特許第6883408号(P6883408)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6883408ユニットケーブル、及び、ユニットケーブルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883408
(24)【登録日】2021年5月12日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】ユニットケーブル、及び、ユニットケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20210531BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20210531BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20210531BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20210531BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   H01B7/00 306
   H01B7/08
   H01B7/02
   H01B13/00 521
   H01B13/00 525G
   H01R4/02 C
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-224821(P2016-224821)
(22)【出願日】2016年11月18日
(65)【公開番号】特開2018-81867(P2018-81867A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】本多 正幸
(72)【発明者】
【氏名】長澤 憲三
【審査官】 中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/167124(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/02
H01B 7/08
H01B 13/00
H01R 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のケーブルにおける露出され且つ一列に配列された導体同士を前記配列方向に加圧した状態で抵抗溶接されて形成された結線部を備えるユニットケーブルにおいて、
前記各導体は、それぞれ、軟銅線として形成されてなり、
前記結線部は、前記抵抗溶接を開始した時の前記配列方向の一端から他端までの距離と前記抵抗溶接を完了した時の前記一端から前記他端までの距離との間における前記一端と前記他端とを互いに近づける方向への変位量が0.45mm〜1.45mmとなるように形成され、
当該ユニットケーブルは、前記ケーブルを三本備え、
前記結線部は、前記各ケーブルにおける露出された前記導体同士を前記抵抗溶接して形成され、
前記導体のうち、前記配列方向の両側に配置される各導体は、それぞれ、断面積が同一となるように形成され、
さらに、前記配列方向の両側に配置される二本の導体は、該各導体それぞれの直径が1.6mmとなるように形成され、且つ、前記配列方向において前記二本の導体の間に配置される導体は、該導体の直径が2.0mmとなるように形成される
ことを特徴とするユニットケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載のユニットケーブルにおいて、
前記各導体は、それぞれの中心が前記配列方向の同軸上に配置されるように配列されてなる
ことを特徴とするユニットケーブル。
【請求項3】
複数本のケーブルにおける露出された各導体を一対の電極間に一列に配列する導体配列工程と、
前記各導体を、前記一対の電極にて前記配列方向に挟んで前記一対の電極を互いに近づける方向に加圧した状態で該一対の電極間に電流を通電することで前記導体同士を抵抗溶接して結線部を形成する結線部形成工程と、
を含むユニットケーブルの製造方法において、
前記導体配列工程では、三本の前記ケーブルの各導体を一列に配列させ、且つ、該各導体は、それぞれ、軟銅線として形成されたものを用い、且つ、前記各導体のうち、前記配列方向の両側に配置される二本の導体は、該各導体それぞれの直径が1.6mmとなるように形成されたものを用い、且つ、前記配列方向において前記二本の導体の間に配置される導体は、該導体の直径が2.0mmとなるように形成されるものを用い、
さらに、前記結線部形成工程では、
前記各導体を加圧する力は50N〜100N、
前記電流は4200A、
前記電流の通電時間は100msec〜300msec、
である
ことを特徴とするユニットケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内配線に用いられるユニットケーブル、及び、ユニットケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、玄関や居間や寝室などの各部屋別にユニット化してなる部屋ユニットが住宅メーカーの工場で製造されている。そして、それら製造された部屋ユニットは、施工現場で施主の希望や敷地形状に応じて組み付けられ、この組み付けにより一つの家屋が出来上がる。このような工法は、プレハブ住宅工法と呼ばれ、一般的に広く知られている。従来、プレハブ住宅工法においては、各部屋ユニット別の屋内配線作業を簡素化するために、ユニットケーブルが用いられている。
【0003】
ユニットケーブルは、施工現場での分岐処理加工が予め工場で行われるため、(1)施工の省力化、(2)工期の短縮化が可能、(3)安定した高品質が得られる等の利点を有する。
【0004】
従来から、住宅用ユニットケーブルは、複数本のVVFケーブルにおける露出された軟銅線からなる導体同士を、端子、スリーブ、又は差込型コネクタ等の部品により接続されてなるものが知られている。ところで、導体と上記端子等の部品とを圧着すると圧着部分の断面積が他の部分の断面積よりも縮小し、圧着部分の抵抗が高くなる。このため、圧着に使用する端子等の部品は、許容電流値を確保するため、タフピッチ銅等、導電率の高い銅製の部品を用いることが一般的である。このように、導体同士の接続には、銅製の端子等の部品を用いることになるため、上記端子等の部品を削減することや、端子等の部品の組み付け作業に係るコストを削減することは難しかった。
【0005】
また、従来の住宅用ユニットケーブルでは、先に説明した通り、導体同士の接続のため、端子等の部品が構成上不可欠となるが、住宅用ユニットケーブルは、一品一様で設計されるため、端子の圧着作業やコネクタの差込作業等の自動化を図ることが困難であり、住宅用ユニットケーブルの製造に係る作業工数を削減することは難しかった。
【0006】
上記端子等の部品を削減し、住宅用ユニットケーブルの製造に係るコストを削減する対策として、導体同士を溶接する方法を採用することが考えられる。しかしながら、例えば、アーク・レーザー溶接により、導体同士を溶接しようとする場合、溶接機や周辺機器の設備投資額が高額になってしまい、コストメリットが無い。ここで、アーク・レーザー溶接よりも設備投資額を比較的低く抑えることができる溶接として、抵抗溶接による接続方法が知られている。複数本のケーブルにおける露出された導体同士を抵抗溶接にて接続してなる住宅用ユニットケーブルとして、例えば、特許文献1に開示されたような技術が知られている。
【0007】
特許文献1の図1に図示するユニットケーブル1は、複数本のVVFケーブル2〜4における露出され且つ一列に配列された導体9同士が電気的に接続されて形成された結線部11を備えている。この結線部11が形成されることにより、所定の電気回路が構成される。結線部11の形成は、各VVFケーブル2〜4における、それぞれのシース8及び絶縁体10の中間を皮むきした後、導体9同士を抵抗溶接により電気的に接続する作業手順を経ることにより完了する。
【0008】
導体同士を抵抗溶接により電気的に接続する作業手順として、例えば、露出された各導体を一対の電極間に一列に並べた後、各導体を、一対の電極にて各導体の配列方向に挟んで一対の電極を互いに近づける方向に加圧した状態で一対の電極間に電流を通電することで局所的に導体の金属材料を溶融させることにより、導体同士を溶接して結線部を形成することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015−56327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、抵抗溶接による接続は、溶接する部材に高電流を通電し、溶接する部材同士が接触する部分に電気抵抗を発生させ、この電気抵抗による発熱により、溶接する部材同士を溶融接着させるものである。ここで、従来技術において、導体同士の抵抗溶接は、一般的には、通電電流値、通電時間、加圧力、電極及び溶接する部材の接触抵抗を溶接条件として標準化している。しかしながら、これらの条件だけでは、溶接部位における金属材料の溶融による変形が管理できていなかった。上記溶融による変形の管理を行わない場合、過溶融等により溶接部位における導体の断面積が小さくなる虞があった。このように、溶接部位における導体の断面積の変化によって、許容電流値の部分的低下により抵抗値が増加し、通電に十分な溶接状態にならないというような虞があった。このため、ユニットケーブルの電気的特性に影響を来してしまう虞があるという問題点があった。
【0011】
また、従来技術において、導電率が高く且つ電気抵抗の低い軟銅線からなる導体を一般的な加圧力(150N〜600N)で加圧した状態で導体同士を抵抗溶接しようとすると、導電率が高く且つ電気抵抗の低い導体は、抵抗発熱し難いため、導体同士が接触する箇所において金属材料が溶融し難くなる。加えて、住宅用ユニットケーブルにおける結線部は、各導体同士を同一位置で接続しなければならないため、安定した高い抵抗を、各導体同士が接触する部分に均一に与えることが困難であった。このため、従来技術では、導体同士が十分に溶接され難いということがあった。このように、従来技術では、溶接部位において金属材料が十分に溶融せず導体同士が十分に溶接され難かったため、結線部の強度が十分に得られないというような虞があるという問題点があった。
【0012】
さらに、従来技術では、先に説明した通り、導体を加圧する際、導体に対して、150N〜600Nという高い加圧力を加えるため、溶接部位において導体が潰れてしまうというような虞があった。このように、従来技術では、溶接部位において、導体の潰れが生じることも、上記問題点に繋がるといえる。
【0013】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、一つの課題は、電気的特性を良好に維持することが可能なユニットケーブル、及び、このユニットケーブルの製造方法を提供することにある。
もう一つの課題は、結線部の強度を十分に確保することが可能なユニットケーブル、及び、このユニットケーブルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のユニットケーブルは、複数本のケーブルにおける露出され且つ一列に配列された導体同士を前記配列方向に加圧した状態で抵抗溶接されて形成された結線部を備えるユニットケーブルにおいて、前記各導体は、それぞれ、軟銅線として形成されてなり、前記結線部は、前記抵抗溶接を開始した時の前記配列方向の一端から他端までの距離と前記抵抗溶接を完了した時の前記一端から前記他端までの距離との間における前記一端と前記他端とを互いに近づける方向への変位量が0.45mm〜1.45mmとなるように形成され、当該ユニットケーブルは、前記ケーブルを三本備え、前記結線部は、前記各ケーブルにおける露出された前記導体同士を前記抵抗溶接して形成され、前記導体のうち、前記配列方向の両側に配置される各導体は、それぞれ、断面積が同一となるように形成され、さらに、前記配列方向の両側に配置される二本の導体は、該各導体それぞれの直径が1.6mmとなるように形成され、且つ、前記配列方向において前記二本の導体の間に配置される導体は、該導体の直径が2.0mmとなるように形成されることを特徴とする。
【0015】
このような特徴を有する本発明によれば、結線部の形成の際、抵抗溶接を開始した時の各導体の配列方向の一端から他端までの距離と抵抗溶接を完了した時の上記配列方向の一端から他端までの距離との間における、この一端と他端とを互いに近づける方向への変位量を、0.45mm〜1.45mmの範囲で管理することになる。
【0017】
また、本発明によれば、結線部は、三本のケーブルの、それぞれの導体同士を抵抗溶接して形成されるようになる。
【0019】
また、本発明によれば、三本のケーブルの、それぞれの導体のうち、配列方向の両側に配置される各導体は、それぞれ、断面積が同一に形成されるようになる。
【0020】
請求項記載の本発明のユニットケーブルは、請求項1に記載のユニットケーブルにおいて、前記各導体は、それぞれの中心が前記配列方向の同軸上に配置されるように配列されてなることを特徴とする。
【0021】
このような特徴を有する本発明によれば、各導体は、それぞれの中心が配列方向の同軸上に配置されるように配列されるようになる。
【0022】
上記課題を解決するためになされた請求項3記載の本発明のユニットケーブルの製造方法は、複数本のケーブルにおける露出された各導体を一対の電極間に一列に配列する導体配列工程と、前記各導体を、前記一対の電極にて前記配列方向に挟んで前記一対の電極を互いに近づける方向に加圧した状態で該一対の電極間に電流を通電することで前記導体同士を抵抗溶接して結線部を形成する結線部形成工程と、を含むユニットケーブルの製造方法において、前記導体配列工程では、三本の前記ケーブルの各導体を一列に配列させ、且つ、該各導体は、それぞれ、軟銅線として形成されたものを用い、且つ、前記各導体のうち、前記配列方向の両側に配置される二本の導体は、該各導体それぞれの直径が1.6mmとなるように形成されたものを用い、且つ、前記配列方向において前記二本の導体の間に配置される導体は、該導体の直径が2.0mmとなるように形成されるものを用い、さらに、前記結線部形成工程では、前記各導体を加圧する力は50N〜100N、前記電流は4200A、前記電流の通電時間は100msec〜300msec、であることを特徴とする。
【0023】
このような特徴を有する本発明によれば、結線部は、各導体に対して、50N〜100Nで加圧した状態で、4200Aの電流を100msec〜300msecの間、通電することにより形成されるようになる。これにより、導体を一般的な加圧力(150N〜600N)よりも低い加圧力にて加圧し、抵抗の発生を促すことができるようになる。また、通電時間を、一般的な時間(数msec〜100msec未満)よりも長く設定することにより、各導体同士が接触する部分に発生する抵抗を均一化させ、各導体同士が接触する部分ごとの溶接のばらつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載された本発明によれば、結線部の形成の際、抵抗溶接を開始した時の各導体の配列方向の一端から他端までの距離と抵抗溶接を完了した時の上記配列方向の一端から他端までの距離との間における、この一端と他端とを互いに近づける方向への変位量を、0.45mm〜1.45mmの範囲で管理することで、結線部の断面積の極端な縮小を防止することができ、溶接後も導体のみで許容電流値を確保することができる。これにより、結線部を、通電に十分な溶接状態にすることができる。したがって、電気的特性を良好に維持することが可能なユニットケーブルを提供することができるという効果を奏する。
【0025】
また、請求項1に記載された本発明によれば、上記変位量を、0.45mm〜1.45mmの範囲で管理することで、結線部の断面積の極端な縮小を防止することができることから、結線部の強度を十分に確保することが可能なユニットケーブルを提供することができるという効果を奏する。
【0026】
また、請求項に記載された本発明によれば、上記の効果に加え、次のような効果も奏する。すなわち、結線部は、三本のケーブルの、それぞれの導体同士を抵抗溶接して形成されることから、安定した状態に形成された結線部を備えるユニットケーブルを提供することができるという効果を奏する。
【0027】
また、請求項に記載された本発明によれば、上記の効果に加え、次のような効果も奏する。すなわち、三本のケーブルの、それぞれの導体のうち、配列方向の両側に配置される各導体は、それぞれ、断面積が同一となることから、例えば、上記配列方向の両側に配置される各導体のうち、一方の導体の断面積が他方の導体の断面積よりも大きく形成された場合と比較して、より安定した状態の結線部を形成することができるという効果を奏する。
【0028】
請求項に記載された本発明によれば、請求項1の効果に加え、次のような効果も奏する。すなわち、各導体は、それぞれの中心が配列方向の同軸上に配置されるように配列されることから、例えば、各導体の、それぞれの中心が配列方向の軸線からずれた位置に配置されるように配列される場合と比較して、導体を安定して加圧することができるという効果を奏する。
【0029】
請求項に記載された本発明によれば、溶接部位における導体の潰れを生じさせることなく導体同士を十分に溶接することができる。したがって、本発明によれば、結線部の強度を十分に確保することが可能なユニットケーブルを提供することができるという効果を奏する
【0030】
また、請求項に記載された本発明によれば、結線部の断面積の極端な縮小を防止することができ、溶接後も導体のみで許容電流値を確保することができる。これにより、結線部を、通電に十分な溶接状態にすることができる。したがって、電気的特性を良好に維持することが可能なユニットケーブルを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明のユニットケーブルの結線部及び周辺部分の斜視図である。
図2図1における結線部の拡大図である。
図3】本発明のユニットケーブルの製造方法を示す図である。
図4図3に続く図である。
図5】加圧力別の結線部の溶接強度−確率密度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図1図5を参照しながら、本発明に係るコネクタの実施例について説明する。
【実施例】
【0033】
図1は本発明のユニットケーブルの結線部及び周辺部分の斜視図、図2図1における結線部の拡大図、図3は本発明のユニットケーブルの製造方法を示す図、図4図3に続く図、図5は加圧力別の結線部の溶接強度−確率密度を示すグラフである。
なお、図3に図示する矢印は、上下、左右の各方向を示している(矢印の各方向は一例であるものとする)。
【0034】
図1に図示する引用符号1は本発明のユニットケーブルを示す。このユニットケーブル1は、屋内配線に用いられるものであって、三本のケーブル2〜4を有する(本数は一例であるものとする)。三本のケーブル2〜4は、通常、VVFケーブルと呼ばれるものであって、本実施例において、同じ構成のものが用いられている。以下、ケーブル2を代表例として構成及び構造の説明をする。
【0035】
図1に図示するケーブル2は、600V以下の電力回路に用いられる平形のビニル絶縁ビニルシースケーブルであって、三本の絶縁線心5〜7と、これらを一括して覆うシース8とを備えて構成されている。ケーブル2は、本実施例において三心であるが、二心や四心等であってもよいものとする。
【0036】
図1及び図2に図示する三本の絶縁線心5〜7は、同じ構成のものが用いられている。絶縁線心5を代表例とすると、絶縁線心5は、導体9と、絶縁体10とを備えて構成されている。導体9は、導電性を有する金属材料からなる。具体的には、JIS C 3102(電気用軟銅線)に適合又はこれに準ずる軟銅線が用いられる。導体9には、単心線が用いられている。導体9は、断面円形状に形成されている。導体9は、断面積が0.6mm〜5.3mmとなるように形成されている。
【0037】
図1及び図2に図示する絶縁体10は、絶縁性を有する樹脂材料を導体9の外面に押出成形をすることにより形成されている。絶縁体10は、所定の肉厚で断面円形状に形成されている。上記樹脂材料としては、ビニルが用いられている。なお、三本の絶縁線心5〜7を識別するために、黒、白、赤に色分けがなされるものとする。
【0038】
図1に図示するシース8は、三本の絶縁線心5〜7を並列にした上で、これらの外面に押出成形をすることにより形成されている。シース8は、所定の肉厚で断面長円形状に形成されている。シース8の樹脂材料としては、ビニルが用いられている。
【0039】
以上のようなケーブル2は、このケーブル長が二本分の長さになるように切断加工されている(ケーブル長は一例であるものとする)。図1及び図2に図示するように、ケーブル2は、シース8及び絶縁体10の中間が皮むきされ、露出した導体9に対し結線部11が形成されている。
【0040】
図1及び図2に図示する結線部11は、上記の通り露出され且つ一列に配列された導体9同士が電気的に接続されて形成されている。すなわち、接続の部分(接続点)が該当し、この部分は溶接により形成されている。ここで、溶接とは、抵抗溶接による接続方法であり、導体9同士を各導体9の配列方向に加圧した状態で通電し、導体9同士が接触する部分に電気抵抗を発生させ、この電気抵抗による発熱により、局所的な点で金属材料を溶融させることにより、導体9同士を電気的に接続させてなる。結線部11は、上記の通り、導体9同士が抵抗溶接により接続されて形成されていることから、容易に曲がらない状態になっている。したがって、接続された時の位置関係で固定されている。
【0041】
本実施例の結線部11は、この形成状態を分かり易くするために、図1及び図2に図示するように、ケーブル2〜4における各絶縁線心5の導体9同士が溶接されて形成されている(本実施例に限定されないものとする)。各導体9のうち、この各導体9の配列方向の両側には、断面積が同一となるように形成された各導体9が配置されている。各導体9は、それぞれの中心が上記配列方向の同軸(すなわち、図3に図示する軸線X)上に配置されるように配列されている。また、図1及び図2に図示するように、各絶縁線心6の導体9同士が溶接されて形成されている。さらに、図1及び図2に図示するように、各絶縁線心7の導体9同士が溶接されて形成されている。
【0042】
ここで、従来から知られているユニットケーブルにおいて、導体9同士の抵抗溶接は、通電電流値、通電時間、加圧力、電極及び溶接する部材の接触抵抗を溶接条件としている。これに対し、本発明のユニットケーブル1では、結線部11を形成するにあたって、上記溶接条件に加え、抵抗溶接を開始した時の各導体9の配列方向の一端から他端までの距離と抵抗溶接を完了した時の上記配列方向の一端から他端までの距離との間における上記配列方向の一端と他端とを互いに近づける方向への変位量を溶接条件とし、この変位量を管理するものとする。具体的には、結線部11は、抵抗溶接を開始した時の各導体9の配列方向の一端から他端までの距離と抵抗溶接を完了した時の上記配列方向の一端から他端までの距離との間における上記配列方向の一端と他端とを互いに近づける方向への変位量が0.45mm〜1.45mmとなるように形成されている。結線部11は、上記変位量を、上記範囲で管理することから、結線部11の極端な断面積の縮小を防止し、溶接後も導体9のみで許容電流値を確保することができるように形成されている。
【0043】
なお、上記変位量が0.45mm〜1.45mmの範囲に該当するか否かについては、
抵抗溶接を開始する前に各導体9を一列に配列したときの各導体9の上記配列方向における一端から他端までの距離と、抵抗溶接により形成された結線部11の上記配列方向における一端から他端までの距離との差を測定し、この差が0.45mm〜1.45mmの範囲に入っているか否かを確認することにより、容易に確認することができる。
【0044】
結線部11が形成されることにより、所定の電気回路が構成されている。結線部11の形成は、後述するように、シース8及び絶縁体10の中間の皮むきと、導体9同士の溶接とを順に経ることにより完了する。溶接は、皮むきの範囲が狭くても可能な接続の方法であり、そのため結線部11及び周辺部分は小さく形成される。なお、結線部11の形成において、従来から知られているユニットケーブルのような圧着端子等は不要である。
【0045】
図1に図示するように、結線部11は、樹脂モールド部12にて覆われて保護されている。樹脂モールド部12は、絶縁性を有する樹脂材料を用いての射出成形(成形方法は一例であるものとする)により形成されている。樹脂モールド部12は、本実施例において、結線部11の両側となる周辺部分にも跨るような矩形の形状(略直方体形状)に形成されている(形状は一例であるものとする。結線部11の保護をすることができれば、本実施例の形状に限定されないものとする)。樹脂モールド部12は、結線部11及び周辺部分を覆うことから、小さく形成されている。
【0046】
つぎに、上記構成及び構造に基づきながら、本発明のユニットケーブル1の製造方法について説明する。
【0047】
まず、あらかじめ、ケーブル2〜4を製造した上で、シース8及び絶縁体10の中間を皮むきする。そして、ケーブル2〜4における各絶縁線心5の各導体9を、図3に図示するように、上側の電極13と下側の電極14との間に一列に配列する(上側の電極13及び下側の電極14は、特許請求の範囲における「一対の電極」に相当するものである)。本実施例では、各導体9を縦方向(図3における上下方向)に配列し一番下側の導体9を下側の電極14の上に載置する(本実施例に限定されないものとする。その他、一対の電極を、所定の間隔をあけて横方向(図3における左右方向)に配置し、一対の電極間に、各導体9を横方向に一列に配列してもよいものとする)。
【0048】
ここで、各導体9のうち、上記配列方向の両側(図3における上記配列方向の一番上側及び一番下側)には、断面積が同一となるように形成された各導体9を配置する。また、各導体9を、それぞれの中心が上記配列方向の同軸(すなわち、図3に図示する軸線X)上に配置されるように配列する。図3に図示する軸線Xは、上側の電極13及び下側の電極14の中心軸でもある。すなわち、各導体9を、それぞれの中心が上側の電極13及び下側の電極14の中心軸上に配置されるように配列する。
【0049】
また、各絶縁線心6の各導体9を、上記の通り、上側の電極13と下側の電極14との間に一列に配列する。さらに、各絶縁線心7の各導体9を、上記の通り、上側の電極13と下側の電極14との間に一列に配列する。
【0050】
つぎに、図3及び図4に図示するように、上記の通り配列した各導体9を、上側の電極13及び下側の電極14にて上記配列方向に挟んで上側の電極13と下側の電極14とを互いに近づける方向に加圧する。本実施例では、この加圧は、上側の電極13を図3に図示する矢印Aの方向(図3における下方向)に下降させることにより行う。なお、上記加圧は、各導体9のそれぞれの中心が上記配列方向の同軸(図3に図示する軸線X)上からずれないように行う。そして、図4に図示するように、上記加圧した状態で一対の電極13,14間に電流を通電する。ここで、各導体9を加圧する力は50N〜100N、通電する電流は4200A、電流の通電時間は100msec〜300msecであるものとする。
【0051】
導体9同士を上記加圧力にて加圧した状態で通電することにより、導体9同士が接触する部分に電気抵抗が発生する。この電気抵抗による発熱により、局所的な点で導体9の金属材料を溶融させることにより導体9同士を電気的に接続し、図1及び図2に図示するような結線部11を形成する。
【0052】
結線部11の形成にあたっては、抵抗溶接を開始した時の各導体9の配列方向の一端から他端までの距離と抵抗溶接を完了した時の上記配列方向の一端から他端までの距離との間における上記配列方向の一端と他端とを互いに近づける方向への変位量が0.45mm〜1.45mmとなるようにする。
【0053】
そして、絶縁性を有する樹脂材料を用いての射出成形により、図1に図示するように、結線部11の外側に樹脂モールド部12を被覆形成する。以上により、本発明のユニットケーブル1が完成する。
【0054】
つぎに、上記構成及び構造に基づきながら、本発明のユニットケーブルの具体的な例を説明する。
【0055】
具体的な例として挙げる本発明のユニットケーブルの構成及び構造は、上記ユニットケーブル1の構成及び構造と同じであるので説明を省略する。具体的な例として挙げる本発明のユニットケーブルでは、特に図示しないが、シース及び絶縁体の中間が皮むきされて露出され且つ一列に配列された各導体のうち、二本の導体は、直径が1.6mmに形成され、一本の導体は、直径が2.0mmに形成されているものとする。各導体の配列は、直径が1.6mmの導体、直径が2.0mmの導体、直径が1.6mmの導体の順に並べられるものとする。
【0056】
上記の通り配列した各導体を、一対の電極にて上記配列方向に挟んで一対の電極を互いに近づける方向に加圧した状態で一対の電極間に電流を通電する。ここで、各導体を加圧する力(加圧力)は、後述するように、40N、50N、70N、80N、90N、100N、110Nのいずれかであるものとする。また、溶接電力は6300W、溶接電流は4200A、通電時間(溶接時間)は127msecであるものとする。
【0057】
【表1】
【0058】
図5及び表1を参照しながら、上記加圧力が40Nの場合、50Nの場合、70Nの場合、80Nの場合、90Nの場合、100Nの場合、110Nの場合のそれぞれについて、上記具体的な例として挙げる本発明のユニットケーブルの結線部の強度(溶接強度)の測定結果を比較する。
【0059】
表1の「判定」の項目において、「◎」は、上記溶接強度の最小値が200Nを超えている場合、「〇」は、溶接強度の最小値が200Nを下回っているが140Nを超えている場合、「△」は、溶接強度の最小値が140Nを下回っているが100Nを超えている場合、「×」は、溶接強度の最小値が100Nを下回っている場合を示している。
【0060】
<加圧力が40Nの場合>
図5より、加圧力が40Nのとき、溶接強度は160N付近前後に図5に図示するように分布し、160N付近でピークを迎えることが分かる。表1より、加圧力が40Nのとき、溶接強度の最小値は77Nである。したがって、判定は「×」である。
【0061】
<加圧力50Nの場合>
図5より、加圧力が50Nのとき、溶接強度は200N付近前後に図5に図示するように分布し、197N付近でピークを迎えることが分かる。表1より、加圧力が50Nのとき、溶接強度の最小値は143Nである。したがって、判定は「〇」である。
【0062】
<加圧力70Nの場合>
図5より、加圧力が70Nのとき、溶接強度は340N付近前後に図5に図示するように分布し、344N付近でピークを迎えることが分かる。表1より、加圧力が70Nのとき、溶接強度の最小値は237Nである。したがって、判定は「◎」である。
【0063】
<加圧力80Nの場合>
図5より、加圧力が80Nのとき、溶接強度は330N付近前後に図5に図示するように分布し、333N付近でピークを迎えることが分かる。表1より、加圧力が80Nのとき、溶接強度の最小値は245Nである。したがって、判定は「◎」である。
【0064】
<加圧力90Nの場合>
図5より、加圧力が90Nのとき、溶接強度は265N付近前後に図5に図示するように分布し、265N付近でピークを迎えることが分かる。表1より、加圧力が90Nのとき、溶接強度の最小値は162Nである。したがって、判定は「〇」である。
【0065】
<加圧力100Nの場合>
図5より、加圧力が100Nのとき、溶接強度は200N付近前後に図5に図示するように分布し、200N付近でピークを迎えることが分かる。表1より、加圧力が100Nのとき、溶接強度の最小値は121.5Nである。したがって、判定は「△」である。
【0066】
<加圧力が110Nの場合>
図5より、加圧力が110Nのとき、溶接強度は150N付近前後に図5に図示するように分布し、148N付近でピークを迎えることが分かる。表1より、加圧力が110Nのとき、溶接強度の最小値は80Nである。したがって、判定は「×」である。
【0067】
上記測定結果より、加圧力が50Nから100Nまでの間は、溶接強度の最小値が100Nを上回るため、加圧力が50Nから100Nまでの範囲において、本発明のユニットケーブルの結線部の強度を十分に確保できているといえる。また、上記加圧力の範囲(50N〜100N)のうち、70Nから80Nまでの間は、溶接強度の最小値が200Nを上回るため、加圧力が70Nから80Nまでの範囲において、より良好な条件範囲が確保できるといえる。
【0068】
一方で、上記測定結果より、加圧力が40Nの場合及び加圧力が110Nの場合は、いずれも、溶接強度の最小値が100Nを下回るため、本発明のユニットケーブルの結線部の強度を十分に確保できていないといえる。したがって、加圧力が50Nを下回る、あるいは、加圧力が100Nを上回る場合は、溶接強度が小さくなり、良好な条件範囲を確保できないといえる。
【0069】
つぎに、表2を参照しながら、抵抗溶接を開始した時の各導体の配列方向の一端から他端までの距離と抵抗溶接を完了した時の上記配列方向の一端から他端までの距離との間における上記配列方向の一端と他端とを互いに近づける方向への変位量について説明する。ここで、加圧力は70N、溶接電力は6300W、溶接電流は4200A、通電時間(溶接時間)は127msecであるものとする。
【0070】
【表2】
【0071】
<変位量>
表2において、「変位量」とは、抵抗溶接を開始した時の各導体の配列方向の一端から他端までの距離と抵抗溶接を完了した時の上記配列方向の一端から他端までの距離との間における上記配列方向の一端と他端とを互いに近づける方向への変位量を測定したものである。表2より、上記溶接条件における、上記変位量は、最小値が0.219mm、最大値が1.607mmである。
【0072】
<溶接強度>
表2において、「溶接強度」とは、上記具体的な例として挙げる本発明のユニットケーブルの結線部の強度である。表2より、溶接強度は、最小値が173Nである。表1の溶接強度の評価基準にしたがえば、溶接強度の最小値が200Nを下回っているが140Nを超えているため、判定は「〇」である。
【0073】
<温度>
表2において、「温度」とは、通電時の溶接部位における発熱温度を測定したものであり、規定は30℃以下である。表2より、通電時の溶接部位における発熱温度は、最小値が19.5℃、最大値が27.1℃である。
【0074】
上記測定結果より、上記変位量が0.219mmから1.607mmまでの間は、溶接強度の最小値が140Nを上回るため、変位量が0.219mmから1.607mmまでの範囲において、本発明のユニットケーブルの結線部の強度を十分に確保できているといえる。また、上記変位量の範囲(0.219mm〜1.607mm)のうち、0.45mmから1.45mmまでの間は、溶接強度の最小値が250Nを上回るため、変位量が0.45mmから1.45mmまでの範囲において、より良好な条件範囲が確保できるといえる。したがって、変位量を、0.45mmから1.45mmまでの範囲で管理することで、結線部における溶接の良否を管理することができるといえる。
【0075】
また、上記測定結果より、通電時の溶接箇所における発熱温度は、19.5℃から27.1℃までの間であることから、30℃を下回っている。したがって、上記変位量が0.219mmから1.607mmまでの範囲において、通電時の発熱温度に懸念される異常な温度上昇は発生しないといえる。
【0076】
以上、図1図5、表1及び表2を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、結線部11の形成の際、抵抗溶接を開始した時の各導体9の配列方向の一端から他端までの距離と抵抗溶接を完了した時の上記配列方向の一端から他端までの距離との間における、この一端と他端とを互いに近づける方向への変位量を、0.45mm〜1.45mmの範囲で管理することで、結線部11の断面積の極端な縮小を防止することができ、溶接後も導体9のみで許容電流値を確保することができる。これにより、結線部11を、通電に十分な溶接状態にすることができる。したがって、電気的特性を良好に維持することが可能なユニットケーブル1を提供することができるという効果を奏する。
【0077】
また、本発明によれば、上記効果に加え、次のような効果も奏する。すなわち、上記変位量を、0.45mm〜1.45mmの範囲で管理することで、結線部11の断面積の極端な縮小を防止することができることから、結線部11の強度を十分に確保することが可能なユニットケーブル1を提供することができるという効果を奏する。
【0078】
また、本発明によれば、上記効果に加え、次のような効果も奏する。すなわち、結線部11は、三本のケーブル2〜4の、それぞれの導体9同士を抵抗溶接して形成されることから、安定した状態に形成された結線部11を備えるユニットケーブル1を提供することができるという効果を奏する。
【0079】
また、本発明によれば、上記効果に加え、次のような効果も奏する。すなわち、三本のケーブル2〜4の、それぞれの導体9のうち、配列方向の両側に配置される各導体9は、それぞれ、断面積が同一となることから、例えば、上記配列方向の両側に配置される各導体9のうち、一方の導体9の断面積が他方の導体9の断面積よりも大きく形成された場合と比較して、より安定した状態の結線部11を形成することができるという効果を奏する。
【0080】
また、本発明によれば、上記の効果に加え、次のような効果も奏する。すなわち、各導体9は、それぞれの中心が配列方向の同軸上に配置されるように配列されることから、例えば、各導体9の、それぞれの中心が配列方向の軸線からずれた位置に配置されるように配列される場合と比較して、導体9を安定して加圧することができるという効果を奏する。
【0081】
また、本発明によれば、溶接部位における導体9の潰れを生じさせることなく導体9同士を十分に溶接することができる。したがって、本発明によれば、結線部11の強度を十分に確保することが可能なユニットケーブル1を提供することができるという効果を奏する
【0082】
さらに、本発明によれば、上記の効果に加え、次のような効果も奏する。すなわち、結線部11の断面積の極端な縮小を防止することができ、溶接後も導体9のみで許容電流値を確保することができる。これにより、結線部11を、通電に十分な溶接状態にすることができる。したがって、電気的特性を良好に維持することが可能なユニットケーブル1を提供することができるという効果を奏する。
【0083】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0084】
1…ユニットケーブル
2〜4…VVFケーブル
5〜7…絶縁線心
8…シース
9…導体
10…絶縁体
11…結線部
12…樹脂モールド部
13…上側の電極
14…下側の電極
図1
図2
図3
図4
図5