特許第6883310号(P6883310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 兵神装備株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6883310-一軸偏心ねじポンプ 図000002
  • 特許6883310-一軸偏心ねじポンプ 図000003
  • 特許6883310-一軸偏心ねじポンプ 図000004
  • 特許6883310-一軸偏心ねじポンプ 図000005
  • 特許6883310-一軸偏心ねじポンプ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883310
(24)【登録日】2021年5月12日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】一軸偏心ねじポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/107 20060101AFI20210531BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20210531BHJP
   F16D 3/74 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   F04C2/107
   F04C15/00 D
   F04C15/00 L
   F16D3/74 D
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-149139(P2014-149139)
(22)【出願日】2014年7月22日
(65)【公開番号】特開2016-23602(P2016-23602A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年7月21日
【審判番号】不服2019-12368(P2019-12368/J1)
【審判請求日】2019年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239758
【氏名又は名称】兵神装備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】田中 圭
【合議体】
【審判長】 堀川 一郎
【審判官】 窪田 治彦
【審判官】 岡澤 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−145660(JP,A)
【文献】 特開2012−154215(JP,A)
【文献】 特開2012−233594(JP,A)
【文献】 特開平10−47365(JP,A)
【文献】 実開昭63−178649(JP,U)
【文献】 実開昭48−44018(JP,U)
【文献】 特開2006−139230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C2/107,15/00
F16D3/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機の動力により回転する駆動側回転部と、
雄ねじ型の軸体によって構成されたロータと、
前記ロータを挿通可能であって内周面が雌ねじ型に形成されたステータと、
前記ロータが前記ステータの内側において自転しつつ、前記ステータの内周面に沿って公転するように偏心回転可能なように前記駆動側回転部と前記ロータとを接続し前記駆動機の回転動力を伝達する軸継手とを有し、
前記軸継手が、
撓み軸継手によって構成されており、
軸線方向への弾性力を有し、
溝をらせん状に形成したバネ状の部位が設けられており、
らせん状に形成された溝の終端部分において、前記バネ状の部位に対して前記軸継手の軸線方向内側に向かわず、軸線方向外側に向かって他の部位よりも溝の幅を拡大した応力拡散部が設けられており、
前記軸継手の全体において、径の大きさが、前記駆動側回転部及び前記ロータのいずれか一方又は双方の径以上であり、
前記駆動側回転部及び前記ロータの少なくともいずれか一方と、前記軸継手とが、前記軸継手の軸線方向に延びる連結ピンを介して連結されていることを特徴とする一軸偏心ねじポンプ。
【請求項2】
駆動機の動力により回転する駆動側回転部と、
雄ねじ型の軸体によって構成されたロータと、
前記ロータを挿通可能であって内周面が雌ねじ型に形成されたステータと、
前記ロータが前記ステータの内側において自転しつつ、前記ステータの内周面に沿って公転するように偏心回転可能なように前記駆動側回転部と前記ロータとを接続し前記駆動機の回転動力を伝達する軸継手とを有し、
前記軸継手が、
前記ロータの軸線方向への弾性力を有し、前記軸線方向に対して交差する方向への撓みを許容しつつ、前記軸線周り方向への捻れを抑制可能な撓み軸継手であり、
溝をらせん状に形成したバネ状の部位が設けられており、
らせん状に形成された溝の終端部分において、前記バネ状の部位に対して前記軸継手の軸線方向内側に向かわず、軸線方向外側に向かって他の部位よりも溝の幅を拡大した応力拡散部が設けられており、
前記軸継手の全体において、径の大きさが、前記駆動側回転部及び前記ロータのいずれか一方又は双方の径以上であり、
前記駆動側回転部及び前記ロータの少なくともいずれか一方と、前記軸継手とが、前記軸継手の軸線方向に延びる連結ピンを介して連結されていることを特徴とする一軸偏心ねじポンプ。
【請求項3】
前記軸継手の長手方向の少なくとも一部の弾性係数が、他部の弾性係数以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の一軸偏心ねじポンプ。
【請求項4】
前記軸継手が、前記駆動側回転部に接続される駆動側接続端と、前記ロータ側に接続されるロータ側接続端とを有し、
前記駆動側接続端及び前記ロータ側接続端の弾性係数が、前記駆動側接続端及び前記ロータ側接続端の中間部以下であることを特徴とする請求項3に記載の一軸偏心ねじポンプ。
【請求項5】
前記軸継手が、前記駆動側回転部に接続される駆動側接続端と、前記ロータ側に接続されるロータ側接続端とを有し、
前記駆動側接続端及び前記ロータ側接続端の弾性係数が、前記駆動側接続端及び前記ロータ側接続端の中間部以上であることを特徴とする請求項3に記載の一軸偏心ねじポンプ。
【請求項6】
前記駆動側接続端及び前記ロータ側接続端の中間部が、柱状あるいは筒状とされており、
前記駆動側接続端及び前記ロータ側接続端のいずれか一方又は双方が、コイルバネ状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の一軸偏心ねじポンプ。
【請求項7】
前記ステータの内周面に対して前記ロータの外周面が線接触することにより流体搬送路が形成されるものであり、
前記ロータ側から前記駆動機側に向けて作用する荷重が所定の大きさを超えることを条件として、前記ロータの前記駆動機側への移動が許容され、前記ロータ及び前記ステータの線接触が解除されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の一軸偏心ねじポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一軸偏心ねじポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているような一軸偏心ねじポンプが提供されている。下記特許文献1の一軸偏心ねじポンプでは、駆動機において発生した回転動力により回転する駆動側軸体、及びロータを構成する受動側軸体を接続ための軸継手として、フレキシブルロッドが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−154215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した従来技術において用いられているフレキシブルロッドは、偏心回転するロータの動きを許容すべく長尺にする必要がある。そのため、従来技術においては、一軸偏心ねじポンプの全長が長くならざるを得ないという傾向にある。
【0005】
一方、ピンジョイント等の軸継手を一軸偏心ねじポンプにおいて採用した場合には、フレキシブルロッドを採用した場合のように全長が長くなることを抑制できる。その反面で、ピンジョイントを用いた場合には、摩耗等による異物の混入(コンタミネーション)が発生してしまう懸念がある。
【0006】
また、圧送対象の流動体が低粘度であり、低速で圧送する場合には、スティックスリップと称される現象が発生し、流量が安定しなかったり、異音が発生したりするなどの懸念がある。さらに、吐出圧が過大となることにより軸継手に過大な負荷が作用し、軸継手が破損してしまう可能性も完全には否定できない。
【0007】
そこで、上述した課題を解決すべく、本発明は、長さ方向にコンパクトでありつつ、軸継手における流動物の混入等の問題が生じにくい一軸偏心ねじポンプの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決すべく提供される本発明の一軸偏心ねじポンプは、駆動機の動力により回転する駆動側回転部と、雄ねじ型の軸体によって構成されたロータと、前記ロータを挿通可能であって内周面が雌ねじ型に形成されたステータと、前記ロータが前記ステータの内側において自転しつつ、前記ステータの内周面に沿って公転するように偏心回転可能なように前記駆動側回転部と前記ロータとを接続する軸継手とを有し、前記軸継手が、撓み軸継手によって構成されており、軸線方向への弾性力を有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の一軸偏心ねじポンプでは、駆動側回転部とロータとを接続するための軸継手として撓み軸継手が採用されている。撓み軸継手は、軸線方向に対して交差する方向への撓みを許容しつつ、軸線周り方向への捻れを抑制可能な軸継手である。そのため、本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、スティックスリップが生じることなく、ロータをステータの内側においてスムーズに回転させることができる。これにより、一軸偏心ねじポンプの動作安定性を向上させうる。
【0010】
また、本発明では撓み軸継手を採用しているため、フレキシブルロッドを採用した場合のように一軸偏心ねじポンプの全長が長くならない。また、撓み軸継手を採用することにより、軸継手の摩耗に伴う流動物への異物の混入の問題を最小限に抑制できる。
【0011】
さらに、本発明においては、軸継手が軸線方向(スラスト方向)への弾性を有する。従って、本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、過大な吐出圧が作用すると軸継手が軸線方向に収縮する。これに伴い、ステータに対するロータの相対位置が軸線方向にずれた状態になり、過大な吐出圧が軸継手に作用することを回避できる。従って、本発明の一軸偏心ねじポンプは、吐出圧が適正な範囲内において適切に流動物を吐出可能であると共に、吐出圧が過大になった場合においても過大な負荷により軸継手が破損することを抑制できる。
【0012】
また、同様の課題を解決すべく提供される本発明の一軸偏心ねじポンプは、駆動機の動力により回転する駆動側回転部と、雄ねじ型の軸体によって構成されたロータと、前記ロータを挿通可能であって内周面が雌ねじ型に形成されたステータと、前記ロータが前記ステータの内側において自転しつつ、前記ステータの内周面に沿って公転するように偏心回転可能なように前記駆動側回転部と前記ロータとを接続する軸継手とを有し、前記軸継手が、前記ロータの軸線方向への弾性力を有し、前記軸線方向に対して交差する方向への撓みを許容しつつ、前記軸線周り方向への捻れを抑制可能であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の一軸偏心ねじポンプでは、軸線方向に対して交差する方向への撓みを許容しつつ、軸線周り方向への捻れを抑制可能な軸継手が採用されている。これにより、スティックスリップが生じることなく、ステータの内側においてロータを回転させることができる。これにより、一軸偏心ねじポンプの動作安定性を向上させうる。
【0014】
また、本発明で採用されているような軸継手を採用することにより、フレキシブルロッドを採用した場合のように一軸偏心ねじポンプの全長が長くなってしまうことを抑制できる。さらに、本発明によれば、軸継手の摩耗に伴う流動物への異物の混入の問題を最小限に抑制できる。
【0015】
また、本発明においては、軸継手がロータの軸線方向への弾性を有し、過大な吐出圧が作用すると軸継手が軸線方向に収縮する。そのため、吐出圧が過大になったとしても、ステータに対するロータの相対位置が軸線方向にずれた状態になることで吐出圧が低減される。これにより、吐出圧の影響により軸継手が破損することを回避できる。
【0016】
本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記軸継手の長手方向の少なくとも一部の弾性係数が、他部の弾性係数以下となっている。
【0017】
本発明の一軸偏心ねじポンプでは、軸継手の長手方向の少なくとも一部において弾性係数が他部以下とされている。すなわち、本発明において用いられている軸継手は、少なくとも一部において撓みやすい性質を有し、他の部分において捻れにくい性質を有する。そのため、上述した構成とすることにより、軸継手全体として、撓み及び捻れについて最適化できる。すなわち、軸継手を、撓みを生じうる一方で捻れにくい特性を備えたものとしても良い。これにより、低粘性の流動物を低速で圧送するような過酷な使用条件下で使用したとしても、スティックスリップの発生を最小限に抑制できる。また、本発明に用いられる軸継手は、吐出圧が過大となったとしても軸継手に作用するトルク負荷が過大とならず、軸継手の破損を抑制できる。
【0018】
また、軸継手の長手方向に弾性係数の相違する部分を設けることにより、容易かつ精度良く軸継手のスラスト方向への弾性を調整できる。従って、本発明によれば、適正な吐出圧を発揮可能なように、軸継手のスラスト方向への弾性を最適化できる。
【0019】
上述した本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記軸継手が、前記駆動側回転部に接続される駆動側接続端と、前記ロータ側に接続されるロータ側接続端とを有し、前記駆動側接続端及び前記ロータ側接続端の弾性係数が、前記駆動側接続端及び前記ロータ側接続端の中間部以下のものであっても良い。
【0020】
本発明で用いられている軸継手は、両端部(駆動側接続端、及びロータ側接続端)において中間部よりも撓みやすい傾向にある。また、中間部は、軸継手の両端部に比べて捻れにくい傾向にある。そのため、上述した軸継手は、全体として撓みを許容しつつ捻れを抑制可能なものである。本発明の一軸偏心ねじポンプは、このような軸継手を用いたものであるため、スティックスリップが生じにくく、ロータをスムーズに回転させうる。
【0021】
また、上述した本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記軸継手が、前記駆動側回転部に接続される駆動側接続端と、前記ロータ側に接続されるロータ側接続端とを有し、前記駆動側接続端及び前記ロータ側接続端の弾性係数が、前記駆動側接続端及び前記ロータ側接続端の中間部以上であるものであっても良い。
【0022】
本発明で用いられている軸継手は、両端部(駆動側接続端、及びロータ側接続端)よりも中間部が撓みやすい傾向にある。また、この軸継手の両端部は、中間部に比べて捻れにくい傾向にある。そのため、上述した軸継手は、全体として撓みを許容しつつ捻れを抑制可能な特性を有する。本発明の一軸偏心ねじポンプは、このような軸継手を採用したものであるため、スティックスリップが生じにくく、ロータをスムーズに回転させうる。
【0023】
上述した本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記中間部が、柱状あるいは筒状とされており、前記駆動側接続端及び前記ロータ側接続端のいずれか一方又は双方が、コイルバネ状に形成されたものであることが望ましい。
【0024】
本発明で用いられている軸継手は、両端部が中間部よりも撓みやすく、中間部が軸継手の両端部に比べて捻れにくい傾向にあり、全体として撓みを許容しつつ捻れを抑制可能な特性を有する。本発明の一軸偏心ねじポンプは、このような軸継手を用いたものであるため、スティックスリップが生じにくく、動作安定性の面で優れている。
【0025】
また、本発明で用いられている軸継手は、駆動側接続端及びロータ側接続端のうち少なくとも一方がコイルバネ状に形成されている。そのため、吐出圧によるスラスト荷重の大きさが過大になると軸継手が収縮した状態になる。これにより、ロータが駆動機側に移動した状態になる。また、ステータの内周面に対する前記ロータの外周面の線接触が解除された状態になる。これにより、過剰に大きな圧力が軸継手等に作用することを回避し、軸継手等の破損リスクを最小限に抑制できる。
【0026】
上述した本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記軸継手の径が、前記駆動側回転部及び前記ロータのいずれか一方又は双方の径以上であることが望ましい。
【0027】
かかる構成によれば、軸継手のトルク剛性が一層向上し、捻れを抑制できるので、スティックスリップの発生を最小限に抑制できる。
【0028】
上述した本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記ステータの内周面に対して前記ロータの外周面が線接触することにより流体搬送路が形成されるものであり、前記ロータ側から前記駆動機側に向けて作用する荷重が所定の大きさを超えることを条件として、前記ロータの前記駆動機側への移動が許容され、前記ロータ及び前記ステータの線接触が解除されるものであることが好ましい。
【0029】
かかる構成によれば、吐出圧により過大なスラスト荷重が作用するような状況下で使用されたとしても、過剰に大きな圧力が軸継手等に作用しない。これにより、軸継手等が破損することを最小限に抑制できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、長さ方向にコンパクトであり、スティックスリップや、軸継手の破損等の問題が生じにくい一軸偏心ねじポンプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る一軸偏心ねじポンプを示す断面図である。
図2】(a)は図1の一軸偏心ねじポンプにおける軸継手76による接続構造を示した分解図、(b)は(a)の変形例に係る分解図である。
図3】軸継手の変形例を示す正面図である。
図4】軸継手の別の変形例を示す正面図である。
図5】軸継手のさらに別の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態に係る一軸偏心ねじポンプ10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、一軸偏心ねじポンプ10は、一軸偏心ねじポンプ機構30を主要部として構成される、いわゆる回転容積型のポンプである。図1に示すように、一軸偏心ねじポンプ10は、ケーシング40の内部にステータ50、ロータ60、及び動力伝達機構70等を収容した構成とされている。ケーシング40は、金属製で筒状の部材であり、長手方向一端側に第一開口部42が設けられている。また、ケーシング40の外周部分には、第二開口部44が設けられている。第二開口部44は、ケーシング40の長手方向中間部分に位置する中間部46においてケーシング40の内部空間に連通している。
【0033】
第一開口部42及び第二開口部44は、それぞれポンプ機構30の吸込口および吐出口として機能する部分である。一軸偏心ねじポンプ10は、ロータ60を正方向に回転させることにより、第一開口部42を吐出口、第二開口部44を吸込口として機能させることができる。また、ロータ60を逆方向に回転させることにより、第一開口部42を吸込口、第二開口部44を吐出口として機能させることができる。
【0034】
ステータ50は、ゴム等の弾性体、又は樹脂等を主成分とする材料によって形成された略円筒形の外観形状を有する部材である。ステータ50の内周面52は、n+1条(本実施形態ではn=1)で雌ネジ形状とされた部材である。また、ステータ50の貫通孔54は、ステータ50の長手方向のいずれの位置において断面視しても、その断面形状(開口形状)が略長円形となるように形成されている。
【0035】
ロータ60は、n条(本実施形態ではn=1)の雄ねじ形状とされた金属製の軸体である。ロータ60は、長手方向のいずれの位置で断面視しても、その断面形状が略真円形となるように形成されている。ロータ60は、上述したステータ50に形成された貫通孔54に挿通され、貫通孔54の内部において自由に偏心回転可能とされている。
【0036】
ロータ60をステータ50に対して挿通すると、ロータ60の外周面62とステータ50の内周面52とが両者の接線で密接した状態になり、ステータ50の内周面52とロータ60の外周面との間に流体搬送路56(キャビティ)が形成される。流体搬送路56は、ステータ50やロータ60の長手方向に向けて螺旋状に伸びている。
【0037】
流体搬送路56は、ロータ60をステータ50の貫通孔54内において回転させると、ステータ50内を回転しながらステータ50の長手方向に進む。そのため、ロータ60を回転させると、ステータ50の一端側から流体搬送路56内に流体を吸い込むと共に、この流体を流体搬送路56内に閉じこめた状態でステータ50の他端側に向けて移送し、ステータ50の他端側において吐出させることが可能である。本実施形態のポンプ機構30は、ロータ60を正方向に回転させることにより使用され、第二開口部44から吸い込んだ粘性液を圧送し、第一開口部42から吐出することが可能とされている。
【0038】
動力伝達機構70は、駆動機80から上述したロータ60に対して動力を伝達するためのものである。動力伝達機構70は、動力伝達部72と偏心回転部74とを有する。動力伝達部72は、ケーシング40の長手方向の一端側に設けられている。動力伝達部72は、駆動機80の動力を受けて回転する回転軸73(駆動側回転部)を有する。
【0039】
偏心回転部74は、ケーシング40の中間部46に設けられている。偏心回転部74は、動力伝達部72とロータ60とを動力伝達可能なように接続する部分である。偏心回転部74には、後に詳述する軸継手76が採用されている。これにより、偏心回転部74は、駆動機80を作動させることにより発生した回転動力をロータ60に伝達させ、ロータ60を偏心回転させることが可能である。
【0040】
軸継手76は、ロータ60がステータ50の内側において自転しつつ、ステータ50の内周面52に沿って公転するように偏心回転可能なように動力伝達部72とロータ60とを接続するための継手である。軸継手76は、いわゆる撓み軸継手によって構成されている。軸継手76は、軸線方向に対して交差する方向への撓みを許容しつつ、軸線周り方向への捻れを抑制可能な特性を有する継手である。
【0041】
軸継手76は、軸継手の長手方向の少なくとも一部の弾性係数が、他部の弾性係数以下とされた軸状あるいは筒状の外観形状を有する継手である。具体的には、軸継手76、中実で金属製の軸体を加工することにより形成されたものである。図1図2に示すように、軸継手76は、軸方向両端部にコイルバネ状の駆動側接続端76a及びロータ側接続端76bを有し、両者の間に中実の中間部76cを有する。これにより、軸継手76は、中間部76cにおける弾性係数が、両端に設けられた駆動側接続端76a及びロータ側接続端76bの弾性係数以下とされている。また、軸継手76の径は、動力伝達部72及びロータ60の双方の径以上とされている。
【0042】
図2に示すように、軸継手76は、連結ピン90を用いてロータ60及び動力伝達部72に対して接続されている。具体的には、連結ピン90は、逆ネジが形成されたネジ部92,94を両端部に備えたピンである。軸継手76の駆動側接続端76a及びロータ側接続端76bには、逆ネジ状のねじ穴78a,78bが設けられている。また、ロータ60の基端部、及び動力伝達部72の回転軸73の先端部にも、逆ネジ状のねじ穴60a,73aが設けられている。ロータ60及び軸継手76は、連結ピン90のネジ部92,94をねじ穴60a,78aに螺合させることにより連結されている。また、動力伝達部72の回転軸73及び軸継手76は、連結ピン90のネジ部92,94をねじ穴73a,78bに螺合させることにより連結されている。
【0043】
上述したように、回転軸73とロータ60とを接続する軸継手76として撓み軸継手が採用されている。すなわち、軸継手76として、軸線方向に対して交差する方向への撓みを許容しつつ、軸線周り方向への捻れを抑制可能なものが採用されている。そのため、一軸偏心ねじポンプ10においては、低粘性の流動物を低速で圧送するような過酷な使用条件下で使用したとしても、スティックスリップが生じることなく、ステータ50の内側においてロータ60をスムーズに回転させることができる。従って、一軸偏心ねじポンプ10は、動作安定性の面で優れている。
【0044】
また、一軸偏心ねじポンプ10においては、軸継手76として撓み軸継手が採用されているため、フレキシブルロッドを採用した場合のように回転軸73とロータ60との間隔が長くならない。これにより、一軸偏心ねじポンプ10を長手方向にコンパクト化することができる。また、軸継手76をなす撓み軸継手は、ピンジョイントに比べて摩耗による異物が発生しない。そのため、一軸偏心ねじポンプ10においては、軸継手76の摩耗に伴う流動物への異物の混入の問題を最小限に抑制できる。
【0045】
さらに、一軸偏心ねじポンプ10においては、軸継手76が軸線方向への弾性を有する。そのため、過大な吐出圧が作用すると、軸継手76が軸線方向に収縮してステータ50に対するロータ60の相対位置が軸線方向にずれ、ロータ60及びステータ50の線接触が解除された状態になる。これにより、過大な吐出圧が軸継手76に作用することを回避できる。従って、一軸偏心ねじポンプ10は、吐出圧が適正な範囲内において適切に流動物を吐出可能であると共に、吐出圧が過大になった場合においても過大な負荷により軸継手76が破損することを抑制できる。
【0046】
上述したように、一軸偏心ねじポンプ10では、軸継手76の両端部(駆動側接続端76a及びロータ側接続端76b)の弾性係数が、中間部76c以下とされている。すなわち、軸継手76の両端部がバネ状とされている。そのため、軸継手76は、駆動側接続端76a、及びロータ側接続端76bにおいて中間部76cよりも撓みやすい傾向にある。また、中間部76cは、軸継手76の両端部に比べて捻れにくい傾向にある。従って、軸継手76は、全体として撓みを許容しつつ捻れを抑制可能なものである。一軸偏心ねじポンプ10は、このような特性を有する軸継手76を用いてロータ60と回転軸73とを接続したものであるため、低粘性の流動物を低速で圧送するような過酷な使用条件下で使用したとしても、スティックスリップが生じにくい。
【0047】
上述した一軸偏心ねじポンプ10においては、連結ピン90を介して軸継手76に対してロータ60及び動力伝達部72の回転軸73を接続した例を示したが、これ以外の方法により接続したものであっても良い。具体的には、図2(b)に示したように、ロータ60の端部や回転軸73の端部にねじ軸60b,73bを設け、これらを軸継手76側のねじ穴78a,78bに螺合させることにより接続しても良い。
【0048】
なお、本実施形態では、駆動側接続端76a及びロータ側接続端76bの弾性係数を中間部76c以下とした例を示したが、軸継手76は長手方向の少なくとも一部の弾性係数が、他部の弾性係数以下であるものであればいかなるものであっても良い。すなわち、図3に示す軸継手176のように、駆動側接続端176a及びロータ側接続端176bを筒状あるいは軸状とし、中間部176cをバネ状としたものを軸継手76の代わりに用いても良い。
【0049】
上述した軸継手176は、駆動側接続端176a及びロータ側接続端176bの弾性係数が、中間部176c以上とされている。この軸継手176は、両端部(駆動側接続端176a、及びロータ側接続端176b)よりも中間部176cが撓みやすい傾向にある。また、軸継手176の両端部は、中間部176cに比べて捻れにくい傾向にある。そのため、軸継手176は、上述した軸継手76と同様に、全体として撓みを許容しつつ捻れを抑制可能な特性を有する。従って、軸継手76に代えて軸継手176を採用した場合も、低粘性の流動物を低速で圧送するような過酷な使用条件下で使用したとしても、スティックスリップが生じにくい。
【0050】
また、上述した軸継手76,176は、駆動側接続端76a,176a及びロータ側接続端76b,176bの弾性係数を中間部76c,176c以下としたものであるが、回転軸73とロータ60とを接続する軸継手はこれらに限定されない。すなわち、軸方向への弾性を有するものであれば、駆動側接続端276aから中間部276cを経てロータ側接続端276bに至る略全体に亘って略同一の弾性係数であっても良い。具体的には、図4に示した軸継手276のように、長手方向の略全体に亘ってバネ状とされたものであっても良い。かかる構成とした場合についても、軸継手276が軸線方向に対して交差する方向への撓みを許容しつつ、軸線周り方向への捻れを抑制可能な構成である限り、上述した軸継手76,176と同様の作用効果が得られる。
【0051】
また、上述した軸継手76,176,276のように、バネ状の部位を設ける場合には、バネ状に形成された部位の終端部分に捻れや撓みによる応力が集中する懸念がある。そのため、軸継手76,176,276においては、バネ状に形成された部位の終端部分に応力集中を回避するための方策を講じることが好ましい。具体的には、例えば図5に示す軸継手376のように、駆動側接続端376a及びロータ側接続端376bに溝をらせん状に形成してバネ状の部位を設けた場合には、その終端部分において他の部位よりも溝の幅を拡大した部位(応力拡散部376d)を設けることにより、捻れや撓みによる応力を受ける領域を拡大し、応力集中を回避する効果が見込める。
【0052】
本実施形態は、本発明の一実施形態を示したものに過ぎず、本発明が上述したものに限られないことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、一軸偏心ねじポンプ全般において利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 一軸偏心ねじポンプ
30 一軸偏心ねじポンプ機構
56 流体搬送路
60 ロータ
62 外周面
73 回転軸(駆動側回転部)
76 軸継手
76a 駆動側接続端
76b ロータ側接続端
76c 中間部
80 駆動機
176 軸継手
176a 駆動側接続端
176b ロータ側接続端
176c 中間部
276 軸継手
276a 駆動側接続端
276b ロータ側接続端
276c 中間部
図1
図2
図3
図4
図5