特許第6883336号(P6883336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883336
(24)【登録日】2021年5月12日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】甘味料用異味改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20210531BHJP
【FI】
   A23L27/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-23258(P2018-23258)
(22)【出願日】2018年2月13日
(65)【公開番号】特開2019-135995(P2019-135995A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2019年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208086
【氏名又は名称】大洋香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岩本 壮王多
(72)【発明者】
【氏名】平瀬 創太
【審査官】 村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−176797(JP,A)
【文献】 特開2008−161166(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103610192(CN,A)
【文献】 特開2011−045305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラ抽出物及びシクロデキストリンが配合されてなることを特徴とする甘味料用異味改善剤。
【請求項2】
前記甘味料が高甘味度甘味料であることを特徴とする請求項1に記載の甘味料用異味改善剤。
【請求項3】
前記甘味料が人工甘味料であることを特徴とする請求項1に記載の甘味料用異味改善剤。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれか1つに記載の甘味料用異味改善剤を、食品又は飲料に配合、噴霧、又は塗布することを特徴とする甘味料の異味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は甘味料に由来する異味を抑制する異味改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
甘味料には、砂糖、黒糖、蜂蜜、メープルシロップ、アガベシロップ、水飴、ブドウ糖、及び果糖などの群からなる糖類、並びに添加剤としての甘味料等が含まれる。甘味料は、重要な味覚である甘味を食品等に加えることができるものとして古くから用いられており、近年においては、砂糖よりも甘味度の高い高甘味度甘味料を用いることにより、少量配合によるコストメリットや、う蝕予防、生活習慣病予防が可能であるとして、高甘味度甘味料の開発が意欲的になされてきた。高甘味度甘味料には、天然甘味料であれば、例としてカンゾウ抽出物やステビア抽出物を挙げることができ、また人工甘味料であれば、例としてサッカリン、アセスルファムK、スクラロース及びアスパルテーム等をあげることができ、これらは既に市場展開されている。
【0003】
高甘味度甘味料は砂糖と比較して、数十から数百倍の甘味度を有しており、極少量の使用で甘味を付与することができるため、カロリー改善製品の開発に適している。近年では、健康志向の増進によるカロリー改善製品における砂糖代替等の理由から、高甘味度甘味料の使用が増加しており、今後も需要は伸び続けると予測されている。しかしながら、特に高甘味度甘味料の甘味は甘さの立ち上がりが遅いことや後引きが長いことから、砂糖の甘味特徴とは異なる点を有することや、高濃度使用によって各高甘味度甘味料の苦味やえぐ味等が際立つことが問題視されている。この苦味やえぐ味は、甘味料には多少の違いはあっても含まれるものであるが、一般的に異味として捉えられ、不快に感じ取られることが多い。
【0004】
この異味を抑える為に、複数の高甘味度甘味料または甘味料を組み合わせることで、甘味の質を砂糖に近付ける技術が開発された(特許文献1)。また、これ以外にもフレーバーを併用することによる高甘味度甘味料由来の異味を改善する方法や(特許文献2)、甘味料の粒子系を小さくすることで、苦味を感じにくくする方法等が報告されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2136709号公報
【特許文献2】特許第4561559号公報
【特許文献3】特開2016−28594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、甘味料の異味を十分に抑えることはできず、また、マスキングフレーバーの使用により最終製品の味質に制限がかかることが問題視されている。さらに、甘味料への加工をおこなっても使用前の保存条件によっては形状が保てず、異味の感知が再びしやすくなってしまう問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、前記課題を解決する手段は、以下の通りである。
〔1〕 バラ抽出物及びシクロデキストリンが配合されてなることを特徴とする甘味料用異味改善剤。
〔2〕 前記甘味料が高甘味度甘味料であることを特徴とする〔1〕に記載の甘味料用異味改善剤。
〔3〕 前記甘味料が人工甘味料であることを特徴とする〔1〕に記載の甘味料用異味改善剤。
〔4〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の甘味料用異味改善剤を含有することを特徴とする食品。
〔5〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の甘味料用異味改善剤を、食品又は飲料に配合、噴霧、又は塗布することを特徴とする甘味料の異味改善方法。
【0008】
ここで、異味とは苦味若しくはえぐ味、又は甘味の後引き、又は苦味、えぐ味、及び甘味の後引きの全てをいう。これは、甘味料には苦味及びえぐ味を異味として感じやすいもの、若しくは甘味の後引きの長さを異味として感じるものがある他、異味として苦味、えぐ味を感じると共に甘味の後引きも長く感じるものがあるからである。なお、苦味とえぐ味は、いずれか一方のみ、若しくは、両方感じる場合には両方を合わせて異味とすることができる。
【0009】
前記甘味料には、食品若しくは飲料に混合して甘味を加えることができる化合物が含まれる。例えば砂糖も甘味料に含まれる。砂糖にも僅かに苦味が含まれ、本発明により砂糖の苦味を改善若しくは消す効果が期待されるからである。その他、甘味料に含まれる糖類として、砂糖、黒糖、蜂蜜、メープルシロップ、アガベシロップ、水飴、ブドウ糖、及び果糖などの群に含まれるいずれか1または2以上を上げることができる。また、食品添加物としての甘味料としては、食品に分類される甘味料以外の甘味料を含み、例えば、エリトリトール、D−トレイトール、L−トレイトール、D−アラビニトール、L−アラビニトール、キシリトール、リビトール、D−イジトール、ガラクチトール、D−グルシトール、マンニトール、ボレミトール、ペルセイトール、及び、D−エリトロ−D−ガラクト−オクチトール等からなる群に含まれるいずれか1または2以上の糖アルコール、カンゾウ抽出物、ステビア抽出物、羅漢果抽出物、ソーマチン、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース、ネオテーム及びアドバンテーム等からなる群に含まれる1または2以上のいずれかが挙げられる。また、人工甘味料としては、例えば、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース、ネオテーム及びアドバンテーム等からなる群に含まれる1または2以上のいずれかが挙げられる。
【0010】
食品としては、例えば、打錠菓、栄養補助食品、健康食品、介護食、又は菓子類等が挙げられる。飲料としては、例えば、果実飲料、清涼飲料水、又はアルコール飲料等が挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
バラ抽出物とシクロデキストリンとを併用することで、甘味料の異味に対してバラ抽出物若しくはシクロデキストリンの単独から得られる異味改善効果よりも相乗的な改善効果を示すことを見出した。
【0012】
また、本発明によれば、食品の風味を損ねることなく、甘味料に由来する異味に対して異味改善効果を提供することができる。
【0013】
さらに、本発明に係る甘味料用異味改善剤を食品又は飲料に配合することで、甘味料由来の異味を感じることなく食することができる食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】バラ抽出物製剤及び該製剤に含まれる原料単独について、アセスルファムK由来の苦味およびえぐ味改善スコアを示した棒グラフ。
図2】バラ抽出物製剤及び該製剤に含まれる原料単独について、スクラロース由来の苦味およびえぐ味改善スコアを示した棒グラフ。
図3】バラ抽出物製剤及び該製剤に含まれる原料単独について、アスパルテーム由来の苦味およびえぐ味改善スコアを示した棒グラフ。
図4】バラ抽出物製剤及び該製剤に含まれる原料単独について、ステビア抽出物由来の苦味およびえぐ味改善スコアを示した棒グラフ。
図5】バラ抽出物製剤及び該製剤に含まれる原料単独について、アセスルファムK由来の甘味の後引き改善スコアを示した棒グラフ。
図6】バラ抽出物製剤及び該製剤に含まれる原料単独について、スクラロース由来の甘味の後引き改善スコアを示した棒グラフ。
図7】バラ抽出物製剤及び該製剤に含まれる原料単独について、アスパルテーム由来の甘味の後引き改善スコアを示した棒グラフ。
図8】バラ抽出物製剤及び該製剤に含まれる原料単独について、ステビア抽出物由来の甘味の後引き改善スコアを示した棒グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の甘味料用異味改善剤は、バラ抽出物単独及びシクロデキストリンを有効成分として含有するものである。
【0016】
バラ抽出物とはバラ、好ましくはバラの花弁もしくは蕾から抽出した抽出物である。抽出方法としては、含水アルコール抽出、熱水抽出など一般的な抽出方法のいずれでもよいが、含水アルコール抽出が望ましい。また、対象物への使用濃度を考慮して、デキストリン等の賦形剤を使用してもよい。なお、デキストリンは異味改善効果を有しない。
【0017】
シクロデキストリンは単独では異味改善効果が僅かにあるに過ぎないが、本発明を見出すにあたり、バラ抽出物との併用により相乗的に異味改善効果を発揮することを見出した。配合比率はバラ抽出物に対して、重量比で0.1〜500倍量、好ましくは重量比で1〜50倍量の配合が望ましい。バラ濃度に対するシクロデキストリンの配合比率が0.1倍量よりも低くなると異味改善効果に対するシクロデキストリンによる相乗効果が現れず、また、配合比率が500倍量よりも高くなると異味改善効果に対するシクロデキストリンによる相乗効果が飽和状態となる。また、配合比率が重量比で1〜50倍量であれば、原料の調達コストの上昇を抑えつつ異味改善効果に対する相乗効果を効率的に得ることができる。
【0018】
本発明には、必要に応じて香料を配合することができる。香料としては、例えば、フルーツ系香料や嗜好系香料、乳系香料等が挙げられる。これにより、本発明による異味改善効果をさらに高めることができる。前記香料は、本発明が食品に含有される場合には当該食品の風味に合った香料を選択することで、当該食品の風味を損なうことなく、食べやすさをより向上させることができる。
【0019】
本発明に係る異味改善剤は、必要に応じて、乳化剤、固着剤、分散剤、湿潤剤、安定剤、噴射剤等を適宜添加することにより、油剤、乳剤、水和剤、噴霧剤、エアゾール剤、塗布剤、粉剤及び粒剤の形態として製剤化することができる。
【0020】
本発明に係る甘味料用異味改善剤を、甘味料と共に食品に含有させることにより、上記食品又は飲料中における甘味料に由来する異味を大きく改善することができる。前記食品又は飲料に対する本発明に係るバラ抽出物及びシクロデキストリンの併用組成物(以下、「バラ抽出物製剤」という)バラ抽出物製剤の含有量は、0.0001〜1重量%であることが好ましく、0.001〜0.1重量%であることがより好ましい。バラ抽出物製剤の濃度が食品に対して0.0001重量%より低くなるとシクロデキストリンと組み合わせた場合にも異味の改善効果が十分に得られず、バラ抽出物の濃度が食品に対して1重量%よりも高くなると原料の調達コスト上昇の要因となる。また、食品に対するバラ抽出物の濃度を0.01〜0.1重量%とすることで、原料の調達コストの上昇を抑えつつ、異味の改善効果を明確に得ることができる。
【0021】
対象物が食品である場合、食品としては、例えば、高甘味度甘味料を含む飲料、打錠菓、栄養補助食品、健康食品、介護食、菓子類等が挙げられる。これらの食品に、本発明に係る異味改善剤を配合、噴霧、又は塗布することにより、高甘味度甘味料由来の異味を改善して摂取しやすくなる。
【実施例】
【0022】
以下、試験例などにより本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。なお、本実施例における説明及び表中の各成分の含有量を示
す%は重量%で示されているものとする。
【0023】
1.高甘味度甘味料水溶液に対する異味改善効果の確認試験
本実施例においては、甘味料のうちでも特に異味が感じられやすい、食品添加物、若しくは人工甘味料であって、砂糖よりも甘味が強い甘味料(以下、高甘味度甘味料という場合がある。)を選択し、当該高甘味度甘味料に由来する異味に対する異味改善効果を確認試験により検証した。
【0024】
(1)被検試料
甘味料用異味改善剤として、バラ抽出物(丸善製薬(株)社製ローズバッツエキスパウダーMF)10%、シクロデキストリン(日本食品化工(株)社製セルデックスB−100)45%、及び賦形剤としてデキストリン(松谷化学工業(株)社製マックス1000)45%を粉体混合して顆粒化したバラ抽出物製剤を100%となるように調製した。当該バラ抽出製剤を実施例用の被検試料に用いた。また、比較例用の被検試料には、前記バラ抽出物、又は前記シクロデキストリンのいずれかを使用した。
【0025】
(2)供試飲料
下記表1,2,3および4に示した処方に従って、高甘味度甘味料配合水溶液を調製した。具体的には、各高甘味度甘味料及び被検試料を水に投入後、完全溶解したものを供試飲料として使用した。なお、アセスルファムKは、ニュートリノヴァ・ジャパン(株)製の「サネット」、スクラロースは三栄源エフ・エフ・アイ(株)製の「スクラロース」、アスパルテームは味の素(株)製の「PAL SWEET DIET」、ステビア抽出物は守田化学工業(株)製の「レバウディオJ−100」を使用した。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
(3)評価結果
〔高甘味度甘味料水溶液の苦味及びえぐ味改善効果官能評価〕
実施例1〜4、比較例1〜8、並びにブランク1〜4で得られた高甘味度甘味料水溶液について、7名のパネラーによって、下記スコア基準を設けたうえで、苦味及びえぐ味の改善効果を評価した。
【0031】
〔高甘味度甘味料水溶液の苦味及びえぐ味改善効果官能評価基準〕
0:ブランクと比較して、変化はなく、苦味及びえぐ味の改善効果は認められない。
1:ブランクと比較して、苦味及びえぐ味の改善効果がわずかに認められる。
2:ブランクと比較して、苦味及びえぐ味の改善効果が認められる。
3:ブランクと比較して、苦味及びえぐ味の改善効果が強く認められる。
【0032】
【表5】
【0033】
【表6】
【0034】
【表7】
【0035】
【表8】
【0036】
〔高甘味度甘味料水溶液の苦味及びえぐ味改善効果官能評価の結果〕
表5〜表8及び図1〜4の結果から、実施例1〜4によれば、高甘味度甘味料由来の苦味及びえぐ味改善効果を強く示すことが明らかとなった。一方で、バラ抽出物、又は、シクロデキストリン単独を含有する比較例1〜8では、スコアが1を下回ったことから苦味およびえぐ味改善効果をほとんど示さないことが分かった。実施例1〜4比較例の結果、シクロデキストリンをバラ抽出物と併用した実施例1〜4に係る被検試料によれば、1を大きく上回る2付近のスコアを示し、単純に対応する比較例の評価結果を加算した値よりも苦味およびえぐ味改善効果が相乗的に強くなることがわかった。
【0037】
また、これらの結果から、本発明によれば、高甘味度甘味料だけでなく、甘味料に由来する苦味及びえぐ味を大きく改善する効果を発揮できることが期待される。
【0038】
〔高甘味度甘味料水溶液の甘味後引き改善効果官能評価〕
実施例1〜4、比較例1〜8、並びにブランク1〜4で得られた高甘味度甘味料水溶液について、7名のパネラーによって、下記スコア基準を設けたうえで、甘味の後引きを短くできることに関する改善効果を評価した。
【0039】
〔高甘味度甘味料水溶液の甘味後引き改善効果官能評価基準〕
0:ブランクと比較して、甘味の後引きに変化はなく、改善効果は認められない。
1:ブランクと比較して、甘味の後引きがわずかに短くなったと認められる。
2:ブランクと比較して、甘味の後引きが短くなったと認められる。
3:ブランクと比較して、甘味の後引きが大幅に短くなったと認められる。
【0040】
【表9】
【0041】
【表10】
【0042】
【表11】
【0043】
【表12】
【0044】
〔高甘味度甘味料水溶液の甘味後引き改善効果官能評価の結果〕
表9〜12および図5〜8の結果から、実施例1〜4によれば、高甘味度甘味料の甘味後引きに対する改善効果を強く示すことが明らかとなった。一方で、バラ抽出物、又は、シクロデキストリン単独を含有する比較例1〜8では、スコアが1を下回ったことから甘味後引き改善効果をほとんど示さないことが分かった。さらに、シクロデキストリンをバラ抽出物と併用した実施例1〜4に係る被検試料によれば、2以上のスコアを示し、単純に対応する比較例の評価結果を加算した値よりも甘味後引き改善効果が相乗的に強くなることがわかった。また、これらの結果から、本発明によれば、高甘味度甘味料だけでなく、甘味料に由来する甘味の後引きを大きく改善する効果を発揮できることが期待される。
【0045】
以上の結果から、甘味料由来の苦味及びえぐ味の改善、並びに甘味の後引きを強く改善できることが分かった。本発明により甘味料由来の異味改善効果が得られることが分かった。
【0046】
2.他の植物由来抽出物及びシクロデキストリンの組み合わせと本発明との異味改善効果の比較確認試験
前記実施例におけるバラ抽出物にかえて他の植物由来抽出物とシクロデキストリンとの組み合わせによってなる製剤を調整し、実施例1に係る甘味料用異味改善剤と同様の官能評価を行って異味改善効果を比較した。
【0047】
(1)被検試料
実施例1におけるバラ抽出物にかえて、他の植物由来抽出物として緑茶抽出物(太陽化学(株)社製サンフェノンBG−5)、及びブドウ種子抽出物(サビンサジャパン(株)社製ブドウ種子抽出物)から選択された1つを10%、シクロデキストリン45%、及び賦形剤としてデキストリン45%を粉体混合して顆粒化した比較例用製剤を100%となるように調製し、被検試料とした。比較例用製剤は、それぞれ緑茶抽出物製剤、及びブドウ種子抽出物製剤という。バラ抽出物と前記他の植物由来抽出物には、抽出物中の主成分ポリフェノールであるという共通点を有する。
【0048】
(2)供試飲料
下記表13に示した処方に従って、高甘味度甘味料配合水溶液を調製した。具体的には、各高甘味度甘味料及び被検試料を水に投入後、完全溶解したものを供試飲料として使用した。なお、アセスルファムKは、ニュートリノヴァ・ジャパン(株)製の「サネット」を使用した。
【0049】
【表13】
【0050】
前記「高甘味度甘味料水溶液の苦味及びえぐ味改善効果官能評価基準」と同じ基準を用いて、7名のパネラーによって、苦味及びえぐ味の改善効果を評価した。
【0051】
【表14】
【0052】
その結果、その他の植物由来抽出物とシクロデキストリンとを組み合わせた製剤からなる比較例9〜10では、苦味及びえぐ味の改善効果はほとんど認められなかった。
【0053】
次に、「高甘味度甘味料水溶液の甘味後引き改善効果官能評価基準」と同じ基準を用いて、7名のパネラーによって、甘味後引きの改善効果を評価した。
【0054】
【表15】
【0055】
その結果、その他の植物由来抽出物とシクロデキストリンとを組み合わせた製剤からなる比較例9〜10では、甘味後引きに対する改善効果はほとんど認められなかった。
【0056】
この結果より、単にポリフェノールを含む植物由来抽出物及びシクロデキストリンの組み合わせであれば甘味料の異味を改善できるわけではなく、甘味料の異味改善効果はバラ抽出物を有効成分として、シクロデキストリンと併用されることで、特異的に作用していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る甘味料用異味改善剤を、甘味料の異味を有する栄養補助食品、菓子類等の食品、又は飲料に配合することで、異味をほとんど感じることなく摂取することができる食品又は飲料を提供することが可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8