(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その言及した数に限定されるものではなく、言及した数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0017】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0018】
本願の半導体装置は、不揮発性メモリ(不揮発性記憶素子、フラッシュメモリ、不揮発性半導体記憶装置)を備えた半導体装置である。ここで説明する不揮発性メモリは、スプリットゲート型のMONOS型メモリ(以下、単にMONOSメモリと呼ぶ)である。以下の実施の形態では、不揮発性メモリは、nチャネル型MISFET(MISFET:Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を基本としたメモリセルについて説明を行う。
【0019】
また、本願での極性(書込・消去・読出時の印加電圧の極性およびキャリアの極性)は、nチャネル型MISFETを基本としたメモリセルの場合の動作を説明するためのものであり、pチャネル型MISFETを基本とする場合は、印加電位およびキャリアの導電型等の全ての極性を反転させることで、原理的には同じ動作を得ることができる。
【0020】
また、本願でいうマスクとは、一部の対象物をエッチングから保護するために用いる保護膜(エッチングマスク)、または、一部の対象物をイオン注入から保護する保護膜(イオン注入阻止マスク)を指す。
【0021】
(実施の形態1)
<半導体装置の製造方法について>
本実施の形態の半導体装置の製造方法を、
図1〜
図11を参照して説明する。
図1〜
図10は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の断面図である。
図11は、制御ゲート電極を加工する際のブレイクスルー時間(エッチング時間)の設定テーブルの一例を示す表である。ここでは、nチャネル型のMISFET(制御トランジスタおよびメモリトランジスタ)を形成する場合について説明するが、導電型を逆にしてpチャネル型のMISFET(制御トランジスタおよびメモリトランジスタ)を形成することもできる。
【0022】
本実施の形態の半導体装置の製造工程においては、まず、
図1に示すように、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコン(Si)などからなる半導体基板(半導体ウェハ)SBを用意する。続いて、半導体基板SBの主面に溝を形成し、当該溝内に素子分離領域(図示しない)を形成する。素子分離領域は、例えば酸化シリコン膜からなり、STI(Shallow Trench Isolation)法により形成することができる。ただし、素子分離領域は、例えばLOCOS(Local Oxidization of Silicon)法などにより形成してもよい。なお、
図1に示す領域は、後にメモリセルが形成される領域である。
【0023】
続いて、半導体基板SBの主面に対してイオン注入を行うことで、半導体基板SBの主面にp型のウエル(図示しない)を形成する。ウエルは、半導体基板SBの主面にp型の不純物(例えばB(ホウ素))を比較的低い濃度で打ち込むことで形成する。ウエルは、半導体基板SBの主面から、半導体基板SBの途中深さまで形成される。その後、半導体基板SBに対し熱処理を行って、ウエル内の不純物を拡散させる。なお、図示および詳しい説明はしないが、p型の電界効果トランジスタまたはそれを含むメモリセルを形成する領域では、n型の不純物(例えばヒ素(As)またはP(リン))を半導体基板SBの主面にイオン注入することで、n型のウエルを形成する。
【0024】
続いて、半導体基板SBの主面に対してイオン注入を行うことで、半導体基板SBの主面にp型の半導体領域であるチャネル領域(図示しない)を形成する。チャネル領域は、半導体基板SBの主面にp型の不純物(例えばB(ホウ素))を比較的低い濃度で打ち込むことで形成する。チャネル領域は、半導体基板SBの主面に形成され、チャネル領域の形成深さは、ウエルの形成深さより浅い。チャネル領域は、後に形成する制御トランジスタおよびメモリトランジスタのしきい値電圧を調整する役割を有する。
【0025】
続いて、熱酸化などを行って、露出する半導体基板SBの上面に絶縁膜IF1を形成する。これにより、半導体基板SBの上面は、絶縁膜IF1により覆われる。絶縁膜IF1は、例えば酸化シリコン膜からなる。その後、半導体基板SBの主面全面上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、シリコン膜PS1を形成する。これにより、半導体基板SB上には、絶縁膜IF1を介してシリコン膜PS1が形成される。シリコン膜PS1は、後述の制御ゲート電極CGを形成するための導電膜である。
【0026】
シリコン膜PS1は、成膜時にアモルファスシリコン膜として形成してから、その後の熱処理で、当該アモルファスシリコン膜を、多結晶シリコン膜からなるシリコン膜PS1に変えることもできる。また、シリコン膜PS1は、成膜時に不純物を導入せず、成膜後にn型の不純物(例えばヒ素(As)またはP(リン))をイオン注入し、その後の熱処理で当該不純物を拡散させることにより、低抵抗の導電膜とすることもできる。シリコン膜PS1の膜厚は、
図1に示すように膜厚(距離)aで表わされる。膜厚(距離)aの単位はnmである。ここでは、シリコン膜PS1の膜厚aは、例えば250nmである。
【0027】
次に、
図2に示すように、フォトリソグラフィ技術用いて第1ドライエッチング(異方性エッチング)を行うことにより、シリコン膜PS1の一部を除去し、その後、
図3に示すように、エッチング条件を変えて第2ドライエッチングを行うことで、シリコン膜PS1の全膜厚を除去し、これによりシリコン膜PS1からなる制御ゲート電極CGを形成する。このように加工途中でエッチング条件を変更する目的は、制御ゲート電極CGを形成するためのエッチングを適切なタイミングで終了させることと、制御ゲート電極CGの側面の下部のみを、横方向に広がる裾引き形状とすることとにある。
【0028】
すなわち、
図2に示すように、シリコン膜PS1の上面上にフォトレジスト膜PR1からなるレジストパターンを形成する。当該レジストパターンは、シリコン膜PS1の上面の一部を覆い、他の領域のシリコン膜PS1の上面を露出するパターンである。フォトレジスト膜PR1によりシリコン膜PS1が覆われている領域は、後の工程で制御ゲート電極CGが形成される領域である。ただし、本実施の形態では、フォトレジスト膜PR1の直下の領域よりも横側(外側)に広がるように制御ゲート電極CGの一部がはみ出して形成される。
【0029】
続いて、フォトレジスト膜PR1をマスク(エッチングマスク)として用いて第1ドライエッチングを行うことにより、フォトレジスト膜PR1に覆われていない領域のシリコン膜PS1の上面を後退させる。ここでは、シリコン膜PS1の全膜厚を除去するのではなく、シリコン膜PS1の上面を、シリコン膜PS1の途中深さまで掘り下げる。すなわち、第1ドライエッチング工程を行っても、絶縁膜IF1は露出しない。
【0030】
当該第1ドライエッチングは、エッチングガスとしてCH
2F
2(ジフルオロメタン)ガスおよびSF
6(六フッ化硫黄)ガスを用い、比較的大きいRF(Radio Frequency)パワーで行う。この条件で行うドライエッチングは異方性が高いため、フォトレジスト膜PR1から露出する領域のシリコン膜PS1の上面の後退により形成されるシリコン膜PS1の側面は、半導体基板SBの主面に対して垂直または垂直に近い角度を有する。つまり、第1ドライエッチングは、半導体基板SBの主面に対して垂直な側面を形成することができるブレイクスルーエッチングである。なお、第1ドライエッチングは、比較的酸化シリコンに対する選択比が小さいエッチングである。
【0031】
本実施の形態では、第1ドライエッチング工程でシリコン膜PS1を掘り下げる距離bを、
図11に示す表に従って定める。言い換えれば、
図11に示す表に従って、シリコン膜PS1を距離bだけ掘り下げるために行う第1ドライエッチングのエッチング時間の長さを決める。すなわち、第1ドライエッチングでは、エッチングを終了するタイミングを終点検出で判断するのではなく、
図11に示す表に記載された時間によりエッチング時間の時間配分を決定し、エッチング量(加工量、距離b)を調整する。終点検出とは、目視またはセンサなどを用いてエッチング時の発光状態の変化を感知し、エッチングを終了するタイミングを判断する手法である。第1ドライエッチングを行うことで、フォトレジスト膜PR1に覆われていない領域のシリコン膜PS1は、所定の距離cの膜厚を有する状態で残る。
【0032】
図11には、シリコン膜PS1の膜厚aに応じて、後述する制御ゲート電極を加工する際のブレイクスルーエッチングを行う時間(ブレイクスルー時間)を設定するためのテーブルの一例を示している。
図11に示す表では、横方向に区分1〜区分5の欄を記載し、縦方向に異なる特性の製品A、製品Bおよび製品Cのそれぞれの欄を記載している。製品A、製品Bおよび製品Cのそれぞれは、互いに異なる特性を有するメモリを搭載した製品(半導体チップ)であって、半導体装置の製造工程により製造する所望の製品の種類を区分したものである。
【0033】
製品Aは、後に形成するメモリゲート電極のゲート長が大きいため、書込み動作が速く、消去動作が遅い特性を有するメモリを搭載した製品である。製品Bは、後に形成するメモリゲート電極のゲート長が製品Aより小さく製品Cより大きい標準程度の大きさであるため、書込み動作および消去動作が標準程度である特性を有するメモリを搭載した製品である。製品Cは、後に形成するメモリゲート電極のゲート長が小さいため、書込み動作が遅く、消去動作が速い特性を有するメモリを搭載した製品である。また、製品Aはメモリゲート電極のゲート長が大きいため、記憶した情報の保持特性(以下、単に保持特性という場合がある)が高い性質、つまりリテンション特性が良い性質を有する。これに対し、製品Cはメモリゲート電極のゲート長が小さいため、記憶した情報の保持特性が低い性質、つまりリテンション特性が悪い性質を有する。また、製品Bは、製品Aおよび製品Cの中間のリテンション特性を有する。なお、ここでいう標準とは、製品Aおよび製品Cの中間の特性であることを意味する。
【0034】
図11の横方向に並ぶ各列の区分1〜5は、制御ゲート電極を形成するために成膜したシリコン膜PS1の膜厚aに従って選択される区分である。
図11において行列状に並ぶ46秒から54秒までの欄は、製造したい製品A〜Cと、膜厚aとの組み合わせにより設定される第1ドライエッチングのエッチング時間である。本実施の形態では、例として膜厚aの値が250nmであるため、当該表の区分3の列からブレイクスルー時間を選択する。この場合、例えば製品Cを製造することを所望する場合には、
図2を用いて説明した第1ドライエッチングを48秒間行う。以下では、製品Cを形成する場合について説明する。
【0035】
なお、例えばシリコン膜PS1の膜厚aが例えば252.5nmである場合であって、製品Cを製造する場合には、
図11の表の区分4に従い、第1ドライエッチングを49秒間行う。このように、膜厚aが比較的大きい場合にはブレイクスルー時間を長くして距離bを大きくする。これにより、膜厚aの大きさに関わらず、距離cを一定かつ所望の大きさとすることができる。
【0036】
図2を用いて説明した工程は、複数のウェハに対して同時に行うものではなく、ウェハ毎に行うものである。つまり、第1ドライエッチングは、枚葉式の処理形式で行われる。このため、ウェハ同士の間で膜厚aの値に差があったとしても、
図11の表に従って加工(第1ドライエッチング)を行うことで、それらのウェハのそれぞれの加工後のシリコン膜PS1の膜厚(距離c)を一定の大きさとすることができる。また、複数のウェハのそれぞれの膜厚aの値が同じである場合および膜厚aに差がある場合の両方において、製造したい製品(例えば製品A〜製品C)の特性に応じて第1ドライエッチングのエッチング時間の長さを適宜変更し、ウェハ毎に距離cを異なる大きさとすることができる。このため、ウェハ同士の間で異なる特性のメモリを形成することも可能である。
【0037】
続いて、
図3に示すように、フォトレジスト膜PR1をマスクとして用いて第2ドライエッチングを行うことで、フォトレジスト膜PR1に覆われていないシリコン膜PS1(
図2参照)を除去し、これにより絶縁膜IF1を露出させ、シリコン膜PS1からなる制御ゲート電極CGを形成する。ただし、ここではフォトレジスト膜PR1に覆われていないシリコン膜PS1の全てが除去されるのではなく、フォトレジスト膜PR1の直下の領域の近傍のシリコン膜PS1の一部が残る。つまり、制御ゲート電極CGの側面の下部は、半導体基板SBに近付く程横方向に広がる裾引き形状となる。
【0038】
言い換えれば、制御ゲート電極CGの側面は、第1ドライエッチングにより形成された上部の側面(第1側面)と、第2ドライエッチングにより形成された下部の側面(第2側面)とからなり、当該下部の側面(第2側面)はテーパーを有している。第2側面は、制御ゲート電極CGの上面側から下面側に近付く程、横方向おいて制御ゲート電極CGの上面から離れる形状を有している。このため、ゲート長方向における制御ゲート電極CGの下面の幅は、制御ゲート電極CGの上面の幅よりも広い。
【0039】
つまり、第1側面の上端から下端までの高さにおいて、制御ゲート電極CGの幅は一定であるが、第2側面の上端から下端に向かって、制御ゲート電極CGの幅は徐々に大きくなっている。すなわち、制御ゲート電極CGの下部は、制御ゲート電極CGの下面に近付く程幅が広くなっている。本願では、このような制御ゲート電極CGの形状を裾引き形状(テーパー形状)と呼ぶ。なお、ここでいう横方向とは、半導体基板SBの主面に沿う方向である。
【0040】
当該第2ドライエッチングは、エッチングガスとしてHBr(臭化水素)ガスおよびO
2(酸素)ガスを用い、第1ドライエッチングの上記RFパワーよりも低い中程度のRFパワーで行う。この条件で行うドライエッチングは異方性が第1ドライエッチングに比べて低く、かつ、デポジット性が第1ドライエッチングに比べて高い。つまり、第2ドライエッチングを行っている最中に、除去したシリコン膜PS1の一部が再度制御ゲート電極CGに付着し易くなる。このため、制御ゲート電極CGの側面の下部は裾引き形状(テーパー形状)となる。よって、制御ゲート電極CGのゲート長方向における幅は、制御ゲート電極CGと絶縁膜IF1とが接する界面において最大となる。
【0041】
制御ゲート電極CGの底面の裾引き長は、距離dで表わされる。距離(裾引き長)dは、ゲート長方向において、制御ゲート電極CGの下面の端部が制御ゲート電極CGの上面の端部よりも外側に突出している距離を指す。言い換えれば、距離(裾引き長)dは、ゲート長方向における制御ゲート電極CGの両側の側面のうちの一方において、制御ゲート電極CGの下端が横方向に広がっている量を意味する。つまり、制御ゲート電極CGの下面の幅は、制御ゲート電極CGの上面の幅よりも2dの大きさだけ幅広となっている。すなわち、制御ゲート電極CGの下面の大きさと制御ゲート電極CGの下面の大きさとの差の1/2の値が距離dの大きさである。
【0042】
なお、第2ドライエッチングは、第1ドライエッチングに比べ、酸化シリコンに対する選択比が大きいエッチングである。このため、第2ドライエッチングにより、酸化シリコン膜からなる絶縁膜IF1が露出した時点で終点検出を行い、第2ドライエッチングを終了させることができる。よって、第2ドライエッチングを終了した時点では、制御ゲート電極CGの横の半導体基板SBの主面は絶縁膜IF1に覆われている。
【0043】
第2ドライエッチングによりシリコン膜PS1を除去する膜厚の量、つまりエッチング量は、距離cで表わされる。膜厚a、距離bおよびcはいずれも半導体基板SBの主面に対して垂直な方向(垂直方向)における距離であり、それらの距離の関係はa=b+cで表わされる。
【0044】
図2を用いて説明した第1ドライエッチングにおいて、
図11に示すブレイクスルー時間の設定テーブルに従いエッチング時間を設定する理由は、シリコン膜PS1(
図1参照)の膜厚aの値の大小に関わらず、第1ドライエッチングにより所望の膜厚cのシリコン膜PS1を残し、その後の第2ドライエッチングにより所望の裾引き形状を有する制御ゲート電極CGを形成することにある。つまり、ブレイクスルー時間設定テーブル(エッチング時間設定テーブル)に従ったドライエッチングを行うことにより、制御ゲート電極CGの側面のうち、半導体基板SBの主面に対して垂直な側面を有する第1側面の下端を常に一定の位置で終端させることができる。よって、第2ドライエッチングで除去するシリコン膜PS1の膜厚(距離c)が意図せず変動することを防ぐことができるため、常に、所望の裾引き長dを有する制御ゲート電極CGを第2ドライエッチングにより形成することができる。
【0045】
このようにして第1ドライエッチングおよび第2ドライエッチングにより形成された制御ゲート電極CGのゲート長は、ゲート長方向における制御ゲート電極CGの下面の幅の大きさ、つまり、制御ゲート電極CGの上面の幅に2dを足した大きさとなる。制御ゲート電極CGは、上部が長方形の断面を有し、当該上部に接続された下部が台形の断面を有するパターンである。制御ゲート電極CGは、半導体基板SBの主面に沿う方向であって、ゲート長に直交するゲート幅方向、つまり
図3の奥行き方向に延在している。
【0046】
図3を用いて説明した工程は、複数のウェハに対して同時に行うものではなく、ウェハ毎に行うものである。つまり、第2ドライエッチングは、枚葉式の処理形式で行われる。このため、製造したい製品(例えば製品A〜製品C)の特性に応じて第2ドライエッチングのエッチング条件をウェハ毎に適宜変更し、ウェハ毎に異なる形状および異なるゲート長を有する制御ゲート電極CGを形成することができる。つまり、ウェハ毎に制御ゲート電極CGの第2側面の傾きを変更することが可能である。言い換えれば、制御ゲート電極CGの裾引き長dを変更することができ、制御ゲート電極CGの第2側面を半導体基板SBの主面に対して垂直な角度で形成することもでき、後述する実施の形態2のように制御ゲート電極CGの第2側面を逆テーパーで形成することもできる。このため、ウェハ同士の間で異なる特性のメモリを形成することも可能である。
【0047】
次に、
図4に示すように、フォトレジスト膜PR1を除去した後、HF(フッ酸)を用いた洗浄(ウェットエッチング)工程により、制御ゲート電極CGから露出する絶縁膜IF1を除去することで、半導体基板SBの主面を露出させる。これにより、制御ゲート電極CGの下面と半導体基板SBの主面との間に位置する絶縁膜IF1からなるゲート絶縁膜GI1を形成する。
【0048】
続いて、半導体基板SBの主面全面上に、一部がメモリトランジスタのゲート絶縁膜となる積層膜であるONO(oxide-nitride-oxide)膜ONを形成する。ONO膜ONは、半導体基板SBの上面と、ゲート絶縁膜GI1および制御ゲート電極CGからなる積層膜の側面および上面とを覆う。
【0049】
ONO膜ONは、内部に電荷蓄積部を有する絶縁膜である。具体的には、ONO膜ONは、半導体基板SB上に形成された酸化シリコン膜(ボトム酸化膜)OX1と、酸化シリコン膜OX1上に形成された窒化シリコン膜N1と、窒化シリコン膜N1上に形成された酸化シリコン膜(トップ酸化膜)OX2との積層膜からなる。窒化シリコン膜N1は、電荷蓄積部として機能するトラップ性絶縁膜、つまり電荷蓄積膜(電荷蓄積部)である。
【0050】
酸化シリコン膜OX1および酸化シリコン膜OX2は、例えば酸化処理(熱酸化処理)またはCVD法あるいはその組み合わせにより形成することができる。この際の酸化処理には、ISSG酸化を用いることも可能である。上記窒化シリコン膜N1は、例えばCVD法により形成することができる。酸化シリコン膜OX1および酸化シリコン膜OX2のそれぞれの厚みは、例えば2〜10nm程度であり、上記窒化シリコン膜N1の厚みは、例えば5〜15nm程度である。
【0051】
続いて、ONO膜ONの表面を覆うように、半導体基板SBの主面全面上に、例えばCVD法を用いてシリコン膜(導電膜)PS2を所定の膜厚で形成する。これにより、露出していたONO膜ONの側面および上面は、シリコン膜PS2により覆われる。つまり、制御ゲート電極CGの側面には、ONO膜ONを介してシリコン膜PS2が形成される。
【0052】
ここでいう膜厚とは、特定の膜の場合、当該膜の下地の表面に対して垂直な方向における当該膜の厚さをいう。例えば、ONO膜ONの上面などのように、半導体基板SBの主面に沿う面の上に、当該面に沿ってシリコン膜PS2が形成された場合、シリコン膜PS2の膜厚とは、ONO膜ONの当該上面に対して垂直な方向、つまり、半導体基板SBの主面に対して垂直な方向におけるシリコン膜PS2の厚さを指す。また、制御ゲート電極CGの第1側面を覆うONO膜ONの側面のように、半導体基板SBの主面に対して垂直な面に接して形成される部分のシリコン膜PS2の場合、シリコン膜PS2の膜厚とは、当該側面に対して垂直な方向(横方向)におけるシリコン膜PS2の厚さを指す。
【0053】
ここでは、複数のウェハに対して同時にシリコン膜PS2を成膜する方式(バッチ式)を用いる。つまり、1つの成膜装置内に複数のウェハ(半導体基板)を設置した状態で、1回の成膜処理により、各ウェハに対しシリコン膜PS2を同時に成膜する。
【0054】
次に、
図5に示すように、ドライエッチング法により、シリコン膜PS2をエッチバックすることで、ONO膜ONの上面を露出させる。ここでは、半導体基板SBの主面に接するONO膜ONの一部の上面、および、制御ゲート電極CGの直上のONO膜ONの上面を露出させる。
【0055】
当該エッチバック工程では、シリコン膜PS2を異方性エッチング(エッチバック)することにより、ゲート絶縁膜GI1および制御ゲート電極CGからなる積層膜の両方の側面の横に、ONO膜ONを介して、シリコン膜PS2をサイドウォール状に残す。当該積層膜の両側に残ったサイドウォール状のシリコン膜PS2のうち、一方は、メモリゲート電極MGを構成する。メモリゲート電極MGは、ドライエッチング(異方性エッチング)により、制御ゲート電極CGの隣りに自己整合的に形成された、サイドウォール形状を有する電極である。
【0056】
次に、
図6に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、制御ゲート電極CGの一方の側面と隣り合うメモリゲート電極MGを覆い、かつ、制御ゲート電極CGの他方の側面と隣り合うシリコン膜PS2を露出するフォトレジストパターン(図示しない)を半導体基板SB上に形成する。その後、そのフォトレジストパターンをエッチングマスクとして用いてエッチングを行うことにより、制御ゲート電極CGを挟んでメモリゲート電極MGの反対側に形成されたシリコン膜PS2を除去する。その後、当該フォトレジストパターンを除去する。このとき、メモリゲート電極MGは、フォトレジストパターンで覆われているため、エッチングされずに残存する。
【0057】
続いて、ONO膜ONのうち、メモリゲート電極MGに覆われずに露出している部分をエッチング(例えばウェットエッチング)によって除去する。この際、メモリゲート電極MGの直下のONO膜ONは除去されずに残る。同様に、ゲート絶縁膜GI1および制御ゲート電極CGを含む積層膜と、メモリゲート電極MGとの間に位置するONO膜ONは、除去されずに残る。他の領域のONO膜ONは除去されるため、半導体基板SBの上面が露出し、また、制御ゲート電極CGの上面が露出する。また、制御ゲート電極CGの側面であって、メモリゲート電極MGに覆われていない方の側面が露出する。
【0058】
このようにして、制御ゲート電極CGと隣り合うように、半導体基板SB上に、内部に電荷蓄積部を有するONO膜ONを介して、メモリゲート電極MGが形成される。メモリゲート電極MGは、制御ゲート電極CGに隣り合う領域において、半導体基板SBの主面上にONO膜ONを介して形成される。ここでは、制御ゲート電極CGの側面の下部(第2側面)が裾引き形状を有しており、メモリゲート電極MG側に制御ゲート電極CGの一部が広がっている。このため、メモリゲート電極MGは、制御ゲート電極CGの第1側面と隣り合う部分では、半導体基板SBの主面に近付く程、ゲート長方向の幅が広がっているが、制御ゲート電極CGの第2側面と隣り合う部分では、半導体基板SBの主面に近付く程、ゲート長方向の幅が小さくなっている。つまり、メモリゲート電極MGのゲート長L1は、メモリゲート電極MGの最大の幅ではなく、メモリゲート電極MGの下面の幅であり、ゲート長L1はメモリゲート電極MGの最大の幅よりも小さい。
【0059】
裾引き長dが異なる各種のメモリセルでは、裾引き長dとメモリゲート電極MGのゲート長L1とが、次のような関係を有する。例えば、制御ゲート電極CGの裾引き長dが17nmである場合には、メモリゲート電極MGのゲート長L1は59nmとなり、裾引き長dが20nmである場合には、ゲート長L1は53nmとなり、裾引き長dが23nmである場合には、ゲート長L1は53nmとなる。このように、裾引き長dとゲート長L1との和は必ずしも一定ではない。
【0060】
ここでは、距離cおよび裾引き長dの測定結果を集めることで、所定の膜厚(距離c)を有するシリコン膜PS1(
図2参照)に対し、一定のエッチング条件で第2ドライエッチング(
図3参照)を行った場合に形成される制御ゲート電極CGの裾引き長dを経験則としてデータベース化することができる。また、裾引き長d、シリコン膜PS2(
図4参照)の膜厚、および、ゲート長L1の測定結果を集めることで、裾引き長dとシリコン膜PS2の膜厚とに対応して得られるゲート長L1を経験則としてデータベース化することができる。
【0061】
本実施の形態の主な特徴の1つは、裾引き形状を有する制御ゲート電極CGを形成することで、制御ゲート電極CGの形状に影響を受けて形成されたメモリゲート電極MGのゲート長L1を制御し、これにより所望の特性を有するMONOSメモリの素子を形成することにある。
【0062】
次に、
図7に示すように、制御ゲート電極CGをマスク(イオン注入阻止マスク)として用いてイオン注入を行うことで、半導体基板SBの主面に一対のエクステンション領域(不純物拡散領域、n
−型半導体領域)EXを形成する。すなわち、例えばヒ素(As)などのn型の不純物を、半導体基板SBの主面にイオン注入法で導入することにより、エクステンション領域EXを形成する。
【0063】
次に、
図8に示すように、ゲート絶縁膜GI1、制御ゲート電極CG、ONO膜ONおよびメモリゲート電極MGを含むパターンの両側の側面を覆う絶縁膜であるサイドウォールSWを形成する。サイドウォールSWは、例えばCVD法を用いて半導体基板SB上に例えば酸化シリコン膜および窒化シリコン膜を順に形成した後、異方性エッチングにより当該酸化シリコン膜および当該窒化シリコン膜を一部除去し、半導体基板SBの主面、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGのそれぞれの上面を露出させることにより、自己整合的に形成することができる。
【0064】
つまり、一対のサイドウォールSWのうち、一方はメモリゲート電極MGの側面に接して形成され、もう一方は制御ゲート電極CGの側面に接して形成される。サイドウォールSWは積層膜により形成することが考えられるが、図では当該積層膜を構成する膜同士の界面を示していない。
【0065】
続いて、上記パターンおよびサイドウォールSWをマスク(イオン注入阻止マスク)として用いてイオン注入を行うことで、半導体基板SBの主面に一対の拡散領域(不純物拡散領域、n
+型半導体領域)DFを形成する。具体的には、n型不純物(ヒ素(As)またはリン(P))を、半導体基板SBの主面にイオン注入法を用いて比較的高い濃度で導入することで、拡散領域DFを形成する。
【0066】
エクステンション領域EXは、拡散領域DFよりも形成深さ(接合深さ)が小さい。エクステンション領域EXは拡散領域DFと接して形成されている。上記のようにして、エクステンション領域EXと、エクステンション領域EXよりも不純物濃度が高い拡散層である拡散領域DFとからなる一対のソース・ドレイン領域が形成される。すなわち、当該ソース・ドレイン領域は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有している。ソース領域は、互いに接するエクステンション領域および拡散領域DFを有し、ドレイン領域は、互いに接するエクステンション領域および拡散領域DFを有している。一対の拡散領域DFのそれぞれの間には、一対のエクステンション領域EXが互いに離間して形成されている。
【0067】
続いて、ソース領域およびドレイン領域を構成する半導体領域(エクステンション領域EX、拡散領域DF)などに導入された不純物を活性化するための熱処理である活性化アニールを行う。これにより、制御トランジスタおよびメモリトランジスタと、これらのトランジスタからなるメモリセルMCとを形成する。
【0068】
制御ゲート電極CGと、その横の一対のソース・ドレイン領域とは、制御トランジスタを構成している。また、メモリゲート電極MGと、その横の一対のソース・ドレイン領域とは、メモリトランジスタを構成している。当該制御トランジスタおよび当該メモリトランジスタは、スプリットゲート型のMONOSメモリのメモリセルMCを構成している。一対のエクステンション領域EXの間の半導体基板SBの主面近傍のウエルは、メモリセルMCの動作時にチャネルが形成されるチャネル領域である。
【0069】
次に、
図9に示すように、シリサイド層S1を形成する。シリサイド層S1は、いわゆるサリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)プロセスを行うことによって、形成することができる。具体的には、次のようにしてシリサイド層S1を形成することができる。
【0070】
すなわち、拡散領域DF、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGのそれぞれの上面上を含む半導体基板SBの主面全面上に、シリサイド層S1の形成用の金属膜を形成(堆積)する。当該金属膜は、単体の金属膜(純金属膜)または合金膜を用いることができる。当該金属膜は、例えば、コバルト(Co)膜、ニッケル(Ni)膜、またはニッケル白金合金膜からなり、スパッタリング法などを用いて形成することができる。
【0071】
それから、半導体基板SBに対して熱処理(シリサイド層S1形成用の熱処理)を施すことによって、拡散領域DF、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGの各表層部分を、当該金属膜と反応させる。これにより、拡散領域DF、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGのそれぞれの上面に接して、シリサイド層S1が形成される。その後、未反応の当該金属膜をウェットエッチングなどにより除去し、
図9に示す構造を得る。シリサイド層S1は、例えばコバルトシリサイド層、ニッケルシリサイド層、または、ニッケル白金シリサイド層とすることができる。
【0072】
続いて、半導体基板SBの主面全面上に、メモリセルMCを覆うように、層間絶縁膜ILを形成する。層間絶縁膜ILは、例えば酸化シリコン膜の単体膜からなり、例えばCVD法などを用いて形成することができる。ここでは、例えば制御ゲート電極CGの膜厚よりも厚い膜厚で層間絶縁膜ILを形成する。続いて、層間絶縁膜ILの上面を、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法などを用いて研磨する。
【0073】
次に、
図10に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて層間絶縁膜IL上に形成したフォトレジストパターン(図示しない)をエッチングマスクとして用い、層間絶縁膜ILをドライエッチングする。これにより、層間絶縁膜ILを貫通するコンタクトホール(開口部、貫通孔)を複数形成する。
【0074】
各コンタクトホールの底部では、半導体基板SBの主面の一部である拡散領域DFのそれぞれの表面上のシリサイド層S1の上面、制御ゲート電極CGの表面上のシリサイド層S1の上面、または、メモリゲート電極MGの表面上のシリサイド層S1の上面などが露出する。図では、拡散領域DFの直上のコンタクトホールのみを示している。
【0075】
続いて、各コンタクトホール内に、接続用の導電体として、タングステン(W)などからなる導電性のコンタクトプラグCPを複数形成する。コンタクトプラグCPを形成するには、例えば、コンタクトホールの内部を含む層間絶縁膜IL上に、バリア導電膜(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)を形成する。それから、このバリア導電膜上にタングステン膜などからなる主導電膜を、各コンタクトホール内を完全に埋めるように形成してから、コンタクトホールの外部の不要な主導電膜およびバリア導電膜をCMP法またはエッチバック法などによって除去することにより、複数のコンタクトプラグCPを形成することができる。
【0076】
コンタクトホールに埋め込まれた複数のコンタクトプラグCPは、拡散領域DF、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGのそれぞれの上面に、シリサイド層S1を介して電気的に接続される。各コンタクトプラグCPは、拡散領域DF上のシリサイド層S1の上面、拡散領域DF上のシリサイド層S1の上面、制御ゲート電極CG上のシリサイド層S1の上面、および、メモリゲート電極MG上のシリサイド層S1の上面などに接続されている。
【0077】
なお、図の簡略化のために、
図10では、コンタクトプラグCPを構成するバリア導電膜および主導電膜(タングステン膜)を一体化して示している。また、
図10の断面図においては、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGのそれぞれに接続されたコンタクトプラグCPを示していない。つまり、ゲート幅方向に延在する制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGのそれぞれに対しては、図示していない領域においてコンタクトプラグCPが接続されている。
【0078】
続いて、コンタクトプラグCPが埋め込まれた層間絶縁膜IL上に第1層目の配線M1を含む第1配線層を形成する。配線M1は、所謂シングルダマシン技術を用いて形成することができる。第1配線層は、層間絶縁膜IL上に形成された層間絶縁膜(図示しない)と、層間絶縁膜を貫通する第1層目の配線M1とを有する。配線M1の底面は、コンタクトプラグCPの上面に接続される。その後の工程の図示は省略するが、第1配線層上に、第2配線層および第3配線層などを順に形成して積層配線層を形成した後、半導体ウェハをダイシング工程により個片化し、複数の半導体チップを得る。以上のようにして、本実施の形態の半導体装置が製造される。
【0079】
<不揮発性メモリの動作について>
次に、不揮発性メモリの動作例について、
図32を参照して説明する。
図32は、本実施の形態の「書込」、「消去」および「読出」時における選択メモリセルの各部位への電圧の印加条件の一例を示す表である。
図32の表には、「書込」、「消去」および「読出」時のそれぞれにおいて、
図10に示されるようなメモリセルMCのメモリゲート電極MGに印加する電圧Vmg、ソース領域に印加する電圧Vs、制御ゲート電極CGに印加する電圧Vcg、ドレイン領域に印加する電圧Vd、および半導体基板上面のp型ウエルに印加するベース電圧Vbが記載されている。
【0080】
ここでいう選択メモリセルとは、「書込」、「消去」または「読出」を行う対象として選択されたメモリセルを指す。なお、
図10に示す不揮発性メモリの例では、各メモリセルのメモリゲート電極MG側の活性領域に形成されたエクステンション領域EXおよび拡散領域DFがソース領域を構成し、制御ゲート電極CG側の活性領域に形成されたエクステンション領域EXおよび拡散領域DFがドレイン領域を構成する。
【0081】
なお、
図32の表に示したものは電圧の印加条件の好適な一例であり、これに限定されるものではなく、必要に応じて種々変更可能である。また、本実施の形態では、メモリトランジスタのONO膜ON(
図10参照)中の電荷蓄積部である窒化シリコン膜N1への電子の注入を「書込」、ホール(hole:正孔)の注入を「消去」と定義する。
【0082】
また、
図32の表において、Aの欄は、書込み方法がSSI方式で、かつ消去方法がBTBT方式の場合に対応し、Bの欄は、書込み方法がSSI方式で、かつ消去方法がFN方式の場合に対応し、Cの欄は、書込み方法がFN方式で、かつ消去方法がBTBT方式の場合に対応し、Dの欄は、書込み方法がFN方式で、かつ消去方法がFN方式の場合に対応している。
【0083】
SSI方式は、窒化シリコン膜N1にホットエレクトロンを注入することによってメモリセルの書込みを行う動作法とみなすことができ、BTBT方式は、窒化シリコン膜N1にホットホールを注入することによってメモリセルの消去を行う動作法とみなすことができ、FN方式は、電子またはホールのトンネリングによって書込みまたは消去を行う動作法とみなすことができる。FN方式について、別の表現で言うと、FN方式の書込みは、窒化シリコン膜N1にFNトンネル効果により電子を注入することによってメモリセルの書込みを行う動作方式とみなすことができ、FN方式の消去は、窒化シリコン膜N1にFNトンネル効果によりホールを注入することによってメモリセルの消去を行う動作方式とみなすことができる。以下、具体的に説明する。
【0084】
書込み方式は、いわゆるSSI(Source Side Injection:ソースサイド注入)方式と呼ばれるソースサイド注入によるホットエレクトロン注入で書込みを行う書込み方式(ホットエレクトロン注入書込み方式)と、いわゆるFN方式と呼ばれるFN(Fowler Nordheim)トンネリングにより書込みを行う書込み方式(トンネリング書込み方式)とがある。
【0085】
SSI方式の書込みでは、例えば
図32の表のAの欄またはBの欄の「書込動作電圧」に示されるような電圧(Vmg=10V、Vs=5V、Vcg=1V、Vd=0.5V、Vb=0V)を、書込みを行う選択メモリセルの各部位に印加し、選択メモリセルのONO膜ON中の窒化シリコン膜N1中に電子を注入することで書込みを行う。
【0086】
この際、ホットエレクトロンは、2つのゲート電極(メモリゲート電極MGおよび制御ゲート電極CG)間の下のチャネル領域(ソース、ドレイン間)で発生し、メモリゲート電極MGの下の電荷蓄積部である窒化シリコン膜N1にホットエレクトロンが注入される。注入されたホットエレクトロン(電子)は、ONO膜ON中の窒化シリコン膜N1中のトラップ準位に捕獲され、その結果、メモリトランジスタのしきい値電圧が上昇する。すなわち、メモリトランジスタは書込み状態となる。
【0087】
FN方式の書込みでは、例えば
図32の表のCの欄またはDの欄の「書込動作電圧」に示されるような電圧(Vmg=−12V、Vs=0V、Vcg=0V、Vd=0V、Vb=0V)を、書込みを行う選択メモリセルの各部位に印加し、選択メモリセルにおいて、メモリゲート電極MGから電子をトンネリングさせてONO膜ON中の窒化シリコン膜N1に注入することで書込みを行う。この際、電子はメモリゲート電極MGからFNトンネリング(FNトンネル効果)により酸化シリコン膜(トップ酸化膜)OX2をトンネリングしてONO膜ON中に注入され、ONO膜ON中の窒化シリコン膜N1中のトラップ準位に捕獲され、その結果、メモリトランジスタのしきい値電圧が上昇する。すなわち、メモリトランジスタは書込み状態となる。
【0088】
なお、FN方式の書込みにおいて、半導体基板SBから電子をトンネリングさせて窒化シリコン膜N1に注入することで書込みを行うこともでき、この場合、書込動作電圧は、例えば
図32の表のCの欄またはDの欄の「書込動作電圧」の正負を反転させたものとすることができる。
【0089】
消去方法は、いわゆるBTBT方式と呼ばれるBTBT(Band-To-Band Tunneling:バンド間トンネル現象)によるホットホール注入により消去を行う消去方式(ホットホール注入消去方式)と、いわゆるFN方式と呼ばれるFN(Fowler Nordheim)トンネリングにより消去を行う消去方式(トンネリング消去方式)とがある。
【0090】
BTBT方式の消去では、BTBTにより発生したホール(正孔)を電荷蓄積部(窒化シリコン膜N1)に注入することにより消去を行う。例えば
図32の表のAの欄またはCの欄の「消去動作電圧」に示されるような電圧(Vmg=−6V、Vs=6V、Vcg=0V、Vd=open、Vb=0V)を、消去を行う選択メモリセルの各部位に印加する。これにより、BTBT現象によりホールを発生させ電界加速することで選択メモリセルの窒化シリコン膜N1中にホールを注入し、それによってメモリトランジスタのしきい値電圧を低下させる。すなわち、メモリトランジスタは消去状態となる。
【0091】
FN方式の消去では、例えば
図32の表のBの欄またはDの欄の「消去動作電圧」に示されるような電圧(Vmg=12V、Vs=0V、Vcg=0V、Vd=0V、Vb=0V)を、消去を行う選択メモリセルの各部位に印加し、選択メモリセルにおいて、メモリゲート電極MGからホールをトンネリングさせて窒化シリコン膜N1に注入することで消去を行う。この際、ホールはメモリゲート電極MGからFNトンネリング(FNトンネル効果)により酸化シリコン膜(トップ酸化膜)OX2をトンネリングしてONO膜ON中に注入され、ONO膜ON中の窒化シリコン膜N1中のトラップ準位に捕獲され、その結果、メモリトランジスタのしきい値電圧が低下する。すなわち、メモリトランジスタは消去状態となる。
【0092】
なお、FN方式の消去において、半導体基板SBからホールをトンネリングさせて窒化シリコン膜N1に注入することで消去を行うこともでき、この場合、消去動作電圧は、例えば
図32の表のBの欄またはDの欄の「消去動作電圧」の正負を反転させたものとすることができる。
【0093】
読出し時には、例えば
図32の表のAの欄、Bの欄、Cの欄またはDの欄の「読出動作電圧」に示されるような電圧を、読出しを行う選択メモリセルの各部位に印加する。読出し時のメモリゲート電極MGに印加する電圧Vmgを、書込み状態におけるメモリトランジスタのしきい値電圧と消去状態におけるしきい値電圧との間の値にすることで、書込み状態と消去状態とを判別することができる。
【0094】
<本実施の形態の半導体装置の製造方法の効果について>
以下に、
図33に示す比較例の半導体装置の問題点を説明し、本実施の形態の効果について説明する。
図33は、比較例である半導体装置を示す断面図である。
【0095】
スプリットゲート型のMONOSメモリでは、メモリゲート電極のゲート長の大小が、メモリにおける情報の書込み速度、消去速度および保持特性に大きな影響を与える。例えば、メモリゲート電極のゲート長が大きいメモリは、書込み速度が速く、消去速度が遅く、保持特性が良い特性を有する。これに対し、メモリゲート電極のゲート長が小さいメモリは、書込み速度が遅く、消去速度が速く、保持特性が悪い特性を有する。
【0096】
ここで、本発明者らは、スプリットゲート型のMONOSメモリを製造する過程で、メモリゲート電極を形成するために成膜するシリコン膜の膜厚が薄い程、製品の不良率が増大すること、制御トランジスタのしきい値電圧が高い程製品の不良率が増大すること、および、メモリトランジスタのしきい値電圧が低い程製品の不良率が増大することを発見した。このように不良率が増大する原因を調べたところ、本発明者らは、メモリ特性を決定する主要素の1つであるメモリゲート電極のゲート長の大きさが、制御ゲート電極の形状の変化に依存して増減すること、および、このようなメモリゲート電極のゲート長の値の増減が上記不良率の増大の原因となっていることを見出した。なお、不良の製品とは、例えば、所望の書込み速度、所望の消去速度、または所望の保持特性を有しないメモリを搭載した半導体チップを指す。
【0097】
制御ゲート電極の形状が意図せず変動する主な理由は、エッチングにより制御ゲート電極を形成する際、異方性の高いエッチングと、当該エッチングの後に行う異方性の低いエッチングとを組み合わせてシリコン膜を加工し、これにより制御ゲート電極を形成していることにある。
【0098】
つまり、異方性の高いエッチングは酸化シリコンに対する選択比が低いエッチングであるため、所望のタイミングでエッチングを終了させることが困難であることから、ここでは、異方性の高い当該エッチングを行った後、これに加えて、酸化シリコンに対する選択比が高く、異方性が低いエッチングを行うことで制御ゲート電極を加工している。このような異方性の低いエッチングを行うことは、制御ゲート電極の側面の下部が裾引き形状となる原因となる。このため、異方性の高いエッチングによるエッチング量と、異方性の低いエッチングのエッチング量とを制御しない場合には、制御ゲート電極の下部の裾引き長が意図せず変動し、その結果、メモリゲート電極のゲート長が変動するため、不良率が増大する。
【0099】
制御ゲート電極の形状のばらつきに起因してメモリゲート電極のゲート長が変動した場合の比較例の半導体装置を、
図33に示す。
図33は、比較例である半導体装置を2つ示す断面図である。
図33では、互いに異なるウェハである半導体基板SBAと半導体基板SBBとを並べて示している。また、
図33では、サイドウォール、コンタクトプラグ、層間絶縁膜および配線などの図示を省略している。ここでは、半導体基板SBAの上部のメモリセルMCAと、半導体基板SBBの上部のメモリセルMCBとを、互いに同じ特性の素子として形成するために各半導体装置を製造する場合について説明する。
【0100】
半導体基板SBAおよび半導体基板SBBのそれぞれの上部に同じ特性の素子を形成しようとしても、異なるウェハ上に形成されたスプリットゲート型のメモリセルMCAおよびスプリットゲート型のメモリセルMCBのそれぞれのメモリ特性に差が生じる場合がある。これは、シリコン膜を加工して制御ゲート電極CGA、CGBのそれぞれを形成する際に、上記のように、所望のタイミングでエッチングを終了させるため、異方性の高いエッチングを行った後に、異方性が低いエッチングを行い、これにより制御ゲート電極CGA、CGBのそれぞれを形成しているためである。
【0101】
ここでは、半導体基板SBAおよび半導体基板SBBのそれぞれの上に形成した当該シリコン膜の膜厚が互いに同一であったとしても、半導体基板SBA上のシリコン膜に対して異方性の高いドライエッチングを行う時間(ブレイクスルー時間)と、半導体基板SBB上のシリコン膜に対して異方性の高いドライエッチングを行う時間(ブレイクスルー時間)とに差が生じている。このため、その後に半導体基板SBA上のシリコン膜に対して行う異方性の低いドライエッチングのエッチング量が、半導体基板SBB上のシリコン膜に対して行う異方性の低いドライエッチングのエッチング量よりも小さい。
【0102】
その結果、制御ゲート電極CGAの側面の下部に形成される裾引き形状の裾引き長は、制御ゲート電極CGBの側面の下部に形成される裾引き形状の裾引き長よりも小さくなり、制御ゲート電極CGAと制御ゲート電極CGBとの相互間で断面形状に差が生じる。このため、後の工程で制御ゲート電極CGAの側面に隣り合うように形成されたメモリゲート電極MGAのゲート長は、制御ゲート電極CGBの側面に隣り合うように形成されたメモリゲート電極MGBのゲート長よりも大きくなる。このように、制御ゲート電極CGA、CGBを形成するために行う2種類のドライエッチングのそれぞれのエッチング時間を制御しない場合、形成されるメモリゲート電極のゲート長に意図せず差が生じる。これにより、メモリセルMCA、MCBの相互間でメモリ特性がばらつく問題が生じるため、所望の特性を有しないメモリセルを搭載した製品は不良とみなされる。よって、半導体装置の信頼性が低下する問題、および、半導体装置の歩留まりが低下する問題が生じる。
【0103】
そこで、本発明者らは、制御ゲート電極CGの形状を制御することで、所望の特性を有するメモリを備えた半導体装置を実現する製造方法を検討した。
【0104】
その製造方法として、本実施の形態では、
図11に示すエッチング時間設定テーブルに従い、制御ゲート電極を形成するために成膜した第1シリコン膜の膜厚aに応じて、制御ゲート電極を垂直に加工するブレイクスルー時間を選択して第1ドライエッチングを行い、その後、制御ゲート電極の側面の下部が裾引き形状となるように第2ドライエッチングを行う。これにより、第2ドライエッチングにより裾引き形状が形成される側面の高さである距離cを所望の大きさに制御することができる。つまり、制御ゲート電極の裾引き形状を制御することができる。よって、その後の工程で制御ゲート電極の側面に隣り合う領域に、所望のゲート長を有するサイドウォール状のメモリゲート電極を形成することができる。
【0105】
具体的には、
図2を用いて説明した工程において、上記エッチング時間設定テーブルに従い、シリコン膜PS1の膜厚aに応じて、シリコン膜PS1を垂直に加工するブレイクスルー時間を選択して第1ドライエッチングを行う。これにより、シリコン膜PS1が所望の膜厚(距離c)になるように第1ドライエッチングのエッチング量を制御することができる。すなわち、その後に行う第2ドライエッチングによるエッチング量は必ず距離cとなる。このようにして第2ドライエッチングのエッチング量を制御することができるため、制御ゲート電極CG(
図3参照)の側面の下部の裾引き長dを制御することができる。つまり、第1ドライエッチングおよび第2ドライエッチングのそれぞれを行う時間配分を管理・制御しており、これにより、その後の工程で形成するサイドウォール状のメモリゲート電極MG(
図6参照)のゲート長L1を所望の値に制御することができる。
【0106】
よって、意図せずメモリゲート電極MGのゲート長L1の値が変動することを防ぐことができるため、MONOSメモリを搭載した半導体装置の不良率を低下させることができる。よって、半導体装置の信頼性を向上させることができる。また、半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
【0107】
また、互いの特性に違いがあるメモリを所定のウェハと他のウェハとの間で作り分けることができれば、所定の特性のメモリを搭載したウェハを所望の数だけ製造することができるため、半導体装置の生産性を向上させることができる。ここで、自己整合的に形成されるサイドウォール形状のメモリゲート電極のゲート長の大きさは、例えば、メモリゲート電極を形成するために成膜するシリコン膜の膜厚に影響を受ける。つまり、当該シリコン膜の膜厚が大きければ、メモリゲート電極のゲート長も大きくなる。
【0108】
したがって、上記のように、異なるウェハ同士の間で互いに異なるゲート長を有するメモリゲート電極を作り分ける方法としては、それらのウェハ上に別々の膜厚のシリコン膜を堆積し、それらのシリコン膜に対し異方性エッチングを行うことで、互いにゲート長が異なるメモリゲート電極をそれぞれ形成する方法が考えられる。
【0109】
しかし、多数のウェハを1つの成膜装置の炉内に設置し、それらのウェハ全てに対して同時に成膜処理を行う場合、つまりバッチ式の成膜処理を行う場合には、半導体装置の生産性を高めることができるが、メモリゲート電極を形成するためのシリコン膜をウェハ毎に異なる膜厚で形成することはできない。つまり、バッチ式で多数のウェハに対し同一の膜厚の当該シリコン膜を形成する場合に比べ、ウェハ毎に異なる膜厚で当該シリコン膜を形成する場合には、半導体装置の生産性が低下し、半導体装置の製造コストが増大する問題が生じる。
【0110】
また、メモリゲート電極のゲート長を増大させることを目的として、メモリゲート電極を形成するために成膜するシリコン膜の膜厚を過度に厚くすると、メモリゲート電極の断面積が増大してメモリゲート電極の抵抗が低下し、これにより意図せず半導体装置の特性が変動する問題が生じる。また、メモリゲート電極のゲート長を縮小させることを目的として、メモリゲート電極を形成するために成膜するシリコン膜の膜厚を過度に薄くすると、メモリゲート電極の上面にシリサイド層を形成すること、および、当該シリサイド層にコンタクトプラグを接続することが困難となる問題が生じる。つまり、半導体装置が正常に動作しなくなる。また、メモリセル同士の間の距離が小さくなるため、例えば隣り合うメモリゲート電極同士の間で短絡が生じ易くなる。これらの問題を回避するためには、半導体装置を再設計する必要があり、その結果、半導体装置の製造コストが増大する。
【0111】
これに対し、本実施の形態の半導体装置の製造方法では、制御ゲート電極CG(
図3参照)を形成するためにシリコン膜PS1(
図1参照)を加工する際のエッチング時間の長さを制御することで、制御ゲート電極CGの裾引き形状を制御することが可能であるため、制御ゲート電極CGの形成後に形成するメモリゲート電極MG(
図6参照)のゲート長L1を制御することができる。つまり、本実施の形態では、メモリゲート電極MGを形成するために堆積するシリコン膜PS2(
図4参照)を、複数のウェハのそれぞれの上に成膜する方法がバッチ式であるか否かに関わらず、枚葉式の加工処理により制御ゲート電極CGを形成している。このため、制御ゲート電極CGを形成するための加工の際に行う2種類のエッチングのエッチング量(エッチング時間の配分)を制御することで、ウェハ毎に別々にメモリゲート電極MGのゲート長L1を制御することができる。
【0112】
これは、ウェハ同士の間で、互いに異なる所望のゲート長を有するメモリゲート電極を作り分けることが可能であることを意味する。したがって、製造したい製品が形成されたウェハを必要な数だけ形成することができるため、半導体装置の生産性を向上させることができる。つまり、半導体装置の製造コストの増大を防ぎつつ、製品間で互いに異なる特性を有するメモリを搭載した多様な製品を製造することができる。
【0113】
具体的な製造方法としては、一定の膜厚を有するシリコン膜PS1(
図1参照)を2つのウェハのそれぞれの上に形成した後、一方のウェハ上に形成されたシリコン膜PS1に対して行う第1ドライエッチングの時間を、他方のウェハ上に形成されたシリコン膜PS1に対して行う第1ドライエッチングの時間をよりも長く行うことが考えられる。これにより、一方のウェハ上に形成されたシリコン膜PS1に対して行う第2ドライエッチングの時間は、他方のウェハ上に形成されたシリコン膜PS1に対して行う第2ドライエッチングの時間をよりも短く行うこととなる。その結果、2つのウェハ同士の間で、互いに異なる裾引き長を有する制御ゲート電極CG(
図3参照)を作り分けることができる。したがって、これらの制御ゲート電極CGの横に形成されるメモリゲート電極MG(
図6参照)のゲート長は、互いに異なる大きさとなる。
【0114】
また、本実施の形態では、メモリゲート電極のゲート長を増大させることを目的として、メモリゲート電極を形成するために成膜するシリコン膜の膜厚を厚くする必要がなく、メモリゲート電極のゲート長を縮小させることを目的として、メモリゲート電極を形成するために成膜するシリコン膜の膜厚を薄くする必要がない。よって、メモリゲート電極の断面積の増大に起因するメモリゲート電極の抵抗の低下、メモリゲート電極の上部のシリサイド層の形成不良の発生、コンタクトプラグとメモリゲート電極との接続不良の発生、および、メモリセル同士の間の距離が小さくなることに起因する短絡の発生を防ぐことができる。
【0115】
つまり、メモリゲート電極の抵抗を一定に保ったまま、製品用途により要求される性能が異なるメモリを形成することができる。したがって、半導体装置の信頼性を向上させることができる。また、メモリゲート電極のゲート長を変更するために半導体装置のレイアウトなどを再設計する必要がないため、その結果、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0116】
本実施の形態では、
図10に示すように、ゲート長L1が小さいメモリゲート電極MGを形成することができるため、書込み速度が遅く、消去速度が速く、保持特性が悪い特性を有するメモリセルMCを形成することができる。このようなメモリセルMCは、情報の書換え回数が少ない製品に搭載するメモリに求められる性能を有している。
【0117】
本実施の形態のメモリセルMCは、制御ゲート電極CGが裾引き形状を有しており、この形状に影響を受けてメモリゲート電極MGの下面と制御ゲート電極CG側の側面との境界の角部がなだらかになるため、当該角部の電界が緩和する。このため、ONO膜ON内への電子の注入効率が低くなるため、書込み速度は遅くなる。これに対し、メモリゲート電極MGの当該角部がソース領域に近いため、消去効率は高まり、その結果、消去速度は速くなる。
【0118】
なお、
図11のエッチング条件設定テーブルでは製品A〜Cの3つの欄を示しているが、これら3つの製品に限らず、製造を所望する製品の種類は適宜増減させることができる。また、
図11のエッチング条件設定テーブルで区分1〜5の5つの欄を示しているが、これら5つの区分に限らず、区分の数は適宜増減させることができる。また、当該区分1〜5では膜厚aを2nm毎に区分しているが、隣り合う区分同士の膜厚aの差は適宜変更することが可能である。当該区分をより細かく設定することで、第1ドライエッチングの加工精度を向上させることができる。
【0119】
また、後述する実施の形態3において
図20〜
図23を用いて説明するように、互いに異なる特性を有するメモリを形成する領域のそれぞれをフォトレジスト膜で覆った状態で制御ゲート電極CGの加工を行うことで、1つのウェハから得られる半導体チップ同士の間で、異なる特性を有するメモリを形成することも可能である。
【0120】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、制御ゲート電極の下部が横方向に広がる裾引き形状を有する場合において、メモリセルの不良率を低下させること、および、別々のウェハ間に互いに異なる特性のメモリセルを作り分けることについて説明した。以下では、
図12〜
図17を用いて、制御ゲート電極の下部が横方向において狭まる形状を有する場合において、メモリセルの不良率を低下させること、および、別々のウェハ間に互いに異なる特性のメモリセルを作り分けることについて説明する。
図12〜
図17は、本実施の形態2の半導体装置の製造工程中の断面図である。
【0121】
本実施の形態では、まず、
図12に示すように、
図1を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、半導体基板SB上に絶縁膜IF1と、膜厚aのシリコン膜PS1とを順に形成する。
【0122】
次に、
図13に示すように、
図2を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、フォトレジスト膜PR1をマスクとして第1ドライエッチングを行うことで、フォトレジスト膜PR1から露出するシリコン膜PS1の上面を、距離bだけ後退させる。この第1ドライエッチングでは、前記実施の形態1と同様に、
図11に示すエッチング時間設定テーブルに従ってエッチング時間の長さを適宜定める。
【0123】
次に、
図14に示すように、フォトレジスト膜PR1をマスクとして用いて第2ドライエッチングを行うことで、フォトレジスト膜PR1に覆われていないシリコン膜PS1(
図2参照)を除去し、これにより絶縁膜IF1を露出させ、シリコン膜PS1からなる制御ゲート電極CGを形成する。ただし、ここではフォトレジスト膜PR1に覆われていないシリコン膜PS1の全てを除去し、さらに、フォトレジスト膜PR1の直下のシリコン膜PS1の一部も除去する。つまり、制御ゲート電極CGの側面の下部は、半導体基板SBに近付く程横方向の幅が狭くなる逆テーパー形状となる。
【0124】
言い換えれば、制御ゲート電極CGの側面は、第1ドライエッチングにより形成された上部の側面(第1側面)と、第2ドライエッチングにより形成された下部の側面(第2側面)とからなり、当該下部の側面(第2側面)は逆テーパーを有している。第2側面は、制御ゲート電極CGの上面側から下面側に近付く程、横方向おいて、第1側面側から制御ゲート電極CGの中心側に近付く形状を有している。このため、ゲート長方向における制御ゲート電極CGの下面の幅は、制御ゲート電極CGの上面の幅よりも狭い。
【0125】
第2側面は逆テーパーを有しているため、制御ゲート電極CGの側面の下部は、ゲート長方向において制御ゲート電極CGの中心側に後退し、凹んでいる。つまり、垂直方向において、制御ゲート電極CGの第2側面と半導体基板SBの主面との間には制御ゲート電極CGが形成されておらず、ゲート長方向における制御ゲート電極CGは端部の下部は庇状の形状を有している。本願でいうテーパー形状とは、所定の膜の側面が半導体基板SBの主面に対して斜めに傾いている場合であって、制御ゲート電極CGは第2側面の直下に位置し、第2側面の直上には制御ゲート電極CGが存在しない領域が必ず存在する形状をいう。また、本願でいう逆テーパー形状とは、所定の膜の側面が半導体基板SBの主面に対して斜めに傾いている場合であって、制御ゲート電極CGは第2側面の直上に位置し、第2側面の直下には制御ゲート電極CGが存在しない領域が必ず存在する形状をいう。
【0126】
つまり、第1側面の上端から下端までの高さにおいて、制御ゲート電極CGの幅は一定であるが、第2側面の上端から下端に向かって、制御ゲート電極CGの幅は徐々に小さくなっている。すなわち、制御ゲート電極CGの下部は、制御ゲート電極CGの下面に近付く程幅が狭くなっている。本願では、このような制御ゲート電極CGの形状を逆テーパー形状と呼ぶ。
【0127】
当該第2ドライエッチングは、エッチングガスとしてHBr(臭化水素)ガス、O
2(酸素)ガスおよびHe(ヘリウム)ガスを用い、第1ドライエッチングのRFパワーおよび前記実施の形態1の第2ドライエッチングのRFパワーのいずれよりも小さいRFパワーで行う。この条件で行うドライエッチングは異方性が第1ドライエッチングに比べて低く、かつ、デポジット性が第1ドライエッチングおよび前記実施の形態1の第2ドライエッチングのいずれよりも高い。つまり、本実施の形態の第2ドライエッチングを行っている最中に、除去したシリコン膜PS1の一部が再度制御ゲート電極CGに再度付着し易くなる。しかし、ここではシリコン膜PS1に対してオーバーエッチを行うため、制御ゲート電極CGの側面の下部は裾引き形状(テーパー形状)にはならず、逆テーパー形状となる。つまり、本実施の形態の第2ドライエッチングでは、前記実施の形態1の第2ドライエッチングよりも等方性のエッチングに近い性質を有するドライエッチングを行う。よって、制御ゲート電極CGのゲート長方向における幅は、制御ゲート電極CGと絶縁膜IF1とが接する界面において最小となる。
【0128】
制御ゲート電極CGの底面の後退幅は、距離dで表わされる。距離(後退幅、後退量)dは、ゲート長方向において、制御ゲート電極CGの下面の端部が制御ゲート電極CGの上面の端部よりも制御ゲート電極CGの中央側に後退している距離を指す。言い換えれば、距離dは、ゲート長方向における制御ゲート電極CGの両側の側面のうちの一方の下部において、制御ゲート電極CGの下端が横方向に狭まっている距離を意味する。つまり、制御ゲート電極CGの下面の幅は、制御ゲート電極CGの上面の幅よりも2dの大きさだけ狭くなっている。すなわち、制御ゲート電極CGの下面の大きさと制御ゲート電極CGの下面の大きさとの差の1/2の値が距離dの大きさである。
【0129】
なお、第2ドライエッチングは、第1ドライエッチングおよび前記実施の形態1の第2ドライエッチングのそれぞれに比べ、酸化シリコンに対する選択比が大きいエッチングである。このため、第2ドライエッチングにより、酸化シリコン膜からなる絶縁膜IF1が露出した時点で終点検出を行い、第2ドライエッチングを終了させることができる。よって、第2ドライエッチングを終了した時点では、制御ゲート電極CGの横の半導体基板SBの主面は絶縁膜IF1に覆われている。
【0130】
第2ドライエッチングによりシリコン膜PS1を除去する膜厚の量、つまりエッチング量は、距離cで表わされる。膜厚a、距離bおよびcはいずれも半導体基板SBの主面に対して垂直な方向(垂直方向)における距離であり、それらの距離の関係はa=b+cで表わされる。
【0131】
図2を用いて説明した第1ドライエッチングにおいて、
図11に示すブレイクスルー時間の設定テーブルに従いエッチング時間を設定する理由は、シリコン膜PS1(
図1参照)の膜厚aの値の大小に関わらず、第1ドライエッチングにより所望の膜厚cのシリコン膜PS1を残し、その後の第2ドライエッチングにより所望の逆テーパー形状を有する制御ゲート電極CGを形成することにある。
【0132】
このようにして第1ドライエッチングおよび第2ドライエッチングにより形成された制御ゲート電極CGのゲート長は、ゲート長方向における制御ゲート電極CGの下面の幅の大きさ、つまり、制御ゲート電極CGの上面の幅に2dを引いた大きさとなる。制御ゲート電極CGは、上部が長方形の断面を有し、当該上部に接続された下部が、下底よりも上底が大きい台形の断面を有するパターンである。第2ドライエッチングは、枚葉式の処理形式で行われる。
【0133】
次に、
図15に示すように、
図4を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、制御ゲート電極CGの下面と半導体基板SBの主面との間に位置する絶縁膜IF1からなるゲート絶縁膜GI2を形成する。
【0134】
続いて、半導体基板SBの主面全面上に、ONO膜ONおよびシリコン膜(導電膜)PS2を順に形成する。このとき、ONO膜ONおよびシリコン膜PS2からなる積層膜は、制御ゲート電極CGの第2側面と半導体基板SBの主面との間の凹部(後退部)内に埋め込まれて形成される。つまり、第2側面と、第2側面の直下の半導体基板SBの主面とは、当該積層膜に覆われる。その結果、第2側面の直下には少なくとも酸化シリコン膜OX1が存在している。また、第2側面の後退幅dが大きい場合には、第2側面の直下には、酸化シリコン膜OX1および窒化シリコン膜N1が存在する場合と、ONO膜ONが存在する場合と、ONO膜ONおよびシリコン膜PS2とが存在する場合とがあり得る。ここでは、複数のウェハに対して同時にシリコン膜PS2を成膜する方式(バッチ式)を用いる。
【0135】
次に、
図16に示すように、
図5および
図6を用いて説明した工程を行うことで、制御ゲート電極CGの側面に、ONO膜ONを介して、シリコン膜PS2からなるサイドウォール状のメモリゲート電極MGを自己整合的に形成する。メモリゲート電極MGと半導体基板SBの主面との間には、当該ONO膜ONが介在している。
【0136】
ここでは、制御ゲート電極CGの側面の下部(第2側面)が逆テーパー形状を有しており、第2側面の直下の凹部にONO膜ONおよびメモリゲート電極MGからなる積層膜の一部が埋め込まれているため、制御ゲート電極CG側にメモリゲート電極MGの一部が広がっている。このため、第2側面と隣り合うメモリゲート電極MGは、制御ゲート電極CGの第2側面と隣り合う部分において、半導体基板SBの主面に近付く程、ゲート長方向の幅が大きくなっている。つまり、メモリゲート電極MGのゲート長L2は、メモリゲート電極MGの最大の幅であり、かつ、メモリゲート電極MGの下面の幅である。
【0137】
本実施の形態の主な特徴の1つは、逆テーパー形状を有する制御ゲート電極CGを形成することで、制御ゲート電極CGの形状に影響を受けて形成されたメモリゲート電極MGのゲート長L2を制御し、これにより所望の特性を有するMONOSメモリの素子を形成することにある。
【0138】
次に、
図17に示すように、
図7〜
図10を用いて説明した工程と同様の工程を行う。これにより、一対のエクステンション領域EXおよび一対の拡散領域DFからなるソース・ドレイン領域を形成することで、制御トランジスタおよびメモリトランジスタからなるメモリセルMCを形成する。その後、シリサイド層S1、層間絶縁膜IL、コンタクトプラグCPおよび配線M1を形成する。その後、第2配線層および第3配線層などを順に形成して積層配線層を形成した後、半導体ウェハをダイシング工程により個片化し、複数の半導体チップを得る。以上のようにして、本実施の形態の半導体装置が製造される。
【0139】
本実施の形態のように、逆テーパー形状を有する制御ゲート電極CGを形成する場合でも、シリコン膜PS1(
図13および
図14参照)を加工する際にエッチング時間設定テーブルに従ってエッチング量を制御することで、メモリゲート電極MGのゲート長L2を制御することができる。したがって、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。ただし、本実施の形態ではメモリゲート電極MGのゲート長L2が広がるように逆テーパー形状の制御ゲート電極CGを形成しているため、例えば
図11に示す製品Aのように、書込み速度が速く、消去速度が遅く、保持特性が優れている特性を有するメモリセルMCを形成することができる。
【0140】
また、前記実施の形態1で説明したように、本実施の形態においても、ウェハ同士の間で、互いに異なる所望のゲート長を有するメモリゲート電極を作り分けることが可能である。ここでは、異なるウェハのそれぞれに、逆テーパー形状を有する制御ゲート電極CGを形成する。
【0141】
具体的な製造方法としては、一定の膜厚を有するシリコン膜PS1(
図12参照)を2つのウェハのそれぞれの上に形成した後、一方のウェハ上に形成されたシリコン膜PS1に対して行う第1ドライエッチングの時間を、他方のウェハ上に形成されたシリコン膜PS1に対して行う第1ドライエッチングの時間をよりも長く行うことが考えられる。これにより、一方のウェハ上に形成されたシリコン膜PS1に対して行う第2ドライエッチングの時間は、他方のウェハ上に形成されたシリコン膜PS1に対して行う第2ドライエッチングの時間をよりも短く行うこととなる。その結果、2つのウェハ同士の間で、互いに異なる後退幅を有する制御ゲート電極CG(
図14参照)を作り分けることができる。したがって、これらの制御ゲート電極CGの横に形成されるメモリゲート電極MG(
図16参照)のゲート長は、互いに異なる大きさとなる。
【0142】
本実施の形態では、
図17に示すように、ゲート長L2が大きいメモリゲート電極MGを形成することができるため、書込み速度が速く、消去速度が遅く、保持特性が良い特性を有するメモリセルMCを形成することができる。このようなメモリセルMCは、情報の書換え回数が多い製品に搭載するメモリに求められる性能を有している。
【0143】
このようなメモリセルMCでは、メモリゲート電極MGの角部は制御ゲート電極CG側に鋭角に突出しているため電界が集中し易い。このため、書込み動作において、ドレイン領域から流れる電子を制御ゲート電極CGの下で加速させ、メモリゲート電極MGの側面と下面との境界の角部に注入する際に、電子をメモリゲート電極MGに注入する効率が高くなるため、書込み速度が速くなる。これに対し、消去動作ではソース領域側からONO膜ONにホールを注入する。このとき、電子が多く蓄積されているメモリゲート電極MGの角部がソース領域から遠いため、消去効率は低下する。よって、消去速度が遅くなる。
【0144】
(実施の形態3)
前記実施の形態1、2では、メモリセルの不良率を低下させること、および、別々のウェハ間に互いに異なる特性のメモリセルを作り分けることについて説明した。これに対し、以下では、
図18〜
図27を用いて、1つの半導体チップに、互いに異なる特性のメモリセルを混載することについて説明する。
図18は、本実施の形態3の半導体装置の断面図である。
図19〜
図27は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の断面図である。
【0145】
<半導体装置の構造について>
本実施の形態の半導体装置を、
図18に示す。
図18では、図の左側に第1メモリセル領域1Aを示し、図の右側に第2メモリセル領域1Bを示している。第1メモリセル領域1Aおよび第2メモリセル領域1Bは、同一の半導体基板SBに存在する領域であって、当該半導体基板SBの主面に沿って並んでいる領域であり、平面視で互いに重なっていない。また、第1メモリセル領域1Aおよび第2メモリセル領域1Bは、同一の半導体チップに共に存在する領域である。
【0146】
第1メモリセル領域1Aは、例えば、書換え回数が例えば最大で100〜1000回程度であって少なく、高い書換え耐性は要求されない代わりに速い書換え速度が要求されるメモリを形成する領域である。また、第2メモリセル領域1Bは、例えば1万〜10万回程度の非常に多い書換え耐性を保証する必要があり、高い保持特性が要求されるメモリを形成する領域である。具体的には、第1メモリセル領域1Aはコードフラッシュメモリを形成する領域であり、第2メモリセル領域1Bはデータフラッシュメモリを形成する領域である。
【0147】
図18に示すように、本実施の形態の半導体装置は、1つの半導体基板SBを有している。半導体基板SBの主面には、p型のウエル(図示しない)と、p型のウエルよりも形成深さが浅いp型の半導体領域であるチャネル領域(図示しない)とが形成されている。ウエルおよびチャネル領域は、p型の不純物(例えばB(ホウ素))を半導体基板SBの主面に導入して形成した領域である。
【0148】
第1メモリセル領域1Aの半導体基板SB上には、ゲート絶縁膜GI1を介して制御ゲート電極CG1が形成されている。ゲート絶縁膜GI1は例えば酸化シリコン膜からなり、制御ゲート電極CG1は例えばポリシリコン膜からなる。制御ゲート電極CG1は、第1部分と、第1部分の下の第2部分とからなり、第1部分は、半導体基板SBの主面に対して垂直な側面を有し、長方形の断面形状を有する部分であり、第2部分は、半導体基板SBの主面に対しテーパーを有する側面を備えており、上底より下底が大きい台形の断面形状を有する部分である。つまり、制御ゲート電極CG1は裾引き形状(テーパー形状)を有している。このため、制御ゲート電極CG1のゲート長方向における第2部分の幅は、第2部分の上端から下端に向かって徐々に大きくなっている。第1部分の垂直方向の厚さは距離b1で表わされ、第2部分の垂直方向の厚さは距離c1で表わされる。また、制御ゲート電極CG1の裾引き長は、距離(裾引き長)d1で表わされる。
【0149】
ゲート長方向における制御ゲート電極CG1の両方の側面のうち、一方の側面には、ONO膜ONを介してメモリゲート電極MG1がサイドウォール状に形成されている。メモリゲート電極MG1と半導体基板SBの主面との間にも当該ONO膜ONが介在している。ONO膜ONは、メモリゲート電極MG1および半導体基板SBの主面の間から、メモリゲート電極MG1および制御ゲート電極CG1の間に亘って連続的に形成されている。ONO膜ONは、半導体基板SB上に、酸化シリコン膜OX1、窒化シリコン膜N1および酸化シリコン膜OX2を順に積層した積層構造を有している。
【0150】
制御ゲート電極CG1が裾引き形状を有しており、制御ゲート電極CG1の側面に対向しない方のメモリゲート電極MG1の側面は、垂直方向に近い傾きを有しているため、第2部分と隣り合う箇所のメモリゲート電極MG1のゲート長方向の幅は、半導体基板SBの主面に近付く程小さくなる。ここで、メモリゲート電極MG1の下面の短手方向の幅は、メモリゲート電極MG1のゲート長L1である。
【0151】
半導体基板SB上には、ゲート絶縁膜GI1、制御ゲート電極CG1、ONO膜ONおよびメモリゲート電極MG1を含むパターンの両側の側面を覆う絶縁膜であるサイドウォールSWが形成されている。また、当該パターンの直下の半導体基板SBの主面(チャネル領域)を挟むように、一対のエクステンション領域E1と一対の拡散領域D1とが形成されている。ゲート長方向において、エクステンション領域E1は拡散領域D1よりも当該パターン側に位置する。エクステンション領域E1および拡散領域D1は、半導体基板SBの主面にn型の不純物(例えばヒ素(As)またはP(リン))を導入して形成されたn型半導体領域であり、エクステンション領域E1は拡散領域D1よりも低い不純物濃度を有する。また、エクステンション領域E1は拡散領域D1よりも浅い形成深さを有し、拡散領域D1はウエルよりも浅い形成深さを有する。エクステンション領域E1および拡散領域D1は、ソース・ドレイン領域を構成している。
【0152】
制御ゲート電極CG1と、その横の一対のソース・ドレイン領域とは、制御トランジスタを構成している。また、メモリゲート電極MG1と、その横の一対のソース・ドレイン領域とは、メモリトランジスタを構成している。当該制御トランジスタおよび当該メモリトランジスタは、スプリットゲート型のMONOSメモリのメモリセルMC1を構成している。
【0153】
第2メモリセル領域1Bの半導体基板SB上には、ゲート絶縁膜GI2を介して制御ゲート電極CG2が形成されている。ゲート絶縁膜GI2は例えば酸化シリコン膜からなり、制御ゲート電極CG2は例えばポリシリコン膜からなる。制御ゲート電極CG2は、第3部分と、第3部分の下の第4部分とからなり、第3部分は、半導体基板SBの主面に対して垂直な側面を有し、長方形の断面形状を有する部分であり、第4部分は、半導体基板SBの主面に対し逆テーパーを有する側面を備えており、上底より下底が小さい台形の断面形状を有する部分である。つまり、制御ゲート電極CG2は逆テーパー形状を有している。このため、制御ゲート電極CG2のゲート長方向における第4部分の幅は、第4部分の上端から下端に向かって徐々に小さくなっている。
【0154】
第3部分の垂直方向の厚さは距離b2で表わされ、第4部分の垂直方向の厚さは距離c2で表わされる。また、制御ゲート電極CG2の後退幅は、距離d2で表わされる。
【0155】
ゲート長方向における制御ゲート電極CG2の両方の側面のうち、一方の側面には、ONO膜ONを介してメモリゲート電極MG2がサイドウォール状に形成されている。メモリゲート電極MG2と半導体基板SBの主面との間にも当該ONO膜ONが介在している。ONO膜ONは、メモリゲート電極MG2および半導体基板SBの主面の間から、メモリゲート電極MG2および制御ゲート電極CG2の間に亘って連続的に形成されている。
【0156】
制御ゲート電極CG2が第4部分の横方向の端部に凹部(庇部分)を有しており、制御ゲート電極CG2の側面に対向しない方のメモリゲート電極MG2の側面は、垂直方向に近い傾きを有しているため、第4部分と隣り合う箇所のメモリゲート電極MG2のゲート長方向の幅は、半導体基板SBの主面に近付く程大きくなる。ここで、メモリゲート電極MG2の下面の短手方向の幅は、メモリゲート電極MG2のゲート長L2である。
【0157】
半導体基板SB上には、ゲート絶縁膜GI2、制御ゲート電極CG2、ONO膜ONおよびメモリゲート電極MG2を含むパターンの両側の側面を覆う絶縁膜であるサイドウォールSWが形成されている。また、当該パターンの直下の半導体基板SBの主面(チャネル領域)を挟むように、一対のエクステンション領域E2と一対の拡散領域D2とが形成されている。ゲート長方向において、エクステンション領域E2は拡散領域D2よりも当該パターン側に位置する。エクステンション領域E2および拡散領域D2は、半導体基板SBの主面にn型の不純物(例えばヒ素(As)またはP(リン))を導入して形成されたn型半導体領域であり、エクステンション領域E2は拡散領域D2よりも低い不純物濃度を有する。また、エクステンション領域E2は拡散領域D2よりも浅い形成深さを有し、拡散領域D2はウエルよりも浅い形成深さを有する。エクステンション領域E2および拡散領域D2は、ソース・ドレイン領域を構成している。
【0158】
制御ゲート電極CG2と、その横の一対のソース・ドレイン領域とは、制御トランジスタを構成している。また、メモリゲート電極MG2と、その横の一対のソース・ドレイン領域とは、メモリトランジスタを構成している。当該制御トランジスタおよび当該メモリトランジスタは、スプリットゲート型のMONOSメモリのメモリセルMC2を構成している。
【0159】
また、制御ゲート電極CG1、CG2、メモリゲート電極MG1、MG2、拡散領域D1およびD2のそれぞれの上面には、シリサイド層S1が形成されている。また、第1メモリセル領域1Aおよび第2メモリセル領域1Bでは、半導体基板SBの主面上に、メモリセルMC1、MC2を覆うように、例えば酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜ILが形成されている。
【0160】
また、層間絶縁膜ILを貫通する接続部であるコンタクトプラグCPが複数形成されており、各コンタクトプラグCPは、シリサイド層S1を介して、制御ゲート電極CG1、CG2、メモリゲート電極MG1、MG2、拡散領域D1またはD2のいずれかに電気的に接続されている。また、コンタクトプラグCP上には、コンタクトプラグCPに接続された配線M1が形成されている。コンタクトプラグCPは例えば主にW(タングステン)からなり、配線M1は例えば主にCu(銅)からなる。
【0161】
図18に示すように、メモリセルMC1のメモリゲート電極MG1のゲート長L1は、メモリセルMC2のメモリゲート電極MG2のゲート長L2よりも小さい。これは、裾引き形状を有する制御ゲート電極CG1および逆テーパー形状を有する制御ゲート電極CG2のそれぞれの側面にサイドウォール形状のメモリゲート電極MG1、MG2を自己整合的に形成しているためである。
【0162】
このため、本実施の形態の半導体装置では、同一半導体チップ上に、メモリゲート電極のゲート長が互いに異なる複数種類のメモリセルを混載することができる。これにより、半導体チップ上に特性が互いに異なるメモリセルを種類別に形成することができる。よって、互いに要求される性能が異なるメモリを製造する場合に、所定の特性を有するメモリを搭載した半導体チップと、他の特性を有するメモリを搭載した半導体チップとを別々に用意する必要がない。よって、半導体装置の微細化を実現することができる。また、半導体装置のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0163】
<半導体装置の製造方法について>
以下に、
図19〜
図27を用いて、本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。
図19〜
図27では、図の左側に第1メモリセル領域1Aを示し、図の右側に第2メモリセル領域1Bを示している。
【0164】
本実施の形態の半導体装置の製造工程においては、まず、
図19に示すように、p型の単結晶シリコン(Si)などからなる半導体基板SBを用意する。図示はしないが、半導体基板SBの上面に素子分離領域を形成する。続いて、半導体基板SBの主面に対してイオン注入を行うことで、半導体基板SBの主面にp型のウエル(図示しない)およびチャネル領域(図示しない)を形成する。
【0165】
ウエルおよびチャネル領域のそれぞれは、第1メモリセル領域1Aと第2メモリセル領域1Bとのそれぞれにおいて、互いに異なる濃度で形成してもよい。ここでは、第1メモリセル領域1Aに形成するトランジスタのしきい値電圧が高くなり、第2メモリセル領域1Bに形成するトランジスタのしきい値電圧を低くなるように、第1メモリセル領域1Aおよび第2メモリセル領域1Bのチャネル領域の不純物濃度を調整する。これは、第1メモリセル領域1Aに形成するメモリセルの書換え速度を高め、かつ、第2メモリセル領域1Bに形成するメモリセルの書換え耐性(保持特性)を向上させるためである。
【0166】
続いて、
図1を用いて説明した工程と同様にして、第1メモリセル領域1Aおよび第2メモリセル領域1Bのそれぞれの半導体基板SB上に絶縁膜IF1およびシリコン膜PS1を順に形成する。シリコン膜PS1は膜厚aを有する。
【0167】
次に、
図20に示すように、
図2を用いて説明した工程と同様にして、フォトリソグラフィ技術用いて第1ドライエッチング(異方性エッチング)を行うことにより、第1メモリセル領域1Aのシリコン膜PS1の一部を除去する。その後、
図21に示すように、
図3を用いて説明した工程と同様にして、エッチング条件を変えて第2ドライエッチングを行うことで、第1メモリセル領域1Aのシリコン膜PS1の全膜厚を除去し、これによりシリコン膜PS1からなる制御ゲート電極CG1を形成する。このように加工途中でエッチング条件を変更する目的は、制御ゲート電極CG1を形成するためのエッチングを適切なタイミングで終了させることと、制御ゲート電極CG1の側面の下部のみを、横方向に広がる裾引き形状とすることとにある。
【0168】
すなわち、
図20に示すように、シリコン膜PS1の上面上にフォトレジスト膜PR2からなるレジストパターンを形成する。当該レジストパターンは、第2メモリセル領域1Bのシリコン膜PS1の上面全部と、第1メモリセル領域1Aのシリコン膜PS1の上面の一部とを覆い、他の領域のシリコン膜PS1の上面を露出するパターンである。
【0169】
続いて、フォトレジスト膜PR2をマスク(エッチングマスク)として用いて第1ドライエッチングを行うことにより、フォトレジスト膜PR2に覆われていない領域のシリコン膜PS1の上面を、距離b1だけ後退させる。第1ドライエッチング工程でシリコン膜PS1を掘り下げる距離b1は、
図11に示す表に従って定める。第1ドライエッチングを行うことで、フォトレジスト膜PR2に覆われていない領域のシリコン膜PS1は、距離cの膜厚を有する状態で残る。ここでは、第1メモリセル領域1Aに、書込み速度が遅く、消去速度が速く、保持特性が悪い特性を有するメモリセルを形成するために、
図11に示すエッチング時間設定テーブルを参照し、膜厚aに応じた第1ドライエッチングのエッチング時間の長さを定める。
【0170】
続いて、
図21に示すように、フォトレジスト膜PR2をマスクとして用いて第2ドライエッチングを行うことで、フォトレジスト膜PR2に覆われていないシリコン膜PS1を除去し、これにより絶縁膜IF1を露出させ、シリコン膜PS1からなる制御ゲート電極CG1を形成する。制御ゲート電極CG1の側面の下部は、半導体基板SBに近付く程横方向に広がる裾引き形状となる。制御ゲート電極CG1の底面の裾引き長は、距離d1で表わされる。
【0171】
第2ドライエッチングによりシリコン膜PS1を除去する膜厚の量、つまりエッチング量は、距離c1で表わされる。膜厚a、距離b1およびc1はいずれも半導体基板SBの主面に対して垂直な方向(垂直方向)における距離であり、それらの距離の関係はa=b1+c1で表わされる。
【0172】
次に、
図22に示すように、フォトレジスト膜PR2を除去した後、
図13を用いて説明した工程と同様の工程を行う。つまり、フォトレジスト膜PR3をマスクとして第3ドライエッチングを行うことで、フォトレジスト膜PR3から露出するシリコン膜PS1の上面を、距離b2だけ後退させる。この第3ドライエッチングでは、前記実施の形態2と同様に、
図11に示すエッチング時間設定テーブルに従ってエッチング時間の長さを適宜定める。ここで形成するフォトレジスト膜PR3は、第1メモリセル領域1Aの半導体基板SBの主面の全体を覆い、第2メモリセル領域1Bの一部のシリコン膜PS1の上面を覆うレジストパターンである。
【0173】
ここでは、第2メモリセル領域1Bに、書込み速度が速く、消去速度が遅く、保持特性が良い特性を有するメモリセルを形成するために、
図11に示すエッチング時間設定テーブルを参照し、膜厚aに応じた第3ドライエッチングのエッチング時間の長さを定める。
【0174】
次に、
図23に示すように、
図14を用いて説明した工程と同様にして、フォトレジスト膜PR3をマスクとして用いて第4ドライエッチングを行うことで、フォトレジスト膜PR3に覆われていないシリコン膜PS1を除去し、これにより絶縁膜IF1を露出させ、シリコン膜PS1からなる制御ゲート電極CG2を形成する。第4ドライエッチングは、第2ドライエッチングに比べて等方性のエッチングに近い性質を持つ条件で行うエッチングであるため、制御ゲート電極CG2の側面の下部は、半導体基板SBに近付く程横方向の幅が狭くなる逆テーパー形状となる。
【0175】
制御ゲート電極CG2の底面の後退幅は、距離d2で表わされる。距離(後退幅、後退量)d2は、ゲート長方向において、制御ゲート電極CG2の下面の端部が制御ゲート電極CG2の上面の端部よりも制御ゲート電極CG2の中央側に後退している距離を指す。
【0176】
第4ドライエッチングによりシリコン膜PS1を除去する膜厚の量、つまりエッチング量は、距離c2で表わされる。膜厚a、距離b2およびc2はいずれも垂直方向における距離であり、それらの距離の関係はa=b2+c2で表わされる。
【0177】
次に、
図24に示すように、フォトレジスト膜PR3を除去した後、
図4を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、第1メモリセル領域1Aの絶縁膜IF1からなるゲート絶縁膜GI1と、第2メモリセル領域1Bの絶縁膜IF1からなるゲート絶縁膜GI2とを形成し、その後、半導体基板SBの主面上に、ONO膜ONおよびシリコン膜PS2を順に形成する。
【0178】
次に、
図25に示すように、
図5および
図6を用いて説明した工程と同様の工程を行う。これにより、制御ゲート電極CG1の一方の側面の横に、ONO膜ONを介して、シリコン膜PS2からなるサイドウォール状のメモリゲート電極MG1を形成し、制御ゲート電極CG2の一方の側面の横に、ONO膜ONを介して、シリコン膜PS2からなるサイドウォール状のメモリゲート電極MG2を形成する。裾引き形状を有する制御ゲート電極CG1と隣り合って形成されたメモリゲート電極MG1のゲート長L1は、逆テーパー形状を有する制御ゲート電極CG2と隣り合って形成されたメモリゲート電極MG2のゲート長L2よりも小さい。
【0179】
次に、
図26に示すように、
図7を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、第1メモリセル領域1Aに一対のエクステンション領域E1を形成し、第2メモリセル領域1Bに一対のエクステンション領域E2を形成する。
【0180】
続いて、
図8を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、第1メモリセル領域1Aに、ゲート絶縁膜GI1、制御ゲート電極CG1、ONO膜ONおよびメモリゲート電極MG1を含むパターンの両側の側面を覆う絶縁膜であるサイドウォールSWを形成する。また、第2メモリセル領域1Bに、ゲート絶縁膜GI2、制御ゲート電極CG2、ONO膜ONおよびメモリゲート電極MG2を含むパターンの両側の側面を覆う絶縁膜であるサイドウォールSWを形成する。その後、第1メモリセル領域1Aに一対の拡散領域D1を形成し、第2メモリセル領域1Bに一対の拡散領域D2を形成する。
【0181】
エクステンション領域E1および拡散領域D1は第1メモリセル領域1Aのソース・ドレイン領域を構成し、エクステンション領域E2および拡散領域D2は第2メモリセル領域1Bのソース・ドレイン領域を構成する。エクステンション領域E1、E2は、互いに異なる条件で形成してもよい。また、拡散領域D1、D2は、互いに異なる条件で形成してもよい。その後、活性化アニールを行う。これにより、制御トランジスタおよびメモリトランジスタと、これらのトランジスタからなるメモリセルMC1、MC2とを形成する。
【0182】
つまり、制御ゲート電極CG1と、その横の一対のソース・ドレイン領域とは、制御トランジスタを構成している。また、メモリゲート電極MG1と、その横の一対のソース・ドレイン領域とは、メモリトランジスタを構成している。同様に、制御ゲート電極CG2と、その横の一対のソース・ドレイン領域とは、制御トランジスタを構成している。また、メモリゲート電極MG2と、その横の一対のソース・ドレイン領域とは、メモリトランジスタを構成している。第1メモリセル領域1Aの制御トランジスタおよびメモリトランジスタは、スプリットゲート型のMONOSメモリのメモリセルMC1を構成しており、第2メモリセル領域1Bの制御トランジスタおよびメモリトランジスタは、スプリットゲート型のMONOSメモリのメモリセルMC2を構成している。
【0183】
次に、
図27に示すように、
図9および
図10を用いて説明した工程と同様の工程を行う。これにより、シリサイド層S1、層間絶縁膜IL、コンタクトプラグCPおよび配線M1を形成する。その後、第2配線層および第3配線層などを順に形成して積層配線層を形成した後、半導体ウェハをダイシング工程により個片化し、複数の半導体チップを得る。以上のようにして、本実施の形態の半導体装置が製造される。
【0184】
本実施の形態の半導体装置の製造方法では、第1メモリセル領域1Aおよび第2メモリセル領域1Bのそれぞれに異なる断面形状の制御ゲート電極CG1、CG2を形成している。このため、ゲート長L1を有するメモリゲート電極MG1を備えたメモリセルMC1と、ゲート長L1よりも大きいゲート長L2を有するメモリゲート電極MG2を備えたメモリセルMC2とを、同一の半導体チップに混載することができる。ここでは、
図20〜
図23を用いて説明したように、制御ゲート電極CG1を形成するために行うドライエッチング工程と、制御ゲート電極CG2を形成するために行うドライエッチング工程とで、互いに異なる特性を有するメモリを形成することを目的として、
図11に示すエッチング時間設定テーブルに従って加工を行っている。
【0185】
これにより、裾引き形状を有する制御ゲート電極CG1と、逆テーパー形状を有する制御ゲート電極CG2とを作り分けることができる。よって、これらの制御ゲート電極CG1、CG2のそれぞれの側面に隣り合うようにサイドウォール形状のメモリゲート電極MG1、MG2を自己整合的に形成することで、第1メモリセル領域1Aに形成するメモリゲート電極MG1のゲート長L1と、第2メモリセル領域1Bに形成するメモリゲート電極MG2のゲート長L2とを別々の大きさに制御することができる。
【0186】
このため、本実施の形態の半導体装置の製造方法を用いることで、同一半導体チップ上に、特性が互いに異なるメモリセルを種類別に形成することができる。よって、互いに要求される性能が異なるメモリを製造する場合に、所定の特性を有するメモリを搭載した半導体チップと、他の特性を有するメモリを搭載した半導体チップとを用意する必要がない。よって、半導体装置の微細化を実現することができる。また、半導体装置のレイアウトの自由度を高めることができる。また、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0187】
なお、ここでは、距離b1、b2のそれぞれの値は互いに同じでも異なっていてもよく、距離c1、c2のそれぞれの値は互いに同じでも異なっていてもよい。
【0188】
<変形例1>
図28に、本実施の形態の変形例1である半導体装置の断面図を示す。
図28では、
図18と同様に、第1メモリセル領域1Aおよび第2メモリセル領域1Bを並べて示している。
【0189】
図28に示す構造は、制御ゲート電極CG2が裾引き形状を有し、それに従ってメモリゲート電極MG2のゲート長L2が縮小している点を除き、
図18を用いて説明した構造と同様である。ただし、距離b1、b2のそれぞれの値は互いに異なっており、距離c1、c2のそれぞれの値は互いに異なっている。
【0190】
本変形例の第1メモリセル領域1AのメモリセルMC1は、
図19〜
図27を用いて説明したメモリセルMC1と同様の製造方法により形成することができる。対して、第2メモリセル領域1BのメモリセルMC2は、
図19〜
図27を用いて説明したメモリセルMC1と同様の製造方法により形成することができる。このため、制御ゲート電極CG1、CG2はいずれも裾引き形状を有する。ただし、制御ゲート電極CG2の第3部分の垂直方向(高さ方向)の距離b2は、制御ゲート電極CG1の第1部分の垂直方向(高さ方向)の距離b1よりも大きい。このため、制御ゲート電極CG2の第4部分の垂直方向(高さ方向)の距離c2は、制御ゲート電極CG1の第2部分の垂直方向(高さ方向)の距離c1よりも小さい。
【0191】
したがって、制御ゲート電極CG1の裾引き長d1に比べ、制御ゲート電極CG2の裾引き長d2は小さい。このような構造は、制御ゲート電極CG2を形成するための第3ドライエッチングを行う際に、第1メモリセル領域1Aに形成するメモリセルMC1の所望の特性に比べ、例えば比較的書込み速度が速い特性のメモリセルMC2を第2メモリセル領域1Bに形成することを前提として、
図11のエッチング時間設定テーブルに従いエッチング時間を設定することで実現することができる。
【0192】
すなわち、同一の半導体基板SB上に、裾引き形状を有する制御ゲート電極CG1を備えたメモリセルMC1と、裾引き形状を有する制御ゲート電極CG2を備えたメモリセルMC2とを形成する場合でも、第1ドライエッチングのエッチング時間と第3ドライエッチングのエッチング時間とを異なる長さに設定することで、メモリセルMC1、MC2の性能に差を設けることができる。
【0193】
つまり、制御ゲート電極CG1の第1部分を形成するために行う第1ドライエッチングを、制御ゲート電極CG2の第3部分を形成するために行う第3ドライエッチングよりも短時間で行えば、距離b1は距離b2より小さくなる。その結果、制御ゲート電極CG1の第2部分を形成するために行う第2ドライエッチングは、制御ゲート電極CG2の第4部分を形成するために行う第4ドライエッチングよりも長時間行うこととなるため、距離c1は距離c2より大きくなる。このため、裾引き長d1を裾引き長d2より大きくすることができ、これにより、メモリゲート電極MG1のゲート長L1を、メモリゲート電極MG2のゲート長L2よりも小さくすることができる。
【0194】
このような構造を実現することで、
図18に示す構造に比べ、互いに性能の差を縮小したメモリセルMC1、MC2を形成することができる。
【0195】
<変形例2>
図29に、本実施の形態の変形例2である半導体装置の断面図を示す。
図29では、
図18と同様に、第1メモリセル領域1Aおよび第2メモリセル領域1Bを並べて示している。
【0196】
図29に示す構造は、制御ゲート電極CG1が裾引き形状を有さず、垂直な側面のみを有し、それに従ってメモリゲート電極MG1のゲート長L1が拡大している点を除き、
図18を用いて説明した構造と同様である。ただし、距離b1、b2のそれぞれの値は互いに異なっており、距離c1は0または0に近い値である。
【0197】
本変形例の第2メモリセル領域1BのメモリセルMC2は、
図19〜
図27を用いて説明したメモリセルMC2と同様の製造方法により形成することができる。対して、第1メモリセル領域1Aの制御ゲート電極CG1は、第1ドライエッチングによりシリコン膜PS1(
図19参照)の殆どの膜厚を除去することで形成されており、このため、長方形の断面形状を有している。
【0198】
このように、メモリセルMC1を構成する電極として、裾引き形状も逆テーパー形状も有しない垂直な側面を持つ制御ゲート電極CG1を形成してもよい。本変形例においても、メモリゲート電極MG1のゲート長L1とメモリゲート電極MG2のゲート長L2とに差を設けることができるため、
図18を用いて説明した半導体装置と同様の効果を得ることができる。
【0199】
<変形例3>
図30に、本実施の形態の変形例3である半導体装置の断面図を示す。
図30では、
図18と同様に、第1メモリセル領域1Aおよび第2メモリセル領域1Bを並べて示している。
【0200】
図30に示す構造は、制御ゲート電極CG2が裾引き形状を有さず、垂直な側面のみを有し、それに従ってメモリゲート電極MG2のゲート長L2が縮小している点を除き、
図18を用いて説明した構造と同様である。ただし、距離b1、b2のそれぞれの値は互いに異なっており、距離c2は0または0に近い値である。
【0201】
前記変形例2と異なり、本変形例のように、裾引き形状を有する制御ゲート電極CG1を備えたメモリセルMC1と、垂直方向に沿う側面を有する制御ゲート電極CG2を備えたメモリセルMC2とを混載してもよい。この場合でも、メモリゲート電極MG1のゲート長L1とメモリゲート電極MG2のゲート長L2とに差を設けることができるため、
図18を用いて説明した半導体装置と同様の効果を得ることができる。
【0202】
<変形例4>
図31に、本実施の形態の変形例4である半導体装置の断面図を示す。
図31では、
図18と同様に、第1メモリセル領域1Aおよび第2メモリセル領域1Bを並べて示している。
【0203】
図28に示す前記変形例1の半導体装置とは異なり、
図31に示すように、第1メモリセル領域1Aおよび第2メモリセル領域1Bのそれぞれに、形成する制御ゲート電極CG1、CG2を共に逆テーパー形状で形成してもよい。ここでは、第1メモリセル領域1Aの距離b1を第2メモリセル領域1Bの距離b2よりも大きくしている。つまり、制御ゲート電極CG1の第1部分を形成するために行う第1ドライエッチングを、制御ゲート電極CG2の第3部分を形成するために行う第3ドライエッチングよりも長時間で行っている。このため、距離b1は距離b2より大きくなる。
【0204】
その結果、制御ゲート電極CG1の第2部分を形成するために行う第2ドライエッチングを行う時間は、制御ゲート電極CG2の第4部分を形成するために行う第4ドライエッチングを行う時間よりも短くなるため、距離c1は距離c2より小さくなる。したがって、後退幅d1は後退幅d2より小さくなるため、メモリゲート電極MG1のゲート長L1を、メモリゲート電極MG2のゲート長L2よりも小さくすることができる。
【0205】
このような構造を実現することで、
図18に示す構造に比べ、互いに性能の差を縮小したメモリセルMC1、MC2を形成することができる。
【0206】
以上、本発明者らによってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。