(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883453
(24)【登録日】2021年5月12日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】容器詰飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20210531BHJP
A23L 2/54 20060101ALI20210531BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20210531BHJP
A23L 2/60 20060101ALI20210531BHJP
A23L 2/64 20060101ALI20210531BHJP
A23L 2/68 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L2/54
A23L2/56
A23L2/60
A23L2/64
A23L2/68
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-52018(P2017-52018)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-153123(P2018-153123A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(72)【発明者】
【氏名】田中 正平
(72)【発明者】
【氏名】浅野 裕基
(72)【発明者】
【氏名】本間 大樹
【審査官】
二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第102366141(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102366140(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102366139(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102366138(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第104651046(CN,A)
【文献】
特公昭61−050937(JP,B1)
【文献】
国際公開第2016/136868(WO,A1)
【文献】
特開2006−174753(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103783597(CN,A)
【文献】
特開2002−078463(JP,A)
【文献】
特開2005−015686(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102273692(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第101396161(CN,A)
【文献】
特開昭56−092755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 − 2/68
CAplus/REGISTRY/WPIDS/WPIX(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜250ppmの酢酸と、20〜1500ppmのエチルマルトールと、砂糖、ハチミツ、及び、高甘味度甘味料から選ばれる1種又は2種以上と、ビタミン、タウリン、カフェイン、及び、炭酸から選ばれる1種又は2種以上と、を含有することを特徴とするエナジードリンク。
【請求項2】
10〜50ppmの酢酸を含有することを特徴とする請求項1に記載のエナジードリンク。
【請求項3】
20〜1000ppmのエチルマルトールを含有することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のエナジードリンク。
【請求項4】
20〜100ppmのエチルマルトールを含有することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のエナジードリンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸とエチルマルトールを含有する飲料に関する。より詳細には、酢酸とエチルマルトールを含有するエナジードリンクに適した風味を有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
疲労回復や集中力向上を期待して、手軽に利用できるエナジードリンクを使用する人が増えている。エナジードリンクと表示される清涼飲料の多くは、すっきりした飲み心地とキレの良さを特徴とし、ビタミン、アミノ酸、カフェイン等の機能性成分を含む。また、独特の酸味や香りによって、爽快感を与える。
【0003】
酢酸(食酢)は、古くから飲食品に利用されているが、疲労回復効果、代謝促進、食欲増進、消化吸収促進、高血圧予防など、多くの有用な効果を有し、特定保健用食品や機能性食品の指定を受けている食酢飲料もある。
【0004】
エチルマルトールは、香料として用いられる有機化合物で、カラメルに似た甘い香りを有し、清涼飲料やビールなどに配合される。エチルマルトールの特有の香りを果実フレーバーの劣化臭や劣化味のマスキングに利用した飲料(特許文献1)や、エチルマルトールをグレープ香料の残留感の抑制に利用した飲料(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2016/136868
【特許文献2】特許第5841720号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、酢酸とエチルマルトールを含み、香り、甘さ、酸味のバランスに優れた飲料、とくにエナジードリンクに適した風味を有する容器詰飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討し、酢酸とエチルマルトールの配合量を調整することで、口に含んだ瞬間のトップの香り立ちが良く、甘さと酸味のバランスがとれた飲料が得られることを見出した。さらに、ハチミツや高甘味度甘味料を配合することで、甘味が増強され、エナジードリンクに適した風味になることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(3)に関する。
(1)1〜750ppmの酢酸と、5〜2500ppmのエチルマルトールを含有することを特徴とする飲料;
(2)さらに、ハチミツ、高甘味度甘味料、ビタミン、及び、カフェインから選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の飲料;
(3)前記飲料がエナジードリンクであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の飲料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酢酸とエチルマルトールを含有し、トップの香り立ちがよく、甘さと酸味のバランスに優れ、とくにエナジードリンクに適した容器詰清涼飲料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の飲料は、1〜750ppmの酢酸と、5〜2500ppmのエチルマルトールを含有することを特徴とする。
【0011】
[酢酸]
本発明で使用される酢酸は、酢酸を主成分とする酸味料であり、その種類は特に限定されず、食品添加物として使用される酢酸や、食酢を用いることができる。本発明で使用される食酢としては、例えば、ハトムギ酢、米酢、米黒酢、大麦黒酢、及び粕酢などの穀物酢、りんご酢、ぶどう酢(ワインビネガー)、柿酢、及びバルサミコ酢などの果実酢を含む醸造酢、蒸留酢や濃縮酢などを含む合成酢を挙げることができる。
【0012】
本発明において、酢酸は、飲料全量に対して1〜750ppmの範囲で配合される。1ppmよりも少ないとトップの香り立ちが悪く、750ppmを超えると酢酸臭が強くなり、特にエナジードリンクには適さないからである。好ましくは、酢酸は飲料全量に対して5〜500ppm、より好ましくは、飲料全量に対して10〜250ppmで配合される。
【0013】
[エチルマルトール]
本発明で使用されるエチルマルトールは、香料(食品添加物)として市販されているものであれば特に限定されない。
【0014】
本発明において、エチルマルトールは、飲料全量に対して5〜2500ppmの範囲で配合される。5ppmよりも少ないと甘さが弱く、2500ppmを超えるとエチルマルトール特有の甘いカラメルのような香りが強くなり、特にエナジードリンクには適さないからである。好ましくは、エチルマルトールは飲料全量に対して10〜2000ppm、より好ましくは、飲料全量に対して20〜1500ppmで配合される。
【0015】
[ハチミツ]
本発明の飲料には、酢酸とエチルマルトールに加えて、甘味料としてハチミツを配合してもよい。ハチミツを配合することで、酢酸とエチルマルトールによる香りと酸味のバランスを損なうことなく、甘さを増強することができる。
【0016】
本発明で使用されるハチミツは、食用として利用可能なものであれば、液体状や固形状、または粉末状であってもよく、加工ハチミツであってもよい。例えば、純粋ハチミツや精製ハチミツのほか、酵素失活ハチミツ、ハニーパウダー、巣ハチミツを使用してもよい。ハチミツの原料も特に限定されず、レンゲ、クローバー、アカシア、チェリー、レモン、オレンジ、ミカン、リンゴ、ナタネ、ラズベリー、ローズマリー、ヒマワリ、ラベンダー、タンポポ、そば、はぜ等を利用することができる。
【0017】
[高甘味度甘味料]
本発明の飲料には、酢酸とエチルマルトールに加えて、高甘味度甘味料を配合してもよい。高甘味度甘味料を配合することで、甘味成分を除く他成分の量を大幅に変動させることなく、十分な甘味を付与し、エナジードリンクに適した甘味を実現することができる。
【0018】
高甘味度甘味料の含有量は、使用する高甘味度甘味料にもよるが、本発明に係る飲料全量に対して、好ましくは、0.001重量%以上1重量%以下であり、さらに好ましくは、0.005重量%以上0.6重量%以下である。高甘味度甘味料の量が多すぎると後味が悪くなり、少なすぎると十分な甘味を与えることができないからである。
【0019】
本発明で使用される高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、タウマチン、サッカリン、ネオテーム、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、スクラロース、ネオテーム、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、カンゾウ抽出物、ブラジルカンゾウ抽出物等を挙げることができ、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
[その他の甘味料]
ハチミツや高甘味度甘味料の他、飲料に通常用いられるショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖類、キシリトール、D−ソルビトール等の低甘味度甘味料を配合してもよい。
【0021】
[カフェイン]
本発明の飲料には、カフェインを適量配合してもよい。カフェインは、覚醒作用および強心作用を有するため、エナジードリンクに好適である。
【0022】
[ビタミン類]
本発明の飲料には、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE等の各種ビタミン類から選ばれる1種又は2種以上を適量配合してもよい。特に、ビタミンB群から選ばれるビタミン類は疲労回復に効果があるため、エナジードリンクに好適である。
【0023】
[果汁]
本発明の飲料には、果汁を配合してもよい。果実の種類は、特に限定されるものではないが、みかん、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、ユズ、シークワーサー、タンジェリン、テンプルオレンジ、タンジェロ、カラマンシー、デコポン、ポンカン、イヨカン等の柑橘類、マスカットや巨峰等のぶどう類、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、アサイー、キウイフルーツ、ブドウ、マスカット、モモ、リンゴ、パイナップル、グァバ、バナナ、マンゴー、キウイ、アセロラ、プルーン、パパイヤ、パッションフルーツ、ウメ、ナシ、アンズ、ライチ、メロン、スイカ、サクランボ、スモモ、西洋ナシ等が挙げられ、2種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
[ミネラル成分]
本発明の飲料には、カルシウム、鉄、ナトリウム、マグネシウムおよびカリウム等の各種ミネラル成分を配合してもよい。ミネラル成分には、免疫力向上、代謝活性化、疲労回復などに役立つことが知られているからである。
【0025】
[アミノ酸]
本発明の飲料には、各種アミノ酸を配合してもよい。アミノ酸としては、アルギニン、リジン、オルニチン、ヒスチジンおよびトリプトファン等の塩基性アミノ酸や、バリン、ロイシンおよびイソロイシンの分岐鎖アミノ酸が好ましい。塩基性アミノ酸や分岐鎖アミノ酸は、アンチエイジング、生活習慣病の予防、疲労回復、成長ホルモンの分泌等の体内機能改善に役立つことが知られている。
【0026】
[その他の活力成分・機能性成分]
本発明の飲料には、タウリン、高麗人参エキス、ガラナエキス、マカエキス、ローヤルゼリー等の天然活力成分を含んでいてもよい。これにより、飲料の機能性がより高いものとなる。また、食物繊維等の各種機能成分を含んでいてもよい。
【0027】
[酸味料]
本発明の飲料には、酸味の調製等のために、クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、リン酸、又はそれらの塩類等の酸味料を適宜配合してもよい。
【0028】
本発明の飲料には、上記した成分のほか、本発明の目的を損なわない範囲で他の香料、着色剤、希釈剤、乳化剤、増粘安定剤、酸化防止剤、保存料、防腐剤等の食品添加物を添加してもよい。
【0029】
[炭酸]
本発明の飲料は炭酸飲料であってもよい。本発明の範囲で酢酸とエチルマルトールを含有する限り、炭酸を配合しても、飲料の香りと味のバランスは損なわれない。
【0030】
炭酸を配合する場合、炭酸ガスの圧力は1.0〜4.0ガスボリューム、好ましくは1.5〜3.0ガスボリューム、より好ましくは1.8〜2.5ガスボリュームである。なお、ガスボリュームとは、標準状態(1気圧、0℃)において、飲料中に溶解している炭酸ガス体積の飲料体積に対する比であり、飲料中の炭酸ガスの含有量を表す単位である。
【0031】
[糖度]
本発明の飲料の糖度(Brix値)は、0.3〜20であり、5〜20であることが好ましい。Brix値が0.3未満では使用できる酸味料に制限が出るため酸味が弱くなり、甘さと酸味のバランスが悪くなる。また、Brix値が20以上では甘味が強過ぎるため、止渇性に欠けて飲みにくくなる。なお、糖度とは、20℃における糖用屈折計の示度であり、例えばデジタル屈折計Rx−5000(アタゴ社製)を使用して20℃で測定した固形分量とすることができる。
【0032】
[pH]
本発明の飲料のpHは2.5〜4.2であることが好ましい。pHが2.5未満では酸味が鋭過ぎるため飲みにくく、pHが4.2以上では酸味がぼやけて飲みにくいためである。
【0033】
[エナジードリンク]
本発明の飲料は、酢酸とエチルマルトールにより、エナジードリンクに好適な爽快感のある酸味と香りを有する。なお、エナジードリンクとは、ビタミン類(特に、ビタミンB群から選ばれるビタミン類)、アミノ酸、滋養強壮に効果のあるとされる生薬・漢方薬由来成分のエキス、カフェインなど、疲労回復や健康維持に効果が期待できると標榜される成分を含む清涼飲料である。薬事法上、医薬品または医薬部外品に分類される栄養ドリンク(ドリンク剤)とは異なり、エナジードリンクは清涼飲料水や炭酸飲料に分類されるため、疲労時やスポーツ時に手軽に飲用することができる。
【0034】
[容器詰飲料]
本発明の飲料は、従来公知の方法で上記飲料を飲料用容器に充填した容器詰飲料として提供される。飲料用容器としては、ガラス瓶、金属缶、紙、プラスチックなどが利用できるが、これらに限定されない。本発明の飲料は開栓時のトップの香り立ちがよく、爽快感を与えるため、エナジードリンクに好適である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
1.原材料
エチルマルトール(東京化成工業(株)社製)
酢酸(含量:30%、「大洋製薬(株)社製」)
甘味料:砂糖、ハニーパウダー(「Honey powder」、Haldin社製)、スクラロース
ビタミン類:ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンB12
タウリン
カフェイン
クエン酸
パインアップルフレーバー
【0037】
2.製造方法
準備した原料を用い、下記表1に示す配合比率となるように混合して、実施例1〜14および比較例1〜6の飲料を作製した。なお、実施例14の飲料については、混合した後に炭酸を付加した(炭酸ガスボリューム=2.1)。
【0038】
3.評価
下表に示す、4つの項目:「トップの香り立ちの良さ」、「甘さの良さ」、「酸味の良さ」、「甘さの余韻」について、訓練されたパネラー3名により、5段階で官能評価を行い、平均値を算出した。結果は、表2にまとめて示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
表2に示されるように、酢酸の配合量が1〜750ppm、及びエチルマルチトールの配合量が5〜2500ppmの範囲において、評価項目のいずれについても好適な結果が得られた。
【0042】
エチルマルトールにより好ましい甘さが付与され、さらに酢酸を併用することでトップの香り立ちも良くなることがわかる。酢酸の配合量が増加すると香り立ちは良くなるが、多すぎると酸味の良さの評価が悪くなる。また、高甘味度甘味料であるスクラロースを適量添加した場合、甘さの良さと香り立ちに影響を与えないが、添加量が多くなると、舌の上に甘さが残るため、甘さの余韻が好ましいものではなくなり、後味が悪くなる。カフェインやビタミンBの添加は、総じて評価を高くし、ややシャープな苦味がありエナジードリンクらしい風味を強めた。また、炭酸ガスの添加は、他の評価項目に影響を与えることなく、爽快感を向上させた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の飲料は、トップの香り立ちがよく、甘さと酸味のバランスに優れ、とくにエナジードリンクのような容器詰飲料に好適である。