(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の積層体は、少なくとも、基材層、接着層、シーラント層をこの順で有した積層体である。
【0019】
本発明では基材層として熱可塑性樹脂フィルムやアルミニウム箔等の軟質金属箔を用いることができる。
【0020】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、及びこれらの混合物等のポリエステル樹脂;ポリカプロンアミド(ナイロン6、以下、Ny6と略す)、ポリへキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリ−p−キシリレンアジパミド(MXDナイロン)、及びこれらの混合物等のポリアミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの混合物等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリビニルアルコール;エチレンとビニルアルコールのランダム・コポリマー等が挙げられ、これらの積層体を用いても良い。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が好ましく、包装材料としたときの力学特性を考慮しPET、Ny6が特に好ましい。
【0021】
基材層は、公知の方法で製造されたものを用いることができる。熱可塑性樹脂フィルムに関しては、無延伸フィルム及び延伸フィルムのいずれでも構わないが、透明性や光沢性付与の点から一軸又は二軸延伸フィルムが好ましく、二軸延伸フィルムがより好ましい。
【0022】
本発明の積層体は、基材層自身がバリア性を有していてもよい。ボイル・レトルト食品等を包む包装材料には防湿性や酸素遮断性が求められるため、基材層がバリア性を有することが好ましい。前記バリア性を有した基材層としては、液体や気体を遮断できる材料であればどのような材料から構成されていてもよく、具体的には、アルミニウム箔等の軟質金属箔、アルミニウム蒸着層、シリカ、アルミナ等の無機化合物蒸着層を設けた各種蒸着フィルム、バリア性樹脂フィルムとして塩化ビニリデン系樹脂フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、MXDナイロンフィルム等を用いることができる。このなかでも、バリア性の観点からアルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、無機化合物蒸着フィルムが好ましい。
【0023】
また、熱可塑性樹脂フィルムを基材層とする場合、接着性向上のため、基材層の接着層を設ける面に表面活性化処理が施されていることが好ましい。表面活性化処理としては、例えばコロナ放電処理、フレームプラズマ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理、オゾン処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、薬品処理、溶剤処理等が挙げられ、簡便さと接着効果のバランスからコロナ放電処理が好ましい。
【0024】
基材層の厚みは特に限定されないが、通常5〜500μmが好ましく、5〜100μmがより好ましく、10〜50μmがさらに好ましく、12〜25μmが特に好ましい。
【0025】
本発明におけるシーラント層には、ポリプロピレン樹脂を含有するものが適用される。ポリプロピレン樹脂は、安価で耐熱性、耐油性に優れている。このため、ポリプロピレン樹脂をシーラント層として用いることで、スナック菓子やレトルト食品等を包む包装材料に好適である。なお、ポリプロピレン樹脂は、共重合ポリプロピレン樹脂であってもよい。
【0026】
シーラント層には、低温でのシール性や接着性を向上させるために、ポリエチレン樹脂等、他のオレフィン樹脂やオレフィン系エラストマー等が、本発明の効果を低減させない範囲で添加されていてもよい。
【0027】
本発明において、積層体を構成する接着層は、特定組成のポリオレフィン樹脂を含有する。
ポリオレフィン樹脂は、オレフィン成分としてプロピレン成分(A)とプロピレン成分以外のオレフィン成分(B)とを含有し、かつ不飽和カルボン酸単位を含有する。
プロピレン成分(A)とプロピレン成分以外のオレフィン成分(B)との質量比(A/B)は、接着層とシーラント層との密着性を向上させる観点から、60/40〜95/5の範囲にある必要があり、60/40〜80/20の範囲にあることが好ましい。プロピレン成分の割合がこの範囲外にあると、シーラント層との十分な密着性が得られない。
【0028】
プロピレン成分以外のオレフィン成分(B)としては、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ノルボルネン類等のアルケン類やブタジエンやイソプレン等のジエン類が挙げられる。中でも、樹脂製造のし易さ、水性化のし易さ、特にシーラント樹脂との密着性などの点から、ブテン成分(1−ブテン、イソブテン等)が好適である。
【0029】
ポリオレフィン樹脂において、各成分の共重合形態は限定されず、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等があげられるが、重合の行いやすさの観点から、ランダム共重合が好ましい。また、必要に応じて複数種のポリオレフィン樹脂を混合使用してもよい。
【0030】
ポリオレフィン樹脂には、必要に応じて上記以外の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類並びにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。
【0031】
前記、他の成分の含有量(質量比)としては、ポリオレフィン樹脂全体の10質量%以下が好ましい。
【0032】
本発明では、ポリオレフィン樹脂として市販のものを用いてもよい。一例として、三井化学社製のタフマーシリーズ、REXtac社製のAPAOシリーズ(非晶性ポリアルファオレフィン)、クラリアント社製のリコセンPPシリーズ、エボニック・デグサ社製のベストプラスト等があげられる。なお、市販のもので酸変性されていないポリオレフィン樹脂を用いる際には、別途公知の方法で不飽和カルボン酸単位を導入すればよい。
本発明におけるポリオレフィン樹脂は、後述する水性分散体の分散性を向上させる観点並びに基材との密着性を向上させる観点から、ポリオレフィン樹脂に含まれる(A)+(B)の合計100質量部に対して不飽和カルボン酸単位を0.1〜10質量部含有している必要がある。好ましくは0.5〜10質量部であり、より好ましくは0.5〜8質量部であり、さらに好ましくは1〜7質量部であり、最も好ましくは1.5〜5質量部である。不飽和カルボン酸単位が0.1質量部未満の場合は、ポリオレフィン樹脂を水性化することが困難となり、かつ基材層と十分に密着させることができない。一方、10質量部を超えると、樹脂の水性化は容易になるが、シーラント層との密着性が低下し、耐内容物特性、耐レトルト性、耐ボイル性も低下する。
【0033】
不飽和カルボン酸単位としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等の他、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基又は酸無水物基を有する化合物も用いることができる。中でも未変性ポリオレフィン樹脂への導入のし易さの点から、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0034】
不飽和カルボン酸単位は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されるものではない。例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。なお、ポリオレフィン樹脂に導入された酸無水物単位は、乾燥状態では酸無水物構造を取りやすく、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中では、その一部又は全部が開環し、カルボン酸又はその塩となる傾向がある。
【0035】
不飽和カルボン酸単位を未変性ポリオレフィン樹脂へ導入する方法は特に限定されないが、例えば、ラジカル発生剤存在下、未変性ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸とを未変性ポリオレフィン樹脂の融点以上に加熱溶融し反応させる方法や、未変性ポリオレフィン樹脂を有機溶剤に溶解した後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌し反応させる方法等により、未変性ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸単位をグラフト共重合することができる。特に操作が簡便である点から前者の方法が好ましい。グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらは反応温度によって適宜、選択して使用すればよい。
【0036】
本発明では、ポリオレフィン樹脂として、プロピレン/ブテン/無水マレイン酸三元共重合体やプロピレン/エチレン/無水マレイン酸三元共重合体が例示できるが、前者が最も好ましい。
【0037】
また、本発明におけるポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、15000以上であることが必要であり、20000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましい。重量平均分子量が15000未満になると、基材層やシーラント層との密着性が低下するだけでなく、十分な耐内容物特性、耐レトルト性、耐ボイル性が得られない。一方、重量平均分子量が200000を超えると、後述する樹脂の水性化が困難となるため、重量平均分子量は200000以下が好ましい。なお、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン樹脂を標準として求めることができる。
【0038】
本発明の積層体における接着層は、特定組成のポリオレフィン樹脂に加え、さらに架橋剤及び/又はポリウレタン樹脂を含有する。
【0039】
本発明で用いる架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、不飽和カルボン酸成分と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属等を用いることができる。
具体的には、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が挙げられ、必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。中でも、取り扱い易さ及び密着性の観点から、オキサゾリン基を含有する化合物及び/又はカルボジイミド基を含有する化合物を添加することが好ましい。
【0040】
オキサゾリン基含有化合物としては、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有しているものが好ましく使用できる。例えば、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレン−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド等のオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマー等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いのし易さからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
【0041】
オキサゾリン基含有ポリマーは、一般に2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。オキサゾリン基含有ポリマーには、必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの重合方法としては、特に限定されず、公知の重合方法を採用することができる。オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズ等が挙げられる。具体的な商品名としては、例えば、水溶性タイプの「WS−500」、「WS−700」;エマルションタイプの「K−1010E」、「K−1020E」、「K−1030E」、「K−2010E」、「K−2020E」、「K−2030E」等が挙げられる。
【0042】
カルボジイミド基を含有する化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のカルボジイミド基を有しているものであれば特に限定されるものではない。例えば、p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)等のカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱い易さから、ポリカルボジイミドが好ましい。
【0043】
ポリカルボジイミドの製法は、特に限定されるものではなく、例えば、イソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応により製造することができる。イソシアネート化合物も限定されるものではなく、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネートのいずれであっても構わない。イソシアネート化合物は、必要に応じて多官能液状ゴムやポリアルキレンジオール等が共重合されていてもよい。ポリカルボジイミドの市販品としては、日清紡社製のカルボジライトシリーズが挙げられる。具体的な商品としては、例えば、水溶性タイプの「SV−02」、「V−02」、「V−02−L2」、「V−04」;エマルションタイプの「E−01」、「E−02」;有機溶液タイプの「V−01」、「V−03」、「V−07」、「V−09」;無溶剤タイプの「V−05」等が挙げられる。
【0044】
イソシアネート基を含有する化合物としては、分子中に少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有しているものであれば特に限定されるものではない。例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4´-又は4,4´-ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトブタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-又は2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-又は1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1-イソシアナト-3、3、5-トリメチル-5-イソシアナトメチル-シクロヘキサン、4,4´-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、ヘキサヒドロトルエン2,4-又は2,6-ジイソシアネート、ぺルヒドロ-2,4´-又は4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン1,5-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネート化合物、あるいはそれらの改変生成物が挙げられる。ここで、改変生成物とは、多官能イソシアネート化合物のうちのジイソシアネートを公知の方法で変性することによって得られるものであり、例えば、アロファネート基、ビューレット基、カルボジイミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基、イソシアヌレート基等を有する多官能イソシアネート化合物、さらにはトリメチロールプロパン等の多官能アルコールで変性したアダクト型の多官能イソシアネート化合物を挙げることができる。なお、上記イソシアネート基含有化合物には、20質量%以内の範囲でモノイソシアネートが含有されていてもよい。
【0045】
イソシアネート基を含有する化合物は、通常、多官能イソシアネート化合物と一価又は多価のノニオン性ポリアルキレンエーテルアルコールと反応させて得ることができる。そのような水性の多官能イソシアネート化合物の市販品としては、住友バイエルウレタン株式会社製のバイヒジュール(Bayhydur)3100、バイヒジュールVPLS2150/1、SBUイソシアネートL801、デスモジュール(Desmodur)N3400、デスモジュールVPLS2102、デスモジュールVPLS2025/1、SBUイソシアネート0772、デスモジュールDN、武田薬品工業株式会社製のタケネートWD720、タケネートWD725、タケネートWD730、旭化成工業株式会社製のデュラネートWB40-100、デュラネートWB40-80D、デュラネートWX-1741、BASF社製のバソナート(Basonat)HW−100、バソナートLR−9056等がある。
【0046】
また、ポリウレタン樹脂としては、主鎖中にウレタン結合を含有する高分子が使用でき、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応で得られる高分子が使用できる。
【0047】
本発明において、ポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分としては、特に限定されず、例えば、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の低分子量グリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子量ポリオール類、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド単位を有するポリオール化合物、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類等の高分子量ジオール類、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類、ダイマー酸のカルボキシル基を水酸基に転化したダイマージオール等が挙げられる。
【0048】
ポリイソシアネート成分としては、芳香族、脂肪族又は脂環族に属する公知のジイソシアネート類の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。ジイソシアネート類の具体例としては、トリレンジジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメチルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート、及びこれらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。また、ジイソシアネート類には、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネート類を用いてもよい。
【0049】
本発明において、市販の水系のポリウレタン樹脂としては、三井化学社製のタケラックシリーズ(品番:W−615、W−6010、W−511等)、アデカ社製のアデカボンタイターシリーズ(品番:HUX−232、HUX−320、HUX−380、HUX−401等)、第一工業製薬社製のスーパーフレックスシリーズ(品番:500、550、610、650等)、大日本インキ化学工業社製のハイドランシリーズ(品番:HW−311、HW−350、HW−150等)が挙げられる。
【0050】
本発明における接着層は、架橋剤又はポリウレタン樹脂のいずれか、あるいは両方を含有している。
【0051】
接着層において、ポリウレタン樹脂を用いずに架橋剤を用いる場合、その含有量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1〜50質量部であることが必要であり、好ましくは1〜40質量部、より好ましくは1〜30質量部である。架橋剤の含有量が1質量部未満では、架橋が不十分であるため基材層と接着層との間の密着性が劣り、積層体として十分な接着性、耐レトルト性、耐ボイル性、引き裂き特性が得難くなる。一方、50質量部を超えると、シーラント層と接着層の間の密着性が不十分となり、同じく積層体として十分な接着性、耐レトルト性、耐ボイル性、引き裂き特性が得難くなる。
【0052】
接着層において、架橋剤を用いずにポリウレタン樹脂を用いる場合、その含有量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1〜300質量部であることが必要であり、好ましくは1〜150質量部、より好ましくは2〜130質量部、さらに好ましくは3〜100質量部である。ポリウレタン樹脂の含有量が1質量部未満では、基材層と接着層との間の密着性が不十分となり、積層体として十分な接着性、耐レトルト性、耐ボイル性、引き裂き特性が得難くなる。一方、300質量部を超えると、シーラント層と接着層の間の密着性が不十分となり、同じく積層体として十分な接着性、耐レトルト性、耐ボイル性、引き裂き特性が得難くなる。
【0053】
接着層に架橋剤及びポリウレタン樹脂の両方を含む場合は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、架橋剤50質量部以下及びポリウレタン樹脂300質量部以下の範囲とし、但し、いずれか一方の成分を1質量部以上含有していることが必要である。いずれの成分も1質量部未満であると、基材層と接着層との間の密着性が不十分となり、積層体として十分な接着性、耐レトルト性、耐ボイル性、引き裂き特性が得難くなる。一方、いずれか一方の成分が上記範囲を超えると、シーラント層と接着層の間の密着性が不十分となり、同じく積層体として十分な接着性、耐レトルト性、耐ボイル性、引き裂き特性が得難くなる。
【0054】
また、本発明における接着層には、基材層との密着性を向上させること、積層体として耐内容物特性を向上させること等を目的に、上記以外の他の重合体が少量含有されていてもよい。
【0055】
他の重合体としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂成分があげられる。これらの他の重合体は、接着層の効果、特にシーラント層との密着性を損ねない範囲で使用されることが好ましく、その含有量としては、接着層全体の20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0056】
接着層の量は、接着面の面積に対して、0.001〜5g/m
2の範囲とすることが好ましく、0.01〜3g/m
2であることがより好ましく、0.02〜2g/m
2であることがさらに好ましく、0.03〜1g/m
2であることが特に好ましく、0.05〜1g/m
2であることが最も好ましい。0.001g/m
2未満では、十分な耐内容物性が得られない傾向にあり、一方、5g/m
2を超える場合には、経済的に不利となる傾向にある。
【0057】
本発明の積層体が包装材料として用いられる場合は、通常、基材を外側、シーラント層を内側(内容物側)として使用される。包装材料という用途もしくは包装材料として要求される他の性能などを考慮し、必要に応じて他の層を設けてもよい。具体的には、基材層の外側に上記にて例示したような熱可塑性樹脂フィルムやバリア性材料の他、合成紙や紙などを、必要に応じて接着剤等を使用して適宜設けることができる。本発明の積層体の各層および他の層は印刷などの処理がされたものでもよい。
【0058】
以上のように、本発明の積層体における、基材層、接着層、シーラント層には、必要に応じて帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、発泡剤等が任意の配合量で添加されていてもよい。
【0059】
次に、本発明の積層体を製造する好ましい方法について説明する。
【0060】
本発明の積層体の製造方法では、まずあらかじめ用意された基材層上に、接着層を設ける。接着層を設ける方法としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂と架橋剤及び/又はポリウレタン樹脂とを含む液状物を作製し、この液状物を基材の表面に塗布し、液状物の媒体たる液状媒体を乾燥させる方法が好ましい。液状物の形態としては溶液、分散体が好ましく、液状媒体も水性媒体、有機溶剤のいずれでもよいが、本発明では、ポリオレフィン樹脂と架橋剤及び/又はポリウレタン樹脂とが水性媒体中に分散された水性分散体を利用することが好ましい。ただし、本発明では、液状物に加工しないで、ホットメルト等の手段により樹脂その他の固形分から直接的に接着層を形成してよく、これを排除するものではないが、液状物を利用することで、接着層の量の調整が容易となる他、接着層の厚みを薄く制御することができ、安価に大量生産が可能という点で好ましい。そして、液状物の中でも水性分散体を使用することは、環境面や性能面から好ましい。
【0061】
ポリオレフィン樹脂と架橋剤及び/又はポリウレタン樹脂とを含む液状物の調製方法としては、各成分が液状媒体中に均一に混合される方法であれば、特に限定されない。例えば、ポリオレフィン樹脂の分散液又は溶液と、架橋剤及び/又はポリウレタン樹脂の分散液又は溶液を混合する方法や、ポリオレフィン樹脂と架橋剤及び/又はポリウレタン樹脂の混合物を液状化する方法等が挙げられ、本発明では前者の方法が好ましい。本発明では、特に、ポリオレフィン樹脂の水性分散液に、架橋剤及び/又はポリウレタン樹脂の水性分散液又は水性溶液を添加することにより、水性分散体を調製することが好ましい。
【0062】
また、上記液状物には、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、帯電防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤や、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料あるいは染料を添加してもよい。さらに、液状物の安定性を損なわない範囲で上記以外の有機もしくは無機の化合物を液状物に添加することもできる。
【0063】
接着層の形成に液状物を用いる場合、その固形分の含有率は、特に限定されず、積層条件、目的とする接着層の厚みや性能等に応じて適宜選択することができる。しかし、液状物の粘度を適度に保ち、かつ良好な接着層を形成するという観点から、前記固形分含有率は1〜60質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
【0064】
ポリオレフィン樹脂水性分散液中におけるポリオレフィン樹脂の重量平均粒子径は、0.15μm以下が好ましい。なお、ポリオレフィン樹脂の水性分散液における前記樹脂粒子径は、架橋剤やポリウレタン樹脂の水性分散液又は水性溶液と混合した場合でも通常変化しない。
【0065】
ポリオレフィン樹脂の水性分散液は、不揮発性の水性化助剤を用いなくても製造することができる。不揮発性水性化助剤の使用を排除するものではないが、水性化助剤を用いずとも、ポリオレフィン樹脂を重量平均粒子径0.15μm以下の範囲で水性媒体中に安定的に分散することができる。このような水性分散体を使用して低温乾燥により製膜すると、耐水性や基材との密着性、さらに耐レトルト性、耐ボイル性、引き裂き特性にも優れる接着層が得られ、これらの性能は長期的にもほとんど変化しない。
【0066】
ここで、「水性化助剤」とは、水性分散液の調製において、水性化促進や水性分散液の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。
【0067】
不揮発性の水性化助剤は、ポリオレフィン樹脂成分に対して0.5質量%未満とすることが好ましく、含有していないことが特に好ましい。本発明でいう不揮発性水性化助剤としては、例えば、乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子等が挙げられる。
【0068】
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるものの他、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられる。ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体等のポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のソルビタン誘導体等が挙げられる。両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0069】
そして、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックス等の数平均分子量が通常5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類及びその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体及びその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマー及びその塩、ポリイタコン酸及びその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物等が挙げられる。
【0070】
また、塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2,2−ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピロール、ピリジン等が挙げられる。塩基性化合物の配合量としては、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜10倍当量であることが好ましく、0.8〜5倍当量がより好ましく、0.9〜3.0倍当量が特に好ましい。0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、10倍当量を超えると、接着層形成時の乾燥時間が長くなったり、水性分散液の安定性が低下したりする場合がある。
【0071】
ポリオレフィン樹脂の水性分散液を調製する場合、ポリオレフィン樹脂の水性化を促進し、分散粒子径を小さくする観点から、水性化の際に有機溶剤を配合することが好ましい。
【0072】
有機溶剤の含有量としては、水性媒体全体に対し50質量%以下が好ましく、1〜45質量%であることがより好ましく、2〜40質量%がさらに好ましく、3〜35質量%が特に好ましい。有機溶剤の含有量が50質量%を超える場合には、使用する有機溶剤によっては水性分散液の安定性が低下してしまう場合がある。
【0073】
有機溶剤としては、分散安定性良好な水性分散液を得るという点から、20℃の水に対する溶解性が10g/L以上のものが好ましく、20g/L以上がより好ましく、50g/L以上のものがさらに好ましい。
【0074】
有機溶剤としては、製膜の過程で効率よく接着層から除去させる観点から、沸点が150℃以下のものが好ましい。沸点が150℃を超える有機溶剤は、乾燥により接着層から飛散させることが困難となる傾向にあり、特に接着層の密着性や積層体の耐内容物性等が悪化する場合がある。好ましい有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、1,2−ジメチルグリセリン、1,3−ジメチルグリセリン、トリメチルグリセリン等が挙げられる。本発明の製造方法では、これらの有機溶剤を複数混合して使用してもよい。
【0075】
上記の有機溶剤の中でも、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルが樹脂の水性化促進により効果的であり、好ましい。
【0076】
ポリオレフィン樹脂の水性分散液を得るための方法としては、特に限定されないが、既述の各成分、すなわち、ポリオレフィン樹脂、水性媒体、必要に応じて有機溶剤、塩基性化合物等を、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法が採用でき、この方法が最も好ましい。
【0077】
容器としては、公知の固/液撹拌装置や乳化機を使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されないが、樹脂が水性媒体中で浮遊状態となる程度の低速の撹拌でよい。高速撹拌(例えば1000rpm以上)は必須ではなく、簡便な装置でも水性分散液の調製が可能である。
【0078】
例えば、上記の装置にポリオレフィン樹脂、水性媒体等の原料を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を70〜240℃、好ましくは100〜220℃、さらに好ましくは100〜200℃、特に好ましくは110〜190℃の温度に保ちつつ、好ましくは粗大粒子がなくなるまで(例えば、5〜300分間)攪拌を続ける。ここで、槽内の温度が70℃未満になると、ポリオレフィン樹脂の水性化が進行し難くなる。一方、槽内の温度が240℃を超えると、ポリオレフィン樹脂の分子量が低下する恐れがある。
【0079】
当該方法では、塩基性化合物、有機溶剤及び水を適宜追加配合してよく、そのときの割合としては、所望する固形分濃度、粒子径、分散度等に応じて適宜決めればよい。塩基性化合物、有機溶剤又は水を追加配合する方法は特に限定されないが、ギヤポンプを用いて加圧下で配合する方法や、一旦系内温度を下げた後、開封して配合する方法等がある。追加配合する塩基性化合物、有機溶剤又は水の総量は、配合した後の固形分濃度が1〜50質量%となるように調整することが好ましく、2〜45質量%となる量がより好ましく、3〜40質量%となる量が特に好ましい。
【0080】
水性分散液の調製時に上記の有機溶剤を用いた場合には、樹脂の水性化の後に、その一部を、一般に「ストリッピング」と呼ばれる脱溶剤処理によって系外へ留去させ、有機溶剤の含有量を低減させてもよい。ストリッピングにより、水性分散液中の有機溶剤含有量は、10質量%以下とすることができ、5質量%以下とすれば、環境上好ましい。ストリッピングの工程では、水性化に使用した有機溶剤を実質的に全て留去することもできるが、装置の減圧度を高めたり、操業時間を長くしたりする必要があるため、こうした生産性を考慮した場合、有機溶剤含有量の下限は0.01質量%程度が好ましい。しかし、0.01質量%未満であっても、特に性能面での影響はなく、使用には何ら問題ない。
【0081】
ストリッピングの方法としては、常圧又は減圧下で当該水性分散液を攪拌しながら加熱し、有機溶剤を留去する方法が挙げられる。また、水性媒体が留去されることにより、固形分濃度が高くなるため、例えば、粘度が上昇し作業性が悪くなるような場合には、予め水性分散液に水を添加しておいてもよい。
【0082】
このようにして得られた水性分散液の固形分濃度の調整方法としては、例えば、所望の固形分濃度となるように水性媒体を留去したり、水により希釈したりする方法が挙げられる。
【0083】
上記の調製方法を採用することで、ポリオレフィン樹脂が水性媒体中に効率よく分散又は溶解され、均一な液状に調製することが可能となる。ここで、均一な液状であるとは、外観上、水性分散液中に沈殿、相分離あるいは皮張りといった、固形分濃度が局部的に他の部分と相違する部分が見いだされない状態にあることをいう。
【0084】
以上のようにして、接着層を形成するための液状物を調製することができる。その後は、基材層表面にこの液状物を塗布する。このときの塗布方法としては、従来公知の方法が採用できる。例えば、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が挙げられる。なお、前述の通り、基材層塗布面は表面活性化処理されていることが好ましく、液状物の形態は水性分散体であることが好ましい。また、基材層塗布面には、必要に応じて下塗り層が設けられていてもよい。
【0085】
このような方法により、基材層表面もしくは表面に設けられた下塗り層面に液状物を均一に塗布することができる。そして、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理又は乾燥のための加熱処理に供することにより、均一な接着層を樹脂フィルム上に形成することができる。
【0086】
このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、被塗布物たる樹脂フィルムの特性や液状物に任意に配合しうる前述の各種有機溶剤や添加剤の添加具合等を考慮して、適宜決定すればよい。一例として、経済性の観点から、加熱温度としては、30〜250℃が好ましく、60〜180℃がより好ましく、80〜150℃が特に好ましい。一方、加熱時間としては、1秒〜20分が好ましく、5秒〜60秒がより好ましく、5秒〜30秒が特に好ましい。
【0087】
さらに、基材表面に液状物を塗布する場合、二軸延伸されたフィルムに塗布し、その後乾燥、熱処理してもよく、また、製造工程中の基材、すなわち配向が完了する以前の未延伸フィルム、あるいは一軸延伸の終了したフィルムに液状物を塗布し、乾燥後あるいは乾燥と同時に延伸し配向を完了させてもよい。上述の未延伸フィルム、あるいは一軸延伸終了後のフィルムに、液状物を塗布、乾燥し、延伸配向させる方法が、基材の製膜と同時に接着層を積層することができるため、コストの点から好ましい。また、上述のように接着層を設けた後、別途バリア性材料を設けても良い。
【0088】
従来、ポリプロピレン樹脂は、前述のようにシーラント樹脂として優れた特性を持つ一方、これを使用して押出ラミネート法により、接着性、耐内容物特性、耐レトルト性、耐ボイル性、引き裂き特性に優れる積層体を得ることは困難であった。しかし、本発明の製造方法によれば、押出ラミネート法を用いた場合でも、接着性、耐内容物特性、耐レトルト性、耐ボイル性、引き裂き特性に優れる積層体を得ることができる。
【0089】
具体的には、シーラント層形成にあたりTダイからポリプロピレンを含有するシーラント樹脂を溶融押出する際、Tダイから押出された直後の樹脂温度を、好ましくは230〜300℃となるように設定する。特にポリプロピレンの熱分解を抑える観点から、樹脂温度は低温であることが望ましく、230〜270℃であることが好ましい。さらに、密着性を向上させ熱分解を抑えるという観点から、240〜260℃であることがより好ましい。
【0090】
本発明では、このように接着層を介してポリプロピレンを含有するシーラント樹脂(シーラント層)を積層する際、押出ラミネート法が好ましく採用されるが、押出ラミネート法以外の方法でも密着性よく当該シーラント樹脂を積層できるのであれば、別の方法を採用してもよい。押出ラミネート法以外の方法としては、例えば、接着層と、ポリプロピレンを含有する樹脂フィルムとを熱によってラミネートする方法(ドライラミネート法)等が挙げられる。
【0091】
シーラント樹脂を接着層表面に積層した後、得られた積層体の接着性、耐内容物性、耐レトルト性、耐ボイル性、引き裂き特性の向上を目的として、これをエージング処理してもよい。エージング処理は、常温〜100℃程度の温度で行うことが好ましく、積層体への熱によるダメージや経済性の観点から30〜60℃で行うことがより好ましく、40〜50℃で行うことがさらに好ましい。
【0092】
積層体のラミネート強度としては、引張り試験機を用いて、20℃、65%RHの雰囲気中、引張り強度200mm/分の条件でT型剥離試験を行うことで、評価することができる。このとき、ラミネート強度が1.5N/15mm以上であれば、包装材料としての使用に問題ないレベルであり好ましく、より好ましくは2.0N/15mm以上である。なお、ラミネート強度が非常に高い場合は、測定時にシーラント層に伸びや切れが発生し、剥離が不可能となるため、正確なラミネート強度を測定することができないことがある。このような現象は、ラミネート状態として最も好ましい状態といえ、優れた接着性の裏づけとなる。また、内容物の保存後や、レトルト処理およびボイル処理を行った後においてもラミネート強度が1.5N/15mm以上を保持していることが好ましく、ラミネート強度が低下していないことが最も好ましい。
【0093】
本発明の積層体は、様々な用途に用いることができ、中でも包装材料に特に好適である。本発明の積層体を包装材料として用いる場合、内容物は特に限定されず、液体、粘調体、粉体、固形物又はこれらの組み合わせ等、任意のものに適用可能である。本発明の積層体は、特に食品向け包装材料として好適であり、例えばポテトチップス、クッキー、ビスケット、チョコスナック、せんべい、あられ、ポップコーンのようなスナック菓子類、カレー、ハヤシ、シチュー、スープ、粥、パスタソース、料理用ソース、丼類の素、釜飯の素、米飯、おでん、ハンバーグ、ミートボール、ヤキトリ、肉じゃが、酢豚、麻婆豆腐、野菜の水煮、ぜんざい、ベビーフード、流動食などのレトルト食品、こんにゃく、ちくわ、蒲鉾等の練り食品、ハム、ソーセージ等の燻製食品、水産加工製品、お茶、かつお節、昆布粉末スープ等の乾燥物、ケチャップ、香辛料、ソース、醤油、酢、味噌、スープ等の調味料、パン類、麺類、冷凍食品、漬物、佃煮、嗜好品等の食品類、サラダ油、食用油、ごま油、オリーブオイル、マーガリン、バター等の油脂類を内容物とする包装材料に好適である。この他、本発明の積層体は、農薬、防虫剤、殺虫剤、湿布材、歯磨き剤、錠剤のような医薬(部外)品、芳香剤、香料、入浴剤、化粧品、トイレタリー製品、界面活性剤、シャンプー、リンス、消臭剤、洗剤のようなアメニティー用品類、雑貨品、二次電池、電解液、電子部品、IC、機械部品のような産業部材等を内容物とする包装材料にも好適である。
【0094】
従来の包装材料では、内容物に含まれる水分、揮発性物質、浸透性物質又は刺激性物質等が包装材料中の接着層に浸透すると、包装材料の接着性が経時的に低下し、ときには両層が剥がれ(デラミ)包装材料が破損するといった現象が見られた。しかし、本発明の積層体は耐内容物特性に優れているため、かかる積層体を用いれば、このような内容物を包んでも接着性が低下し難い包装材料が提供できる。
【0095】
また、従来の包装材料では、レトルト処理やボイル処理の熱水や高圧蒸気によって包装材料の接着性が経時的に低下し、ときにはデラミして包装材料が破損するといった現象が見られた。また、レトルト処理やボイル処理による接着性低下が抑えられていても、開封時の引き裂き特性に劣り、内容物がこぼれやすいという問題があった。しかし、本発明の積層体は耐レトルト性や耐ボイル性に優れているため、かかる積層体を用いれば、レトルト処理やボイル処理を行っても接着性が低下し難く、かつ引き裂き特性にも優れた包装材料が提供できる。
【0096】
本発明の積層体を使用して包装材料を製袋する場合、包装材料の形態としては、縦製袋充填シール袋、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、合掌袋、ピロー包装袋、ラミネートチューブ容器、輸液バッグ、カップ状容器や容器用蓋材、ゲーブルトップ型容器、ブリック型容器、スパウト付パウチ、スタンドアップパウチ、コンポジット缶等種々のものが挙げられ、最内層のシーラント層にポリプロピレン樹脂製チャックを設けて、チャック付き包装袋としたり、内容物が見えるように窓付きとしたりすることもできる。また、必要に応じて、上記袋に対しコーナーカット、折り目等を付加してもよい。
【0097】
また、本発明の積層体には、本発明との組み合わせで引き裂き特性を損なわないのであれば、易開封技術が施されていても構わない。易開封技術としては、例えば、積層体の特定層又は複数の層において、直線引き裂き性を有する熱可塑性樹脂フィルムを用いたり、直線もしくは全面に貫通孔および/又は未貫通孔を設けたり、薄膜化処理を設けたりする技術等の他、ノッチ加工、ミシン目加工等がある。直線引き裂き性を有する熱可塑性樹脂フィルムの製造方法としては、特に限定されず、公知の製造方法を採用することができる。直線引き裂き性を有する熱可塑性樹脂フィルムの市販品としては、例えば、ユニチカ社製のエンブレムNC、エンブレットPC、出光石油化学社製のユニアスロンTB等が挙げられる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各種の特性は以下の方法により測定又は評価した。
【0099】
1.ポリオレフィン樹脂
(1)不飽和カルボン酸単位の含有量
赤外吸収スペクトル分析(Perkin Elmer System−2000 フーリエ変換赤外分光光度計、分解能4cm
−1)により求めた。
(2)不飽和カルボン酸単位以外の樹脂の構成
オルトジクロロベンゼン(d
4)中、120℃にて
1H−NMR、
13C−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。
13C−NMR分析では、定量性を考慮したゲート付きデカップリング法に基づき測定した。
(3)樹脂の重量平均分子量
重量平均分子量は、GPC装置(東ソー社製HLC−8020、カラムはSHODEX社製KF−804L2本、KF805L1本を連結して用いた。)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速1ml/min、40℃の条件で測定した。約10mgの樹脂をテトラヒドロフラン5.5mLに溶解し、PTFEメンブランフィルターでろ過したものを測定用試料とした。ポリスチレン標準試料で作製した検量線から重量平均分子量を求めた。テトラヒドロフランに溶解し難い場合はオルトジクロロベンゼンで溶解した。
【0100】
2.積層体
(1)接着層の量(塗布量)
あらかじめ面積及び質量を計測した基材に、ポリオレフィン樹脂と架橋剤及び/又はポリウレタン樹脂とを含有する水性分散体を塗布し、100℃で1分間、乾燥した。得られた積層体の質量を測定し、塗布前の基材の質量を差し引くことにより塗布量を求めた。塗布量と塗布面積とから単位面積当りの塗布量(g/m
2)を算出した。
(2)ラミネート強度
得られた積層体から幅15mmの試験片を採取し、引張り試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機2020型)を用い、T型剥離により、試験片の端部から基材とシーラント層との界面を剥離して強度を測定した。測定は20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度200mm/分で行った。
(3)耐内容物特性
10cm角の積層体を2枚用い、積層体のシーラント層を内側として、内容物としてサラダ油5gを充填しつつ、シール幅1cmで積層体の四方をヒートシールして包装材料を作製した。これを40℃で保存した。1ヶ月経過後、密封した包装材料を開封し、前記(2)と同様にして、包装材料から積層体の試験片を採取して、ラミネート強度を測定した。このときのラミネート強度は、1.5N/15mm以上であることが好ましく、(2)と比べて変化が少ないことがより好ましい。
(4)耐レトルト試験
10cm角の積層体を2枚用い、積層体のシーラント層を内側として、内容物として水40gを充填しつつ、シール幅1cmで積層体の四方をヒートシールして包装材料を作製した。その後、サンプルをオートクレーブにて125℃で30分間レトルト処理を行った。処理後、密封した包装材料を開封する際、切り目を入れて手で引き裂いた場合の引き裂き特性を以下の指標で評価した。
◎:抵抗が少なく、スムーズに開封できる。
○:やや抵抗があり、開封口がやや歪になる。
×:抵抗が大きく開封感が重い。もしくは、シーラントが伸びて開封しづらい。
また、前記(2)と同様にして、包装材料から積層体の試験片を採取して、ラミネート強度を測定した。このときのラミネート強度は、1.5N/15mm以上であることが好ましく、(2)と比べて変化が少ないことがより好ましい。
(5)耐ボイル試験
10cm角の積層体を2枚用い、積層体のシーラント層を内側として、内容物として水40gを充填しつつ、シール幅1cmで積層体の四方をヒートシールして包装材料を作製した。その後、サンプルを沸騰水中で30分間ボイル処理を行った。処理後、密封した包装材料を開封し、前記(2)と同様にして、包装材料から積層体の試験片を採取して、ラミネート強度を測定した。このときのラミネート強度は、1.5N/15mm以上であることが好ましく、(2)と比べて変化が少ないことがより好ましい。
【0101】
(製造例1:ポリオレフィン樹脂P−1の製造)
プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でキシレン470gに加熱溶解させた後、系内温度を140℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸40.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド28.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後6時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥してポリオレフィン樹脂P−1を得た。
【0102】
(ポリオレフィン樹脂P−2、P−7、P−8の製造)
プロピレン/1−ブテンの質量比をプロピレン/1−ブテン=65/35(P−2)、97/3(P−7)、50/50(P−8)にそれぞれ変更した以外は、製造例1と同様の方法でポリオレフィン樹脂P−2、P−7及びP−8を得た。
【0103】
(ポリオレフィン樹脂P−3の製造)
プロピレン−ブテン共重合体に代えて、プロピレン−エチレン共重合体(質量比:プロピレン/エチレン=92/8)を用いた以外は、製造例1と同様の方法でポリオレフィン樹脂P−3を得た。
【0104】
(ポリオレフィン樹脂P−4の製造)
無水マレイン酸の添加量を40.0gに代えて26.0gとすること、並びにジクミルパーオキシドの添加量を28.0gに代えて50.0gとすること以外は、製造例1と同様の方法でポリオレフィン樹脂P−4を得た。
【0105】
(ポリオレフィン樹脂P−5の製造)
無水マレイン酸の添加量を40.0gに代えて48.0gとすること、並びにジクミルパーオキシドの添加量を28.0gに代えて13.0gとすること以外は、製造例1と同様の方法でポリオレフィン樹脂P−5を得た。
【0106】
(ポリオレフィン樹脂P−6の製造)
無水マレイン酸の添加量を40.0gに代えて65.0gとすること、並びにジクミルパーオキシドの添加量を28.0gに代えて7.0gとすること以外は、製造例1と同様の方法でポリオレフィン樹脂P−5を得た。
【0107】
(ポリオレフィン樹脂P−9の製造)
無水マレイン酸の添加量を40.0gに代えて4.8gとすること、並びにジクミルパーオキシドの添加量を28.0gに代えて9.3gとすること以外は、製造例1と同様の方法でポリオレフィン樹脂P−9を得た。
【0108】
(ポリオレフィン樹脂P−10の製造)
ジクミルパーオキサイドの添加量を40.0gに代えて35.0gとすること、並びにジクミルパーオキシドの添加量を28.0gに代えて70.0gとすること以外は、製造例1と同様の方法でポリオレフィン樹脂P−10を得た。
【0109】
以上で得られたポリオレフィン樹脂P−1〜P−10の特性を表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
(調製例1)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂(P−1)、45.0gのエチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬社製)、8.0gのN,N−ジメチルエタノールアミン及び137.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて内温が80℃になるまで冷却し、開封して、45.0gのテトラヒドロフラン(和光純薬社製)、5.0gのN,N−ジメチルエタノールアミン及び30.0gの蒸留水を添加した。その後、密閉し、撹拌翼の回転速度を300rpmとして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。そして、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散液E−1を得た。このとき、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
【0112】
(調製例2〜5、7〜10)
ポリオレフィン樹脂としてP−2〜5,7−10を用いた以外は、調製例1と同様の方法で水性分散液E−2〜5、7〜10を得た。なお、P−9を用いた調製例9(E−9)では、安定した分散液を得ることができなかった。
【0113】
(調製例6)
ポリオレフィン樹脂としてP−6を用い、ポリオレフィン樹脂の量を60.0gに代えて30.0gに変更する以外は、調製例1と同様の方法で水性分散液E−6を得た。
【0114】
(実施例1)
まず、ポリオレフィン樹脂水性分散液E−1とオキサゾリン基含有化合物の水性溶液(日本触媒社製、エポクロスWS−700)とを、ポリオレフィン樹脂100質量部に対してオキサゾリン基含有化合物の含有量が10質量部となるように混合して、水性分散体を調製した。次に、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製、エンブレット)を用意し、グラビアコート機を用いてポリエステル樹脂フィルムのコロナ放電処理面に、上記水性分散体を乾燥後の塗布量が0.5g/m
2になるように塗布し、その後100℃で10秒間乾燥し、接着層を形成した。そして、押出ラミネート装置を用いて、接着層表面にシーラント樹脂としてポリプロピレン(日本ポリプロ社製 ノバテックPP FL02A)を溶融押出して、30μmのポリプロピレン層からなるシーラント層が形成された積層体を得た。このとき、Tダイから押出されたシーラント樹脂の温度は240℃であった。
【0115】
(実施例2、8、比較例7〜9、参考例1)
ポリオレフィン樹脂水性分散液E−1に代えて、ポリオレフィン樹脂水性分散液E−2(実施例2)、E−3(参考例1)、E−6(実施例8)、E−7(比較例7)、E−8(比較例8)、E−10(比較例9)をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0116】
(実施例4)
ポリオレフィン樹脂水性分散液E−1に代えてポリオレフィン樹脂水性分散液E−4を用いたこと、オキサゾリン基含有化合物の含有量をポリオレフィン樹脂100質量部に対して5質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0117】
(実施例5〜7)
ポリオレフィン樹脂水性分散液E−1に代えてポリオレフィン樹脂水性分散液E−5を用いたこと、オキサゾリン基含有化合物の含有量をポリオレフィン樹脂100質量部に対してそれぞれ20質量部(実施例5)、1質量部(実施例6)、50質量部(実施例7)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0118】
(
参考例4、5、比較例12、13)
オキサゾリン基含有化合物の水性溶液に代えてカルボジイミド基含有化合物の水性溶液(日清紡社製、カルボジライトV−02−L2)を用いたこと、カルボジイミド基含有化合物の含有量をポリオレフィン樹脂100質量部に対してそれぞれ30質量部(
参考例4)、1質量部(
参考例5)、0.5質量部(比較例12)、60質量部(比較例13)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0119】
(
参考例6、7)
ポリオレフィン樹脂水性分散液E−1に代えてポリオレフィン樹脂水性分散液E−2を用いたこと、カルボジイミド基含有化合物の含有量をポリオレフィン樹脂100質量部に対してそれぞれ30質量部(
参考例6)、1質量部(
参考例7)としたこと以外は、
参考例4と同様の方法で積層体を得た。
【0120】
(実施例13、比較例14、15)
オキサゾリン基含有化合物の水性溶液に代えてイソシアネート基含有化合物(BASF社製、バソナートHW−100、固形分濃度:100質量%)の10質量%水溶液を用いたこと、イソシアネート基含有化合物の含有量をポリオレフィン樹脂100質量部に対してそれぞれ25質量部(実施例13)、0.5質量部(比較例14)、60質量部(比較例15)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0121】
(実施例14、15、比較例16、17)
オキサゾリン基含有化合物の水性溶液に代えてポリウレタン樹脂水性分散液(三井化学社製、タケラックW−6010)を用いたこと、ポリウレタン樹脂の含有量をポリオレフィン樹脂100質量部に対してそれぞれ1質量部(実施例14)、50質量部(実施例15)、0.5質量部(比較例16)、350質量部(比較例17)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0122】
(実施例16、17)
ポリオレフィン樹脂水性分散液E−1に代えてポリオレフィン樹脂水性分散液E−2を用いたこと、ポリウレタン樹脂の含有量をポリオレフィン樹脂100質量部に対してそれぞれ100質量部(実施例16)、300質量部(実施例17)としたこと以外は、実施例14と同様の方法で積層体を得た。
【0123】
(実施例18)
ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、それぞれオキサゾリン基含有化合物の含有量が5質量部、カルボジイミド基含有化合物の含有量が30質量部になるように、エポクロスWS−700及びカルボジライトV−02−L2を混合して水性分散体とした以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0124】
(実施例19)
オキサゾリン基含有化合物の含有量をポリオレフィン樹脂100質量部に対して10質量部、カルボジイミド基含有化合物の含有量をポリオレフィン樹脂100質量部に対して1質量部にそれぞれ変更したこと以外は、実施例18と同様の方法で積層体を得た。
【0125】
(実施例20)
ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、それぞれオキサゾリン基含有化合物の含有量が10質量部、ポリウレタン樹脂の含有量が100質量部になるように、エポクロスWS−700及びタケラックW−6010を混合して水性分散体とした以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0126】
(実施例21)
オキサゾリン基含有化合物の含有量をポリオレフィン樹脂100質量部に対して15質量部、ポリウレタン樹脂の含有量をポリオレフィン樹脂100質量部に対して30質量部にそれぞれ変更したこと以外は、実施例20と同様の方法で積層体を得た。
【0127】
(実施例22)
ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、それぞれカルボジイミド基含有化合物の含有量が1質量部、ポリウレタン樹脂の含有量が100質量部になるように、カルボジライトV−02−L2及びタケラックW−6010を混合して水性分散体とした以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0128】
(実施例23)
カルボジイミド基含有化合物の含有量をポリオレフィン樹脂100質量部に対して30質量部、ポリウレタン樹脂の含有量をポリオレフィン樹脂100質量部に対して30質量部にそれぞれ変更したこと以外は、実施例22と同様の方法で積層体を得た。
【0129】
(実施例24〜25、
29〜30、参考例2
、8〜9)
二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムに代えて厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ社製、エンブレム)を用い、当該ナイロンフィルムのコロナ放電処理面に水性分散体を塗布する以外は、それぞれ実施例1〜2
、15、16、参考例1
、4、6と同様の方法で積層体(実施例24〜25、
29〜30、参考例2
、8〜9)を得た。
【0130】
(実施例31〜32、
36〜38、参考例3
、10〜11)
厚さ12μmの二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製、エンブレット)を使用し、グラビアコート機を用いてポリエステル樹脂フィルムのコロナ面に二液硬化型のポリウレタン系接着剤(東洋モートン社製)を乾燥後の塗布量が5g/m
2になるように塗布、乾燥し、厚み7μmのアルミニウム箔を貼り合わせた基材を得た。
【0131】
二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムに代えて上記基材を用い、そのアルミニウム面に接着層を設ける以外は、それぞれ実施例1〜2
、13、15、16、参考例1
、4、6と同様の方法で積層体(実施例31〜32、
36〜38、参考例3
、10〜11)を得た。
【0132】
(実施例39)
Tダイを備えた押出機(75mm径、L/Dが45の緩圧縮タイプ単軸スクリュー)を用いて、ポリエチレンテレフタレート樹脂(日本エステル社製、固有粘度0.6)をシンリンダー温度260℃、Tダイ温度280℃でシート状に押出し、その後、表面温度25℃に調節された冷却ロール上に密着させて急冷し、厚み120μmの未延伸フィルムを得た。
【0133】
続いて、未延伸フィルムを90℃で縦方向に3.4倍延伸した後、グラビアコート機を用いて、フィルム表面に実施例1で用いた水性分散体を乾燥、延伸後の塗布量が0.2g/m
2になるように塗布し、温度90℃で2秒間予熱した後、横方向に3.5倍延伸した。得られたポリエステルフィルムと接着層を合わせた厚みは、12μmであった。
【0134】
そして、以降は実施例1と同様の方法でシーラント層を積層し、積層体を得た。
【0135】
(
参考例12)
水性分散体として
参考例4で用いた水性分散体を用いた以外は、実施例39と同様の方法で積層体を得た。
【0136】
(実施例41)
水性分散体として実施例13で用いた水性分散体を用いた以外は、実施例39と同様の方法で積層体を得た。
【0137】
(実施例42)
水性分散体として実施例15で用いた水性分散体を用いた以外は、実施例39と同様の方法で積層体を得た。
【0138】
(比較例1、2)
水性分散体中のオキサゾリン基含有化合物を省いた以外は、それぞれ実施例1、5と同様の方法で積層体(比較例1、2)を得た。
【0139】
(比較例3〜6)
水性分散体中のポリオレフィン樹脂を省いた以外は、それぞれ実施例1、
参考例4、
実施例13、14と同様の方法で積層体(比較例3〜6)を得た。
【0140】
(比較例10、11)
オキサゾリン基含有化合物の含有量をポリオレフィン樹脂100質量部に対してそれぞれ0.5質量部(比較例10)、60質量部(比較例11)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0141】
(比較例18、22)
水性分散体中のオキサゾリン基含有化合物を省いた以外は、それぞれ実施例24、31と同様の方法で積層体(比較例18、22)を得た。
【0142】
(比較例19〜21、23〜26)
水性分散体中のポリオレフィン樹脂を省いた以外は、それぞれ実施例24、
参考例8、
実施例29、31、
参考例10、
実施例36、37と同様の方法で積層体(比較例19〜21、23〜26)を得た。
【0143】
(比較例27)
接着層表面にシーラント樹脂としてポリプロピレンに代えてポリエチレン(日本ポリエチレン社製 ノバテックLD LC600A)を溶融押出して、30μmのポリエチレン層からなるシーラント層を形成した以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。このとき、Tダイから押出されたシーラント樹脂の温度は270℃であった。
【0144】
(比較例28)
接着層表面にシーラント樹脂としてポリプロピレンに代えてポリエチレン(日本ポリエチレン社製 ノバテックLD LC600A)を溶融押出して、30μmのポリエチレン層からなるシーラント層を形成した以外は実施例31と同様の方法で積層体を得た。このとき、Tダイから押出されたシーラント樹脂の温度は270℃であった。
【0145】
実施例1〜2、4〜
8、13〜25、
29〜32、
36〜39、41〜42、参考例1〜
12で得られた積層体の特性を表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
比較例1〜28で得られた積層体の特性を表3に示す。
【0148】
【表3】
【0149】
表2に示すように、実施例1〜2、4〜
8、13〜25、
29〜32、
36〜39、41〜42で得られた積層体は、接着性、耐内容物特性、耐レトルト性、耐ボイル性、引き裂き特性に優れるものであり、各種包装材料に好適に使用できるものであった。加えて、製造工程も安定しており、コスト面でも有利であった。
【0150】
一方、表3に示すように、本発明の構成を欠く積層体の場合、すなわち、ポリオレフィン樹脂のみで接着層を構成した場合(比較例1、2、18、22)、架橋剤又はポリウレタン樹脂のみで接着層を構成した場合(比較例3〜6、19〜21、23〜26)、ポリオレフィン樹脂の組成や分子量が本発明における構成を満足しない場合(比較例7〜9)、ポリオレフィン樹脂と、架橋剤、ポリウレタン樹脂の含有比率が本発明における構成を満足しない場合(比較例10〜17)は、いずれも積層体のラミネート強度が小さく、また、耐内容物特性、耐レトルト性、耐ボイル性、引き裂き特性に劣るものであった。したがって、包装材料用の積層体として使用するには不適であった。
また、シーラント樹脂としてポリエチレンを用いた場合(比較例27〜28)、積層体のラミネート強度は十分であるものの、耐内容物特性、耐レトルト性、耐ボイル性、引き裂き特性に劣るため包装材料用の積層体として使用するには不適であった。