特許第6883248号(P6883248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883248
(24)【登録日】2021年5月12日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】微粒子計測機、分析装置、及び、分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20210531BHJP
   G01N 21/47 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   G01N15/14 B
   G01N15/14 C
   G01N15/14 D
   G01N21/47 Z
   G01N21/47 B
【請求項の数】6
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-58391(P2018-58391)
(22)【出願日】2018年3月26日
(65)【公開番号】特開2019-168420(P2019-168420A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2020年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】岩間 茂彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敦
【審査官】 野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−138186(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/154751(WO,A1)
【文献】 特開平5−90918(JP,A)
【文献】 特開2000−20969(JP,A)
【文献】 米国特許第9034261(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00−15/14
G01N 21/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周部から外周部に向かって複数のトラックを有する試料分析用ディスクに形成され、検出対象物質と結合する微粒子が前記トラックごとに捕捉されている反応領域における第1のトラック区間に対応する第1のタイミング信号と、前記反応領域とは異なる第2のトラック区間に対応する第2のタイミング信号とを生成するタイミング信号生成部と、
前記反応領域にレーザ光が照射され、前記反応領域からの反射光を受光して生成された受光信号から、前記第2のタイミング信号に基づいて前記試料分析用ディスクの反りに起因して変動する低周波成分を抽出する低周波成分抽出部と、
前記低周波成分に基づいて補間された、前記第1のトラック区間に対応する補間低周波成分を算出する低周波成分演算部と、
予め設定されている閾値を前記補間低周波成分に基づいて補正し、補正閾値を設定する閾値補正部と、
前記第1のタイミング信号と前記補正閾値とに基づいて前記受光信号から微粒子パルス信号を抽出し、前記微粒子パルス信号をカウントすることにより、前記反応領域の前記第1のトラック区間に捕捉されている前記微粒子をカウントする計測部と、
を備える微粒子計測機。
【請求項2】
前記試料分析用ディスクは、前記反応領域の外周部に位置し、かつ、所定の幅を有する領域が計測対象外の夾雑領域として設定されている請求項1に記載の微粒子計測機。
【請求項3】
前記反応領域にレーザ光が照射され、前記反応領域からの反射光を受光して受光信号が生成され、前記受光信号に基づいて、前記反応領域における前記複数のトラックのうちの第1のトラックに捕捉されている前記微粒子をカウントする場合、
前記タイミング信号生成部は、前記第1のトラックとは異なる第2のトラックにおいて、前記レーザ光が前記反応領域及び前記夾雑領域に到達する前のトラック区間に対応し、かつ、前記第2のタイミング信号に相当する第3のタイミング信号と、前記レーザ光が前記反応領域及び前記夾雑領域を通過した後のトラック区間に対応し、かつ、前記第2のタイミング信号に相当する第4のタイミング信号とを生成し、
前記低周波成分抽出部は、前記第3のタイミング信号に基づいて前記受光信号から第1の低周波成分を抽出し、前記第4のタイミング信号に基づいて前記受光信号から第2の低周波成分を抽出し、
前記低周波成分演算部は、前記第1及び第2の低周波成分に基づいて前記第1のトラック区間に対応する補間低周波成分を算出する
請求項2に記載の微粒子計測機。
【請求項4】
前記反応領域にレーザ光が照射され、前記反応領域からの反射光を受光して受光信号が生成され、前記受光信号に基づいて、前記反応領域における前記複数のトラックのうちの第3のトラックに捕捉されている前記微粒子をカウントする場合、
前記タイミング信号生成部は、前記第3のトラックとは異なる第4のトラックにおいて、前記レーザ光が前記反応領域及び前記夾雑領域を通過した後のトラック区間に対応し、かつ、前記第2のタイミング信号に相当する第5のタイミング信号とを生成し、前記第3のトラックにおいて、前記レーザ光が前記反応領域及び前記夾雑領域に到達する前のトラック区間に対応し、かつ、前記第2のタイミング信号に相当する第6のタイミング信号とを生成し、
前記低周波成分抽出部は、前記第5のタイミング信号に基づいて前記受光信号から第3の低周波成分を抽出し、前記第6のタイミング信号に基づいて前記受光信号から第4の低周波成分を抽出し、
前記低周波成分演算部は、前記第3及び第4の低周波成分に基づいて前記第1のトラック区間に対応する補間低周波成分を算出する
請求項2に記載の微粒子計測機。
【請求項5】
前記試料分析用ディスクが保持されるターンテーブルと、
前記ターンテーブルを回転させるターンテーブル駆動部と、
前記ターンテーブル駆動部を制御するターンテーブル駆動回路と、
前記ターンテーブルの回転軸に直交する方向に沿って駆動され、前記反応領域にレーザ光を照射し、前記反応領域からの反射光を受光して前記受光信号を生成する光ピックアップと、
前記光ピックアップの駆動を制御する光ピックアップ駆動回路と、
前記ターンテーブル駆動回路及び前記光ピックアップ駆動回路を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の微粒子計測機を有する
分析装置。
【請求項6】
内周部から外周部に向かって複数のトラックを有し、かつ、検出対象物質と結合する微粒子が前記トラックごとに捕捉されている反応領域を有する試料分析用ディスクを回転させ、
前記反応領域にレーザ光を前記トラックごとに照射し、
前記反応領域からの反射光を受光して受光信号を生成し、
前記反応領域における第1のトラック区間に対応する第1のタイミング信号と、前記反応領域とは異なる第2のトラック区間に対応する第2のタイミング信号とを生成し、
前記第2のタイミング信号に基づいて前記受光信号から前記試料分析用ディスクの反りに起因して変動する低周波成分を抽出し、
前記低周波成分に基づいて補間された、前記第1のトラック区間に対応する補間低周波成分を算出し、
予め設定されている閾値を前記補間低周波成分に基づいて補正して補正閾値を設定し、
前記第1のタイミング信号と前記補正閾値とに基づいて前記受光信号から微粒子パルス信号を抽出し、
前記微粒子パルス信号をカウントすることにより、前記反応領域の前記第1のトラック区間に捕捉されている前記微粒子をカウントする
分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原、抗体等の生体物質を分析するための微粒子計測機、分析装置、及び、分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疾病に関連付けられた特定の抗原または抗体をバイオマーカーとして検出することで、疾病の発見及び治療の効果等を定量的に分析する免疫検定法(immunoassay)が知られている。
【0003】
特許文献1には、試料分析用ディスク上の反応領域に固定された抗体と試料中の抗原とを結合させた後、抗体を有する微粒子によって抗原を標識し、光ピックアップから照射されるレーザ光を走査することにより、反応領域に捕捉された微粒子を検出する分析装置が記載されている。特許文献1に記載されている分析装置は、光ディスク装置を検体検出用に利用したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−127691号公報
【特許文献2】特開2001−126261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
試料分析用ディスク上に反応領域を形成する工程等により、試料分析用ディスクに反りが生じる場合がある。試料分析用ディスクの反りに起因して反応領域が形成されている面に傾きが生じ、レーザ光を走査した場合に、反応領域に捕捉された微粒子を検出するための検出信号は、試料分析用ディスクの面の傾きに起因する低周波成分の変動が発生する。低周波成分の変動は、微粒子の検出精度を悪化させる。従って、試料分析用ディスクの反りは、微粒子の検出精度を悪化させる要因となる。
【0006】
特許文献2には、光ディスクの反りによる影響を低減する光ディスク装置が記載されている。しかしながら、特許文献2に記載されているような光ディスク装置では、光ディスクの半径方向(ラジアル方向)に対しては反りによる影響を低減できるものの、接線方向(タンジェンシャル方向)に対しては対策されていない。
【0007】
本発明は、試料分析用ディスクの反り等によって生じる低周波成分の変動の影響を低減することにより、低周波成分の変動による微粒子の検出精度の悪化を抑制することができる微粒子計測機、分析装置、及び、分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内周部から外周部に向かって複数のトラックを有する試料分析用ディスクに形成され、検出対象物質と結合する微粒子が前記トラックごとに捕捉されている反応領域における第1のトラック区間に対応する第1のタイミング信号と、前記反応領域とは異なる第2のトラック区間に対応する第2のタイミング信号とを生成するタイミング信号生成部と、前記反応領域にレーザ光が照射され、前記反応領域からの反射光を受光して生成された受光信号から、前記第2のタイミング信号に基づいて前記試料分析用ディスクの反りに起因して変動する低周波成分を抽出する低周波成分抽出部と、前記低周波成分に基づいて補間された、前記第1のトラック区間に対応する補間低周波成分を算出する低周波成分演算部と、予め設定されている閾値を前記補間低周波成分に基づいて補正し、補正閾値を設定する閾値補正部と、前記第1のタイミング信号と前記補正閾値とに基づいて前記受光信号から微粒子パルス信号を抽出し、前記微粒子パルス信号をカウントすることにより、前記反応領域の前記第1のトラック区間に捕捉されている前記微粒子をカウントする計測部とを備える微粒子計測機を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記試料分析用ディスクが保持されるターンテーブルと、前記ターンテーブルを回転させるターンテーブル駆動部と、前記ターンテーブル駆動部を制御するターンテーブル駆動回路と、前記ターンテーブルの回転軸に直交する方向に沿って駆動され、前記反応領域にレーザ光を照射し、前記反応領域からの反射光を受光して前記受光信号を生成する光ピックアップと、前記光ピックアップの駆動を制御する光ピックアップ駆動回路と、前記ターンテーブル駆動回路及び前記光ピックアップ駆動回路を制御する制御部とを備え、前記制御部は上記の微粒子計測機を有する分析装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、内周部から外周部に向かって複数のトラックを有し、かつ、検出対象物質と結合する微粒子が前記トラックごとに捕捉されている反応領域を有する試料分析用ディスクを回転させ、前記反応領域にレーザ光を前記トラックごとに照射し、前記反応領域からの反射光を受光して受光信号を生成し、
前記反応領域における第1のトラック区間に対応する第1のタイミング信号と、前記反応領域とは異なる第2のトラック区間に対応する第2のタイミング信号とを生成し、前記第2のタイミング信号に基づいて前記受光信号から前記試料分析用ディスクの反りに起因して変動する低周波成分を抽出し、前記低周波成分に基づいて補間された、前記第1のトラック区間に対応する補間低周波成分を算出し、予め設定されている閾値を前記補間低周波成分に基づいて補正して補正閾値を設定し、前記第1のタイミング信号と前記補正閾値とに基づいて前記受光信号から微粒子パルス信号を抽出し、前記微粒子パルス信号をカウントすることにより、前記反応領域の前記第1のトラック区間に捕捉されている前記微粒子をカウントする分析方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の微粒子計測機、分析装置、及び、分析方法によれば、試料分析用ディスクの反り等によって生じる低周波成分の変動の影響を低減することにより、低周波成分の変動による微粒子の検出精度の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】検出対象物質捕捉ユニットの構成例を示す平面図である。
図2】検出対象物質捕捉ユニットの構成例を示す平面図である。
図3A図1のA−Aで切断した検出対象物質捕捉ユニットの断面図である。
図3B】カートリッジを試料分析用ディスクより取り外した状態を示す断面図である。
図4図1のB−Bで切断したウェルを示す拡大斜視図である。
図5】検出対象物質が抗体と微粒子とによってトラック領域の凹部にサンドイッチ捕捉されている状態を示す模式的な断面図である。
図6】微粒子が検出対象物質と結合した状態でトラック領域の凹部に捕捉されている状態を示す模式的な平面図である。
図7】第1及び第2実施形態の分析装置の一例を示す構成図である。
図8A】第1実施形態の分析装置による分析方法の一例を示すフローチャートである。
図8B】第1実施形態の分析装置による分析方法の一例を示すフローチャートである。
図8C】第1実施形態の分析装置による分析方法の一例を示すフローチャートである。
図9】基準位置検出センサ及び光ピックアップの検出位置と試料分析用ディスクの切欠き部及び反応領域との位置関係の一例を示す平面図である。
図10】反応領域と夾雑領域とトラックとトラック区間との関係の一例を示す図である。
図11】第1及び第2実施形態の分析装置における微粒子計測機の一例を示す構成図である。
図12】受光信号と微粒子計測タイミング信号と低周波成分計測タイミング信号と基準位置検出信号との関係の一例を示すタイミングチャートである。
図13】受光信号と微粒子計測タイミング信号と低周波成分計測タイミング信号と低周波成分と閾値と基準位置検出信号との関係の一例を示すタイミングチャートである。
図14A】第2実施形態の分析装置による分析方法の一例を示すフローチャートである。
図14B】第2実施形態の分析装置による分析方法の一例を示すフローチャートである。
図14C】第2実施形態の分析装置による分析方法の一例を示すフローチャートである。
図14D】第2実施形態の分析装置による分析方法の一例を示すフローチャートである。
図15】受光信号と微粒子計測タイミング信号と低周波成分計測タイミング信号と低周波成分と閾値と基準位置検出信号との関係の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[検出対象物質捕捉ユニット]
図1図2図3A図3B、及び、図4を用いて、検出対象物質捕捉ユニットの一例を説明する。図1は検出対象物質捕捉ユニットをカートリッジ側から見た状態を示している。図2は検出対象物質捕捉ユニットを試料分析用ディスク側から見た状態を示している。図3A図1のA−Aで切断した検出対象物質捕捉ユニットの断面を示している。図3Bはカートリッジを試料分析用ディスクより取り外した状態を示している。図4図1のウェルをB−Bで切断した状態を部分的に拡大して示している。
【0014】
図1または図2に示すように、検出対象物質捕捉ユニット100は、試料分析用ディスク200とカートリッジ300とを備える。試料分析用ディスク200は、例えば、ブルーレイディスク(BD)、DVD、コンパクトディスク(CD)等の光ディスクと同等の円板形状を有する。試料分析用ディスク200は、例えば、一般的に光ディスクに用いられるポリカーボネート樹脂またはシクロオレフィンポリマー等の樹脂材料で形成されている。なお、試料分析用ディスク200は、上記の光ディスクに限定されるものではなく、他の形態または所定の規格に準拠した光ディスクを用いることもできる。
【0015】
図1図2図3A、または、図3Bに示すように、試料分析用ディスク200は、中心部に形成された中心孔201と、外周部に形成された切欠き部202とを有する。切欠き部202は試料分析用ディスク200の基準位置を識別するための基準位置識別部である。
【0016】
図4に示すように、試料分析用ディスク200の表面には、凸部203と凹部204とが半径方向に交互に配置されたトラック領域205が形成されている。凸部203及び凹部204は、内周部から外周部に向かってスパイラル状または同心円状に形成されている。凸部203は光ディスクのランドに相当する。凹部204は光ディスクのグルーブに相当し、かつ、試料分析用ディスク200のトラックに相当する。即ち、試料分析用ディスク200は、内周部から外周部に向かって複数のトラックを有する。凹部204の半径方向のピッチに相当するトラックピッチは例えば320nmである。
【0017】
図1図2図3A、または、図3Bに示すように、カートリッジ300は、周方向に複数の円筒状の貫通孔301が形成されている。複数の貫通孔301は、それぞれの中心が同一円周上に位置するように等間隔に形成されている。カートリッジ300は、中心部に形成された凸部302と、外周部に形成された凸部303と、外周部に複数の貫通孔301に対応して形成された複数のシール部材304とを有する。シール部材304は、例えばシリコーンゴム等の弾性変形部材で作製されたリング状のパッキンである。図3A図3B、または、図4に示すように、シール部材304は、複数の貫通孔301の周囲にそれぞれ配置されている。
【0018】
カートリッジ300を試料分析用ディスク200に取り付ける場合に、凸部302を試料分析用ディスク200の中心孔201に挿入し、凸部303を切欠き部202に挿入することにより、カートリッジ300と試料分析用ディスク200とを位置決めすることができる。カートリッジ300を試料分析用ディスク200に取り付けると、シール部材304は、トラック領域205の凹部204を埋めるように弾性変形する。なお、図4はシール部材304が弾性変形する前の状態を示している。
【0019】
図3Aまたは図4に示すように、検出対象物質捕捉ユニット100は、カートリッジ300の貫通孔301と試料分析用ディスク200のトラック領域205とによって形成される複数のウェル101を有する。貫通孔301の内側の側面(以下、内周面とする)はウェル101の内周面を構成し、試料分析用ディスク200のトラック領域205はウェル101の底面を構成している。
【0020】
ウェル101は試料液、緩衝液、及び、洗浄液等の溶液を溜めるための容器である。シール部材304は、ウェル101から溶液が漏れる危険性を低減させる。なお、図1及び図2では、一例として8つのウェル101を示しているが、ウェル101の数はこれに限定されるものではない。
【0021】
図3Bに示すように、カートリッジ300を試料分析用ディスク200から分離することができる。検出対象物質を標識する微粒子の検出及び計測は、カートリッジ300が分離された試料分析用ディスク200単体で行われる。
【0022】
[反応領域の形成]
図5、及び、図6を用いて、反応領域の形成方法の一例を説明する。オペレータは、抗体111を含む緩衝液を、検出対象物質捕捉ユニット100のウェル101に注入する。オペレータは、検出対象物質捕捉ユニット100を、適切な時間、かつ、適切な温度でインキュベートさせる。
【0023】
これにより、抗体111は、図5に示すように、ウェル101の底面を構成する試料分析用ディスク200のトラック領域205上に固定される。オペレータは、ウェル101から緩衝液を排出し、ウェル101を別の緩衝液または洗浄液で洗浄する。トラック領域205に固定されなかった抗体111はこの洗浄によって除去される。
【0024】
オペレータは、検出対象物質121を含む試料液をウェル101に注入する。検出対象物質121は、例えばエクソソームである。なお、試料液には検出対象物質121が含まれていない場合がある。説明をわかりやすくするために、試料液122に検出対象物質121が含まれている場合について説明する。
【0025】
オペレータは、検出対象物質捕捉ユニット100を、適切な時間、かつ、適切な温度でインキュベートさせる。これにより、検出対象物質121は、トラック領域205上に固定されている抗体111と抗原抗体反応により特異的に結合する。その結果、検出対象物質121はトラック領域205に捕捉される。
【0026】
オペレータは、ウェル101から試料液を排出し、ウェル101を緩衝液または洗浄液で洗浄する。なお、抗体111と結合しないで試料液中に分散している検出対象物質121、及び、抗原抗体反応ではない非特異吸着によってトラック領域205上に付着している検出対象物質121は、この洗浄によって除去される。
【0027】
オペレータは、標識となる微粒子131を含む緩衝液をウェル101に注入する。微粒子131の表面には検出対象物質121と抗原抗体反応により特異的に結合する抗体が形成されている。オペレータは、検出対象物質捕捉ユニット100を、適切な時間、かつ、適切な温度でインキュベートさせる。
【0028】
これにより、微粒子131は、トラック領域205上に捕捉されている検出対象物質121と抗原抗体反応により特異的に結合する。その結果、微粒子131は、トラック領域205、具体的にはトラック領域205の凹部204に、検出対象物質121と結合した状態で捕捉される。
【0029】
オペレータは、ウェル101から緩衝液を排出し、ウェル101を別の緩衝液または洗浄液で洗浄し、乾燥させる。なお、検出対象物質121と結合しないで緩衝液中に分散している微粒子131は洗浄により除去される。
【0030】
オペレータは、図3Bに示すように、検出対象物質捕捉ユニット100のカートリッジ300と試料分析用ディスク200とを分離する。試料分析用ディスク200には、複数のウェル101に対応して複数の円形の反応領域210が形成されている。
【0031】
図5に示すように、反応領域210には、微粒子131が検出対象物質121と結合した状態でトラック領域205の凹部204に捕捉されている。即ち、検出対象物質121は、抗体111と微粒子131とによってトラック領域205の凹部204にサンドイッチ捕捉されている。図6は、微粒子131が検出対象物質121と結合した状態でトラック領域205の凹部204に捕捉されている状態の一例を示している。
【0032】
[第1実施形態]
図7図8A図8B図8C図9図10図11図12、及び、図13を用いて、第1実施形態の微粒子計測機、分析装置、及び、分析方法を説明する。図7を用いて、第1実施形態の分析装置を説明する。検出対象物質121がエクソソームである場合、エクソソームの大きさは100nm程度と小さいため、光学的に直接検出することは難しい。第1実施形態の分析装置は、反応領域210に捕捉されている微粒子131を検出し、計測することにより、微粒子131と特異的に結合している検出対象物質121を間接的に検出し、計測する。
【0033】
図7に示すように、分析装置1は、ターンテーブル2と、クランパ3と、ターンテーブル駆動部4と、ターンテーブル駆動回路5と、基準位置検出センサ6とを備える。また、分析装置1は、ガイド軸7と、光ピックアップ20と、光ピックアップ駆動回路8と、微粒子計測機9と、記憶部10と、表示部11とを備える。なお、分析装置1は表示部11を備えていなくてもよく、外部の表示部を用いてもよい。
【0034】
ターンテーブル2上には、試料分析用ディスク200が、反応領域210が下向きになるように載置される。クランパ3は、ターンテーブル2に対して離隔する方向及び接近する方向に駆動される。試料分析用ディスク200は、クランパ3がターンテーブル2に対して接近する方向に駆動されることにより、クランパ3とターンテーブル2とによって保持される。
【0035】
ターンテーブル駆動部4は、ターンテーブル2を試料分析用ディスク200及びクランパ3と共に、回転軸C2回りに回転駆動させる。ターンテーブル駆動部4としてスピンドルモータを用いてもよい。ターンテーブル駆動回路5はターンテーブル駆動部4を制御する。例えば、ターンテーブル駆動回路5は、ターンテーブル2が試料分析用ディスク200及びクランパ3と共に一定の線速度で回転するようにターンテーブル駆動部4を制御する。
【0036】
基準位置検出センサ6は、試料分析用ディスク200の外周部近傍に配置されている。基準位置検出センサ6は、例えばフォトリフレクタ等の光センサである。基準位置検出センサ6は、試料分析用ディスク200が回転している状態で、試料分析用ディスク200の外周部に検出光6aを照射し、試料分析用ディスク200からの反射光を受光する。
【0037】
基準位置検出センサ6は、試料分析用ディスク200の切欠き部202を検出して基準位置検出信号PDSを生成し、微粒子計測機9へ出力する。基準位置検出信号PDSは、切欠き部202が基準位置検出センサ6の検出位置、即ち検出光6aが照射される位置に到達すると立ち上がってオン状態となり、通過すると立ち下がってオフ状態となるパルス信号である。
【0038】
即ち、基準位置検出センサ6は、試料分析用ディスク200の回転周期及びトラックごとに基準位置を検出する。基準位置検出センサ6として透過型の光センサを用いてもよい。この場合、基準位置検出センサ6は、試料分析用ディスク200に検出光6aを照射し、切欠き部202を通過する検出光6aを受光することにより、試料分析用ディスク200の回転周期及びトラックごとに基準位置を検出する。
【0039】
ガイド軸7は、試料分析用ディスク200と平行に、かつ、試料分析用ディスク200の半径方向に沿って配置されている。光ピックアップ20は、ガイド軸7に支持されている。光ピックアップ20は、ガイド軸7に沿って、ターンテーブル2の回転軸C2に直交する方向であり、試料分析用ディスク200の半径方向に、かつ、試料分析用ディスク200と平行に駆動される。
【0040】
光ピックアップ20は、対物レンズ21を備えている。光ピックアップ20は、試料分析用ディスク200に向けてレーザ光20aを照射する。レーザ光20aは、対物レンズ21によって試料分析用ディスク200の反応領域210が形成されているトラック領域205に集光される。図5に示す符号21及び20aは、図7に示す対物レンズ21及びレーザ光20aに相当し、上下反転させた状態に相当する。
【0041】
試料分析用ディスク200を回転させた状態で、光ピックアップ20を試料分析用ディスク200の半径方向に駆動させる。これにより、図5に示すように、レーザ光20aは、トラックに相当する凹部204に沿って走査される。光ピックアップ20は、試料分析用ディスク200からの反射光を受光する。光ピックアップ20は、反射光の受光レベルを検出して受光信号LRSを生成し、微粒子計測機9へ出力する。
【0042】
光ピックアップ駆動回路8は、光ピックアップ20の駆動を制御する。光ピックアップ駆動回路8は、光ピックアップ20をガイド軸7に沿って移動させたり、光ピックアップ20の対物レンズ21を上下方向に移動させたりする。
【0043】
微粒子計測機9は、ターンテーブル駆動回路5、及び、光ピックアップ駆動回路8を制御する。即ち、微粒子計測機9は制御部として機能する。微粒子計測機9は、ターンテーブル駆動回路5を制御して、ターンテーブル2を例えば一定の線速度で回転させたり、停止させたりする。
【0044】
微粒子計測機9は、光ピックアップ駆動回路8を制御して、光ピックアップ20を試料分析用ディスク200の半径方向の目標位置まで移動させたり、レーザ光20aがトラック領域205に集光されるように対物レンズ21の上下位置を調整したりする。
【0045】
微粒子計測機9は、基準位置検出センサ6から出力された基準位置検出信号PDSに基づいて試料分析用ディスク200の回転周期及びトラックごとに基準位置を検出する。微粒子計測機9は、検出された基準位置に基づいて反応領域210を特定する。
【0046】
記憶部10には、各反応領域210に対してトラックごとに計測パラメータSPが記憶されている。計測パラメータSPは、反応領域210の数、基準位置識別部である切欠き部202から各反応領域210までの距離に相当する時間、及び各トラックにおけるタイミング信号のタイミング等の計測情報を含んでいる。
【0047】
微粒子計測機9は、記憶部10から計測パラメータSPを読み出し、計測パラメータSPに基づいて、各反応領域210に対してトラックごとに複数の計測タイミング信号として、例えば複数の微粒子計測タイミング信号BTSと複数の低周波成分計測タイミング信号LTSとを生成する。
【0048】
微粒子計測タイミング信号BTSは、反応領域210に捕捉されている微粒子131を計測するためのタイミング信号である。低周波成分計測タイミング信号LTSは、試料分析用ディスク200の反りに起因して変動する低周波成分を計測するためのタイミング信号である。微粒子計測タイミング信号BTSを第1のタイミング信号とし、低周波成分計測タイミング信号LTSを第2のタイミング信号とする。
【0049】
微粒子計測機9は、光ピックアップ20から出力された受光信号LRSから、微粒子計測タイミング信号BTSごとに微粒子パルス信号BSを抽出する。なお、微粒子計測タイミング信号BTS、及び、低周波成分計測タイミング信号LTSの生成方法、並びに、微粒子パルス信号BSの抽出方法については後述する。
【0050】
微粒子計測機9は、抽出された微粒子パルス信号BSをカウントすることによって、検出対象物質121を標識する微粒子131をカウントする。微粒子計測機9は、各反応領域210の微粒子131の数を微粒子計測タイミング信号BTSごとに記憶部10に記憶させる。微粒子計測機9は、反応領域210ごとに微粒子131の数を合算し、表示部11に表示させる。表示される微粒子131の数は、微粒子131と特異的に結合している検出対象物質121の数に相当する。
【0051】
図8A図8B図8C図9図10図11図12、及び、図13を用いて、分析装置1による検出対象物質121の分析方法、具体的には検出対象物質121を標識する微粒子131の分析方法の一例を説明する。図8A図8B、及び、図8Cは、分析装置1による検出対象物質121の分析方法の一例をフローチャートとして示している。
【0052】
微粒子計測機9は、図8Aに示すフローチャートのステップS11にて、試料分析用ディスク200が一定の線速度で回転するようにターンテーブル駆動回路5を制御し、ターンテーブル駆動部4にターンテーブル2を回転駆動させる。
【0053】
微粒子計測機9は、ステップS12にて、基準位置検出センサ6から試料分析用ディスク200に向けて検出光6aを照射させる。微粒子計測機9は、ステップS13にて、光ピックアップ20から試料分析用ディスク200に向けてレーザ光20aを照射させる。なお、ステップS12の後にステップS13を実行させてもよいし、ステップS13の後にステップS12を実行させてもよいし、ステップS12とステップS13とを同時に実行させてもよい。
【0054】
図9は、基準位置検出センサ6及び光ピックアップ20の検出位置と、試料分析用ディスク200の切欠き部202及び反応領域210との位置関係を模式的に示している。図9中の矢印は試料分析用ディスク200の回転方向を示している。符号6bは基準位置検出センサ6の検出位置を示している。軸線JLはガイド軸7に相当する。
【0055】
図9では、基準位置検出センサ6の検出位置6bは軸線JL上に位置しているが、これに限定されるものではない。検出位置6bは、切欠き部202を検出できる位置であれば試料分析用ディスク200の外周部の任意の位置とすることができる。光ピックアップ20は軸線JLに沿って試料分析用ディスク200の半径方向に移動する。図8中の符号20bは光ピックアップ20の検出位置を示している。
【0056】
図9に示すように、複数の反応領域210は、それぞれの中心が試料分析用ディスク200の中心C200に対して同一円周上に等間隔になるように形成されている。複数の反応領域210を区別するために、基準位置検出センサ6が切欠き部202を検出光6aにより検出した後、最初にレーザ光20aが照射される反応領域の符号を211とし、レーザ光20aが順次照射される反応領域の符号を212、213、214、215、216、217、及び、218とする。
【0057】
反応領域211〜218には、試料分析用ディスク200の内周側に位置するトラックTRsから外周側に位置するトラックTReに向かってトラックTRごとにレーザ光20aが順次照射される。
【0058】
反応領域212のトラックTRi(s<i<e)における微粒子131を計測する場合について説明する。図10では、説明を分かりやすくするために、基準位置検出センサ6が切欠き部202を検出した後に、レーザ光20aが最初に照射される反応領域211と、反応領域211の次に照射される反応領域212と、反応領域212の次に照射される反応領域213とを示している。
【0059】
図10は、レーザ光20aが、反応領域211、212、及び、213のトラックTRi−1(s<i−1<e)上を順次走査され、さらにトラックTRi(s<i−1<i<e)上を順次走査される状態を示している。なお、第1実施形態の微粒子計測機9、分析装置1、及び、分析方法では、トラックTRiを第1のトラックとし、トラックTRi−1を第2のトラックとする。説明をわかりやすくするために、反応領域212のトラックTRi(s<i<e)における微粒子131を計測するための信号処理のみについて説明する。
【0060】
微粒子計測機9は、図8Bに示すフローチャートのステップS21にて、光ピックアップ駆動回路8を制御し、試料分析用ディスク200のトラックTRi−1にレーザ光20aが照射されるように光ピックアップ20をトラックTRi−1の上方に移動させる。これにより、レーザ光20aはトラックTRi−1上を走査される。
【0061】
図11は微粒子計測機9の構成例を示している。図11に示すように、微粒子計測機9は、基準位置検出部91と、タイミング信号生成部92と、受光信号検出部93と、計測部94と、低周波成分抽出部95と、低周波成分演算部96と、閾値補正部97とを備える。
【0062】
微粒子計測機9、並びに、微粒子計測機9を構成する基準位置検出部91、タイミング信号生成部92、受光信号検出部93、計測部94、低周波成分抽出部95、低周波成分演算部96、及び、閾値補正部97は、回路等のハードウェア、または、CPU(Central Processing Unit)により実行されるソフトウェア(コンピュータプログラム)のいずれかによって構成されていてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせた構成としてもよい。
【0063】
タイミング信号生成部92は、ステップS22にて、記憶部10からトラックTRi−1の計測パラメータSPi−1を読み出す。基準位置検出センサ6は、ステップS23にて、切欠き部202を検出することにより基準位置検出信号PDSを生成する。さらに基準位置検出センサ6は、基準位置検出信号PDSを微粒子計測機9の基準位置検出部91へ出力する。基準位置検出部91は基準位置検出信号PDSをタイミング信号生成部92へ出力する。
【0064】
光ピックアップ20は、ステップS24にて、試料分析用ディスク200からの反射光を受光して受光信号LRSを生成し、微粒子計測機9の受光信号検出部93へ出力する。受光信号検出部93は、受光信号LRSを低周波成分抽出部95、及び、計測部94へ出力する。
【0065】
図12は、受光信号LRSと微粒子計測タイミング信号BTSと低周波成分計測タイミング信号LTSと基準位置検出信号PDSとの関係の一例をタイミングチャートとして示している。図12では、図10に対応させて反応領域211〜213に捕捉されている微粒子131を計測するための受光信号LRS、微粒子計測タイミング信号BTS、及び、低周波成分計測タイミング信号LTSのみを示している。
【0066】
図13は、受光信号LRSと低周波成分計測タイミング信号LTSと閾値THと補正閾値CTH1と基準位置検出信号PDSとの関係の一例をタイミングチャートとして示している。図13図12に対応する。
【0067】
検出対象物質捕捉ユニット100を用いて反応領域210(211〜218)を形成する場合、試料分析用ディスク200における反応領域210よりも外側の領域はシール部材304と接触する。反応領域210の外周部に位置し、かつ、所定の幅を有する領域は、ノイズ成分が含まれるため、計測対象外の夾雑領域220として設定されている。図10に示す符号221、222、及び、223は、反応領域211、212、及び、213に対応する夾雑領域220を区別して示している。
【0068】
タイミング信号生成部92は、計測パラメータSPと基準位置検出信号PDSとに基づいて低周波成分計測タイミング信号LTSを生成し、低周波成分抽出部95へ出力する。トラックTRi−1において、タイミング信号生成部92は、計測パラメータSPi−1と基準位置検出信号PDSとに基づいて、図12または図13に示すように、低周波成分計測タイミング信号LTS_1_i−1、及び、LTS_2_i−1を生成する。
【0069】
なお、第1実施形態の微粒子計測機9、分析装置1、及び、分析方法において、低周波成分計測タイミング信号LTS_1_i−1を第3のタイミング信号とし、低周波成分計測タイミング信号LTS_2_i−1を第4のタイミング信号とする。タイミング信号生成部92は、低周波成分計測タイミング信号LTS_1_i−1、及び、LTS_2_i−1を低周波成分抽出部95へ出力する。
【0070】
具体的には、トラックTRi−1において、タイミング信号生成部92は、ステップS25にて、計測パラメータSPi−1と基準位置検出信号PDSとに基づいて、低周波成分計測タイミング信号LTS_1_i−1を生成する。さらにタイミング信号生成部92は、低周波成分計測タイミング信号LTS_1_i−1を低周波成分抽出部95へ出力する。
【0071】
低周波成分計測タイミング信号LTS_1_i−1は、レーザ光20aが夾雑領域221、及び、反応領域211に対応するトラック区間Tps_1_i−1を通過した後のトラック区間Tbs_1_i−1で例えばハイレベルとなるゲートパルス信号である。
【0072】
トラック区間Tbs_1_i−1は、レーザ光20aがトラック区間Tps_1_i−1を通過した後の区間であり、かつ、レーザ光20aが夾雑領域222、及び、反応領域212に対応するトラック区間Tps_2_i−1に到達する前の区間である。即ち、トラック区間Tbs_1_i−1は、トラックTRi−1において、レーザ光20aが夾雑領域221及び反応領域211と夾雑領域222及び反応領域212との間隙を走査する区間に相当する。
【0073】
なお、レーザ光20aが反応領域210及び夾雑領域220以外の領域を走査するトラック区間Tbsを第1のトラック区間とし、レーザ光20aが反応領域210を走査するトラック区間Tcsを第2のトラック区間とする。
【0074】
トラックTRi−1において、タイミング信号生成部92は、ステップS26にて、計測パラメータSPi−1と基準位置検出信号PDSとに基づいて、低周波成分計測タイミング信号LTS_2_i−1を生成する。さらにタイミング信号生成部92は、低周波成分計測タイミング信号LTS_2_i−1を低周波成分抽出部95へ出力する。
【0075】
低周波成分計測タイミング信号LTS_2_i−1は、レーザ光20aが夾雑領域222、及び、反応領域212に対応するトラック区間Tps_2_i−1を通過した後のトラック区間Tbs_2_i−1で例えばハイレベルとなるゲートパルス信号である。
【0076】
トラック区間Tbs_2_i−1は、レーザ光20aがトラック区間Tps_2_i−1を通過した後の区間であり、かつ、レーザ光20aが夾雑領域223、及び、反応領域213に対応するトラック区間Tps_3_i−1に到達する前の区間である。即ち、トラック区間Tbs_2_i−1は、トラックTRi−1において、レーザ光20aが夾雑領域222及び反応領域212と夾雑領域223及び反応領域213との間隙を走査する区間に相当する。
【0077】
低周波成分抽出部95は、低周波成分計測タイミング信号LTSにより、受光信号LRSから試料分析用ディスク200の反りに起因して変動する低周波成分LFCを抽出し、低周波成分演算部96へ出力する。トラックTRi−1において、低周波成分抽出部95は、ステップS27にて、図13に示すように、低周波成分計測タイミング信号LTS_1_i−1により、受光信号LRSから試料分析用ディスク200の反りに起因して変動する低周波成分LFC_1_i−1を抽出する。さらに低周波成分抽出部95は、低周波成分LFC_1_i−1を低周波成分演算部96へ出力する。なお、第1実施形態の微粒子計測機9、分析装置1、及び、分析方法では、低周波成分LFC_1_i−1を第1の低周波成分とする。
【0078】
トラックTRi−1において、低周波成分抽出部95は、ステップS28にて、図13に示すように、低周波成分計測タイミング信号LTS_2_i−1により、受光信号LRSから試料分析用ディスク200の反りに起因して変動する低周波成分LFC_2_i−1を抽出する。さらに低周波成分抽出部95は、低周波成分LFC_2_i−1を低周波成分演算部96へ出力する。なお、第1実施形態の微粒子計測機9、分析装置1、及び、分析方法では、低周波成分LFC_2_i−1を第2の低周波成分とする。
【0079】
低周波成分演算部96は、ステップS29にて、低周波成分LFC_1_i−1と低周波成分LFC_2_i−1とを例えば補間多項式を用いて演算し、図13に示すように、トラックTRiのトラック区間Tps_2_iにおける補間低周波成分CLFC1_2_iを算出する。補間低周波成分CLFC1_2_iは、低周波成分LFC_1_i−1と低周波成分LFC_2_i−1とによって補間された、トラック区間Tps_2_iにおける低周波成分である。さらに低周波成分演算部96は、補間低周波成分CLFC1_2_iを閾値補正部97へ出力する。
【0080】
閾値補正部97は、ステップS30にて、図13に示すように、予め設定されている閾値THを補間低周波成分CLFC1_2_iに基づいて補正し、反応領域212のトラックTRiにおける補正閾値CTH1_2_iを設定する。さらに閾値補正部97は、補正閾値CTH1_2_iを計測部94へ出力する。
【0081】
微粒子計測機9は、図8Cに示すフローチャートのステップS31にて、光ピックアップ駆動回路8を制御し、試料分析用ディスク200のトラックTRiにレーザ光20aが照射されるように光ピックアップ20をトラックTRiの上方に移動させる。これにより、レーザ光20aはトラックTRi上を走査される。
【0082】
タイミング信号生成部92は、ステップS32にて、記憶部10からトラックTRiの計測パラメータSPiを読み出す。基準位置検出センサ6は、ステップS33にて、切欠き部202を検出することにより基準位置検出信号PDSを生成する。さらに基準位置検出センサ6は、基準位置検出信号PDSを微粒子計測機9の基準位置検出部91へ出力する。基準位置検出部91は基準位置検出信号PDSをタイミング信号生成部92へ出力する。
【0083】
光ピックアップ20は、ステップS34にて、試料分析用ディスク200からの反射光を受光して受光信号LRSを生成し、微粒子計測機9の受光信号検出部93へ出力する。受光信号検出部93は、受光信号LRSを計測部94、及び、低周波成分抽出部95へ出力する。
【0084】
トラックTRiにおいて、タイミング信号生成部92は、計測パラメータSPiと基準位置検出信号PDSとに基づいて、図12に示すように、微粒子計測タイミング信号BTS_1_i、BTS_2_i、及び、BTS_3_iを生成する。タイミング信号生成部92は、微粒子計測タイミング信号BTS_1_i、BTS_2_i、及び、BTS_3_iを計測部94へ出力する。
【0085】
例えば、トラックTRiにおいて、タイミング信号生成部92は、ステップS35にて、計測パラメータSPiと基準位置検出信号PDSとに基づいて、微粒子計測タイミング信号BTS_2_iを生成する。微粒子計測タイミング信号BTS_2_iは、図10図12、または、図13に示すように、レーザ光20aが反応領域212を走査するトラック区間Tcs_2_iで例えばハイレベルとなるゲートパルス信号である。さらにタイミング信号生成部92は、微粒子計測タイミング信号BTS_2_iを計測部94へ出力する。
【0086】
計測部94は、ステップS36にて、微粒子計測タイミング信号BTS_2_iに基づいて受光信号LRSからパルス信号を抽出する。さらに計測部94は、抽出されたパルス信号と補正閾値CTH1_2_iとを比較し、例えば補正閾値CTH1_2_iよりも低い信号レベルのパルス信号を微粒子パルス信号BSと判定し、抽出する。
【0087】
計測部94は、ステップS37にて、微粒子パルス信号BSをカウントすることにより、反応領域212のトラックTRiにおける微粒子131をカウントする。さらに計測部94は、反応領域212とトラックTRiと微粒子131の数とを関連付けて記憶部10に記憶させる。
【0088】
従って、微粒子計測機9は、反応領域212のトラックTRiにおける微粒子131を計測する場合、トラックTRiよりも1つ前のトラックTRi−1において、レーザ光20aが反応領域212及び夾雑領域222を通過する前後のトラック区間Tbs_1_i−1及びTbs_2_i−1で受光信号LRSから低周波成分LFC_1_i−1及びLFC_2_i−1を抽出する。微粒子計測機9は、低周波成分LFC_1_i−1及びLFC_2_i−1に基づいて、トラックTRiのトラック区間Tps_2_iにおける補間低周波成分CLFC1_2_iを算出する。
【0089】
微粒子計測機9は、予め設定されている閾値THを補間低周波成分CLFC1_2_iに基づいて補正し、反応領域212のトラックTRiにおける補正閾値CTH1_2_iを設定する。さらに、微粒子計測機9は、微粒子計測タイミング信号BTS_2_iと補正閾値CTH1_2_iとにより、受光信号LRSから微粒子パルス信号BSを抽出し、カウントする。
【0090】
微粒子計測機9は、ステップS38にて、全ての反応領域210(211〜218)のトラックTRsからトラックTReまでの全てのトラックTRに対して、ステップS21〜S38と同様の処理を実行する。即ち、微粒子計測機9は、全ての反応領域210の全てトラックTRにおける微粒子131をカウントする。
【0091】
微粒子計測機9は、各反応領域211〜218における微粒子131をカウントすることにより、微粒子131と抗原抗体反応により特異的に結合している検出対象物質121を間接的にカウントすることができる。さらに計測部94は、反応領域210とトラックTRと微粒子131の数とを関連付けて記憶部10に記憶させる。
【0092】
計測部94は、ステップS39にて、記憶部10から微粒子131の数を読み出し、反応領域210(211〜218)ごとに微粒子131の数を合算する。さらに計測部94は、反応領域210ごとに微粒子131の計測結果を表示部11に表示させる。例えば、計測部94は、反応領域210ごとに微粒子131の総数を表示部11に表示させたり、微粒子131の計数分布を表示させたりする。
【0093】
第1実施形態の微粒子計測機9、分析装置1、及び、分析方法では、反応領域212のトラックTRiにおける微粒子131を計測する場合、トラックTRiに対して試料分析用ディスク200の半径方向(ラジアル方向)に隣り合うトラックTRi−1において、反応領域212に対して試料分析用ディスク200のトラックTRi−1の接線方向(タンジェンシャル方向)の前後のトラック区間Tbs_1_i−1及びTbs_2_i−1で受光信号LRSから低周波成分LFC_1_i−1及びLFC_2_i−1を抽出する。
【0094】
第1実施形態の微粒子計測機9、分析装置1、及び、分析方法では、低周波成分LFC_1_i−1及びLFC_2_i−1に基づいて、トラックTRiのトラック区間Tps_2_iにおける補間低周波成分CLFC1_2_iを算出する。第1実施形態の微粒子計測機9、分析装置1、及び、分析方法では、予め設定されている閾値THを補間低周波成分CLFC1_2_iに基づいて補正し、反応領域212のトラックTRiにおける補正閾値CTH1_2_iを設定する。第1実施形態の微粒子計測機9、分析装置1、及び、分析方法では、微粒子計測タイミング信号BTS_2_iと補正閾値CTH1_2_iとにより、受光信号LRSから微粒子パルス信号BSを抽出し、カウントする。
【0095】
従って、第1実施形態の微粒子計測機9、分析装置1、及び、分析方法によれば、試料分析用ディスク200の半径方向及び接線方向の反り等によって生じる低周波成分の変動の影響を低減させることができるため、低周波成分の変動による微粒子131の検出精度の悪化を抑制することができる。
【0096】
[第2実施形態]
図7図11図14A図14B図14C図14D、及び、図15を用いて、第2実施形態の微粒子計測機、分析装置、及び、分析方法を説明する。図7に示すように、第2実施形態の分析装置401は、第1実施形態の分析装置1と比較して、微粒子計測機409の処理が微粒子計測機9の処理と異なり、それ以外の構成及び処理は同じである。そこで、微粒子計測機409の処理について説明する。なお、説明をわかりやすくするために、第1実施形態の分析装置1と同じ構成部及び信号には同じ符号を付す。
【0097】
図7に示すように、分析装置401は、ターンテーブル2と、クランパ3と、ターンテーブル駆動部4と、ターンテーブル駆動回路5と、基準位置検出センサ6とを備える。また、分析装置1は、ガイド軸7と、光ピックアップ20と、光ピックアップ駆動回路8と、微粒子計測機409と、記憶部10と、表示部11とを備える。微粒子計測機409はターンテーブル駆動回路5、及び、光ピックアップ駆動回路8を制御する制御部として機能する。なお、分析装置401は表示部11を備えていなくてもよく、外部の表示部を用いてもよい。
【0098】
微粒子計測機409は、抽出された微粒子パルス信号BSから、検出対象物質121を標識する微粒子131の数を計測する。微粒子計測機409は、各反応領域210の微粒子131の数を微粒子計測タイミング信号BTSごとに記憶部10に記憶させる。微粒子計測機409は、反応領域210ごとに微粒子131の数を合算し、表示部11に表示させる。表示される微粒子131の数は検出対象物質121の数に相当する。
【0099】
図11図14A図14B図14C図14D、及び、図15を用いて、分析装置401による検出対象物質121の分析方法、具体的には検出対象物質121を標識する微粒子131の分析方法の一例を説明する。図14A図14B図14C、及び、図14Dは、分析装置401による検出対象物質121の分析方法の一例をフローチャートとして示している。
【0100】
微粒子計測機409は、図14Aに示すフローチャートのステップS41にて、試料分析用ディスク200が一定の線速度で回転するようにターンテーブル駆動回路5を制御し、ターンテーブル駆動部4にターンテーブル2を回転駆動させる。
【0101】
微粒子計測機409は、ステップS42にて、基準位置検出センサ6から試料分析用ディスク200に向けて検出光6aを照射させる。微粒子計測機409は、ステップS43にて、光ピックアップ20から試料分析用ディスク200に向けてレーザ光20aを照射させる。なお、ステップS42の後にステップS43を実行させてもよいし、ステップS43の後にステップS42を実行させてもよいし、ステップS42とステップS43とを同時に実行させてもよい。
【0102】
反応領域212のトラックTRiにおける微粒子131を計測する場合について説明する。説明をわかりやすくするために、反応領域212のトラックTRiにおける微粒子131を計測するための信号処理のみについて説明する。
【0103】
微粒子計測機409は、図14Bに示すフローチャートのステップS51にて、光ピックアップ駆動回路8を制御し、試料分析用ディスク200のトラックTRi−1にレーザ光20aが照射されるように光ピックアップ20をトラックTRi−1の上方に移動させる。これにより、レーザ光20aはトラックTRi−1上を走査される。なお、第2実施形態の微粒子計測機409、分析装置401、及び、分析方法では、トラックTRiを第3のトラックとし、トラックTRi−1を第4のトラックとする。
【0104】
図11に示すように、微粒子計測機409は、基準位置検出部91と、タイミング信号生成部92と、受光信号検出部93と、計測部494と、低周波成分抽出部495と、低周波成分演算部496と、閾値補正部497とを備える。
【0105】
微粒子計測機409、並びに、微粒子計測機409を構成する基準位置検出部91、タイミング信号生成部92、受光信号検出部93、計測部494、低周波成分抽出部495、低周波成分演算部496、及び、閾値補正部497は、回路等のハードウェア、または、CPUにより実行されるソフトウェア(コンピュータプログラム)のいずれかによって構成されていてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせた構成としてもよい。
【0106】
タイミング信号生成部92は、ステップS52にて、記憶部10からトラックTRi−1の計測パラメータSPi−1を読み出す。基準位置検出センサ6は、ステップS53にて、切欠き部202を検出することにより基準位置検出信号PDSを生成する。さらに基準位置検出センサ6は、基準位置検出信号PDSを微粒子計測機409の基準位置検出部91へ出力する。基準位置検出部91は基準位置検出信号PDSをタイミング信号生成部92へ出力する。
【0107】
光ピックアップ20は、ステップS54にて、試料分析用ディスク200からの反射光を受光して受光信号LRSを生成し、微粒子計測機409の受光信号検出部93へ出力する。受光信号検出部93は、受光信号LRSを低周波成分抽出部495、及び、計測部494へ出力する。
【0108】
図15は、受光信号LRSと低周波成分計測タイミング信号LTSと閾値THと補正閾値CTH2と基準位置検出信号PDSとの関係の一例をタイミングチャートとして示している。図15図12または図13に対応している。
【0109】
タイミング信号生成部92は、計測パラメータSPと基準位置検出信号PDSとに基づいて低周波成分計測タイミング信号LTSを生成し、低周波成分抽出部95へ出力する。トラックTRi−1において、タイミング信号生成部92は、計測パラメータSPi−1と基準位置検出信号PDSとに基づいて、図12または図15に示すように、低周波成分計測タイミング信号LTS_2_i−1を生成する。
【0110】
具体的には、トラックTRi−1において、タイミング信号生成部92は、ステップS55にて、計測パラメータSPi−1と基準位置検出信号PDSとに基づいて、低周波成分計測タイミング信号LTS_2_i−1を生成する。さらにタイミング信号生成部92は、低周波成分計測タイミング信号LTS_2_i−1を低周波成分抽出部495へ出力する。
【0111】
低周波成分計測タイミング信号LTS_2_i−1は、レーザ光20aが夾雑領域222、及び、反応領域212に対応するトラック区間Tps_2_i−1を通過した後のトラック区間Tbs_2_i−1で例えばハイレベルとなるゲートパルス信号である。
【0112】
トラック区間Tbs_2_i−1は、レーザ光20aがトラック区間Tps_2_i−1を通過した後の区間であり、かつ、レーザ光20aが夾雑領域223、及び、反応領域213に対応するトラック区間Tps_3_i−1に到達する前の区間である。即ち、トラック区間Tbs_2_i−1は、トラックTRi−1において、レーザ光20aが夾雑領域222及び反応領域212と夾雑領域223及び反応領域213との間隙を走査する区間に相当する。
【0113】
低周波成分抽出部495は、低周波成分計測タイミング信号LTSにより、受光信号LRSから試料分析用ディスク200の反応領域210の反りに起因して変動する低周波成分LFCを抽出し、低周波成分演算部496へ出力する。トラックTRi−1において、低周波成分抽出部495は、ステップS56にて、図15に示すように、低周波成分計測タイミング信号LTS_2_i−1により、受光信号LRSから試料分析用ディスク200の反りに起因して変動する低周波成分LFC_2_i−1を抽出する。さらに低周波成分抽出部495は、低周波成分LFC_2_i−1を低周波成分演算部496へ出力する。なお、第2実施形態の微粒子計測機409、分析装置401、及び、分析方法では、低周波成分LFC_2_i−1を第3の低周波成分とする。
【0114】
微粒子計測機409は、図14Cに示すフローチャートのステップS61にて、光ピックアップ駆動回路8を制御し、試料分析用ディスク200のトラックTRiにレーザ光20aが照射されるように光ピックアップ20をトラックTRiの上方に移動させる。これにより、レーザ光20aはトラックTRi上を走査される。
【0115】
タイミング信号生成部92は、ステップS62にて、記憶部10からトラックTRiの計測パラメータSPiを読み出す。基準位置検出センサ6は、ステップS63にて、切欠き部202を検出することにより基準位置検出信号PDSを生成する。さらに基準位置検出センサ6は、基準位置検出信号PDSを微粒子計測機409の基準位置検出部91へ出力する。基準位置検出部91は基準位置検出信号PDSをタイミング信号生成部92へ出力する。
【0116】
光ピックアップ20は、ステップS64にて、試料分析用ディスク200からの反射光を受光して受光信号LRSを生成し、微粒子計測機409の受光信号検出部93へ出力する。受光信号検出部93は、受光信号LRSを低周波成分抽出部495、及び、計測部494へ出力する。
【0117】
トラックTRiにおいて、タイミング信号生成部92は、ステップS65にて、計測パラメータSPiと基準位置検出信号PDSとに基づいて、図12または図15に示すように、低周波成分計測タイミング信号LTS_1_iを生成する。さらにタイミング信号生成部92は、低周波成分計測タイミング信号LTS_1_iを低周波成分抽出部495へ出力する。なお、第2実施形態の微粒子計測機409、分析装置401、及び、分析方法において、低周波成分計測タイミング信号LTS_2_i−1を第5のタイミング信号とし、低周波成分計測タイミング信号LTS_1_iを第6のタイミング信号とする。
【0118】
低周波成分計測タイミング信号LTS_1_iは、レーザ光20aが夾雑領域222、及び、反応領域212に対応するトラック区間Tps_2_iに到達する前のトラック区間Tbs_1_iで例えばハイレベルとなるゲートパルス信号である。
【0119】
トラック区間Tbs_1_iは、レーザ光20aが夾雑領域221、及び、反応領域211に対応するトラック区間Tps_1_iを通過した後の区間であり、かつ、レーザ光20aが夾雑領域222、及び、反応領域212に対応するトラック区間Tps_2_iに到達する前の区間である。即ち、トラック区間Tbs_1_iは、トラックTRiにおいて、レーザ光20aが夾雑領域221及び反応領域211と夾雑領域222及び反応領域212との間隙を走査する区間に相当する。
【0120】
トラックTRiにおいて、低周波成分抽出部495は、ステップS66にて、図15に示すように、低周波成分計測タイミング信号LTS_1_iにより、受光信号LRSから試料分析用ディスク200の反応領域210の反りに起因して変動する低周波成分LFC_1_iを抽出する。さらに低周波成分抽出部495は、低周波成分LFC_1_iを低周波成分演算部496へ出力する。なお、第2実施形態の微粒子計測機409、分析装置401、及び、分析方法では、低周波成分LFC_1_iを第4の低周波成分とする。
【0121】
低周波成分演算部496は、ステップS67にて、低周波成分LFC_2_i−1と低周波成分LFC_1_iとを例えば補間多項式を用いて演算し、図15に示すように、トラックTRiのトラック区間Tps_2_iにおける補間低周波成分CLFC2_2_iを算出する。補間低周波成分CLFC2_2_iは、低周波成分LFC_2_i−1と低周波成分LFC_1_iとによって補間された、トラック区間Tps_2_iにおける低周波成分である。さらに低周波成分演算部496は、補間低周波成分CLFC2_2_iを閾値補正部497へ出力する。
【0122】
閾値補正部497は、ステップS68にて、図15に示すように、予め設定されている閾値THを補間低周波成分CLFC2_2_iに基づいて補正し、トラックTRiにおける反応領域212の補正閾値CTH2_2_iを設定する。さらに閾値補正部497は、補正閾値CTH2_2_iを計測部494へ出力する。
【0123】
トラックTRiにおいて、タイミング信号生成部92は、計測パラメータSPiと基準位置検出信号PDSとに基づいて、図12に示すように、微粒子計測タイミング信号BTS_1_i、BTS_2_i、及び、BTS_3_iを生成する。タイミング信号生成部92は、微粒子計測タイミング信号BTS_1_i、BTS_2_i、及び、BTS_3_iを計測部494へ出力する。
【0124】
例えば、トラックTRiにおいて、タイミング信号生成部92は、図14Dに示すフローチャートのステップS71にて、計測パラメータSPiと基準位置検出信号PDSとに基づいて、微粒子計測タイミング信号BTS_2_iを生成する。微粒子計測タイミング信号BTS_2_iは、図10図12、または、図15に示すように、レーザ光20aが反応領域212を走査するトラック区間Tcs_2_iで例えばハイレベルとなるゲートパルス信号である。さらにタイミング信号生成部92は、微粒子計測タイミング信号BTS_2_iを計測部494へ出力する。
【0125】
計測部494は、ステップS72にて、微粒子計測タイミング信号BTS_2_iに基づいて受光信号LRSからパルス信号を抽出する。さらに計測部494は、抽出されたパルス信号と補正閾値CTH2_2_iとを比較し、例えば補正閾値CTH2_2_iよりも低い信号レベルのパルス信号を微粒子パルス信号BSと判定し、抽出する。
【0126】
計測部494は、ステップS73にて、微粒子パルス信号BSをカウントすることにより、反応領域212のトラックTRiにおける微粒子131をカウントする。さらに計測部494は、反応領域212とトラックTRiと微粒子131の数とを関連付けて記憶部10に記憶させる。
【0127】
従って、微粒子計測機409は、反応領域212のトラックTRiにおける微粒子131を計測する場合、トラックTRiよりも1つ前のトラックTRi−1においてレーザ光20aが反応領域212及び夾雑領域222を通過した後のトラック区間Tbs_2_i−1で受光信号LRSから低周波成分LFC_2_i−1を抽出する。
【0128】
さらに微粒子計測機409は、トラックTRiにおいてレーザ光20aが反応領域212及び夾雑領域222に到達する前のトラック区間Tbs_1_iで受光信号LRSから低周波成分LFC_1_iを抽出する。微粒子計測機409は、低周波成分LFC_2_i−1及びLFC_1_iに基づいて、トラックTRiのトラック区間Tps_2_iにおける補間低周波成分CLFC2_2_iを算出する。
【0129】
微粒子計測機409は、予め設定されている閾値THを補間低周波成分CLFC2_2_iに基づいて補正し、反応領域212のトラックTRiにおける補正閾値CTH2_2_iを設定する。さらに、微粒子計測機409は、微粒子計測タイミング信号BTS_2_iと補正閾値CTH2_2_iとにより、受光信号LRSから微粒子パルス信号BSを抽出し、カウントする。
【0130】
微粒子計測機409は、ステップS74にて、全ての反応領域210(211〜218)のトラックTRsからトラックTReまでの全てのトラックTRに対して、ステップS51〜S74と同様の処理を実行する。即ち、微粒子計測機409は、全ての反応領域210の全てトラックTRにおける微粒子131をカウントする。
【0131】
微粒子計測機409は、各反応領域211〜218における微粒子131をカウントすることにより、微粒子131と抗原抗体反応により特異的に結合している検出対象物質121を間接的にカウントすることができる。計測部494は、反応領域210とトラックTRと微粒子131の数とを関連付けて記憶部10に記憶させる。
【0132】
計測部494は、ステップS75にて、記憶部10から微粒子131の数を読み出し、反応領域210(211〜218)ごとに微粒子131の数を合算する。さらに計測部494は、反応領域210ごとに微粒子131の計測結果を表示部11に表示させる。例えば、計測部494は、表示部11に各反応領域210の微粒子131の総数を表示させたり、微粒子131の計数分布を表示させたりする。
【0133】
第2実施形態の微粒子計測機409、分析装置401、及び、分析方法では、反応領域212のトラックTRiにおける微粒子131を計測する場合、トラックTRiに対して試料分析用ディスク200の半径方向(ラジアル方向)に隣り合うトラックTRi−1において反応領域212に対して試料分析用ディスク200のトラックTRの接線方向(タンジェンシャル方向)のトラック区間Tbs_2_i−1における受光信号LRSから低周波成分LFC_2_i−1を抽出する。
【0134】
第2実施形態の微粒子計測機409、分析装置401、及び、分析方法では、さらにトラックTRiにおいて反応領域212に対して試料分析用ディスク200のトラックTRの接線方向のトラック区間Tbs_1_iにおける受光信号LRSから低周波成分LFC_1_iを抽出する。第2実施形態の微粒子計測機409、分析装置401、及び、分析方法では、低周波成分LFC_2_i−1及びLFC_1_iに基づいて、トラックTRiのトラック区間Tps_2_iにおける補間低周波成分CLFC2_2_iを算出する。
【0135】
第2実施形態の微粒子計測機409、分析装置401、及び、分析方法では、予め設定されている閾値THを補間低周波成分CLFC2_2_iに基づいて補正し、反応領域212のトラックTRiにおける補正閾値CTH2_2_iを設定する。第2実施形態の微粒子計測機409、分析装置401、及び、分析方法では、微粒子計測タイミング信号BTS_2_iと補正閾値CTH2_2_iとにより、受光信号LRSから微粒子パルス信号BSを抽出し、カウントする。
【0136】
従って、第2実施形態の微粒子計測機409、分析装置401、及び、分析方法によれば、試料分析用ディスク200の半径方向及び接線方向の反り等によって生じる低周波成分の変動の影響を低減させることができるため、低周波成分の変動による微粒子131の検出精度の悪化を抑制することができる。
【0137】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【0138】
第1実施形態の分析装置1では、図11に示すように、微粒子計測機9は、基準位置検出部91と、タイミング信号生成部92と、受光信号検出部93と、計測部94と、低周波成分抽出部95と、低周波成分演算部96と、閾値補正部97とを備える。例えば、第1実施形態の分析装置1では、微粒子計測機9が、タイミング信号生成部92と、計測部94と、低周波成分抽出部95と、低周波成分演算部96と、閾値補正部97とを備える構成としてもよい。
【0139】
この場合、分析装置1は、ターンテーブル2と、クランパ3と、ターンテーブル駆動部4と、ターンテーブル駆動回路5と、基準位置検出センサ6と、ガイド軸7と、光ピックアップ20と、光ピックアップ駆動回路8と、制御部と、記憶部10と、表示部11とを備え、かつ、制御部が、基準位置検出部91と、受光信号検出部93と、微粒子計測機9とを有する構成となる。
【0140】
第2実施形態の分析装置401では、図11に示すように、微粒子計測機409は、基準位置検出部91と、タイミング信号生成部92と、受光信号検出部93と、計測部494と、低周波成分抽出部495と、低周波成分演算部496と、閾値補正部497とを備える。例えば、第2実施形態の分析装置401では、微粒子計測機409が、タイミング信号生成部92と、計測部494と、低周波成分抽出部495と、低周波成分演算部496と、閾値補正部497とを備える構成としてもよい。
【0141】
この場合、分析装置401は、ターンテーブル2と、クランパ3と、ターンテーブル駆動部4と、ターンテーブル駆動回路5と、基準位置検出センサ6と、ガイド軸7と、光ピックアップ20と、光ピックアップ駆動回路8と、制御部と、記憶部10と、表示部11とを備え、かつ、制御部が、基準位置検出部91と、受光信号検出部93と、微粒子計測機409とを有する構成となる。
【0142】
図12図13、または、図15では、微粒子計測タイミング信号BTS、及び、低周波成分計測タイミング信号LTSを、開始時点で立ち上がり、終了時点で立ち下がる矩形状のゲートパルス信号として示している。微粒子計測タイミング信号BTS、及び、低周波成分計測タイミング信号LTSは、ゲートパルス信号に限定されるものではなく、例えば開始時点、及び、終了時点でそれぞれハイレベルとなるトリガパルス信号であってもよい。
【0143】
低周波成分計測タイミング信号LTSにより受光信号LRSから抽出された低周波成分LFCから補間低周波成分CLFCを算出する場合、図13、または、図15では各低周波成分LFCに対して2つのサンプリングポイントを示している。各低周波成分LFCに対するサンプリングポイントは2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。
【0144】
反応領域212のトラックTRiにおける微粒子131を計測する場合、微粒子計測機9または409は、トラックTRiにおいて、低周波成分計測タイミング信号LTS_1_i及びLTS_2_iにより、夾雑領域222、及び、反応領域212に対応するトラック区間Tps_2_iの前後のトラック区間Tbs_1_i及びTbs_2_iにおける受光信号LRSから低周波成分LFC_1_i及びLFC_1_iを抽出するようにしてもよい。
【0145】
微粒子計測機9または409は、微粒子計測タイミング信号BTS_2_iにより、トラック区間Tcs_2_iにおける受光信号LRSを抽出する。微粒子計測機9または409は、抽出された受光信号LRSと、低周波成分LFC_1_i及びLFC_1_iとを記憶部10に記憶させる。微粒子計測機9または409は、記憶部10から低周波成分LFC_1_i及びLFC_1_iを読み出し、低周波成分LFC_1_i及びLFC_1_iに基づいて、トラックTRiのトラック区間Tps_2_iにおける補間低周波成分CLFC_2_iを算出する。
【0146】
微粒子計測機9または409は、予め設定されている閾値THを補間低周波成分CLFC_2_iに基づいて補正し、反応領域212のトラックTRiにおける補正閾値CTH_2_iを設定する。微粒子計測機9または409は、記憶部10から微粒子計測タイミング信号BTS_2_iにより抽出された受光信号LRSを読み出す。微粒子計測機9または409は、補正閾値CTH_2_iにより、受光信号LRSから微粒子パルス信号BSを抽出し、カウントする。
【0147】
上記の微粒子計測機、分析装置、及び、分析方法によれば、第1または第2実施形態の微粒子計測機9または409、分析装置1または401、及び、分析方法と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0148】
1,401 分析装置
2 ターンテーブル
4 ターンテーブル駆動部
5 ターンテーブル駆動回路
8 光ピックアップ駆動回路
9,409 微粒子計測機
20 光ピックアップ
20a レーザ光
92 タイミング信号生成部
94 計測部
95 低周波成分抽出部
96 低周波成分演算部
97 閾値補正部
121 検出対象物質
131 微粒子
200 試料分析用ディスク
210,211,212,213,214,215,216,217,218 反応領域
121 検出対象物質
131 微粒子
200 試料分析用ディスク
BS 微粒子パルス信号
BTS 微粒子計測タイミング信号(第1のタイミング信号)
CLFC 補間低周波成分
CTH 補正閾値
LFC 低周波成分
LRS 受光信号
LTS 低周波成分計測タイミング信号(第2〜第6のタイミング信号)
Tbs トラック区間(第2のトラック区間)
Tcs トラック区間(第1のトラック区間)
TH 閾値
TR トラック
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図15