(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、酸化銀を正極活物質として用いるアルカリ一次電池が放電末期まで安定した電圧を維持することができるのに対して、二酸化マンガンを正極活物質として用いるアルカリマンガン電池では放電が進むにつれて徐々に電圧が低下することが知られている。ここで、酸化銀からなる正極活物質の一部を二酸化マンガンで置き換えたアルカリ一次電池でも、放電が進むにつれて徐々に電池の電圧が低下する傾向にある。
【0006】
アルカリ一次電池を搭載する電子腕時計では通常、機器が動作しなくなる終止電圧が1.2Vで設計されており、酸化銀の一部を二酸化マンガンに一部置き換えた正極活物質の電池でも充分使用可能である。一方、一部の電子腕時計においては、終止電圧を1.4Vで設計している製品がある。このような電池では、正極活物質の一部を二酸化マンガンに置き換えると、終止電圧まで電圧が低下する時間が大幅に短くなってしまう問題が生じてしまう。このため、正極活物質として用いる酸化銀の含有量を減らしてコスト削減を図りつつ、終止電圧までの動作時間を充分維持することができるアルカリ一次電池の提供が望まれていた。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、その目的は、低コストで、かつ、高い終止電圧でも使用可能な扁平形アルカリ電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決する手段として、以下の構成を有する。
【0009】
本発明における扁平形アルカリ一次電池は、正極缶、負極缶、ガスケットからなる容器に正極、負極、セパレータ、アルカリ水溶液からなる電解液が収容されてなる扁平形アルカリ一次電池において、前記正極は、酸化銀と、重量比12〜22%の銀・ニッケル複合酸化物と、重量比9〜21%の二酸化マンガンと、重量比1〜3%の導電助剤と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、上記構成において、前記正極中、前記銀・ニッケル複合酸化物の重量比が19〜22%であることがより好ましい態様である。
【0011】
また、上記構成において、前記導電助剤がグラファイトであり、前記正極中に重量比で2〜3%含まれることがさらに好ましい態様である。
【0012】
本発明によれば、正極活物質として、酸化銀に加えて、酸化銀よりもコスト面で優れた二酸化マンガン及び銀・ニッケル複合酸化物が正極中に複合添加されている。このように二酸化マンガンと銀・ニッケル複合酸化物を複合添加することにより、二酸化マンガンのみが添加される場合よりも終止電圧までの動作時間を大きくすることができ、かつ、銀・ニッケル複合酸化物のみが添加される場合よりもさらにコストを低減できる。また、導電助剤であるグラファイトに加えて、導電性を有する正極活物質である銀・ニッケル複合酸化物を加えることにより、正極合剤の導電性を向上させることができる。これにより、高い終止電圧の条件で放電しても充分大きな放電容量が得られるアルカリ一次電池とすることができる。
【0013】
また、本発明における扁平形アルカリ一次電池において、前記酸化銀は平均粒径が75〜300μmの顆粒状であり、前記銀・ニッケル複合酸化物は平均粒径が150〜250μmの顆粒状であり、前記二酸化マンガンは平均粒径が250〜350μmの顆粒状であり、前記導電助剤の平均粒径が10〜20μmであることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、正極として、上記の粒径を有する各成分を組合せたペレットを形成することにより、ペレットを高密度に形成しながら、正極ペレット中の粒子間隔及びペレット表面の隙間を充分確保することができる。これにより、さらに、放電容量を向上させることができる。
【0015】
本発明における扁平形アルカリ一次電池において、前記正極はさらに、平均粒径が30〜40μmの水素吸蔵合金を含むことが好ましい。
【0016】
本発明によれば、所定粒径の水素吸蔵合金をさらに添加することにより、充分な水素吸蔵能を保持することができる。これにより、負極に汞化亜鉛等を使用することなく、扁平形アルカリ一次電池を無水銀化することができ、かつ、高密度の扁平形アルカリ一次電池を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の扁平形アルカリ一次電池によれば、放電が進んでも終止電圧までの動作時間を充分維持することにより充分な放電容量が得られ、かつ、コスト面でも優れた扁平形アルカリ一次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る扁平形アルカリ一次電池の実施形態について、図面を用いて説明する。
(扁平形アルカリ一次電池の概要)
図1に示す扁平形アルカリ一次電池1は、ボタン形の一次電池である。この扁平形アルカリ一次電池1は、ケース8内に、正極合剤5、セパレータ6、負極合剤7と、アルカリ水溶液からなる電解液(図示しない)とを備えている。
【0020】
より具体的には、扁平形アルカリ一次電池1は、有底筒状の正極缶2と、正極缶2の開口部にガスケット4を介して固定され、正極缶2との間に密閉空間Sを形成する有底筒状の負極缶3とを有している。そして、この正極缶2の開口部2aをガスケット4に向かってかしめて封口することにより、密閉空間Sを備えたケース8が形成される。この密閉空間S内に、正極合剤5、セパレータ6、負極合剤7、電解液が収容され、セパレータ6を挟んで正極缶2側に正極合剤5、負極缶3側に負極合剤7がそれぞれ配置されている。
【0021】
正極缶2は、鉄(Fe)若しくはステンレススチール(SUS)からなる金属材料にニッケルメッキを施した材質からなり、カップ状に成形されている。この正極缶2は、正極合剤5を収容するとともに、正極端子として機能する。
【0022】
負極缶3は、ニッケルよりなる外表面層と、ステンレススチール(SUS)よりなる金属層と、銅よりなる集電体層とを有する3層構造のクラッド材からなり、カップ状に成形されている。また、負極缶3は、開口部3aが折り返し形成されており、その開口部3aにはガスケット4が装着されている。
【0023】
そして、正極缶2の円形の開口部2aに、負極缶3を、ガスケット4を装着した開口部3a側から嵌合させ、この正極缶2の開口部2aをガスケット4に向かってかしめて封口することにより、扁平形(ボタン形又はコイン形)のケース8が形成される。該ケース8の内部には、密閉空間Sが形成されている。
【0024】
ガスケット4は、
図1に示すように、正極缶2の内周面に沿って円環状に形成され、環状の溝部を有している。この環状の溝部は、負極缶3の開口部3aに接している。このようなガスケット4には、例えば材質として、ナイロン等が用いられている。
【0025】
セパレータ6は、微多孔膜6aと不織布6bの2層構造からなる。この2層構造とすることで、正極と負極との間のバリア性(絶縁性及び、銀イオン遮蔽効果)を高め、保存容量性を向上させることができる。加えて、効果的にアルカリ電解液を保持することができることから放電特性を向上させることができる。微多孔膜6aとしては、ポリエチレンフィルム、セロファン、グラフト重合膜等を用いることができる。また、不織布6bとしては、セルロースからなる吸液紙等を用いることができる。
【0026】
この扁平形アルカリ一次電池1を組み立てる際には、ペレット状に成形された正極合剤5を正極缶2に充填する。そして、セパレータ6の上に、ゲル状の負極合剤を載置し、この上に負極缶3を被せる。さらに、正極缶2の開口縁部をかしめて、ケース8を密閉する。
【0027】
(正極合剤)
本発明における正極である正極合剤5は、正極活物質、導電助剤、結着剤等からなり、ペレット状に成形されている。このペレット状の正極合剤5に電解液が含浸されることにより、正極活物質と電解液との間で電極反応を生ずることができる。
【0028】
本発明において、正極活物質を構成する材料は、酸化銀(Ag
2O)、銀・ニッケル複合酸化物(AgNiO
2)、二酸化マンガン(MnO
2)である。
【0029】
酸化銀は、正極合剤5中の主要な正極活物質である。この酸化銀は、単位質量あたりの理論容量が非常に大きく、扁平形アルカリ一次電池1の出力電圧を放電末期まで高く安定して取り出すことができる材料である。
【0030】
本発明において、酸化銀は、平均粒径が5〜15μmの微粉から形成される、平均粒径が75〜300μmの顆粒状で用いられる。正極合剤5中に酸化銀が多く含まれていれば、電池の放電容量を増やすことができる。
【0031】
ここで、本発明においては、粒度分布におけるD50の値を平均粒径と表すものである。
【0032】
銀・ニッケル複合酸化物は、単位質量あたりの理論容量が酸化銀と同程度に大きな活物質であると同時に、それ自身が良好な導電性を示す材料である。このため、本発明においてこの銀・ニッケル複合酸化物を、正極活物質を構成する材料として採用することにより、電池の放電容量を確保しながらコスト面で優れた電池とすることができる。
【0033】
また、銀・ニッケル複合酸化物は、酸化銀と同様に、正極活物質として用いた場合に、扁平形アルカリ一次電池1の出力電圧を放電末期まで高く維持することができる。これにより、高い終止電圧で使用する場合でも充分な放電容量を得ることができる。
【0034】
特に、銀・ニッケル複合酸化物が正極合剤5中の重量比で12〜22%として、かつ、本発明における導電助剤と組合せることにより、高電圧領域における電池の放電容量を確保した上で、優れた導電性を有し、かつ、コスト面でも優れた扁平形アルカリ一次電池とすることができる。
【0035】
銀・ニッケル複合酸化物の割合が12%より少ない場合、相対的に酸化銀が多くなればコスト面の問題が生じるし、二酸化マンガンが相対的に多くなれば高い終止電圧領域において充分な放電容量が得られなくなってしまう。一方、銀・ニッケル複合酸化物の割合が22%より多い場合には、二酸化マンガンを多くする場合に比べてコスト低減のメリットが小さくなってしまう。このため、銀・ニッケル複合酸化物の割合は上記のように正極合剤5中12〜22%が好ましく、19〜22%がより好ましい。
【0036】
また、銀・ニッケル複合酸化物は、酸化銀と二酸化マンガンのみを正極活物質として用いる場合に比べて、正極合剤5からなるペレットの硬度を高めることができる。これにより、電池を作製する際のかしめによって正極ペレットの形状が充分維持される。
【0037】
さらに、銀・ニッケル複合酸化物は優れた水素吸蔵能を有しており、電池の負極合剤7中の亜鉛粉末と電解液との接触に伴い発生する水素ガスを吸収することができる。これにより、本発明におけるアルカリ一次電池の負極合剤を無水銀化することができる。
【0038】
本発明において、銀・ニッケル複合酸化物、平均粒径が150〜250μmの顆粒状で用いられる。銀・ニッケル複合酸化物がこの粒径で用いられることにより、他の正極活物質を構成する材料と組合せて、正極合剤5からなるペレットを高密度に形成することができる。
【0039】
二酸化マンガンは、酸化銀よりも単位質量あたりの理論容量が小さいものの正極活物質として機能することができる。このため、正極活物質の一部を酸化銀から二酸化マンガンに置き換えることにより、目的とする必要最小限の放電容量を維持しながらコストを低減することができる。
【0040】
また、二酸化マンガンは粒径が大きいことにより、正極合剤5を高密度に圧縮成形する場合であっても、ペレット内の隙間を確保し電解液の含浸性を維持することができる。このため、二酸化マンガンが添加された正極活物質を採用する場合、酸化銀のみの正極活物質や、酸化銀と銀・ニッケル複合酸化物のみを正極活物質とする場合に比べて、放電特性を安定化することができる。
【0041】
本発明における二酸化マンガンは、正極合剤5中において、重量比で9〜21%含有していることが好ましい。この含有比であれば、他の正極活物質と組合せて、電池の放電容量を確保した上で、コスト面でも優れた電池とすることができる。これに対し、二酸化マンガンが正極合剤5中で重量比が9%よりも少なく添加される場合、コスト面で充分な効果が得られない。一方、21%よりも多く添加される場合、放電容量が充分得られないだけでなく、電池の放電が進むと電圧が下がってくるため、終止電圧が高い用途に用いることができなくなってしまう。
【0042】
また、本発明における二酸化マンガンは、平均粒径が250〜350μmの顆粒状で用いられることが好ましい。この粒径であれば、正極合剤5からなるペレット中に電解液含浸が充分可能な隙間を形成することができ、電池の放電容量を確保することができる。平均粒径がこれよりも小さい場合には、このような隙間を充分確保することができず、電池の放電容量を確保することができない。一方で、平均粒径がこれよりも大きい場合には、隙間が大きすぎることにより、電池の放電容量が低下してしまう。
【0043】
本発明において、導電助剤にはグラファイト(黒鉛)が用いられる。このグラファイトは正極合剤5のうち、重量比で1〜3%含有していることが好ましい。正極合剤5中、導電性を有する銀・ニッケル複合酸化物と黒鉛とを本発明の割合で組合せることにより、優れた低抵抗特性と放電容量特性のいずれをも備えたアルカリ一次電池とすることができる。これに対し、グラファイトが1%よりも少ない場合、本発明の目的とする十分な低抵抗の特性を得ることができない。また、3%よりも多すぎる場合、正極合剤5中における正極活物質の割合が相対的に少なくなってしまい、充分な容量特性を得ることができない。このように、グラファイトの含有割合は正極合剤5中重量比で1〜3%であることが好ましいが、上述の銀・ニッケル複合酸化物と組合せることにより、さらに容量特性を向上させることができる。具体的には、銀・ニッケル複合酸化物の割合が正極合剤5中重量比で19〜22%であり、かつ、グラファイトが2〜3%であれば、上述した低抵抗特性と放電容量特性が向上する効果をさらに奏することができる。
【0044】
また、本発明において用いられるグラファイトは、平均粒径が10〜20μmであることが好ましい。この粒径であれば、本発明における各正極活物質の粒径と組合せて用いることにより、正極合剤5からなるペレットを高密度に形成することができる。
【0045】
なお、導電助剤としては、グラファイトの他、ケッチェンブラックやアセチレンブラック等のカーボン材料を用いることができる。
【0046】
結着剤は、正極活物質や導電助剤の粒子同士を結着して、充分なペレットの強度を保つために添加することができる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等が挙げられ、これらの1種または2種以上の組合せとして適宜用いることができる。
【0047】
また、正極合剤5には、電池の負極合剤7中の亜鉛粉末と電解液との接触に伴い発生する水素ガスを吸収するための水素吸蔵合金を添加することができる。水素吸蔵合金としては、LaNi
5等のLa−Ni系合金、Lm−Ni系合金(LmはLa富化ミッシュメタル)等のAB5型水素吸蔵合金、Ti等のAB2型水素吸蔵合金、Mg合金、Ca系合金等種々の材料を用いることができる。このうちLaNi
5は、水素吸蔵能が極めて高いため特に好ましい。
【0048】
水素吸蔵合金は、正極合剤5中0.5〜5重量%含まれていれば上記水素吸蔵能を発揮することができる。ただし、電池の容量を高く保つためには酸化銀の割合が少なくならないよう、正極合剤5中0.5〜2重量%含まれていれば好ましい。水素吸蔵合金の態様としては、平均粒径が30〜40μmの合金粉末が用いられる。
(負極合剤)
本発明における負極である負極合剤7は、負極活物質、伝導度安定剤、ゲル化剤、及び電解液を含んでいる。
【0049】
負極活物質としては、亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末が用いられる。伝導度安定剤としては、酸化亜鉛(ZnO)等が用いられる。
【0050】
電解液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、又はこれらの混合溶液を用いることができる。
【0051】
また、ゲル化剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAS)、又はこれらの混合物を用いることができる。これらのゲル化剤を用いることにより、負極合剤7の電解液に対する親液性及び保液性を向上することができる。
【0052】
このうちCMCは、負極合剤7の粘度を適度に保つことができハンドリング性が良好であることから、ゲル化剤として特に用いられている。一方、CMCをゲル化剤として用いた負極合剤7では、ハンドリング性が良好な濃度範囲が狭く、濃度調整のためのプロセスを更に必要とすることから、PASを補完的に添加することが好ましい。
【0053】
これらを考慮すると、ゲル化剤は負極合剤中2〜5重量%含まれていることが好ましい。また、CMCにPASが補完的に添加されたゲル化剤では、ゲル化剤全体に対しPASが3〜15重量%含まれていれば好ましい。
【0054】
また、負極合剤7の粘弾性を向上させるために、粘弾性調整材をさらに添加することができる。この粘弾性調整材は、強アルカリ性である電解液と反応しない非金属の絶縁性粉末であることが好ましい。粘弾性調整材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、及びアクリル樹脂等から選ばれる一つもしくは複数からなる樹脂粉末を用いることができ、特にポリエチレンが取り扱い上容易であり特に好ましい。これらの樹脂粉末は、粒径が110〜350μmのものであればよい。また、負極合剤7に添加する場合には、負極合剤7全体中1〜25重量%添加されていれば好ましい。
【実施例】
【0055】
次に、組成を変更した実施例及び比較例の正極合剤5を用いて扁平形アルカリ一次電池を作製し、本発明の効果を検証した。
(実施例1)
本実施例では、SR626SW型(外径6.8mm、高さ2.6mm)の扁平形アルカリ一次電池を作製した。
【0056】
負極合剤7を構成する各組成物は、負極合剤中に亜鉛合金粉末66重量%、酸化亜鉛(ZnO)3重量%、カルボキシメチルセルロースを3重量%となるようそれぞれ配合した。また電解液として、濃度28%の水酸化ナトリウムを負極合剤中28重量%となるよう配合した。このとき亜鉛合金粉末の平均粒径は150μmとした。これらの組成物を混合し、ゲル状の負極合剤7を作製した。
【0057】
正極合剤5を構成する各組成物は、正極合剤中における重量比がそれぞれ、酸化銀(Ag
2O)65%、銀・ニッケル複合酸化物(AgNiO
2)12%、二酸化マンガン(MnO
2)21%、グラファイト1%、水素吸蔵合金(LaNi
5)1%、となるようそれぞれ配合した。
【0058】
また、Ag
2Oは粒径が75〜300μmに分級された顆粒を用いた。AgNiO
2及びMnO
2については、平均粒径が200μm及び300μmの顆粒状のものをそれぞれ用いた。グラファイトは平均粒径が15μmの粉末状で用いた。LaNi
5は平均粒径が35μmの粉末状で用いた。そして、各組成物を造粒機で混合した正極合剤5をペレット状に圧縮成形し、正極を作製した。
【0059】
このようにして作製された正極合剤5をニッケルメッキが施された鉄製の正極缶2に収容し、その上からセパレータ6を敷設した。また、その正極缶2に圧入となるリング状のガスケット4を挿入した。さらに、セパレータ上に負極合剤7を載置し、この上にガスケット4を介して負極缶3を被せた。そして、正極缶2の開口縁部をかしめることで前述した扁平形アルカリ一次電池1を作製した。
【0060】
尚、セパレータ6は、ポリエチレンフィルム、セロファン及び不織布から構成され、ガスケット4は、ナイロン製である。
(実施例2〜7)
実施例1に対し、正極合剤5中におけるAgNiO
2、MnO
2、グラファイトの配合比(重量%)を表1に示す割合とした点が異なり、その他の構成は、実施例1と同様とした。
【0061】
【表1】
具体的に、実施例2では、正極合剤5中の配合割合を重量比で、AgNiO
214%、MnO
219%、グラファイト1%とした他は、実施例1と同様の構成とした。
【0062】
実施例3では、正極合剤5中の配合割合を重量比で、AgNiO
216%、MnO
217%、グラファイト1%とした他は、実施例1と同様の構成とした。
【0063】
実施例4では、正極合剤5中の配合割合を重量比で、AgNiO
218%、MnO
215%、グラファイト1%とした他は、実施例1と同様の構成とした。
【0064】
実施例5では、正極合剤5中の配合割合を重量比で、AgNiO
219%、MnO
213%、グラファイト2%とした他は、実施例1と同様の構成とした。
【0065】
実施例6では、正極合剤5中の配合割合を重量比で、AgNiO
220%、MnO
211%、グラファイト3%とした他は、実施例1と同様の構成とした。
【0066】
実施例7では、正極合剤5中の配合割合を重量比で、AgNiO
222%、MnO
29%、グラファイト3%とした他は、実施例1と同様の構成とした。
(比較例1)
実施例に対し、正極合剤5中の配合割合を重量比でAg
2O65%、MnO
235%、グラファイト3%、LaNi
51%とした点のみが異なり、その他の構成は、実施例1と同様とした。
(評価)
そして、実施例及び比較例の正極合剤5及びこれを用いた扁平形アルカリ一次電池1を作製し、放電容量を測定した。測定は、室温(24℃)環境下で、実施例、比較例の電池各6個を、負荷抵抗43kΩで連続放電させ、終止電圧(カットオフ)を1.2V及び1.4Vとした際の放電容量(mAh)を測定した。この測定結果の平均を比較したものを表1に示す。
(評価結果)
評価結果を表1に示す。
【0067】
終止電圧を1.2Vとした際の放電容量の平均は、実施例1〜7では27.4〜28.4mAhであった一方で、比較例1では23.8mAhとなり、実施例が若干大きな容量を示した。一方、終止電圧を1.4Vとした際の放電容量の平均は、実施例1〜7では24.0〜25.8mAhであった一方で、比較例1では17.2mAhとなり、両者に大きな差が生じた。
【0068】
これは、Ag
2O以外の活物質として、MnO
2のみを用いた比較例1の場合、AgNiO
2も用いた各実施例と比べて正極合剤5のペレットを高密度にすることができなかったことによるものである。これに対し、各実施例ではペレットの密度を充分高くすることができたことにより、終止電圧が1.2Vの場合の放電容量を大きくすることができたものである。
【0069】
また、MnO
2量が35%を占める比較例1では、終止電圧が1.4Vにおける放電容量が各実施よりも大きく低下した。これは、MnO
2を活物質とした場合に1.4V以上の電圧領域で放電時間を保つことができないことによるものである。このため、正極におけるMnO
2量を重量比で9〜21%に抑制し、Ag
2O及びAgNiO
2の総量を確保することにより、終止電圧が1.4Vの場合でも充分放電容量を維持しながらAg
2Oの量を抑制することができる。
【0070】
また、実施例5〜7に示すように、AgNiO
2が重量比で19%以上であれば、終止電圧を1.4Vとしたときの放電容量がさらに向上した。これらの実施例では、Ag
2O以外の活物質のうち、MnO
2よりも理論容量の大きなAgNiO
2が相対的に多いことから、充分に容量が得られる。その分、導電助剤を多くすることができ、活物質からさらに電荷を取り出しやすくなることから、1.4V以上の電圧領域でさらに容量を得ることができる。
【0071】
このように、正極活物質の一部を酸化銀から二酸化マンガンと銀・ニッケル複合酸化物に置き換えた実施例は、二酸化マンガンのみと置き換えた比較例に比べて、終止電圧が1.2Vの条件でも容量を充分に維持することができた。また、終止電圧が1.4Vの条件では、銀・ニッケル複合酸化物の配合率を多くすることで、放電が進んでも高電圧をさらに維持することが分かった。したがって、このような扁平形アルカリ一次電池であれば、コストを低減しつつ、放電が進んでも終止電圧までの動作時間を充分維持することにより充分な放電容量を得ることができる。