(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記旋回羽根本体は、径方向外側に位置する湾曲形状の先端部と、径方向内側に位置し、前方側に切り欠き部を有する根本部と、を有する請求項2から4のいずれか一項に記載の燃焼器ノズル。
前記旋回羽根本体の平均反り線に対して前記旋回羽根本体の前縁で接する接線と、前記軸線とでなす角度が、前記旋回羽根本体の前縁の径方向内側では0度から10度になっており、前記旋回羽根本体の前縁の径方向外側では、前記旋回羽根本体の前縁の径方向内側の角度よりも大きい角度になっている請求項2から5のいずれか一項に記載の燃焼器ノズル。
前記第一筒部における前記軸線方向の後方側の端縁を含む部分は、前方側から後方側に向かうに従って径方向の寸法が漸次縮小している請求項1から6のいずれか一項に記載の燃焼器ノズル。
前記流路形成筒は、前記第一筒部の前記軸線方向後方側の端部に接続され、該第一筒部よりも大きな内径寸法を有する導入部を有する請求項1から7のいずれか一項に記載の燃焼器ノズル。
前記第二筒部における前記軸線方向の前方側の端縁は、該軸線を含む断面視で、後方側から前方側に向かうに従って径方向の寸法が漸次縮小している請求項1から8のいずれか一項に記載の燃焼器ノズル。
前記軸体の直径をD、前記第一筒部の内径をBとすると、直径Dと内径Bの比D/Bは、0.5≦D/B≦0.8である請求項1から9のいずれか一項に記載の燃焼器ノズル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような燃焼器の内部では、燃料と空気とが流通する過程で、フラッシュバックと呼ばれる現象が生じる場合がある。フラッシュバックとは、燃焼器内における予期しない領域に滞留している燃料に、火炎が伝播することで異常な燃焼を生じる現象である。特に、上記のノズルの前方側では、旋回羽根による旋回流が形成されることから、その渦芯に燃料が滞留することで上記フラッシュバックが生じる虞がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、フラッシュバックの発生を抑制することが可能な燃焼器ノズル、燃焼器及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様によれば、燃焼器ノズルは、軸線に沿って延びる主外周面と、該主外周面から前記軸線方向の前方側に向かうにしたがって漸次縮径する縮径外周面とを有する軸体と、前記軸体の主外周面から径方向外側に向かって延出するとともに前記軸線の周方向に間隔をあけて複数が設けられ、表面に燃料を噴出する燃料噴出孔が形成された旋回羽根と、前記主外周面
のみを外周側から囲う第一筒部、及び、該第一筒部に連続して前記縮径外周面
のみを外周側から囲うとともに前記軸線方向の前方側に向かうにしたがって漸次縮径する第二筒部を有する流路形成筒と、を備える。
【0007】
この構成では、軸体の主外周面の外周側に流路形成筒が設けられている。さらに、この流路形成筒の第二筒部は、軸線方向の前方側に向かうにしたがって漸次縮径している。これにより、流路形成筒の内周側を流れる流体の軸線方向における流速を高めることができる。すなわち、軸体の前方側に形成される旋回流の渦芯に対して、空気を積極的に供給することができる。したがって、当該渦芯における燃料濃度を下げることができるとともに、フラッシュバックが発生する虞を低減することができる。
【0008】
本発明の第二の態様によれば、上記の燃焼器ノズルでは、前記旋回羽根は、前記流路形成筒よりも内周側に位置する支持部と、該流路形成筒よりも外周側に位置する旋回羽根本体と、を有し、前記燃料噴出孔は、該旋回羽根本体のみに形成されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、燃料噴出孔が外周側に位置する旋回羽根本体のみに形成されている。したがって、旋回羽根本体よりも内周側に位置する支持部の前方側で、燃料濃度をさらに下げることができる。すなわち、渦芯における燃料濃度を下げることができるとともに、フラッシュバックが発生する虞をさらに低減することができる。
【0010】
本発明の第三の態様によれば、上記の燃焼器ノズルでは、前記支持部は、前記軸線方向の後方側から前方側に向かって延びるとともに、該軸線を対称軸とする翼断面形状を有していてもよい。
【0011】
この構成によれば、軸線方向の後方側から流れてきた流体が支持部の周囲を通過する際の圧力損失の発生を抑制することができる。これにより、流路形成筒の内周側を流れる流体の軸線方向における流速を高めることができる。すなわち、軸体の前方側に形成される旋回流の渦芯に対して、空気を積極的に供給することができる。したがって、当該渦芯における燃料濃度を下げることができるとともに、フラッシュバックが発生する虞を低減することができる。
【0012】
本発明の第四の態様によれば、上記の燃焼器ノズルでは、前記支持部の後方側の端縁、及び旋回羽根本体の後方側の端縁は互いに面一であってもよい。
【0013】
この構成によれば、支持部の前方側の端縁、及び旋回羽根本体の前方側の端縁が互いに面一であることから、これら端縁の周辺で流体の流れに乱れを生じたり、圧力損失を生じたりする虞を低減することができる。
【0014】
本発明の第五の態様によれば、上記の燃焼器ノズルでは、前記旋回羽根本体は、径方向外側に位置する湾曲形状の先端部と、径方向内側に位置し、前方側に切り欠き部を有する根本部と、を有してよい。
【0015】
この構成によれば、旋回羽根本体に切り欠き部が形成されていることによって、旋回羽根本体の径方向内側を流れる空気の軸線方向における流速を更に高めることができる。すなわち、軸体の前方側に形成される旋回流の渦芯に対して、更なる空気を供給することができる。
【0016】
本発明の第六の態様によれば、上記の燃焼器ノズルでは、前記旋回羽根本体の平均反り線に対して前記旋回羽根本体の前縁で接する接線と、前記軸線とでなす角度が、前記旋回羽根本体の前縁の径方向内側では0度から10度になっており、前記旋回羽根本体の前縁の径方向外側では、前記旋回羽根本体の前縁の径方向内側の角度よりも大きい角度になっていてよい。
【0017】
この構成によれば、旋回羽根本体の径方向内側の旋回角度を小さくすることによって、旋回羽根本体の径方向内側を流れる空気の軸線方向における流速を更に高めることができる。すなわち、軸体の前方側に形成される旋回流の渦芯に対して、更なる空気を供給することができる。
【0018】
本発明の第七の態様によれば、上記の燃焼器ノズルでは、前記第一筒部における前記軸線方向の後方側の端縁を含む部分は、前方側から後方側に向かうに従って径方向の寸法が漸次縮小していてもよい。
【0019】
この構成によれば、第一筒部の内周側に流体が流入する際に、該流体の流れに乱れを生じたり、圧力損失を生じたりする虞を低減することができる。
【0020】
本発明の第八の態様によれば、上記の燃焼器ノズルでは、前記流路形成筒は、前記第一筒部の前記軸線方向後方側の端部に接続され、該第一筒部よりも大きな内径寸法を有する導入部を有してもよい。
【0021】
ここで、流路形成筒と軸体とによって囲まれる空間の断面積は、当該空間内を流通する流体に圧力損失が生じないように、軸線方向の全域にわたって一定であることが望ましい。上記のような構成では、導入部の内径が第一筒部の内径よりも大きいことから、支持部が設けられていることによる上記断面積の減少分を、導入部によって補うことができる。
【0022】
本発明の第九の態様によれば、上記の燃焼器ノズルでは、前記第二筒部における前記軸線方向の前方側の端縁は、該軸線を含む断面視で、後方側から前方側に向かうに従って径方向の寸法が漸次縮小していてもよい。
【0023】
この構成によれば、第二筒部の内周側から流体が流れ出る際に、該流体の流れに乱れを生じたり、圧力損失を生じたりする虞を低減することができる。
【0024】
本発明の第九の態様によれば、上記の燃焼器ノズルでは、前記軸体の直径をD、前記第一筒部の内径をBとすると、直径Dと内径Bの比D/Bは、0.5≦D/B≦0.8であってよい。
【0025】
この構成によれば、第一筒部の内側の空気流路を確保することによって、空気流路中を流通する空気の流量を増やして、渦芯に向かう空気を増やすことができる。すなわち、軸体の前方側に形成される旋回流の渦芯に対して、更なる空気を供給することができる。
【0026】
本発明の第十の態様によれば、燃焼器は、上記いずれか一の態様に係る燃焼器ノズルと、前記燃焼器ノズルを外周側から覆う筒体と、を備える。
【0027】
この構成によれば、フラッシュバックの発生が抑制された燃焼器を得ることができる。
【0028】
本発明の第十一の態様によれば、ガスタービンは、高圧空気を生成する圧縮機と、前記高圧空気と燃料とを混合し、燃焼させて燃焼ガスを生成する上記第十の態様に係る燃焼器と、前記燃焼ガスによって駆動されるタービンと、を備える。
【0029】
この構成によれば、安定的に運転可能なガスタービンを得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、フラッシュバックの発生を抑制することができる燃焼器ノズル、燃焼器及びガスタービンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るガスタービン100は、高圧空気を生成する圧縮機1と、高圧空気に燃料を混合して燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器3と、燃焼ガスによって駆動されるタービン2と、を備えている。
【0033】
圧縮機1は、主軸線Amに沿って延びるとともに、該主軸線Am回りに回転可能な圧縮機ロータ11と、圧縮機ロータ11を外周側から覆う圧縮機ケーシング12と、を有している。圧縮機ロータ11は、主軸線Amを中心とする円柱状をなしている。圧縮機ロータ11の外周面には、主軸線Am方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機動翼段13が設けられている。各圧縮機動翼段13は、圧縮機ロータ11の外周面上で、主軸線Amの周方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機動翼14を有している。
【0034】
圧縮機ケーシング12は、主軸線Amを中心とする円筒状をなしている。圧縮機ケーシング12の内周面には、主軸線Am方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機静翼段15が設けられている。各圧縮機静翼段15は、圧縮機ケーシング12の内周面上で、主軸線Amの周方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機静翼16を有している。上記の圧縮機動翼段13、及び圧縮機静翼段15は、主軸線Am方向に互い違いになるように交互に配列されている。
【0035】
燃焼器3は、上記の圧縮機ケーシング12と、後述するタービンケーシング22との間の領域に、主軸線Amの周方向に間隔をあけて複数設けられている。各燃焼器3は、上記の主軸線Amに対して交差する方向に延びる燃焼器軸線Acを中心とする筒状をなしている。これら燃焼器3は、いずれも上記圧縮機ケーシング12の内側の空間と連通されている。すなわち、当該圧縮機ケーシング12内を流通する高圧空気は、圧縮機ケーシング12を経て複数の燃焼器3ごとに分配される。
【0036】
タービン2は、主軸線Amに沿って延びるとともに、該主軸線Am回りに回転可能なタービンロータ21と、タービンロータ21を外周側から覆うタービンケーシング22と、を有している。タービンロータ21は、主軸線Amを中心とする円柱状をなしている。タービンロータ21の外周面には、主軸線Am方向に間隔をあけて配列された複数のタービン動翼段23が設けられている。各タービン動翼段23は、タービンロータ21の外周面上で、主軸線Amの周方向に間隔をあけて配列された複数のタービン動翼24を有している。
【0037】
タービンケーシング22は、主軸線Amを中心とする円筒状をなしている。タービンケーシング22の内周面には、主軸線Am方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼段25が設けられている。各タービン静翼段25は、タービンケーシング22の内周面上で、主軸線Amの周方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼26を有している。上記のタービン動翼段23、及びタービン静翼段25は、主軸線Am方向に互い違いになるように交互に配列されている。
【0038】
圧縮機ロータ11とタービンロータ21とは、主軸線Am方向に同軸上で連結されることで、ガスタービンロータ91を形成する。また、圧縮機ケーシング12とタービンケーシング22とは、主軸線Am方向に連結されることで、ガスタービンケーシング92を形成する。すなわち、圧縮機ロータ11とタービンロータ21は、ガスタービンロータ91として、主軸線Am回りに一体に回転可能とされている。
【0039】
続いて、燃焼器3の詳細な構成について、
図2と
図3を参照して説明する。燃焼器3は、燃焼器軸線Acを中心とする筒状の燃焼器本体3Mと、燃焼器本体3Mに燃料を供給する燃料ノズル3Nと、を有している。燃焼器本体3Mは、燃料ノズル3Nを収容する第一筒体41と、燃焼器軸線Acに沿って第一筒体41に接続される第二筒体42と、を有している。なお、以降の説明では、燃焼器軸線Acの延びる方向において、第二筒体42から見て第一筒体41が位置する側を後方側と呼び、第一筒体41から見て第二筒体42が位置する側を前方側と呼ぶ。すなわち、燃焼器3中で生成された燃焼ガスは後方側から前方側に向かって流通する。
【0040】
第一筒体41の径寸法は、第二筒体42の径寸法よりも小さく設定されている。これにより、第一筒体41の前方側の端部は、第二筒体42の後方側の端部内に挿通された状態となっている。第一筒体41は、燃焼器軸線Acを中心とする円筒状をなしている。第二筒体42は、後方側から前方側に向かうにしたがって次第に縮径している。燃料ノズル3Nは、主として第二筒体42内に向けて後方側から燃料を供給する。より具体的には、燃料ノズル3Nは、第一燃料ノズル51(燃焼器ノズル)と、第二燃料ノズル52とを有している。
【0041】
図4又は
図5に拡大して示すように、第一燃料ノズル51は、燃焼器軸線Acの周方向に間隔をあけて複数設けられている。各第一燃料ノズル51は、外周側から筒状のノズル筒70によって覆われている。ノズル筒70は、第一軸線を中心とする円筒状をなしている。ノズル筒70のさらに前方側には延長管80が設けられている。第一燃料ノズル51は、燃焼器軸線Acに平行な第一軸線A1(軸線)に沿って延びる軸体51Mと、軸体51Mの外周側で周方向に間隔をあけて配列された複数の旋回羽根60と、軸体51Mを外周側から覆う筒状の流路形成筒51Tと、を有している。
【0042】
軸体51Mは、第一軸線A1方向から見て円形の断面を有している。軸体51Mは、第一軸線A1方向の後方側の部分をなす軸体主部51Bと、軸体主部51Bと一体に形成された縮径部51Sと、を有している。軸体主部51Bは、第一軸線A1方向の全域にわたって一様な外径を有している。一方で、縮径部51Sは第一軸線A1方向の後方側から前方側に向かうにしたがって漸次縮径することで、尖頭状をなしている。ここで、軸体主部51Bの外周面は主外周面Pmとされている。本実施形態における主外周面Pmは、第一軸線A1方向の全域にわたって同一の外径寸法を有している。縮径部51Sの外周面は縮径外周面Psとされている。
【0043】
各旋回羽根60は、軸体51Mの外周面に接続される支持部61と、支持部61の径方向外側に設けられた旋回羽根本体62と、を有している。なお、詳しくは後述するが、支持部61とは、旋回羽根60のうちの流路形成筒51Tよりも内周側に位置する部分を指し、旋回羽根本体62とは、当該流路形成筒51Tよりも外周側に位置する部分を指している。すなわち、旋回羽根60は流路形成筒51Tを径方向に貫通するように設けられている。
【0044】
支持部61は、軸体主部51Bの主外周面Pm上から径方向外側に向かって延出する板状をなしている。旋回羽根本体62は、第一軸線A1方向において、上記の支持部61よりも大きな寸法を有している。具体的には、旋回羽根本体62の前方側の端部を含む部分は、第一軸線A1方向において、支持部61の前方側の端部よりもさらに前方側に位置している。一方で、旋回羽根本体62の後方側の端縁は、支持部61の前方側の端縁と面一とされている。すなわち、これら後方側の端縁同士は、第一軸線A1の径方向に連続する一つの面をなしている。
【0045】
各旋回羽根本体62は、第一軸線A1方向の後方側から前方側に向かうにしたがって周方向によじれる翼面を有している。より具体的には、旋回羽根本体62は、径方向から見て周方向の一方側に湾曲した翼断面形状を有している。すなわち、旋回羽根本体62の周方向一方側の面は、当該一方側に向かって曲面上に突出している。一方で、旋回羽根本体62の周方向他方側の面は、当該他方側に向かって曲面上に凹没している。
【0046】
さらに、旋回羽根本体62の表面(すなわち、周方向両側を向く各面)上には、燃料供給源から導かれた燃料を外部に噴出する複数の第一噴出孔H1(燃料噴出孔)が形成されている。これら複数の第一噴出孔H1同士は、旋回羽根本体62の表面上で、第一軸線A1方向及び径方向に互いに間隔をあけて配置されている。なお、上記支持部61には、このような第一噴出孔H1は形成されていない。すなわち、本実施形態では、旋回羽根本体62のみに第一噴出孔H1が形成されている。
【0047】
流路形成筒51Tは、第一軸線A1を中心とする筒状をなしている。より詳細には、流路形成筒51Tは、上記の主外周面Pmを外周側から囲う第一筒部T1と、第一筒部T1に連続して上記の縮径外周面Psを外周側から囲う第二筒部T2と、を有している。すなわち、外径寸法が一定である軸体主部51Bの外周側には第一筒部T1が設けられ、外径寸法が漸次縮小する縮径部51Sの外周側には第二筒部T2が設けられている。軸体51Mの外周面と流路形成筒51Tの内周面との間に形成された空間は、後方側から導かれた空気を流通させるための空気流路Fとされている。
【0048】
第一筒部T1は、第一軸線A1方向に延びる直管状をなしている。すなわち、第一軸線A1方向の全域にわたって同一の内径寸法、及び外径寸法を有している。第一筒部T1は、径方向における支持部61の寸法の分だけ、主外周面Pmから径方向外側に離間した位置に設けられている。言い換えれば、第一筒部T1の内周面は、支持部61の外周側の端部と接続されている。流路形成筒51Tの外周面上からは、支持部61と一体に接続された旋回羽根本体62が径方向外側に向かって延びている。
【0049】
第二筒部T2は、上記第一筒部T1の前方側の端部に連続するように一体に接続されている。言い換えれば、第一筒部T1と第二筒部T2との間には段差等が形成されていない。第二筒部T2は、第一軸線A1方向の前方側に向かうにしたがって漸次縮径している。さらに、第二筒部T2の内周面と軸体51M(縮径部51S)の縮径外周面Psとによって囲まれる空間(空気流路F)の断面積は、第一軸線A1方向の全域にわたって一定とされている。言い換えれば、第二筒体42の内径寸法の値は、縮径外周面Psの外径寸法の値と、上記の断面積の値とに基づいて適宜決定される。
【0050】
第二燃料ノズル52は、燃焼器軸線Ac上に配置されている。すなわち、第二燃料ノズル52は、複数の第一燃料ノズル51によって外周側を囲まれている。より詳しくは、第二燃料ノズル52は、第一軸線A1に沿って延びる第二燃料ノズル本体52Mと、この第二燃料ノズル本体52Mの前方側に延びる保炎器52Cと、を有している。
【0051】
第二燃料ノズル本体52Mの内部には、燃料を流通させるための流路(図示省略)が形成されている。第二燃料ノズル本体52Mの前方側端部には、この燃料を前方側に向かって吹き出すための第二噴出孔H2が形成されている。すなわち、上記の流路を経て供給された燃料が、第二噴出孔H2を通じて前方側に向かって吹き出される。また、この第二噴出孔H2の近傍には、第二噴出孔H2から吹き出された燃料に着火するための着火器(図示省略)が設けられている。保炎器52Cは、第二燃料ノズル本体52Mの前方側端部を外周側から覆うコーン状の部材である。
【0052】
上記のように構成されたガスタービン100の動作について説明する。ガスタービン100を運転するに当たっては、まず外部の駆動源によって圧縮機ロータ11(ガスタービンロータ91)を回転駆動する。圧縮機ロータ11の回転に伴って外部の空気が順次圧縮され、高圧空気が生成される。この高圧空気は、圧縮機ケーシング12を通じて燃焼器3内に供給される。燃焼器3内では、燃料ノズル3Nから供給された燃料がこの高圧空気に混合されて燃焼し、高温高圧の燃焼ガスが生成される。燃焼ガスはタービンケーシング22を通じてタービン2内に供給される。タービン2内では、タービン動翼段23、及びタービン静翼段25に燃焼ガスが順次衝突することで、タービンロータ21(ガスタービンロータ91)に対して回転駆動力が与えられる。この回転エネルギーは、軸端に連結された発電機G等の駆動に利用される。
【0053】
次に、燃焼器3の詳細な動作について、
図3を再び参照して説明する。同図に示すように、圧縮機1で生成された高圧空気は、燃焼器軸線Acの一方側(後方側)から第一筒体41内に供給される。第一筒体41内に導入された高圧空気は、上記のノズル筒70の内周側の空間を経て、前方側の第二筒体42内に到達する。ここで、ノズル筒70内では、上記の旋回羽根60の翼面上に形成された第一噴射孔63から噴射された燃料が、高圧空気に混合される。これにより、ノズル筒70内では、燃料と高圧空気とを含む予混合ガスが生成される。このとき、予混合ガスの流れには、旋回羽根60によって与えられた旋回流成分が含まれている。
【0054】
一方で、第二燃料ノズル52の第二噴出孔H2から噴射された燃料は、着火器(図示省略)によって着火されることで、第二燃料ノズル52から前方側に向かって延びる拡散燃焼火炎を形成する。この拡散燃焼火炎が上記ノズル筒70内に存在する予混合ガスに伝播することで、第一燃料ノズル51の前方側には、予混合燃焼火炎が形成される。この予混合燃焼火炎は、上記の旋回流成分を伴って、第二筒体42内で後方側から前方側に向かって延びるとともに、高温高圧の燃焼ガスを生成する。燃焼ガスは、第二筒内を後方側から前方側に向かって流れた後、上記のタービンケーシング22内に導入されてタービン2を駆動する。
【0055】
ところで、上記のような燃焼器3の内部では、燃料と空気とが流通する過程で、フラッシュバックと呼ばれる現象が生じる場合がある。フラッシュバックとは、燃焼器3内における予期しない領域に滞留している燃料に、火炎が伝播することで異常な燃焼を生じる現象である。特に、上記の第一燃料ノズル51の前方側では、旋回羽根60による旋回流が形成されることから、その渦芯に燃料が滞留することで上記フラッシュバックが生じる虞がある。
【0056】
しかしながら、本実施形態では、軸体51Mの主外周面Pmの外周側に流路形成筒51Tが設けられている。さらに、この流路形成筒51Tの第二筒部T2は、軸線方向の前方側に向かうにしたがって漸次縮径している。これにより、流路形成筒51Tの内周側を流れる流体(空気)の第一軸線A1方向における流速を高めることができる。すなわち、軸体51Mの前方側に形成される旋回流の渦芯に対して、空気を積極的に供給することができる。したがって、当該渦芯における燃料濃度を下げることができるとともに、フラッシュバックが発生する虞を低減することができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、第一噴出孔H1が旋回羽根本体62のみに形成されている。したがって、旋回羽根本体62よりも内周側に位置する支持部61の前方側で、燃料濃度をさらに下げることができる。すなわち、渦芯における燃料濃度を下げることができるとともに、フラッシュバックが発生する虞をさらに低減することができる。
【0058】
加えて、本実施形態では、支持部61の前方側の端縁、及び旋回羽根本体62の前方側の端縁が互いに面一であることから、これら端縁の周辺で流体の流れに乱れを生じたり、圧力損失を生じたりする虞を低減することができる。
【0059】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について
図6を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。本実施形態では、旋回羽根60における支持部61の構成が上記第一実施形態とは異なっている。すなわち、第一実施形態では、径方向から見て支持部61が矩形の断面を有している例について説明した。
図6に示すように、本実施形態では、径方向から見て、支持部61の断面形状は、翼型をなしている。より具体的には、支持部61は第一軸線A1方向の後方側から前方側に向かって延びるとともに、当該第一軸線A1を対称軸とする翼断面形状を有している。さらに言い換えれば、支持部61の周方向両側の面は、当該周方向両側に向かって曲面上に膨らむ紡錘形をなしている。さらに、支持部61の前縁(第一軸線A1方向の後方側の端縁)は、後縁(第一軸線A1方向の前方側の端縁)よりも周方向における寸法が大きい。
【0060】
このような構成によれば、第一軸線A1方向の後方側から流れてきた流体が支持部61の周囲を通過する際の圧力損失の発生を抑制することができる。これにより、流路形成筒51Tの内周側を流れる流体の軸線方向における流速を高めることができる。すなわち、軸体51Mの前方側に形成される旋回流の渦芯に対して、空気を積極的に供給することができる。したがって、当該渦芯における燃料濃度を下げることができるとともに、フラッシュバックが発生する虞を低減することができる。
【0061】
[第三実施形態]
続いて、本発明の第三実施形態について
図7を参照して説明する。なお、上記各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。本実施形態では、流路形成筒51Tの構成が上記各実施形態とは異なっている。本実施形態では、流路形成筒51Tは、上述の第一筒部T1及び第二筒部T2に加えて、第一筒部T1の後方側の端部に接続された導入部T3を有している。
【0062】
より具体的には、この導入部T3は第一軸線A1方向において、上記支持部61が設けられる位置と対応する位置に設けられている。言い換えれば、支持部61は、導入部T3の後方側の端部から前方側の端部までの間の領域内に配置されている。
【0063】
さらに、導入部T3は、第一筒部T1よりも大きな内径寸法を有している。より具体的には、導入部T3は、第一軸線A1方向の後方側から前方側に向かうにしたがって漸次縮径している。すなわち、導入部T3の後方側の端部における開口径は、前方側の端部における開口径よりも大きい。
【0064】
加えて、本実施形態では、流路形成筒51Tの前方側の端部及び後方側の端部が、上記各実施形態とは異なる形状とされている。より具体的には、流路形成筒51Tの後方側の端部は、第一軸線A1を含む断面視で、前方側から後方側に向かうにしたがって次第に薄肉となるように形成されている。より詳細には、流路形成筒51T(第一筒部T1)の後方側の端部は、前方側から後方側に向かうにしたがって、径方向の寸法が漸次小さくなっている。同様に、流路形成筒51T(第二筒部T2)の前方側の端部は、後方側から前方側に向かうにしたがって、径方向の寸法が漸次縮小している。
【0065】
この構成によれば、上記のように第一筒部T1の後方側の端部が薄肉となるように形成されていることから、当該第一筒部T1の内周側に流体が流入する際に、該流体の流れに乱れを生じたり、圧力損失を生じたりする虞を低減することができる。また、第二筒部T2の前方側の端部が薄肉となるように形成されていることから、当該第二筒部T2の内周側から流体が流れ出る際に、該流体の流れに乱れを生じたり、圧力損失を生じたりする虞を低減することができる。
【0066】
さらに、上記の構成では、流路形成筒51Tは導入部T3を有している。ここで、流路形成筒51Tと軸体51Mとによって囲まれる空間(空気流路F)の断面積は、当該空間内を流通する流体に圧力損失が生じないように、第一軸線A1方向の全域にわたって一定であることが望ましい。上記のような構成では、導入部T3の内径が第一筒部T1の内径よりも大きいことから、支持部61が設けられていることによる上記断面積の減少分を、導入部T3によって補うことができる。これにより、空気流路F中を流通する空気の流れに圧力損失を生じる虞が低減され、渦芯に向かって効率的に空気を供給することができる。つまり、より効果的にフラッシュバックの抑制を図ることができる。
【0067】
[第四実施形態]
続いて、本発明の第四実施形態について
図8を参照して説明する。なお、上記各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。本実施形態では、旋回羽根本体62の構成が上記各実施形態とは異なっている。本実施形態の旋回羽根本体62Eは、切り欠き部66を有している。
【0068】
図8に示すように、本実施形態の旋回羽根60は、軸体51Mの外周面に接続される支持部61と、支持部61の径方向外側に設けられて、切り欠き部66を有する旋回羽根本体62Eと、を有している。本実施形態の旋回羽根本体62Eは、旋回羽根本体62Eの前方側の端部から旋回羽根本体62Eの後方側の端部に亘って流路形成筒51Tと接続されていない。
旋回羽根本体62Eは、径方向外側に位置し、予混合ガスを旋回方向に旋回させるための湾曲形状の先端部64と、先端部64の径方向内側に位置する根本部65と、を有している。根本部65の前方側の縁は、切り欠き部66によって形成されている。
【0069】
切り欠き部66は、切り欠き部66は、支持部61よりも前方側に形成されている。切り欠き部66の径方向の幅W1は、軸線方向に亘って略均一に形成されている。
切り欠き部66の径方向外側における旋回羽根本体62Eの径方向の幅W2と、切り欠き部66の径方向の幅W1との比W2/W1は、3≦W2/W1≦4とすることが好ましい。
【0070】
この構成によれば、旋回羽根本体62Eに切り欠き部66が形成されていることによって、旋回羽根本体62Eの径方向内側を流れる空気の第一軸線A1方向における流速を更に高めることができる。すなわち、軸体51Mの前方側に形成される旋回流の渦芯に対して、更なる空気を供給することができる。
【0071】
[第五実施形態]
続いて、本発明の第五実施形態について
図9及び
図10を参照して説明する。なお、上記各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。本実施形態では、旋回羽根本体62の構成が上記各実施形態とは異なっている。
【0072】
図9に示すように、本実施形態の旋回羽根本体62Fの前方側は、径方向において、径方向内側から径方向外側に向かうに従って湾曲が大きくなっている。
図10において、点線は、旋回羽根本体62Fの径方向内側の端部における翼形状を示している。
図10において、実線は、旋回羽根本体62Fの径方向外側の端部における翼形状を示している。
【0073】
点線で示す径方向内側の翼形状において、平均反り線(骨格線)をL11、この平均反り線L11に対して旋回羽根本体62Fの前縁で接する接線をL12としている。実線で示す外周側の翼形状において、平均反り線(骨格線)をL21、この平均反り線L21に対して旋回翼の前縁で接する接線をL22としている。
【0074】
図10に示すように、旋回羽根本体62Fの前縁において、内周側での接線L12と第一軸線A1とでなす角度を0度としており、外周側での接線L22と第一軸線A1とでなす角度を、内周側での角度よりも大きくしている。
本願発明者の研究によれば、内周側から外周側に向かうに従い、平均反り線に対して旋回翼の前縁で接する接線と軸線とでなす角度を大きくしていく場合、(a)内周側の角度を0〜10度にし、(b)外周側の角度を25〜35度にすることが最適であることがわかった。
【0075】
この構成によれば、旋回羽根本体62Fの径方向内側の旋回角度を小さくすることによって、旋回羽根本体62Fの径方向内側を流れる空気の第一軸線A1方向における流速を更に高めることができる。すなわち、軸体51Mの前方側に形成される旋回流の渦芯に対して、更なる空気を供給することができる。
【0076】
[第六実施形態]
続いて、本発明の第六実施形態について
図11を参照して説明する。なお、上記各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。本実施形態では、軸体51Mの構成が上記各実施形態とは異なっている。
図11に示すように、本実施形態の第一燃料ノズル51の軸体51MGの直径Dは、第一実施形態から第五実施形態の軸体51M(一点鎖線で示す。)の直径D0よりも小さい。具体的には、流路形成筒51Tの第一筒部T1の内径をBとすると、軸体51MGの直径Dと第一筒部T1の内径Bの比D/Bは、0.5≦D/B≦0.8とすることが好ましい。
【0077】
この構成によれば、第一筒部T1の内側の空気流路Fを確保することによって、空気流路F中を流通する空気の流量を増やして、渦芯に向かう空気を増やすことができる。すなわち、軸体の前方側に形成される旋回流の渦芯に対して、更なる空気を供給することができる。
【0078】
以上、本発明の各実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の各構成に種々の変更を施すことが可能である。例えば、旋回羽根本体62の断面形状については、上記各実施形態で説明した形状の他、設計や仕様に応じて種々の形状を採ることが可能である。