(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記耐凍害性生コンクリートが、該生コンクリートが硬化してなるコンクリート硬化体において、直径0.01mm以上0.1mm以下の気泡部である微細気泡部の体積比が1.0%以上となり、全気泡部の体積比である空気量が6%以下となる生コンクリートである、請求項1に記載のコンクリート硬化体の打設方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の硬化体の形成方法によれば、微細な気泡を硬化の前後を通じて、コンクリート中に安定的に存在させることができる。しかしながら、樹脂製の中空ビーズは高価であり、その大量添加はコスト面での負担が大きい。このため、凍結融解抵抗性を向上させる有効な手段であることが知られているにもかかわらず、十分な普及が進んでいないのが実情であった。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたものである。即ち、微細気泡のサイズと存在量が安定的に制御されていることにより凍結融解抵抗性が十分に向上したものでありながら、尚且つ、経済性にも優れるコンクリート硬化体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、コンクリート硬化体において、所謂かぶり領域とそれ以外の領域において打設する生コンクリートの種類を打ち分け、前者のかぶり領域にのみ、例えば、樹脂製の中空ビーズを含有させて調合することができる耐凍害性生コンクリートを打設する製造方法によって、コンクリート硬化体に十分な凍結融解抵抗性を付与することができることを見出し本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) コンクリート硬化体の打設方法であって、水とセメント材とを含んでなる生コンクリートを打設する型枠内の打設空間のうち、外縁近傍領域に、該領域以外の領域に打設する生コンクリートよりも空気量の多い耐凍害性生コンクリートを打ち分ける、コンクリート硬化体の打設方法。
【0011】
(1)の発明においては、耐凍害性が求められるセメント硬化体の製造において、調達、調合のコストが嵩む耐凍害性生コンクリートを、コンクリート硬化体の全部ではなく、表面近傍の所定の一部領域にのみ選択的に打ち込む打設方法とした。この打設方法によれば、コスト面で不利な耐凍害性生コンクリートの使用量を大幅に削減しつつ、尚且つ、硬化体全体の凍結融解抵抗性を実用上十分に好ましい程度にまで向上させることができる。
【0012】
(2) 前記耐凍害性生コンクリートが、該生コンクリートが硬化してなるコンクリート硬化体において、直径0.01mm以上0.1mm以下の気泡部である微細気泡部の体積比が1.0%以上となり、全気泡部の体積比である空気量が6%以下となる生コンクリートである、(1)に記載のコンクリート硬化体の打設方法。
【0013】
(2)の発明においては、耐凍害性生コンクリートを、硬化後の空気量が所定範囲となるように最適化した。これによれば、(1)の打設方法によって製造するコンクリート硬化体の凍結融解抵抗性を、より高い確度で、実用上十分に好ましい程度にまで向上させることができる。
【0014】
(3) 前記外縁近傍領域が、前記打設空間のうち、少なくとも該打設空間の外縁から凍害劣化予想深さまでの領域を包含してなる領域である(1)又は(2)に記載のコンクリート硬化体の打設方法。
【0015】
(3)の発明においては、耐凍害性生コンクリートを打分ける領域である外縁近傍領域を、予測可能な凍害劣化予想深さに応じて決定することとした。この方法によれば、(1)又は(2)の打設方法における耐凍害性生コンクリートの使用量を、容易、且つ、確実に略最小限範囲に抑えつつ、この方法によって製造するコンクリート硬化体の凍結融解抵抗性を、実用上十分に好ましい程度にまで向上させることができる。
【0016】
尚、本明細書におけるコンクリートの「凍結劣化予想深さ」とは、当該コンクリートが硬化した後、設置環境において、所定の年数の間に、凍結融解の影響を受ける領域が表面からどの程度の深さまで進行するかについての予想値である。例えば、当該コンクリート硬化体と同材料からなる供試体による環境促進試験によって予想することによって得られる値である。供試体による環境促進試験は、例えば、「JIS A 6204−2000“コンクリート用化学混和剤”付属書2コンクリートの凍結融解試験方法に準拠して、凍結融解抵抗性を検証する試験」を利用して行った本明細書の実施例に開示した(凍結融解抵抗試験2)による方法により行うことができる。
【0017】
(4) 前記外縁近傍領域が、前記打設空間のうち、該打設空間の外縁からの距離が10cm以内の領域を包含してなる領域である(1)から(3)のいずれかに記載のコンクリート硬化体の打設方法。
【0018】
(4)の発明においては、外縁近傍領域の具体的な幅を、一般的な凍害劣化予想深さに基づく汎用性の高い具体的範囲に特定した。この方法によれば、(1)から(3)のいずれかの打設方法における耐凍害性生コンクリートの使用量を、容易に略最小限範囲に抑えつつ、この方法によって製造するコンクリート硬化体の凍結融解抵抗性を、より高い確度で、実用上十分に好ましい程度にまで向上させることができる。
【0019】
(5) 前記コンクリート硬化体が鉄筋コンクリート硬化体であり、前記外縁近傍領域は、前記鉄筋コンクリート硬化体の側面から該側面近傍の最外層側鉄筋までの領域となる硬化体側面のかぶり領域であり、該かぶり領域と該かぶり領域以外の領域とを区分可能な網状又は有孔の仕切り部材を、前記最外層側鉄筋に鉛直方向に沿って設置した後に、前記耐凍害性生コンクリートを、前記かぶり領域に打ち込む、(1)から(4)のいずれかに記載のコンクリート硬化体の打設方法。
【0020】
(5)の発明においては、(1)から(4)の発明による、生コンクリートの打ち分けを、鉄筋コンクリート硬化体の打設に適用した。具体的には、例えば、
図2に示すように、仕切り部材を利用して、鉄筋コンクリート硬化体において一般的にその強度や耐久性保持上、弱点となる場合が多いかぶり領域にのみ、耐凍害性生コンクリートを偏在させる打設方法とした。この打設方法によれば、鉄筋コンクリート硬化体の打設において、耐凍害性生コンクリートの使用量を大幅に削減しつつ、尚且つ、硬化体全体の凍結融解抵抗性を実用上十分に好ましい程度にまで向上させることができる。
【0021】
(6) 前記コンクリート硬化体が鉄筋コンクリート硬化体であり、前記外縁近傍領域は、該鉄筋コンクリート硬化体の天面から該天面近傍の最外層側鉄筋までの領域となる硬化体天面のかぶり領域を包含する領域であり、前記耐凍害性生コンクリート以外の生コンクリートを、前記硬化体天面のかぶり領域を除く領域に打ち込んだ後に、前記耐凍害性生コンクリートを、前記硬化体天面のかぶり領域を包含する領域に打ち込む、(1)から(4)のいずれかに記載のコンクリート硬化体の打設方法。
【0022】
(6)の発明においては、(1)から(4)の発明による、生コンクリートの打ち分けを、鉄筋コンクリート硬化体の打設に適用した。具体的には、例えば、
図3に示すような鉄筋コンクリートからなる橋フーチングにおいて、その強度や耐久性保持上、弱点となる場合が多い天面側のかぶり領域を包含する領域にのみ、樹脂製の中空ビーズを含有する耐凍害性生コンクリートを偏在させる打設方法とした。この打設方法によれば、橋フーチング等の打設において、耐凍害性生コンクリートの使用量を大幅に削減しつつ、尚且つ、硬化体全体の凍結融解抵抗性を実用上十分に好ましい程度にまで向上させることができる。
【0023】
(7) 前記耐凍害性生コンクリートが、直径が10μm以上100μm以下の樹脂製の中空ビーズを含んでなる生コンクリートであって、前記打設空間のうち、前記外縁近傍域領域以外の他の全領域には、樹脂製の中空ビーズを含有しない生コンクリートを打ち込む、(1)から(6)のいずれかに記載のコンクリート硬化体の打設方法。
【0024】
(7)の発明においては、耐凍害性が求められるセメント硬化体の製造において、従来、経済性の面でその選択が制限されていた樹脂製の中空ビーズを、コンクリート硬化体の全部ではなく、表面近傍の所定の一部領域にのみ選択的に添加する打設方法とした。この打設方法によれば、高価な樹脂製の中空ビーズの使用量を大幅に削減しつつ、尚且つ、硬化体全体の凍結融解抵抗性を極めて好ましい程度にまで向上させることができる。
【0025】
(8) 前記中空ビーズを予め水溶性の袋体に注入し、該袋体を、予め水と混錬したセメント材に後添加して、前記耐凍害性生コンクリートを調合する(7)に記載のコンクリート硬化体の打設方法。
【0026】
(8)の発明においては、(7)に記載のコンクリート硬化体の打設方法における耐凍害性生コンクリートの調合を、耐凍害性生コンクリートを調合する際に密度が小さく飛散しやすい中空ビーズを、予め水溶性の袋体に注入してから、生コンクリート材料に後添加する調合によるものとした。これにより、耐凍害性生コンクリート材料への添加時における中空ビーズの飛散を抑制し、耐凍害性生コンクリート材料中に正確に所定量の中空ビーズを速やかに添加することができる。よって、この打設方法によれば、(7)のに記載のコンクリート硬化体の打設方法の融解抵抗性の向上効果をより高い確度で発現させることができ、尚且つ、打設作業の作業効率も有意に向上させることができる。
【0027】
(9) 少なくとも一の表面及びその近傍領域が、直径10μm以上100μm以下の樹脂製の中空ビーズを体積比で0.4%以上0.8%以下の割合で含有する耐凍害性セメントで形成されていて、前記耐凍害性セメントで形成されている領域を除く他の領域は、樹脂製の中空ビーズを含有しないセメントで形成されている、コンクリート硬化体。
【0028】
(9)の発明によれば、中空ビーズを用いてなり、極めて優れた凍結融解抵抗性を有するものでありながら、経済性については、中空ビーズを用いた従来品よりも著しく低コストで製造可能な、コンクリート硬化体を提供することができる。
【0029】
(10) 前記コンクリート硬化体が鉄筋コンクリート硬化体であり、前記鉄筋コンクリート硬化体の表面から最外層側鉄筋までのかぶり領域を包含する一部領域が、前記耐凍害性セメントで形成されていて、該一部領域以外の全領域が、樹脂製の中空ビーズを含有しないセメントで形成されている(9)に記載のコンクリート硬化体。
【0030】
(10)の発明によれば、中空ビーズを用いてなり、極めて優れた凍結融解抵抗性を有するものでありながら、経済性については、中空ビーズを用いた従来品よりも著しく低コストで製造可能な、鉄筋コンクリート硬化体を提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、微細気泡のサイズと存在量が安定的に制御されていることにより凍結融解抵抗性が十分に向上したものでありながら、尚且つ、経済性にも優れるコンクリート硬化体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施態様について説明する。本発明のセメント硬化体の打設方法は、各種のコンクリート硬化体に適用可能な発明である。そして、特には鉄筋コンクリート硬化体の打設においては好ましく適用することができる。以下においては、本発明の好ましい実施態様として、本発明を鉄筋コンクリート硬化体の打設に用いる場合における実施態様を中心に、この発明の詳細を説明する。
【0034】
<コンクリート硬化体の打設方法>
本発明のコンクリート硬化体の打設方法(以下、単に「コンクリート硬化体の打設方法」とも言う)は、例えば
図1に示すような型枠2に生コンクリート1を打設し、一定の養生期間を経て生コンクリートが必要程度に硬化した段階で、型枠2を脱型する手順により行う一般的なコンクリート硬化体の製造に広く適用可能な打設方法である。又、この打設方法は、鉄筋コンクリート硬化体の製造に特に好ましく用いることができる。
【0035】
コンクリート硬化体の打設方法においては、型枠2に打設する生コンクリート1として、中空ビーズを含有し凍結融解抵抗性に優れる耐凍害性生コンクリート12と、中空ビーズを含有しない生コンクリート11とを併用する。そして、コンクリート硬化体の打設方法は、これら2種の異なる生コンクリートを硬化体の外縁部近傍の所定領域とその他の領域とにおいて打ち分けることを特徴とする。
【0036】
ここで、本発明における「型枠内の打設空間の外縁近傍領域」とは、型枠内の外縁よりの一部領域であって、型枠の内周面、即ち、打設されたコンクリートの表面からの距離が所定距離内の領域を包含してなる領域のことを言う。この所定距離は、各施工現場の環境によっても変動する「凍害劣化予想深さ」に応じて適宜規定すればよい。例えば、凍害劣化予想深さが10cmである場合には、型枠の内周面から10cm以内の距離にある領域を全て包含する領域であることが好ましい。「型枠内の打設空間の外縁近傍領域」は、それ以上の距離にある領域をも含む領域であってもよいが、一般的に、型枠の内周面から20cm以内までの領域とすることが経済性や施工性の面から好ましい。
【0037】
又、本明細書における「凍害劣化予想深さ」とは、上述の通り、当該コンクリートが硬化した後、設置環境において、所定の年数の間に、凍結融解の影響を受ける領域が表面からどの程度の深さまで進行するかについての予想値である。
【0038】
図2は、コンクリート硬化体の打設方法を鉄筋コンクリート硬化体の打設に適用した場合における打設方法の説明に供する図であり、本発明の方法による打設後の型枠2及び打設後の生コンクリート1の断面を模式的に示す図である。
図2に示す通り、鉄筋コンクリート硬化体の打設においては、型枠2の近傍のかぶり領域bには耐凍害性生コンクリート12を打設し、一方、かぶり領域以外の領域である中心部領域aには中空ビーズを含有しない生コンクリート11を打設することが好ましい。
【0039】
ここで、「かぶり領域b」とは、一般的な意味での鉄筋コンクリート硬化体の「かぶり領域」と同意であり、硬化体に配置されている鉄筋4のうち、
図2における型枠2の内面、即ち、コンクリート硬化体の一の側面から最も近い最外層側鉄筋41までの領域のことを言う。尚、一般的な鉄筋コンクリート硬化体におけるかぶり領域の深さは、5cm〜20cm程度である。かぶり領域の深さが10cm以下である場合には、上記の通り、硬化体表面からの深さが10cm以上の領域にまで、凍結融解抵抗性に優れる耐凍害性生コンクリート12を打設することにより、本発明の効果を十分に発現させることができる。かぶり領域の深さが10cmを超える場合は、少なくとも硬化体表面からの深さが10cmまでの領域に耐凍害性生コンクリート12を打設することにより本発明の効果を享受することはできるが、この場合は、かぶり領域全体に耐凍害性生コンクリート12を打設することがより好ましい。
【0040】
例えば、鉄筋コンクリート硬化体の打設を行う場合の型枠2内における生コンクリート1の打分けは、
図2に示すようにして行うことが好ましい。即ち、網状又は有孔の仕切り部材3を最外層側鉄筋41に沿って鉛直方向に向けて設置し、これにより型枠2内の打設空間を予めかぶり領域bと中心領域aとに区画分けしておき、このように区画分けされた各領域に、それぞれの生コンクリートを打分ける方法である。
【0041】
上記の区画分けに用いる仕切り部材3は特に限定されないが、一般的なコンクリート硬化体の打ち継ぎ材として用いられている網状の部材(例えば、「ブラインドラス(東邦建材社製)」)等を適宜用いることができる。
【0042】
仕切り部材3によって型枠2内の打設空間をかぶり領域bと中心領域aとに区画分けした後、それぞれの領域に、上述の通り、耐凍害性生コンクリート12と中空ビーズを含有しない生コンクリート11とを打分ける。各領域へ生コンクリートを打ち込む手順としては、先ず樹脂製の中空ビーズを含有しない生コンクリート11を中心部領域aに打ち込み、続けて、耐凍害性生コンクリート12をかぶり領域bに打ち込む手順で行うことが好ましい。
【0043】
上記2種の生コンクリートの各領域への打設後には、通常のコンクリート打設同様、バイブレータ等を用いて締固めを行う。これにより、型枠2内の各領域において更に隅々まで十分に生コンクリートが流れこみ、又、網状の仕切り部材3の開口部における2種の生コンクリート間の結合も強固なものとなる。
【0044】
上記各領域への各生コンクリートの打ち込みは従来公知の一般的な打設方法によることができるが、例えば、相対的に多量の中空ビーズを含有しない生コンクリート11を打ち込む中心部領域aへの打設手段としては、一般的なコンクリートポンプ車を用い、一方、相対的に少量の耐凍害性生コンクリート12を狭小な領域であるかぶり領域bへ打設する手段としては、クレーンとコンクリートバケット等を用いることにより、打設作業の全体工程を効率化が可能である。単一の鉄筋コンクリート硬化体において区画領域毎に打設手段を別途用意することは通常は明らかに経済的には不利であり、従来の技術常識の範囲では実質的に選択の余地がない工法であった。しかし、凍結有害抵抗性の向上が必須である場合においては、本発明の適用による樹脂製の中空ビーズの節約効果が多大であるため、区画領域毎の打設手段の並置にかかる追加コストを考慮したとしても、従来方法よりもセメント硬化体打設にかかる経済性は大幅に向上する。
【0045】
又、特にかぶり領域bへの耐凍害性生コンクリート12の打設については、特開2016―183514号公報に開示されている扁平ホースを好ましく用いることができる。生コンクリートの圧送経路よりも扁平な吐出開口部を有するこのような扁平ホースを用いて行うことにより、比較的スランプが小さい耐凍害性生コンクリート12も確実に輸送することができ、且つ、打込み時の材料分離を抑制することができる。
【0046】
図3は本発明のセメント硬化体の打設方法の他の実施態様の説明に供する図であり、本発明による打設後の鉄筋コンクリートからなる橋フーチングの構造を模式的に示す斜視図である。この通りこの打設方法においては、橋フーチングの天面側のかぶり領域を包含する領域にのみ、樹脂製の中空ビーズを含有する耐凍害性生コンクリート12を打設し、一方、当該かぶり領域以外の領域である中心部領域(下部領域)には中空ビーズを含有しない生コンクリート11を打設する。このように鉄筋コンクリートからなる橋フーチング等の施工のための生コンクリートの打設においては、生コンクリート1の打ち分けを、垂直方向に区画分けされた領域毎に行うことにより、本発明のセメント硬化体の打設方法を好ましく適用することができる。
【0047】
鉄筋コンクリートからなる橋フーチング等における生コンクリート1の打分けにおいては、特に仕切り部材3による予めの区画分けは不要である。先ず天面側のかぶり領域を含まない一定の中心領域(下部領域)に中空ビーズを含有しない生コンクリート11Aを打ち込み、この中空ビーズを含有しない生コンクリート11Aのバイブレータによる振動締固めが終了した時点で、生コンクリート11Aの表面に、耐凍害性生コンクリート12Aを打ち込み、橋フーチングを形成するコンクリート硬化体1Aとする。尚、この場合、耐凍害性コンクリートが所定量打ち込まれた時点で、バイブレータ等を用いて上述の締固めを行うことが好ましい。
【0048】
ここで、樹脂製の中空ビーズは密度が極めて小さいため、打設現場の環境によっては空中に飛散しやすく、又、コンクリートに混和する際に発塵し、発塵抑制を目的とした排気装置に吸引され、コンクリート中に所定量混和することが難しいという問題もある。又、予め練り混ぜたコンクリートへ後から中空ビーズを添加する場合においても、投入に時間がかかるため、コンクリート中に所定量を正確に混和することや均一に分散させることが難しく、コンクリートの練り混ぜ時間を長く確保する必要があった。これらの問題に対して、本発明のコンクリート硬化体の打設方法においては、外縁近傍域領域(かぶり領域b)に打ち込む耐凍害性生コンクリート12について、予め樹脂製の中空ビーズを水溶性の袋体等に封入し、この袋体を、予め水と混錬したセメント材に後添加して調合する方法をとることにより好ましい態様で対処することができる。具体的には、樹脂製の中空ビーズを封入した水溶紙の袋体を所望のタイミングで生コンクリートに投入することにより、簡易、且つ、安全に、所定量の樹脂製の中空ビーズをコンクリートに混和でき、しかも投入時間を短縮することができる。
【0049】
中空ビーズを封入する上記の袋体は、例えば、袋体の生コンクリートへの投入後の混錬中にで、容易に破壊し、封入した中空ビーズが、生コンクリートに均一に分散するものであれば特に限定されるものではないが、簡易、且つ、安全に、所定量をコンクリート中に混和でき、しかも投入時間を短縮できる面から、水溶紙の袋体を使用することが好ましい。これらの袋体を形成する水溶紙は、木材パルプ、多糖類、セルロース、ポリビニルアルコール(ポバール)、カルボキシメチルセルロース、及びでんぷん等を原料とするもので、原料中の木材パルプの含有量は75〜95%が好ましく、80〜90%がより好ましい。木材パルプを除く多糖類、ポバール、セルロース、カルボキシメチルセルロース、及びでんぷん等の原料は、水溶紙の製造の面や、コンクリート中に巻き込む空気量を抑える面から、5〜25%が好ましく、10〜20%がより好ましい。
【0050】
<耐凍害性生コンクリート>
本発明のコンクリート硬化体の打設方法においては、特段の耐凍害性用の調合を行っておらず、耐凍害性生コンクリートよりも相対的に空気量の少ない、一般的な生コンクリート11の他、所望の耐凍害性をコンクリート硬化体に付与しうる耐凍害性生コンクリート12を用い、この耐凍害性をコンクリートの打設空間内における外縁近傍領域にのみ打ち込む。
【0051】
本発明のコンクリート硬化体の打設方法に用いることができる耐凍害性生コンクリート12としては、併用する一般的な生コンクリート11よりも空気量の多い生コンクリートを用いる。耐凍害性生コンクリート12は、より詳細には、当該生コンクリートが硬化してなるコンクリート硬化体において、直径0.01mm以上0.1mm以下の気泡部である微細気泡部の体積比が1.0%以上となり、全気泡部の体積比である空気量が6%以下となるように、水/セメント比、中空ビーズやAE剤の添加量を最適化した生コンクリートであることが好ましい。
【0052】
従来、コンクリートの凍害対策は、所定の耐久性指数を満足する配合のコンクリート(耐凍害性コンクリート)を、構造物全体に採用することによって行われてきたが、前述のように、実際に凍害の影響を受けるのは、表層部のみである。本発明ではこの点に着目し、表層部の凍害の影響を受ける所謂「凍害劣化深さ」の部分にのみ耐凍害性コンクリートを用いることにより、上述した特段の効果を享受しうるものとした打設方法である。耐凍害性コンクリートは、前述したように、一般的にはAE剤等により独立した微気泡を連行するものであるが、より安定した微気泡を連行させる手段としては、中空ビーズを採用したコンクリートも適用することも可能である。このような中空ビーズを採用した耐凍害性コンクリートは、AE剤等を採用した耐凍害性コンクリートに比べ高価となる。よって、本発明のように、『表層部の凍害の影響を受ける所謂「凍害劣化深さ」の部分にのみ耐凍害性コンクリートを用いる』ことによって、効果な材料を必要最低限の箇所に適用することで同等の品質を確保することができるという、特段の効果を奏する。
【0053】
耐凍害性生コンクリート12中に樹脂製の中空ビーズを添加して耐凍害性をよりいっそう向上させる場合、中空ビーズの混入量は、耐凍害性生コンクリート12の硬化物である耐凍害性コンクリート硬化体における空気量、即ち当該硬化体内の全ての気泡部の体積の合計の硬化体体積に対する比率を6%以下に保持することができる量であることを前提として、その範囲内で、最適化された量であればよく、AE剤の添加量との兼ね合いで適宜調整すればよい。耐凍害性生コンクリート12の配合比の好ましい具体例としては、下記実施例に例示される耐凍害性生コンクリートの配合例を挙げることができる。耐凍害性生コンクリート12のその他の材料の配合比は、特段限定されない。従来公知の材料を実施用途に応じて適宜、設定すればよい。
【0054】
(中空ビーズ)
生コンクリートに混入させる樹脂製の中空ビーズは、硬化時に直径10μm以上100μm以下の微細気泡部を形成可能な樹脂製の中空ビーズであることが好ましい。本明細書において「ビーズ」とは球形や長円形や円筒形の球を意味する。本発明に用いる樹脂製の中空ビーズは、凍結融解に伴う水圧を緩和して凍結融解抵抗性を発揮させるに足る可撓性を有するものであればよく、その形状は、中空であり、且つ、略球形状であることが好ましい。
【0055】
樹脂製の中空ビーズの粒径は、中空部の内径が、9.5μm以上95μm以下の範囲でとなる粒径であることが好ましい。又、中空部の内径は、その外径の0.95倍以上程度であることが好ましい。又、中空ビーズの粒径(外径)は、上記範囲内で一定の分散があってもよいが、粒径が50μm前後であって、その分散が少ないものが、より好ましい。具体的には、中空ビーズの全粒数のうち70%の粒が、粒径50μm±10μmの範囲にあるものが好ましい。耐凍害性生コンクリートに混入させる樹脂製の中空ビーズの粒径、粒度分布を上記範囲とすることにより、コンクリート硬化体の融解抵抗性をより好ましい水準にまで向上させることができる。
【0056】
樹脂製の中空ビーズの材料の具体例としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリルニトリルスチレン共重合体、スチレン・エチレン共重合体、ポリ塩化ビニリデン等の可撓性を有する樹脂を挙げることができる。これらの樹脂を発泡させることにより得ることができる中空ビーズを好ましく用いることができる。
【0057】
樹脂製の中空ビーズの生コンクリートへの配合比は、中空ビーズによって形成される微細気泡部の耐凍害性コンクリート硬化体に対する体積比が、0.4%以上0.8%以下となる量とすることが好ましい。尚、生コンクリートにおける気泡部の体積比等を測定する方法については、水中を上昇した気泡による浮力の経時変化より解析を行う浮力法等の従来公知の方法を採用することができる。又、耐凍害性コンクリート硬化体中における気泡について、混入空気由来の気泡と樹脂製ビーズ由来の気泡とは、顕微鏡による計測により分離して、それぞれの分布と耐凍害性コンクリート硬化体におけるそれぞれの体積比を、個別に測定することが可能である。耐凍害性コンクリート硬化体における各気泡部の体積比を測定する方法については、より具体的には、例えば、公知の方法である「ASTM C457 硬化コンクリートの気泡パラメータの顕微鏡による測定方法」等によることができる。
【0058】
(結合材)
結合材として用いるセメント材としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント等のポルトランドセメント以外に高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等を挙げることができる。これらを上記の通り、耐凍害性コンクリート硬化体の使用用途により使い分けることが好ましい。
【0059】
但し、コンクリート硬化体用の耐凍害性生コンクリートに用いるセメント材としては、ブレーン値が普通ポルトランドセメントよりも小さいMKC(低発熱型高炉セメントB種)を用いることにより、コンクリート硬化体の施工性を更に向上させることもできる。この配合では、通常、ブリーディングが発生しやすいが、均質に微細な気泡を分散させることでブリーディングを抑制することができる。又、振動に対して広がりやすい性質を持つので生コンクリートのスランプフローの値が大きくなるからである。
【0060】
(AE剤等)
生コンクリートには、適切なサイズと量の空気由来の微細気泡を形成するために、一般的なAE剤、AE減水剤、高性能AE減水剤等の混和剤を適量添加することが好ましい。これにより、樹脂製ビーズによる微細気泡部の形成を更に補填して、耐凍害性コンクリート硬化体中の全体の空気量を6%以下に保ったまま、耐凍害性コンクリート硬化体の凍結融解抵抗性を担保するために必要な微細気泡部の体積比を、1.0%以上とすることができる。
【0061】
又、消泡剤として、例えば、ポリアルキレングリコール等、従来公知の消泡剤を用いることができる。主にエントラップドエアからなる生コンクリート中の中空ビーズ内の空気以外の空気を、必要に応じて適切に除去可能なものを、適宜添加することができる。
【0062】
(その他の材料と配合比)
耐凍害性生コンクリートのその他の材料と組成物の配合比については特段限定されない。用途を考慮して適宜設定すればよい。例えば、耐凍害性生コンクリートが生コンクリートである場合、具体的には、水結合材比40〜60%、細骨材率(s/a)20〜60%、単位水量110〜185kg/m
3、単位結合材量210〜450kg/m
3、単位細骨材量450〜1000kg/m
3、単位粗骨材量650〜1500kg/m
3の範囲で配合を設定すればよい。フライアッシュ等の粉体で結合材の一部を置換してもよい。
【0063】
<コンクリート硬化体>
本発明のコンクリート硬化体の打設方法を用いて製造可能なコンクリート硬化体は、例えば鉄筋コンクリート硬化体であればかぶり領域等、少なくとも一の表面及びその近傍領域が、上述の樹脂製の中空ビーズを体積比で0.4%以上0.8%以下の割合で含有する耐凍害性セメントで形成されている。
【0064】
本発明にかかるコンクリート硬化体における耐凍害性セメントで形成されている領域については、セメント内に多数の気泡部が分散形成された所謂気泡コンクリート体とされている。この気泡コンクリート体は、空気量が、一般的な気泡コンクリートの基準よりも小さい6%以下であり、高い強度を有するものである。そして、その気泡部は、凍結融解抵抗性を担保するために、コンクリート硬化体に対する体積比において1.0%以上の割合で、直径10μm以上100μm以下の微細気泡部を含んで構成されている。更に、当該微細気泡部の少なくとも一部は、直径10μm以上100μm以下の樹脂製の中空ビーズによって形成されている微細気泡部であり、この樹脂製の中空ビーズからなる微細気泡部の耐凍害性セメントで形成されている領域部分における体積比は0.4%以上0.8%以下であることが好ましい。樹脂製の中空ビーズからなる微細気泡部の上記体積比を0.4%以上とすることで、空気の総量を抑制して高い強度を保ったまま良好な凍結融解抵抗性をコンクリート硬化体に備えさせることができる。又、同体積比を0.8%以下に抑えることで、耐凍害性生コンクリートのスランプを最適化して良好な施工性を保持することができる。
【0065】
樹脂製の中空ビーズからなる微細気泡部は、そのサイズのバラツキが極めて小さい。コンクリート硬化体の全気泡部のうち少なくとも、体積比において10%以上がこの樹脂製微細気泡部によって占められていることが好ましい。
【0066】
又、コンクリート硬化体の気泡間隔係数は、0.4mm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.2mm以下である。気泡間隔係数を上記範囲とすることによって、コンクリート硬化体の凍結融解抵抗性を更に向上させることができる。尚、コンクリート硬化体における気泡間隔係数等を測定する方法については、上記同様、例えば、公知の方法である「ASTM C457 硬化コンクリートの気泡パラメータの顕微鏡による測定方法」等によることができる。
【0067】
本発明にかかるコンクリート硬化体における耐凍害性セメントで形成されている領域の当該硬化体表面からの深さについては、鉄筋コンクリート硬化体においては、一般的な意味でのかぶり領域までであることが好ましい。又、これに限らず、耐凍害性セメントで形成されている領域の上記の深さは、10cm以上50cm以下であることが好ましい。この深さが10cm以上であることにより、凍結融解抵抗性の確保が十分に可能であり、一方50cm以上の深さとしても、当該効果の増加率が逓減して経済性における不利益が顕在化しやすいからである。
【0068】
又、
図3に示すように、生コンクリート1の打ち分けを、垂直方向に区画分けされた領域毎に行う場合に、一度に打ち込む生コンクリート厚さが、バイブレータの影響範囲等で定められた数値でもあり、「コンクリート標準示方書[施工編](土木学会)」にて定められた値が50cm以内であることからも、耐凍害性セメントで形成されている領域の上記の深さの上限は50cm程度であることが適切である。
【0069】
<生コンクリートの製造方法>
本発明にかかる生コンクリートを製造するための材料は上述した通りである。本願独自の樹脂製の中空ビーズを含むそれらの材料を混錬するためには、従来公知の一般的な生コンクリートの混錬方法、混錬手段を用いることができる。
【0070】
(弾性中空体混入工程)
この工程では、直径10μm以上100μm以下の樹脂製の中空ビーズを、生コンクリートに混入する。この処理は、空気除去工程に先行して行うことが好ましい。中空ビーズの混入量は、生コンクリートの硬化後におけるコンクリート硬化体に対する前記中空ビーズの体積比を0.4%以上0.8%以下とすることができる範囲で適宜調整する。
【0071】
(AE剤添加工程)
この工程では、AE剤を生コンクリート中に適量比で添加する。これにより、セメント材、水、中空ビーズ、及び、必要に応じて添加されるその他の材料からなる生コンクリート中に存在する直径10μm以上100μm以下の気泡部である微細気泡部を増加させて、微細気泡部のコンクリート硬化体に対する体積比が1.0%以上となるようにする。尚、中空ビーズ由来の気泡部のみにより微細気泡部のコンクリート硬化体に対する体積比を、上記のように、1.0%以上とすると、生コンクリートの施工性が低下してしまう。適量のAE剤を添加することによりこれを回避することができる。又、AE剤の適切な添加により、高価な中空ビーズの添加量を更に削減することも可能であり、経済性の面においても適量のAE剤の添加は極めて好ましい。
【0072】
このように、耐凍害性生コンクリートの調合において、樹脂性の中空ビーズとAE剤を適切に併用することにより、耐凍害性コンクリート硬化体中の空気量が従来の一般的な基準よりも更に小さい範囲に限定されており、従来品よりも強度が高い硬化体とすることができる。又、従来と同程度の強度を確保するためのセメント量を節約して更に製造コストを削減することもできる。これにより、本発明にかかるコンクリート硬化体の打設方法の奏する効果を十分に享受しながら、更にセメント硬化体の製造コストを低く抑えることができる。
【0073】
尚、主として、直径1.0mm以上の大型気泡を排除又は減少させるために、本製造方法においては、必要に応じて適宜消泡剤を併用することが好ましい。消泡剤の添加によって、生コンクリート中の全空気量を6%以下となるようにすることで、硬化後のコンクリート硬化体の強度を適切な強度に保つことができる。
【0074】
上記製造方法によって得ることができる生コンクリートを、従来公知の手順で硬化させることにより、強度や施工性等のコンクリート硬化体としての基本性能を確保しながら、凍結融解抵抗性を十分に向上させた本発明のコンクリート硬化体を得ることができる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明のコンクリート硬化体及びその製造方法について、実施例を挙げて詳細に説明する。尚、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0076】
本発明の奏する特段の効果を確認するために、先ずは、以下に説明する各材料を用いて、下記の表1に記す組成により、2種類の生コンクリートを製造した。製造例1としては、本発明の打設方法において、耐凍害性生コンクリートとして用いることができる中空ビーズを含有する生コンクリート(表1において「耐凍害性生コンクリート」と表示)を製造し、製造例2として中空ビーズを含有しない一般的な生コンクリート(表1において「普通生コンクリート」と表示)を製造した。
【0077】
セメント材:「普通ポルトランドセメント」、密度3.16kg/cm
3。
細骨材:5mm以下、表乾密度2.63g/cm
3
粗骨材:25mm〜5mm、表乾密度:2.65g/cm
3
AE減水剤(No.70、BASFジャパン社製)
AE助剤(マイクロエア202、BASFジャパン社製)
消泡剤(マイクロエア404、BASFジャパン社製)
中空ビーズ:粒径35μm〜55μm、密度0.16g/cm
3、直径の分散が、10.0×10
−3〜30.0×10
−3の範囲にある、中空のアクリロノトリル系樹脂製のビーズを用いた。
【0078】
【表1】
【0079】
そして、製造例1の生コンクリートについて、生コンクリート内に存在する全空気量(体積)を測定した。又、添加した中空ビーズの体積を、樹脂製微細気泡部の体積とみなし、全空気量とのこの量との差を、「中空ビーズに由来しない気泡部」の体積とみなした。
【0080】
又、製造例1の生コンクリートを硬化させ、硬化後のコンクリート硬化体について、硬化体内に存在する全空気量(体積)と、直径100μm以下の微細気泡部の空気量(体積)と、をそれぞれ測定した。又、更に、微細気泡部については、樹脂製の中空ビーズ由来の気泡と、それ以外の気泡の空気量を峻別し、それぞれについて空気量(体積)を測定した。全空気量の測定は、ASTM−C457に準拠して行った。微細気泡部の空気量についても、硬化体の表面を研磨仕上げした供試体について、気泡組織をASTM−C457のリニアトラバース法に準拠して顕微鏡で測定することにより、直径が100μm以下の気泡部の割合を算出し、その空気量微細気泡部の空気量とした。又、樹脂製の微細気泡部の空気量は、上記同様の顕微鏡による観測により、樹脂製の中空ビーズ由来の気泡部とそれ以外の気泡部を峻別した上で、その空気量を上記方法によって測定した。
【0081】
上記の測定結果から算出した製造例1の生コンクリート及び、これらを硬化させて得たコンクリート硬化体における、全空気量、直径10μm以上100μm以下の微細気泡部の体積比、及び、樹脂製の微細気泡部の体積比等をそれぞれ算出した。この結果を表2に示す。
【0082】
(施工性試験)
製造例1のコンクリートについて、JIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に従ってコンクリートの施工性試験を行った。試験は、製造例1の生コンクリートについてスランプを測定することにより行った。結果は表2に示す通りである。具体的な評価は、スランプ値が8.0cm以上のものを、施工性に優れる生コンクリート(表中「○」と記載)とする評価基準の下に行った。樹脂製の中空ビーズを適度に添加した製造例1の生コンクリートは優れた施工性を有するものであることが確認された。
【0083】
(強度試験)
各製造例の硬化体についてJlSA1108−1999に準じて圧縮強度を測定した。結果は表2に示す通りである。樹脂製の中空ビーズを適度に添加した製造例1の生コンクリートは優れた強度を有するものであることが確認された。
【0084】
【表2】
【0085】
(凍結融解抵抗試験1)
上記製造例1及び製造例2の生コンクリートについて、JIS A 1148−A法に従ってコンクリートの凍結融解試験を行った。試験は各製造例の生コンクリートを、内のりが底面10cm×40cm、深さ10cmの型枠いっぱいに打設して得た硬化体について行った。同試験により、凍結融解サイクルと相対動弾性係数(%)の関係を求めた。結果は表3に示す通りである。そして、これらの結果に基づいて、凍結融解抵抗性を評価した。具体的な評価は、600サイクル時点においても、相対動弾性係数が60%以上を確保することをもって良品(表中「○」と記載)、それ以外を非良品(表中「×」と記載)とする評価基準の下に行った。
【0086】
【表3】
【0087】
(凍結融解抵抗試験2)
先ず、比較例のコンクリート硬化体として、上記製造例2の生コンクリートを用いてコンクリート硬化体を製造した。型枠のサイズは底面40cm×40cm、深さ40cmとして硬化体を得た。この比較例のコンクリート硬化体について、JIS A 1148−A法「コンクリートの凍結融解試験方法」に準拠して、凍結融解抵抗性を検証する試験を行った。試験は、冷液槽、温液槽、及び試験槽からなる3槽式の試験機を用いて供試体の中心温度が−18℃から5℃の範囲で試験を行い、材齢28日後の相対動弾性係数にて評価した。
次に、上記試験後の比較例のコンクリート硬化体の各表面から5cmまでの外縁領域を削り取り30cm×30cm×30cmのサイズとしたものを実施例2のコンクリート硬化体とし、この硬化体について、相対動弾性係数を測定した。
更に、上記試験後の実施例2のコンクリート硬化体の各表面から5cmまでの外縁領域(比較例の表面から10cm)を削り取り20cm×20cm×20cmのサイズとしたものを実施例1のコンクリート硬化体とし、この硬化体について相対動弾性係数を測定した。
上記各実施例及び比較例について行った試験結果の具体的な評価は、300サイクル時点での相対動弾性係数が80以上であることをもって優良「○」、60以上80未満であることもって合格「△」、それ以外を不合格「×」とする評価基準の下に行った。
【0088】
【表4】
【0089】
上記表4の試験結果より、一般に、コンクリート硬化体において、凍結融解の影響を受ける領域は、即ち、本明細書における「凍害劣化予想深さ」は、せいぜい硬化体の表面から5cm程度までであり、表面からの距離が10cmより深い領域については、凍結融解の影響がほとんどないものと考えられる。
【0090】
以上の結果より、本発明にかかるコンクリート硬化体は、微細気泡のサイズと存在量が安定的に制御されていることにより凍結融解抵抗性が十分に向上したものでありながら、尚且つ、経済性にも優れるコンクリート硬化体であることが分る。