(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上流の棟側から下流の軒側に向けて角度θ1の下り勾配を有する屋根下地材に敷設される金属製の屋根材に関して、各屋根材は、上流に向かう端部に起立壁と該起立壁から延びて屋根下地材に屋根用ビスでビス止めされる平板壁を連設し、下流に向かう端部に下向きの垂下壁を設けており、
下流側に敷設された屋根材(2D)と上流側に敷設された屋根材(2U)の相互に、下流側の屋根材の起立壁(3)に対して、上流側の屋根材の垂下壁(5)を覆い被せ、該垂下壁を起立壁にビス止めすることにより屋根接合部(6)を構成する屋根において、
前記接合部(6)に位置して屋根上に搭載される機器の架台(23)を支持する支持装置(20)であり、
前記支持装置は、金具本体(21)と、前記金具本体を前記屋根接合部に固着する金具用ビス(22)と、前記金具本体に架台(23)を搭載した状態で固定する架台用ボルト(24)により構成されており、
前記金具本体(21)は、下流側の屋根材(2D)に載置される載置部(30a)と、前記起立壁(3)と垂下壁(5)の間に下方から挿入されるフック壁(26b)を備えた上向きフック(26)と、下流側から前記垂下壁(5)に臨まされる基壁部(29)を一体に形成すると共に、前記基壁部にビス孔(33)を設けており、
下流側から前記ビス孔(33)に挿入した金具用ビス(22)を前記垂下壁と起立壁に貫通して螺入し、基壁部(29)と垂下壁(5)を相互に締結すると共に、フック壁(26b)と起立壁(3)を相互に締結することにより、金具本体(21)を屋根接合部(6)に固着するように構成して成ることを特徴とする屋根における機器搭載用支持装置。
前記ビス孔(33)の軸線は、屋根下地材の下り勾配に沿う屋根材の平面(P)に対して角度θ3で上向き傾斜する軸線(R)に沿って形成されて成ることを特徴とする請求項1に記載の屋根における機器搭載用支持装置。
前記支持壁(28)は、上流側に配置された第1支持壁(28a)と、下流側に配置された第2支持壁(28b)を備えており、第1支持壁(28a)と第2支持壁(28b)を下流側の屋根材(2D)に支持させるように構成して成ることを特徴とする請求項3に記載の屋根における機器搭載用支持装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
横葺き屋根の屋根材は、塗装された鋼板(以下「通常鋼板」という。)が一般的であるが、近年、塗装に加えて石粒等を付着することにより硬い表層を形成した鋼板(以下「硬層付き鋼板」という。)が提供され、遮音性・遮熱性・耐候性に優れるものとして好評を博している。通常鋼板は、折曲加工が容易であるため、平馳等の馳構造により接合部を構成することが容易であり、接合部を偏平状として全体高さを比較的低く形成することができる。
【0006】
これに対して、硬層付き鋼板は、折曲加工が容易でないため、偏平な馳構造を構成することが困難であり、接合部の全体高さが比較的高くなることが知られている。
【0007】
特許文献1により提案された従来の支持装置を
図18ないし
図21に示している。横葺屋根は、水平面Hに対して上流側Uの棟側から下流側Dの軒側に向けて角度θ1の下り勾配を有する屋根下地材1に屋根材2を敷設している。屋根材2は、上述の硬層付き鋼板により形成されている。
【0008】
図18の(A)に拡大図を示すように、屋根材2は、上流に向かう端部に上向きに折曲された起立壁3と該起立壁3から上流方向に延びる平板壁4を形成し、下流に向かう端部に下向きに折曲された垂下壁5を形成している。これにより、下流側に敷設された屋根材2Dと上流側に敷設された屋根材2Uの相互に屋根接合部6を構成する
【0009】
屋根接合部6は、下流側の屋根材2Dの平板壁4を屋根用ビス7で屋根下地材1に固着し、上流側の屋根材2Uの垂下壁5を前記起立壁3に覆い被せ、接合用ビス8でビス止めすることにより形成される。
【0010】
特許文献1の支持装置は、金属板を折曲することにより形成された支持金具9により構成され、支持金具9は、前記垂下壁5に添設される支持壁10と、該支持壁10の上端から上流方向に延設された載置壁11と、該載置壁の端部から下向きに形成されたL形の脚部12を備えている。前記支持壁10の下端には舌片13が設けられている。
【0011】
支持金具9は、金具用ビス14を前記支持壁10から垂下壁5及び起立壁3に貫通して打ち込むことにより屋根接合部6に固着され、屋根上に設置される。この状態で、前記載置壁11が前記角度θ1とされた屋根勾配と平行に配置され、前記脚部12が上流側の屋根材2Uに接支される。
【0012】
そこで、下流側と上流側に設置された複数の支持金具9、9に跨るようにして架台15が搭載される。架台15は、支持金具9の載置壁11に載置され、該載置壁11に設けられた孔16を介して架台用ボルト17により固定される。
【0013】
しかしながら、特許文献1により提案された支持金具9は、現状の屋根に形成されている屋根接合部6の構造と屋根勾配(角度θ1)を何ら考慮せず、単純に屋根接合部6に固着する構成とされているため、次のような種々の問題がある。
【0014】
(第1の問題点)
架台15に太陽電池モジュール等のような盤状機器が搭載されている場合、強風により煽られると、
図19に示すように、架台15に上向きの引張荷重F1が作用する。支持金具9の脚部12は、図示矢印Q1で示すように、容易に浮き上がるので、支持金具9の全体が引上げられる。支持金具9の唯一の固着個所は、金具用ビス14により構成されている。金具用ビス14は、垂下壁5と起立壁3の両壁に固定されているが、支持金具9は、一方の垂下壁5に固着されているに過ぎないから、垂下壁5と共に、図示矢印Q2で示すように、容易に揺動する。このため、支持金具9は、金具用ビス14を支点として支持壁10が折れ曲がり、その際、金具用ビス14が折損又は破断すると、固着状態を喪失して屋根上から脱落する危険がある。
【0015】
(第2の問題点)
複数の支持金具9に架設された架台15は、屋根の下り勾配に沿って配置され、従って、太陽電池モジュール等の機器も下り勾配に沿って搭載されている。そこで、積雪等により架台15が受ける荷重は、屋根勾配に沿う下流方向の分力として、
図20に示すように支持金具9に対する滑落方向の荷重F2を作用する。この際、前記金具用ビス14は、支持壁10の下孔を介して垂下壁5及び起立壁3にねじ込まれており、該金具用ビス14の軸線が荷重F2の作用する方向に沿わせられている。このため、屋根勾配に沿う下流方向の荷重F2が作用したとき、図示鎖線Q3で示すように、金具用ビス14が容易に引き抜かれ、支持金具9が固着状態を失い、屋根に沿って滑落する危険がある。
【0016】
(第3の問題点)
支持金具9は、現状の屋根に形成されている屋根接合部6の構造と屋根勾配(角度θ1)を何ら考慮せず、単純に屋根接合部6に固着する構成とされているため、
図21に示すように、支持壁10が垂下壁5に圧着された固着状態において、屋根下地材1に対して垂直姿勢、つまり、鉛直線に対して前傾姿勢を保持した状態で固着されている。しかしながら、太陽電池モジュール等の重量物を搭載した架台15の荷重F3は、鉛直方向の下向きに作用するため、図示鎖線Q4で示すように、支持壁10が座屈変形するおそれがある。
【0017】
(第4の問題点)
この点に関して、前記支持壁10の強度を補うため、脚部12が屋根材2Uに接支されている。しかしながら、豪雪地帯においては、積雪により、前記荷重F3が数百kgに及ぶことも珍しくない。そこで、このような大荷重F3が脚部12にかかると、屋根材2Uが局部的に圧迫されるので、
図21に鎖線Q5で示すように、屋根材2Uが陥没変形するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上述の問題を悉く解決した機器搭載用支持装置及び支持方法を提供するものである。
【0019】
そこで、本発明の支持装置が手段として構成したところは、上流の棟側から下流の軒側に向けて角度θ1の下り勾配を有する屋根下地材に敷設される金属製の屋根材に関して、各屋根材は、上流に向かう端部に起立壁と該起立壁から延びて屋根下地材に屋根用ビスでビス止めされる平板壁を連設し、下流に向かう端部に下向きの垂下壁を設けており、下流側に敷設された屋根材と上流側に敷設された屋根材の相互に、下流側の屋根材の起立壁に対して、上流側の屋根材の垂下壁を覆い被せ、該垂下壁を起立壁にビス止めすることにより屋根接合部を構成する屋根において、前記接合部に位置して屋根上に搭載される機器の架台を支持する支持装置であり、前記支持装置は、金具本体と、前記金具本体を前記接合部に固着する金具用ビスと、前記金具本体に架台を搭載した状態で固定する架台用ボルトにより構成されており、前記金具本体は、下流側の屋根材に載置される載置部と、前記起立壁と垂下壁の間に下方から挿入されるフック壁を備えた上向きフックと、下流側から前記垂下壁に臨まされる基壁部を一体に形成すると共に、前記基壁部にビス孔を設けており、下流側から前記ビス孔に挿入した金具用ビスを前記垂下壁と起立壁に貫通して螺入し、基壁部と垂下壁を相互に圧着すると共に、フック壁と起立壁を相互に圧着することにより、金具本体を接合部に固着するように構成して成る点にあり、これにより、上記第1の問題点が解決される。
【0020】
この際、前記ビス孔の軸線は、屋根下地材の下り勾配に沿う屋根材の平面Pに対して角度θ3で上向き傾斜する軸線Rに沿って形成することが好ましく、これにより、上記第2の問題点が解決される。
【0021】
前記金具本体は、前記載置部の上方位置で架台を搭載する搭載部と、前記搭載部を支持する支持壁を一体に形成し、前記支持壁は、屋根下地材の下り勾配に沿う屋根材の平面Pに直交する垂直線Vに対して上流側に向けて角度θ2で傾斜させられていることが好ましく、これにより、上記第3の問題点が解決される。
【0022】
前記支持壁は、上流側に配置された第1支持壁と、下流側に配置された第2支持壁を備えており、第1支持壁と第2支持壁を下流側の屋根材に支持させるように構成することが好ましく、下向きの鉛直荷重を支持壁により好適に支持することができるので、これにより、上記第4の問題点が解決される。
【0023】
更に、本発明の支持方法が手段として構成したところは、上記の支持装置を使用することにより屋根上に機器を搭載する方法であり、(A)屋根の接合部において垂下壁と起立壁をビス止めした接合用ビスを取外し、垂下壁を起立壁から上向きに離反させることにより、平板壁の上方空間を開放させる工程と、(B)既設の屋根用ビスに近隣する個所に位置して新たな屋根用ビスを平板壁に打ち込むことにより、屋根下地材に対する平板壁の固着力を増強させる工程と、(C)その後、上向きフックのフック壁を起立壁に臨ませた状態で金具本体を下流側の屋根材に載置すると共に、垂下壁を下降させて基壁部とフック壁の間に挿入する工程と、(D)次いで、下流側からビス孔に挿入した金具用ビスを垂下壁と起立壁に貫通して螺入することにより、基壁部と垂下壁を相互に圧着すると共に、フック壁と起立壁を相互に圧着することにより、金具本体を接合部に固着する工程と、(E)前記金具本体の上に架台を搭載して固定すると共に、該架台に機器を搭載する工程とから成る点にある。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、屋根上に設置した状態で、上向きの荷重F1、滑落方向の荷重F2、下向きの荷重F3に対して、強固に耐えることができ、機器を搭載した架台を安定して支持する支持装置20と支持方法の提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る支持装置を屋根に設置した状態を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る支持装置を構成する金具本体を示しており、(A)は正面側を示す斜視図、(B)は背面側を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る支持装置を示す縦断側面図である。
【
図4】第1実施形態に係る支持装置の金具本体の外観を示しており、(A)は正面図、(B)は右側面図、(C)は背面図、(D)は平面図、(E)は底面図である。
【
図5】第1実施形態に関して、金具本体を屋根接合部に設置する方法を示す縦断側面図である。
【
図6】第1実施形態に関して、金具用ビスにより金具本体を屋根接合部に固着する方法を示す縦断側面図である。
【
図7】第1実施形態に関して、金具用ビスの作用を示しており、(A)は金具本体を屋根接合部に固着した状態を示す縦断側面図、(B)は上向きフックを挟んで垂下壁と起立壁を締結する作用を示す拡大図である。
【
図8】第1実施形態に関して、支持装置を屋根に設置完了した後、架台を固定支持した状態を示す断面図である。
【
図9】第1実施形態に関して、支持装置が上向きの引張荷重を受けたときの作用を示す縦断側面図である。
【
図10】第1実施形態に関して、支持装置が屋根勾配に沿う下流方向の荷重を受けたときの作用を示す縦断側面図である。
【
図11】第1実施形態に関して、支持装置が鉛直方向の下向き荷重を受けたときの作用を示す縦断側面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る支持装置を構成する金具本体を示しており、(A)は正面側を示す斜視図、(B)は背面側を示す斜視図である。
【
図13】第2実施形態に係る支持装置の金具本体を示す縦断側面図である。
【
図14】第2実施形態に関して、支持装置を屋根に設置すると共に、架台を固定支持した状態を示す断面図である。
【
図15】本発明の第3実施形態に係る支持装置を構成する金具本体を示す斜視図である。
【
図16】第3実施形態に係る支持装置の金具本体を示す縦断側面図である。
【
図17】第3実施形態に関して、支持装置を屋根に設置すると共に、架台を固定支持した状態を示す断面図である。
【
図18】従来技術に係る支持装置に関して、支持装置が屋根に設置された状態を示す斜視図である。
【
図19】従来技術に関して、上向きの引張荷重を受けたときの問題を説明する縦断側面図である。
【
図20】従来技術に関して、屋根勾配に沿う下流方向の荷重を受けたときの問題を説明する縦断側面図である。
【
図21】従来技術に関して、鉛直方向の下向き荷重を受けたときの問題を説明する縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
図1ないし
図11は、本発明の第1実施形態を示しており、
図12ないし
図14は、本発明の第2実施形態を示し、
図15ないし
図17は、本発明の第3実施形態を示している。尚、以下に説明する本発明の実施形態において、屋根の構成は、従来技術に関して
図18に基づき上述した構成と同様であるから、上述と同様の構成部分は、同一符号を図示しており、上述の説明を援用する。
【0027】
<第1実施形態>
支持装置20は、屋根接合部6に搭載される金具本体21と、前記金具本体21を屋根接合部6に固着する金具用ビス22と、前記金具本体21の上に載置された架台23を固定するための架台用ボルト24により構成されている。
【0028】
図1及び
図2に示すように、金具本体21は、アルミニウム等の金属により押出成形された長尺体を裁断することにより形成され、断面が概ね平行四辺形とされた角筒部25と、角筒部25の下端から上流側に延びる上向きフック26と、角筒部25の上端から上流側に延びる翼部27を一体成形している。
【0029】
前記角筒部25は、相互に平行な上流側の第1支持壁28aと下流側の第2支持壁28bを相互に平行な底壁30と頂壁31により連結しており、更に、好ましくは、底壁30と頂壁31の間に位置して両支持壁28a、28bを連結する内部壁32を備えている。尚、本発明において「平行」の語は、厳格に平行な場合の他、ほぼ平行な場合を含む意味であることを諒解されたい。
【0030】
前記角筒部25は、屋根下地材1の下り勾配に沿う屋根材2の平面Pに対して、底壁30の下面に該平面Pに面接触する載置部30aを形成しており、頂壁31は、底壁30と平行に形成され、該頂壁31の上面により架台23を搭載する搭載部31aを形成している。前記搭載部31aは、載置部30aの上方位置で前記第1支持壁28aと第2支持壁28bにより支持され、両支持壁28a、28bは、前記平面Pに直交する垂直線Vに対して、上流側に向けて角度θ2で傾斜するように形成されている。
【0031】
上向きフック26は、前記底壁30の載置部30aと面一状態で第1支持壁28aを越えて延びる連設壁26aと、該連設壁26aから上向きに折曲されたフック壁26bを備えている。
【0032】
前記第1支持壁28aの下端部は、前記上向きフック26のフック壁26bと平行な基壁部29を構成しており、該基壁部29には前記フック壁26bの上方に臨むビス孔33が開設されている。この際、ビス孔33の軸線は、屋根材2の平面Pに対して下流方向に向けて角度θ3で上向き傾斜する軸線Rに沿うように形成されている。
【0033】
更に、第2支持壁28bには前記ビス孔33に連通する導入孔34が開設されており、該導入孔34の軸線も前記軸線Rに沿うように形成されている。
【0034】
前記ビス孔33は、金具用ビス22の軸部を挿通するが頭部を挿通しない小径孔により構成され、導入孔34は、金具用ビス22を締結する回転工具を挿通させる大径孔により構成されている。ビス孔33と導入孔34から成る1組の孔は、角筒部25の横方向に複数組を設けることが好ましく、図示実施形態の場合、2組が設けられている。
【0035】
翼部27は、横向きに延びるレール状に形成されることにより溝を備えた保持部35を備えており、該保持部35に架台用ボルト24の頭部24aを抜止め状態で摺動自在に保持するように構成されている。
【0036】
(支持装置の設置と架台の搭載)
図5ないし
図7は、屋根上に支持装置20を設置する方法と、設置された支持装置20に架台23を搭載する方法を示している。
【0037】
図5に示すように、設置に先立ち、屋根材2の屋根接合部6に設けられた接合用ビス8を取外すことにより、屋根材2Uの垂下壁5を屋根材2Dの起立壁3から上向きに離反させる。この際、上流側の屋根材2Uを大きく離反させると、下流側の屋根材2Dの平板壁4の上方空間が開放されるので、既設の屋根用ビス7に隣り合う個所に位置して新たな屋根用ビス7aを打ち込み、これにより、屋根下地材1に対する平板壁4の固着力を増強する。
【0038】
後述のように、支持装置20を構成する金具本体21の屋根材2に対する固着は、金具用ビス22を唯一の手段としており、その固着強度は、平板壁4の固着状態に依存することになるので、新たな屋根用ビス7aによる増し打ちを行うことにより、平板壁4の堅牢な固着を確保するのが良い。この点に関して、本発明は、金具本体21の設置に際して、必ず上流側の屋根材2Uを上向きに持ち上げる工程を伴うものであるから、そのときにビスの増し打ちを行えば、特に作業工程の煩雑化等を招来することはなく、簡単な作業で平板壁4の固着強度を向上させ、その結果、金具本体21の高い固着強度を実現することができる。
【0039】
前記垂下壁5を持ち上げた状態で、
図5に示すように、金具本体21の上向きフック26を起立壁3に臨ませ、その後、
図6に示すように、載置部30aを下り勾配に沿う下流側の屋根材2Dの上に載置すると共に、上流側の屋根材2Uを元の位置に戻し、垂下壁5を起立壁3に覆い被せ、該垂下壁5の下端部を上向きフック26のフック壁26bと基壁部29の間に挿入する。この状態で、金具本体21は、仮止め状態として安定設置され、その後の作業を容易とする。
【0040】
金具本体21を屋根接合部6に固着するため、金具用ビス22が導入孔34からビス孔33に挿入され、垂下壁5及び起立壁3に螺入される。この際、上述のように、金具用ビス22は、屋根材2の平面Pに対して角度θ3で上向き傾斜する軸線Rに沿って挿入されるので、電動ドライバー等の工具が屋根材2の上面に干渉するようなことはなく、作業を容易に行うことができる。
【0041】
図7に示すように、金具用ビス22は、上向きフック26のフック壁26bを挟んだ状態で垂下壁5と起立壁3を締結する。駆動回転される金具用ビス22の螺糸により、
図7(B)に矢印Kで示すように、垂下壁5と起立壁3が引き寄せられるので、金具本体25の基壁部29と垂下壁5が相互に圧着され、しかも、フック壁26bと起立壁3が相互に圧着される。この状態から、更に金具用ビス22を締結すると、図示鎖線で示すように、起立壁3がフック壁26bの上方で基壁部29に向けて引き寄せられる。このように、垂下壁5と起立壁3は、その間にフック壁26bを介在した状態で、該フック壁26bを挟着するように締結されるので、金具用ビス22の締結力が極めて高くなり、これにより、金具本体25の高い固着強度が得られる。
【0042】
以上のようにして金具用ビス22により金具本体25を屋根接合部6に固着した後は、
図8に示すように、金具本体25における頂壁31の搭載部31aに架台23を搭載すると共に、翼部27の保持部35に保持した架台用ボルト24で架台23を固定すれば良い。
【0043】
(上向き荷重を受けたときの作用)
架台23に太陽電池モジュール等のような盤状機器が搭載されている場合、強風により煽られると、
図9に示すように、架台23に上向きの引張荷重F1が作用し、架台用ボルト24を介して翼部27が引き上げ方向の力を受ける。その際、図示のように、唯一の固着手段を構成する金具用ビス22に固定されたビス孔33を支点とするモーメントM1を生じることになるが、この場合、該モーメントM1に対して、角筒部25の第1支持壁28aと第2支持壁28bを支持する底壁30と、上向きフック26が好適に対抗し、金具本体25の設置姿勢を保持する。
【0044】
角筒部25の底壁30は、載置部30aを屋根材2Dの平坦面に面接触状態で接支し、前記モーメントM1に耐え、第1支持壁28aと第2支持壁28bにより搭載部31aを強固に支持する。上向きフック26は、フック壁26bが金具用ビス22で締結された垂下壁5と起立壁3により強固に挟持されているので、浮き上がることはない。しかも、両壁5、3の挟持力に加えて、モーメントM1に対抗する方向から、上向きフック26のフック壁26bが垂下壁5の下端に係止すると共に、該フック壁26bの先端が起立壁3(金具用ビス22により引き寄せられた変形部)に係止しているので、該モーメントM1に伴う引き上げ力に耐える。
【0045】
(下流側に向かう滑落方向の荷重を受けたときの作用)
図10に示すように、積雪等により架台23が受ける下向き荷重により、屋根勾配に沿う下流方向の荷重F2が作用した場合、支持装置20は、屋根勾配の平面Pに沿って滑落方向の力を受けるが、該平面Pに対して、金具用ビス22は、上述のように、その軸線Rが角度θ3で傾斜させられた状態で垂下壁5及び起立壁3に締着されているので、容易に引き抜かれることはなく、支持装置20の固着状態を保持し、屋根に沿って滑落することはない。
【0046】
この際、上述のように、支持装置20の設置に先立ち、屋根材2Dの平板壁4に新たな屋根用ビス7aを増し打ちしているので、極めて大きな荷重F2が作用したときでも、平板壁4が屋根下地材1から離脱することはなく、該屋根材2Dと共に支持装置20を滑落させるような危険を招来することはない。
【0047】
(下向き荷重を受けたときの作用)
図11に示すように、支持装置20は、金具本体25が角筒部25により剛体構造とされており、底壁30の載置部30aを屋根材2Dに沿って載置した状態で、第1支持壁28aと第2支持壁28bをほぼ鉛直方向に起立させている。従って、太陽電池モジュール等の重量物を搭載した架台23から鉛直方向の下向きに作用する荷重F3は、第1支持壁28aと第2支持壁28bにより直下から対向して好適に支持され、しかも、屋根材2Dの平面に面接触された底壁30の載置部30aにより安定した状態で支持される。
【0048】
ところで、荷重F3が金具本体25の全体ではなく、仮に、架台用ボルト24を有する翼部27に対して局所的に大きくかかる場合、図示のように、唯一の固着手段を構成する金具用ビス22に固定されたビス孔33を支点とするモーメントM2を生じることになるが、その場合、該モーメントM2に対して、上向きフック26が好適に対抗して金具本体25の設置姿勢を保持する。図示のように、上向きフック26は、連設壁26aを起立壁3から折曲された屋根材2Dに当接することにより回動を阻止され、フック壁26bを金具用ビス22に固着された起立壁3に当接することにより回動を阻止されるので、これによりモーメントM2に屈することなく耐えることができる。
【0049】
<第2実施形態>
図12ないし
図14は、支持装置20の第2実施形態を示している。支持装置20は、屋根接合部6に搭載される金具本体21と、前記金具本体21を屋根接合部6に固着する金具用ビス22と、前記金具本体21の上に載置された架台23を固定するための架台用ボルト24により構成されており、この点は、第1実施形態と同様である。
【0050】
図12及び
図13に示すように、金具本体21は、金属板を折曲することにより各部が一体に形成されており、上流側に配置される第1支持壁28aと、該第1支持壁28aの両側縁から下流側に向けて折曲された第2支持壁28b、28bを備えている。
【0051】
前記第1支持壁28aは、下端縁から上流側に向けて上向きフック26を形成すると共に、上端縁から上流側に向けて翼部27を延設し、該翼部27に架台用ボルト24を挿通させるための長孔から成る保持部35を開設している。
【0052】
前記第2支持壁28b、28bは、下端縁から内向きに折曲された底壁30、30を設けると共に、上端縁から内向きに折曲された頂壁31、31を設けている。
【0053】
金具本体21は、屋根下地材1の下り勾配に沿う屋根材2の平面Pに対して、前記底壁30、30の下面と前記上向きフック26の下面の一方又は両方により載置部30aを設けており、前記頂壁31、31と前記翼部27を載置部30aと平行となるように形成することにより、該頂壁31、31の上面と該翼部27の上面の一方又は両方により架台23を搭載するための搭載部31aを形成している。従って、搭載部31aは、載置部30aの上方位置で前記第1支持壁28aと第2支持壁28bにより支持されることになる。
【0054】
図13に示すように、第1支持壁28a及び第2支持壁28b、28bは、前記平面Pに直交する垂直線Vに対して、上流側に向けて角度θ2で傾斜するように形成されている。
【0055】
上向きフック26は、第1支持壁28aの下端縁から折曲された連設壁26aと、該連設壁26aから上向きに折曲されたフック壁26bを備えており、上述のように連設壁26aの下面により載置部30aを形成することが好ましい。
【0056】
前記第1支持壁28aの下端部は、前記フック壁26bと平行な基壁部29を構成しており、該基壁部29には前記フック壁26bの上方に臨むビス孔33を開設している。この際、ビス孔33の軸線は、屋根材2の平面Pに対して下流方向に向けて角度θ3で上向き傾斜する軸線Rに沿うように形成されている。
【0057】
金具本体21を屋根材2Dに設置する方法は、第1実施形態について説明した方法と同様であり、
図14は、金具本体21を屋根材2Dの上に設置すると共に、該金具本体21に架台23を搭載した状態を示している。
【0058】
金具本体21は、下り勾配に沿う屋根材2の平面Pから第1支持壁28a及び第2支持壁28b、28bを鉛直方向に起立させ、金具用ビス22の軸線を前記平面Pに対して上向きに傾斜させている。
【0059】
屋根接合部6における垂下壁5と起立壁3の間にはフック壁26bが挿入され、金具用ビス22の締結により、垂下壁5が基壁部29に圧着されると共に、起立壁3がフック壁26bに圧着されている。
【0060】
下流側に位置する第2支持壁28b、28bの底壁30、30により形成された載置部30aが屋根材2Dに面接触状態で接支されており、更に、上流側に位置する上向きフック26の連設部26aにより形成された載置部30aが起立壁3の近傍で屋根材2Dに接支されている。
【0061】
これにより、支持装置20は、上述の第1実施形態と同様に、上向きの荷重F1、滑落方向の荷重F2、下向きの荷重F3に対して、強固に耐えることができ、架台23を安定支持することが可能である。
【0062】
<第3実施形態>
図15ないし
図17は、支持装置20の第3実施形態を示している。支持装置20は、屋根接合部6に搭載される金具本体21と、前記金具本体21を屋根接合部6に固着する金具用ビス22と、前記金具本体21の上に載置された架台23を固定するための架台用ボルト24により構成されており、この点は、第1実施形態と同様である。
【0063】
図15及び
図16に示すように、金具本体21は、金属板を折曲することにより各部が一体に形成されており、上流側に配置される第1支持壁28aと、下流側に配置される第2支持壁28bを備え、両支持壁28a、28bの上端部を頂壁31により連結している。
【0064】
前記第1支持壁28aは、下端縁から上流側に向けて底壁30を折曲形成すると共に、該底壁30を第1支持壁28aよりも幅広に形成することにより、該底壁30の両側端部に張出底壁30E、30Eを延設しており、該張出底壁30E、30Eから斜め上向きに折曲された基壁部29、29を形成している。そして、基壁部29、29にビス孔33を開設している。
【0065】
前記張出底壁30E、30Eの間に位置して、底壁30から上流側に上向きフック26が延設され、該上向きフック26は、底壁30から延びる連設壁26aと、該連設壁26aから上向きに延びるフック壁26bを備えている。
【0066】
金具本体21は、屋根下地材1の下り勾配に沿う屋根材2の平面Pに対して、前記張出底壁30Eを含む底壁30の下面により載置部30aを形成し、前記頂壁31を載置部30aと平行となるように形成することにより、該頂壁31の上面により架台23を搭載するための搭載部31aを形成し、該頂壁31に架台用ボルト24を挿通させるための長孔から成る保持部35を開設している。従って、搭載部31aは、載置部30aの上方位置で前記第1支持壁28aと第2支持壁28bにより支持されることになる。
【0067】
図16に示すように、第1支持壁28a及び第2支持壁28bは、前記平面Pに直交する垂直線Vに対して、上流側に向けて角度θ2で傾斜するように形成されている。また、基壁部29に設けられたビス孔33の軸線は、屋根材2の平面Pに対して下流方向に向けて角度θ3で上向き傾斜する軸線Rに沿うように形成されている。
【0068】
金具本体21を屋根材2Dに設置する方法は、第1実施形態について説明した方法と同様であり、
図17は、金具本体21を屋根材2Dの上に設置すると共に、該金具本体21に架台23を搭載した状態を示している。
【0069】
金具本体21は、下り勾配に沿う屋根材2の平面Pから第1支持壁28a及び第2支持壁28bを鉛直方向に起立させ、金具用ビス22の軸線を前記平面Pに対して上向きに傾斜させている。
【0070】
屋根接合部6における垂下壁5と起立壁3の間にはフック壁26bが挿入され、金具用ビス22の締結により、垂下壁5が基壁部29に圧着されると共に、起立壁3がフック壁26bに圧着されている。
【0071】
底壁30により形成された載置部30aが屋根材2Dに面接触状態で接支されており、更に、第1支持壁28aから下流側に離間した位置で第2支持壁28bの下端が屋根材2Dに接支されている。
【0072】
これにより、支持装置20は、上述の第1実施形態と同様に、上向きの荷重F1、滑落方向の荷重F2、下向きの荷重F3に対して、強固に耐えることができ、架台23を安定支持することが可能である。