【文献】
Hernan Jara,Synthetic T1rho Mapping with Multispectral Quantitative Magnetic Resonance Imaging: Initial Results with a Non Spin-Lock Technique,Proceedings of ISMRM,2012年,Vol.20,p.3416
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記物性が:前記生体試料の重量;前記生体試料の一つまたは複数の寸法;前記生体試料のインピーダンス;および前記生体試料の画像のうちの一つを含む、請求項5に記載のシステム。
前記測定装置が:イメージング・センサ、重量計、インピーダンス・アナライザ;レーザ・イメージング・システム;および顕微鏡のうちの一つを含む、請求項6に記載のシステム。
前記MRスキャナが、チャンバーに囲繞されたボア型MRスキャナを含み、チャンバーが面により画定され、前記システムの操作中に不活性ガスを充填される、請求項1に記載のシステム。
前記MRスキャナが、チャンバーに囲繞されたボア型MRスキャナを含み、チャンバーが表面により画定され、前記システムの操作中に大気圧未満の圧力を有する、請求項1に記載のシステム。
前記さらなるMR測定が、MR温度測定(MRT)、MR分光(MRS)、MRイメージング(MRI)、磁場緩和、およびMRエラストグラフィ(MRE)のうちの一つを含む、請求項14に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
生体試料の不変磁気共鳴(MR)シグネチャを決定するシステムを開示する。操作中、システムは、複数スキャンにおけるボクセルに関連付けられたMR信号とシミュレートされたMR信号との間の差分に基づいて、生体試料内のボクセルの磁気共鳴(MR)モデルを決定する。MR信号は、複数のMRスキャン中に(例えば磁気共鳴フィンガープリンティングすなわちMRFを実行している間に)スキャン命令に基づいて、システム内のMRスキャナにより測定されまたは捉えられ、そして生体試料用のシミュレートされたMR信号は、MRモデルとスキャン命令を使用して生成される。さらにシステムは、収束判定基準が達成されるまで、差分に基づいて、MRスキャンにおけるスキャン命令(少なくとも磁場強度、パルス列、MR技術、生体試料内の対象領域、ボクセル・サイズ、および/または核のタイプを含むもの)を反復修正する。次いでシステムは、生体試料の識別子と、MRモデルに関連付けられ任意の磁場強度での生体試料の動的MR応答を記述する不変MRシグネチャ(例えばMRモデル内のパラメータ)とを、メモリに記憶する。
【0024】
不変MRシグネチャを決定することにより、この特性評価技術では、同一のMRスキャナまたは異なるMRスキャナにおいて生体試料上で定量的に正確なMRスキャンを実行することが可能になる場合がある。この定量性の能力により、MRスキャンの正確度が改善する、および/またはスキャン時間が減少する可能性がある。したがって、この特性評価技術により、MRスキャンのコストが大幅に削減される可能性があり、またMRスキャンによる患者の不満を低減させる(よって患者の満足度を増加させる)可能性がある。
【0025】
さらには、不変MRシグネチャにより、生体試料の変化の縦断的な分析、および/または複数のMRフィンガープリント(異なるMRスキャナで取得されたもの)の集計分析が容易になる可能性がある。したがって、この特性評価技術により、MRフィンガープリントの分析の改善、および患者結果の改善が容易になる可能性がある。
【0026】
さらに、不変MRシグネチャを使用して、MRスキャナ(例えば、磁場の変動または空間的不均一性、検出器ノイズ等)を定量的に評価してもよく、またこれを使用して、特定のMRスキャナにおけるMRスキャン中のMRシグナルを予測してもよい。これらの能力により、さらに小さいおよび/または均一性のさらに低い磁場を用いたMRスキャナを使用することが可能になることがあり、これによりMRスキャナのサイズおよびコストが削減される可能性がある。
【0027】
以下の考察では、特性評価技術は、さまざまなMR技術、例えば:磁気共鳴イメージング(MRI)、磁気共鳴分光(MRS)、磁気共鳴スペクトル・イメージング(MRSI)、MRF、磁気共鳴エラストグラフィ(MRE)、磁気共鳴温度測定(MRT)、磁場緩和測定、および/または他のMR技術(例えば、機能的MRI、代謝イメージング、分子イメージング、血流イメージング)と組み合わせで使用してもよい。
【0028】
特に、「MRI」は、試料の内部構造(例えば生体試料、例えば、組織試料または患者内の解剖学的構造)の画像(例えば2Dスライス)すなわちマップを、磁場、例えば不均一なまたは空間変動する外部磁場(例えば明確な空間的勾配を有する外部磁場)の存在下での、あるタイプの核スピン(プロトンまたは同位体
1H)の動的応答に基づいて生成することを含むと理解されるものとする。さらに、「磁気共鳴分光」すなわち「MR分光」は、試料(例えば生体試料)の化学組成または形態を、磁場、例えば均一な外部磁場の存在下での複数タイプの核スピン(
1H以外、またはそれに加えて)の動的応答に基づいて決定することを含むと理解されるものとする。さらに、「MRSI」は、試料の内部構造および/または化学組成、すなわち形態の画像すなわちマップを、磁場、例えば不均一なまたは空間変動する外部磁場の存在下で、MR分光を用いて生成することを含むと理解されるものとする。
【0029】
さらに、「MRF」は、擬似ランダムパルス列を使用して、試料内の異なる物質からの動的なまたは時間依存する磁化すなわちMRトラジェクトリを表す信号を取得することよって、試料の特性を定量的に測定することを含むと理解されるものとする。得られた試料の一意的な「フィンガープリント」は概して、調べられている複数の物質特性の関数である。例えば、MRFは、スピン−格子緩和時間T
1(核スピン磁化ベクトルの成分が緩和されて外部磁場の方向と平行になる際の信号強度損失に関連付けられる時定数)、スピン−スピン緩和時間T
2(外部磁場の方向に垂直な核スピン磁化ベクトルの成分が緩和されている際の信号幅の広がりに関連付けられる時定数)、プロトン密度(そしてさらに一般的には、一つまたは複数のタイプの核の密度)、および拡散(例えば拡散テンソルの成分)の、高品質で定量的なマップを提供することができる。
【0030】
「磁場緩和測定」(例えば、磁場掃引を加えたB
0リラクソメトリ)は、異なる磁場強度でのMR画像の取得が必要となり得ることに留意されたい。これらの測定は、その場で、または動的に(特定の磁場強度で測定を実行してから、読み出し中には公称磁場強度に戻す、すなわち準静磁場強度とは対照的に)実行されることがある。例えば測定は、同調されていない無線周波数(RF)コイルまたは磁力計を使用して実行して、異なる磁場強度での測定を大幅に短い時間で実行できるようにしてもよい。
【0031】
また、以下の考察では、「MRE」は、試料全体に機械的な波(例えばせん断波)を送り、せん断波の伝播の画像を取得し、せん断波の画像を処理して試料の剛性の定量的マッピング(これは「エラストグラム」と称されることもある)を生成することにより、MRIを用いて試料の剛性を測定することを含むと理解されるものとする。さらに「MRT」は、MRIを用いて、試料内の温度変化のマップを測定することを含むと理解されるものとする。
【0032】
以下の考察では、生体試料は、動物または人の組織試料(すなわち、動物または人の一部分)を含んでいてもよいことに留意されたい。例えば、組織試料は、動物または人から予め取り出してあってもよい。いくつかの実施形態では、組織試料は、病理試料、例えば生検試料である。よって、組織試料はホルマリン固定パラフィンに包埋されていてもよい。しかし、他の実施形態では、生体試料は、動物または人の体内にある(すなわち、インビボ試料)、および/または特性評価技術が、全身スキャンを必要とする場合がある。さらに、この特性評価技術は、さまざまに異なる物質の無生物(すなわち、非生体)試料に適用してもよい。さらに、特性評価技術は、多様なMR技術とともに使用してもよいが、以下の考察ではMRFを例示として使用する。
【0033】
以下に、システムの実施形態を記載する。このシステムは、組織試料の磁場不変なMRフィンガープリント(「磁場不変MRシグネチャ」または「不変MRシグネチャ」と称されることもある)を、MRF(「定量的MRF」または「QMR−X」と称されることもある)上の変動を使用して決定してもよい。システムは、さらなる情報、例えば診断情報、または組織試料に関連付けられたメタデータ、例えば:重量、サイズ/寸法、一つまたは複数の光学画像、一つまたは複数の赤外画像、インピーダンス/水和測定、一つまたは複数のさらなるMR技術、人口統計情報、および/または家族歴を測定してもよい。また、システムは、データ構造における組織試料の不変MRシグネチャ、さらなる情報、および/または識別子(例えば組織試料についての一意的な識別子、例えば標識情報)を、複数の組織試料から得られた不変MRシグネチャの大規模なデータ構造または知識ベース(「バイオボールト(biovault)」と称されることがある)に目録化またはインデックス化して、これ以後に使用してもよい。システムが、症候性および/または非症候性の生体試料をスクリーニングできることに留意されたい。(いくつかの実施形態では、生体試料は、健康なだけ、または不健康なだけでない。例えば、特定の不変MRシグネチャは、特定の状況、例えば特定の人では健康である場合があるが、別の面では不健康である場合がある)。よって、システムは、疾病または病理だけでなく、健康な組織を特性評価するのに使用することができる。
【0034】
図1は、システム100を例示するブロック図を表す。このシステムは:MRスキャナ110、およびコンピュータ・システム114を含む。
図12を参照して以下にさらに記載するとおり、コンピュータ・システム114は:ネットワーキング・サブシステム(例えばインタフェース回路116)、処理サブシステム(例えばプロセッサ118)、記憶サブシステム(例えばメモリ120)を含んでいてもよいことに留意されたい。システム100の操作中、技術者またはMR操作者は、試料情報読み取り器(SIR)122を使用して組織試料112に関する情報をスキャンし、組織試料112に関連付けられた標識から情報(例えば識別子、これは一意的な識別子であってもよい)を取り出すことができる。例えば、試料情報読み取り器122は、組織試料標識の画像を取得し、光学式文字認識技術を使用して情報を抽出してもよい。さらに一般的には、試料情報読み取り器122は:レーザ・イメージング・システム、光学イメージング・システム(例えばCCDまたはCMOSイメージング・センサ、または光学カメラ)、赤外線イメージング・システム、バーコード・スキャナ、RFIDリーダ、QRコード(登録商標)・リーダ、近距離通信システム、および/または無線通信システムを含んでいてもよい。
【0035】
あるいは、技術者またはMR操作者は、コンピュータ・システム114に付属するユーザ・インタフェースを介して、組織試料112についての情報を入力してもよい。抽出された、および/または入力された情報が、組織試料112の一意的な識別子、検査対象(または患者)識別子、検査対象の年齢、検査対象の性別、組織試料112が採られた元の臓器、組織のタイプ、組織試料112を取得した/試料にした日づけ、組織試料112を取得した際の手順、組織試料112を取得した医師または開業医、組織試料112を除去した時刻と場所、組織試料112のタイプ(例えばホルマリン固定パラフィン、すなわちFFPE、または非FFPE)、生検または診断(入手可能であれば)等を含んでもよいことに留意されたい。
【0036】
次いで、技術者またはMR操作者は、MRスキャナ110内に組織試料112を置き、例えば、物理的なボタンを押すことによって、またはコンピュータ・システム114に付属するユーザ・インタフェースの仮想アイコンをアクティブにすることによって、不変MRシグネチャの決定(MRF、MRT、MRE、MRS、磁場緩和測定等を含む場合がある)および/または他の測定を開始することができる。同一組織試料(そしてより一般的には同一物質)は、同一MRスキャナまたは異なるMRスキャナにおいて測定された異なるデータセットに、異なるMR信号(例えば異なる信号強度および/または周波数)を有することができることに留意されたい。概して、そのような測定−測定間の変動は、多くの要因に依存し、そうした要因には:MRスキャナ110の特定の具体例、MRスキャナ110のタイプまたはモデル、MRスキャナ110の設定、スキャン命令(例えば、組織試料112に印加される磁場強度およびパルス列、MR技術、組織試料112内の対象となる領域、一つまたは複数のボクセル・サイズ、および/または核のタイプ)、MRスキャナ110内の検出器などが挙げられる。
【0037】
これらの課題は、磁場強度の変動(ゆえに磁場不均一性)とは独立の(またはそれに対して著しく感度を下げた)、組織試料112の不変MRシグネチャを決定する特性評価技術を使用することによって、システム100において対処される。この不変MRシグネチャは、組織試料112のMRフィンガープリント中の情報に見いだされるまたは対応する情報(例えば、T
1、T
2の高品質で定量的なマップ、核密度、拡散、速度/流れ、温度、および磁化率)を含んでいてもよい。さらに、不変MRシグネチャは、測定−測定間変動(あるMRスキャナから別のものにしたときに発生する変動を含む)に対して修正してもよい。あるいは不変MRシグネチャは、測定−測定間変動を補正する、および/または特定の測定条件に対する版のMRフィンガープリントの生成を可能にする情報を含んでいてもよく、測定条件には例えば:特定のMRスキャナ、MRスキャナの特定のモデル、スキャン命令、特定の検出器等がある。よって、特定のMRスキャナの特性(例えば、この特定のMRスキャナのモデル、スキャン命令、検出器、特定のMRスキャナのノイズ特性、特定のMRスキャナにおける磁場不均一性)とともに、不変MRシグネチャを使用して、ある版のMRフィンガープリントを、あたかもそれが特定のMRスキャナによって測定されたかのように生成してもよい。特定のMRスキャナのノイズ特性は、使用されるパルス列に依存する場合があることは留意されたい。
【0038】
いくつかの実施形態では、不変MRシグネチャは、組織試料112内のボクセルのMRモデルにおけるパラメータを含む。MRモデルにおける各ボクセルは、特定の化学シグネチャおよび原子核の容積密度に関する多次元データを含む場合があるので、システム100は、組織試料112が由来する身体の領域または組織試料112の源を知ることによって、組織試料112の不変MRシグネチャを決定してもよい。さらに、システム100は、組織試料112に関するこの情報または知識を使用して、MR信号を組織試料112から収集する際にスキャン命令(さらに一般的にはMRF中の条件)をさらに最適化してもよい。例えば、一意的な識別子に基づいてアクセスされたメモリ120内に記憶された情報(例えば、一意的な識別子に基づいて紐付けされた、または照会された医療記録または病歴)だけでなく、組織試料112に関する抽出されたおよび/または入力された情報をコンピュータ・システム114が使用して、スキャン命令(例えば、異なるパルス列および/または異なる磁場強度、例えば0T、6.5mT、1.5T、3T、4.7T、9.4T、および/または15Tを含む範囲の磁場強度、MR技術、組織試料112内の対象の領域、ボクセル・サイズ、および/または核のタイプ)、実行する他の測定、そして、より一般的には、スキャンまたは分析計画を決定してもよい。概して、スキャン命令は、複数の値の磁場強度を指定してもよい。例えば、スキャン命令は、磁場が経時的および空間的にどのように変化するかを記述する関数、または、組織試料112の不変MRシグネチャを決定するのに使用できる「面」を指定する複数の関数を提供または指定してもよい。
図2を参照して以下にさらに記載すると、いくつかの実施形態では、磁場は、物理的におよび/または仮想的に操作されて、特定の面が達成される。特に、磁場を、時間の関数として回転させてもよく、また、磁場を生成するリング磁石が物理的に分離している実施形態では、磁場は:リング磁石間の物理的距離を変化させること、一方のリング磁石に対するもう一方のリング磁石の向きを変化させること、リング磁石をz軸に沿って移動すること等により、変化させてもよい。
【0039】
さらに、以下に記載するように、他の測定は:インピーダンス測定、光学イメージング、組織試料112の寸法のスキャン、組織試料112の重量測定、および/または、特性評価技術に含まれていることもあり得る他の試験を含んでいてもよいことに留意されたい。例えば、MRスキャナ110中のゲルで覆われたテーブルを使用して、組織試料112のインピーダンス、および/または組織試料112の重量を測定することができる。いくつかの実施形態では、他の測定は、組織試料112を(例えば、電磁波または機械的な波を使用して)非破壊的に調べる。しかしながら、他の実施形態では、破壊試験、または組織試料112を永久に改変する試験を使用する。これにより、統合治療、またはいくつかの実施形態では、さらに多くの情報を収集することさえ可能になることがある。このように特性評価技術は、プロトンビーム治療、放射線療法、磁気誘導ナノ粒子等の治療法などだけでなく、非破壊および/または破壊測定技術を含んでいてもよい。
【0040】
さらに、MRスキャナ110の所定の特性評価を使用してスキャン命令を決定してもよい。あるいは、もしMRスキャナ110の特性評価が済んでいない場合には、システム100は、不変MRシグネチャを決定するのに先立ってMRスキャナ110の特性を評価、記憶してもよく、これによって特性評価技術の最中にMRスキャナ110の特性を使用できるようにして、例えばスキャン命令を決定してもよい。例えば、操作の間、コンピュータ・システム114は、ファントム(phantom)のスキャンに基づいてMRスキャナ110を特性評価してもよい。
【0041】
MRスキャナ110の所定の特性評価は、MRスキャナ110の磁場の不均一性をマッピングするまたは決定することを含んでいてもよい(不均一性が磁場強度に依存する可能性があるため、測定を異なる磁場強度で実行してもよい)ことに留意されたい。所定の特性評価は、環境に関する、地理的な、および/またはその他のパラメータも含むこともある。例えば、システム100においてパルス・ジェネレータによって生成されるRFパルスが、MRスキャナごとに変動することがあり、また構成要素の性能が、パラメータ、例えば:負荷、温度、MRコイル構成、増幅器、湿度、磁気嵐、および/またはジオロケーション(geoloaction)に依存することがあるため、時間の関数として変動することもある。その結果、MR信号に加えてRFパルスを、例えば、MRスキャナ110におけるRFパルス・ジェネレータとRF(トランスミッション)コイルとの間に信号スプリッタを使用して、測定してもよい。いくつかの実施形態では、RFコイルによって生成される磁場は、試験コイルを使用して測定される。特定のパルス列が特定のボクセル・サイズに対応していることがあるため、MRスキャナ110を特性評価する場合には、および/またはスキャン命令を決定する場合には、異なるボクセル・サイズに対応する異なるパルス列を使用してもよいことに留意されたい。
【0042】
図3を参照してさらに記載するとおり、MRスキャナ110に関連付けられた、測定および記録された信号を使用してMRスキャナ110のMRモデルを生成してもよく、このモデルは、多様なパラメータ(T
1、T
2、プロトン密度、オフ共鳴、環境、場所、温度、パルス列等)にわたる公知の特性を有するファントムに対してMR信号の進化または応答を、ブロッホ方程式、フル・リウヴィアン(full Liouvillian)計算、または別のシミュレーション技術を使用して正確に予測するものである。このようにして、MRモデルはMRスキャナ110を特性評価してもよい。
【0043】
MRスキャナ110の所定の特性評価を使用して、汎用の不変MRシグネチャを、特定のMRスキャナ、例えばMRスキャナ110に関連付けられた、装置固有の不変MRシグネチャに変換することができる。磁場とパルス列とともに、装置固有の不変MRシグネチャを使用して、特定のMRスキャナにおける任意のMRスキャン中のMR信号を予測してもよい。同様に、異なるMRスキャナの所定の特性評価を使用して、装置固有の不変MRシグネチャを別の不変MRシグネチャに変換することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、MRスキャナ110の所定の特性評価は、MRスキャナ110中の、またはそれに付属する電子回路に由来して測定された周囲ノイズを含む。その後のMRスキャンまたはシミュレーション中、デジタルフィルタが、この測定されたノイズ(または測定されたノイズを記述する統計学的パラメータ)を使用して、測定されたMR信号および/または計算されたMRモデルの質を改良してもよい。さらに、種々の測定を、外部基準クロック、または生物学的時間周期(例えば呼吸期間、心拍周期、身体の動きの基本周期等)に同期させて、それ以降の同期平均処理、またはさらなる信号処理を行えるようにしてもよい。
【0045】
さらに、特性評価技術の最中に、コンピュータ・システム114は、ネットワーク132を介して受信したスキャン命令の具体例に基づき、MRスキャナ110を使用して、組織試料112中の異なる物質(例えば異なるタイプの核)のMRスキャンを繰り返し実行してもよい。異なる物質のMRスキャンが疑似ランダムに取得されてもよいことに留意されたい。例えば、組織試料112内の特定物質のMRスキャンを、コンピュータ・システム114内の回路またはソフトウェアとして実装された乱数または擬似乱数発生器により提供される乱数または擬似乱数に基づいて選択してもよい。あるいは、組織試料112内の異なる物質を、スキャン命令の各具体例について系統的にスキャンしてもよい。
【0046】
さらには、特定のMRスキャン中に取得されたまたは捉えられたMR信号を使用して、組織試料112内のボクセルのMRモデルを修正または適合させてもよい。例えば、先に言及し、以下に
図3を参照してさらに記載するとおり、コンピュータ・システム114は、一つまたは複数のMRスキャンにおいてボクセルに関連付けられたMR信号と、シミュレートされたMR信号(MRモデル、スキャン命令の具体例、および随意にMRスキャナ110の特徴を使用して生成してもよいもの)との差分(または差分ベクトル)に基づいて、MRモデル(例えばMRモデル中のパラメータ)を決定してもよい。差分ベクトルは、演繹的に計算された情報に基づいて重み付けして、誤差を低減させるように、例えば、最小の差分ベクトル、すなわち一組の重み付けされたシミュレートされたMR信号(予め計算してあってもよいもの)にわたって測定された最小の差分ベクトルを得るようにしてもよいことに留意されたい。いくつかの実施形態では、差分ベクトルは、一つまたは複数のMR信号とシミュレートされたMR信号(それぞれが、共通の磁場強度に関連付けられているまたはそれに修正されている)との点乗積すなわち内積、一つまたは複数のMR信号とシミュレートされたMR信号とのコサイン類似度、スペクトル分析、および/またはその他の比較法を用いて決定される。
【0047】
次に、残った差分(または残った差分ベクトル)に基づいて、スキャン命令を修正してもよい、すなわち、スキャン命令の新しい具体例(組織試料112に印加されることになる一つまたは複数の磁場強度、および一つまたは複数のパルス列、MR技術、組織試料112中の対象となる領域、ボクセル・サイズ、および/または核のタイプを含む)を決定してもよい。これらの操作は、収束判定基準が達成されるまで反復してもよい。例えば、収束判定基準は、MR信号とシミュレートされたMR信号との間の差分が、予め定義された値(例えば、0.1、1、3、5、または10%)未満であること、および/またはスキャン命令への変更が所定の値よりも小さいことを含んでいてもよい。
【0048】
以下、特性評価技術の操作について詳細に記載する。
図2に、MRスキャナ110の一例のブロック図を示す。このMRスキャナは、磁石210、磁気シールド212、試料ホルダ214、試料ホルダ・アーティキュレータ(sample−holder articulator)(SHA)216、磁場勾配パルス・ジェネレータ(MGPG)218、磁場勾配増幅器(MGA)220、磁場勾配コイル222、RFパルス・ジェネレータ(RFPG)226、RF源(RFS)224、RF増幅器(RFA)228、RFコイル230、RF受信増幅器(RFRA)232、RF検波器(RFD)234、デジタイザ236(例えばアナログ・デジタル・コンバータ)、環境調整器242、およびインタフェース回路244を含んでいてもよい。(環境調整器242とインタフェース回路244との機械的および電気的接続は
図2に示されていないことに留意されたい。)これら構成要素の少なくともいくつかが、インタフェース回路244、ネットワーク132(
図1)、およびインタフェース回路116(
図1)を介して、コンピュータ・システム114に結合していてもよく、このシステムがMRスキャナ110の操作を制御してもよい。MRスキャナ110の構成要素について以下に簡単に記載する。
【0049】
MRスキャナ110は、クローズドボア(closed−bore)またはオープンボア(open−bore)のシステムであってもよいことに留意されたい。特に、磁石210(
図2の断面図に、磁石210−1および210−2の一部分によって例示される)は、クローズドボアまたはオープンボアであってもよい。例えば、磁石210のボア径238は、1〜10cmの間、または5〜30cmの間にあってもよい。オープンボア・システムは、間隙により分離された2枚のプレートを使用して磁場を生成してもよく、組織試料112を、これらのプレートの間で磁場に露出させてもよい(そしてこの磁場により組織試料内の核を分極させてもよい)。あるいは、クローズドボア・システムは、トロイダル形状の磁石210を有していてもよく、組織試料112をトロイドの中央にある穴を通して移動させてもよい(こうして、強磁場すなわち高磁場を使用して組織試料112内の核を分極させる)。さらに、磁石210の向きを水平に向けて(「水平ボア」と称されることもある)、組織試料112を磁場に通して水平に移動させてもよいが、垂直に向けることもできる。概して、MRスキャナ110は、(例えば、試料ホルダ・アーティキュレータ216を調整することにより)さまざまな位置、例えば、異なる角度、向き、および視点で、組織試料112をスキャンしてもよい。(したがって、MRスキャンが、個人または動物に対して実行される場合、MRスキャナ110は、検査対象が立っている、座っている、または横になっている間に測定可能となる場合がある。)さらに小さいボア径238を有する実施形態では、MRスキャナ110は携帯可能となる場合があることに留意されたい。
【0050】
MR技術によっては、磁石210の磁場強度B
0は、低磁場(例えば、0.1T未満、例えば、0.001T、またさらには0Tのピーク磁場強度を有する電磁石)、強磁場(例えば、約0.5Tのピーク磁場強度を有する強磁石)、または高磁場(例えば、約0.5Tより大きいピーク磁場強度を有する超電導磁石)であってもよい。概して、多種多様な磁石、および磁石構成を使用してもよい。超電導体を有する実施形態では、磁石210は、極低温流体、例えば、液体ヘリウム、すなわち液体窒素で満たされたもしくは冷却されたデュアで囲繞された液体ヘリウムを使用して冷却してもよい。しかし他の実施形態では、磁石210は、室温または室温近くで動作する。さらに、磁石210は、組立て式であってもよく、例えば、一組の超電導リングであって、それぞれが0.5Tのピーク磁場強度を有し、付け足して、取り外して、または移動させて、異なる磁場の大きさや構成を生み出すことができるものであってもよい。
【0051】
磁石210は、(勾配磁場および/またはパルス列を介して)物理的におよび/または仮想的に変化させることができる磁場を生成してもよい。この能力により、主要外部磁場のゆっくりとした回転が可能となる場合があり、低磁場強度でMRSを実行できるようになる。不変MRシグネチャ計算の煩雑さを低減できる情報を取得するために組織試料112内の磁気モーメントを摂動させるもっと多くの方法が、このさらなる自由度により得られることがある。磁石210の向きを移動または変化させることは:スキャン計画の一部として、z軸上でリング磁石の対を互いに近づけたり遠ざけたりすること;インデックス化されている空間の容積に対して相対的に磁石210を回転させること;インデックス化されている空間の容積のz軸に対して磁石210の向き/配置を変化させること等を含んでいてもよいことに留意されたい。さらに、「物理的に」とは、磁石210の物理的な動きを意味し得る一方、「仮想的に」とは、勾配磁場および/またはパルス列(例えば、いわゆる「スピンロック法」)を使用して、磁石210の向きを物理的に変化させずに同一の結果を達成することを示す場合がある。概して、これらの技術は、互いに独立して使用してもよく、また複数の方法を互いに併用してもよい。
【0052】
また磁石210を使用して、磁場不均一性を(意図的に)動的に変動させてもよい。例えば、シム(shim)・コイルを物理的に回転させることにより、および/または特定のパルス列を印加することにより、磁場不均一性を修正してもよい。さらに、空間における異なる点で特定の種類の磁場不均一性を導入することにより、MRスキャナ110は、非常に近接した特定の種類の組織を区別することができる。
【0053】
磁気シールド212は、ケイ素鋼の鋼板または金属シートを含んでいてもよい。室外の磁場強度を5ガウス(または0.5mT)以下に減衰させるために、この磁気シールドを部屋の周囲全体に配置して、壁、床、および天井を完全に覆ってもよい。さらに、特別なドアとドアフレーム・シール(doorframe seal)を使用して、部屋から「漏出」する磁場をさらに低減させてもよい。さらに、磁石210は、フリンジ磁場を低減させるために、シールド(例えば、主要な超電導巻線とは反対の電流を有する第2の組の超電導巻線)を含んでいてもよい。例えば、磁場強度は、磁石210から4メートルの距離で0.5mTであってもよい。この構成により、磁気シールド212の量が削減される、または磁気シールド212がまったく必要なくなることがある。
【0054】
いくつかの実施形態では、磁気シールド212は、(磁気シールド212の面によって画定される)チャンバー240を提供してもよく、このチャンバーは随意に密封して、組織試料112が大気圧未満(すなわち、真空チャンバー)とする、または予め分極していてMR画像の品質を改善することが可能な不活性ガス(例えばキセノン)を含むようにしてもよい。(より一般的には、固体、液体、または気体の造影剤を使用して、MR画像の品質を改善してもよい)。特に、環境調整器242、例えば、コンピュータ・システム114によって制御されるガスバルブおよび真空ポンプを使用して、チャンバー240内の圧力を低減させてもよい。あるいは、環境調整器242は、(コンピュータ・システム114の制御下で)選択的に不活性ガスをチャンバー240内に流すことができるガスバルブおよびガスタンクを含んでいてもよい。しかし、他の実施形態では、チャンバー240は、試料ホルダ214の面によって画定される、または提供される。
【0055】
磁場勾配パルス・ジェネレータ218が、勾配パルスを提供してもよいことに留意されたい。これらの勾配パルスは、磁場勾配コイル222を駆動するのに適したレベルまで、磁場勾配増幅器220によって増幅してもよい。磁場勾配パルス・ジェネレータ218および磁場勾配増幅器220を、インタフェース回路116(
図1)、ネットワーク132(
図1)、およびインタフェース回路244を介してコンピュータ・システム114によって制御してもよいことに留意されたい。例えば、コンピュータ・システム114は、磁場勾配パルス・ジェネレータ218によって提供される磁気パルスのタイプおよび形状を指定してもよく、磁場勾配増幅器220の増幅または利得を指定してもよい。
【0056】
さらに、磁場勾配コイル222は、勾配磁場の形状および振幅を、(右手系デカルト座標系での)x、y、およびz軸に沿って生成してもよい。磁場勾配コイル222は概して、室温で動作し、磁場B
0に空間勾配を生成することがある。例えば、水平ボア・システムでは、z軸またはその方向(すなわち、磁石210のボアの対称軸に平行な)に沿った磁場B
0の勾配は、反ヘルムホルツコイルを用いて、各コイル中の電流を磁場B
0に加えるまたはそれから差し引くことにより勾配を実現することによって、実現してもよい。さらに、xおよびy軸に沿った勾配は、「8」の字形状を有する一対のコイル(これらは、それぞれの軸に沿って勾配を生成する)を使用して発生または生成させてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、磁場勾配コイル222は、100mT/mの勾配と、150T/m/sという高速のスイッチング時間(またはスリュー・レート)を有し、これにより、3Dイメージングにおいてスライス厚さ0.7mm、およびボクセル分解能0.1mmが可能となることがある。ただし、高周波数(例えば、約100kHz以上の周波数)を使用することにより、現状の米国のスリュー・レート限界200T/m/sよりも高いスリュー・レートを使用してもよい。磁石210がさらに大きな磁場強度(例えば7T)を生成する場合、60μmの等長的なボクセル分解能が達成されることがある。
【0058】
さらに、RFパルス・ジェネレータ226は、RF源224による搬送波出力(例えば、ターゲットとなるタイプの核および磁場強度B
0に基づいた所望の基本周波数を有するサイン波、またはRFパルス)に基づいて、RFパルスを生成してもよく、またRF増幅器228は、RFパルスのパワーを、駆動RFコイル230を駆動するのに十分な強さに増加(例えば、ミリワットからキロワットまでパワーを増加)させてもよい。RFコイル230は、パルス列に基づいて、組織試料112内の核のタイプの正味の磁化を回転させる磁場B
1を生成してもよい。RFパルス・ジェネレータ226、RF源224、およびRF増幅器228を、インタフェース回路116(
図1)、ネットワーク132(
図1)、およびインタフェース回路244を介して、コンピュータ・システム114によって制御してもよいことに留意されたい。例えば、コンピュータ・システム114は、RFパルス・ジェネレータ226により出力されるパルスのタイプまたは形状、RF源224により提供される搬送周波数またはパルス中の周波数、および/またはRF増幅器228の増幅または利得を指定してもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、RFパルス・ジェネレータ226は、搬送波またはRFパルスをアポダイズド・シンク・パルス(apodized sinc pulse)に成形し、これにより、測定および/または引き続く信号処理(例えばフーリエ変換)に悪影響を及ぼす可能性のある不連続性を平滑化してもよい。アポダイズド・シンク・パルスは、核のスピン状態を励起することがあり、そしてこれらの励起されたスピン状態が減衰してRFエネルギーのパルスを放出することがあり、取得中にこのエネルギーが捉えられる。概して、特性評価技術の最中に、幅広い種類のパルス列を使用してもよい。例えば、パルス列は、MR技術、例えば:ターボ・フィールド・エコー(TFE)、高速フィールド・エコー(FFE)、磁化率強調画像(SWE)、ショート・タウ反転回復(STIR)またはショートT
1反転回復(T
1・ln(2)に等しい反転時間TIを用いて脂肪のMR信号を0にする、脂肪組織についての低減法のタイプ)、ターボ・スピン・エコー(TSE)、ファスト・ロー・アングル・ショット(fast low angle shot)法、すなわちFLASH(先端角度が大きいほど、よりT
1強調された画像が得られ、先端角度が小さいほど、よりT
2強調された画像が得られるスピン・エコー列のタイプ)、容積補間脳検査(VIBE)、磁気パルス高速グラジエント・エコー(MP RAGE)、液体減衰反転回復(FLAIR)、パラレル・イメージング、例えば感度エンコーディング(SENSE)、または別のパルス列を含んでいてもよい、または伴っていてもよい。SENSEは:コイル感度マップの生成、部分k空間MRデータの取得、各RFコイル230からの部分視野画像の再構成、および行列反転を用いた部分視野画像の結合を含んでいてもよいことに留意されたい。さらに、パルス列は、第2世代および第3世代のパラレル・イメージング技術、例えばGRAPPA、Auto−Smash、またはVD−SMASHを含んでいてもよく、または伴っていてもよく、これらは、k空間アンダー・サンプリングを使用してMRIパルス列を高速化するイメージング技術であり、補助線を取得することによって、較正の一形態が得られるが、その理由は、RFコイル230全体のMR信号の係数が、この測定から決定できるからである。さらに、パルス列は、ハードウェアまたはMRスキャンに依存しないように設計または選択してもよい。例えば、ノイズを相殺し、対象となる特定のパラメータを増幅する(「量子ポンピング」と称されることもある)ように、パルス列を設計または選択してもよい。(これらのパルス列をNMRまたはMRIにおいて使用して、特定のパラメータを装置依存のないように定量化してもよい。以下に説明するように、量子ポンピングを、擬似ランダムパルス列の代替として使用してもよい。
【0060】
したがって、概してパルス列は:既存のパルス列(MRスキャナの特性の正確な測定およびシミュレーションが得られて不変MRシグネチャを決定できる場合);擬似ランダムパルス列(これは、ノイズの正確な測定とシミュレーションが必要となることもあるが、しかしこの擬似ランダム性は、空間の各点におけるさらに一意的なブロッホ・トラジェクトリを生成するのに役立つことがある);および/または量子ポンピング(これは、少なくとも部分的には、MRスキャナ依存ノイズを相殺することがあるため、不変MRシグネチャを決定するのに使用するシミュレーションに要求される正確度を簡素化または低減させることがある)を含んでいてもよい。
【0061】
RFコイル230はまた、横磁化がxy平面で歳差運動しているときに、これを検出してもよい。概して、RFコイル230のうちの所与の一つが、送信のみ、受信のみを行ってもよい、またはRF信号を伝送することができる。さらに、RFコイル230は、磁場B
1が磁場B
0に対して垂直になるような方向を向いていてもよい。さらにはRFコイル230を、例えばキャパシタまたはインダクタを調整することによって、すなわちその静電容量を変化させる、またはインダクタンスを変えることによって(例えば、キャパシタのマッチング、および同調を使用することによって)、ラーモア周波数(例えば、磁場B
0において撮像されているまたは測定されているあるタイプの核の共鳴周波数)に同調させてもよい。RFコイル230は:アルデマン・グラント(Alderman−Grant)・コイル(これは、容積測定に使用してもよい)、鳥かご(これは容積測定に使用してもよい)、バタフライ・コイル、ドーム共振器、磁気傾度計、埋め込み型コイル、裏返し/シュルンベルジェ(Schlumberger)・コイル、血管内コイル、ラダーコイル、リッツ(Litz)・コイル、ループギャップ共振器コイル、ループスティック・コイル、ミアンダライン(meanderline)・コイル、マウス・コイル、マルチターン・ソレノイド・コイル、フェーズドアレイ・コイル、フェーズドアレイ・ボリューム・コイル、リボン・コイル、サドル・コイル、スクロール・コイル、シングルターン・ソレノイド・コイル(これは、四肢測定に使用してもよい)、スパイラル・コイル、表面コイル(これは、コイルに隣接する組織および試料に対して良好な信号対雑音比を有するので、身体または容積信号を受信するのに使用してもよい)、超電導コイル、伝送線コイル、切頭スパイラル・コイル、3軸コイル、および/または広帯域RFコイル(これは、複数のスペクトルを同時に励起するのに使用してもよい)を含んでもよいことに留意されたい。
【0062】
いくつかの実施形態では、一つまたは複数のRFコイル230が、熱イメージング・センサを含み、このセンサは、前方監視型赤外線(FLIR)センサを含むことができる。一つまたは複数の熱イメージング・センサは、モジュール化して取り付ける(例えば、一緒にして同心殻にする、付加物上に留め具で取り付ける、インタロッキング・インタフェース(interlocking interface)を用いて組み立てる等)ことができ、無線または有線通信を介して互いに通信することができる。さらに、いくつかの実施形態では、スキャン計画を実行するコンピュータ・システム114上のソフトウェアにより制御可能な表面コイルによって、特定のモダリティまたはMR技術を、組織試料112の分析が進行するにつれて実時間でオン・オフすることが可能になる。例えば、この方法では、MREを異常に対して実行可能となる場合があり、また組織試料112または周辺領域の熱画像を取得することが可能となる場合がある。これらの実施形態では、RFコイル230は、特別な異常検出を容易にするよう、複数のセンサおよびデータ収集装置を含むように構築することができる。こうして、RFコイル230は:MRF、MRT、MRS、MRE、複数の核の多核イメージング(例えば
1H、
23Na、
31P、
13C、
19F、
39K、
43Ca等)、拡散テンソル・イメージング、Nチャネル・スキャン、磁場緩和測定等を使用してデータを並行収集するために最適化してもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、MRスキャナ110は、RFコイル230に加えてまたは代わりに、非誘導性センシング法、例えば磁力計、超電導量子干渉装置を含む。非誘導性センサによって、磁石210により発生する磁場の掃引が可能になる場合があり、磁場強度に対応する異なる周波数にRFコイル230を同調させなくともよくなることに留意されたい。
【0064】
RFコイル230によって受信されたRF信号は、RF受信増幅器232によって増幅し、RF検波器234を使用して検出してもよい。特に、RF検波器234は、RF信号を捉えても、またはベースバンドに復調してもよい。例えば、RF検波器234は、MR信号を、最も単純な形態、例えば励起されたスピン状態からの自由誘導減衰として測定してもよいが、さらに多くの複雑なパルス列を受信することは可能である。コンピュータ・システム114は、インタフェース回路116(
図1)、ネットワーク132(
図1)、およびインタフェース回路244を介してRF検波器234を制御してもよい。例えば、コンピュータ・システム114は、捉えるMR(またはRF)信号を指定してもよい。
【0065】
RF検波器234は、線形アナログ検波器、直交アナログ検波器、またはヘテロダイン受信機であってもよいことに留意されたい。線形アナログ検波器は、座標空間における一つのベクトルに沿ったMR信号(例えば、xまたはy軸に沿った磁化)を捉えることがあり、直交アナログ検波器は、座標空間における二つのベクトルに沿ったMR信号(例えば、xおよびy軸に沿った磁化)を同時に捉えることがある。いくつかの実施形態では、線形アナログ検波器は二重平衡ミキサを含み、直交アナログ検波器は一対の二重平衡ミキサ、一対のフィルタ、一対の増幅器、および90°位相シフタを含む。
【0066】
さらに、デジタイザ236は、RF検波器234により受信されたMR信号をデジタル化してもよい。例えば、デジタイザ236は、1MHzのサンプリング周波数を使用してもよい。これは、MR信号試料をオーバーサンプリングしてもよい一方で、デジタル・フィルタリング(例えば、周波数領域においてバンドパス・フィルタによる乗算を用いたフィルタリング、または時間領域においてシンク関数を用いた畳み込み)を使用して、所望の周波数を捉え、より高い周波数の信号を除去してもよい。この処理において、コンピュータ・システム114により処理され記憶されるデータ量は、もっと管理可能なレベルにまで削減してもよい。しかし概して、ナイキスト周波数の2倍より高い多様なサンプリング周波数を使用してもよい。例えば、少なくとも500Hzの周波数分解能が実現できるように、MR信号あたり最高1000個の試料があってもよい。コンピュータ・システム114は、インタフェース回路116(
図1)、ネットワーク132(
図1)およびインタフェース回路244を介して、デジタイザ236を制御してもよい。特に、コンピュータ・システム114は、デジタイザ236が使用するサンプリング・レートおよび/または設定を指定してもよい。
【0067】
デジタル化の後、コンピュータ・システム114(
図1)は、多様なデジタル信号処理(例えば、フィルタリング、画像処理等)、ノイズキャンセル、および変換技術(例えば、離散フーリエ変換、Z変換、離散コサイン変換、データ圧縮等)を実行してもよい。概して、MR信号は、時間領域、および/または周波数領域において指定してもよい。こうして、いくつかの実施形態では、MR信号はk空間において表現される。
【0068】
一実施形態では、RFコイル230からの読み取り値は、コイル組立て体内またはそのすぐ外でデジタル化され、面倒なケーブルもつれを避けるためにコンピュータ・システム114に無線で伝送され、対象の周波数において、顕著なRFノイズが生じることはない。例えば、データは、組織試料112内のターゲットとされる核のラーモア周波数よりも低いまたは高い周波数でコンピュータ・システム114に伝送してもよく、これにより、データがフィルタリングされてノイズ・アーチファクト(noise artifact)が除外されることがある。さらに、いくつかの実施形態では、RFコイル230は、一つまたは複数の周波数を受信するように同調される。例えば、所望のスペクトルに応じて、広帯域受信器コイルを使用して、またはソフトウェアもしくはハードウェアを用いたチューナーを使用して、少なくとも一つのRF検波器234を自動的に同調させて、所望の核または分子からの一つまたは複数の周波数を受信することができる。(しかし、前述のように、他の実施形態では、同調されていない受信機、例えば磁力計が使用される。)さらに、パラレル・イメージング技術を使用する実施形態では、組織試料112上の表面コイルの異なる部分が並行に動作して、異なるスペクトルを並行してまたは同時に捉える。
【0069】
組織試料112が磁場を通って移動しMRスキャナ110により測定される間、試料ホルダ214が組織試料112を支持してもよいことに留意されたい。さらに、前述のように、試料ホルダ・アーティキュレータ216は、試料ホルダ214を咬合または移動して、必要に応じて、磁石210および磁場勾配コイル222によって生成された磁場に対して組織試料112を配置してもよい。特に、インタフェース回路116(
図1)、ネットワーク132(
図1)、およびインタフェース回路244介してコンピュータ・システム114から受信した命令に基づいて、組織試料112がMRスキャナ110により測定されている間に、試料ホルダ・アーティキュレータ216は、2Dまたは3Dにおいて組織試料112を回転させてもよい。さらには、前述のように、試料ホルダ214は、チャンバー240に囲繞されていてもよい、または閉ざされたチャンバー、例えば、真空ポンプを使用して減圧できる、または不活性ガスで充満できる密封チャンバーであってもよい。いくつかの実施形態では、環境条件が組織試料112に影響し得るので、試料ホルダ214は、室内、試料ホルダ214を含むチャンバー240内、また試料ホルダ214内の、温度、湿度、圧力、その他の環境条件等を測定するセンサを含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、試料ホルダ214はチューブ(または容器)を含み、試料ホルダ・アーティキュレータ216は一つまたは複数の空気ジェットを含む。これらの空気ジェットは、組織試料112の位置を操作するために使用することができる。例えば、チューブは、ガラス(例えば可視光で透き通った、すなわち透明なガラス)、テフロン(登録商標)(これは、電磁放射の他の周波数において透明なことがある)、または別の適切な物質から作ることができる。さらに、チューブはその外面に特徴(例えば模様、フィンまたは、他の特徴)を含んでいてもよく、これらの特徴によって組織試料112を、モーターもしくはロボット・アームの把持またはインタロックのインタフェースを用いて異なる位置にまで咬合または操作することが可能になり、これによってシステム100(
図1)が、インデックス化または試料測定処理の最中に組織試料112の向きを変えることが可能になる。
【0071】
さらに、チューブは、多軸磁石、例えばテネシー州オークリッジのクライオマグネティクス社(Cryomagnetics Inc)から提供される多軸磁石の中に挿入してもよい。次に、システム100(
図1)は、複数の方向、角度、視点、および配置から、組織試料112を調べる、または測定することができ、ボア236の周りに複数のセンサは必要ない。例えば、組織試料112を回転させてもよく、単一のカメラ、CCD、またはCMOSセンサが、組織試料112の複数の写真を撮影して、組織試料112の一部または全部が捉えられるようにしてもよく、これによってシステム100のコストと複雑さが減少し、信頼性が向上する。さらに、チューブにより、真空下にある、または不活性で予め分極したガスを満たしたチャンバーを準備して、解像度を上げてもよい。いくつかの実施形態では、低コストで持ち運び可能なチップスケールの装置(例えばマイクロ流体チップ)を使用して、分極または磁化したガスを生成し、弱いMR信号を検出できるようにする。例えば、前述のように、分極キセノンは、例えば人肺のMRIの画像を強調する造影剤として使用することができる。分極キセノン原子はチップ上で、円偏光を照射されたルビジウム原子との衝突により生成してもよい。次に、分極キセノンをチップから流出させてもよく、チューブまたはチャンバー240内に導いてもよい。
【0072】
図1を再び参照すると、コンピュータ・システム114は、一つまたは複数の随意の測定装置124に命令し、組織試料112上で他の測定を実行させて、測定された組織試料112の物性を指定する物性情報を取得してもよく、この情報は、組織試料112の診断分類を決定するために使用してもよい、および/または組織試料112に関連付けられたメタデータに含めていてもよい。例えば、一つまたは複数の随意の測定装置124は:組織試料112の重量を決定する医療グレードの重量計;組織試料112の一つまたは複数の寸法を測定する測定装置(例えば:レーザ・イメージング・システム、光学イメージング・システム、赤外線イメージング・システム、および/または、分光システム);組織試料112を選択的に照明できる光源、および、一つまたは複数の視点、向き、または照明条件で、組織試料112の一つまたは複数の光学画像を取得または測定するカメラつき顕微鏡;および/またはDCもしくはAC周波数で組織試料112のインピーダンス(そしてこれは、組織試料112の水和に対応する場合があり、したがって、組織試料112または組織試料112を採取した元の検査対象の水和を測定または計算するのに使用してもよい)のマルチリード測定を実行するバイオエレクトリック・インピーダンス・アナライザを含んでいてもよい。あるいは、組織試料112、したがって不変MRシグネチャに影響を与え得る水和または水和レベルを直接測定してもよい。いくつかの実施形態では、組織試料112上の他の測定は:細胞学、遺伝子配列決定(例えばゲノム中のDNAの一部または全部の配列決定、RNA配列決定、またはトランスクリプトミクス、遺伝子発現等)、タンパク質分析、またはプロテオミクス(例えば、質量分析、液体クロマトグラフィー、および/またはNMRを使用したもの)、リピドミクス(および、より一般的には、マイクロボロミクス(microbolomics))、コンピュータ断層撮影、電子スピン共鳴(これはフリーラジカルを測定するために使用してもよい)、X線撮影、超音波イメージング(例えば、超音波)、光音響イメージング、赤外線イメージング、または赤外分光、他の非破壊測定(例えば、レーダー、またはミリ波スキャン)、検査対象についての活動データ(例えば、ウェアラブル電子装置を使用したデータ取得)、組織試料112においてナノ粒子を用いて実行される測定、組織試料112(または個人)内の任意の場所において非破壊的に、または(例えば、マイクロ流体学を使用して)血液試料の抜き取りにより測定された流体(例えば血液)の化学組成等を含む。あるいは、コンピュータ・システム114は、組織試料112についての一意的な識別子に基づいて遠隔データ構造中に記憶されている、これらの他の測定の一部またはすべてについてのデータにアクセスしてもよい。
【0073】
組織試料112の重量および寸法を使用して、この試料の密度を計算してもよいことに留意されたい。さらに、一つまたは複数の随意の測定装置124は、検査および病理学的識別ために個々の細胞の画像を取得してもよい。さらに、医療グレードの重量計は、組織試料112の重量が:切除直後、切除の数ヶ月後、FFPE処理の前後、および/またはMRスキャン(または他のイメージング操作)の前後に重量測定されていれば、この組織試料112の化学組成および水和レベルについての情報を提供することがある。いくつかの実施形態では、電磁スペクトルの異なる部分において組織試料112を測定することにより、光学スキャンまたは赤外線スキャンでは示されない可能性があるが特定の無線スキャンでは生じうる磁化率アーチファクトを補正することが可能になることがある。
【0074】
いくつかの実施形態では、システム100は、コンピュータ・システム114によってインタフェース回路116を介して制御される随意の波動ジェネレータ126を含む。この随意の波動ジェネレータは、超音波(そして、さらに一般的には機械的な波)を生成してもよく、これらの波を、MRE中に組織試料112に印加して、組織試料112の剛性を測定する。例えば、随意のジェネレータ126は、MRスキャナ110のボア236(
図2)の一端または両端で波を生成してもよい、または導波路を使用してMRスキャナ110のボア236(
図2)の両端の一方に波を導いて、組織試料112が超音波を受けるようにしてもよい。いくつかの実施形態では、超音波はせん断波を含む。MRスキャナ110は、組織試料112を通過するせん断波の伝搬の定量的なMRフィンガープリントまたは画像を取得してもよく、そしてせん断波の画像を処理して、組織の剛性の定量的なマッピングを生成してもよい。
【0075】
組織試料112がホルマリン固定パラフィンに包埋されている場合、不変MRシグネチャが決定された後、コンピュータ・システム114は、決定された不変MRシグネチャを変換して、これがインビボ組織(すなわちホルマリンまたはパラフィンなし)を近似するようにしてもよい。例えば、ボクセルごとに、コンピュータ・システム114は、ホルマリンまたはパラフィンの予め定義されたまたは所定の不変MRシグネチャを、決定された不変MRシグネチャから差し引いて、推定不変MRシグネチャを生成してもよい。あるいは、コンピュータ・システム114は、ホルマリンまたはパラフィンについて、ボクセルごとにMRモデル中のパラメータを修正して、推定不変MRシグネチャを生成してもよい。いくつかの実施形態では、部分容積法を使用して、組織試料112の境界でのパラフィンもしくはワックスの寄与または効果を差し引く。特に、コンピュータ・システム114は、所与のボクセルの何パーセントがパラフィンであるかを決定してもよく、そして不変MRシグネチャ、または不変MRシグネチャを計算するのに使用されるMR信号の、そうした強調された部分を除去してもまたは差し引いてもよい。
【0076】
さらに、コンピュータ・システム114は、生データ(例えば、生体試料からのMR信号、印加された非理想的なパルス列、および測定されたノイズ)、不変MRシグネチャ、および/またはバイオボールトにおける他の測定結果を、例えばメモリ120(これは、局所的に、および/または遠隔地に配置されていてもよく、例えばクラウドを使用したアーカイブ装置内あってもよい)に記憶してもよい。一般的に、バイオボールトに記憶されている測定された情報は、MRモデルをスキャン命令に基づいて訓練しこれによって不変MRシグネチャを決定することが可能となるように、充分に網羅的であってもよい。よって、記憶された情報は、測定パイプラインにおける異なる点(例えば、増幅器前、増幅器後等)での異なる出力信号、環境条件、地理的場所等を含んでいてもよい。記憶された情報により、例えばMRモデルを訓練して、MRスキャンおよび組織試料の正確なシミュレーションが容易になることがある。
【0077】
記憶された情報は、一意的な識別子、またはコンピュータ・システム114によって生成された新たな一意的な識別子を含んでいても、またはこれに関連付けられていてもよく、この新たな識別子は、バイオボールトの検索または照会だけでなく引き続く識別も容易にするものである。したがって、組織試料112がその後、引き続き再測定される場合、コンピュータ・システム114は、この結果または差分の結果(例えば、不変MRシグネチャのあらゆる変化)を保存して、最終測定以降の変化を検索に使えるようにしてもよい。さらに、記憶された情報は、組織試料112が測定された場合に、時間、場所、および/またはシステムパラメータ(例えば、MRスキャナ110を指定または識別する情報)を含んでいてもよい。記憶された情報は暗号化してもよいことに留意されたい。例えば、一意的な識別子に関連付けられた暗号化キーに基づく対称または非対称暗号を使用してもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、コンピュータ・システム114は、組織試料112の不変MRシグネチャを、組織試料112または別の組織試料について前回決定されていてもよい一つまたは複数の他の不変MRシグネチャと随意に比較する。(あるいは、コンピュータ・システム114は、決定された不変MRシグネチャから算出されたまたはこれに基づくMRフィンガープリントを、一つまたは複数の所定のMRフィンガープリントと随意に比較してもよい)この比較に基づいて、コンピュータ・システム114は、組織112の分類を随意に決定してもよく、この分類は、一意的な識別子とともに、またはこれと関連付けて、バイオボールトに記憶してもよい。決定されたまたは選択された分類が、分類誤りである可能性が最も低いもの、すなわち最低のマッチング誤りを有するものであってもよいことに留意されたい。さらに、(例えば、所定の教師あり学習モデルに基づいた)類似の推定分類誤りを有する複数の可能な分類または候補分類がある場合には、所与のボクセルの分類を、先験的情報、例えば、近傍ボクセルの分類、またはこうした近隣の分類の結合(例えば線形結合)に基づいて決定してもよく、これは、所与のボクセルの分類誤りを低減するのに役立つ場合がある。
【0079】
標識または分類および結果を経時的に追跡する能力により、このシステムは、不変MRシグネチャを取得し、それについての既知の情報、例えば:どれだけの頻度でそれが見つかるか、どの臓器中でそれが不良または良と標識されたか、どの環境中でそれが不良または良と標識されたか等を検索できることがある。このようにして、MRシグネチャについてのメタデータは、時間が経つにつれてさらに充実したものになることがある。例えば、個人(または個人から得られた組織試料)は、6ヶ月ごとにインデックス化してもよい。これらのインデックス化操作の一つで、がんが発生した場合、このMRシグネチャは「不良」と標識されることがある。しかし、その個人の同一領域における過去のMRシグネチャの分類はどうであろうか?がん診断は、それらのシグネチャが前癌性であると判断する可能性があるだろうか?システムは、MRシグネチャが早期であるほどがんの早期指標となること、そしてMRシグネチャ空間にわたる経路の存在が、経時進行するこの病理の特徴であるということの十分な証拠を、複数の組織試料に基づいて見いだすことがある。したがって、バイオボールトにより、検査対象の縦断的で横断的なそうした分析がそのような経路を識別できることがあり、その経路は、引き続く分類および診断において使用することができる。
【0080】
さらに、バイオボールト内の特定の検査対象および/または検査対象全体について縦断的に比較することによって、システムは問題を解決し、病状の識別を支援することができることがあり、決定論的機械学習または教師あり学習モデルの使用は必要ではない。例えば、システムは、組織試料または生体試料内に埋め込まれた異物(例えばネジ、ピン、関節置換など)の存在を、たとえバイオボールトがその異物に関する事前の知識を含んでいなくとも、または有していなくても、差分として識別することができる場合がある。特に、強磁性物質は、生じる磁場歪みに基づいて検出される場合があり、不変MRシグネチャはこの磁場歪みに対する補正を含む場合がある。
【0081】
いくつかの実施形態においては、バイオボールトは、他のバイオボールト内の関連する組織試料の不変MRシグネチャを、組織試料について他の情報を共有することなく集約する能力を提供する。これにより、閉じたまたは隔離されたバイオボールト内の組織試料について、大域的な分析を実行することができる場合がある。
【0082】
組織試料112が測定された後、システム100は、随意の真空シーラ(sealer)128を使用し、真空中で組織試料112を囲繞、密封して、アーカイブ記憶の準備をしてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、組織試料112は、測定後にホルマリン固定パラフィンで包埋される。さらに、随意のラベラ(labeler)130によって、物理的または電子的な標識を組織試料112に取り付けてまたは関連付けて、その後の識別を容易にしてもよい。物理的または電子的な標識の情報は、特性評価技術の開始時に入力および/または抽出された情報を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、組織試料112は、測定がなされた後に破壊される。
【0083】
先の考察では、システム100を使用して組織試料112をスキャンまたはインデックス化する例を示したが、他の実施形態ではシステム100は、同一の人もしくは動物からの、または異なる人もしくは動物からの複数の組織試料をスキャンまたはインデックス化するのに使用してもよい。これらのスキャンは、スループットを増加させるために、時間的に一部または完全に重なり合ってもよい(すなわち、少なくとも部分的に並行してまたは同時に起こってもよい)。
【0084】
先の考察は、システム100を使用する技術者またMR操作者を例示したが、他の実施例では、システム100を高度に自動化し、人間の動きを最小限に、または全くなくして、組織試料112をMRスキャナ110に搬送するように、MR測定および/または他の測定が行うように、不変MRシグネチャを決定できるように、情報をバイオボールトに記憶するように、組織試料112を取り出すように、そしてこれらの操作を一つまたは複数のさらなる組織試料に対して反復できるようにしてもよい。
【0085】
以下に、不変MRシグネチャの決定についてさらに記載する。
図3は、MRモデルの決定の一例を例示する図である。MRモデルは、組織試料におけるボクセルの3Dモデルであってもよく、各ボクセルについてブロッホ方程式中のパラメータを含んでいてもよい。特に、z軸に沿った準静磁場B
0を用いると、ブロッホ方程式は、
【0086】
【数1】
であり、ここで、γは磁気回転比であり、
【0088】
【数3】
は、組織試料内のあるタイプの核が感じる磁場である。ブロッホ方程式中のパラメータは、T
1、T
2、あるタイプの核の密度、拡散、速度/流れ、温度、および磁化率を含んでいてもよい。各ボクセルごとに、異なるタイプの核に対して異なるパラメータが存在してもよいことに留意されたい。さらに、ブロッホ方程式は、時間変動磁場に対して組織試料内のそのタイプの核の磁気モーメントが示す動的応答の、半古典的で巨視的な近似であることに留意されたい。例えば、1mm
3のボクセルに67M個の細胞が存在する場合がある。
【0089】
原理的には、組織試料についてのブロッホ方程式中のパラメータについての解空間は、劣決定される場合がある、すなわち、パラメータを指定するまたは絞り込むために存在する観測結果よりもはるかに多くの決定すべきパラメータが存在する場合がある。したがって、特性評価技術は、さらなる情報を活用して、問題の次元を絞り込むまたは低減させてもよい。例えば、組織試料の解剖学的構造の態様を、他のイメージング技術、例えばコンピュータ断層撮影、X線、超音波等を用いて決定してもよい。さらに、標的となったタイプの組織(例えば心臓組織)のようには見えない(すなわち、非常に異なるMR信号を有する)組織は、MRモデルから除外してもよい。かわりに、またはさらには、前回のスキャンに基づいて予想されるMR信号とは顕著に逸脱する組織(例えば、異常または変化)を、例えば等高線マップ(例えば、四次スプライン)を使用して、顕著な差分がある領域を囲む(またはその領域の境界を指定する)ことによって、MRモデルの注目点としてもよい。かわりに、またはさらには、測定されたMR信号とシミュレートされたMR信号との誤差を、一つまたは複数のレベルセット関数を使用して表してもよく、閾値を超える誤差を有する領域の境界を、その閾値に対応する平面とその一つまたは複数のレベルセット関数との交線に基づいて決定してもよい。さらに、異なる磁場強度B
0で異なるパルス列および/または異なるMR技術を使用してスキャン(これにより、擬似ランダムパルス列と同様の情報が提供されることがある)を実行することによって、観測結果に対するパラメータの割合が減少し、これによってMRモデルの決定が単純になることがある。
【0090】
例えば、もし組織試料が一つのボクセルを含んでいた場合、特定のタイプの組織に対して決定する必要がある4〜10個のMRモデルパラメータ(不変MRシグネチャを指定するもの)が存在することがある。ボクセルがM個のタイプの組織を含む場合、それらの特定のタイプの組織に対して決定する必要がある4M〜10M個のMRモデルパラメータ(M個の不変MRシグネチャを指定するもの)が存在することがある。ボクセルの数が増えると、これは大きな問題として現れ得る。
【0091】
ただし、異なるタイプの核は、異なるラーモア周波数を有するので、そのタイプの核の空間分布と局所濃度は、測定されたMR信号から決定してもよい。続いて、組織試料(または人体)の予め定義された解剖学的テンプレートを、関連付けられたMRモデルの初期パラメータとともに、そのタイプの核の空間分布および局所濃度に一致するようにスケーリングしてもよい。
【0092】
次に、あるタイプの組織(例えば特定の臓器)については、ボクセルのサイズを徐々に減少させる(したがって、ボクセルの数を増加させる)につれて、MRモデルパラメータを繰り返し精密化してもよい。この分析は、測定されたMR信号と、MRモデルを使用してシミュレートされたMR信号との間の誤差を基に実行してもよい。時間が経つにつれて、訓練中の注目点は、収束判定基準よりも大きい誤差を有する残存領域上となる。例えば、MRモデルにおけるパラメータを、一つの磁場強度で測定されたMR信号に基づいて訓練してもよく、その後、別の磁場強度でのMRモデルの予測に基づいて誤差を決定してもよい。さらには、MRモデルが最初に、異なるボクセルの間にはいかなる寄与、または相互作用も存在しないと仮定してもよいことに留意されたい。しかし、誤差およびボクセル・サイズを減少させるにつれて、引き続いてMRモデルを訓練する際に、そのような寄与および/または相互作用が含まれる可能性がある。
【0093】
このフィッティングまたは計算手法を容易にするために、特性評価技術は、1Dシグネチャとは対照的な「面シグネチャ」を決定してもよい。例えば、複数の磁場強度でのまたは既知の磁場擾乱(回転など)の存在下での測定を使用して、一組のMRトラジェクトリを、不変MRシグネチャを決定するのに使用可能な「指紋」として決定してもよい。各MRトラジェクトリは、固定した磁場強度ではなく磁場の関数によって定義されてもよいことに留意されたい。
【0094】
典型的な実施形態では、MRモデルを決定するのに使用されるシミュレーションは、頂点/ボクセルを中心にしていてもよい。システムは、各頂点で実行される物理モデル(例えばブロッホ方程式に基づくモデル)を使用して、スキャン中の組織試料の物理モデルにパルス列または擾乱を「印加」してもよい。例えば、物理法則の形で擾乱を記述する頂点に、メッセージをブロードキャスト(broadcast)してもよい。各頂点は、予想される状態変化とその結果得られる力およびエネルギーとを計算してもよく、これらは次に、その頂点から伝わる力およびエネルギーに関する隣接頂点へのメッセージとして中継される。すべての頂点がメッセージを生成し、これらのメッセージが隣接頂点に転送され、システムの状態が更新されたら、この計算における時間間隔がまっとうされている可能性がある。このアプローチを一般化して、頂点から放射状に広がる長さN(Nは整数)の非循環経路にメッセージを転送して、シミュレーションの正確度が改善するようにすることができる。
【0095】
いったん状態が更新されると、新しく計算された状態上で計算法を実行し、その後、測定された状態と比較することができる。誤差は、予測された状態と測定された状態の間の差分であってもよい。その計算法が適用されると、システムは、大域的誤差を低減または最小化するような方法で、現在の状態を各頂点に最適に割り当てる方法を決定してもよい。次に、システムは、システムに対する新しい一組の摂動を選択し、スキャンされている検査対象上でこの擾乱を物理的に実行するだけでなく、これらの摂動を新しいメッセージとして頂点にブロードキャストしてもよい。このようにしてシステムは、特性評価技術の最中に実時間またはほぼ実時間の分析とフィードバックを提供してもよい。
【0096】
このように、測定されたMR信号に基づいてMRモデルパラメータを決定するという逆問題を、測定されたMR信号と、シミュレートされたMR信号との間の誤差または差分を最小化することによって「解いて」もよく、シミュレートされたMR信号は、MRモデル、MRスキャナの特徴(例えば磁場不均一性)、および測定されたMR信号を取得するために使用されるスキャン命令に基づいて生成されるものである。いくつかの実施形態では、この逆問題は、一つまたは複数の計算法、例えば:最小二乗法、凸二次最小化法、最急降下法、準ニュートン法、シンプレックス法、レベンベルグ・マッカート(Levenberg−Marquardt)法、シミュレーテッド・アニーリング(simulated annealing)、遺伝的手法、グラフに基づく方法、他の最適化法、および/またはカルマン・フィルタリング(Kalman filtering)(すなわち線形二次推定)を用いて解く。
【0097】
この逆問題は、動的プログラミングを使用して解いてもよいことに留意されたい。特に、この問題は、並列化した、例えばクラウド・コンピューティング・システムにおける複数のコンピュータによって分割し実行してもよい。例えば、特定のスレッドが特定のスキャン命令に対して逆問題を解くようにしてもよい。コンピュータ(またはプロセッサ)によって生成された可能な複数のパラメータ解を(例えば、線形重ね合わせを使用して)結合して誤差計量を決定し、これを、一つまたは複数の計算法を使用して最小化してもよい。
【0098】
さらに、前述のように、この逆問題は、まず粗いボクセル・サイズを用いて、MRモデル用の適切なパラメータ(例えば、MR信号とシミュレートされたMR信号との誤差を最小にするパラメータ)を見つけるよう試行し、次にさらに小さなボクセル・サイズを用い、適切なパラメータを徐々に見つけることによって、反復的に解いてもよい。この反復手順で使用される最終ボクセル・サイズは、スキャンされているあるタイプの核の磁気回転比に基づいて決定してもよいことに留意されたい。ボクセル・サイズはまた、バイオボールトに対して行われる、またはMRスキャン計画、現在のハードウェア構成、および/またはハードウェア限界に基づいて形成される「クエリ(query)」の種類に基づいて決定することができる。さらに、ボクセルのサイズまたは場所は、ボクセルが一組のサブボクセルに均等に分割されるように、またはプレビュー・ボクセル・サイズとの間にある程度の重なりが存在して、この重なり領域を効果的に「オーバーサンプリング」し、さらにはMR信号の由来する場所を限局し得るように、選択してもよい。さらに後述するように、この最後の方法は、勾配システム全体を一つまたは複数の次元において、ボクセルの特性長(例えば、ボクセルの長さ、幅、高さ)未満の距離dxだけずらすことと同種のものであってもよい。いくつかの実施形態では、MRモデルにおけるボクセル・サイズは、MRスキャンにおいて使用されるものよりも小さい(すなわち、MRモデルは超解像技術を使用してもよい)。
【0099】
さらに、MRモデルは、動態、例えば:呼吸、心拍、血流、機械的運動等に関連する運動のシミュレーションを含んでいてもよい。(したがって、拡散、熱量測定、分光法、エラストグラフィ等に対するブロッホ方程式には、さらなる項が存在してもよい。その結果、MRモデルは、ブロッホ・トーリー方程式等に基づいていてもよい。)例えば、ボクセルが、中を通って流れる流体を有する空間(例えば静脈中)を含む場合、この液体の流れを、スキャンされている組織試料(または検査対象)内の流れ方向と速度の大きさのマップを構築することによってシミュレートして、不変MRシグネチャの計算において考慮されるようにしてもよい。さらに、ヒトである検査対象または動物をスキャンする場合、MRモデルは、安静時の運動(例えば呼吸、心拍等に関連するもの)が含まれていてもよい。前述のように、MRモデルの計算を容易にするために、測定されたMR信号および/また他の時間的な測定は、基準クロックもしくは生物学的時間周期に同期させてもよく、またはこれに比例して同期させてもよい。
【0100】
MRモデルを使用して、組織試料が特定のスキャン命令にどのように応答するかを予測してもよい。特に、MRモデルを使用して、特定の特性を有する特定のMRスキャナに対する、そして特定のスキャン命令に対するMR信号をシミュレートまたは推定してもよい。言い換えれば、不変MRシグネチャ(MRモデルに基づくもの)を使用して、特定の状況における、例えば、MRスキャナの特定の特性および特定のスキャン命令に基づく表現または予測(すなわち、MR信号)を決定してもよい。
【0101】
したがって、MRモデルは、システム100(
図1)が能動的学習を実行できるようにしてもよい。特に、MRモデルを、学習システムまたは学習エンジン(
図1におけるコンピュータ・システム114に実装されていてもよいもの)によって生成された「クエリ」に基づいて、反復的にフィッティングまたは決定してもよい。特に、学習エンジンによって生成されたクエリは、MRモデルにおけるパラメータに対する信頼区間に基づいた、異なる磁場強度B
0、異なる電磁パルス列、および/または異なる超音波パルス列を含んでいてもよい。その結果、学習エンジンは、これらのクエリに応答して測定されたMR信号を使用し、MRモデルにおける未知のパラメータ、および/または正確度の乏しい(例えば信頼区間が0.1、1、5、または10%より大きい)パラメータを決定してもよい。より一般的には、システム100(
図1)によって実行される適応学習は、可視光/赤外分光、X線、コンピュータ断層撮影、プロトンビーム、光音響、超音波等の多様な測定に基づいていてもよい。
【0102】
先の考察は例示的な例としてブロッホ方程式を使用したが、他の実施形態では、フル・リウヴィアン計算(複数の構成要素間の相互作用のリウヴィユ・スーパーマトリクス(Liouville supermatrix)など)または他のシミュレーション技術が使用される。MRモデルを使用して計算または予測されたMR信号は、MRスキャン中に取得されるMR信号のナイキスト周波数の2倍以上のレートでサンプリングしてもよいことに留意されたい。
【0103】
例示的な実施形態では、コンピュータ・システム114(
図1)はまず、MRモデルにおけるパラメータを近似して、測定されたMR信号と、この初期MRモデルに基づいてシミュレートされたMR信号との間の誤差(または差分ベクトル)を計算する。特定のスキャン命令に対応するスレッドに対して逆問題の候補パラメータ解(類似の誤差を有するもの)が複数存在する場合、コンピュータ・システム114(
図1)は、これらの候補を保持してもよい(すなわち計算におけるこの時点では、一意的なパラメータ解が識別されていなくともよい)ことに留意されたい。あるいは、所望の誤差範囲内(例えば、50、25、10、5、または1%)に一意的なパラメータ解が存在しない場合、最良(最小誤差)のパラメータ解を保持してもよい。さらに、所望の誤差範囲内にパラメータ解が存在しない場合、コンピュータ・システム114(
図1)はスキャン命令を修正してもよい。
【0104】
さらに、コンピュータ・システム114(
図1)は、組織試料におけるパラメータ解の面に沿って、一次および二次微分を計算してもよい。(微分の計算を容易にするためには、一つまたは複数のレベルセット関数を使用してパラメータを表してもよいことに留意されたい。)一次微分がゼロである線に沿った一組のボクセルを識別してもよい。このボクセルの組は、ボクセル位置と四次スプラインとの間の誤差が最小となる四次スプラインを使用してフィッティングしてもよい。このフィッティング操作は、パラメータ解空間内のすべての境界で反復してもよい。さらに、四次スプラインによって定義される境界内の最大連続面を決定し、パラメータ解の計算を繰り返して、前回の連続面内にある新しい連続面を決定してもよい。この一般化された枠組みにより、ボクセル内の容積全体にわたる誤差が最小限になる可能性があり、これによって、MR信号とMRモデルに基づいてシミュレートされたMR信号との間の一致が改善される。
【0105】
以下に、複数タイプの組織の分布をいかに決定するかの実施形態を記載する。MRFを例示として使用し、異なるタイプの組織d
j(j=1〜n)に対して測定された、時間サンプリングされたMRトラジェクトリ(すなわちベクトル)の辞書D
mrfを定義して、ボクセルに対する測定されたMR信号y
obvを
【0107】
【数5】
は規格化された重量(すなわち、
【0110】
【数8】
j=1〜n)とする。これにより、ボクセル内線形方程式問題を定義してもよい。一般化されたボクセル間問題は、一組のボクセル(例えば27個のボクセルを有する立方体)をグラフGとしてモデル化してもよい。
図3に示すように、この組におけるすべてのボクセルは、8個の隣接ボクセルに相対する26個の辺を有していてもよい。逆問題へのパラメータ解は、誤差を最小化するものとして定義してもよい。
【0111】
二つの隣接ボクセルuとvの場合を考えよう。ボクセル内線形方程式U
yとV
yは、uとvの両方において解く必要がある。いくつかの可能な結果が存在する。まず、U
yとV
yは一意的なパラメータ解を有する場合があり(この場合、「一意的なパラメータ解」は既存のMRモデルへの最良適合である、すなわち収束判定基準より小さい誤差または差分ベクトルを有している場合がある)、分析を終了してよい。あるいは、U
yは一意的なパラメータ解を有している場合があって、V
yはそうでない場合がある。V
yが単一パラメータ解を有するように、U
yについてのパラメータ解がV
yに拘束条件を課すことが可能な場合があり、この場合には分析を終了してよい。しかし、U
yとV
yのどちらも、一意的なパラメータ解を有しないことがあり、この場合、方程式系を組み合わせる(すなわち、ボクセル・サイズを効果的に増加させる)ことによって、一意的なパラメータ解が得られることがある。さらに、U
yとV
yのどちらも、いかなるパラメータ解を有しないことがあり、この場合、ボクセル内問題はさらなる拘束条件なしでは解けない。
【0112】
最後の場合では、隣接ボクセルw、すなわち連続したボクセルu、v、およびwを考察することが可能となることがあり、対応するボクセル内線形方程式U
y、V
y、およびW
yを、u、v、およびwにおいて解く必要がある。ボクセル内線形方程式V
yとW
yは、一つ前の場合にまで還元されることに留意されたい。ボクセル内線形方程式が、一つ前の場合にまで還元されない場合には、対を組ませるこの操作を、還元されるまで再帰的に適用し、次いでボクセル内線形方程式を前述のように解くことができる。
【0113】
一般に、この計算法は、3D面(または容積)をフィッティングして誤差を最小にする問題と同形であってもよい。この点に関する1つの課題は、すべての近接容積が、誤差を最小にするパラメータ解
【0114】
【数9】
に対して等しい効果を有するということを前提としていることである。
【0115】
誤差の最小化はまず、ボクセル間の寄与が存在しない(すなわち、ボクセルが独立である)と仮定してもよい。その後、ボクセル間の寄与を含めてもよい。特に、隣接ボクセル容積を考慮すると、二つのはっきりと異なる種類が存在する。面を共有する容積、および1Dの辺を共有する容積である。最小化関数は、相対座標系の中心にあるボクセルuにおける誤差の寄与に重み付けすることで改良することができる。誤差に及ぼす効果がr
−2(ここでrはボクセルの中心点の間の距離)に比例する場合、重み付けにおいて1mmの等方的ボクセルを仮定すると、ボクセル間の寄与を用いる最小化またはフィッティングの問題は、
【0116】
【数10】
と表わすことができ、ここで、kにわたる総和は、共通の面(すなわち、(−1,0,0)、(1,0,0)、(0,−1,0)、(0,1,0)、(0,0、−1)、および(0,0,1))を共有する隣接ボクセルについて行い、lにわたる総和は、共通の辺を共有する残りの隣接ボクセルについて行う。この分析における仮定は、パラメータ解をフィッティングするまたは決定するのが最も困難な場所が、異なる組織間の不連続面または界面にあるということである。したがって、この特性評価技術の最中に、コンピュータ・システム114(
図1)は、これらの場所を最初に解いてから、次に残りの場所を解いてもよい。
【0117】
あるいは、近隣のボクセルからの磁気的寄与は、r
2に比例するので、最小化問題における主要なまたは中心となるボクセルの中心からの半径Rの球が与えられると、この球がどのくらい膨張して隣接ボクセルの容積内に入るかに基づいて(したがって、それらのボクセル間寄与がどの程度強いと推定されるかに基づいて)、周囲のボクセルに重み付けしてもよい。例えば、割り当てるのが必要な3つの異なる重みがある場合があり、それらには:2Dの面を共有するボクセルに対する重み、1Dの線を共有するボクセルに対する重み、0Dの点を共有するボクセルに対する重みが挙げられる。各ボクセル内に均一な組織分布が存在しないこともあるので、誤差を最小化する分布を見つけるために、重みを動的に調整し、各ボクセル内の異なる種類の分布をモデル化してもよい。これにより、異なるタイプの組織に対して単一ボクセル内の複数のMRシグネチャを識別する能力が提供される場合がある。計算パワーが増加すると、予測モデルの正確度が増加することがあり、最小化問題(したがって、逆問題)を解くのに使用する計算法を修正してもよいことに留意されたい。
【0118】
したがって、ボクセルの不変MRシグネチャが周囲のまたは近隣のボクセルの不変MRシグネチャに依存する実施形態では、ボクセルの不変MRシグネチャを、二次またはN次の効果を使用して計算してもよい。例えば、N個(ここでNは整数)の一次不変MRシグネチャが存在する場合、N!/(N!−27)!もの数の二次不変MRシグネチャが存在する場合がある(すべてのボクセルが相互作用している場合)。いくつかの実施形態では、局所性を用いて逆問題を単純化する。このように、隣接ボクセル内の不変MRシグネチャが、主要な(中心となる)または一次ボクセルにおける不変MRシグネチャにいかにして影響を及ぼすかを組み込むことによって、不変MRシグネチャを生成してもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、ディザリング(dithering)法を使用して、体内組織のタイプの分布に対してボクセルの場所が任意であることを克服している。特に、任意のボクセル配置、または現状のボクセル・サイズのせいで、複数のタイプの組織がボクセル内に存在することがある。これにより、このボクセルに対するMRモデルパラメータが顕著に変化することがある。これは、ボクセルに必要な不変MRシグネチャが複数あることを示唆していることがある。先に説明したように、これを確認するためには、ボクセルを距離dx(これは、ボクセル長、幅、または高さの一部である)だけ変位させて、MRモデルパラメータを再度決定してもよい。この処理において、組織分布を決定してもよい。そのため、このアプローチによって、分析における空間分解能が、ボクセル・サイズを変化させなくとも上がる可能性がある。
【0120】
図4〜9は、正確にMR信号を予測する一つまたは複数のMRモデルに対するパラメータを決定する先の考察と、バイオボールトにおけるそうしたパラメータの使用を要約したものである。特に、
図4には、一組のMR信号を時間の関数として示すが、これらの信号は、特定のパルス列および印加磁場を使用して、異なるタイプの組織のMRスキャン中に取得してもよいものである。次に、
図5に示すように、特定のMRモデルパラメータについては、シミュレートされたMR信号を、時間の関数として決定してもよい。このシミュレートされたMR信号のコサイン類似度は、異なるタイプの組織について測定された各MR信号を用いて計算してもよい。
【0121】
さらに
図6は、異なるタイプの組織について決定されたMRモデルパラメータを例示する。次に、
図7に示すとおり、異なるタイプの組織について、MRモデルパラメータと既知の(前もって決定された)MRモデルパラメータの比較に基づいて、異なるタイプの組織を識別してもよい。例えば、
図8に示すように、コサイン類似度に基づいて、MR信号を、特定のタイプの組織(この例では健康な心臓組織)として識別する、またはそれに関連付けてもよい。
【0122】
最後に、
図9に示すように、異なる磁場強度で取得されたMR信号またはトラジェクトリを一つにして、磁場強度面への応答を指定する一組のMR信号にしてもよい。この応答を使用して、一つまたは複数の不変MRシグネチャを決定してもよい。
【0123】
以下に、この方法についてさらに記述する。
図10は、生体試料の不変MRシグネチャを決定するための方法1000の例を示す流れ図を示すが、この方法は、システム100(
図1)のようなシステムによって実行してもよい。操作中には、システムは、生体試料内の3D位置のボクセルのMRモデルを、ボクセルに関連付けられたMR信号とシミュレートされたMR信号との間の差分に基づいて決定してもよい。特に、システムは、MRスキャナに、生体試料内の一つまたは複数のタイプの核のMR信号を捉える(操作1010)スキャン命令を提供してもよく、この場合、MR信号は、生体試料内の3D位置のボクセルに関連付けられており、スキャン命令は、生体試料に印加される磁場強度およびパルス列を含む。
【0124】
その後、システムはMRスキャナから、MR信号を受信する(操作1012)。さらにシステムは、MRモデルおよびスキャン命令に基づいて、生体試料内のボクセルのMRモデルを決定する(操作1014)が、この場合、MRモデルの決定は:MRモデルとスキャン命令に基づいて、生体試料についてシミュレートされたMR信号を生成する(操作1016)こと、およびシミュレートされたMR信号とMR信号とを比較して、差分ベクトルを決定する(操作1018)ことを含む。
【0125】
次に、システムは、収束判定基準が達成される(操作1022)まで、差分ベクトルに基づいてスキャン命令を反復修正し(操作1020)、提供(操作1010)、受信(操作1012)、および決定(操作1014)を繰り返すが、この場合、修正されたスキャン命令は、磁場強度とパルス列のうち少なくとも1つを変化させることを含む。
【0126】
さらにシステムは、メモリ中に、生体試料の識別子と生体試料の不変MRシグネチャを記憶する(操作1024)が、このシグネチャは、MRモデルに関連付けられており、任意の磁場強度での生体試料の動的MR応答を記述するものである。
【0127】
いくつかの実施形態では、システムは、随意に一つまたは複数のさらなる操作を実行する(操作1026)。例えば、システムは:不変MRシグネチャと一つまたは複数の所定の不変MRシグネチャとを比較すること;この比較に基づいて生体試料の分類を決定すること;そして決定された分類を、識別子および不変MRシグネチャとともに、メモリに記憶することを含んでいてもよい。
【0128】
分類法の実施形態を、
図11にさらに例示するが、これは、システム100(
図1)における構成要素間の通信を例示する図を表している。特に、コンピュータ・システム114のプロセッサ118は、試料情報読み取り器122から試料情報1110を受信してもよい。これに応答して、プロセッサ118は、試料情報1110中の一意的な識別子に基づいて、メモリ120内の組織試料112(
図1および2)に関する予め定義されたまたは所定の情報1112にアクセスしてもよい。この情報に基づいて、プロセッサ118は、初期スキャン計画1114(またはスキャン命令)を決定してもよく、この計画は:一つもしくは複数のMR技術、組織試料112(
図1および2)の対象となっている一つもしくは複数の領域、一つもしくは複数のタイプの核、一つもしくは複数のパルス列、および/または一つもしくは複数の磁場強度を含む。
【0129】
その後、インタフェース回路116を介して、プロセッサ118は、初期スキャン計画1114に基づいて一つまたは複数のスキャン1116を実行するよう、MRスキャナ110に命令してもよい。次に、MRスキャナ110は、コンピュータ・システム114にMR信号1118を提供する。MR信号1118を受信した後、インタフェース回路116は、プロセッサ118にMR信号1118を提供する。プロセッサ118は、MR信号1118と、初期のシミュレートされたMR信号1124とを比較して、差分ベクトル1126を計算してもよい。例えば、プロセッサ118は、一意的な識別子に基づいて、メモリ120内の一つもしくは複数の所定の不変MRシグネチャ1120、および/または一つもしくは複数のMRモデル1122にアクセスしてもよく、プロセッサ118は、初期スキャン計画1114、MRスキャナ110の特徴、一つもしくは複数の所定の不変MRシグネチャ1122、および/または一つもしくは複数のMRモデル1124に基づいて、所期のシミュレートされたMR信号1124を生成してもよい。
【0130】
さらに、差分ベクトル1126に基づいて、プロセッサ118は、組織試料112(
図1および2)の3D位置におけるボクセルのMRモデル1128のパラメータを決定してもよい。さらに、プロセッサ118は、MR信号1118と、得られたMRモデル1128および初期スキャン計画1114を使用して生成された、シミュレートされたMR信号1130との間の残った差分ベクトル1132を計算してもよい。残った差分ベクトル1132に基づいて、プロセッサ118は初期スキャン計画1114を修正して、スキャン計画1134を取得してもよい。
【0131】
収束判定基準1136が達成されない場合、プロセッサ118は、インタフェース回路116を介して、スキャン計画1134に基づいて一つまたは複数のスキャン1138を実行するようMRスキャナ110に命令して、特性評価技術における操作を繰り返してもよい。さらに、収束判定基準1136が達成される場合、プロセッサ118は、一つまたは複数のさらなる操作1140、例えば、組織試料112(
図1および2)の分類の決定、および/またはMRモデルの最終版に基づいた、組織試料112(
図1および2)についての不変MRシグネチャの決定を実行してもよい。例えば、不変MRシグネチャは、最終版のMRモデルにおけるパラメータと、不変MRシグネチャに基づいたMR信号の生成を可能にするさらなる情報とを含んでいてもよい。その後、プロセッサ118はメモリ120に、情報、例えば一意的な識別子、不変MRシグネチャ、その他の測定結果、および/または組織試料112(
図1および2)に関する情報(メタデータなど)を記憶してもよい。
【0132】
一つまたは複数の先の方法の、いくつかの実施形態では、さらなるまたはより少数の操作が存在してもよい。さらに、操作の順序を変更してもよい、および/または複数の操作を組み合わせて単一操作にしてもよい。
【0133】
いくつかの実施形態では、この特性評価技術を使用して、一つまたは複数のMR技術に関連付けられた、組織試料についてのMR信号を、動的にスキャンし、捉え、処理することに留意されたい。例えば、一つまたは複数のMR技術を使用して、軟組織測定、形態学的研究、化学シフト測定、磁化転移測定、MRS、一つもしくは複数のタイプの核についての測定、オーバーハウザー(Overhauser)測定、および/または機能イメージング法を、連続的にまたは並列して実行してもよい。また、さらなる測定を、組織試料上で実行してもよい。得られた不変MRシグネチャは、高い空間分解能およびスペクトル分解能を有している場合があり、またMRFに情報を組み込んでいることがあるものであって、その後、多様な医療情報サービスを容易にするために、集約しても、またはインデックス化および検索してもよい。以下の考察では、特定の健康な(または非症候性または罹患していない)および罹患した(または症候性の)組織試料の定量的プロファイルのインデックス化を使用して例示とする。
【0134】
いくつかの実施形態では、初期スキャン1114計画は、低磁場MRスキャンもしくは磁場を用いない(例えば、RFのみの)MRスキャン、またはMR以外の測定、例えば、合成開口レーダー(SAR)を使用するMRスキャンを含み、組織試料112(
図1および2)内または体内(MRスキャンをインビボで実行する場合)の強磁性または常磁性物質(例えば、金属プレート、ピン、爆弾の破片、他の金属性の物体または異物)をスキャンする。かわりに、またはさらには、初期スキャンは電子スピン共鳴を使用してもよい。常磁性物質の初期スキャンは、MRスキャンの使用時に、システムの安全性を向上させることができる。このことは、患者の医療記録に異物に関する情報が含まれていないような場合、異物が新規または未知である(例えば、傷にまたは切除組織に残存する爆弾の破片)場合、または誤り事象において有用となる場合がある。特に、この「安全性スキャン」により、組織試料112(
図1および2)の損傷、または患者への傷害を防ぐことができ、システムを損傷から保護することができる。さらに、いかなる強磁性または常磁性物質のサイズも、初期スキャン1114中に見積もることができ、MRスキャン中に使用するのに安全な磁場強度を見積もることができる。逆に、組織試料112(
図1および2)または患者がいかなる常磁性物質の強磁性も含んでいない場合は、一つまたは複数のさらに高い磁場強度を、一つまたは複数のその後のMRスキャン中に使用することができる。
【0135】
一般に、病院におけるほとんどの非罹患組織試料は、医療専門家(例えば病理学者)によって評価され、その後、破壊される。しかしながら、政府の規制および法律によれば、特定の病理試料は、破壊できる前に特定量の時間だけ保存しなければならいことが多い。医療診断の比較および改善のための日常的に症候性のおよび非症候性の組織試料を含む、そして研究者が、過去の試料測定のアーカイブに対して新たな組織試料を比較することができるような、大規模な標準化データセットは現状、存在しない。
【0136】
インデックス化された組織試料を定量的に評価、規格化して、それらのデジタル表現をアップロードしてサービスに供することができるようにしてもよく、この場合には分析技術は、それ以前にインデックス化された多くのエクスビボおよびインビボ組織試料(例えば、新鮮なまたは湿性組織試料、凍結試料、ホルマリン固定パラフィン包埋試料等)を含む膨大なデータ構造(例えばバイオボールトであり、これは、「病理特徴知識ベース」と称されることもある)と試料とを、実時間、またはほぼ実時間で定量的に比較することができる。この能力を発揮するには、特性評価技術が、組織試料をインデックス化するのに使用されるパルス列および磁場の大きさ(または磁場強度)だけでなく、インデックス化されている試料のタイプ、使用されるMRスキャナに対しておおむね不変でなければならない場合がある。例えば、データ構造は、任意のスキャン条件(例えば任意の磁場B
0および任意のパルス列)についてMRフィンガープリントを生成するのに使用できる不変MRシグネチャを含んでいてもよく、生成されたMRフィンガープリントは、測定されたMRフィンガープリントと比較してもよい。
【0137】
このデータ構造の作成は、健康な組織と不健康な組織との間の差異を分類する、またはそれまで分類されていなかった他の異常な組織を識別することを可能にし、これによってインビボでの病理組織の検出に役立つことがあるものである。この能力は、検出された異常のさらに詳細なスキャンを必要とする可能性のある組織試料の部分を決定するのに有用であることがある。例えば、分析技術(例えば、教師あり学習法、例えば、サポート・ベクター・マシン、分類木および回帰木、ロジスティック回帰、線形回帰、非線形回帰、ニューラル・ネットワーク、ベイズ法等)は、前回の測定結果とデータ構造における分類、および今回のスキャンにおいて測定されたMR信号における特徴に基づいて、健康なまたは不健康な組織として異常を分類してもよい。かわりに、またはさらには、画像を、放射線科医、または組織のタイプまたは検出された異常を専門とする病理学者に提供してもよく、そうした放射線科医または病理学者が、分析を確認したり、組織試料を分類したりしてもよい。
【0138】
このように、生検からの組織試料は、良性であれ非良性であれ、インデックス化することが可能であり、また既知の健康な(例えば、ホワイトリストに載せる組織)と既知の異常組織(例えば、ブラックリストに載せる組織)を決定することが可能であり、グレイゾーンにある未知の組織(例えば、グレイリストに載せる組織)を分類することが可能である。未知の組織は、他のMR技術、さらなる関連生検、放射線科医または病理学者の再調査、および/または別の分析技術を使用した検査に向けて注意しておいてもよい。
【0139】
不変MRシグネチャを使用して、個別的に異常の検出を改善してもよいことに留意されたい。特に、ある個人において正常であるものが、他の個人において正常なものとは若干異なる場合があり、「正常」のさまざまな陰影または濃淡を反映する組織試料の集団が、組織の分類に役立ち得る。(したがって、いくつかの実施形態では、特性評価技術は、教師なし学習法、例えばクラスタリングを含んでいてもよく、これによって、分類を容易するために類似の組織試料をグループ化または分類する。)さらに、各組織試料について捉えることのできるデータの量は、一人の病理学者または放射線科医によって、またはさらに放射線科医および病理学者のチームによって処理できるデータ量よりも相当大きくなる場合があることに留意されたい。データ構造における不変MRシグネチャを使用して、この限界または拘束条件を相殺または除去してもよい。
【0140】
いくつかの実施形態では、組織試料(または関連するまたは類似の組織試料)の前回のスキャンから得られた不変MRシグネチャは、組織試料の今回のスキャン中に、MR信号との比較のターゲットとして使用される。例えば、前回の不変MRシグネチャを使用して、今回のスキャンにおける組織試料内のボクセルからの推定MR信号を、MRスキャナの特徴および/またはスキャン命令に基づいて生成してもよい。特に、前回の不変MRシグネチャは、MRスキャナの特徴および/またはスキャン命令と組み合わせて使用することが可能なMRモデルにおけるパラメータを含んでいても、または指定してもよく、これによって、推定MR信号を生成する。その後、推定MR信号をターゲットとして使用して、今回のスキャンにおけるMR信号と比較することができる。これにより、予期されない変化を有する範囲または領域を、速やかに識別することが可能になる場合があり、これによって、検出された異常のさらに詳細なスキャンが必要となる組織試料の部分を識別する、および/または異なるパラメータの測定を行うことが可能になる場合がある(すなわち、これによって、スキャン計画を動的に更新することが可能になる場合がある)。この能力のおかげで、例えば:異なるスキャン命令、異なるMR技術、および/または異なるボクセル・サイズを、組織試料の異なる部分または領域において使用すること(例えば、それほど興味の対象ではない領域にはもっと大きなボクセル・サイズ、さらに詳細なスキャンが必要な領域にはもっと小さなボクセル・サイズ)が可能になることによって、組織試料のより効率的な(すなわち、より高速な)そしてより正確なスキャンが可能になる場合がある。
【0141】
いくつかの実施形態では、特性評価技術は、圧縮センシングの一形態として、いわゆる「幅優先インデックス化」を使用する。特に、システムは、組織試料の興味深いまたは動的な部分のスキャンとモデル化に、より多くの時間を割き、急速には変化していない部分には時間をかけないようにしてもよい。「興味深い」領域は、実時間で、および/またはスキャンされている組織試料の過去の情報に基づいて収集された情報に基づいて、決定してもよいことに留意されたい。そのような幅優先インデックス化は、推論的または帰納的な方法を適用してもよく、そうした方法は例えば、さまざまな化学種の推定存在量または核のタイプ(これらは、化学シフトまたはMRSを用いて決定することができる)に基づいた、オーバーサンプリングおよび/またはボクセル・サイズの変更である。
【0142】
ある種の梗塞を決定するMRSに先立つ、流れ速度のマッピング/モデル化は、そうした幅優先または動的インデックス化の例である。特に、MRモデルにおける流れパラメータの分析によって、閉塞を識別することが可能になる場合がある。血管(例えば動脈または静脈)における梗塞の場所が、MRモデルにおいて血圧の上昇または擾乱を示す血流速度の変化またはパラメータに基づいて、流れを直接測定することなく決定される場合がある。さらに、ベルヌーイの法則に基づいて、血管の狭窄は、プラークまたは血栓症を直接撮像することなしに推測することができる。その後、識別された領域でMRSを実行して、プラークの蓄積から予想される化学シグネチャの増加があったかどうかを調べることによって、この決定の正確度を高めることができる。)
【0143】
前回の不変MRシグネチャを使用して推定MR信号を生成するには、位置合わせ技術を使用して、組織試料を、既知の空間的場所にある基準マーカ、または前回の不変MRシグネチャにおけるボクセルと位置合わせしてもよいことに留意されたい。この位置合わせ技術は、全地球測位システムまたは屋内測位システムを使用して、MRスキャンに対する組織試料の位置の変化を決定してもよい。かわりに、またはさらには、前回の不変MRシグネチャを、組織試料の仮想的な位置合わせ中に使用してもよい。例えば、前回の不変MRシグネチャを使用して、ボクセルの組に対する推定MR信号を生成してもよい。ボクセルの所与の組における推定MR信号は平均化してもよく、その結果得られた、ボクセルの組における平均MR信号を、今回のスキャン中に測定されたMR信号と比較し、静的(または動的な)なオフセット・ベクトルを決定してもよい。例えば、ボクセルの組における平均MR信号(例えば、組織試料の、3、6、12、または24個の領域または部分における平均MR信号)の位置を、今回のスキャンにおけるボクセルの組におけるMR信号と(2Dまたは3Dにおいて)相関させてもよい。このオフセット・ベクトルは、その後の比較または分析中に使用して、MR信号と推定MR信号を位置合わせしてもよい。いくつかの実施形態では、組織試料の位置合わせまたはオフセット・ベクトルは、ラーモア周波数の変動、およびMRスキャン磁場の所定の空間的な不均一性または変動に基づいて計算される。
【0144】
いくつかの実施形態では、位置合わせ技術は、ノード/ボクセル構成における辺を検出することを含む。異なる組織試料および検査対象にわたって解剖学的構造は変動するので、分析を可能にして結果を母集団に一般化するために、データの小さな変動を、さらに一般化された座標に変換してもよい。一般に、この変換は、1対1であって可逆であってもよく、識別および診断に有用な特性、例えば:曲線、面、テクスチャ、および/または他の特徴を保持していてもよい。例えば、これらの特徴は、微分同相変換(例えば、滑らかな逆関数を持つ滑らかな可逆変換)に、または微分同相変換の測地フローを介して計算される変形計量マッピングに拘束されていてもよい。いくつかの実施形態では、面どうしの間の微分同相変換を使用して、多次元構造上の変化を(例えば、時間の関数として)計算する。
【0145】
さらに、MR信号と、一つまたは複数の不変MRシグネチャに関連付けられた、シミュレートされたMR信号との間で一致した組に基づいて計算された微分同相変換の線形結合(または不変MRシグネチャの線形結合)は、先験的に推定された情報(例えば、解剖学的構造の運動、変形、変動、磁場、環境条件等)に基づいた空間オフセット補正を提供することができる。これらの空間オフセット補正は、教師あり学習位置合わせエンジンにおける重み付けされた構成要素として使用してもよい。例えば、一組の変形段階(規則的な呼吸時の肺、心拍動時の心臓、または収縮または伸長時の筋肉の動きによって引き起こされる)にわたって一組の点を追跡する一組の微分同相速度場を、領域におけるその一組の点(例えば、心臓または肺の中またはその周囲の一組のボクセル)に対応する身体の領域に当てはめることができる。
【0146】
こうして、特性評価技術により、病院や研究所が、そうした機関における組織試料の多くあるいはさらにすべてを、検索可能な方法でカタログ化しインデックス化できるようになる可能性があり、また、臨床的に妥当な結果を提供できるように、インデックス化された症候性および非症候性の組織試料の大規模データ構造を効率的に蓄積できるようなる可能性がある(すなわち、特性評価技術が多数の組織試料に拡大される可能性がある)。
【0147】
例えば、対象となっている領域が、組織サンプルにおいて(操作者もしくは技術者によって手作業により、および/またはこの組織試料についての前回の不変MRシグネチャに基づく推定MR信号との比較に基づいて自動的に)識別される場合、類似の領域を有する他の組織サンプルおよび/または臨床研究のために、記憶された不変MRシグネチャに対して検索を、この対象となっている領域の組織パラメータに基づいて自動的に実行してもよい。これらの検索によって、既知の診断とともに類似の事例と結果が、組織試料の測定を分析する放射線科医に対して顕在化してくることがある。
【0148】
いくつかの実施形態では、データ構造は、研究、臨床学的定義、前回の組織試料スキャン、および/または統計的関連性もしくは病理学的リスク・スコアに基づいた、病理学の一組の統計学的定義を含んでいる。病理学的リスク・スコアは、特定の病理について特定の検査対象から得られた特定の組織試料について計算してもよく、これは、検査対象がこの特定の病理を有する、またはこの特定の病理を発現する危険性があるという統計的確率を含むが、これに限定されないものである。さらに、病理学的リスク・スコアは、不変MRシグネチャに基づいたルックアップ・テーブルに記憶してもよい。あるいは、病理学的リスク・スコアは、MR信号、MRスペクトル、および/またはMRフィンガープリントに基づいたルックアップ・テーブルに記憶してもよく、これらはそれぞれが、特定の状態、例えば特定の特性を有する特定のMRスキャナおよび特定のスキャン命令における不変MRシグネチャの表現または予測であってもよい。さらに、不変MRシグネチャは、特定の病理および疾患に結び付いていてもよく、既知の良好なそして既知の不良な組織試料のスキャン、陰性および陽性の生検、特定のまたは異常な領域の周辺で実行された高特異性スキャン、放射線科医のフィードバック等から決定される。データ構造は、技術者、研究者、医師、雑誌、および/または他の情報源により手作業で更新してもよい。かわりに、またはさらには、データ構造は、さらなる組織試料の情報、および/またはクローラ(crawler)を使用して自動的に更新してもよく、このクローラは、科学雑誌を分析し、研究結果を自動的に抽出し、または切り抜きし、それらを翻訳する、または病理学的リスク・スコアに統合するものである。
【0149】
さらに、いくつかの実施形態では、データ構造は、異なる時期に取得される組織試料の複数の不変MRシグネチャに基づいた、経時的な(例えば、数週間、数ヶ月、もしくは数年にわたる、または手術中の)身体または身体の一部の、一次元またはさらに高次元のアニメーションを含む。
【0150】
先の考察では、特性評価技術におけるMR技術の使用を例示したが、このアプローチは、広範囲の測定法(組織試料上で実行される一つまたは複数の他の測定を含む)を使用して実時間で物質を物理的にモデル化し測定することができる測定システムに一般化してもよい。概して、この測定システムは、機械的および/または電磁気的な波の組み合わせを使用して、スキャンされている容積を摂動させることができるが、これは、容積がこれらの摂動にどのように応答するかに関して予測の正当性を評価するために行う。これはまた、測定システムがそれ自体をシミュレートする、そして測定システムが位置する環境の部分であって、スキャンされている容積を記述するために測定システムが生成しようとしている予測モデルの正当性に影響を及ぼし得るあらゆる部分をシミュレートする能力を含む。
【0151】
この特性評価の結果は、スキャンされている容積の(4+N)D(空間内の各点における三つの空間次元、一つの時間次元、およびN個の測定次元)定量的モデルであってもよい。スキャンされている物質が生体組織である実施形態では、測定システムは「バイオインフォマティック測定システム」または「バイオインフォマティック・スキャナ」と称されることもある。このように、特性評価技術は、MRI法以外のMR技術を含んでいてもよく、またはMRIを含んでいてもよい。(4+N)D定量的モデルは、2Dまたは3D画像を含む、完全な(4+N)D空間の任意の部分集合に射影されてもよいことに留意されたい。
【0152】
以下に、特性評価技術における操作の少なくとも一部を実行する電子装置についてさらに記載する。
図12に、システム100(
図1)における電子装置1200の例、例えばコンピュータ・システム114(
図1)またはシステム100(
図1)における他のコンピュータ制御された構成要素を例示するブロック図を示す。この電子装置は、処理サブシステム1210、メモリ・サブシステム1212、およびネットワーキング・サブシステム1214を含む。処理サブシステム1210は、計算操作を実行し、システム100(
図1)における構成要素を制御するように構成された、一つまたは複数の装置を含んでいてもよい。例えば、処理サブシステム1210は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、プログラマブルロジック・デバイス、および/または一つまたは複数のデジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)を含んでいてもよい。
【0153】
メモリ・サブシステム1212は、データ、ならびに/または処理サブシステム1210およびネットワーキング・サブシステム1214への命令を記憶する一つまたは複数の装置を含んでいてもよい。例えば、メモリ・サブシステム1212は、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)、スタティック・ランダム・アクセス・メモリ(SRAM)、および/または他のタイプのメモリを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、メモリ・サブシステム1212における処理サブシステム1210への命令は、一つまたは複数のプログラム・モジュール1224または命令セットを含み、これらは、処理サブシステム1210により、処理環境(例えばオペレーティング・システム1222)において実行されてもよい。一つまたは複数のコンピュータ・プログラムは、コンピュータ・プログラム機構またはプログラム・モジュール(すなわち、ソフトウェア)を構成してもよいことに留意されたい。さらに、メモリ・サブシステム1212内のさまざまなモジュール内の命令を、高水準手続き型言語、オブジェクト指向プログラミング言語、および/またはアセンブリ言語もしくは機械語で実装してもよい。さらに、プログラミング言語は、コンパイルまたは翻訳されて、例えば構成可能となり、または構成されて(この考察ではこれらは交換可能に使用されてもよい)、処理サブシステム1210によって実行されてもよい。
【0154】
さらに、メモリ・サブシステム1212は、メモリへのアクセスを制御する機構を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、メモリ・サブシステム1212は、電子装置1200におけるメモリに結合された一つまたは複数のキャッシュを備えたメモリ階層を含む。これらの実施形態のいくつかでは、一つまたは複数のキャッシュが処理サブシステム1210内に位置する。
【0155】
いくつかの実施形態では、メモリ・サブシステム1212は、一つまたは複数の大容量の大容量記憶装置(図示せず)に結合される。例えば、メモリ・サブシステム1212は、磁気または光学式ドライブ、ソリッド・ステート・ドライブ、または別のタイプの大容量記憶装置に結合されていてもよい。これらの実施形態では、メモリ・サブシステム1212は、頻繁に使用されるデータ用の高速アクセスできる記憶装置として、電子装置1200によって使用されてもよく、その一方で大容量記憶装置は、使用頻度の低いデータを記憶するために使用される。
【0156】
いくつかの実施形態では、メモリ・サブシステム1212は、遠隔地に位置するアーカイブ装置を含む。このアーカイブ装置は、大容量のネットワーク接続された大容量記憶装置、例えば:ネットワーク接続された記憶装置(NAS)、外付けハードドライブ、記憶サーバ、サーバのクラスタ、クラウド・ストレージ・プロバイダ、クラウド・コンピューティング・プロバイダ、磁気テープ・バックアップ・システム、医療記録アーカイブ・サービス、および/または別のタイプのアーカイブ装置とすることができる。さらに、処理サブシステム1210は、アプリケーション・プログラミング・インタフェースを介してアーカイブ装置と相互作用して、アーカイブ装置からの情報を記憶、および/またはこれにアクセスしてもよい。
【0157】
メモリ・サブシステム1212に(局所的におよび/または遠隔地で)記憶されているデータの例を、
図13に示すが、この図は、電子装置1200(
図12)によって使用されるデータ構造1300を例示する図面を示している。このデータ構造は:組織試料1308−1の識別子1310−1、標識情報1312(例えば、検査対象の年齢、性別、組織試料1308−1を採取した元の臓器、組織試料1308−1を採取した手順、試料を取り出した時間と場所、試料のタイプ、もし既に行われている場合には生検結果および診断、および/またはその他の適切な試料情報)、データを取得したタイム・スタンプ1314、受信したMR信号1316(そしてより一般的には、生データ)、MR取得とモデルパラメータ1318(ボクセル・サイズ、速度、共鳴周波数、T
1およびT
2緩和時間、信号処理技術、RFパルス技術、磁場勾配強度、可変磁場B
0、パルス列等を含む)、メタデータ1320(例えば、組織試料1308−1を特徴付ける情報、人口統計情報、家族歴等)、環境条件1322(例えば、組織試料1308−1を測定する室内またはチャンバー内の温度、湿度、および/または圧力)、決定された不変MRシグネチャ1324、組織試料1308−1の物性の一つまたは複数のさらなる測定結果1326、(例えば、試料特性、例えば、重量、試料寸法、画像等)、および/またはMR信号1316から、またはこれに応答して生成された変換データ1328(例えば推定不変MRシグネチャ)を含んでいてもよい。データ構造1300が、異なるスキャン命令に対する複数のエントリを含んでいてもよいことに留意されたい。
【0158】
一実施形態では、データ構造1300内のデータは、ブロック・チェーンまたは類似の暗号化ハッシュ技術を使用して暗号化され、許可されていない修正またはレコードの破損を検出する。さらに、データは、記憶する前に匿名化することができるため、検査対象のアイデンティティは、検査対象がその検査対象のアイデンティティにアクセスまたはそれを解放する許可または権限を与えない限り匿名である。
【0159】
再び
図12を参照すると、ネットワーキング・サブシステム1214は、有線、光、および/または無線ネットワークに結合しその上で通信する(すなわち、ネットワーク操作、そしてより一般的には通信を実行する)ように構成された一つまたは複数の装置を含んでいてもよく、こうした装置には、制御ロジック1216、インタフェース回路1218、一つまたは複数のアンテナ1220、および/または入力/出力(I/O)ポート1228が挙げられる。(
図12は、一つまたは複数のアンテナ1220を含むが、いくつかの実施形態では、電子装置1200は、一つまたは複数のアンテナ1220に結合することができる一つまたは複数つ以上のノード1208、例えばパッドを含む。このように、電子装置1200は、一つまたは複数のアンテナ1220を含んでいてもよいし、いなくてもよい。)例えば、ネットワーキング・サブシステム1214は、Bluetooth(登録商標)ネットワーキング・システム(これは、Bluetooth Low Energy、BLE、またはBluetooth LEを含むことができる)、移動体通信ネットワーキング・システム(例えば、3G/4Gネットワーク、例えばUMTS、LTE等)、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)・ネットワーキング・システム、IEEE 802.11に記載の規格に基づくネットワーキング・システム、(例えば、Wi−Fiネットワークキング・システム)、イーサネット(登録商標)・ネットワーキング・システム、および/または他のネットワーキング・システムを含むことができる。
【0160】
さらに、ネットワーキング・サブシステム1214は、プロセッサ、コントローラ、無線装置/アンテナ、ソケット/プラグ、および/または、維持されている各ネットワーキング・システム用のデータおよびイベントに結合する、それらの上で通信する、およびそれらを操作するのに使用される他の装置を含んでいてもよい。各ネットワーク・システム用のネットワーク上のデータおよびイベントに結合する、それらの上で通信する、そしてそれらを操作するのに使用される機構は、ネットワーク・サブシステム1214のための「ネットワーク・インターフェース」と総称されることがあることに留意されたい。さらに、いくつかの実施形態では、システム100(
図1)内の構成要素間の「ネットワーク」はまだ存在していない。したがって、電子装置1200は、構成要素間の簡単な無線通信を行うために、例えば、アドバタイジング(advertising)・フレームまたはビーコン・フレームを伝送するために、および/または他の構成要素によって伝送されたフレームをアドバタイジングするためのスキャンを行うために、ネットワーキング・サブシステム1214内の機構を使用してもよい。
【0161】
電子装置1200内では、処理サブシステム1210、メモリ・サブシステム1212、ネットワーキング・サブシステム1214は、一つまたは複数の相互接続、例えばバス1226を使用して結合してもよい。これらの相互接続は、サブシステムが互いの間でコマンドとデータを通信するのに使用できる電気接続、光接続、および/または電気光接続を含んでいてもよい。明確にするために、ただ一つのバス1226を示すが、異なる実施形態は、サブシステム間の、異なる数または構成の電気接続、光接続、および/または電気光接続を含むことができる。
【0162】
電子装置1200を、多種多様な電子装置が含んでいてもよい(または含むことができる)。例えば、電子装置1200は、タブレット・コンピュータ、スマートフォン、携帯計算装置、試験装置、デジタル・シグナル・プロセッサ、計算装置のクラスタ、ラップトップ・コンピュータ、デスクトップ・コンピュータ、サーバ、サブノート/ノートブック、および/または他の計算装置に含まれていてもよい。
【0163】
特定の構成要素が、電子装置1200を記述するために使用されているが、代替の実施形態では、異なる構成要素および/またサブシステムが、電子装置1200内に存在してもよい。例えば、電子装置1200は、一つまたは複数のさらなる処理サブシステム、メモリ・サブシステム、および/またはネットワーキング・サブシステムを含んでいてもよい。さらに、一つまたは複数のサブシステムが、電子装置1200に存在していなくてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、電子装置1200は、
図12に示されていない一つまたは複数のさらなるサブシステムを含んでいてもよい。
【0164】
個別のサブシステムが
図12に示されているが、いくつかの実施形態では、所与のサブシステムまたは構成要素の一部または全部を、電子装置1200中の一つまたは複数の他のサブシステムまたは構成要素に一体化することができる。例えば、いくつかの実施形態では、一つまたは複数のプログラム・モジュール1224が、オペレーティング・システム1222に含まれる。いくつかの実施形態では、所与のサブシステムにおける構成要素は、異なるサブシステムに含まれる。さらに、いくつかの実施形態では、電子装置1200は、単一の地理的場所に位置する、または複数の異なる地理的位置に分散される。
【0165】
さらに、電子装置1200における回路および構成要素は、バイポーラ、PMOSおよび/またはNMOSゲートもしくはトランジスタを含む、アナログおよび/またはデジタル回路の任意の組み合わせを使用して実装してもよい。さらに、これらの実施形態における信号は、近似的に離散値を有するデジタル信号、および/または連続値を有するアナログ信号を含んでいてもよい。さらに、構成要素および回路は、シングルエンド型(single−ended)または差動型であってもよく、電源は、単極性または双極性であってもよい。
【0166】
集積回路は、ネットワーキング・サブシステム1214の機能性(例えば無線装置)の一部またはすべて、さらに一般的には、電子装置1200の機能性の一部またはすべてを実装してもよい。さらに、集積回路は、電子装置1200からの無線信号を伝送する、そしてシステム100(
図1)内の他の構成要素から、および/またはシステム100(
図1)外の電子装置から、電子装置1200において信号を受信するのに使用されるハードウェアおよび/またはソフトウェア機構を含んでいてもよい。本明細書に記載の機構とは別に、無線装置は概して、当該技術分野において公知であり、したがって詳細な記載は行わない。一般に、ネットワーキング・サブシステム1214および/または集積回路は、任意の数の無線装置を含むことができる。複数の無線装置の実施形態における無線装置は、単一無線装置の実施形態に記載される無線装置と同様に機能することに留意されたい。
【0167】
先の実施形態における操作のうちのいくつかは、ハードウェアまたはソフトウェアに実装しが、概して、先の実施形態における操作は、多様な構成およびアーキテクチャに実装することができる。したがって、先の実施形態における操作の一部または全部は、ハードウェア、ソフトウェア、またはその両方で実行してもよい。
【0168】
さらに、先の実施形態のいくつかにおいては、さらに少ない構成要素、さらに多くの構成要素が存在する、構成要素の位置が変更されている、および/または二つ以上の構成要素が一つになっている。
【0169】
先の記載においては、「いくつかの実施形態」を参照している。「いくつかの実施形態」が、あらゆる可能な実施形態の部分集合を記載してはいるが、実施形態の同一の部分集合を常に指定しているとは限らないことに留意されたい。
【0170】
前述の記載は、当業者のだれもが、本開示を実行し使用することができることを意図しており、特定の用途およびその要件の観点から提供される。さらに、本開示の実施形態の先の記載は、図示および記載の目的に対してのみ提示されたものである。そうした記載は、限定列挙であるということ、すなわち開示された形態に本開示を限定するということを意図したものではない。したがって、多くの修正および変形が、当業者には明らかであり、本明細書で定められた一般原則は、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の実施形態および用途に適用してもよい。さらに、先の実施形態の考察は、本開示を限定することを意図するものではない。したがって本開示は、示された実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示された原則および特徴に整合する最も広い範囲に一致するものとする。