(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回収部材は、横方向に延びる第一案内部と、前記第一案内部よりも前記搬送方向の下流側に位置するとともに前記搬送方向の下流側に向かうにつれて下方に傾斜する第二案内部と、前記第二案内部よりも前記搬送方向の下流側に位置するとともに下方に延びる第三案内部とを備える請求項1から4のいずれか一項に記載のガラスロールの製造方法。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、及び有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)に用いられるガラス板、有機EL照明に用いられるガラス板、タッチパネルの構成要素である強化ガラス等の製造に用いられるガラス板、更には太陽電池のパネル等に用いられるガラス板は、薄肉化が推進されているのが実情である。
【0003】
例えば特許文献1には、厚みが数百μm以下のガラスフィルム(薄板ガラス)が開示されている。この種のガラスフィルムは、同文献にも記載されるように、いわゆるオーバーフローダウンドロー法を採用した成形装置によって連続成形されるのが一般的である。
【0004】
オーバーフローダウンドロー法により連続成形された長尺のガラスフィルムは、例えばその搬送方向が鉛直方向から水平方向に変換された後、搬送装置の横搬送部(水平搬送部)によって継続して下流側に搬送される。この搬送途中で、ガラスフィルムは、その幅方向両端部(耳部)が切断除去される。その後、ガラスフィルムは、巻取りローラによってロール状に巻き取られることで、ガラスロールとして構成される。
【0005】
ガラスフィルムの幅方向両端部を切断する技術として、特許文献1では、レーザ割断が開示されている。レーザ割断では、ダイヤモンドカッタ等のクラック形成手段によりガラスフィルムに初期クラックを形成した後、この部分にレーザ光を照射して加熱し、その後、加熱された部分を冷却手段により冷却することで、ガラスフィルムに生じる熱応力により初期クラックを進展させてガラスフィルムを切断する。
【0006】
他の切断方法として、特許文献2には、いわゆるピーリング現象を利用したガラスフィルムの切断技術が開示されている。この技術は、ガラスフィルム(ガラス基板)を搬送しつつ、ガラスフィルムにレーザ光を照射してその一部を溶断し、その溶断部分をレーザ光の照射領域から遠ざけることにより冷却する。
【0007】
この場合において、溶断部分が冷却されることにより略糸状の剥離物が生じる(例えば同文献の段落0067及び
図8参照)。この糸状剥離物がガラスフィルムの端部から剥がれ落ちる現象を一般にピーリングと呼ぶ。糸状剥離物が生じることで、ガラスフィルムには、均一な切断面が形成されることになる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図6は、本発明に係るガラスロールの製造方法の一実施形態を示す。
【0022】
図1は、ガラスロールの製造装置の全体構成を模式的に示す概略側面図である。
図1に示すように、製造装置1は、ガラスフィルムGを成形する成形部2と、ガラスフィルムGの進行方向を縦方向下方から横方向に変換する方向変換部3と、方向変換後にガラスフィルムGを横方向に搬送する横搬送部4と、横搬送部4で横方向に搬送しつつガラスフィルムGの幅方向端部(耳部)Ga,Gbを非製品部Gcとして切断する切断部5と、この切断部5により非製品部Gcを切断除去してなる製品部Gdをロール状に巻き取ってガラスロールRを構成する巻取り部6とを備える。なお、本実施形態において、製品部Gdの厚みは、300μm以下とされ、好ましくは100μm以下とされる。
【0023】
成形部2は、上端部にオーバーフロー溝7aが形成された断面視略楔形の成形体7と、成形体7の直下に配置されて、成形体7から溢出した溶融ガラスを表裏両側から挟むエッジローラ8と、エッジローラ8の直下に配備されるアニーラ9とを備える。
【0024】
成形部2は、成形体7のオーバーフロー溝7aの上方から溢流した溶融ガラスを、両側面に沿ってそれぞれ流下させ、下端で合流させてフィルム状の溶融ガラスを成形する。エッジローラ8は、溶融ガラスの幅方向収縮を規制して所定幅のガラスフィルムGとする。アニーラ9は、ガラスフィルムGに対して除歪処理を施すためのものである。このアニーラ9は、上下方向複数段に配設されたアニーラローラ10を有する。
【0025】
アニーラ9の下方には、ガラスフィルムGを表裏両側から挟持する支持ローラ11が配設されている。支持ローラ11とエッジローラ8との間、または支持ローラ11と何れか一箇所のアニーラローラ10との間には、ガラスフィルムGを薄肉にすることを助長するための張力が付与されている。
【0026】
方向変換部3は、支持ローラ11の下方位置に設けられている。方向変換部3には、ガラスフィルムGを案内する複数のガイドローラ12が湾曲状に配列されている。これらのガイドローラ12は、鉛直方向に搬送されるガラスフィルムGを横方向へと案内する。
【0027】
横搬送部4は、方向変換部3の進行方向前方(下流側)に配置される。この横搬送部4は、第一搬送装置13と、第二搬送装置14とを有する。第一搬送装置13は、方向変換部3の下流側に配置され、第二搬送装置14は、第一搬送装置13の下流側に配置されている。
【0028】
第一搬送装置13は、無端帯状の搬送ベルト15と、この搬送ベルト15の駆動装置16とを有する。第一搬送装置13は、搬送ベルト15の上面をガラスフィルムGに接触させることで、方向変換部3を通過したガラスフィルムGを下流側へと連続的に搬送する。駆動装置16は、搬送ベルト15を駆動するためのローラ、スプロケット等の駆動体16aと、この駆動体16aを回転させるモータ(図示せず)を有する。
【0029】
第二搬送装置14は、ガラスフィルムGを搬送する複数(本例では三本)の搬送ベルト17a〜17cと、各搬送ベルト17a〜17cの駆動装置18とを有する。
図2に示すように、搬送ベルト17a〜17cは、ガラスフィルムGの幅方向一端部Ga側の部分に接触する第一搬送ベルト17aと、ガラスフィルムGの幅方向他端部Gb側の部分に接触する第二搬送ベルト17bと、ガラスフィルムGの幅方向中央部に接触する第三搬送ベルト17cとを含む。駆動装置18は、各搬送ベルト17a〜17cを駆動するためのローラ、スプロケット等の駆動体18aと、この駆動体18aを回転させるモータ(図示せず)を有する。
【0030】
図2に示すように、各搬送ベルト17a〜17cは、ガラスフィルムGの幅方向において、離間されて配置されている。これにより、第一搬送ベルト17aと第三搬送ベルト17cとの間、第二搬送ベルト17bと第三搬送ベルト17cとの間には、隙間が形成される。
【0031】
図3に示すように、第三搬送ベルト17cの上部は、第一搬送ベルト17aの上部よりも高い位置でガラスフィルムGを支持している。図示は省略するが、第一搬送ベルト17aの上部と第二搬送ベルト17bの上部の高さは同じに設定されている。このように、第三搬送ベルト17cにおける上部と、第一搬送ベルト17aの上部及び第二搬送ベルト17bの上部との間に高低差をつけることで、搬送されるガラスフィルムGは、その幅方向の中央部が幅方向の各端部Ga,Gbよりも上方に突出するように変形した状態で、各搬送ベルト17a〜17cにより搬送される。また、切断部5によりガラスフィルムGが切断されると、製品部Gdは、非製品部Gcよりも高い位置にて第三搬送ベルト17cにより搬送される。
【0032】
図1乃至
図3に示すように、切断部5は、第二搬送装置14の上方位置に設けられるレーザ照射装置19と、レーザ照射装置19のレーザ光LをガラスフィルムGに照射することにより生じる糸状剥離物Geを回収する複数の回収装置20,21と、一部の回収装置20にエアを吹き付けるエアノズル22とを備える。
【0033】
レーザ照射装置19は、例えばCO
2レーザ、YAGレーザその他のレーザ光Lを下方に向けて照射するように構成される。レーザ光Lは、ガラスフィルムGに対して所定の位置(照射位置)Oに照射される。本実施形態では、ガラスフィルムGの幅方向両端部Ga,Gbを切断するように、二台のレーザ照射装置19が配置されている(
図2参照)。レーザ光Lの照射位置Oは、
図2に示すように、第二搬送装置14における第一搬送ベルト17aと第三搬送ベルト17cとの間の隙間、及び第二搬送ベルト17bと第三搬送ベルト17cとの間の隙間に対応するように設定される。
【0034】
図2及び
図3に示すように、回収装置20,21は、ガラスフィルムGの上方に配置される第一回収装置20と、ガラスフィルムGの下方に配置される第二回収装置21とを含む。第一回収装置20は、製品部Gdから生じる糸状剥離物Geを回収するためのものであり、第二回収装置21は、非製品部Gcから生じる糸状剥離物Geを回収するためのものである。本実施形態では、二台の第一回収装置20と二台の第二回収装置21が所定の位置に設けられている。
【0035】
第一回収装置20は、上記のように製品部Gdから上方に延びるように連続的に形成される糸状剥離物Geを第二搬送装置14から離れる方向(以下「糸状剥離物の搬送方向」という)PXに搬送する。
【0036】
第一回収装置20は、棒状の回収部材23と、糸状剥離物Geをその搬送方向PXに誘導する誘導装置24とを備える。
【0037】
回収部材23は、金属により構成されるが、これに限定されず、樹脂その他の素材により構成されてもよい。
図2に示すように、回収部材23は、ガラスフィルムGの搬送方向GXにおいて、レーザ照射装置19よりも下流側に配置されている。回収部材23は、糸状剥離物Geの搬送方向PXに沿って配置される。
【0038】
図3に示すように、回収部材23は、横方向に延びる第一案内部23aと、第一案内部23aよりも糸状剥離物Geの搬送方向PXの下流側に位置する第二案内部23bと、第二案内部23bよりも糸状剥離物Geの搬送方向PXの下流側に位置する第三案内部23cとを備える。回収部材23は、第一案内部23a、第二案内部23b、第三案内部23cの順に糸状剥離物Geを案内することで、当該糸状剥離物Geの搬送方向PXを横方向から縦方向へと変更する。
【0039】
第一案内部23aは、製品部Gdから生じた糸状剥離物Geを最初に捕捉する部分である。第一案内部23aの先端部は、平面視において、ガラスフィルムGの搬送方向GXの上流側を指向するように傾斜して配置されている(
図2参照)。回収部材23は、ガラスフィルムGの搬送方向GXに直交する方向(ガラスフィルムGの幅方向)に対して約10〜60°傾斜していることが好ましく、約20〜40°傾斜していることが更に好ましいが、傾斜角度はこれに限定されない。このように、レーザ照射装置19の下流側に配置した第一案内部23aの先端部を上流側に指向するように配置することで、レーザ光Lの照射位置Oの下流側にて製品部Gdから発生する糸状剥離物Geを好適に捕捉できる。
【0040】
図2に示すように、第一案内部23aは、少なくとも一部、例えば先端部が非製品部Gcに重なるように配置されている。換言すれば、平面視において、回収部材23の先端部は、製品部Gdに重なっていない。このような第一案内部23aの配置により、回収部材23に巻き取られた糸状剥離物Geは、製品部Gdに接触することがなくなり、製品部Gdの損傷を防止できる。
【0041】
また、
図3に示すように、第一案内部23aの先端部は、ガラスフィルムGに対するレーザ光Lの照射位置Oの上方位置O1を指向するように配置されている。この上方位置O1は、レーザ光Lの照射位置Oを通る鉛直線(一点鎖線で示す直線)上に位置する。
【0042】
糸状剥離物Geは、製品部から上方にある程度延び上がった後に、螺旋状に変形する。したがって、第一案内部23aの先端部をレーザ光Lの照射位置Oの上方位置O1に指向させることで、糸状剥離物Geが螺旋状に変形したときに、その螺旋の略中心位置に第一案内部23aの先端部を指向させることができる。これにより、第一案内部23aの先端部を糸状剥離物Geの螺旋状の中心に挿通させることができ、糸状剥離物Geを確実に捕捉できる。
【0043】
図3に示すように、第一案内部23aは、側面視において、その先端部が下方を指向するように傾斜して配置されている。本実施形態では、第一案内部23aは、水平方向に対して約5°にて傾斜しているが、傾斜角度はこれに限定されない。また、第一案内部23aは、水平状に形成されてもよい。上記の傾斜配置により、第一案内部23aの先端部は、下方から延び上がる糸状剥離物Geに向けられることになる。したがって、第一案内部23aは、製品部Gdから生じる糸状剥離物Geを好適に捕捉できる。
【0044】
第二案内部23bは、第一案内部23aを通過する糸状剥離物Geを第三案内部23cに向かって案内する。
図3に示すように、第二案内部23bは、糸状剥離物Geの搬送方向PXの下流側に向かって、すなわち第一案内部23a側から第三案内部23c側へと向かって下方に傾斜するように構成される。第二案内部23bは、直線状に構成されるが、この構成に限らず、円弧状その他の湾曲形状とされてもよい。
【0045】
第三案内部23cは、第二案内部23bを通過する糸状剥離物Geを下方に案内する。
図3に示すように、第三案内部23cは、第二案内部23bの下端部から下方に延びる直線状の部分である。この第三案内部23cの下方には、第三案内部23cを通過した糸状剥離物Geを受ける回収容器Cが設置されている。
【0046】
図3及び
図4に示すように、誘導装置24は、回収部材23の上方に配置される。誘導装置24は、無端状のベルト25と、当該ベルト25の外周面に固定される突起部26と、当該ベルト25を駆動する駆動部27とを備える。
【0047】
ベルト25は、例えばゴムベルトにより構成されるが、これに限定されずチェーンベルトその他のベルトによって構成されてもよい。
【0048】
突起部26は、金属製の棒状体(ピン)により構成される。突起部26は円柱状に構成されるが、この形状に限定されない。突起部26は、ベルト25の外周面に対して着脱自在に固定される。ベルト25の外周面には、複数(複行複列)の突起部26が間隔をおいて配置される。本実施形態では、一列に三本の突起部26が等間隔で配置される例を示すが、突起部26の数及び間隔は任意に設定できる。各突起部26としては、同一の直径及び同一の長さを有する同形のものが使用されるが、この構成に限定されない。
【0049】
駆動部27は、スプロケット、プーリ、ローラその他の回転駆動体を含む。駆動部27は、ベルト25の内周面に接触している。駆動部27は、図示しないモータにより駆動されることで、ベルト25を
図3に示す矢印の方向に回転させる。
【0050】
誘導装置24は、回収部材23における第一案内部23aの先端部よりも、糸状剥離物Geの搬送方向PXの下流側に位置する。すなわち、
図3に示すように、誘導装置24の上流側端部24aは、第一案内部23aの先端部よりも糸状剥離物Geの搬送方向PXの下流側に位置する。これにより、第一回収装置20は、製品部Gdから発生した糸状剥離物Geを最初に第一案内部23aによって螺旋状に捕捉し、その後に、捕捉した糸状剥離物Geの螺旋状態を維持した状態で、誘導装置24の誘導によりその搬送方向PXの下流側へと移動させる。
【0051】
図2及び
図3に示すように、誘導装置24は、回収部材23の第一案内部23aと第二案内部23bとに重なるように、回収部材23の上方に位置する。すなわち、糸状剥離物Geの搬送方向PXにおける誘導装置24の上流側の一部は第一案内部23aの上方に位置し、当該誘導装置24の下流側の一部は、第二案内部23bの上方に位置している。
【0052】
第二回収装置21は、
図3に示すように、ベルトコンベア21aにより構成される。本実施形態では、ガラスフィルムGの各端部Ga,Gbに対応して、二台のベルトコンベア21aが配置される。各ベルトコンベア21aは、ガラスフィルムGの幅方向内方側から幅方向外方側に向かうにつれて、下方に傾斜するように配置される。各ベルトコンベア21aは、ガラスフィルムGの搬送方向GX(長手方向)に直交する方向(幅方向)に沿って、すなわち、ガラスフィルムGの幅方向における内側から外側に向かって糸状剥離物Geを搬送する。
【0053】
エアノズル22は、
図3に示すように、第二搬送装置14の上方に配置されている。また、エアノズル22は、第一回収装置20の回収部材23に対向するように配置されている。これにより、エアノズル22は、回収部材23における第一案内部23aの先端部にエアを吹き付けるように構成される。また、エアノズル22は、第二搬送装置14上のガラスフィルムGにおけるレーザ光Lの照射位置Oに形成される溶断部分に対してもエアを吹き付けることができる。
【0054】
第一案内部23aの先端部に向けてエアノズル22からエアを吹き付けることにより、ガラスフィルムGの溶断部分から生じる糸状剥離物Geを第一案内部23aに向けて移動させるとともに、第一案内部23aに巻き取られた糸状剥離物Geをその搬送方向PXの下流側へと移動させることができる。
【0055】
巻取り部6は、切断部5及び第二搬送装置14の下流側に設置されている。巻取り部6は、巻取りローラ28と、この巻取りローラ28を回転駆動するモータ(図示せず)と、巻取りローラ28に保護シート29aを供給する保護シート供給部29とを有する。巻取り部6は、保護シート供給部29から保護シート29aを製品部Gdに重ね合わせつつ、モータにより巻取りローラ28を回転させることで、製品部Gdをロール状に巻き取る。巻き取られた製品部Gdは、ガラスロールRとして構成される。
【0056】
以下、上記構成の製造装置1によりガラスロールRを製造する方法について説明する。ガラスロールRの製造方法は、成形部2によって帯状のガラスフィルムGを成形する成形工程と、方向変換部3及び横搬送部4によりガラスフィルムGを搬送する搬送工程と、切断部5によりガラスフィルムGの幅方向端部Ga,Gbを切断する切断工程と、切断工程後に製品部Gdを巻取り部6によって巻き取る巻取り工程とを備える。
【0057】
成形工程では、成形部2における成形体7のオーバーフロー溝7aの上方から溢流した溶融ガラスを、両側面に沿ってそれぞれ流下させ、下端で合流させてフィルム状の溶融ガラスとする。この際、溶融ガラスの幅方向収縮をエッジローラ8により規制して所定幅のガラスフィルムGとする。その後、ガラスフィルムGに対してアニーラ9により除歪処理を施す。支持ローラ11の張力により、ガラスフィルムGは所定の厚みに形成される。
【0058】
搬送工程では、方向変換部3によってガラスフィルムGの搬送方向を縦方向から横方向GXに変換するとともに、各搬送装置13,14によって、ガラスフィルムGを下流側の巻取り部6へと搬送する。
【0059】
切断工程では、第二搬送装置14により搬送されるガラスフィルムGに、切断部5のレーザ照射装置19からレーザ光Lを照射して、ガラスフィルムGの幅方向両端部Ga,Gbを切断する。これにより、ガラスフィルムGは非製品部Gcと製品部Gdとに分断される。また、切断工程では、非製品部Gcと製品部Gdとから生じる糸状剥離物Geを第一回収装置20及び第二回収装置21により回収する(回収工程)。
【0060】
ここで、糸状剥離物Geの発生原理について
図5を参照しながら説明する。
図5(a)に示すように、レーザ光LがガラスフィルムGに照射されると、
図5(b)に示すように、ガラスフィルムGの一部がレーザ光Lの加熱により溶断される。ガラスフィルムGは、第二搬送装置14によって搬送されているため、溶断された部分はレーザ光Lから遠ざかる。
【0061】
これにより、ガラスフィルムGの溶断部分が冷却される。溶断部分は、冷却されることにより熱歪を生じ、これによる応力が、溶断されていない部分に対して引張力として作用する。この作用により、
図5(c)に示すように、糸状剥離物Geは、非製品部Gcの幅方向端部、及び製品部Gdの幅方向端部から分離する。
【0062】
既述のように、製品部Gdを搬送する第三搬送ベルト17cの上下方向における位置が、非製品部Gcを搬送する第一搬送ベルト17a及び第二搬送ベルト17bの位置よりも高く設定されている。この位置関係から、非製品部Gcから生じる糸状剥離物Geは、製品部Gdの下方に移動するように促される。一方、製品部Gdから生じる糸状剥離物Geは、障害物がないため、上方に延びるように変形することになる。
【0063】
以下、第一回収装置20による糸状剥離物Geの回収方法(回収工程)について説明する。製品部Gdから生じる糸状剥離物Geは、上方に向かって延びるが、その途中で螺旋状に変形する。回収部材23における第一案内部23aの先端部は、糸状剥離物Geの変形に応じて、その螺旋のほぼ中心に挿通される。糸状剥離物Geは、螺旋状に変形しながら第一案内部23aに巻き付くように移動していく。この移動の際、糸状剥離物Geの一部が第一案内部23aに接触する場合がある。第一案内部23aは、糸状剥離物Geの一部に接触(支持)しながら、この糸状剥離物Geを下流側の第二案内部23bへと案内する。
【0064】
誘導装置24は、駆動部27によってベルト25を駆動するとともに、回収部材23の上方において、突起部26を、ベルト25から下方に突出させた状態で、糸状剥離物Geの搬送方向PXに沿って移動させる。突起部26は、移動中に糸状剥離物Geの一部に接触する。
図6に示すように、突起部26は、搬送方向PXに沿って直進し、接触する糸状剥離物Geを搬送方向PXの下流側へと誘導する。突起部26が第二案内部23bの上方(
図6において実線で示す位置)に到達すると、糸状剥離物Geは第二案内部23bの案内により下方に移動し(
図6において二点鎖線で示す)、突起部26から自動的に離れる。
【0065】
突起部26から離れた糸状剥離物Geは、第二案内部23bの傾斜方向に沿って下方に案内され、第三案内部23cへと移る。その後、糸状剥離物Geは、第三案内部23cよって下方に案内される。糸状剥離物Geは、第三案内部23cを離脱後に、回収容器Cに収容される(
図3参照)。
【0066】
なお、非製品部Gcは、第二搬送装置14の第一搬送ベルト17a及び第二搬送ベルト17bにより下流側に搬送され、巻取り部6の上流側で、図示しない別の回収装置により回収される。
【0067】
巻取り工程では、保護シート供給部29から保護シート29aを製品部Gdに供給しつつ、第二搬送装置14によって搬送された製品部Gdを巻取り部6の巻取りローラ28にてロール状に巻き取る。所定長さの製品部Gdを巻取りローラ28により巻き取ることで、ガラスロールRが完成する。
【0068】
以上説明した本実施形態に係るガラスロールRの製造方法によれば、切断工程において、製品部Gd側から生じた糸状剥離物Geを第一回収装置20の回収部材23に巻き付けるとともに、誘導装置24によってその搬送方向PXの下流側に誘導することで、当該糸状剥離物Geを連続的に回収できる。また、非製品部Gc側から生じた糸状剥離物Geを第二回収装置21のベルトコンベア21aにより連続的に回収できる。これにより、各糸状剥離物Geは、途中で破断することなく回収され、その破片がガラスフィルムGに付着するといった事態を防止できる。したがって、本方法は、ガラスフィルムGの損傷を防止しつつ、ガラスロールRを効率良く製造できる。
【0069】
図7乃至
図11は、回収装置の他の例を示す。
図7に示す例では、誘導装置24における複数の突起部26a,26bの配列が上記の実施形態と異なる。すなわち、本例では、ベルト25の外周面に、三本の突起部26aからなる列と、二本の突起部26bからなる列とがベルト25の周方向において交互(千鳥状)に配設される。
【0070】
図8に示す例では、誘導装置24に係る突起部26c,26dの形状が上記の実施形態と異なる。上記の実施形態では、同一の長さを有する複数の突起部26がベルト25に設けられていたが、本例では、長さの異なる突起部26c,26dがベルト25に設けられる。突起部26c,26dは、ベルト25の幅方向中央に位置する第一突起部26cと、第一突起部26cよりもベルト25の幅方向端部寄りの位置に設けられる二本の第二突起部26dを含む。第一突起部26cは、第二突起部26dよりも短く構成される。第一突起部26cは、回収部材23における第一案内部23aの上方に位置する。第二突起部26dは、その先端部が上下方向において第一案内部23aと重なっている。これにより、第一案内部23aは、二本の第二突起部26dの間に位置している。
【0071】
図9及び
図10に示す例では、誘導装置24に係る突起部26の形状が上記の実施形態と異なる。上記の実施形態では、突起部26は棒状部材によって構成されていたが、
図9に示す例において、突起部26は板状部材により構成される。また、
図10に示す例では、突起部26を構成する板状部材の一部(下側部分)に湾曲状の凹部30が形成されている。これにより、突起部26は、回収部材23の第一案内部23aに接触することなく、より広い範囲で糸状剥離物Geに接触できる。
【0072】
図11に示す例では、誘導装置24A,24Bの位置が上記の実施形態と異なる。本例において、誘導装置24A,24Bは、回収部材23(第一案内部23a)の側方に配置される第一誘導装置24A及び第二誘導装置24Bを含む。各誘導装置24A,24Bは、ベルト25の外周面から側方に突出する複数の突起部26を有する。各誘導装置24A,24Bは、糸状剥離物Geの側部に接触し、当該糸状剥離物Geをその搬送方向PXに沿って案内する。
【0073】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0074】
上記の実施形態では、第一案内部23a乃至第三案内部23cによって構成される回収部材23を例示したが、本発明は、この構成に限定されない。回収部材23は、横方向に延びる棒状部材のみにより構成されてもよく、複数の案内部の向きを糸状剥離物Geの搬送方向PXに応じて適宜設定してもよい。また、糸状剥離物Geを巻き取ることが可能であれば、回収部材23は、板状その他の形状により構成されてもよい。
【0075】
上記の実施形態では、誘導装置24の突起部26を金属製の棒状部材又は板状部材により構成したが、本発明はこの構成に限定されない。突起部26は、樹脂その他の素材によって構成されてもよい。また、突起部26は、ベルト25と同じ材料により当該ベルト25と一体成形されてもよい。