(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芳香族ポリフェノールの誘導体が、レゾルシノールの誘導体、フロログルシノールの誘導体、2,2',4,4'-テトラヒドロキシジフェニルスルフィドの誘導体およびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項1または2記載のゴム組成物。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に従う大型タイプの車両用のタイヤの半径断面を略図的に示している(特定の縮尺に従っていない)。
【
図2A】誘導体(5)の
1H NMRスペクトルを示す
【
図2B】組成物I1、T0、T1およびT2のレオメトリートルクの変化を示す。
【
図3A】誘導体(6)の
1H NMRスペクトルを示す
【
図3B】組成物I2、T0、T1およびT2のレオメトリートルクの変化を示す。
【
図4A】誘導体(7)の
1H NMRスペクトルを示す
【
図4B】組成物I3、T0、T1およびT2のレオメトリートルクの変化を示す。
【
図5A】誘導体(8)の
1H NMRスペクトルを示す
【
図5B】組成物I4、T0、T1およびT2のレオメトリートルクの変化を示す。
【
図6A】誘導体(9)の
1H NMRスペクトルを示す
【
図6B】組成物I5、T0、T1およびT2のレオメトリートルクの変化を示す。
【
図7A】誘導体(10)の
1H NMRスペクトルを示す
【
図7B】組成物I6、T0、T1およびT2のレオメトリートルクの変化を示す。
【
図8A】誘導体(11)の
1H NMRスペクトルを示す
【
図8B】組成物I7、T0、T1およびT2のレオメトリートルクの変化を示す。
【0014】
上記ゴム組成物の上記芳香族ポリフェノールの誘導体
上記樹脂と上記組成物の不可欠な成分は、1個以上の芳香環を含む芳香族ポリフェノール誘導体である。上記芳香族ポリフェノール誘導体は、少なくとも2個の-O-Z基を互いに対してメタ位置に担持する少なくとも1個の芳香環を含み、これらの-O-Z基の少なくとも1個に対する2つのオルト位置は置換されていない。
本発明によれば、上記芳香族ポリフェノール誘導体は、1つの実施態様において、少なくとも2個の-O-Z基を互いに対してメタ位置に担持する1個以上の芳香環、これらの芳香環の少なくとも1個、または各芳香環さえも含む単純な芳香族ポリフェノール誘導体分子であることができ、少なくとも1個のこれら-O-Z基に対する2つのオルト位置は置換されていない。
そのような単純分子は、繰り返し単位を含まない。
本発明によれば、上記芳香族ポリフェノール誘導体は、もう1つの実施態様において、下記成分をベースとする事前縮合樹脂であってもよい:
−少なくとも2個のヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位置に担持する少なくとも1個の芳香環を含み、少なくとも1個の前記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位置は置換されていない少なくとも1種の芳香族ポリフェノール;および
−少なくとも1個のアルデヒド官能基を含み、事前縮合樹脂の縮合の終わりに遊離する事前縮合樹脂のヒドロキシル官能基が-O-Z基によって置換されている少なくとも1種の化合物。
【0015】
芳香族ポリフェノールをベースとするそのような事前縮合樹脂は、本発明に従うものであり、上記で説明した簡単な分子と異なり、繰り返し単位を含む。この場合には、繰り返し単位は、少なくとも2個の-O-Z基を互いに対してメタ位置に担持する少なくとも1個の芳香環を含み、少なくとも1個のこれら-O-Z基に対する2つのオルト位置は置換されていない。この実施態様において、事前縮合樹脂の形で上記芳香族ポリフェノール誘導体を形成するために、少なくとも2個の-OHヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位置に担持する少なくとも1個の芳香環を含み、少なくとも1個の前記-OHヒドロキシル官能基に対する2つのオルトの位置は置換されていない芳香族ポリフェノールを形成させ、この事前縮合樹脂は、上記事前縮合樹脂の縮合の終わりに遊離した各ヒドロキシル官能基から上記-O-Z基を形成することを可能にする化合物と反応させる。
もう1つの実施態様において、上記芳香族ポリフェノール誘導体は、単純分子を形成する芳香族ポリフェノールの誘導体と芳香族ポリフェノールをベースとする事前縮合樹脂との混合物であり、上記事前縮合樹脂の縮合の終わりに遊離する上記事前縮合樹脂のヒドロキシル官能基は-O-Z基によって置換されている。
続く特定の実施態様においては、上記芳香族ポリフェノール誘導体の1個以上の芳香環が記載されている。明確にするため、「芳香族ポリフェノールの誘導体」は、その単純分子の形で本明細書に記載されている。その場合、対応する誘導体の由来の芳香族ポリフェノールは、縮合させることができ、部分的に繰り返し単位を定義する。事前縮合樹脂の特徴は、後に詳述する。
【0016】
好ましい実施態様において、上記芳香族ポリフェノールの誘導体の芳香環は、3個の-O-Z基を互いに対してメタ位置に担持する。
各-O-Z基に対する2つのオルト位置は、好ましくは置換されていない。これは、-O-Z基を担持する炭素原子(オルト位置に)の両側に位置する2つの炭素原子が水素原子のみを担持することを意味するものである。
さらにより好ましくは、上記芳香族ポリフェノールの誘導体の芳香環の残余部は、置換されていない。このことは、上記芳香環の残余部のその他の炭素原子(-O-Z基を担持する炭素原子以外のもの)が水素原子のみを担持することを意味するものである。
1つの実施態様において、上記芳香族ポリフェノールの誘導体は、数個の芳香環を含み、これらの各々の少なくとも2個は少なくとも2個の-O-Z基を互いに対してメタ位置に担持し、少なくとも1個の芳香環の前記-O-Z基に対する2つのオルト位置は置換されていない。
好ましい実施態様において、上記芳香族ポリフェノールの誘導体の芳香環の少なくとも1個は、3個の-O-Z基を互いに対してしてメタ位置に担持する。
少なくとも1個の芳香環の各-O-Z基に対する2つオルト位置は、好ましくは置換されていない。
さらにより好ましくは、各芳香環の各-O-Z基に対する2つのオルト位置は、置換されていない。
有利には、上記芳香族ポリフェノールの誘導体の上記または各芳香環はベンゼン環である。
【0017】
特に、1個のみの芳香環を含む芳香族ポリフェノール誘導体の例としては、構造式のレゾルシノールの誘導体およびフロログルシノールの誘導体を挙げることができる:
【化2】
【0018】
例えば、上記芳香族ポリフェノールの誘導体が複数個の芳香環を含む場合、これらの芳香環の少なくとも2個は、同一または異なるものであって、一般式の芳香環から選ばれる:
【化3】
(式中、Z
1およびZ
2符号は、同一または異なるものであって、同じ芳香環上に複数個のZ
1およびZ
2が存在する場合、上記芳香族ポリフェノールの誘導体の残余部に少なくともこれら2個の芳香環を結合させる原子(例えば、炭素、イオウまたは酸素)または定義によれば、少なくとも2価の結合基を示す)。
【0019】
芳香族ポリフェノール誘導体のもう1つの例は、下記の構造式を有する2,2',4,4'−テトラヒドロキシジフェニルスルフィドの誘導体である:
【化4】
【0020】
芳香族ポリフェノール誘導体のもう1つの例は、2,2',4,4'−テトラヒドロキ
シジフェニルベンゾフェノンの誘導体、下記の構造式の誘導体である:
【化5】
【0021】
各化合物IVおよびVは2個の芳香環を含む芳香族ポリフェノール誘導体(式III-cを有する)であって、これらポリフェノールの各々は、少なくとも2個(この場合は2個)のヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位置に担持していることに留意されたい。
式III-bに従う少なくとも1個の芳香環を含む芳香族ポリフェノールの誘導体の場合、少なくとも1個の芳香環の各-O-Z基に対する2つのオルト位置は置換されていないことに留意されたい。式III-bに従う複数個の芳香環を含む芳香族ポリフェノールの誘導体の場合、各芳香環の各-O-Z基に対する2つのオルト位置は置換されていない。
本発明の1つの実施態様によれば、上記芳香族ポリフェノール誘導体は、レゾルシノールの誘導体(I)、フロログルシノールの誘導体(II)、2,2',4,4'−テトラヒドロキシジフェニルスルフィドの誘導体(IV)、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノンの誘導体(V)およびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる。特に有利な実施態様においては、上記芳香族ポリフェノールの誘導体は、フロログルシノールの誘導体(II)である。
1つの実施態様において、上記芳香族ポリフェノール誘導体は、本出願に記載した実施態様のいずか1つに記載したような少なくとも1種の芳香族ポリフェノールをベースとする事前縮合樹脂を含み、上記事前縮合樹脂の縮合の終わりに遊離する上記事前縮合樹脂のヒドロキシル官能基は-O-Z基によって置換されている。
【0022】
この予備縮合樹脂は、有利には、下記の成分をベースとする:
−上で定義したように、好ましくは、レゾルシノール、フロログルシノール、2,2',4,4'-テトラヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノンおよびその混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族ポリフェノール;および
−少なくとも1個のアルデヒド官能基を含む少なくとも1種の化合物。
少なくとも1個のアルデヒド官能基を含み、前記芳香族ポリフェノールと反応する化合物は、下記で定義されるようなアルデヒドであってもよい。有利には、少なくとも1個のアルデヒド官能基を含む前記化合物は、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフルアルデヒド、2,5-フランジカルボキシアルデヒド、1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、1,3-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、1,2-ベンゼンジカルボキシアルデヒドおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる。
従って、芳香族ポリフェノールをベースとする上記事前縮合樹脂において、繰り返し単位は少なくとも2個のヒドロキシル官能基を互いに対してメタ位置に担持する少なくとも1個の芳香環を含み、上記事前縮合樹脂の縮合前に置換されてなかった上記芳香環の炭素原子の少なくとも1個は他の単位に接続している。
上記事前縮合樹脂の中心の芳香族ポリフェノール以外の化合物にかかわりなく、この事前縮合樹脂は、遊離ホルムアルデヒドを含まない。特に、上記事前縮合樹脂が以前に記載されている芳香族ポリフェノールとホルムアルデヒドとをベースとする場合でさえ、上記ホルムアルデヒドが上記芳香族ポリフェノールとすでに反応しているので、上記事前縮合樹脂は次の工程で本発明に従うアルデヒドと反応させることができる傾向にある遊離のホルムアルデヒドを含まない。
【0023】
また、上記芳香族ポリフェノール誘導体は、遊離の芳香族ポリフェノール誘導体分子と芳香族ポリフェノールをベースとする事前縮合樹脂の混合物を含むこともでき、上記事前縮合樹脂の縮合の終わりに遊離する上記事前縮合樹脂のヒドロキシル官能基は-O-Z基で置換されている。特に、上記芳香族ポリフェノール誘導体は、フロログルシノール誘導体とフロログルシノールをベースとする事前縮合樹脂の混合物を含むこともでき、上記事前縮合樹脂の縮合の終わりに遊離する上記事前縮合樹脂のヒドロキシル官能基は-O-Z基で置換されている。
続く-O-Z基の定義は、その単純分子または事前縮合樹脂の形での芳香族ポリフェノール誘導体に等しくあてはまる。
有利には、各-O-Z基は、-O-Si(R
1R
2R
3)基、-O-C((=O)(R
4))基および-O-C((=O)(N(R
5R
6)))基からなる群から選ばれる。各R
1、R
2、R
3およびR
4基は、互いに独立して、炭化水素ベース基または置換炭化水素ベース基を示す。各R
5およびR
6基は、互いに独立して、水素、炭化水素ベース基または置換炭化水素ベース基を示す。
一時的な保護基として、各-O-Z基は、好ましくは、アルデヒドに関して反応性である官能基を含まない。記載されている種々の実施態様において、各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6基は、好ましくは、アルデヒドに関して反応性である官能基を含まない。
一時的な保護基として、各-O-Z基は、好ましくは、上記ゴム組成物のその他の成分に関して反応性である官能基を含まない。記載されている種々の実施態様において、各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6基は、好ましくは、ゴム組成物のその他の成分に関して反応性である官能基を含まない。
【0024】
反応性官能基は、ここでは、上記芳香族ポリフェノールの再生に必要な反応条件下でおよび上記フェノール-アルデヒド樹脂の架橋に必要な反応条件下で反応する官能基を意味すると理解される。
1つの実施態様において、各-O-Z基は、-O-Si(R
1R
2R
3)基を示し、R
1、R
2、R
3は、互いに独立して、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、シクロアルキル基およびアルケニル基からなる群から選ばれる基を示す。
好ましくは、各R
1、R
2、R
3基は、 互いに独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、アリル基およびビニル基からなる群から選ばれる基、より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アリル基およびビニル基らなる群から選ばれる基を示す。
もう1つの実施態様において、各-O-Z基は、-O-C((=O)(R
4))基を示し、R
4はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、シクロアルキル基およびアルケニル基からなる群から選ばれる基を示している。
1つの実施態様において、R
4は、1個の炭素原子を含む基を示す。好ましくは、R
4は、メチル基を示す。変形として、R
4は、O-メチル基を示す。
1つの好ましい実施態様において、R
4は、アルキル基、アリル基およびビニル基からなる群から選ばれる基を示す。
1つの変形において、R
4は、アルキル基を示す。他の変形において、R
4は、アリル基およびビニル基からなる群から選ばれる基を示す。さらに他の変形において、R
4はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アリル基およびビニル基からなる群から選ばれる基を示し、より好ましくは、R
4はエチル基、プロピル基およびブチル基からなる群から選ばれる基を示している。
【0025】
1つの実施態様において、R
4は、少なくとも2個の炭素原子を含む。
1つの実施態様において、R
4は、多くても4個の炭素原子を含む。
もう1つの実施態様において、R
4は、少なくとも5個の炭素原子、好ましくは少なくとも10個の炭素原子、より好ましくは少なくとも15個の炭素原子を含む。
さらに他の実施態様において、R
4は、多くても30個の炭素原子、好ましくは多くても25個の炭素原子、より好ましくは多くても20個の炭素原子を含む。
さらに他の実施態様において、各-O-Z基は、-O-C((=O)(N(R
5R
6)))基を示し、R
5、R
6は、互いに独立して、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、シクロアルキル基またはアルケニル基からなる群から選ばれる基および水素を示している。
好ましくは、各R
5、R
6基は、互いに独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アリル基またはビニル基からなる群から選ばれる基および水素を示す。
上記の実施態様において、プロピル基は、式-C
3H
7の基を含む。これらの基は、n-プロピルおよびイソプロピルである。
上記の実施態様において、ブチル基は、式-C
4H
9の基を含む。これらの基は、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基である。
上記の実施態様において、アリール基は、水素原子が取り除かれた芳香環を含む。例えば、アリール基は、ベンゼンC
6H
6から得られるC
6H
5基である。アリール基の他の例は、フランC
4H
4Oから得られるC
4H
3O基である。
【0026】
上記ゴム組成物のアルデヒド
本発明によれば、上記樹脂と上記組成物との他の不可欠な成分は、1種以上のアルデヒドである。従って、本発明によれば、上記組成物は、1種以上のアルデヒドを含む。
有利には、上記アルデヒドは芳香族アルデヒドである。
そのようなアルデヒドは、非常に有利である。特に、その研究中に、出願人は、従来のメチレン供与体と異なり、上記芳香族アルデヒドがホルムアルデヒドの製造を回避することを可能にすることを発見した。特に、従来技術においてメチレン受容体として通常使用されたフェノール樹脂とメチレン供与体としてのHMTまたはH3Mとの組合せは、上記ゴム組成物の加硫中にホルムアルデヒドを発生させる。しかしながら、ゴム組成物からホルムアルデヒドは、これらの化合物の環境インパクトおよびこのタイプの化合物に関する法規、特にヨーロッパ法規の最近の展開のために、長期に亘って減少するまたは削減さえすることが望ましい。
芳香族アルデヒドは、少なくとも1個の芳香環を含有する化合物であり、この芳香族環は少なくとも1個(1個以上)のアルデヒド官能基を担持している。
【0027】
好ましくは、上記芳香族アルデヒドは、1,3-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、式(A)のアルデヒドおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる:
【化6】
(A)
(式中:
Xは、N、SまたはOを含み、
Rは、-Hまたは-CHOを示す)。
【0028】
上記アルデヒドは、好ましくは、一般式(A')を有する:
【化7】
(A')
【0029】
さらにより好ましくは、Rは-CHOを示す。
好ましい実施態様によれば、Xは、Oを示す。
【0030】
一般式(A)のアルデヒドの変形において、Xは、Oを示し、Rは、-Hを示す。その場合、使用するアルデヒドは、式(Ba)を有する:
【化8】
(Ba)
【0031】
一般式(A')のアルデヒドの変形において、Xは、Oを示し、Rは、-Hを示す。その場合、使用するアルデヒドは、フルフルアルデヒドであり、式(B'a)を有する:
【化9】
(B'a)
【0032】
一般式(A)のアルデヒドの他の変形において、XはOを示し、Rは-CHOを示す。その場合、使用するアルデヒドは、式(Bb)を有する:
【化10】
(Bb)
【0033】
一般式(A')のアルデヒドの別の変形において、XはOを示し、Rは-CHOを示す。その場合、使用するアルデヒドは、2,5-フランジカルボキシアルデヒドであり、式(B'b)を有する:
【化11】
(B'b)
【0034】
もう1つの実施態様において、Xは、Nを含む。
【0035】
一般式(A)のアルデヒドの変形において、Xは、NHを示す。使用するアルデヒドは、式(Ca)である:
【化12】
(Ca)
【0036】
一般式(A')のアルデヒドの変形において、Xは、NHを示す。使用するアルデヒドは、式(C'a)である:
【化13】
(C'a)
【0037】
式(C'a)のアルデヒドの変形において、Rは、好ましくは、-CHOを示し、その場合、得られるアルデヒドは2,5-1H-ピロールジカルボキシアルデヒドである。
【0038】
一般式(A)のアルデヒドの別の変形において、Xは、NR1'を示し、R1'はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基およびシクロアルキル基からなる群から選ばれる基を示す。使用するアルデヒドは、式(Cb)を有する:
【化14】
(Cb)
【0039】
もう1つの実施態様において、Xは、Sを含む。
【0040】
一般式(A)のアルデヒドの変形において、Xは、Sを示す。使用するアルデヒドは、式(Da)である:
【化15】
(Da)
【0041】
一般式(A')のアルデヒドの変形において、Xは、Sを示す。使用するアルデヒドは、式(D'a)を有する:
【化16】
(D'a)
【0042】
式(IV'a)のアルデヒドの変形において、Rは、好ましくは、-CHOを示し、その場合、2,5-チオフェンジカルボキシアルデヒドである。
【0043】
一般式(A)のアルデヒドの他の変形において、Xは、SR2'を示し、R2'はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基およびシクロアルキル基からなる群から選ばれる基を示している。使用するアルデヒドは、式(Db)である:
【化17】
【0044】
一般式(A)のアルデヒドのさらに他の変形において、Xは、R3'-S-R2'を示し、R2'およびR3'は、各々互いに独立して、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基およびシクロアルキル基からなる群から選ばれる基を示している。使用するアルデヒドは、式(Dc)である:
【化18】
【0045】
一般式(A)のアルデヒドのさらに他の変形において、Xは、S=Oを示す。使用するアルデヒドは、式(Dd)を有する:
【化19】
(Dd)
【0046】
一般式(A)のアルデヒドのさらに他の変形において、Xは、O=S=Oを示す。使用するアルデヒドは、式(De)を有する:
【化20】
(De)
【0047】
上記の異なる実施態様のうちでは、XがNH、SまたはOを示す実施態様および変形が好ましい。これらの実施態様および変形において、本発明によれば、Rが-Hまたは-CHOを示し、好ましくは、Rが-CHOを示すことが可能である。これらの実施態様および変形において、Rは、好ましくは5位にあり、-CHO基は、好ましくは、芳香環(一般式(A'))上の2位にある。
従って、さらに好ましくは、上記芳香族アルデヒドは、1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、フルフルアルデヒド、2,5-フランジカルボキシアルデヒドおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる。
上記組成物は、好ましくは、ホルムアルデヒドを含まない。
上記フェノール-アルデヒド樹脂が複数種のアルデヒドをベースとする場合、その少なくとも1種は上記のような芳香族アルデヒドであり、上記のような各芳香族アルデヒド以外の各アルデヒドは、好ましくは、ホルムアルデヒドと異なる。その場合、上記組成物は、好ましくはホルムアルデヒドを含まない。
言い換えれば、また、好ましくは、上記フェノール-アルデヒド樹脂のアルデヒドまたは各アルデヒドはホルムアルデヒドと異なる。
「ホルムアルデヒドを含まない」とは、1種以上のアルデヒドの全質量によるホルムアルデヒドの質量含有量が厳密に1%未満であることを意味するものとする。
いくつかの実施態様において、上記組成物は、ホルムアルデヒドを含むことができる。その場合、好ましくは、上記組成物は、1種以上のアルデヒドの全質量で10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下のホルムアルデヒドの質量含有量を含む。
【0048】
本発明に従うゴム組成物
上記組成物の使用に応じて、0.1から25phrまでの範囲のアルデヒドの量を使用する。同様に、0.1から25phrまでの範囲の芳香族ポリフェノール量を使用する。
ある種の実施態様においては、[アルデヒド]:[芳香族ポリフェノール誘導体]モル比は、3:1から1:1まで、有利には3:1から1.5:1まで変動することが有利である。
上記組成物から製造されている使用によっては、上記ゴム組成物は、硬化状態において、1998年の規格ASTM D 412(試験標本C)に従って測定して、10MPa以上、好ましくは20MPa以上、さらに好ましくは30MPa以上、より好ましくは40MPa以上、さらにより好ましくは60MPa以上の10%伸びにおける割線モジュラス、即ち、MA10を有する。
上記ゴム組成物は、好ましくは、ジエンエラストマーを含む。
「ジエン」タイプのエラストマーまたはゴム(これら2つの用語は同義である)とは、一般に、ジエンモノマー(2個の共役型または非共役型炭素・炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも部分的に由来する1種以上のエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものとする。
特に好ましくは、上記ゴム組成物のジエンエラストマーは、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる。そのようなコポリマーは、好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)およびそのようなコポリマーの混合物からなる群から選ばれる。
【0049】
上記ゴム組成物は、1種のみのジエンエラストマーまたは複数種のジエンエラストマーの混合物を含有し得る、上記1種以上のジエンエラストマーは、ジエンエラストマー以外の任意のタイプの合成エラストマーと或いはエラストマー以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーさえと組合せて使用し得る。
上記ゴム組成物は、好ましくは、補強用充填剤を含む。
補強用充填剤を使用する場合、タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物を補強するその能力について知られている任意のタイプの補強用充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような補強用無機充填剤、或いはこれら2つのタイプの充填剤のブレンド、特に、カーボンブラックとシリカのブレンドを使用することができる。
タイヤにおいて通常使用するカーボンブラック(「タイヤ級」ブラック類)の全てがカーボンブラックとして適している。さらに詳細には、例えば、100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)が挙げられる。
カーボンブラックをイソプレンエラストマーと共に使用する場合、これらのカーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、イソプレンエラストマー中に既に混入させていてもよい(例えば、出願 WO 97/36724号またはWO 99/16600号を参照されたい)。
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願 WO-A-2006/069792号およびWO-A-2006/069793号に記載されているような官能化ポリビニル有機充填剤を挙げることができる。
【0050】
「補強用無機充填剤」とは、本出願においては、定義によれば、その色合いおよびその由来(天然または合成)に関わりなく、カーボンブラックと対比して「白色充填剤」、「透明充填剤」とも、または「非黒色充填剤」とも称し、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、その補強役割において、通常のタイヤ級カーボンブラックと置き換わり得る、任意の無機または鉱質充填剤を意味するものと理解すべきである。そのような充填剤は、一般に、知られているとおり、その表面でのヒドロキシル(-OH)基の存在に特徴を有する。
補強用無機充填剤を供給する物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒、ビーズまたは任意の他の適切な濃密化形のいずれの形状であれ重要ではない。勿論、補強用無機充填剤とは、種々の補強用無機充填剤、特に、下記で説明するような高分散性シリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物も意味するものとする。
シリカ質タイプの鉱質充填剤、特にシリカ(SiO
2)、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、特にアルミナ(Al
2O
3)は、補強用無機充填剤として特に適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m
2/g未満、好ましくは30〜400m
2/gであるBET表面積とCTAB比表面積を示す任意の沈降またはヒュームドシリカであり得る。高分散性沈降シリカ(「HDS」)としては、例えば、Evonik社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ類、Rhodia社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類、PPG社からのHi‐Sil EZ150Gシリカ、Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類、または、出願WO 03/16837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類が挙げられる。
【0051】
最後に、当業者であれば、この項において説明した補強用無機充填剤と等価の充填剤として、もう1種の、特に有機性を有する補強用充填剤を、この補強用充填剤がシリカのような無機層で被覆されているか、或いは、その表面に、充填剤とエラストマー間の結合を形成させるためにカップリング剤の使用を必要とする官能部位、特にヒドロキシルを含むかを条件として使用し得ることを理解されたい。
補強用充填剤全体(カーボンブラックおよび/またはシリカのような補強用無機充填剤)の含有量は、好ましくは5〜120phr、より好ましくは5〜100phr、さらにより好ましくは5〜90phrの範囲内である。
カーボンブラックは、有利には、単独の補強用充填剤または主要補強用充填剤を構成し得る。勿論、1種のみのカーボンブラックまたは異なるASTM級の数種のカーボンブラックのブレンドを使用することは可能である。また、カーボンブラックは、他の補強用充填剤、特に上述したような補強用無機充填剤、特に、シリカとのブレンドとしても使用し得る。
無機充填剤(例えば、シリカ)を、上記ゴム組成物において、単独でまたはカーボンブラックとのブレンドとして使用する場合、その含有量は、0〜70phr、好ましくは0〜50phr、特に5〜70phrの範囲内であり、さらにより好ましくは、この割合は、5〜50phr、特に5〜40phrで変動する。
【0052】
上記ゴム組成物は、好ましくは、種々の添加剤を含む。
また、上記ゴム組成物は、例えば、可塑剤または増量剤オイル(後者は本質的に芳香族性または非芳香族性のいずれかである)、顔料、オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤のような保護剤、疲労防止剤或いは接着促進剤のような、タイヤの製造を意図するエラストマー組成物において慣用的に使用する標準の添加剤の全部または一部も含み得る。
上記ゴム組成物は、好ましくは架橋系、さらに好ましくは加硫系を含む。
上記加硫系は、イオウ供与剤、例えばイオウを含む。
上記加硫系は、好ましくは、酸化亜鉛およびステアリン酸のような加硫活性化剤を含む。
上記加硫系は、好ましくは、加硫促進剤および/または加硫遅延剤を含む。
上記イオウまたはイオウ供与剤は、0.5〜10phrの範囲内、さらに好ましくは0.5〜8.0phrの範囲内の好ましい含有量で使用する。上記加硫促進剤、遅延剤および活性化剤の組合せは、0.5〜15phrの範囲内の好ましい含有量で使用する。上記加硫促進剤(1種以上)は、0.5〜12phrの範囲内の好ましい含有量で使用する。
適切な加硫系は、好ましくは、イオウと、一次加硫促進剤、特に、スルフェンアミドタイプの促進剤とをベースとする。この加硫系に、各種既知の二次加硫促進剤または加硫活性化剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸またはグアニジン誘導体(特に、ジフェニルグアニジン)等を添加する。
【0053】
(一次または二次)促進剤としては、イオウの存在下にジエンエラストマーの加硫促進剤として作用し得る任意の化合物、特に、チアゾールタイプの促進剤およびその誘導体並びにチウラムおよびジチオカルバミン酸亜鉛タイプの促進剤を使用し得る。これらの促進剤は、さらに好ましくは、2-メルカプトベンゾチアゾールジスルフィド(「MBTS」と略記する)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「CBS」と略記する)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「DCBS」と略記する)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「TBBS」と略記する)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンイミド(「TBSI」と略記する)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(「ZBEC」と略記する)およびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる。好ましくは、上記スルフェンアミドタイプの一次促進剤を使用する。
1つの実施態様においては、上記ゴム組成物は硬化状態にある、即ち、加硫されている。他の実施態様においては、上記組成物は未硬化状態にある、即ち、未加硫であり、架橋したフェノール-アルデヒド樹脂が引き続き未加硫組成物に添加されている。
ある種の実施態様において、上記組成物は各-O-Z基の-Z基から得られた残基を含む。樹脂を架橋させる前に、および本発明後に本出願人によって推定されるように、各ヒドロキシル官能基を形成した後に、各-O-Z基の各Z基は、その場で生成した残基を得ることを可能にすることができる。ある種の残基は、上記組成物において永続的に残り、適切な場合には、その特性の一部のために使用され得る。
【0054】
他の実施態様においては、生成する残基のみが上記組成物において一時的に残り、上記組成物を製造するための条件下、例えば気体の形で、特に残基が揮発性の場合には、そこからその残基が自発的に出ることから、或いはこの残基を抽出する任意の工程が組成物を製造する方法で実施されることからのいずれかのためである。
1つの実施態様において、上記フェノール-アルデヒド樹脂はまだ架橋されてなく、上記ゴム組成物は下記を含む:
−少なくとも2個の-O-Z基を互いに対してメタ位置に担持する少なくとも1個の芳香環を含み、少なくとも1個の前記-O-Z基に対する2つのオルト位置は置換されてなく、Zは水素以外である芳香族ポリフェノールの少なくとも1種の誘導体、および
−少なくとも1種のアルデヒド。
好ましくは、この実施態様において、上記組成物は、未硬化状態にある、即ち未加硫である。
上記ゴム組成物は、好ましくは、層の形でタイヤに使用され得る。層とは、任意の形状と任意の厚さを有する、特にシートまたはストリップの形での任意の三次元要素、或いは任意の断面、例えば矩形または三角形を有する他の要素を意味するものである。
勿論、上記樹脂を含む上記組成物の芳香族ポリフェノールの誘導体とアルデヒドとに関係するすべての特徴は、樹脂状態で架橋されていない上記芳香族ポリフェノールの誘導体および上記アルデヒドを含む組成物にもあてはまる。
【0055】
本発明に従うゴム複合体
上記ゴム複合体は、本発明に従うゴム組成物内に埋込んだ少なくとも1種の補強要素によって補強する。
このゴム複合体は、少なくとも下記の工程を含む方法に従って製造し得る:
−第1工程において、少なくとも1種の補強要素をゴム組成物(またはエラストマー;これら2つの用語は同義である)と結合させて上記補強要素で補強したゴム複合体を形成する工程;
−その後、第2工程において、硬化することによって、例えば、好ましくは圧力下の加硫によって、この方法で形成させた複合体を架橋する工程。
補強要素のうちでは、繊維、金属または繊維・金属ハイブリッド補強要素を挙げることができる。
「繊維」とは、当業者にとっては周知の通り、天然または合成いずれかの、任意の適切な変換方法によってスレッドまたは繊維に変換することのできる金属物質以外の物質から製造した任意の材料を意味するものとする。例えば、以下の例に限定ことなく、例えば、溶融紡糸、溶液紡糸またはゲル紡糸のようなポリマー紡糸法を挙げることができる。
この繊維材料は、スレッドまたは繊維、或いはスレッドまたは繊維から製造した織布、例えば、縦糸および横糸を有する織布、或いは交差スレッドを有するあや織物からなり得る。
【0056】
本発明のこの繊維材料は、好ましくは、モノフィラメント(または、個々のスレッド)、マルチフィラメント繊維、そのようなスレッドまたは繊維の集合体、およびそのような材料の混合物からからなる群から選ばれる。上記繊維材料は、さらに詳細には、モノフィラメント繊維、マルチフィラメントまたは合撚糸である。
スレッドまたは繊維なる用語は、一般に、その断面に対比して大きい長さを有する任意の細長い要素を意味するものとし、この断面の形状、例えば、円形、楕円形、長方形、正方形または平坦形とはかかわりない、このスレッドは、直線状または非直線状、例えば、撚り形または波形状であり得る。その断面の最大寸法は、好ましくは5mm未満、さらに好ましくは3mm未満である。
このスレッドまたは繊維は、任意の既知の形状を取り得る。例えば、このスレッドまたは繊維は、大直径(例えば、また、好ましくは、50μm以上)の個々のモノフィラメント、マルチフィラメント繊維(典型的には30μm未満の小直径を有する複数本の個々のフィラメントからなる)、一緒に撚りまたは編み加工した複数本の織物繊維モノフィラメントから形成した織物合撚糸またはコード、或いは、例えば、一緒に集合させた、例えば、直線または非直線いずれかの主方向に沿って配列させた複数本のこれらのモノフィラメント、繊維、合撚糸またはコードを含むバンドまたはストリップのような、スレッドまたは繊維の集合体、集まりまたは列であり得る。
上記繊維材料は、有機、高分子または無機物質から製造し得る。
無機物質の例としては、ガラスまたは炭素を挙げることができる。
【0057】
本発明は、好ましくは、熱可塑性および非熱可塑性タイプ双方の高分子物質から製造した材料によって実施する。
非熱可塑性タイプの高分子物質の例としては、例えば、アラミド(芳香族ポリアミド)、並びに、天然および人工双方の、綿、レーヨン、亜麻または大麻のようなセルロースを挙げることができる。
好ましくは、熱可塑性タイプの高分子物質の例としては、脂肪族ポリアミドおよびポリエステルを挙げることができる。特に、脂肪族ポリアミドのうちでは、ポリアミド4-6、6、6-6、11または12を挙げることができる。ポリエステルのうちでは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PPT(ポリプロピレンテレフタレート)およびPPN(ポリプロピレンナフタレート)を挙げることができる。
定義によれば、金属製とは、主として(即ち、その質量の50%よりも多く)または完全(その質量の100%)に金属材料から構成された1以上のスレッド様要素を意味する。上記金属材料は、好ましくは鋼、さらに好ましくは、有利には0.4質量%と1.2質量%の間の炭素を含むパーライト(またはフェライト・パーライト)炭素鋼である。
【0058】
金属補強要素は、モノフィラメント、複数本の金属モノフィラメントを含むコードまたは複数本のコードを含むマルチストランドロープ(その場合、ストランドと称する)であり得る。
上記補強要素が複数本の金属モノフィラメントまたは複数本のストランドを含む好ましい例においては、上記金属モノフィラメントまたは上記ストランドは、撚りまたは編み加工によって集合させる。集合のためには下記のいずれかの2つの実施可能な技法があることを思い起されたい:
−撚り加工による:上記金属モノフィラメントまたは上記ストランドは、それら自体の軸の周りで集合的撚りおよび個々の撚りの双方を受け、それによって解撚トルク(untwisting torque)を上記モノフィラメントまたは上記ストランドの各々上に発生させる;
−編み加工による:上記金属モノフィラメントまたは上記ストランドは、集合的撚りを受けるのみで、それら自体の軸の周りで個々の撚りは受けない。
上記補強要素は、必要に応じて、複数本のモノフィラメントを含み、現場タイプのゴム引きを有する、即ち、上記補強要素は、内側から、その実際の製造中に、充填用ゴムによってゴム引きする。そのような金属スレッド状要素は、当業者にとって既知である。上記充填用ゴムの組成は、上記補強要素を埋込むゴム組成物と同一であっても或いは同一でなくてもよい。
【0059】
本発明に従うタイヤ
このようなタイヤは、例えば、乗用車タイプの自動車、SUV(「スポーツ用多目的車」)、二輪車(特に自転車およびオートバイ)、航空機、あるいはバン類、「大型」車両、すなわち地下鉄列車、バス、重量道路輸送車(トラック、トラクター、トレーラー)、道路外車両、例えば農業用車両もしくは土木工事機械および他の輸送または操作用車両から選ばれる産業用車両に装着することを意図する。
例えば、添付の
図1は、大型タイプの車両用の本発明に従うタイヤの半径断面を極めて略図的に示している(特定の縮尺に従っていない)。
このタイヤ1は、クラウン補強材即ちベルト6によって補強されたクラウン2、2枚の側壁3および2本のビード4を含み、これらのビード4の各々は、ビードワイヤー5によって補強されている。クラウン2は、この略図においては示していないトレッドが取付けられている。カーカス補強材7は、各ビード4内の2本のビードワイヤー5の周りに巻付けられており、この補強材7の上返し8は、例えば、タイヤ1の外側に向って位置しており、この場合、その車輪リム9上に取付けて示している。カーカス補強材7は、それ自体知られている通り、例えば金属製の「ラジアル」コードによって補強されている少なくとも1枚のプライからなる、即ち、これらのコードは、実際上、互いに平行に配置されて一方のビードから他方のビードに延びて円周正中面(2つのビード4の中間に位置しクラウン補強材6の中央を通るタイヤの回転軸に対して垂直の面)と80°と90°の間の角度をなしている。
本発明のこのタイヤ1は、例えば、少なくともクラウン補強材6および/またはそのカーカス補強材7が本発明に従うゴム組成物または複合体を含むという特徴を有する。勿論、本発明は、先に説明した主題、即ち、未硬化状態(硬化または加硫前)および硬化状態(硬化後)双方の上記ゴム複合体およびタイヤに関する。
【0060】
本発明に従う組成物を製造するための方法
上記および下記において説明している製造方法は、本発明に従う組成物の製造を可能にしている。
上記ゴム組成物は、適切なミキサー内で、当業者にとって周知の下記の2つの連続する製造段階を使用して製造し得る:
−110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃の間の最高温度までの高温において熱機械的に加工または混練する第1段階(「非生産」段階);
−その後の、典型的110℃よりも低い、例えば、40℃と100℃の間の低めの温度に下げて機械的に加工する第2段階(「生産段階」)、この仕上げ段階において、架橋系を混入する。
第1の実施態様においては、上記方法は、下記の各工程を含む:
−補強用充填剤を、エラストマー中に、第1工程において混入し、すべてを、110℃と190℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練する工程;
−混ぜ合わせた混合物を100℃よりも低い温度に冷却する工程;
−その後、第2の工程において、架橋系、上記芳香族ポリフェノールの誘導体および上記ポリアルデヒドを混入する工程;
−すべてを110℃よりも低い温度で混練する工程。
【0061】
例えば、上記非生産段階は、1回の熱機械的工程において実施し、その間に、先ず、全ての必須ベース構成成分(ジエンエラストマー、補強用充填剤など)を標準の密閉ミキサーのような適切なミキサー内に導入し、次いで二次的に、例えば1〜2分間の混練後、上記架橋系、上記芳香族ポリフェノールの誘導体および上記アルデヒドを除いて、その他の添加剤、充填剤被覆用の任意のさらなる薬剤または任意のさらなる加工助剤を導入する。この非生産段階における総混練時間は、好ましくは、1分と15分の間の時間である。
そのようにして得られた混合物を冷却した後、上記架橋系、上記アルデヒドおよび上記芳香族ポリフェノールの誘導体を、この場合、低温(例えば、40℃と100℃の間の温度)に維持したオープンミルのような開放ミキサー内で混入する。その後、混ぜ合せた混合物を、数分間、例えば、2分と15分の間の時間混合する(生産段階)。
そのようにして未硬化状態で得られた最終組成物は、引続き、例えば、特に試験室特性決定用のシートまたはスラブの形にカレンダー加工するか、或いは押出加工して、例えば、タイヤの製造において使用するゴム形状要素に成形し得る。
次いで、複合体または未硬化のタイヤブランクの形のプライまたはストリップとして形成したいくつかの組成物を一緒に集合させる任意の工程後、上記組成物、上記複合体またはブランクを加硫する工程を実施し、その間、上記芳香族ポリフェノール誘導体と上記アルデヒドをベースとする上記フェノール-アルデヒド樹脂が架橋される。加硫工程は、120℃以上、好ましくは140℃以上の温度で実施する。上記組成物は、硬化状態で得られる。
第2の実施態様においては、上記方法は、下記の工程を含む:
−補強用充填剤、上記芳香族ポリフェノールの誘導体および上記アルデヒドを、エラストマー中に、第1工程において混入し、すべてを、110℃と190℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練する工程;
−混ぜ合わせた混合物を110℃よりも低い温度に冷却する工程;
−引き続き、第2工程において架橋系を混入する工程;
−すべてを110℃よりも低い温度で混練する工程。
本発明およびその利点は、以下の典型的な実施態様に照らせば容易に理解し得るであろう。
【0062】
本発明の典型的な実施態様および比較試験
これらの試験は、下記のことを実証する:
−上記ゴム組成物の剛性は、補強用樹脂を含まないゴム組成物と比較して非常に増加すること;
−本発明に従うゴム組成物の剛性は、メチレン供与体としてのHMTまたはH3Mと一緒のメチレン受容体をベースとする通常の補強用樹脂を使用したゴム組成物と比較して改良されていること;
−高温で、特に150℃までの範囲にある温度には本発明に従うゴム組成物の剛性維持は、ほとんどの実施態様において、補強用樹脂を含まないゴム組成物と同等かまたはより大きく、ある種の実施態様において、HMTまたはH3Mメチレン供与体を含む従来のゴム組成物と同等かまたはより大きいこと;
−芳香族ポリフェノールおよびアルデヒドを使用して直接架橋させたフェノール-アルデヒド樹脂と比較して樹脂の早期架橋を回避することを可能にする本発明に従う組成物のフェノール-アルデヒド樹脂の架橋中に遅延段階があること;
−好ましくは芳香族アルデヒドを使用した組成物のフェノール-アルデヒド樹脂は、ホルムアルデヒドを含まず、また、その形成の間にホルムアルデヒドを生成しないこと。
この目的において、以下T0、T1およびT2ならびにI1〜I7で示す複数種のゴム組成物を上記で示したように調製して、下記に添付の表1に要約している。
すべての組成物T0〜T2およびI1〜I7は、これらの製剤において以下の共通部分を有する(phr、エラストマー100部当たりの質量部で表して):100phrの天然ゴム、75phrのカーボンブラックN326、1.5phrのN-(1,3-ジメチルブチル)-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン、1.5phrのステアリン酸、5phrのZnO、1phrのN-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルファミドおよび2.5phrの不溶性イオウ20H。
【0063】
組成物T0は、この共通部分に添加する補強用樹脂を何ら含んでいない。
共通部分以外に、組成物T1は、ヘキサメチレンテトラミン(1.6phr)および事前縮合フェノール樹脂(4phr)をベースとする補強用樹脂を含む。組成物T1は、従来技術の通常の組成物であり、組成物T0よりも高い剛性を有する。
共通部分以外に、組成物T2は、フロログルシノールおよび1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒドをベースとするフェノール-アルデヒド樹脂を含む。組成物T2は、7phrのフロログルシノールと14phrの1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒドを含む。
共通部分以外に、各組成物I1〜I7は、芳香族ポリフェノール誘導体およびアルデヒド、好ましくは芳香族アルデヒドを含み、1(芳香族ポリフェノール誘導体)/2(アルデヒド)モルで、各組成物I1〜I7においては、14phrのアルデヒドと一緒に表1に示している。
組成物T0、T1およびT2は、本発明に従う組成物I1〜I7と異なり、本発明に従っていない。
未硬化状態において、本発明に従う各ゴム組成物I1〜I7は、下記の成分を含む:
−少なくとも2個の-O-Z基を互いに対してメタ位置に担持する少なくとも1つの芳香環を含み、少なくとも1個の前記-O-Z基に対する2つのオルト位置は置換されてなく、Zは水素以外である芳香族ポリフェノールの少なくとも1種の誘導体、および
−少なくとも1つのアルデヒド、好ましくは芳香族アルデヒド。
硬化状態において、本発明に従う各ゴム組成物I1〜I7は、下記の成分を含む:
−少なくとも2個の-O-Z基を互いに対してメタ位置に担持する少なくとも1個の芳香環を含み、少なくとも1個の前記-O-Z基に対する2個のオルト位置は置換されてなく、Zは水素以外である芳香族ポリフェノールの少なくとも1種の誘導体、および
−少なくとも1種のアルデヒド、好ましくは芳香族アルデヒド。
【0064】
組成物I1〜I7の芳香族ポリフェノール誘導体
本発明に従う各組成物I1〜I7の樹脂の各芳香族ポリフェノール誘導体は、レゾルシノールの誘導体、フロログルシノールの誘導体、2,2',4,4'-テトラヒドロキシジフェニルスルフィドの誘導体、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノンの誘導体およびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる。
本発明に従う各組成物I1〜I7の各芳香族ポリフェノール誘導体は、互いに対してメタ位置において3個、3個のみの-O-Z基を担持する1個の芳香環、この場合にはベンゼン環を含む。
本発明に従う各組成物I1〜I7の芳香族ポリフェノールの誘導体として、上記芳香族ポリフェノールの誘導体の芳香環の残余部は置換されていない。特に、各-O-Z基の2つのオルト位は置換されていない。適切な場合、これらのものは、フロログルシノール誘導体である。
本発明に従う各組成物I1〜I7の各芳香族ポリフェノール誘導体は、-O-Si(R
1R
2R
3)基、-O-C((=O)(R
4))基および-O-C((=O)(N(R
5R
6)))基(ここで、各R
1、R
2、R
3およびR
4基は、互いに独立して、炭化水素ベース基または置換炭化水素ベース基を示し、各R
5およびR
6基は、互いに独立して、水素、炭化水素ベース基または置換炭化水素ベース基を示す)からなる群から選ばれる-O-Z基を有する。
【0065】
組成物I1〜I3の芳香族ポリフェノールの誘導体
組成物I1〜I3の芳香族ポリフェノールの各誘導体は、各-O-Z基が-O-Si(R
1R
2R
3)基(ここで、R
1、R
2、R
3は、互いに独立して、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、シクロアルキル基およびアルケニル基からなる群から選ばれる基を示す)を示すようなものである。好ましくは、各R
1、R
2、R
3基は、互いに独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、アリル基およびビニル基からなる群から選ばれる基、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アリル基およびビニル基からなる群から選ばれる基を示す。
【0066】
組成物I1の芳香族ポリフェノールの誘導体は、R
1 = R
2 = R
3 = CH
3であり、下記式(5)を有するようなものである:
【化21】
(5)
【0067】
有機塩基の存在下にフロログルシノール(CAS 108-73-6)とトリメチルシリルクロリド(CAS 75-77-4)から誘導体(5)を調製する。従って、例えば、40gのフロログルシノールを800mlのクロロホルムに溶解する。次に、109gのトリエチルアミンを添加する。次に、107gのトリメチルシリルクロリドClSi(CH
3)
3を周囲温度で反応媒体に滴下する。すべてを周囲温度で3時間撹拌しておく。次に、反応混合物を37%塩酸水溶液で酸性にする。次に、それを水で2回洗浄する。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた後、最後に、最終生成物を回収する。150gの誘導体(5)を茶色の液体の形で得る。誘導体(5)の
1H NMRスペクトルを
図2Aに示す(
1H NMR (CDCl
3, 300 MHz): 6.03 (3H, s), 0.27 (27H, s))。
【0068】
組成物I2の芳香族ポリフェノールの誘導体はR
1 = R
2 = CH
3、R
3 = CH=CH
2であり、下記式(6)を有するようなものである:
【化22】
(6)
【0069】
誘導体(5)と同様の方法でフロログルシノール(CAS 108-73-6)とジメチルビニルシリルクロリド(CAS 1719-58-0)から誘導体(6)を調製する。誘導体(6)の
1H NMRスペクトルを
図3Aに示す(
1H NMR (CDCl
3, 300 MHz): 6.15-5.60 (9H, m), 5.89 (3H, s), 0.15 (18H, s))。
【0070】
組成物I3の芳香族ポリフェノールの誘導体は、R
1 = CH
3、R
2 = R
3 = C
6H
6であり、下記式(7)を有するようなものである:
【化23】
(7)
【0071】
誘導体(5)と同様の方法でフロログルシノール(CAS 108-73-6)およびメチルジフェニルシリルクロリド(CAS 144-79-6)から誘導体(7)を調製する。誘導体(7)の
1H NMRスペクトルを
図4Aに示す(
1H NMR (CDCl
3, 300 MHz): 7.70-7.30 (30H, m), 6.03 (3H, s), 0.59 (9H, s))。
【0072】
組成物I4〜I6の芳香族ポリフェノールの誘導体
組成物I4〜I6の芳香族ポリフェノールの各誘導体は、各-OZ基が-O-C((=O)(R
4))基(ここで、R
4はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、シクロアルキル基およびアルケニル基からなる群から選ばれる基を示す)を示すようなものである。好ましくは、R
4は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アリル基およびビニル基からなる群から選ばれる基を示す。
【0073】
組成物I4の芳香族ポリフェノールの誘導体は、R
4 = CH
3であり、下記式(8)(CAS 2999-40-8)を有するようなものである:
【化24】
(8)
【0074】
有機塩基の存在下にフロログルシノール(CAS 108-73-6)およびアセチルクロリド(CAS 75-36-5)から誘導体(8)を調製する。従って、例えば、18gのフロログルシノールおよび64gのトリエチルアミンを450mlのテトラヒドロフランに溶解する。次に、109gのトリエチルアミンを添加する。次に、45gのアセチルクロリドを周囲温度で反応媒体に滴下する。すべてを周囲温度で3時間撹拌しておく。次に、反応媒体を濾過し、テトラヒドロフランを蒸発させる。次に、生成物をクロロホルムに溶解し、酸抽出を実施し、続いて、混合物を清浄水で抽出する。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた後、最後に、最終生成物を回収する。36gの誘導体を黄色の粉末の形で得る。誘導体(8)の
1H NMRスペクトルを
図5Aに示す(
1H NMR (CDCl
3, 300 MHz): 6.85 (3H, s), 2.28 (9H, s))。
【0075】
組成物I5の芳香族ポリフェノールの誘導体は、R
4 = C
17H
35であり、下記式(9)を有する:
【化25】
(9)
【0076】
誘導体(8)と同様の方法でフロログルシノール(CAS 108-73-6)およびステアロイルクロリド(CAS 112-76-5)から誘導体(9)を調製する。誘導体(9)の
1H NMRスペクトルを
図6Aに示す(
1H NMR (CDCl3, 300 MHz): 6.84 (3H, s), 2.47 (6H, t), 1.87-1.16 (90H, m) 0.90 (9H, t))。
【0077】
組成物I6の芳香族ポリフェノールの誘導体は、R
4 = C
11H
23であり、下記式(10)を有するようなものである:
【化26】
(10)
【0078】
誘導体(8)と同様の方法でフロログルシノール(CAS 108-73-6)らおよびラウロイルクロリド(CAS 112-16-3)から誘導体(10)を調製する。誘導体(10)の
1H NMRスペクトルを
図7Aに示す(
1H NMR (CDCl
3, 300 MHz): 6.83 (3H, s), 2.54 (6H, t), 1.84-1.62 (6H, m), 1.28 (48H, m), 0.90 (9H, t))。
【0079】
組成物I7の芳香族ポリフェノールの誘導体
組成物I7の芳香族ポリフェノールの誘導体は、各-O-Z基が-O-C((=O)(N(R
5R
6))基(ここで、R
5、R
6は、互いに独立して、水素またはアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、シクロアルキル基、アルケニル基およびアリル基からなる群から選ばれる基を示す)を示すようなものである。好ましくは、各R
5、R
6基は、互いに独立して、水素またはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アリル基またはビニル基からなる群から選ばれる基を表す。
【0080】
組成物I7の芳香族ポリフェノールの誘導体は、R
5 =HおよびR
6 = C
6H
6であり、下記式(11)を有する:
【化27】
(11)
【0081】
フロログルシノール(CAS 108-73-6)およびフェニルイソシアネート(CAS 103-71-9)から誘導体(11)を調製する。5g(0.040モル)のフロログルシノールおよび30mlのジオキサンを二つ口丸底フラスコに導入する。この混合物を周囲温度で撹拌下に置き、14.18g(0.119モル)のフェニルイソシアネートを滴下漏斗によって添加する。この添加の終わりに、200mgのジブチル錫ジラウレートを添加する。温度を80℃に8時間上げる。この反応の終わりに、ジオキサンを減圧下で蒸発させ、次いで最終生成物を真空中炉内で乾燥する。最終生成物は、94%の収率で得られた白色粉末である。誘導体(11)の
1H NMRスペクトルを
図8Aに示す(
1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz): 7.00-6.05 (15H, m), 6.24 (3H, s))。
【0082】
組成物I1〜I7のアルデヒド
本発明に従う各組成物I1〜I7の各アルデヒドは、好ましくは芳香族アルデヒドであり、1,3-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、式(A)のアルデヒドおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる:
【化28】
(A)
(式中:
Xは、N、SまたはOを含み、
Rは、-Hまたは-CHOを示す)。
【0083】
この場合、アルデヒドは、1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、フルフルアルデヒド、2,5-フランジカルボキシアルデヒドおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる。ここで、本発明に従う各組成物I1〜I7のアルデヒドは、1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒドである。
【0084】
比較試験
第1工程において、補強用充填剤をエラストマーに混入し、110℃と190℃間の最高温度に達するまですべてを熱機械的に混練した。次いで、合わせた混合物を110℃よりも低い温度に冷却した。次に、第2工程中に、上記架橋系、上記フェノール、上記芳香族ポリフェノールまたは上記芳香族ポリフェノールの誘導体および上記アルデヒドを混入した。この第2工程の終わりに、最大レオメトリートルクが得られるまで混合物を150℃に加熱して、組成物を加硫し且つフェノール-アルデヒド樹脂を架橋させた。次に、組成物の23℃における剛性を引張試験の間に確認した。
【0085】
上記遅延段階および高温における剛性-最高レオメトリートルクの特性決定
測定は、規格DIN 53529−パート3(1983年6月)に従い、振動ディスクレオメーターによって150℃で実施する。時間の関数としてのレオメトリートルクの変化により、上記フェノール-アルデヒド樹脂の加硫および架橋後の組成物の剛性化の変化を説明する。上記レオメトリートルクの変化から、遅延段階の存在は、試験した組成物の10分間にわたるレオメトリートルクの増大が対応する芳香族ポリフェノールおよび同じアルデヒドを含む対照組成物、ここでは組成物T2の10分間にわたるレオメトリートルクの増大より小さい場合に決定される。このような遅延段階の存在を表1に示す。組成物I1〜I7のそれぞれのレオメトリートルクの変化を示す各曲線、さらに、組成物T0、T1およびT2のレオメトリートルクの変化を示す各曲線は、
図2B〜8Bに示した。
最高レオメトリートルクCmaxが高いほど、組成物は高温において維持することのできる高い剛性を有する。
【0086】
23℃における剛性の特性決定−引張試験
これらの試験は、弾性応力および破断時特性を定量することを可能にする。特に明記しない限り、これらは、規格ASTM D 412、1998に従って実施する(試験標本C)。10%伸び(「MA10」と表示する)での「公称」割線モデュラス(または見掛け応力、単位MPa)は、2回目の伸びにおいて(即ち、順応サイクル後に)測定する。これらの引張測定は、すべて、1999年の規格ASTM D 1349に従って、常温と常湿の条件下で実施し、表1に報告している。
先ずは第一に、表1からの結果は、対照組成物T2における芳香族ポリフェノールおよびアルデヒドの使用が、補強用樹脂を含まない組成物(T0)よりも、また、従来技術の補強用樹脂を含む組成物(T1)よりも非常に高い23℃における剛性を得ることを可能にすることを示している。しかしながら、組成物T2は遅延段階がなく、組成物T2のフェノール-アルデヒド樹脂は早期に架橋している。
その遅延段階以外に、本発明に従う各組成物I1〜I7は、組成物T1と同等またはさらに高い23℃における剛性を有する。さらにまた、T1とは異なり、各組成物I1〜I7は、その加硫中にホルムアルデヒドを生成しない。
本発明に従う各組成物I1〜I7は、遅延段階および剛性を有し、記載されているある種の実施例において組成物T2よりも低いにもかかわらず、上記ゴム組成物の補強を可能にするのに充分である。さらに、この剛性は、使用する芳香族ポリフェノール誘導体およびアルデヒドの含有量のような他のパラメータを変更することによって増加させてもよい。
【0087】
本発明に従う各組成物I1〜I7は、組成物T0の維持と比較して高温で改良された剛性維持(Cmax)を有する。さらにまた、本発明に従う組成物I1〜I4は、組成物T1よりも少なくとも等しい(I2)かまたは著しく高い(I1、I3およびI4)高温での剛性維持(Cmax)を有する。
遅延段階および23℃における剛性が-O-Z基および特にR
1基〜R
6基を変動することによって適用の関数として選ばれてもよいこともまた留意される。
本発明は、上記で説明した実施態様に限定されない。
表1に存在しない他の実施態様において、複数個の芳香環(例えばベンゼン環)を含む芳香族ポリフェノール誘導体を想定することができ、これらの環の少なくとも2個が各々少なくとも2個の-O-Z基を互いに対してメタ位置に担持する。各芳香環の少なくとも1個の前記-O-Z基に対する2つのオルト位置は置換されていない。
ゴム組成物の補強用のフェノール-アルデヒド樹脂の製造のためのその使用とは独立して、芳香族ポリフェノール誘導体およびアルデヒドをベースとするフェノール-アルデヒド樹脂の架橋中に遅延段階を生成するために芳香族ポリフェノール誘導体を使用することにより上記のような芳香族ポリフェノール誘導体を使用してもよい。上記で説明した芳香族ポリフェノール誘導体およびアルデヒドの特性は、上記フェノール-アルデヒド樹脂の架橋中に遅延段階を生成するためのこの使用にもあてはまる。
ある種の実施態様において、同様に、ゴム組成物の補強用のフェノール-アルデヒド樹脂の製造のためのその使用と独立して、温度上昇に伴ってゴム組成物の剛性を維持するためにフェノール-アルデヒド樹脂において芳香族ポリフェノール誘導体を使用することにより上記のような芳香族ポリフェノールを使用してもよい。上記で説明した芳香族ポリフェノール誘導体およびアルデヒドの特性は、温度上昇に伴ってゴム組成物の剛性を維持するためのフェノール-アルデヒド樹脂におけるこの使用にもあてはまる。
【0088】
【表1】