(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883258
(24)【登録日】2021年5月12日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】ロングアーク型放電ランプ
(51)【国際特許分類】
H01J 61/30 20060101AFI20210531BHJP
【FI】
H01J61/30 C
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2017-101396(P2017-101396)
(22)【出願日】2017年5月23日
(65)【公開番号】特開2018-198118(P2018-198118A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106862
【弁理士】
【氏名又は名称】五十畑 勉男
(72)【発明者】
【氏名】石田 賢志
【審査官】
関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−330308(JP,A)
【文献】
特開2015−084337(JP,A)
【文献】
特開2014−026845(JP,A)
【文献】
特開2005−019131(JP,A)
【文献】
実開昭61−196454(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J61/30−61/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を透過する発光管と、該発光管内の両端に一対の電極を有するロングアーク型放電ランプにおいて、
前記発光管は、紫外線透過率の異なる複数の発光管部を連設したものであって、
当該発光管は、中央の第1発光管部と、その両端の第2発光管部と第3発光管部からなり、
前記第2発光管部および第3発光管部の紫外線透過率が、前記第1発光管部の紫外線透過率よりも大きいことを特徴とするロングアーク型放電ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロングアーク型放電ランプに関するものであり、特に、発光管に改良を加えたロングアーク型放電ランプに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷業界や電子工業界においては、インキや塗料の乾燥、樹脂の硬化処理に使用する光化学反応用装置の紫外線光源として、或いは、半導体基板や液晶ディスプレイ用の液晶基板を露光するのに使用する露光装置の紫外線光源として、ロングアーク型放電ランプが使用されている。
例えば、特開2006−134710号公報(特許文献1)や特開2013−109992号公報(特許文献2)などにその具体的構造が開示されている。
【0003】
図3にこれら従来技術のロングアーク型放電ランプの構造が示されている。
同図において、ロングアーク型放電ランプ1の発光管2の両端部にはシュリンクシールされた封止部3が形成されており、この発光管2内には一対の電極4、4が対向配置されている。
そして、紫外線を良好に放射するために、発光管2内には、水銀、鉄、タリウム等の金属が封入されている。
【0004】
ところで近時においては、被照射物(ワーク)が大型化する傾向が顕著であるが、その場合も、従来設備をそのまま変更することなく、ランプの有効発光長を長くすることで対応したい、という要請がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−134710号公報
【特許文献2】特開2013−109992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、紫外線を透過する発光管と、該発光管内の両端に一対の電極を有するロングアーク型放電ランプにおいて、従来設備を変更することなしに、ランプの有効発光長を拡張できて、より長寿命のロングアーク型放電ランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るロングアーク型放電ランプは、前記発光管は、紫外線透過率の異なる複数の発光管部を連設したものであることを特徴とする。
また、前記発光管は、中央の第1発光管部と、その両端の第2発光管部と第3発光管部からなり、前記第2発光管部および第3発光管部の紫外線透過率が、前記第1発光管部の紫外線透過率よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明のロングアーク型放電ランプによれば、前記発光管は、紫外線透過率の異なる複数の発光管部を連設し、両端の第2発光管部および第3発光管部の紫外線透過率を、中央の第1発光管部の紫外線透過率よりも大きくしたので、ランプの軸方向の両端側において照度が上昇し、それにより、ランプの有効発光長が実質的に長くなるという効果を奏する。これにより、従来設備に大幅な改造を加えることなく、大型化するワークに対応できる。
また、経年劣化で発光管の電極近傍が黒化・白濁した場合であっても、電極近傍での照度低下の割合を規格値以上に維持でき、より長期間寿命を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のロングアーク型放電ランプの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1には、本発明のロングアーク型放電ランプ1の断面図が示されていて、発光管2は、中央の第1発光管部21と、その両端に連設された第2発光管部2および第3発光管部23とからなる。これらの第1発光管部21と第2発光管部22および第3発光管部23とは、例えば、酸水素バーナーにより加熱して端部を溶融し、第1発光管部21の両端に第2発光管部22および第3発光管部23を融着することで連設一体化することができる。
そして、この発光管2は両端部にはシュリンクシールされた封止部3が形成されており、この発光管2内には一対の電極4、4が対向配置されていて、この発光管2内には、水銀、鉄、タリウム等の金属が封入されていることは従来と同様である。
【0011】
ここで、両端の第2発光管部22および第3発光管部23の紫外線透過率は、中央の第1発光管部21の紫外線透過率よりも大きな材料で構成されている。
発光管の具体的な一例を示すと以下の通りである。
ランプ全長:1730mm
電極間距離:1500mm
第1発光管部の長さ:700mm
第2発光管部の長さ:400mm
第3発光管部の長さ:400mm
発光管部の材料と紫外線透過率(800℃における254nmの透過率):
第1発光管部:F310ガラス(信越石英製) 透過率 92%
第2、3発光管部:GE214(GE製) 透過率 85%
管径および肉厚:外径23.8mm、 肉厚1.5mm
【0012】
上記の発光管2内に封入物として水銀(Hg)300mg、封入ガスとしてアルゴン(Ar)5000Paを封入して、ランプ点灯電力24kWで点灯させて、照度を測定した。なお、照度はランプ中心から80mmの距離で測定。
ここで、比較例として、発光管の材料が全長に亘り、GE214ガラスで構成したものを用意した。
その結果が、
図2に示されている。
【0013】
比較例(点線)においては、中央部をピークとして両端において照度低下が生じているが、本発明(実線)においては、発光管の両側の端部領域において中央部より上昇していることが分かる。
ここで、両者の有効照射領域(有効発光長)を、中央部の照度を1として、その90%まで照度低下した位置までの全長とすると、比較例においては652mm×2=1304mmであり、本発明においては675mm×2=1350mmとなる。つまり、有効発光長が46mmだけ長くなったことが分かる。
【0014】
なお、上記実施例では、両側の第2発光管部22と第3発光管部23は、同じ長さで、同じ紫外線透過率のものとしたが、若干の変更は可能であり、長さおよび紫外線透過率を変えることもできる。ただし、両者の紫外線透過率は共に中央の第1発光管部21の紫外線透過率よりも、大きなものとすることが肝要である。こうすることで、照度分布を任意のものに変えることができる。
また、中央の第1発光管部21の両端には、第2発光管部22と第3発光管部23がひとつずつ連設されているものとしたが、これらを更に分割構成とすることもできる。その場合には、端部側に行くほど紫外線透過率を大きなものとすることが好ましい。
【0015】
以上のように、紫外線を透過する発光管を、紫外線透過率の異なる複数の発光管部を連設して、中央の第1発光管部と、その両端の第2発光管部と第3発光管部から構成し、前記第2発光管部および第3発光管部の紫外線透過率が、前記第1発光管部の紫外線透過率よりも大きいものとしたので、発光管の中央部での照度よりも両端側での照度が上昇し、その結果、ランプの有効発光長が長くなるという効果を奏する。
そのため、従来の設備に大幅な改良を加えることなく、ワークの大型化に対応できるものである。
【符号の説明】
【0016】
1 ロングアーク型放電ランプ
2 発光管
21 第1発光管部
22 第2発光管部
23 第3発光管部
3 封止部
4 電極