部38は、車両1の現在の車速と駐車目標位置Nまでの残余距離等に基づき、位置制御が復帰した場合に利用する修正移動目標位置を算出する(S132)。また、減速開始位置算出部48は、図8に示すように仮に車速Vpで走行した場合の修正減速開始位置Nc1または車速Vqで走行した場合の修正減速開始位置Nc2を算出する(S134)。なお、図11に示すフローチャートでは、S128からS134の処理を他の処理と同一のフローで示しているが、サブルーチンとして、常時修正目標位置や修正減速開始位置を算出するようにしてもよい。
【0065】
S126で位置制御がOFFされた後、復帰条件が満たされた場合、例えば、ブレーキ操作が解除された(復帰条件1)かつアクセル操作が解除された(復帰条件2)場合、位置制御の復帰条件が満たされたと判定し(S136のYes)、S118に移行して位置制御を実行する。なお、この場合、図10で説明したように、車両1が実際に存在する現在の移動位置Nd1を基準にS132で算出した新たな移動目標位置Nbaを用いる。つまり、「制限モード」で位置制御(追従制御)を復帰させる。その結果、移動目標位置Nb1と車両1の移動位置Nd1が乖離した状態で、追従制御に復帰することが可能になるとともに、その復帰のときに急な加減速が発生しないようにすることができる。つまり、追従制御を再開した場合でも乗り心地がよい制御を実現することができる。なお、この場合、移動目標位置Nbaを算出し直した結果、車両1が駐車目標位置Nに到着する時間は当初の移動目標位置Nbで予定していた時間より遅れる。
【0066】
また、S136で復帰条件1,2(アクセルOFF、ブレーキOFF)が満たされていないと判定された場合(S136のNo)、S120の処理に移行する。この場合、もし、運転者の操作のまま駐車目標位置Nに到達した場合は、一連の駐車支援処理を終了する。また、駐車目標位置Nに到達していない場合、S112に移行する。この場合、運転者の操作が継続されているので、S116の判定は追従不可となり、S122に移行する。この時点で、S134で算出した修正減速開始位置に到達していれば(S136のYes)、S118に移行して制限モードでの追従制御が再開される。また、S134で算出した修正減速開始位置に到達していない場合は(S136のNo)、位置制御のOFFが継続され(S126)、それ以降の処理が実行される。したがって、図11のフローチャートでは、復帰条件3が満たされているか否かがS122で判定される。別の実施形態では、復帰条件3が満たされたか否かの判定をS136の処理で行うようにしてもよい。
【0067】
S124で、運転者による走行操作がない場合(S124のNo)、つまり、移動目標位置Nbに対する乖離の原因が運転者の操作(アクセル操作やブレーキ操作)ではない場合、路面の状態が乖離の原因であると推定できる。例えば、路面が上り斜面の場合、制駆動力制御部50が指示した駆動力では不足して、目標位置算出部44が算出した目標車速Vに対して実際の車両1の車速が遅くなる。路面に凹凸があり、それを乗り越える必要がある場合も同様である。この場合、車両1の移動目標位置Nbに対する追従状態に応じて目標速度に修正し(S138)、S108に移行して移動目標位置Nbを算出し直して、車両1の追従走行制御を継続する。この場合、モード切替部54は、「制限モード」で追従制御を実行するように制御モードを切り替えることになる。この場合、過剰な加減速を伴うことなく、移動目標位置Nbに対する追従を継続することができる。
【0068】
なお、図11に示すフローチャートのS138では、現在の車速を新たな目標車速Vとする例を示したが、現在の車速に限らず、予め設定された車速に修正するようにしても同様に効果を得ることができる。
【0069】
このように、本実施形態の駐車支援システム100によれば、車両1の目標速度を乗り心地がよいと感じる(不快を感じ難い)滑らかな加速、減速となるように算出し、その目標速度に基づいて移動目標位置Nbを算出するので過剰な加減速を回避してスムーズに駐車目標位置Nまで車両1を移動させることができる。
【0070】
また、本実施形態の駐車支援システム100によれば、移動目標位置Nbに追従できていない場合に、その要因を環境変化(路面の状態等)によるものか運転者の操作(意志)によるものかで切り分け、移動目標位置Nbや目標車速Vを修正した「制限モード」や修正を加えない「通常モード」で対応するのか、運転者の操作(アクセル操作、ブレーキ操作)もしくはクリープ出力値をそのまま出力する「中断モード」で対応するのかを切り替えることでより運転者の意図に沿った制御を実現することができる。
【0071】
本実施形態のCPU14aで実行される駐車支援プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0072】
さらに、駐車支援プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態で実行される駐車支援プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0073】
本実施形態において、駐車支援中の動作状態を報知してもよい。この場合、表示装置8や表示装置12に動作状態を表示してもよいし、音声出力装置9を用いて同様な内容の報知を音声により実施してもよい。駐車支援中の動作状態を報知することにより、自動で車両1が走行される場合、その状況を運転者に把握させやすく、安心感がより向上された駐車支援を提供することができる。
【0074】
本発明の実施形態及び変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1…車両、13…操舵システム、14…ECU、14a…CPU、15…撮像部、16,17…測距部、18…ブレーキシステム、18b…ブレーキセンサ、20…アクセルセンサ、21…駆動システム、22…車輪速センサ、30…周辺情報取得部、32…センサ値取得部、34…操作受付部、36…駐車領域検出部、38…駐車目標位置決定部、40…距離取得部、42…車速算出部、44…目標位置算出部、46…現在位置推定部、48…減速開始位置算出部、50…制駆動力制御部、52…追従判定部、54…モード切替部、100…駐車支援システム、G…基準位置、H…移動距離、N…駐車目標位置、Na…現在位置、Nb…移動目標位置、Nba…移動目標位置、Nc…減速開始位置、Nd…移動位置、V…目標車速。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11