特許第6883323号(P6883323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社宮本工業所の特許一覧

<>
  • 特許6883323-火葬設備 図000002
  • 特許6883323-火葬設備 図000003
  • 特許6883323-火葬設備 図000004
  • 特許6883323-火葬設備 図000005
  • 特許6883323-火葬設備 図000006
  • 特許6883323-火葬設備 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883323
(24)【登録日】2021年5月12日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】火葬設備
(51)【国際特許分類】
   F23G 1/00 20060101AFI20210531BHJP
【FI】
   F23G1/00 D
   F23G1/00 F
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-115675(P2017-115675)
(22)【出願日】2017年6月13日
(65)【公開番号】特開2019-2601(P2019-2601A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141808
【氏名又は名称】株式会社宮本工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(74)【代理人】
【識別番号】100210826
【弁理士】
【氏名又は名称】土肥 千里
(72)【発明者】
【氏名】秋山 拓也
(72)【発明者】
【氏名】平井 修
(72)【発明者】
【氏名】向井 昌
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−261639(JP,A)
【文献】 特開2001−173918(JP,A)
【文献】 特開平11−248116(JP,A)
【文献】 実開昭62−172919(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棺を載せる台車と、火葬炉と、を備え、
台車は、フレームの後端部にシール部材が取り付けてあり、長手方向において非等間隔に配置した複数の車輪を備え、
火葬炉は、台車が出し入れされ遺体の燃焼が行われる主燃焼室に、台車を炉内へ導くレールと、台車受け部を備え、
レールは、主燃焼室の下方に敷設してあり、台車が主燃焼室の停止位置へ達した際の車輪の位置に対向して凹部を備え、
台車受け部は、主燃焼室の側壁及び後壁に、台車の棺載台より下方に設けてあり、台車受け部の上面に密閉材を備え、
台車が主燃焼室の停止位置へ達した状態では、車輪が凹部へ落ち込み、台車受け部上面にある密閉材は、台車底面と密着し、台車と側壁及び後壁との隙間を封じ、フレームの後端部に取り付けられたシール部材と耐火扉下端とが密着し、台車後端部と耐火扉との隙間を封じることを特徴とする火葬設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主燃焼室における燃焼効率を高めた火葬設備に関する。
【背景技術】
【0002】
遺体の燃焼が行われる主燃焼室へ棺を載せた台車を導入する火葬設備において、主燃焼室は、台車上方に位置する燃焼空間と、台車下方に位置する軌道空間を有する。このような構成を有する従来の火葬設備では、台車と炉内壁面との間に隙間が生じ、燃焼空間の気密性を確保することが困難であった。そのため、台車と炉内壁面との間に生じる隙間を介して、燃焼空間から軌道空間へ、バーナの火炎や高温のガスが回り込み、台車の駆動部が高温下に晒されることによって、台車の耐久期間が短くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−106814号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような問題に対処すべく、主燃焼室の台車の駆動部に対応する位置に空気孔を設けることによって、軌道空間を冷却する手法が従来から用いられていた(特許文献1)。しかし、この手法では、台車と炉内壁面との隙間から燃焼空間へ必要以上の空気が流入し燃焼空間の温度を低下させるため、火炎や燃焼空気を十分に制御することが困難であり、燃焼効率を上げることはできなかった。
また、台車と炉内壁面との隙間を塞ぎ、燃焼空間の気密性を確保するために、駆動装置によって台車を昇降させる手法や、シール材を駆動して隙間へ密着させる手法があったが、部品点数が多く、生産性やメンテナンス性を鑑みると、実用的ではなかった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みたものであり、主燃焼室における燃焼空間の気密性が高く、燃焼効率の優れた火葬設備の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の火葬設備は、棺を載せる台車と、火葬炉と、を備え、台車は、フレームの後端部にシール部材が取り付けてあり、長手方向において非等間隔に配置した複数の車輪を備え、火葬炉は、台車が出し入れされ遺体の燃焼が行われる主燃焼室に、台車を炉内へ導くレールと、台車受け部を備え、レールは、主燃焼室の下方に敷設してあり、台車が主燃焼室の停止位置へ達した際の車輪の位置に対向して凹部を備え、台車受け部は、主燃焼室の側壁及び後壁に、台車の棺載台より下方に設けてあり、台車受け部の上面に密閉材を備え、台車が主燃焼室の停止位置へ達した状態では、車輪が凹部へ落ち込み、台車受け部上面にある密閉材は、台車底面と密着し、台車と側壁及び後壁との隙間を封じ、フレームの後端部に取り付けられたシール部材と耐火扉下端とが密着し、台車後端部と耐火扉との隙間を封じることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レールは、台車が主燃焼室の停止位置へ達した際の車輪の位置に対向して凹部を備え、台車受け部は、主燃焼室の側壁に設けてあるため、台車が主燃焼室の停止位置へ達した状態では、車輪が凹部へ落ち込み、台車底面と台車受け部の上面が密着して台車と炉内壁面との隙間を封じ、燃焼空間の気密性を確保する。そのため、台車下部からの空気浸入を防止し、かつ、主燃焼室の高温雰囲気の台車下部への流入を防ぐ事により、燃焼空間の温度低下を防止できるとともに、火炎や燃焼空気を細やかに制御することが可能となり、燃焼効率を上げることができる。

また台車の車輪は、長手方向において非等間隔に配置してあり、凹部へ落ち込むことなくレール上を円滑に移動するので、台車の出し入れの際に、特殊な操作も不要であり、作業者に負担が掛からない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】台車が火葬炉外にある状態で示す火葬設備の縦断面図である。
図2】台車が火葬炉内の停止位置にある状態と火葬炉外にある状態との位置関係を示す火葬設備の縦断面図である。
図3図2のA−A線断面図であり、(a)は台車が走行中の状態、(b)は台車が主燃焼室内の停止位置にある状態を示す。
図4】台車を省略して示す図3のB−B線断面図である。
図5】台車を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、(d)は底面図である。
図6】台車の車輪とレールの凹部の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による火葬設備の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、以下において、火葬炉の前後方向は、台車を出し入れする際の手前側の開口部を前側とし、奥側を後側とする。また、台車の前後方向は、火葬炉への進入方向を前側とする。
本発明の火葬設備は、棺を載せる台車1と火葬炉2を備えるものである。
【0010】
火葬炉2は、図1に示すように、主燃焼室3と再燃焼室4から構成されている。主燃焼室3と再燃焼室4は耐火煉瓦やセラミック等(以下、耐火素材と記す。)を内壁とする。主燃焼室3に台車1を導入した際の内部空間は、図3に示すように、台車1の上下で燃焼空間3aと軌道空間3bに分かれる。
【0011】
主燃焼室3では、台車1が出し入れされ遺体の燃焼が行われる。主燃焼室3は、前壁5、天壁6、側壁7、及び後壁8からなり、下方にはレール9が敷設してある。
【0012】
前壁5は、台車1が出入りするための開口部とそれを封じる耐火扉10を備える。耐火扉10は、耐火素材からなり、主燃焼室3の開口部を封じ得る大きさ及び形態に形成されている。また、耐火扉10は開口部の側部に併設されたガイドに沿って昇降可能に構成されている。図2に示すように、台車1が主燃焼室3内の停止位置に存在するとき、耐火扉10は下降して下端が台車1後端部のシール部材15に密着し、主燃焼室3の燃焼空間3aを封じる。
【0013】
天壁6は、再燃焼室4と主燃焼室3とを上下に区画する。天壁6と後壁8との間には、再燃焼室4へ通じる煙路4aへの入口を備える。
【0014】
後壁8は、バーナ11とストッパ12を備える。
バーナ11は、後壁8に挿通してあり、主燃焼室3の内部へ向けて設置されている。また、バーナ11は首振り機構を備え、揺動可能としてある。バーナ11の胴部と後壁8との隙間を、気密カバー11aが塞ぐことによって、燃焼空間3aの気密性が確保される。
ストッパ12は、バーナ11の下方に設けてある。ストッパ12には、台車1の先端がその全幅に亘って密着する。図2に示すように、台車1の先端がストッパ12に当接する位置が台車1の停止位置となる。ストッパ12は、後壁8の台車1の上部先端が当接する位置に埋め込まれている。また、ストッパ12は、耐火ブロックと付勢部材によって構成されて、台車1が当接した際の衝撃を吸収可能としてある。台車1の先端に当接するストッパ12の表面は、厚手のセラミッククロスなど柔軟性のある耐火性のシール材で被覆されている。
【0015】
側壁7及び後壁8には、台車1の棺載台1aより下方に、台車受け部13を設けてある。図3に示すように、台車受け部13より上部が燃焼空間3a、台車受け部13より下部が軌道空間3bとなる。そして、図4に示すように、台車受け部13は、左右両側の側壁7,7の前後方向の略全域に亘って形成してあるとともに、後壁8の左右方向の略全域に亘って形成してある。また、台車受け部13は、左右両側の側壁7,7及び後壁8から主燃焼室3の内側へ向かって水平方向に突出しており、平面視コ字形状をなす。台車受け部13の上面には、柔軟性のある耐火性の密閉材13aが配置してあり、密閉材13aはボルトによって位置調節可能としてある。密閉材13aは、台車受け部13上面の内周側端部に沿って平面視コ字形状に形成されている。台車1が主燃焼室3内の停止位置へ達した状態において、台車受け部13上面にある密閉材13aは、台車1底面の接触部1dと密着し、台車1と側壁7及び後壁8との隙間Sを塞ぐ。
【0016】
レール9は、直線的な水平レールであって、主燃焼室3の内外に亘って延びており、床面に設置されたレール台14の上に敷設してある。レール台14の内部には、駆動装置を備えてもよい。レール9は、上面に複数の凹部9aを備える。凹部9aは、台車1が主燃焼室3の停止位置へ達した際の車輪1cに対向する位置に設けてあり、特に形状は限定されないが、車輪1cを落ち込ませることが可能なほどの大きさであればよい。
【0017】
再燃焼室4では、主燃焼室3で発生したガスの燃焼が行われる。再燃焼室4は、天壁6を隔てて主燃焼室3の上方に位置し、再燃焼室4の後方に配設された煙路4aを介して主燃焼室2と連通する。再燃焼室4の前部には、火葬炉2の外部と通じる排気路4bを備える。
【0018】
台車1は、図3及び図5に示すように、棺載台1a、フレーム1b、車輪1c、及びシール部材15を備える。
棺載台1aは、耐火素材からなるものであって、台車1の上部に位置する。
フレーム1bは、棺載台1aを支えるものである。フレーム1bの底面は、図5(b)及び(d)に示すように、上方の接触部1dと下方の本体底部1eとが段違いに形成してある。詳しくは、フレーム1bの側方及び前方が、本体底部1eから上方へ向けて広がるように傾斜し、その傾斜部の上端から水平方向に張り出して接触部1dが形成されている。接触部1dは、底面視すると台車1の後方が開口したコ字形状である。接触部1dは、台車1が主燃焼室3内の停止位置へ達した状態で、台車受け部13上面の密閉材13aと密着し、台車1と側壁7及び後壁8との隙間Sを塞ぐ。
車輪1cは、フレーム1bの本体底部1eに取り付けてあり、レール9を走行する。車輪1cは長手方向に沿って非等間隔に配置されるものである。本実施形態では左右1対の車輪1c,1cが、台車1の長手方向に沿って四箇所に配置してある。そして、それぞれの車輪1cの間隔をL1,L2,L3としたとき、L1〜L3の幅は全て異なる。
シール部材15は、フレーム1bの後端部に取り付けてある。台車1が主燃焼室3内の停止位置へ達した状態で、耐火扉10が下降した際にシール部材15が耐火扉10下端と密着し、台車1後端部と耐火扉10との隙間を封じる。
【0019】
燃焼空間3aは、前壁5、耐火扉10、天壁6、側壁7、後壁8、及び台車1の棺載台1aに囲まれて構成される、台車受け部13より上方の空間である。
軌道空間3bは、側壁7、後壁8、床面、及び台車1のフレーム1bに囲まれて構成される、台車受け部13より下方の空間である。
【0020】
次に、台車1の車輪1cと、レール9の凹部9aの作用を説明する。
台車1がレール9上を走行している状態では、図3(a)に示すように、台車1と、側壁7及び後壁8の間には、隙間Sが存在する。台車1が主燃焼室3の停止位置に達した状態では、図2の破線及び矢印で示すように、台車1が下方へ沈む。これは、台車1が主燃焼室3の停止位置に達した状態で、車輪1cが凹部9aへ落ち込むためである。このとき隙間Sは、図3(b)に示すように封じられる。
台車1がレール9上を走行する過程を、図6に従って詳しく説明する。図6(a)は台車1が火葬炉2の外にある状態である。台車1を主燃焼室3内へ進入させていくと、図6(b)のように、一箇所の車輪1cが凹部9a上へ位置する。このとき、レール9と接触している他の車輪1cが台車1の重量を支えるため、凹部9a上へ位置した車輪1cは凹部9aへ落ち込むことなく、凹部9aの上方を通過することができる。車輪1cは非等間隔に配置されており、凹部9aも車輪1cに合わせて非等間隔に設けてあるため、走行中は複数の車輪1cが同時に凹部9a上に位置することはない。必ず何れか一箇所の車輪1cが、何れかの凹部9a上へ位置することになるため、レール9と接触している他の複数の車輪1cが台車1の重量を支えることができる。図6(c)は、台車1がレール9の端部にあり、停車位置直前の状態である。この状態から、複数の車輪1cが対応する凹部9aへ同時に落ち込むことによって、図6(d)及び図3(b)に示す停止位置に達する。
【0021】
台車1が停止位置にある際の、燃焼空間3aの密閉状態について詳述する。
台車1と、後壁8及び左右の側壁7,7の間に存在する隙間Sは、台車受け部13上面の密閉材13aと、台車1の接触部1dの底面とが密着することにより封じられる。さらに、耐火扉10を降下させると、耐火扉10の下端が台車1後端部のシール部材15に密着する。このように、台車1の外周と、前壁5、側壁7、後壁8及び耐火扉10との隙間は全て封じられるため、台車1の停止位置において燃焼空間3aの密閉状態が確保される。
【0022】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。例えば主燃焼室には、台車の全長に亘る領域において火葬に必要な火力がムラ無く行き渡るよう、天壁や側壁に複数のバーナを設けてもよい。また、好適な燃焼を行うため、主燃焼室に補助空気を供給する手段を備えてもよい。その他、複数の燃焼センサや温度センサを設け、各々の出力変化に応じて供給制御を行っても良い。再燃焼室は、主燃焼室で発生したガスを効率良く燃焼させるための様々な形態を採用することができる。また、台車の車輪は長手方向において非等間隔に配置し、レールの凹部は車輪の位置に対向して設け、台車は停止位置で沈み込むことが可能であれば、車輪と凹部の数量は限定されない。
【符号の説明】
【0023】
1 台車
1a 棺載台
1b フレーム
1c 車輪
1d 接触部
1e 本体底部
2 火葬炉
3 主燃焼室
3a 燃焼空間
3b 軌道空間
4 再燃焼室
4a 煙路
4b 排気路
5 前壁
6 天壁
7 側壁
8 後壁
9 レール
10 耐火扉
11 バーナ
11a 気密カバー
12 ストッパ
13 台車受け部
13a 密閉材
14 レール台
15 シール部材
L1,L2,L3 車輪の間隔
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6