(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、ターボチャージャを具体化した一実施形態を
図1〜
図10にしたがって説明する。
図1に示すように、ターボチャージャ10のハウジング11は、ベアリングハウジング20、タービンハウジング30、及びコンプレッサハウジング40を有している。コンプレッサハウジング40の内部には、内燃機関Eに供給される吸気が吸入される。タービンハウジング30の内部には、内燃機関Eから排出された排ガスが流れる。
【0020】
ベアリングハウジング20は、インペラシャフト12を回転可能に支持する。インペラシャフト12の回転軸線方向の一端には、コンプレッサインペラ13が連結されている。インペラシャフト12の回転軸線方向の他端には、タービンインペラ14が連結されている。
【0021】
コンプレッサハウジング40とベアリングハウジング20におけるインペラシャフト12の回転軸線方向の一端との間には、シールプレート50が介在されている。コンプレッサハウジング40は、シールプレート50を介してベアリングハウジング20におけるインペラシャフト12の回転軸線方向の一端に連結されている。タービンハウジング30は、ベアリングハウジング20におけるインペラシャフト12の回転軸線方向の他端に連結されている。
【0022】
ベアリングハウジング20は、インペラシャフト12が挿通される挿通孔21hが形成された筒状の本体部21を有している。本体部21は、挿通孔21hに挿通されたインペラシャフト12を、ラジアル軸受15を介して回転可能に支持している。本体部21の軸線方向は、インペラシャフト12の回転軸線方向に一致する。
【0023】
本体部21は、本体部21におけるインペラシャフト12の回転軸線方向に位置する一端面21bに凹設される円孔状の凹部21cを有している。挿通孔21hは、凹部21cの底面に開口している。凹部21cの孔径は、挿通孔21hの孔径よりも大きい。凹部21cの軸心は、挿通孔21hの軸心に一致している。凹部21c内には、スラスト軸受16が収容されている。スラスト軸受16は、凹部21cの底面に接した状態で凹部21c内に収容されている。
【0024】
ベアリングハウジング20は、本体部21の外周面における本体部21の軸線方向の一端部からインペラシャフト12の径方向外側に突出する第1フランジ部22と、本体部21の外周面における本体部21の軸線方向の他端部からインペラシャフト12の径方向外側に突出する第2フランジ部23と、を有している。第1フランジ部22及び第2フランジ部23は、円環状である。
【0025】
タービンハウジング30は、螺子17によって第2フランジ部23に取り付けられている。タービンハウジング30は、タービン筒状部32を有している。タービン筒状部32内には、吐出口32aが形成されている。吐出口32aは、インペラシャフト12の回転軸線方向に延びている。吐出口32aの軸心は、インペラシャフト12の回転軸線に一致している。
【0026】
タービンハウジング30内には、タービン室33、連通路34、及びタービンスクロール流路35が形成されている。タービンインペラ14は、タービン室33に収容されている。タービンスクロール流路35は、タービン室33の外周を渦巻状に周回している。よって、タービンスクロール流路35は、タービン室33の周囲を取り囲む。タービンスクロール流路35には、内燃機関Eから排出された排ガスが流入する。連通路34は、タービン室33の周囲で環状に延びるとともに、タービンスクロール流路35とタービン室33とを連通する。タービン室33は、吐出口32aに連通している。吐出口32aは、タービン室33を通過した排ガスが導かれる。
【0027】
タービンインペラ14は、挿通孔21hに向けて突出する嵌合凸部14fを有している。インペラシャフト12における回転軸線方向の他端面には、嵌合凸部14fが嵌合可能な嵌合凹部12fが形成されている。そして、タービンインペラ14は、嵌合凸部14fがインペラシャフト12の嵌合凹部12fに嵌合された状態で、インペラシャフト12と一体的に回転可能となるように、溶接などによりインペラシャフト12に取り付けられている。タービンインペラ14は、タービン室33に導入された排ガスによって回転し、このタービンインペラ14の回転に伴ってインペラシャフト12が一体的に回転する。
【0028】
シールプレート50は、インペラシャフト12が挿通される挿通孔51を有している。シールプレート50におけるコンプレッサハウジング40とは反対側の面における挿通孔51の周囲には、円筒状の挿入筒部52が突出している。挿入筒部52は、凹部21cに挿入されている。スラスト軸受16は、インペラシャフト12の回転軸線方向において挿入筒部52と凹部21cの底面との間であって、且つ挿入筒部52よりもインペラシャフト12の径方向内側に位置している。
【0029】
コンプレッサハウジング40は、有底筒状である。コンプレッサハウジング40は、第1フランジ部22及びシールプレート50を貫挿した螺子19がねじ込まれることで、コンプレッサハウジング40における開口側の端部とベアリングハウジング20との間にシールプレート50が介在された状態で、ベアリングハウジング20におけるインペラシャフト12の回転軸線方向の一端に連結されている。コンプレッサハウジング40の開口は、シールプレート50によって閉塞されている。
【0030】
図2に示すように、コンプレッサハウジング40は、コンプレッサハウジング40の開口側とは反対側に突出する円筒状のコンプレッサ筒状部42を有している。また、コンプレッサハウジング40は、コンプレッサ筒状部42の内側に位置する円筒状のシュラウド部43を有している。コンプレッサ筒状部42の軸心とシュラウド部43の軸心とは一致しており、コンプレッサ筒状部42の軸心及びシュラウド部43の軸心は、インペラシャフト12の回転軸線に一致している。コンプレッサハウジング40は、アルミダイカスト成型で製造されている。
【0031】
コンプレッサ筒状部42は、小径部42aと、小径部42aよりも孔径が大きい大径部42bと、を有している。小径部42aは、大径部42bよりもシールプレート50側に位置している。
【0032】
コンプレッサ筒状部42とシュラウド部43とは円環状に延びるディフューザ壁44によって連結されている。ディフューザ壁44は、コンプレッサ筒状部42の小径部42aの内周面におけるシールプレート50側の周端部とシュラウド部43の外周面におけるシールプレート50側の周端部とを繋いでいる。ディフューザ壁44は、インペラシャフト12の径方向に延びている。シュラウド部43におけるディフューザ壁44からの突出長さは、コンプレッサ筒状部42におけるディフューザ壁44からの突出長さよりも短い。小径部42aは、シュラウド部43におけるディフューザ壁44からの突出先端面43fよりもディフューザ壁44とは反対側へ突出する位置まで延びている。
【0033】
ターボチャージャ10は、コンプレッサインペラ室45、ディフューザ流路46、及びコンプレッサスクロール流路47を有している。コンプレッサインペラ室45は、コンプレッサインペラ13を収容する。コンプレッサスクロール流路47は、コンプレッサインペラ室45の外周を渦巻状に周回している。ディフューザ流路46は、コンプレッサインペラ13の周囲で環状に延びるとともに、コンプレッサインペラ室45とコンプレッサスクロール流路47とを連通する。
【0034】
コンプレッサインペラ室45は、シュラウド部43の内周面と、シールプレート50におけるコンプレッサハウジング40側の面の挿通孔51の周囲とで囲まれた空間である。したがって、コンプレッサインペラ13は、シュラウド部43の内側に配置されている。よって、コンプレッサインペラ13は、コンプレッサハウジング40内に収容されるとともにコンプレッサインペラ室45に吸入された吸気を圧縮する。シュラウド部43の内周面は、コンプレッサインペラ13に対向するシュラウド面43aを有している。
【0035】
シールプレート50におけるコンプレッサハウジング40側の面の一部は、ディフューザ壁44に対してインペラシャフト12の回転軸線方向で対向する対向面53になっている。対向面53は、ディフューザ壁44に沿って延びる円環状である。そして、ディフューザ流路46は、インペラシャフト12の回転軸線方向において、ディフューザ壁44と対向面53との間に形成されている。よって、ディフューザ壁44における対向面53と対向する面は、コンプレッサハウジング40の一部であるとともにディフューザ流路46に面した壁面であるディフューザ面44aである。ディフューザ面44aにおけるコンプレッサインペラ室45側の縁部は、シュラウド面43aに連続している。ディフューザ流路46は、コンプレッサインペラ13によって圧縮された吸気が通過する。
【0036】
コンプレッサスクロール流路47は、コンプレッサハウジング40の内底面、及びシールプレート50におけるコンプレッサハウジング40側の面によって形成されている。コンプレッサスクロール流路47には、ディフューザ流路46を通過した吸気が吐出される。コンプレッサスクロール流路47に吐出された吸気は、内燃機関Eに供給される。
【0037】
図1に示すように、コンプレッサインペラ13は、インペラシャフト12の回転軸線方向に延び、且つ、インペラシャフト12が挿通可能なシャフト挿通孔13hを有している。インペラシャフト12の回転軸線方向の一端部は、コンプレッサインペラ室45に突出している。そして、コンプレッサインペラ13は、インペラシャフト12におけるコンプレッサインペラ室45に突出している部分がシャフト挿通孔13hに挿通された状態で、インペラシャフト12と一体的に回転可能となるように、ナット12aなどを介してインペラシャフト12に取り付けられている。コンプレッサインペラ13におけるベアリングハウジング20側の端部は、シールリングカラー48及びスラストカラー49を介してスラスト軸受16により支持されている。スラスト軸受16は、コンプレッサインペラ13に作用するスラスト方向の荷重を受ける。
【0038】
図2に示すように、コンプレッサ筒状部42の小径部42aの内周面とシュラウド部43の外周面とは、ディフューザ壁44がインペラシャフト12の径方向に延びている分だけ離れている。そして、コンプレッサ筒状部42の小径部42aの内周面、シュラウド部43の外周面、及びディフューザ壁44におけるディフューザ面44aとは反対側の面によって、環状の挿入凹部40aが形成されている。よって、コンプレッサハウジング40は、挿入凹部40aを有している。
【0039】
図3に示すように、ディフューザ壁44におけるディフューザ面44aとは反対側の面は、挿入凹部40aの底面40bを形成している。シュラウド部43の外周面は、挿入凹部40aの内側内面40cを形成している。コンプレッサ筒状部42の小径部42aの内周面の一部は、挿入凹部40aの外側内面40dを形成している。
【0040】
図2に示すように、ターボチャージャ10は、冷却用流路60及び還流流路70を有している。冷却用流路60には、ディフューザ面44aを冷却する流体が流れる。コンプレッサハウジング40には、コンプレッサハウジング40と協働して還流流路70を形成する流路形成部材80が取り付けられている。流路形成部材80は、リング部材81及びカバー部材82を含む。
【0041】
リング部材81は、還流流路70の還流吸入口71、及び還流吸入口71と還流流路70の還流排出口72とを繋ぐ連通流路73の双方をコンプレッサハウジング40と協働して形成する。リング部材81は、円環状である。
【0042】
カバー部材82は、コンプレッサハウジング40に取り付けられるとともに還流排出口72をリング部材81と協働して形成する。カバー部材82は、円筒状である。カバー部材82は、アルミダイカスト成型で製造されている。カバー部材82は、コンプレッサ筒状部42の内側に挿入されている。カバー部材82は、カバー本体部83及び挿入部84を有している。カバー本体部83は、円筒状であるとともに内側に吸気口83aを形成している。吸気口83aは、インペラシャフト12の回転軸線方向に延びている。吸気口83aの軸心は、インペラシャフト12の回転軸線に一致している。
【0043】
吸気口83aは、コンプレッサ筒状部42の内側に挿入されているカバー部材82に形成されているため、コンプレッサ筒状部42の内側に形成されているとも言える。よって、吸気口83aは、コンプレッサハウジング40内におけるコンプレッサインペラ13よりも吸気の流れ方向の上流側に位置していると言える。
【0044】
挿入部84は円筒状であるとともに挿入凹部40aに挿入されている。したがって、挿入凹部40aには、流路形成部材80の一部である挿入部84が挿入される。挿入部84の孔径は、カバー本体部83の孔径よりも大きい。よって、カバー部材82において、カバー本体部83の内周面と挿入部84の内周面との間には円環状の段差部82aが形成されている。段差部82aは、シュラウド部43の突出先端面43fに当接している。
【0045】
図3に示すように、冷却用流路60は、挿入凹部40aに挿入部84が挿入されることにより形成されている。挿入部84は、挿入凹部40aの底面40bから離間するとともに挿入凹部40aの内側内面40cからディフューザ面44aに沿って延びる環状の第1延在面84aを有している。また、挿入部84は、第1延在面84aの外周縁に対して直交し、且つディフューザ面44aから離間する方向に延びる筒状の第2延在面84bを有している。さらに、挿入部84は、第2延在面84bにおける第1延在面84aとは反対側の端縁に連続し、且つ挿入凹部40aの外側内面40dに向かって延びる第3延在面84cを有している。
【0046】
冷却用流路60は、第1延在面84a、第2延在面84b、第3延在面84c、及び挿入凹部40aによって区画されている。冷却用流路60は、環状に延びている。本実施形態において、冷却用流路60における挿入凹部40aの底面40bに沿って延びる部分の長さL1は、冷却用流路60における挿入凹部40aの外側内面40dに沿って延びる部分の長さL2よりも短い。
【0047】
図2に示すように、カバー本体部83の外周面には、環状の装着凹部83bが形成されている。装着凹部83bには、ゴム製である環状のシール部材83sが装着されている。シール部材83sは、装着凹部83b、及びコンプレッサ筒状部42の大径部42bの内周面に密着し、カバー本体部83の外周面とコンプレッサ筒状部42の大径部42bの内周面との間をシールしている。これにより、カバー本体部83の外周面とコンプレッサ筒状部42の大径部42bの内周面との間を介した冷却用流路60からの流体の洩れが抑制されている。
【0048】
挿入部84の内周面には、環状の装着凹部84fが形成されている。装着凹部84fには、ゴム製である環状のシール部材84sが装着されている。シール部材84sは、装着凹部84f、及びシュラウド部43の外周面に密着し、挿入部84の内周面とシュラウド部43の外周面との間をシールしている。これにより、挿入部84の内周面とシュラウド部43の外周面との間を介した冷却用流路60からの流体の洩れが抑制されている。
【0049】
図4に示すように、コンプレッサ筒状部42には、冷却用流路60に流体を供給する供給口61と、冷却用流路60を流れた流体を冷却用流路60から排出する排出口62と、が形成されている。よって、コンプレッサハウジング40は、供給口61及び排出口62を有している。供給口61及び排出口62は、コンプレッサ筒状部42の小径部42aの内周面におけるシュラウド部43の突出先端面43fよりもディフューザ壁44とは反対側の部位に開口している。供給口61及び排出口62は、コンプレッサ筒状部42の小径部42aの内周面において、コンプレッサ筒状部42の周方向で隣り合う位置に開口している。
【0050】
コンプレッサ筒状部42の小径部42aの内周面には、位置決め用溝部42fが形成されている。位置決め用溝部42fは、コンプレッサ筒状部42の周方向において、小径部42aの内周面における供給口61と排出口62との間に形成されている。位置決め用溝部42fは、コンプレッサ筒状部42の軸心方向に延びている。コンプレッサ筒状部42の軸心方向において、位置決め用溝部42fにおけるコンプレッサ筒状部42の大径部42b側の端部は、小径部42aと大径部42bとの間の段差部42cに連続している。
【0051】
図5に示すように、カバー部材82の外周面には、供給口61に連通する供給溝63、及び排出口62に連通する排出溝64が形成されている。供給溝63及び排出溝64は、カバー部材82の軸心方向に延びている。供給溝63の一端部の底面は、供給口61に対してカバー部材82の径方向で重なっている。供給溝63の他端部の底面は、挿入部84の第2延在面84bに連続している。排出溝64の一端部の底面は、排出口62に対してカバー部材82の径方向で重なっている。排出溝64の他端部の底面は、挿入部84の第2延在面84bに連続している。
【0052】
カバー部材82の外周面には、供給溝63と排出溝64とを隔てる隔壁65が形成されている。隔壁65は、カバー部材82の周方向において、供給溝63と排出溝64との間に位置している。隔壁65における挿入部84の第1延在面84a側の先端部65eは、第1延在面84aよりも突出している。隔壁65の先端部65eは、挿入部84が挿入凹部40aに挿入された状態において、挿入凹部40aの底面40bに当接している。また、隔壁65の外面は、コンプレッサ筒状部42の小径部42aの内周面に沿って延びている。隔壁65の外面には、隔壁65の外面とコンプレッサ筒状部42の小径部42aの内周面との間をシールするシール部材65sが設けられている。冷却用流路60は、供給溝63から挿入部84の周方向における隔壁65とは反対側に延びて排出溝64に連通している。
【0053】
隔壁65の先端部65eが挿入凹部40aの底面40bに当接し、シール部材65sにより隔壁65の外面と小径部42aの内周面との間がシールされているため、供給口61から供給溝63を介して冷却用流路60に供給された流体が、挿入部84の周方向における隔壁65側へ流れて排出溝64に至ることが抑制されている。そして、供給口61から供給溝63を介して冷却用流路60に供給された流体は、挿入部84の周方向における隔壁65とは反対側へ流れて排出溝64を介して排出口62から排出される。
【0054】
隔壁65の外面には、位置決め用溝部42fに係合する係合凸部65fが形成されている。係合凸部65fは、隔壁65の外面から膨出している。カバー部材82は、係合凸部65fが位置決め用溝部42fに係合するようにコンプレッサ筒状部42の内側に挿入されている。係合凸部65fが位置決め用溝部42fに係合されていることにより、カバー部材82における挿入凹部40aに対する周方向への位置決めが行われている。よって、カバー部材82は、挿入凹部40aに対する周方向への位置決めを行う位置決め部として機能する係合凸部65fを有している。
【0055】
図6及び
図7に示すように、シュラウド部43の内周面には、リング部材81を収容する円孔状の収容凹部90が形成されている。よって、コンプレッサハウジング40は、リング部材81を収容する収容凹部90を有している。収容凹部90は、円孔状である。収容凹部90の軸心は、シュラウド部43の軸心と一致している。収容凹部90の孔径は、シュラウド面43aにおけるディフューザ面44aとは反対側の縁部の孔径よりも大きい。収容凹部90の底面90aは、インペラシャフト12の径方向に延びている。
【0056】
図2に示すように、収容凹部90の底面90aは、リング部材81が当接する当接面91と、当接面91よりもリング部材81から離間した位置にあり、リング部材81と協働して還流吸入口71を形成する吸入口形成面92と、を有している。
【0057】
図6に示すように、当接面91は、収容凹部90の周方向に間隔を置いて3つ配置されている。本実施形態において、3つの当接面91は、収容凹部90の周方向に120度置きに配置されている。収容凹部90の軸心方向から収容凹部90を見たときに、吸入口形成面92は、収容凹部90の周方向において各当接面91を挟んだ両側それぞれに存在している。よって、本実施形態において、吸入口形成面92は、収容凹部90の周方向に3つ存在する。したがって、還流吸入口71は、リング部材81と各吸入口形成面92とが協働して、収容凹部90の周方向に3つ形成されている。
【0058】
収容凹部90の内周面90bには、リング部材81が圧入される圧入部93が3つ形成されている。各圧入部93は、収容凹部90の内周面90bからそれぞれ突出するとともに各当接面91と連続している。よって、3つの圧入部93は、収容凹部90の周方向に間隔を置いて3つ配置されており、本実施形態において、収容凹部90の周方向に120度置きに配置されている。各圧入部93におけるリング部材81の外周面81aと接触する接触面(圧入面)は、収容凹部90の軸心を中心とする仮想円を通過する円弧状である。
【0059】
図8に示すように、収容凹部90の軸心方向から収容凹部90を見たときに、各圧入部93及び当接面91は、収容凹部90の径方向内側に向かうにつれて先細りになっている。したがって、収容凹部90の軸心方向から収容凹部90を見たときに、各圧入部93及び当接面91が収容凹部90の径方向内側に向かって同じ幅で延びている場合に比べると、各吸入口形成面92における収容凹部90の径方向内側の周縁部の長さR1が長くなっている。したがって、リング部材81と各吸入口形成面92とが協働して形成される各還流吸入口71は、収容凹部90の径方向内側に位置する各還流吸入口71の入口の流路断面積が、各圧入部93及び当接面91が、収容凹部90の径方向内側に向かって同じ幅で延びている場合に比べて大きくなっている。
【0060】
図2に示すように、リング部材81が各圧入部93に圧入されて各当接面91に当接している状態において、リング部材81における各当接面91とは反対側の面は、シュラウド部43の突出先端面43fとインペラシャフト12の径方向で同一面上に位置している。そして、連通流路73は、収容凹部90の内周面90bとリング部材81の外周面81aとの間に形成されている。
図6に示すように、連通流路73は、収容凹部90の周方向において各圧入部93を挟んだ両側それぞれに存在している。よって、本実施形態において、連通流路73は、収容凹部90の周方向に3つ形成されている。
【0061】
図2に示すように、カバー部材82には、リング部材81と当接して収容凹部90からのリング部材81の抜けを防止する抜け防止部85と、抜け防止部85よりもリング部材81から離間した位置にあり、リング部材81と協働して還流排出口72を形成する排出口形成面86と、が形成されている。抜け防止部85及び排出口形成面86は、カバー本体部83の内周面と挿入部84の内周面との間の段差部82aに形成されている。
【0062】
図9に示すように、抜け防止部85におけるリング部材81と当接する端面85aは、段差部82aにおけるシュラウド部43の突出先端面43fと当接する端面82bと連続している。抜け防止部85は、カバー部材82の周方向に間隔を置いて3つ配置されている。つまり、カバー部材82には、抜け防止部85がリング部材81の周方向に間隔を置いて複数形成されている。本実施形態において、3つの抜け防止部85は、カバー部材82の周方向に120度置きに配置されている。
【0063】
カバー部材82を軸心方向から見たときに、排出口形成面86は、カバー部材82の周方向において各抜け防止部85を挟んだ両側それぞれに存在している。よって、本実施形態において、排出口形成面86は、カバー部材82の周方向に3つ存在する。したがって、還流排出口72は、各排出口形成面86とリング部材81とが協働して、カバー部材82の周方向に3つ形成されている。つまり、還流排出口72は、リング部材81の周方向において各抜け防止部85を挟んだ両側それぞれに存在している。
【0064】
図10に示すように、各抜け防止部85におけるリング部材81の周方向に位置する壁面85bは、各還流排出口72に面している。カバー部材82を軸心方向から見たときに、各抜け防止部85は、カバー部材82の径方向内側に向かうにつれて先細りになっている。各抜け防止部85の両壁面85bは、リング部材81の周方向において各抜け防止部85を挟んだ両側それぞれに存在する排出口形成面86と段差部82aの端面82bとをそれぞれ繋ぐ内周面82cと連続している。各抜け防止部85の両壁面85bは、各内周面82cからカバー部材82の径方向内側に向かうにつれて互いに徐々に近づくように弧状に湾曲している。
【0065】
図2に示すように、カバー部材82は、各抜け防止部85が、各圧入部93及び各当接面91それぞれとインペラシャフト12の回転軸線方向で重なる位置になるように、コンプレッサ筒状部42の内側に挿入される。これにより、各還流吸入口71、各連通流路73、及び各還流排出口72それぞれは連通した状態となる。
【0066】
各還流吸入口71は、コンプレッサインペラ室45に連通しており、各還流排出口72は吸気口83aに連通している。還流流路70は、コンプレッサハウジング40に吸入されてコンプレッサインペラ13の回転によりコンプレッサインペラ室45内に吸入された吸気の一部を、コンプレッサハウジング40内におけるコンプレッサインペラ13よりも吸気の流れ方向の上流側である吸気口83aへ還流させる。
【0067】
リング部材81が圧入部93に圧入されると同時に、リング部材81と吸入口形成面92とが協働して還流吸入口71が形成されるとともに、収容凹部90の内周面90bとリング部材81の外周面81aとの間に連通流路73が形成される。そして、カバー部材82を、コンプレッサ筒状部42の内側に挿入し、コンプレッサ筒状部42の先端部の一部をカバー部材82に向けて変形させてなるかしめ部41を、カバー部材82の外周面にかしめることにより、カバー部材82をコンプレッサハウジング40に取り付ける。カバー部材82がコンプレッサハウジング40に取り付けられると同時に、排出口形成面86とリング部材81とが協働して還流排出口72が形成されるとともに、抜け防止部85がリング部材81に当接してリング部材81における収容凹部90からの抜けが防止される。
【0068】
次に、本実施形態の作用について説明する。
内燃機関Eから排出された排ガスは、タービンスクロール流路35に供給され、連通路34を介してタービン室33に導かれる。タービン室33に排ガスが導入されると、タービンインペラ14は、タービン室33に導入された排ガスによって回転する。そして、タービンインペラ14に回転に伴って、コンプレッサインペラ13がインペラシャフト12を介してタービンインペラ14と一体的に回転する。コンプレッサインペラ13が回転すると、吸気口83aを介してコンプレッサインペラ室45に導入された吸気が、コンプレッサインペラ13の回転によって圧縮されるとともに、ディフューザ流路46を通過する際に減速され、吸気の速度エネルギーが圧力エネルギーに変換される。そして、高圧となった吸気がコンプレッサスクロール流路47に吐出され、内燃機関Eに供給される。このようなターボチャージャ10による内燃機関Eへの吸気の過給が行われることで、内燃機関Eの吸気効率が高まり、内燃機関Eの性能が向上する。
【0069】
コンプレッサハウジング40において、ディフューザ流路46に面したディフューザ面44aは、コンプレッサインペラ13の回転によって圧縮された吸気がディフューザ流路46を通過することにより温度が上昇する。このとき、冷却用流路60を流れる流体によってディフューザ壁44が冷却されているため、ディフューザ面44aが高温となることが抑制されている。
【0070】
また、還流流路70によって、コンプレッサハウジング40に吸入されてコンプレッサインペラ13の回転によりコンプレッサインペラ室45内に吸入された吸気の一部が、コンプレッサハウジング40内におけるコンプレッサインペラ13よりも吸気の流れ方向の上流側である吸気口83aへ還流される。よって、コンプレッサハウジング40に吸入される吸気の流量が減少しても、サージングが発生し難くなる。
【0071】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)コンプレッサハウジング40に取り付けられる流路形成部材80は、コンプレッサハウジング40と協働して還流流路70を形成し、この還流流路70によって、コンプレッサハウジング40に吸入された吸気の一部がコンプレッサハウジング40内におけるコンプレッサインペラ13よりも吸気の流れ方向の上流側へ還流される。よって、コンプレッサハウジング40に吸入される吸気の流量が減少しても、サージングが発生し難くなる。また、還流流路70を形成する流路形成部材80の一部である挿入部84をコンプレッサハウジング40の挿入凹部40aに挿入した状態で、流路形成部材80をコンプレッサハウジング40に取り付けるだけで、冷却用流路60を形成することができる。よって、冷却用流路60がコンプレッサハウジング40の壁部の厚み内に形成されている場合のように、コンプレッサハウジング40を、中子を用いた複雑な構造の鋳型を用いて製造する必要が無い。以上のことから、サージングの発生を抑制しつつも、冷却用流路60を容易に形成することができる。
【0072】
(2)冷却用流路60は、第1延在面84a、第2延在面84b、第3延在面84c、及び挿入凹部40aによって区画されている。これによれば、冷却用流路60の一部がディフューザ面44aから離間する方向に延びるため、例えば、冷却用流路60が第1延在面84a及び挿入凹部40aによって区画されている場合に比べると、冷却用流路60の流路断面積を大きくすることができる。
【0073】
ところで、冷却用流路60を流れる流体は、ディフューザ面44aを冷却することにより温度が上昇する。このとき、冷却用流路60の一部がディフューザ面44aから離間する方向に延びていると、コンプレッサハウジング40内におけるコンプレッサインペラ13よりも吸気の流れ方向の上流側を流れる吸気が、冷却用流路60を流れる流体によって温められてしまう虞がある。そこで、冷却用流路60を、第1延在面84a、第2延在面84b、第3延在面84c、及び挿入凹部40aによって区画することにより、冷却用流路60の流路断面積を極力大きくしつつも、冷却用流路60をコンプレッサインペラ13に対して遠ざけることができる。その結果、コンプレッサハウジング40内におけるコンプレッサインペラ13よりも吸気の流れ方向の上流側を流れる吸気が、冷却用流路60を流れる流体によって温められてしまうことを抑制しつつも、ディフューザ面44aを効率良く冷却することができる。
【0074】
(3)流路形成部材80は、リング部材81とカバー部材82とを含む。これによれば、リング部材81及びカバー部材82をコンプレッサハウジング40に取り付けるだけで、還流流路70を形成することができる。よって、例えば、還流流路70において、還流吸入口71及び連通流路73の双方をコンプレッサハウジング40のみで形成する場合に比べると、コンプレッサハウジング40の製造を容易なものとすることができる。
【0075】
(4)カバー部材82の外周面に、供給溝63、排出溝64、及び隔壁65が形成されている。冷却用流路60は、供給溝63から挿入部84の周方向における隔壁65とは反対側に延びて排出溝64に連通している。そして、カバー部材82は、挿入凹部40aに対する周方向への位置決めを行う位置決め部として機能する係合凸部65fを有している。これによれば、供給口61から供給溝63を介して冷却用流路60に供給された流体が、挿入部84の周方向における隔壁65とは反対側へ流れて排出溝64を介して排出口62から排出される。よって、流体を挿入部84の周方向へ効率良く流すことができるため、ディフューザ面44aを効率良く冷却することができる。さらに、係合凸部65fが位置決め用溝部42fに係合されることによって、カバー部材82における挿入凹部40aに対する周方向への位置決めがなされるため、供給口61と供給溝63との位置関係、及び排出口62と排出溝64との位置関係にずれが生じてしまうことを回避することができる。
【0076】
(5)リング部材81が圧入部93に圧入されると同時に、リング部材81と吸入口形成面92とが協働して還流吸入口71が形成されるとともに、収容凹部90の内周面90bとリング部材81の外周面81aとの間に連通流路73が形成される。そして、カバー部材82がコンプレッサハウジング40に取り付けられると同時に、排出口形成面86とリング部材81とが協働して還流排出口72が形成されるとともに、抜け防止部85がリング部材81に当接してリング部材81における収容凹部90からの抜けが防止される。よって、リング部材81を圧入部93に圧入するとともにカバー部材82をコンプレッサハウジング40に取り付けるだけで還流流路70を形成することができるため、還流流路70を容易に形成することができる。
【0077】
(6)還流排出口72は、リング部材81の周方向において各抜け防止部85を挟んだ両側それぞれに存在して、各抜け防止部85におけるリング部材81の周方向に位置する壁面85bが各還流排出口72に面している。これによれば、連通流路73を流れる吸気が旋回しながら各還流排出口72に流入した場合に、各還流排出口72に流入した吸気が、各抜け防止部85の壁面85bに衝突し、吸気の旋回流が堰き止められる。したがって、吸気が旋回しながらコンプレッサハウジング40内におけるコンプレッサインペラ13よりも吸気の流れ方向の上流側へ還流されてしまうことを抑制することができるため、還流流路70から還流した吸気とコンプレッサハウジング40に吸入される吸気との干渉により生じる騒音や振動を低減することができる。
【0078】
(7)抜け防止部85の壁面85bは、内周面82cからカバー部材82の径方向内側に向かうにつれて互いに徐々に近づくように弧状に湾曲している。よって、例えば、
図10において二点鎖線で示すように、カバー部材82を軸心方向から見たときに、抜け防止部85の壁面85bと内周面82cとの連結箇所がピン角になっている場合に、ピン角になっている連結箇所に吸気が衝突して、吸気が逆方向に旋回し始めることを回避することができる。
【0079】
(8)各還流吸入口71は、収容凹部90の径方向内側に位置する各還流吸入口71の入口の流路断面積が、各圧入部93及び当接面91が収容凹部90の径方向内側に向かって同じ幅で延びている場合に比べて大きくなっている。これによれば、コンプレッサハウジング40に吸入されてコンプレッサインペラ13の回転によりコンプレッサインペラ室45内に吸入された吸気の一部が、各還流吸入口71に流入し易くなる。その結果、コンプレッサインペラ13の回転によりコンプレッサインペラ室45内に吸入された吸気の一部を、還流流路70を介してコンプレッサハウジング40内におけるコンプレッサインペラ13よりも吸気の流れ方向の上流側である吸気口83aへスムーズに還流させることができる。
【0080】
(9)本実施形態によれば、還流流路70の還流吸入口71が、コンプレッサハウジング40に形成されている構成のように、コンプレッサハウジング40に還流吸入口71を形成するために、コンプレッサハウジング40を製造した後に、コンプレッサハウジング40に対して還流吸入口71を穿設するための追加工が必要無い。このため、還流流路70を容易に形成することができる。
【0081】
(10)コンプレッサハウジング40の製造をアルミダイカスト成型で製造することができるため、コンプレッサハウジング40を、中子を用いた複雑な構造の鋳型を用いて製造する必要が無く、製造コストを削減することができる。
【0082】
(11)冷却用流路60を流れる流体によってディフューザ壁44を冷却することで、ディフューザ面44aが高温となることが抑制されている。よって、例えば、吸気にオイルが混入されている場合であっても、ディフューザ面44aでオイルが炭化してしまうことを抑制することができる。したがって、オイルが炭化してディフューザ流路46に堆積し、ディフューザ流路46の流路断面積が小さくなって、ターボチャージャ10による内燃機関Eへの吸気の過給が行われ難くなることといった問題を回避することができる。
【0083】
(12)コンプレッサハウジング40に吸入される吸気の流量が減少しても、サージングが発生し難くなるため、コンプレッサハウジング40に吸入される吸気が小流量である運転状況でのターボチャージャ10の運転領域を拡大させることができる。
【0084】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○
図11及び
図12に示すように、リング部材81を用いない構成であってもよく、還流流路70において、還流吸入口71及び連通流路73の双方がコンプレッサハウジング40のみで形成されていてもよい。そして、流路形成部材80として、カバー部材82のみを用いて、カバー部材82をコンプレッサハウジング40に取り付けることにより、カバー部材82とコンプレッサハウジング40とが協働して、還流排出口72を形成するようにしてもよい。これによれば、部品点数を削減することができる。
【0085】
○ 実施形態において、冷却用流路60を流れる流体の流れ方は、供給口61から供給溝63を介して冷却用流路60に供給された流体が、挿入部84の周方向における隔壁65とは反対側へ流れて排出溝64を介して排出口62から排出されるといった流れ方に限定されるものではない。要は、冷却用流路60を流れる流体によって、ディフューザ面44aを冷却することができれば、冷却用流路60を流れる流体の流れ方は特に限定されない。
【0086】
○ 実施形態において、冷却用流路60が、例えば、第1延在面84a及び挿入凹部40aによって区画されていてもよい。
○ 実施形態において、第2延在面84bが、第1延在面84aの外周縁に対して斜交し、且つディフューザ面44aから離間する方向に延びる筒状であってもよい。要は、第2延在面84bは、第1延在面84aの外周縁に対して交差し、且つディフューザ面44aから離間する方向に延びる筒状であればよい。
【0087】
○ 本実施形態において、冷却用流路60における挿入凹部40aの底面40bに沿って延びる部分の長さL1が、冷却用流路60における挿入凹部40aの外側内面40dに沿って延びる部分の長さL2よりも長くてもよい。
【0088】
○ 本実施形態において、冷却用流路60における挿入凹部40aの底面40bに沿って延びる部分の長さL1と、冷却用流路60における挿入凹部40aの外側内面40dに沿って延びる部分の長さL2とが同じでもよい。
【0089】
○ 実施形態において、収容凹部90の軸心方向から収容凹部90を見たときに、各圧入部93及び当接面91が収容凹部90の径方向内側に向かって同じ幅で延びていてもよい。
【0090】
○ 実施形態において、各抜け防止部85におけるリング部材81の周方向に位置する壁面85bが各還流排出口72に面していなくてもよい。
○ 実施形態において、抜け防止部85の数は、1つであってもよいし、2つや4つ以上であってもよい。
【0091】
○ 実施形態において、位置決め用溝部42fが、コンプレッサ筒状部42の周方向において、小径部42aの内周面における供給口61と排出口62との間以外の部分に形成されていてもよい。そして、カバー部材82の外周面に、位置決め用溝部42fに係合される係合凸部65fが形成されていればよく、係合凸部65fが隔壁65の外面に形成されていなくてもよい。