(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0012】
[二液混合型硬化性樹脂組成物について]
本発明の二液混合型硬化性樹脂組成物は、下記樹脂組成物(I)と、下記樹脂組成物(II)とからなるものである。ここで、樹脂組成物(I)は、架橋性シリル基を分子内に有
し、主鎖骨格がポリオキシアルキレン及び/又はポリ(メタ)アクリレートである硬化性シリコーン系樹脂(A)及び下記エポキシ樹脂(C)の硬化剤(B)(以下、単に「硬化剤(B)」と記載することがある)を含有する樹脂組成物である。また、樹脂組成物(II)は、オキシラン環を分子内に含有するエポキシ樹脂(C)、上記硬化性シリコーン系樹脂(A)の硬化触媒である
、常温で固体
であり且つジオクチルスズジステアレート及び/又はジオクチルスズマレートポリマーよりなる有機スズ化合物(D)及び上記硬化性シリコーン系樹脂(A)の硬化剤としての水(E)を含有する樹脂組成物である。常温で固体
であり且つジオクチルスズジステアレート及び/又はジオクチルスズマレートポリマーよりなる有機スズ化合物(D)は、水(E)と共存しても、その触媒活性が経時で変化しないために、二液を混合後、速やかに硬化することが可能であり、さらに、内部硬化性及び貯蔵安定性ともに優れる二液混合型硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0013】
樹脂組成物(I)と樹脂組成物(II)とを混合した時点で、樹脂組成物(I)に含有される硬化性シリコーン系樹脂(A)が、樹脂組成物(II)に含有される常温で固体の有機スズ化合物(D)によって活性化されるとともに、同じく樹脂組成物(II)に含有される水(E)によって加水分解縮合反応が起こることにより硬化する。また、これと同時に、樹脂組成物(II)に含有されるエポキシ樹脂(C)が、樹脂組成物(I)に含有される硬化剤(B)と反応して硬化する。その結果、最終的な硬化物は、これらが相互に入り組んだ高次構造となっているものと推察される。
樹脂組成物(I)と樹脂組成物(II)の混合比率は、組成物(I)中の硬化性シリコーン系樹脂(A):組成物(II)中のエポキシ樹脂(C)=15:85〜95 :5(質量比)の範囲
である。
【0014】
以下、各組成物及び構成成分について説明する。
[硬化性シリコーン系樹脂(A)について]
本発明における硬化性シリコーン系樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される架橋性シリル基を分子内に有する硬化性シリコーン系樹脂である。本発明で使用される硬化性シリコーン系樹脂(A)は、作業性などの面から、室温で液状であることが好ましい。また、硬化性シリコーン系樹脂(A)は、所望の性能に合わせて、1種単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
−SiR
13−x(OR
2)
x ・・・式(1)
(但し、R
1、R
2は炭素数1〜10個の炭化水素基を、xは1、2又は3を、それぞれ示す)
【0015】
上記アルコキシシリル基は、上記一般式(1)で表されるように、ケイ素原子に対して炭化水素基(R
1)が2〜0個結合すると共に、アルコキシ基(R
2)が1〜3個結合しているものである。そして、このケイ素原子には、後述する結合官能基を介して主鎖が結合している。前記炭化水素基(R
1)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。前記アルコキシ基(R
2)としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であるのが好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であるのがより好ましい。
【0016】
前記アルコキシ基の数としては、硬化速度を高めたい場合は3個(x=3)が好ましく、密着性を高めたい場合は2個(x=2)又は1個(x=1)が好ましい。アルコキシ基の数については、二液混合型硬化性樹脂組成物に求められる性能によって、適宜比率を調整すればよいが、特に、アルコキシシリル基としてトリアルコキシシリル基(x=3)、好ましくはトリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基、より好ましくはトリメトキシシリル基を含有すると、さらに良好な初期硬化性を得ることができる。
硬化性シリコーン系樹脂(A)の主鎖骨格は、ポリオキシアルキレン及び/又はポリ(メタ)アクリレートである。
【0017】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の主鎖骨格
は、ポリオキシアルキレン又はポリ(メタ)アクリレートが含まれていてもよいし、
ポリオキシアルキレン及びポリ(メタ)アクリレートの2種
が含まれていてもよい。
硬化性シリコーン系樹脂(A)
は、主鎖骨格がポリオキシアルキレンである硬化性シリコーン樹脂(a1)と、主鎖骨格がポリ(メタ)アクリレートある硬化性シリコーン樹脂(a2)とからなる混合物であ
ってもよい。混合物にすると、粘度、耐熱性、被着材料に対する密着性のバランスの良い接着剤を得ることができる。硬化性シリコーン樹脂(a1)は適度な粘度で作業性が良いことが特徴であり、硬化性シリコーン樹脂(a2)は耐熱性が高いことが特徴である。
【0018】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の分子量は特に制限されないが、1,000〜80,000が好ましく、1,500〜60,000がより好ましく、2,000〜40,000が特に好ましい。分子量が1,000を下回ると、架橋密度が高くなり過ぎることから得られる硬化物が脆い物性となる場合があり、分子量が80,000を上回ると、粘度が高くなり作業性が悪くなるため溶剤や希釈剤が多量に必要になるなど配合が制限される場合がある。
【0019】
硬化性シリコーン系樹脂(A)のアルコキシシリル基と主鎖骨格とは、結合官能基を介して結合されている。結合官能基は主鎖骨格に対してアルコキシシリル基を導入する際の化学反応によって生じるものであり、主鎖骨格とアルコキシシリル基以外の化学構造部分を指す。結合官能基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、フェニレン基、ウレタン結合、尿素結合、置換尿素結合、カーボネート基等、これらの複数及びこれら以外の化学構造を含む2価の化学結合が挙げられる。
【0020】
また、本発明では、硬化性シリコーン系樹脂(A)として、分子内にアルコキシシリル基を有し、かつ、分子内(特に好ましくは結合官能基内)に特定の極性基を含有する硬化性樹脂を好適に用いることができる。ここで、特定の極性基とは、ウレタン結合基、チオウレタン結合基、尿素結合基、チオ尿素結合基、置換尿素結合基、置換チオ尿素結合基、アミド結合基、スルフィド結合基、ヒドロキシ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基及び第三級アミノ基等の酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含有する結合基又は官能基等を指す。このような極性基を加水分解性ケイ素基の近傍に導入すると、硬化性樹脂自体の硬化能が高まるため好ましい。
【0021】
特に、これらの特定極性基の中では、ウレタン結合基、チオウレタン結合基、尿素結合基、チオ尿素結合基、置換尿素結合基、置換チオ尿素結合基、アミド結合基、第一級アミノ基、第二級アミノ基及び第三級アミノ基等の含窒素極性基を有するものが好ましく、ウレタン結合基(−NHCOO−)、尿素結合基(−NHCONH−)、置換尿素結合基(−NHCONR−;R=有機基)を有するものであることが最も好ましい。硬化性樹脂自体の硬化能が高まる理由としては、硬化性樹脂の分子内に存在する特定極性基同士がドメインを形成し、その結果、硬化性樹脂の加水分解性ケイ素基同士のカップリング反応がさらに促進されるためであると考えられる。
【0022】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の市販品としては、変成シリコーン樹脂として多数販売されている。例えば、カネカ社製のサイリルシリーズ、カネカMSポリマーシリーズ、MAシリーズ、EPシリーズ、SAシリーズ、ORシリーズ、旭硝子社製のエクセスターシリーズ、WackerChemieAG製のGENIOSILSTP−E10、GENIOSILSTP−E30、エボニックジャパン社製のシラン変性ポリアルファオレフィン、信越化学工業社製のKCシリーズ、KRシリーズ、X−40シリーズ、東亞合成社製のXPRシリーズ、綜研化学社製のアクトフローシリーズ等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0023】
また、分子内に極性基を含有する硬化性シリコーン系樹脂は、従来公知の方法で合成すればよい。例えば、イソシアネート基末端ポリマーにアミノ基含有アルコキシシラン化合物(あるいはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物)を反応させる方法や、水酸基末端有機重合体にイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物を反応させる方法等が知られている。より具体的には、特許第3030020号公報、特許第3343604号公報、特開2005−54174号公報、特表2004−518801号公報、特表2004−536957号公報、特表2005−501146号公報等に記載の方法で容易に合成することができる。
【0024】
上述のとおり、上記硬化性シリコーン系樹脂(A)は、その主鎖がポリオキシアルキレンである硬化性シリコーン樹脂(a1)と、その主鎖がポリ(メタ)アクリレートである硬化性シリコーン樹脂(a2)とからなる二液混合型硬化性樹脂組成物も本発明の好ましい態様である。
硬化性シリコーン系樹脂(A)が上記組成のものであると、接着耐久性が向上する。
また、上記硬化性シリコーン樹脂(a1)及び/又は硬化性シリコーン樹脂(a2)が有する架橋性シリル基として、トリメトキシシリル基を含有するものである態様も、本発明の好ましい態様である。架橋性シリル基がトリメトキシシリル基を含有するものであると、速硬化性が得られ作業効率が向上するため好ましい。
【0025】
[硬化剤(B)について]
本発明における、エポキシ樹脂(C)の硬化剤(B)(以下、単に「硬化剤(B)」ということがある)としては、エポキシ樹脂を硬化させ得る従来公知の化合物乃至物質を用いることができる。硬化剤(B)としては特に限定されないが、具体例を挙げれば、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、メタキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、イソホロンジアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、等のアミン類;3級アミン塩;ポリアミド樹脂;イミダゾール類;無水フタル酸等のカルボン酸無水物等の化合物が用いられ得る。
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化反応の速い脂肪族アミン系硬化剤、特に3級アミンを用いることが好ましい。また、活性アミンがブロックされていて、空気中の水分で活性化するケチミン等の潜在型硬化剤を用いてもよい。これらアミン類は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0026】
[エポキシ樹脂(C)について]
本発明における、エポキシ樹脂(C)としては、オキシラン環を分子内に含有する従来公知の化合物乃至物質を用いることができる。エポキシ樹脂(C)としては特に限定されないが、具体例を挙げれば、従来公知のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン等の多官能性グリシジルアミン樹脂;テトラフェニルグリシジルエーテルエタン等の多官能性グリシジルエーテル樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等があり、種々のグレードのエポキシ樹脂が市販されているため、これらを利用することができる。作業性の点からは、分子量が300〜500程度のものが好ましく、常温で液状のビスフェノールA型液状樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0027】
樹脂組成物(II)中のエポキシ樹脂(C)と、樹脂組成物(I)中の硬化剤(B)の配合割合は、(C):(B)=100:0.1〜100:300であ
り、100:0.5〜100:150であることが好ましく、100:1〜100:100であることが特に好ましい。(C):(B)=100:0.1よりも(B)の割合が少なくなると、エポキシ樹脂の硬化が不十分となることから不都合であり、(C):(B)=100:300よりも(B)の割合が多くなると(B)成分はブリードして被着材を汚染する点で不都合である。
【0028】
また、上記樹脂組成物(I)中の硬化性シリコーン系樹脂(A)と、上記樹脂組成物(II)中のエポキシ樹脂(C)の配合割合は、質量比で(A):(C)=15:85〜95:5であ
り、20:80〜90:10であることが好ましく、30:70〜80:20であることが特に好ましい。(A):(C)=15:85よりも(A)の割合が少なくなると、硬く脆くなる点で不都合であり、(A):(C)=95:5よりも(A)の割合が多くなると強靭性が不足することから不都合である。
【0029】
[常温で固体の有機スズ化合物(D)について]
本発明では硬化性シリコーン系樹脂(A)の硬化触媒として、常温で固体の有機スズ化合物(D)(以下、単に「硬化触媒(D)」と記載することがある)を用いる。常温で固体の有機スズ化合物(D)は、硬化性シリコーン系樹脂(A)を活性化し、硬化性シリコーン系樹脂(A)が有するアルコキシシリル基の加水分解反応を促進し、結果として樹脂組成物(II)中の水(E)及び/又は雰囲気中の湿気によって硬化性シリコーン系樹脂(A)を硬化させる役割を有するものである。
【0030】
常温で固体の有機スズ化合物(D)としては融点が20℃以上のものを好ましく用いることができ、さらに、融点が23℃以上のジオクチルスズジステアレート又はジオクチルスズマレートポリマーを好ましく用いることができる。それらの化合物は試薬又は工業品として入手できるものを用いればよい。工業品としては、日東化成株式会社製「ネオスタンU−500」、「SCAT−47」、「STANNDOTO」、「STANNODC」等がある。
一方、融点が20℃未満の従来の汎用硬化触媒ジブチルスズジラウレート(「ネオスタンU−100」融点:10〜13℃)は常温で固体にはなりにくく、本発明の効果を得ることが困難な場合が多い。
なお、常温で固体の有機スズ化合物(D)の融点に幅がある場合は、溶け始める温度が20℃以上のものを好ましく使用できる。また、本発明での融点の測定は融点測定装置(固体粉末の融点を目視によって測定する装置)を用いて行う。
【0031】
上述したとおり樹脂組成物(II)中において、ジオクチルスズジステアレート
及び/又はジオクチルスズマレートポリマーの常温で固体の有機スズ化合物(D)を用いると、二液を混合後、速やかに硬化するとともに内部硬化性及び貯蔵安定性ともに優れる二液混合型硬化性樹脂組成物を得ることができるが、上記硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して、常温で固体の有機スズ化合物(D)が0.1〜20質量部であ
り、0 .5〜15質量部であるのが好ましく、1 .0〜10質量部であるのが特に好ましい。
【0032】
常温で固体の有機スズ化合物(D)の配合量が20質量部を超えると、硬化物の物性を低下させることがあり好ましくない。また、配合量が0.1質量部未満であると、硬化性シリコーン系樹脂(A)の硬化が不十分となり、硬化不良等の不具合が生じることがある。
【0033】
[水(E)について]
本発明における水(E)は、硬化性シリコーン系樹脂(A)の硬化剤としての役割を果たし、樹脂組成物(II)中に配合される。硬化性シリコーン系樹脂(A)は、樹脂組成物
(II)中の水(E)及び/又は雰囲気中の湿気によって加水分解縮合反応により硬化するが、仮に大面積の非多孔質被着材の貼り合わせなど、雰囲気中からの湿気の供給がなかったとしても本発明の二液混合型硬化性樹脂組成物はしっかりと内部まで硬化することができる。
【0034】
硬化性シリコーン系樹脂(A)に対する、水(E)の配合比率は、硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して水(E)が0.1〜20質量部であり、好ましくは0.2〜15質量部、特に好ましくは0.5〜10質量部である。水(E)の配合量が0.1質量部を下回ると内部硬化性が低下する不具合が生じる場合があり、20質量部を上回るとブリードアウトによる接着阻害などの不具合を生じる場合がある。
硬化性シリコーン系樹脂(A)と、水(E)の配合比率が上記範囲内であると、本発明の効果を最大限に発揮することができる。
【0035】
[その他成分について]
本発明の二液混合型硬化性樹脂組成物は、上記(A)〜(E)の各成分を有効成分とするものであるが、本発明の効果を損なわない範囲内において、従来公知の任意の化合物乃至物質を配合することができる。例えば、有機金属系化合物、三フッ化ホウ素系化合物等の硬化促進剤、親水性又は疎水性シリカ系粉体、炭酸カルシウム粉体、クレイ粉体、アクリル系等の有機系粉体、有機系・無機系のバルーン等の充填材、フェノール樹脂等の粘着付与剤、アマイドワックス等の揺変剤、脱水剤、希釈剤、可塑剤、難燃剤、機能性オリゴマー、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、3−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジ−4−イルオキシ)プロピルトリエトキシシラン等の老化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤、顔料、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、シランカップリング剤、乾性油等を配合することができる。シランカップリング剤としては、特に分子内にアミノ基と架橋性シリル基とを有する、いわゆるアミノシラン化合物が好ましい。
【0036】
上記可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、セバチン酸ジブチル等の脂肪族カルボン酸エステル等を用いることができる。
上記希釈剤としては、上記二液混合型硬化性樹脂組成物と相溶性がよく、樹脂組成物(I)に配合される場合には、水分含有量が500ppm以下であればいずれを用いても良い。
上記脱水剤としては、樹脂組成物(I)に配合されるものであるが、生石灰、オルト珪酸エステル、無水硫酸ナトリウム、ゼオライト、メチルシリケート、エチルシリケート、各種アルキルアルコキシシラン、各種ビニルアルコキシシラン等が挙げられる。
【0037】
[用途・使用方法について]
本発明の二液混合型硬化性樹脂組成物は、様々な被着材料に対して良好な接着性を有するため広範な用途の積層部材に使用することができるが、はり合わせから被着積層部材の移動までの時間を短縮することが求められる、工業、産業分野でのインライン用接着剤として好適に使用することができる。なかでも、ラインスピードの向上と高い接着信頼性が求められる自動車用部材や電気・電子材料の接着用途に対して、本発明の二液混合型硬化性樹脂組成物は特に好適に使用することができる。
【0038】
自動車用部材のはり合わせを例にとって積層部材を説明すると、自動車のフロント、サイド、リアのガラスに対する、各種センサー類の取付け用ブラケット、パワーウィンドウのホルダー、インナーミラーの取付け用ミラーベース、モール、プロテクター、位置決め用基準ピン、ヒンジ等の各種部材の接着等に、本発明の二液混合型硬化性樹脂組成物は好
適に使用することができる。被着材料の材質としては、黒色セラミックコーティングガラス、カチオン電着塗装された金属材料、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアクリルアミド(PAA)等のプラスチック材料が挙げられる。
【0039】
本発明の二液混合型硬化性樹脂組成物の使用方法としては、ブラケット等の部材に適正量を塗布し、他方の被着材料・部材にはり合わせ、圧着すればよい。塗布量は、被着材料・部材の質量や形状等に応じて適宜変更可能である。その後、エポキシ樹脂の接着硬化反応が完了し、非常に強固な接着力を有し、かつ、耐振動性、耐候性、耐衝撃性、耐水性、耐熱性等の各種特性に優れた接着硬化層が形成される。本発明の二液混合型硬化性樹脂組成物は、プライマー処理や後処理は必ずしも必要ではないが、加熱・加湿等の後処理を適宜行ってもよい。
塗布方法は公知の方法のいずれも採用できる。特にインラインにおいては、二液を混合しつつ塗布することができる、スタティックミキサーを用いるのが好適である。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
本発明の二液混合型硬化性樹脂組成物は、樹脂組成物(I)と樹脂組成物(II)とからなるものである、樹脂組成物(I)は、架橋性シリル基を分子内に有する硬化性変性シリコーン系樹脂(A)及びエポキシ樹脂(C)の硬化剤(B)を含有する樹脂組成物であり、また、樹脂組成物(II)は、オキシラン環を分子内に含有するエポキシ樹脂(C)、硬化性シリコーン系樹脂(A)の硬化触媒である常温で固体の有機スズ化合物(D)及び硬化性シリコーン系樹脂(A)の硬化剤としての水(E)を含有する樹脂組成物である。
【0041】
[実施例1]
硬化性シリコーン系樹脂として、カネカ社製「SAX580」を用い、を用い、エポキシ樹脂の硬化剤としてエボニックジャパン社製のアミン化合物「アンカミンK54」を用い、無機充填材として表面処理炭酸カルシウム(白石カルシウム社製「白艶華CCR−B」)、炭酸カルシウム(日東粉化工業社製「NS#400」)を用い、表1に示す配合割合にて樹脂組成物(I)を調製した。
【0042】
一方、エポキシ樹脂として三菱ケミカル社製ビスA型エポキシ樹脂「jER828」を用い、硬化性シリコーン系樹脂の硬化触媒として有機スズ化合物:U−830,U−500,SCAT−47を用い、水として工業用水を用い、無機充填材として表面処理炭酸カルシウム(白石カルシウム社製「白艶華CCR−B」)、未処理の炭酸カルシウム(日東粉化工業社製「NS#400」)を用い、表1に示す配合割合にて樹脂組成物(II)を調製した。
なお、U−830,U−500,SCAT−47は、全て日東化成社製の以下のジオクチルスズ化合物である。
U-830:ジオクチルスズジバーサテート 融点:0℃以下
U-500:ジオクチルスズジステアレート 融点:24−42℃
SCAT−47:ジオクチルスズマレートポリマー 融点:80−100℃
こうして樹脂組成物(I)と樹脂組成物(II)からなる室温硬化性2液混合型接着剤を調製した。
【0043】
[実施例1〜2及び比較例1〜2]
樹脂組成物(I)及び樹脂組成物(II)の構成成分のうち、有機スズ化合物の種類及び配合割合を表1に示すとおりに変更して、実施例1〜2及び比較例1〜2の接着剤を調製した。
【0044】
[性能試験]
(貯蔵安定性)
表1に記載の配合処方に基づき、樹脂組成物(I)としてA剤(A−1)、樹脂組成物(II)としてB剤(B−1〜B−4)の各成分を混合調整し、それぞれを50℃で所定期間貯蔵した後、23℃、50%RHの雰囲気下で両者を混合し、硬化するまでの所要時間(皮ばり時間)を測定した。
その状態を指触観察によって評価し、その評価結果を表2に示す。
観察の評価基準は下記の通りである。
○:促進後の皮張り時間が促進前の皮張り時間の2倍未満
×:促進後の皮張り時間が促進前の皮張り時間の2倍以上
【0045】
(接着強さの立ち上がり)
表1に記載の配合処方に基づき、樹脂組成物(I)としてA剤(A−1)、樹脂組成物(II)としてB剤(B−1〜B−4)の各成分を混合調整した後、両者を混合し4種類の接着剤を製造した。
それらの接着剤を用い25mm×100mm(厚さ3.8mm)の黒色セラミックコーティングガラスと25mm×100mm(厚さ1.6mm)のカチオン電着塗装鋼板を接着(接着面積25mm×10mm、接着層厚さ0.6mm)し、23℃、50%RHの雰囲気下で所定時間経過後の接着強さを測定した。
【0046】
その接着強さによって3段階で評価し、その評価結果を表3に示す。
観察の評価基準は下記の通りである。
○:接着強さ接着強さ[N/mm
2] 2.0以上
△:接着強さ接着強さ[N/mm
2] 1.5以上、2.0未満
×:接着強さ接着強さ[N/mm
2] 1.5未満
【0047】
【表1】
【0048】
(表中の成分)
SAX580:硬化性シリコーン系樹脂(A)
アンカミンK54:硬化剤(B)
jER828:エポキシ樹脂(C)
ネオスタンU-830:常温で液体の有機スズ化合物(D)
ネオスタンU-500、SCAT-47:常温で固体の有機スズ化合物(D)
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
上記の実験結果から、本願発明では、常温で固体の有機スズ化合物(D)を用いることにより、有機スズ化合物(D)が水(E)と共存しても、その触媒活性が経時で変化せず、その結果、二液を混合後、内部硬化性に優れ、水を配合していない系に比較して強度発現までに要する時間が明らかに短く、且つ、貯蔵安定性にも優れた二液混合型硬化性樹脂組成物を得られることが確認できる。