(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の乳化物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む。これらの成分について、以下に説明する。
【0014】
(A)成分
本発明において、(A)成分として用いることができる非イオン性界面活性剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。これらの中でも、使用感が良好である点で、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることが特に好ましい。
【0015】
本発明における(A)成分の配合量は特に限定されない。乳化物の全量に対して、(A)成分の配合量の下限値は、例えば、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上、1質量%以上、1.3質量%以上、1.5質量%以上、1.7質量%以上、2質量%以上、2.3質量%以上、2.5質量%以上、2.7質量%以上、3質量%以上であってもよい。これらの中でも、安定性のよい乳化物が得られる点で、1.5質量%以上が好ましく、2質量%以上がさらに好ましく、3質量%以上が最も好ましい。また、乳化物の全量に対して、(A)成分の配合量の上限値は、例えば、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下であってもよい。これらの中でも、界面活性剤による皮膚刺激性が少ない点で、6質量%以下が好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、4質量%以下が最も好ましい。
【0016】
(ポリグリセリン脂肪酸エステル)
ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、グリセリンを重合したポリグリセリンと脂肪酸のエステル化生成物である。本発明に用いることができるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸ポリグリセリル−2、ステアリン酸ポリグリセリル−4、ステアリン酸ポリグリセリル−6、ジステアリン酸ポリグリセリル−6、ジステアリン酸ポリグリセリル−10、トリステアリン酸ポリグリセリル−10、イソステアリン酸ポリグリセリル−2、イソステアリン酸ポリグリセリル−4、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−3、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−6、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−10、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−10、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル−10、トリヤシ油脂肪酸ポリグリセリル−10、カプリン酸ポリグリセリル−2、セスキカプリン酸ポリグリセリル−2、トリミリスチン酸ポリグリセリル−5、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル−5、ラウリン酸ポリグリセリル−2、オレイン酸ポリグリセリル−2、オレイン酸ポリグリセリル−4、オレイン酸ポリグリセリル−6、セスキオレイン酸ポリグリセリル−2、トリオレイン酸ポリグリセリル−5、トリオレイン酸ポリグリセリル−10、ペンタオレイン酸ポリグリセリル−10等が挙げられる。これらの中でも、使用感が良好である点で、ジステアリン酸ポリグリセリル−10を用いることが特に好ましい。
【0017】
本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量は特に限定されない。乳化物の全量に対して、ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量の下限値は、例えば、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上、1質量%以上、1.3質量%以上、1.5質量%以上、1.7質量%以上、2質量%以上、2.3質量%以上、2.5質量%以上、2.7質量%以上、3質量%以上であってもよい。これらの中でも、安定性のよい乳化物が得られる点で、1.5質量%以上が好ましく、2質量%以上がさらに好ましく、3質量%以上が最も好ましい。また、乳化物の全量に対して、ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量の上限値は、例えば、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下であってもよい。これらの中でも、界面活性剤による皮膚刺激性が少ない点で、6質量%以下が好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、4質量%以下が最も好ましい。
【0018】
(ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル)
本発明に用いることができるポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノミリスチン酸ポリオキシエチレングリセリル等が挙げられる。
【0019】
本発明におけるポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルの配合量は特に限定されない。乳化物の全量に対して、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルの配合量の下限値は、例えば、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上、1質量%以上、1.3質量%以上、1.5質量%以上、1.7質量%以上、2質量%以上、2.3質量%以上、2.5質量%以上、2.7質量%以上、3質量%以上であってもよい。これらの中でも、安定性のよい乳化物が得られる点で、1.5質量%以上が好ましく、2質量%以上がさらに好ましく、3質量%以上が最も好ましい。また、乳化物の全量に対して、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルの配合量の上限値は、例えば、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下であってもよい。これらの中でも、界面活性剤による皮膚刺激性が少ない点で、6質量%以下が好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、4質量%以下が最も好ましい。
【0020】
(B)成分
本発明において、(B)成分として用いることができる化合物としては、炭素数C12〜24の脂肪酸、炭素数C12〜24の脂肪酸のグリセリルモノエステル及び/又は炭素数14〜24の高級アルコールが挙げられる。これらの中でも、少量を配合するだけで皮膚上で延伸するとクリーム化する乳化物を得ることができ、かつ使用感が良好である点で、炭素数C12〜24の脂肪酸又は炭素数C12〜24の脂肪酸のグリセリルモノエステルを用いることが特に好ましい。また、炭素数C12〜24の高級アルコールの配合量が少ない場合、乳化物の使用感がさらに良好になるため、実質的に炭素数C12〜24の高級アルコールを含まない(炭素数C12〜24の高級アルコールの配合量が0.2質量%未満)ことが、特に好ましい。
【0021】
特許文献1では、(B)成分を高配合しなければ、塗布時にクリーム化する乳化物を得ることはできない。具体的には、以下のア)〜オ)の成分について、「クリーム化力」を以下のように規定した場合、
ア)炭素数C12〜24の脂肪酸 2
イ)炭素数C12〜24の脂肪酸のグリセリルモノエステル 3
ウ)炭素数14〜24の高級アルコール 5
エ)炭素数10〜24のα−ヒドロキシ脂肪酸 2
オ)炭素数14〜24の高級アルコールのグリセリルモノエーテル 4
ア)〜オ)の各成分のクリーム化力と、百分率で表した各成分の配合量(%)との積の和(以下、「クリーム化力と配合量との積の和」と略す)が6以上でなければ、塗布時にクリーム化する乳化物を得られない。すなわち、以下に記載する1)〜5)の数値の合計が6以上でなければ、塗布時にクリーム化する乳化物を得られない。
1)炭素数C12〜24の脂肪酸の配合量(%) × 2
2)炭素数C12〜24の脂肪酸のグリセリルモノエステルの配合量(%) × 3
3)炭素数14〜24の高級アルコールの配合量(%) × 5
4)炭素数10〜24のα−ヒドロキシ脂肪酸の配合量(%) × 2
5)炭素数14〜24の高級アルコールのグリセリルモノエーテルの配合量(%) × 4
一方、本発明によれば、クリーム化力と配合量との積の和が6未満の場合であっても、クリーム化する乳化物を得ることができる。
【0022】
本発明において、クリーム化力と配合量との積の和は特に限定されない。クリーム化力と配合量との積の和の下限値としては、例えば、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1以上であってもよい。また、クリーム化力と配合量との積の和の上限値としては、例えば、10以下、9以下、8以下、7以下、6未満、5以下、4以下、3以下、2以下、1.5以下であってもよい。中でも、使用感が良好である点で、6未満が好ましく、4以下がさらに好ましく、3以下が最も好ましい。
【0023】
本発明において、(B)成分の合計量が1.2質量%未満の場合、(B)成分が全て炭素数C12〜24の高級アルコールであっても、「クリーム化力と配合量との積の和」は6未満となる。その場合であっても、本発明の乳化物は皮膚上で延伸した際にクリーム化する。
【0024】
特許文献1には、本発明の(B)成分に加えて、炭素数10〜24のα−ヒドロキシ脂肪酸及び炭素数14〜24の高級アルコールのグリセリルモノエーテルについてもクリーム化に寄与する成分として記載されるが、本発明の乳化物にはこれらの成分を配合しなくてもよい。炭素数10〜24のα−ヒドロキシ脂肪酸及び/又は炭素数14〜24の高級アルコールのグリセリルモノエーテルは、べたつきの原因になり得るため、乳化物の全量に対して、0.3質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましく、含まれないことが最も好ましい。
【0025】
本発明における(B)成分の配合量(合計量)の下限値は、乳化物の全量に対して、0.2質量%以上である。0.2質量%未満の場合、皮膚に塗布して延伸してもクリーム状にならないため、本発明の目的を達成できない。(B)成分の配合量の下限値は、0.2質量%以上であれば特に限定されないが、例えば、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上であってもよい。これらの中でも、安定性のよい乳化物が得られる点で、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましく、0.5質量%以上が最も好ましい。また、(B)成分の配合量の上限値は特に限定されないが、例えば、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1.9質量%以下、1.8質量%以下、1.7質量%以下、1.6質量%以下、1.5質量%以下、1.4質量%以下、1.3質量%以下、1.2質量%以下、1.1質量%以下、1.0質量%以下であってもよい。これらの中でも、使用感が良好である点で、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が最も好ましい。
【0026】
(炭素数C12〜24の脂肪酸)
本発明に用いることができる炭素数C12〜24の脂肪酸としては、特に限定されないが、例えば、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の直鎖の飽和脂肪酸、2−ドデセン酸、cis−15-テトラコセン酸等の直鎖モノエン酸、リノール酸、リノエライジン酸、9,13−ドコサジエン酸、9,15−テトラコサジエン酸等のジエン酸、リノレン酸、リノレンエライジン酸等のトリエン酸、アラキドン酸等のテトラエン酸等が挙げられる。これらの中でも、配合量が少ない場合であってもクリーム化する乳化物を得ることができ、使用感が良好である点で、ステアリン酸を用いることが特に好ましい。なお、本発明における脂肪酸とは、脂肪酸及びその塩を包含する概念である。
【0027】
炭素数C12〜24の脂肪酸の配合量は、特に限定されない。炭素数C12〜24の脂肪酸の配合量の下限値は、例えば、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上であってもよい。これらの中でも、安定性のよい乳化物が得られる点で、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましく、0.5質量%以上が最も好ましい。また、炭素数C12〜24の脂肪酸の配合量の上限値は特に限定されないが、例えば、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1.9質量%以下、1.8質量%以下、1.7質量%以下、1.6質量%以下、1.5質量%以下、1.4質量%以下、1.3質量%以下、1.2質量%以下、1.1質量%以下、1.0質量%以下であってもよい。これらの中でも、使用感が良好である点で、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が最も好ましい。
【0028】
(炭素数C12〜24の脂肪酸のグリセリルモノエステル)
本発明に用いることができる炭素数C12〜24の脂肪酸のグリセリルモノエステルとしては、特に限定されないが、例えば、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル(ステアリン酸グリセリル)等の直鎖飽和脂肪酸のグリセリルモノエステル、グリセリルモノオレイン酸エステル等の直鎖モノエン酸のグリセリルモノエステル、グリセリルモノリノール酸エステル等のジエン酸のグリセリルモノエステル、グリセリルイソステアリン酸エステル等の分岐鎖脂肪酸のグリセリルモノエステル等が挙げられる。これらの中でも、配合量が少ない場合であってもクリーム化する乳化物を得ることができ、使用感が良好である点で、モノステアリン酸グリセリル(ステアリン酸グリセリル)を用いることが特に好ましい。
【0029】
炭素数C12〜24の脂肪酸のグリセリルモノエステルの配合量は、特に限定されない。炭素数C12〜24の脂肪酸のグリセリルモノエステルの配合量の下限値は、例えば、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上であってもよい。これらの中でも、安定性のよい乳化物が得られる点で、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましく、0.5質量%以上が最も好ましい。また、炭素数C12〜24の脂肪酸のグリセリルモノエステルの配合量の上限値は特に限定されないが、例えば、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1.9質量%以下、1.8質量%以下、1.7質量%以下、1.6質量%以下、1.5質量%以下、1.4質量%以下、1.3質量%以下、1.2質量%以下、1.1質量%以下、1.0質量%以下であってもよい。これらの中でも、使用感が良好である点で、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が最も好ましい。
【0030】
(炭素数14〜24の高級アルコール)
本発明に用いることができる炭素数14〜24の高級アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、ミリスチルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナービルアルコール等の直鎖の飽和脂肪族アルコール、2−テトラデカノール、2−エイコサノール,2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール等の分岐鎖を有する飽和の脂肪族アルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール等の不飽和の脂肪族アルコール等が挙げられる。これらの中でも、使用感が良好である点で、ベヘニルアルコールを用いることが特に好ましい。
【0031】
炭素数14〜24の高級アルコールの配合量は、特に限定されない。炭素数14〜24の高級アルコールの配合量の下限値は、例えば、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1.0質量%以上であってもよい。また、炭素数14〜24の高級アルコールの配合量の上限値は特に限定されないが、例えば、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、1質量%以下、0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%以下であってもよく、炭素数14〜24の高級アルコールを含まなくてもよい。炭素数14〜24の高級アルコールは、塗布時におけるべたつきの原因になり得ることから、配合量は少ない方が好ましく、例えば、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましく、0.2質量%以下が最も好ましい。
【0032】
炭素数14〜24の高級アルコールの配合量が0.2質量%以下の場合、(B)成分の合計量が1.8質量%以下であれば、(B)成分の「クリーム化力と配合量との積の和」は6未満となる。その場合であっても、本発明の乳化物は皮膚上で延伸した際にクリーム化する。
【0033】
(C)成分
本発明は(C)成分として低級アルコールを含む。本発明における低級アルコールとは、炭素数1〜5の直鎖又は分岐のアルコールのことを意味し、一価の低級アルコール及び多価の低級アルコールを包含する概念である。これらの中でも、使用感が良好である点で、多価の低級アルコールを用いることが特に好ましい。
【0034】
本発明に用いることができる一価の低級アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。また、本発明に用いることができる多価の低級アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロパンジオール、ペンチレングリコール等が挙げられる。これらの中でも、使用感が良好である点で、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロパンジオールを用いることが特に好ましい。
【0035】
本発明における(C)成分の配合量(合計量)の下限値は、乳化物の全量に対して、1質量%以上である。1質量%未満の場合、(B)成分の配合量が0.2質量%以上であることから、(C)成分が(B)成分の5倍以上の量(重量比)とならない。(C)成分の配合量の下限値は、1質量%以上であり、かつ、(B)成分の5倍以上であれば特に限定されないが、例えば、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、10質量%以上、11質量%以上、12質量%以上、13質量%以上、14質量%以上、15質量%以上、16質量%以上、17質量%以上、18質量%以上、19質量%以上、20質量%以上であってもよい。これらの中でも、特に使用感が良好である点で、11質量%以上が好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が最も好ましい。また、(B)成分の配合量の上限値は特に限定されないが、例えば、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、29質量%以下、28質量%以下、27質量%以下、26質量%以下、25質量%以下であってもよい。これらの中でも、特に使用感が良好である点で、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下が最も好ましい。
【0036】
本発明において、(C)成分の合計量は、(B)成分の合計量の5倍以上(重量比)である。5倍未満の場合、(B)成分に起因するべたつき感等を(C)成分によって打ち消すことができない。又は、皮膚上で延伸する際に液状からクリーム状に乳化物が変化したという実感を得られにくくなり、使用者に驚きや感動を与えることができない。(B)成分の合計量に対する(C)成分の合計量(重量比)の下限値は、5倍以上であれば特に限定されないが、例えば、7倍以上、10倍以上、13倍以上、15倍以上、18倍以上、20倍以上であってもよい。これらの中でも、特に使用感が良好である点で、7倍以上が好ましく、15倍以上がさらに好ましく、20倍以上が最も好ましい。(B)成分の合計量に対する(C)成分の合計量(重量比)の上限値は、特に限定されないが、例えば、250倍以下、200倍以下、100倍以下、80倍以下、60倍以下、50倍以下であってもよい。これらの中でも、特に使用感が良好である点で、80倍以下が好ましく、60倍以下がさらに好ましく、50倍以下が最も好ましい。
【0037】
本発明の乳化物には、(B)成分以外の油性成分を配合することができる。(B)成分以外の油性成分としては、特に限定されないが、例えば、アボカド油、アルモンド油、オリーブ油等の植物性油類、タートル油、ミンク油等の動物性油類、カカオ脂、モクロウ、ヤシ油等の植物性脂肪類、牛脂、豚脂等の動物性脂肪類、硬化油類、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油等の植物性ロウ類、ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン等の動物性ロウ類、流動パラフィン、ワセリン、イソパラフィン、セレシン、スクワラン等の炭化水素油類、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソオクタン酸セチル、トリイソオクタン酸グリセリル等のエステル類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油等が挙げられる。これらの中でも、特に使用感が良好である点で、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルを用いることが好ましい。
【0038】
本発明における油性成分の総量は、特に限定されない。本発明において、油性成分の総量とは(B)成分と(B)成分以外の油性成分を合計した量のことである。本発明における油性成分の総量の下限値は、例えば、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、8.5質量%以上であってもよい。これらの中でも、使用感が良好である点で、本発明における油性成分の総量の下限値は、7質量%以上が好ましく、8質量%以上がさらに好ましく、8.5質量%以上が最も好ましい。また、油性成分の総量の上限値は特に限定されないが、例えば、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、14質量%以下、13質量%以下であってもよい。これらの中でも、特に使用感が良好である点で、15質量%以下が好ましく、14質量%以下がさらに好ましく、13質量%以下が最も好ましい。
【0039】
本発明における乳化物の平均粒径は、特に限定されない。本発明によれば、特許文献1と異なり、乳化物の平均粒径が400nmより大きい場合であっても、皮膚上で延伸するとクリーム状になる乳化物を得ることができる。本発明における乳化物の平均粒径の下限値は、例えば、50nm以上、100nm以上、150nm以上、200nm以上であってもよい。これらの中でも、特に使用感が良好である点で、50nm以上が好ましく、100nm以上がさらに好ましく、150nm以上が最も好ましい。また、乳化物の平均粒径の上限値は、特に限定されないが、例えば5μm以下、3μm以下、2μm以下、1.5μm以下、1μm以下であってもよい。これらの中でも、特に使用感が良好である点で、2μm以下が好ましく、1.5μm以下がさらに好ましく、1μm以下が最も好ましい。なお、平均粒径は、市販の粒子径分析装置、例えば、Malvern Instruments Ltd.社製の「Zetasizer Nano−s」を用いて測定することができる。
【0040】
本発明における乳化物は、皮膚上で延伸する前は、液状又は乳液状である。塗布前における乳化物の粘度は、特に限定されない。乳化物の粘度の下限値としては、例えば、100mPa・s以上、200mPa・s以上、300mPa・s以上、400mPa・s以上、500mPa・s以上、600mPa・s以上、700mPa・s以上、800mPa・s以上、900mPa・s以上、1000mPa・s以上であってもよい。乳化物の粘度の上限値としては、例えば、10000mPa・s以下、9000mPa・s以下、8000mPa・s以下、7000mPa・s以下、6000mPa・s以下、5000mPa・s以下、4000mPa・s以下、3000mPa・s以下、2000mPa・s以下、1500mPa・s以下、1000mPa・s以下、900mPa・s以下、800mPa・s以下、700mPa・s以下、600mPa・s以下、500mPa・s以下であってもよい。これらの中でも、皮膚上で延伸する際にクリーム化した実感が得られやすい点で、5000mPa・s以下が好ましく、1500mPa・s以下がより好ましく、1000mPa・s以下がさらに好ましく、800mPa・s以下が最も好ましい。なお、粘度は、市販の粘度測定器、例えば、ブルックフィールド社製の「DV1 Viscometer RV型」を用いて、5rpm、25℃の条件にて測定することができる。
【0041】
本発明における乳化物は、O/W型、W/O型のいずれのであってもよく、W/O/W型やO/W/O型の乳化物であってもよい。これらの中でも、塗布時の使用感が特に良好である点で、O/W型の乳化物であることが好ましい。
【0042】
本発明における乳化物のpHは、特に限定されない。本発明によれば、乳化物のpHの下限値は、例えば、3以上、4以上、5以上、6以上、6.5以上、7以上、7.5以上、8以上であってもよい。これらの中でも、皮膚へのなじみがよい点で、6以上が好ましく、7以上がさらに好ましく、7.5以上が最も好ましい。また、乳化物のpHの上限値は、特に限定されないが、例えば12以下、11以下、10以下、9.5以下、9以下であってもよい。これらの中でも、特に使用感が良好である点で、10以下が好ましく、9.5以下がさらに好ましく、9以下が最も好ましい。なお、pHは、市販のpHメーター、例えば、メトラートレド社製の「セブンイージー」を用いて、25℃にて測定することができる。
【0043】
本発明の乳化物が「皮膚に塗布して延伸するとクリーム状になる」現象は、皮膚表面に存在する電解質が乳化物に作用し、乳化物の流動性が急激に減少することに起因すると考えられる。したがって、皮膚上でクリーム化するか乳化物であるかは、実際に乳化物を皮膚へ塗布し延伸することによって確認できるだけでなく、電解質を含む溶液を乳化物へ添加し撹拌することによっても確認できる。具体的には、乳化物1重量部に対して、20%クエン酸Na水溶液を0.1重量部添加し、スパーテル等を用いて30秒程度撹拌する。撹拌後、乳化物の流動性が実質的になくなった場合(流動性がほとんどなく、クリーム状とみなせる場合を含む)、乳化物は皮膚上で「クリーム状になる」(クリーム化する)と本発明では定義する。なお、洗浄した直後の肌に乳化物を塗布する等、肌上に存在する電解質の量が少ない場合には、本来、皮膚上でクリーム化する乳化物であるにも関わらず、クリーム化しないことがある。そのため、本発明においては、1)実際に乳化物を皮膚へ塗布し延伸することによってクリーム化する、又は、2)上記のように、乳化物に対してクエン酸Na水溶液を添加して撹拌することにより乳化物の流動性が実質的になくなる、という2つの条件のいずれかを満たせば、「皮膚に塗布して延伸するとクリーム状になる」乳化物であるとみなす。
【0044】
本発明の乳化物は、皮膚外用剤として用いることができる。なお、本発明における皮膚外用剤は、化粧品、医薬部外品及び医薬品を包含する。また、本発明の乳化物は、保湿効果があり、使用感もよいことから、化粧料として用いることが特に好ましい。なお、本発明における化粧料は、化粧品に加えて、医薬部外品に分類される薬用化粧品を包含する概念である。
【0045】
本発明の乳化物は、保湿作用によって肌の表面を美しく保つ効果を奏するため、保湿用組成物又は美容組成物として用いることができる。また、保湿作用によって乾燥による皮膚のシワを予防する効果を奏するため、シワの改善用組成物として用いることができる。
【0046】
本発明の乳化物は、上記成分以外に、防腐剤、界面活性剤、紫外線散乱剤、紫外線吸収剤、キレート剤等の種々の成分を配合することができる。
【0047】
以下、実施例を記載して本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、種々の態様をとることができる。
【実施例】
【0048】
(化粧料の調製)
実施例1〜9及び比較例1〜3の化粧料(O/W型乳化物)を、表1に記載される処方で作成した。
[作成方法]
表1に記載の(ア)、(イ)及び(ウ)の成分を別々に撹拌し、80℃に加熱した。その後、(ア)、(イ)及び(ウ)の成分を混合し、実施例1〜9及び比較例1〜3の化粧料を調製した。
【0049】
【表1】
【0050】
(クリーム化の評価)
実施例1〜9及び比較例1〜3の化粧料について、塗布時におけるクリーム化を評価した。上述した通り、塗布時のクリーム化は、クエン酸Na水溶液を添加することにより確認できる。そこで、各化粧料1重量部に対して、20%クエン酸Na水溶液を0.1重量部添加し、スパーテルを用いて30秒間撹拌した後の流動性を評価した。撹拌後に流動性がなくなった場合、クリーム化「する」とし、流動性がなくならなかった場合、クリーム化「しない」とした。
【0051】
(使用感の評価)
専門のパネラーを被験者として、各化粧料の使用感をアンケートにより評価した。具体的には、パネラーの手の甲に各化粧料を塗布(米粒3粒程度の量)して指で延伸してもらい、塗布時、延伸時及び延伸後の使用感を評価した。評価基準は以下の通りである。なお、塗布時の「みずみずしさ」及び「べたつき感」については一般的な液状化粧料を「4:普通」として評価し、延伸後の「べたつき感」、「ぬめり感」及び「さっぱり感」については一般的なクリーム状化粧料を「4:普通」として評価した。クリーム感(皮膚上で延伸した際に乳化物がクリーム化したという実感)については、比較例1(特許文献1に記載の発明)を「4:普通」として評価した。
[評価基準]
7:非常に良好
6:良好
5:やや良好
4:普通
3:やや悪い
2:悪い
1:非常に悪い
【0052】
(試験結果)
評価結果を表1に示す。また、結果の考察を以下に記載する。
【0053】
[クリーム化力と配合量との積の和について]
表2に示す通り、実施例2〜5、7及び8はクリーム化力と配合量との積の和が3以下であるにもかかわらず、クリーム化した。このように、本発明は特許文献1とは異なり、クリーム化力と配合量との積の和が6未満であってもクリーム化する。一方、(B)成分の合計量が0.1質量%である比較例2は、クリーム化しなかった。したがって、塗布時にクリーム化するためには、(B)成分を0.2質量%以上配合しなければならないことが分かった。
【0054】
[(C)成分と(B)成分の重量比について]
実施例6と比較例3とは、水の一部を(B)成分で置き換えた以外、同一の処方である。比較例3は、(B)成分の量が多く、(C)成分が(B)成分の5倍未満の量となり、延伸後においてべたつき感やぬめり感を生じ、さっぱりとした使用感が得られなかった。また、実施例3と比較例4は、(C)成分の一部を水で置き換えた以外、同一の処方である。比較例4は(C)成分の量が少なく、(C)成分が(B)成分の5倍未満の量となり、延伸時に乳化物がクリーム化したという実感が十分に得られなかった。したがって、使用感が良好であり、かつ、塗布時にクリーム化したという実感を得られるようにするためには、(C)成分を(B)成分の5倍以上配合しなければならないことが分かった。
【0055】
[非イオン性界面活性剤について]
非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いた比較例1は、ジステアリン酸ポリグリセリル−10を用いた実施例1に比べて、べたつきの原因となる(B)成分の配合量が少ないにも関わらず、使用感が悪かった。このことから、良好な使用感を得るためには、非イオン性界面活性剤として本発明の(A)成分を選択しなければならないことが分かった。