【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、前記従来のPCD工具の問題点を解決すべく、超硬合金基材とダイヤモンド層との界面接合強度を高くする方策について鋭意研究した。超硬合金とは、周期律表IVa、Va、VIa族金属の炭化物をFe、Co、Niなどの鉄系金属で焼結した複合材料を超硬合金(Hartmetalle, hard metals、Cemented Carbide)の総称である。本願において、超硬合金基材とはWCを主体としCoを含む超硬合金基材であり、「WC基超硬合金基材」と称されることもある。WC基超硬合金基材のWC及びCoの含有量は、WC基超硬合金基材の全体重量の95重量%以上であり用途に応じて5重量%未満のCr等の微量元素を含むこともある。
その結果、超硬合金基材とダイヤモンド層を積層した状態で超高圧高温装置内にて焼結するに当たり、予めダイヤモンド粉末に混合するCoからなる金属触媒粉末の混合量を適正化することによって、超硬合金基材とダイヤモンド層との界面に形成されるCoリッチ層の厚さを抑制するとともに、界面におけるWC粒子の異常成長を抑制できることを見出した。
そして、過剰な層厚のCoリッチ層の形成を抑制し、また、WC粒子の異常成長を抑制することによって、本発明のPCD工具は、耐熱性向上に加えて、界面接合強度も向上することから、工具側面から衝撃的負荷に対する耐衝撃性が向上し、界面におけるクラックの発生、剥離の発生を抑制し得ることを見出したのである。
【0009】
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)WCを主体としCoを含む超硬合金基材上にCoからなる金属触媒を含有するダイヤモンド層が設けられた多結晶ダイヤモンド焼結体工具において、
前記超硬合金基材と前記ダイヤモンド層との界面に形成されているCoリッチ層の平均層厚は30μm以下であり、
前記ダイヤモンド層に含有されるCoの平均含有量をC
DIAとし、また、前記Coリッチ層におけるCo含有量のピーク値をC
MAXとした時、C
MAX/C
DIAの値が2以下であり、
前記超硬合金基材と前記ダイヤモンド層との界面からダイヤモンド層の内部へ向かう50μmまでの領域におけるWC粒子の平均粒径Dは、超硬合金基材の内部におけるWC粒子の平均粒径をDoとした時、D/Doの値が2未満であることを特徴とする多結晶ダイヤモンド焼結体工具。
(2)前記Coリッチ層と前記超硬合金基材との界面に平均層厚が5μm以上15μm以下の緩衝層を備えることを特徴とする(1)に記載の多結晶ダイヤモンド焼結体工具。
(3)前記Coリッチ層と前記超硬合金基材との界面に平均層厚が8μm以上15μm以下の緩衝層を備えることを特徴とする(2)に記載の多結晶ダイヤモンド焼結体工具。
(4)前記Coリッチ層の平均層厚が21μm以上30μm以下であることを特徴とする(3)に記載の多結晶ダイヤモンド焼結体工具。
(5)前記ダイヤモンド層の平均層厚が0.5mmから15mmであり、
前記ダイヤモンド層は前記Coリッチ層の直上に形成され、
前記Coリッチ層は前記緩衝層の直上に形成され、
前記緩衝層は前記超硬合金基材の直上に形成されていることを特徴とする前記(
2)乃至(4)のいずれかに記載の多結晶ダイヤモンド焼結体工具。
(6)Coを9〜18質量%含有し、平均粒径0.5〜4μmのWC粒子を含有する超硬合金基材上に、平均粒径1〜11μmのダイヤモンド粉末中に15〜33質量%のCo粉末を混合したダイヤモンド原料粉末を積層し、熱力学的にダイヤモンドが安定する領域である焼結圧力5GPa以上かつ焼結温度1400℃ 以上の条件の超高圧高温装置内で焼結することを特徴とする前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の多結晶ダイヤモンド焼結体工具の製造方法。
(7)焼結前に前記ダイヤモンド層に混合されるCo混合量から前記超硬合金基材のCo平均含有量を引いた値が1質量%から30質量%であることを特徴とする(6)に記載の多結晶ダイヤモンド焼結体工具の製造方法。
(8)焼結前に前記ダイヤモンド層に混合されるCo混合量から前記超硬合金基材のCo平均含有量を引いた値が10質量%から30質量%であることを特徴とする(6)に記載の多結晶ダイヤモンド焼結体工具の製造方法。
(9)焼結前に前記ダイヤモンド層に混合されるCo混合量から前記超硬合金基材のCo平均含有量を引いた値が16質量%から28質量%であることを特徴とする(6)に記載の多結晶ダイヤモンド焼結体工具の製造方法。」
を特徴とするものである。
【0010】
以下に、本発明について、詳細に説明する。
【0011】
図1に、本発明の多結晶ダイヤモンド焼結体(PCD)工具を製造するための超高圧高温装置の概略模式図を示す。
図1に示すように、本発明のPCD工具は、例えば、Taカプセル(9)の底部から上方へ順に、所定平均粒径のダイヤモンド粉末中に所定量のCo粉末を混合したダイヤモンド原料粉末(8)、所定量のCoを含有し所定の平均粒径のWC粒子を含有する超硬合金基材(1)、Ta箔(6)、グラファイトディスク(2)を積層し、さらにその上に、Ta箔(6)、超硬合金基材(1)、ダイヤモンド原料粉末(8)を積層し、Taカプセル内にこのように焼結用原料を積層した状態で、熱力学的にダイヤモンドが安定する領域、すなわち、圧力5GPa〜10GPaかつ焼結温度1400℃〜2200℃以上で超高圧高温焼結することによって作製することができる。
【0012】
前記超高圧高温装置による焼結において、焼結圧力が5GPa未満では、所定の焼結温度において、ダイヤモンドの安定領域でないため、ダイヤモンドが黒鉛(グラファイト)逆変換し、高硬度の焼結体が得られないことから、焼結圧力は5GPa以上とする必要があるが、その効果は10GPa以下で十分であり、それを超えると装置コストが高くなるので、加圧圧力は5〜10GPaとすることが望ましい。
また、焼結温度が1400℃未満では、金属触媒であるCo等が十分に溶解せず、未焼結又は焼結反応が不十分となり焼結体の緻密化を図れないので、焼結温度は1400℃以上とする必要があり、一方、焼結温度が2200℃を超えると、所定の焼結圧力において、ダイヤモンドの安定領域でないため、過焼結状態となり、ダイヤモンド粒子がグラファイト化する現象が生じるばかりか、超硬合金基材とダイヤモンド層の界面におけるCoリッチ層の層厚が厚くなりすぎるとともに、WC粒子の異常成長が生じるため、焼結温度は1400℃以上2500℃以下、好ましくは、1450℃以上2000℃以下とする。
【0013】
超硬合金基材とダイヤモンド層の界面のCoリッチ層:
図6は、本発明の一実施形態のPCD工具の模式的な縦断面図を示す。本発明では、超硬合金基材(17)とダイヤモンド層(18)の界面に形成されるCoリッチ層(19)の厚さを適正範囲に抑え、さらに、界面におけるWC粒子の異常成長を抑制するために、超硬合金基材中に含有されるCo含有量、ダイヤモンド粉末に事前混合するCo含有量、ダイヤモンド粉末の平均粒径および超硬合金基材におけるWC粒子の平均粒径を所定の範囲内とすることが重要である。
ダイヤモンド層(18)の好ましい平均層厚は0.5mm〜15mmである。ダイヤモンド層(18)の平均層厚が0.5mm未満では、ダイヤモンド層の厚みが不十分であり、工具として使用した場合、摩耗が短期間で超硬合金基材へ到達し、急速に摩耗が進行する。その結果、工具寿命が低下する。一方、ダイヤモンド層(18)の平均層厚が15mmを越えると、製造コストに見合う効果の向上がない。ダイヤモンド層(18)のより好ましい平均層厚は1.0mm〜10mmであり、さらにより好ましくは2.0mm〜8.0mmである。
図7は、本発明の他実施形態のPCD工具の模式的な縦断面図を示す。この場合、Coリッチ層(19)と超硬合金基材(17)との界面に緩衝層(20)が更に形成されている。
図7に示す本発明の他実施形態のPCD工具では、焼結前にダイヤモンド層(18)に混合されるCo混合量から超硬合金基材(17)のCo平均含有量を引いた値が1質量%から30質量%の範囲内に設定されている。この値が1質量%未満では、緩衝層が形成されず、30質量%を超えるとダイヤモンド層中に含有するCoの含有量が多くなり過ぎるために、摩耗性能が著しく低下し、工具として使用した場合には性能が低下する。
緩衝層(20)の境界線は、以下のように定義する。上述したように緩衝層(20)は、Coリッチ層(19)と超硬合金基材(17)との界面に形成される。Coリッチ層(19)と緩衝層(20)との間の境界線は、Coリッチ層(19)中で一度Cmaxの値まで上昇したCo含有量が超硬合金基材(17)側に向けて減少し、Co含有量が1.1×C
DIAの値未満となるところである。緩衝層(20)と超硬合金基材(17)との間の境界線は、緩衝層(20)中でCo含有量が超硬合金基材(17)側に向けて減少し、超硬合金基材(17)に含有されるCoの平均含有量Cwcとなったところである。
緩衝層(20)の平均層厚は、複数の点で上記の境界線間の距離を、層厚方向で測定することで得ることができる。
そのため、ダイヤモンド層(18)と超硬合金基材(17)との界面から超硬合金基材(17)へ向けてのCo含有量の変化は、急激に減少せず、緩やかに緩衝層(20)の厚み方向の距離にほぼ比例した形で一方向的に減少する。ここで、一方向的に減少するとは、緩衝層のCoリッチ層(18)側から超硬合金基材(17)側にかけて、Co含有量が増加することなく減少し続けることを意味する(微視的な観察による局所的なノイズとしての増加は除く)。
物理特性が異なるダイヤモンド層(18)とWC超硬合金基材(17)との間でCo含有量が、ダイヤモンド層(18)からWC超硬合金基材(17)に向けて、緩やかに減少することで、組織・組成の違いに起因する物理特性の変化の度合いも緩やかなものとすることができる。
Coリッチ層(19)と超硬合金基材(17)との界面に緩衝層(20)が更に形成されていることにより、ダイヤモンド層(18)とWC超硬合金基材(17)との界面接合強度をさらに向上させることができる。例えば、瞬間的な衝撃に起因したダイヤモンド層(17)の剥離の発生を抑制することができる。
この瞬間的な衝撃に起因したダイヤモンド層(17)の剥離の発生は、
図8に示した試験片を用いて、
図9及び
図10に示した衝撃せん断強度試験により評価することができる。
焼結前にダイヤモンド層(18)に混合されるCo混合量から超硬合金基材(17)のCo平均含有量を引いた値のより好ましい範囲は、10質量%から30質量%である。さらにより好ましくは16質量%から28質量%である。
。
焼結されると焼結前のダイヤモンド層(18)に混合されるCo混合量は変化する。焼結前にダイヤモンド層(18)に混合されるCo混合量から超硬合金基材(17)のCo平均含有量を引いた値が1質量%から30質量%の範囲内に設定されており、例えば上記焼結条件で焼結を行った場合は、焼結後のダイヤモンド層(18)の質量%でのCo含有量から焼結後の超硬合金基材(17)の質量%でのCo含有量を引いた値は、−5質量%から25質量%となる。
緩衝層(20)の好ましい平均層厚は5μmから15μmである。より好ましくは8μm〜15μmである。さらにより好ましくは、8μm〜10μmである。緩衝層(20)の平均層厚が5μm未満だと、衝撃性能が低下し、緩衝層の持つ耐衝撃性向上の効果がなくなる。一方、緩衝層(20)の平均層厚が15μmを越えると、焼結前にダイヤモンド層(18)に混合されるCo混合量から超硬合金基材(17)のCo平均含有量を引いた値を30質量%超とする必要が生じ、ダイヤモンド層に含有されるCo含有量が過剰となり、結果として耐摩耗性能が低下する。
緩衝層(20)におけるCo含有量の減少の傾きは、1質量%/μm〜10質量%/μmの範囲内である。より好ましくは1.5質量%/μm〜7.5質量%/μmの範囲内である。さらにより好ましくは、2質量%/μm〜5質量%/μmの範囲内である。
【0014】
超硬合金基材(17)とダイヤモンド層(18)の界面に形成されるCoリッチ層(19)の平均層厚は、その厚さが30μmを超えると、界面強度が低下し、その結果、界面でのクラック発生、剥離発生等の問題が生じるので、Coリッチ層(19)の平均層厚は30μm以下、好ましくは、20μm以下とする。
ここで、Coリッチ層(19)の平均層厚とは、焼結後のダイヤモンド層に含有される金属触媒として残留したCoリッチ層以外の領域における平均Co含有量をC
DIAとしたとき、超硬合金基材(17)とダイヤモンド層(18)の界面から、超硬合金基材とダイヤモンド層の内部方向に向かって、それぞれ50μm(ダイヤモンド層と超硬基材層と合わせて100μm)に渡り、Co含有量を測定し、測定されたCo含有量の値が、1.1×C
DIA以上になる超硬合金基材とダイヤモンド層の界面の距離を測定位置の異なる複数個所で測定し、これらの値を平均することにより求めたCoリッチ層の層厚であると定義する。
また、本発明では、前記Coリッチ層(19)におけるCo含有量のピーク値をC
MAXとした時、ダイヤモンド層(18)に含有されるCoの平均含有量C
DIAとの比の値C
MAX/C
DIAが2以下であることが望ましい。これは、Coリッチ層(19)の層厚が薄い場合(平均層厚が30μm以下)であっても、前記C
MAX/C
DIAの値が2を超えるような場合には、超硬合金基材(17)とダイヤモンド層(18)の界面におけるCo含有量の濃度変化率が急激に大きくなるため、Coリッチ層(19)を薄くしたことによる界面強度の向上効果が低減するからである。したがって、Coリッチ層(19)におけるC
MAX/C
DIAの値は2以下とすることが望ましい。
なお、ダイヤモンド層(18)から、超硬合金基材(17)とダイヤモンド層(18)の界面に向かうCo含有量(即ち、C
MAX、C
DIA)の測定は、例えば、EPMA(電子線マイクロアナライザ)のライン分析によって行うことができる。例えば、
図3、
図4に示すように、ダイヤモンド層から超硬基材に向かって約100μm(ダイヤモンド層と超硬基材層をそれぞれ約50μm)の距離を20μmビーム径で、0.5μm測定間隔で走査し、EPMAから照射された加速電子線により発生するCoの特性X線を検出し、各位置におけるCo含有量をカウント数(単位:cps。count per second,一秒当たりのX線のカウント数)として求めることによって、C
MAX、C
DIAの値を測定することができる。
なお、ダイヤモンド層(18)に含有されるCoの平均含有量C
DIAの値は、Coリッチ層(19)の存在によってCo含有量が大きく変化せず、Co含有量(カウント数)が±6%の範囲でほぼ一定値として測定される値である。
このC
DIAの値は、Coリッチ層(19)を越えたところからダイヤモンド層(18)側に向けて、ダイヤモンド層(18)の層方向に0.5μm測定間隔で、異なる少なくとも200点で測定した値の平均値として定義される。
例えば、
図3に示す本発明PCD工具(H)のライン分析においては、ダイヤモンド層と超硬合金基材との界面からほぼ30μm以上離れたダイヤモンド層におけるCo含有量のカウント数は5914±6%で一定値を示すから、本発明PCD工具(H)におけるC
DIAの値は5914となる。
一方、
図4に示す比較例PCD工具(G)のライン分析においては、ダイヤモンド層と超硬合金基材との界面からほぼ50μm以上離れたダイヤモンド層におけるCo含有量は3907±6%カウントでほぼ一定となるから、比較例PCD工具(G)におけるC
DIAの値は3907となる。
超硬合金基材のCwcの値は、Coリッチ層(19)を越えて、さらに50μm先から超硬合金基材(17)側に向けて、超硬合金基材(17)の層方向に0.5μm測定間隔で、異なる少なくとも200点で測定した値の平均値として定義する。
なお、超硬合金基材(17)に含有されるCoの平均含有量Cwcの値は、緩衝層(20)の存在によってCo含有量が大きく変化せず、Co含有量(カウント数)が±6%の範囲でほぼ一定値として測定される値である。
【0015】
超硬合金基材とダイヤモンド層の界面のWC結晶粒:
超硬合金基材(17)とダイヤモンド層(18)との界面に形成されている前記Coリッチ層領域
、あるいは、Coリッチ層領域と緩衝層領域におけるWC粒子の平均粒径をDとし、また、超硬合金基材内部におけるWC粒子の平均粒径をDoとした時、D/Doの値が2以上になると、界面近傍のCoリッチ層領域
、あるいは、Coリッチ層領域と緩衝層領域におけるWC粒子の異常成長により、超硬合金基材(17)とダイヤモンド層(18)との界面強度が低下し、高負荷が作用した場合にクラック・剥離が発生しやすくなるので、D/Doの値は2未満とする。
なお、前記WC粒子の粒径の測定は、500倍〜3000倍で観察したSEM(走査型電子顕微鏡)写真の画像処理(使用ソフト、アメリカ国立衛生研究所製ImageJ Ver:1.49)によって行い、これらの複数個所における測定値を平均することによってWC粒子の平均粒径を求めることができる。
【0016】
Coリッチ層(19)の平均層厚が30μm以下であり、Coリッチ層(19)におけるCo含有量のピーク値C
MAXと、ダイヤモンド層の平均Co含有量C
DIAの比の値C
MAX/C
DIAが2以下であり、Coリッチ層におけるWC粒子の平均粒径DがD/Do<2を満足する本発明のPCD工具は、Coを9〜18質量%含有し、平均粒径0.5〜4μmのWC粒子を含有する超硬合金を基材とし、平均粒径1〜11μmのダイヤモンド粉末中に金属触媒として15〜33質量%のCo粉末を混合したダイヤモンド原料粉末を積層し、超高圧高温装置内で焼結することによって作製することができる。
【0017】
超硬合金基材(17)におけるCo含有量が9質量%未満では、結合相成分が少ないため、超硬合金の焼結性が悪く超硬合金基材(17)自体の靱性が低下し、一方、Co含有量が18質量%を超えると、超硬合金基材(17)とダイヤモンド層(18)との界面に形成されるCoリッチ層(19)の層厚が30μmを超えてしまうため、超硬合金基材(17)とダイヤモンド層(18)間の界面接合強度は低下し、高負荷が作用した場合に界面からのクラックの発生、剥離の発生等が生じる。
したがって、超硬合金基材(17)におけるCo含有量は9〜18質量%とする。
【0018】
また、超硬合金基材(17)におけるWC粒子の平均粒径が、0.5μm未満であると、超硬基材内のWC粒子が粒成長しやすく、破壊靭性値をはじめとする機械的特性が低下し、PCD自体が割れ(クラック)が発生しやすくなる。
一方、平均粒径が4μmを超えると、破壊靭性値を高くすることができるが、硬さが低下するため、PCD焼結時に変形(反り)が発生しやすくなるから、超硬合金基材(17)におけるWC粒子の平均粒径は、0.5〜4μmとする。
【0019】
ダイヤモンド層(18)形成するダイヤモンド粉末の平均粒径が1μm未満であると、ダイヤモンド粒子が異常粒成長しやすく、耐摩耗性が低下し、一方、平均粒径が11μmを超えると、高負荷が作用した際にダイヤモンド粒子の脱落が生じやすくなり、また、被削物の面粗さが悪くなることから、ダイヤモンド粉末の平均粒径は1〜11μmとする。
【0020】
さらに、ダイヤモンド原料粉末には金属触媒としてのCo粉末を混合するが、Co混合量が15質量%未満であると、超高圧高温装置内で焼結する際に、超硬合金基材(17)からダイヤモンド層(18)へのCoの拡散速度が速くなり、その結果、WC超硬合金基材(17)とダイヤモンド層(18)との界面に、過剰厚さのCoリッチ層(19)が形成されてしまい、界面特性を劣化させる。一方、Co混合量が33質量%を超えると、ダイヤモンド層内に部分的にCoのマトリックスが形成され、ダイヤモンド粉末同士の直接接合が阻害され、ダイヤモンド層の耐摩耗性、耐欠損性が低下する。
したがって、ダイヤモンド粉末に事前に混合させるCo粉末の混合量は、15〜33質量%とする。
【0021】
前記の超硬合金基体(1)とダイヤモンド原料粉末(8)をTa製カプセル内に装入・積層して、熱力学的にダイヤモンドが安定する領域である焼結圧力5GPa以上かつ焼結温度1400〜2200℃以上という条件の超高圧高温装置内で焼結することにより、本発明のPCD工具を作製することができる。
本発明のPCD工具は、様々な形状及び用途の工具に適用可能である。例えば平面状の積層体から切り出し、工具基体にろう付して使用することもできる。また、先端部が半球形状の円筒形状の工具基体の先端部にダイヤモンド層を積層し焼結して製造される掘削ビットインサートとしても使用することができる。さらに、ドリルやエンドミル等の複雑な形状をした回転工具の刃先部分にも使用することができる。