【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した従来技術において用いられているフレキシブルロッドは、偏心回転するロータの動きを許容すべく長尺にする必要がある。そのため、従来技術においては、一軸偏心ねじポンプの全長が長くならざるを得ないという傾向にある。
【0005】
一方、ピンジョイント等の軸継手を一軸偏心ねじポンプにおいて採用した場合には、フレキシブルロッドを採用した場合のように全長が長くなることを抑制できる。その反面で、ピンジョイントを用いた場合には、摩耗等による異物の混入(コンタミネーション)が発生してしまう懸念がある。
【0006】
また、圧送対象の流動体が低粘度であり、低速で圧送する場合には、スティックスリップと称される現象が発生し、流量が安定しなかったり、異音が発生したりするなどの懸念がある。さらに、吐出圧が過大となることにより軸継手に過大な負荷が作用し、軸継手が破損してしまう可能性も完全には否定できない。
【0007】
そこで、上述した課題を解決すべく、本発明は、長さ方向にコンパクトでありつつ、軸継手における流動物の混入等の問題が生じにくい一軸偏心ねじポンプの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決すべく提供される本発明の一軸偏心ねじポンプは、駆動機の動力により回転する駆動側回転部と、雄ねじ型の軸体によって構成されたロータと、前記ロータを挿通可能であって内周面が雌ねじ型に形成されたステータと、前記ロータが前記ステータの内側において自転しつつ、前記ステータの内周面に沿って公転するように偏心回転可能なように前記駆動側回転部と前記ロータとを接続する軸継手とを有し、前記軸継手が、撓み軸継手によって構成されており、軸線方向への弾性力を有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の一軸偏心ねじポンプでは、駆動側回転部とロータとを接続するための軸継手として撓み軸継手が採用されている。撓み軸継手は、軸線方向に対して交差する方向への撓みを許容しつつ、軸線周り方向への捻れを抑制可能な軸継手である。そのため、本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、スティックスリップが生じることなく、ロータをステータの内側においてスムーズに回転させることができる。これにより、一軸偏心ねじポンプの動作安定性を向上させうる。
【0010】
また、本発明では撓み軸継手を採用しているため、フレキシブルロッドを採用した場合のように一軸偏心ねじポンプの全長が長くならない。また、撓み軸継手を採用することにより、軸継手の摩耗に伴う流動物への異物の混入の問題を最小限に抑制できる。
【0011】
さらに、本発明においては、軸継手が軸線方向(スラスト方向)への弾性を有する。従って、本発明の一軸偏心ねじポンプにおいては、過大な吐出圧が作用すると軸継手が軸線方向に収縮する。これに伴い、ステータに対するロータの相対位置が軸線方向にずれた状態になり、過大な吐出圧が軸継手に作用することを回避できる。従って、本発明の一軸偏心ねじポンプは、吐出圧が適正な範囲内において適切に流動物を吐出可能であると共に、吐出圧が過大になった場合においても過大な負荷により軸継手が破損することを抑制できる。
【0012】
また、同様の課題を解決すべく提供される本発明の一軸偏心ねじポンプは、駆動機の動力により回転する駆動側回転部と、雄ねじ型の軸体によって構成されたロータと、前記ロータを挿通可能であって内周面が雌ねじ型に形成されたステータと、前記ロータが前記ステータの内側において自転しつつ、前記ステータの内周面に沿って公転するように偏心回転可能なように前記駆動側回転部と前記ロータとを接続する軸継手とを有し、前記軸継手が、前記ロータの軸線方向への弾性力を有し、前記軸線方向に対して交差する方向への撓みを許容しつつ、前記軸線周り方向への捻れを抑制可能であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の一軸偏心ねじポンプでは、軸線方向に対して交差する方向への撓みを許容しつつ、軸線周り方向への捻れを抑制可能な軸継手が採用されている。これにより、スティックスリップが生じることなく、ステータの内側においてロータを回転させることができる。これにより、一軸偏心ねじポンプの動作安定性を向上させうる。
【0014】
また、本発明で採用されているような軸継手を採用することにより、フレキシブルロッドを採用した場合のように一軸偏心ねじポンプの全長が長くなってしまうことを抑制できる。さらに、本発明によれば、軸継手の摩耗に伴う流動物への異物の混入の問題を最小限に抑制できる。
【0015】
また、本発明においては、軸継手がロータの軸線方向への弾性を有し、過大な吐出圧が作用すると軸継手が軸線方向に収縮する。そのため、吐出圧が過大になったとしても、ステータに対するロータの相対位置が軸線方向にずれた状態になることで吐出圧が低減される。これにより、吐出圧の影響により軸継手が破損することを回避できる。
【0016】
本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記軸継手の長手方向の少なくとも一部の弾性係数が、他部の弾性係数以下となっている。
【0017】
本発明の一軸偏心ねじポンプでは、軸継手の長手方向の少なくとも一部において弾性係数が他部以下とされている。すなわち、本発明において用いられている軸継手は、少なくとも一部において撓みやすい性質を有し、他の部分において捻れにくい性質を有する。そのため、上述した構成とすることにより、軸継手全体として、撓み及び捻れについて最適化できる。すなわち、軸継手を、撓みを生じうる一方で捻れにくい特性を備えたものとしても良い。これにより、低粘性の流動物を低速で圧送するような過酷な使用条件下で使用したとしても、スティックスリップの発生を最小限に抑制できる。また、本発明に用いられる軸継手は、吐出圧が過大となったとしても軸継手に作用するトルク負荷が過大とならず、軸継手の破損を抑制できる。
【0018】
また、軸継手の長手方向に弾性係数の相違する部分を設けることにより、容易かつ精度良く軸継手のスラスト方向への弾性を調整できる。従って、本発明によれば、適正な吐出圧を発揮可能なように、軸継手のスラスト方向への弾性を最適化できる。
【0019】
上述した本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記軸継手が、前記駆動側回転部に接続される駆動側接続端と、前記ロータ側に接続されるロータ側接続端とを有し、前記駆動側接続端及び前記ロータ側接続端の弾性係数が、前記駆動側接続端及び前記ロータ側接続端の中間部以下のものであっても良い。
【0020】
本発明で用いられている軸継手は、両端部(駆動側接続端、及びロータ側接続端)において中間部よりも撓みやすい傾向にある。また、中間部は、軸継手の両端部に比べて捻れにくい傾向にある。そのため、上述した軸継手は、全体として撓みを許容しつつ捻れを抑制可能なものである。本発明の一軸偏心ねじポンプは、このような軸継手を用いたものであるため、スティックスリップが生じにくく、ロータをスムーズに回転させうる。
【0021】
また、上述した本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記軸継手が、前記駆動側回転部に接続される駆動側接続端と、前記ロータ側に接続されるロータ側接続端とを有し、前記駆動側接続端及び前記ロータ側接続端の弾性係数が、前記駆動側接続端及び前記ロータ側接続端の中間部以上であるものであっても良い。
【0022】
本発明で用いられている軸継手は、両端部(駆動側接続端、及びロータ側接続端)よりも中間部が撓みやすい傾向にある。また、この軸継手の両端部は、中間部に比べて捻れにくい傾向にある。そのため、上述した軸継手は、全体として撓みを許容しつつ捻れを抑制可能な特性を有する。本発明の一軸偏心ねじポンプは、このような軸継手を採用したものであるため、スティックスリップが生じにくく、ロータをスムーズに回転させうる。
【0023】
上述した本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記中間部が、柱状あるいは筒状とされており、前記駆動側接続端及び前記ロータ側接続端のいずれか一方又は双方が、コイルバネ状に形成されたものであることが望ましい。
【0024】
本発明で用いられている軸継手は、両端部が中間部よりも撓みやすく、中間部が軸継手の両端部に比べて捻れにくい傾向にあり、全体として撓みを許容しつつ捻れを抑制可能な特性を有する。本発明の一軸偏心ねじポンプは、このような軸継手を用いたものであるため、スティックスリップが生じにくく、動作安定性の面で優れている。
【0025】
また、本発明で用いられている軸継手は、駆動側接続端及びロータ側接続端のうち少なくとも一方がコイルバネ状に形成されている。そのため、吐出圧によるスラスト荷重の大きさが過大になると軸継手が収縮した状態になる。これにより、ロータが駆動機側に移動した状態になる。また、ステータの内周面に対する前記ロータの外周面の線接触が解除された状態になる。これにより、過剰に大きな圧力が軸継手等に作用することを回避し、軸継手等の破損リスクを最小限に抑制できる。
【0026】
上述した本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記軸継手の径が、前記駆動側回転部及び前記ロータのいずれか一方又は双方の径以上であることが望ましい。
【0027】
かかる構成によれば、軸継手のトルク剛性が一層向上し、捻れを抑制できるので、スティックスリップの発生を最小限に抑制できる。
【0028】
上述した本発明の一軸偏心ねじポンプは、前記ステータの内周面に対して前記ロータの外周面が線接触することにより流体搬送路が形成されるものであり、前記ロータ側から前記駆動機側に向けて作用する荷重が所定の大きさを超えることを条件として、前記ロータの前記駆動機側への移動が許容され、前記ロータ及び前記ステータの線接触が解除されるものであることが好ましい。
【0029】
かかる構成によれば、吐出圧により過大なスラスト荷重が作用するような状況下で使用されたとしても、過剰に大きな圧力が軸継手等に作用しない。これにより、軸継手等が破損することを最小限に抑制できる。