特許第6883575号(P6883575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和電工株式会社の特許一覧

特許6883575粘着剤組成物および粘着剤組成物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883575
(24)【登録日】2021年5月12日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物および粘着剤組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20210531BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   C09J133/04
   C09J175/04
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-522473(P2018-522473)
(86)(22)【出願日】2017年6月5日
(86)【国際出願番号】JP2017020802
(87)【国際公開番号】WO2017213077
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2020年3月11日
(31)【優先権主張番号】特願2016-112396(P2016-112396)
(32)【優先日】2016年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 直行
(72)【発明者】
【氏名】菅原 篤
(72)【発明者】
【氏名】川本 健
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−174658(JP,A)
【文献】 特開2001−146508(JP,A)
【文献】 特開平07−070244(JP,A)
【文献】 特開平09−169959(JP,A)
【文献】 特開2013−104006(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/140911(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂(A)とイソシアネート系架橋剤(B)とを含み、前記アクリル系樹脂(A)100質量部に対する前記イソシアネート系架橋剤(B)の含有量が0.05〜5質量部であり、
アクリル系樹脂(A)が、モノマー単位として、20質量%以上の水酸基を有するモノマー(a1)と、0.5〜5質量%のN−ビニルアセトアミド(a2)とを含むことを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記イソシアネート系架橋剤(B)が、2つまたは3つのイソシアナト基を有する化合物である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記イソシアネート系架橋剤(B)が1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート三量体である請求項1または請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記アクリル系樹脂(A)のモノマー単位に含まれるアミノ基および/またはアミド基を有するモノマーが、前記N−ビニルアセトアミド(a2)のみである請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
水酸基を有するモノマー(a1)とN−ビニルアセトアミド(a2)とを含む単量体成分(I)を共重合してアクリル系樹脂(A)を製造する工程であって、
前記単量体成分(I)中の前記水酸基を有するモノマー(a1)の含有量が20質量%以上、前記単量体成分(I)中の前記N−ビニルアセトアミド(a2)の含有量が0.5〜5質量%である工程と、
前記アクリル系樹脂(A)とイソシアネート系架橋剤(B)とを、前記アクリル系樹脂(A)100質量部に対する前記イソシアネート系架橋剤(B)の含有量が0.05〜5質量部となるように混合する工程とを含むことを特徴とする粘着剤組成物の製造方法。
【請求項6】
前記イソシアネート系架橋剤(B)が、2つまたは3つのイソシアナト基を有する化合物である請求項5に記載の粘着剤組成物の製造方法。
【請求項7】
前記イソシアネート系架橋剤(B)が1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート三量体である請求項5または請求項6に記載の粘着剤組成物の製造方法。
【請求項8】
前記単量体成分(I)中のアミノ基および/またはアミド基を有するモノマーが、前記N−ビニルアセトアミド(a2)のみである請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物および粘着剤組成物の製造方法に関する。
本出願は、2016年6月6日に日本に出願された特願2016−112396に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
現在、粘着剤組成物は、幅広い分野で使用されている。例えば、携帯電話、カーナビゲーション装置、パソコン用モニタ、テレビなどの画像表示装置を製造する際には、偏光板、位相差板、ガラス板などを貼り合わせるために、粘着剤組成物が使用されている。
従来、粘着剤組成物としては、特許文献1〜特許文献4に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、(メタ)アクリレート系および/またはビニルエーテル系単量体と、N−ビニルアセトアミド単量体を共重合して得られた粘着剤用樹脂を含有する粘着剤が記載されている。特許文献1に記載の粘着剤用樹脂は、紙・皮膚・ポリオレフィン系樹脂・塩化ビニル系樹脂などの被着物に対して、良好な粘着性、凝集性を有する。
【0004】
特許文献2には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに対する、水酸基を有する単量体および官能基を有する単量体の含有量を調節した単量体混合物の共重合体が記載され、この共重合体を使用した光学部材用粘着剤が記載されている。特許文献2に記載の光学部材用粘着剤は、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム等の寸法変化による応力を緩和し、高湿熱条件下で剥がれを防止するだけでなく、光漏れによる色むらを抑制できる。
【0005】
特許文献3には、重合体を構成するモノマー単位として、水酸基を有するモノマーを15〜30質量%含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、活性エネルギー線硬化性成分と、架橋剤とを含有する粘着性組成物を、熱架橋してなる粘着シートが記載されている。特許文献3に記載の粘着シートは、段差追従性に優れ、耐湿熱白化性および耐久性に優れる。
【0006】
特許文献4には、アクリル系樹脂と、水酸基を有するメタクリル系単量体5質量%〜45質量%と、N−ビニルカルボン酸アミド0.1質量%〜10質量%とを含む、光硬化する光学用接着剤組成物が記載されている。特許文献4に記載の組成物は、透明性および耐湿熱白化性に優れた粘着剤層を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3475451号公報
【特許文献2】特許第4134350号公報
【特許文献3】特開2015−10198号公報
【特許文献4】特開2016−53113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
粘着剤組成物は、幅広い分野で、様々な材料からなる被接着物の接着に用いられている。このため、粘着剤組成物として、様々な材料からなる被接着物に対して良好な接着性を有するものが要求されている。
【0009】
例えば、画像表示装置の偏光板、位相差板などの素材としては、セルローストリアセテート(TAC)などが用いられている。さらに、近年、偏光板の材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)といった各種樹脂材料を用いることが検討されている。このことから、画像表示装置の偏光板などの接着に用いる粘着剤組成物として、ガラス、各種樹脂材料など様々な材料に対して、十分な接着性を有するものが要求されている。
【0010】
しかし、従来の粘着剤組成物は、様々な材料からなる被接着物に対して良好な接着性が得られるものではなかった。
また、画像表示装置の偏光板などを接着する際に用いる粘着剤組成物は、その硬化物を高温高湿下で使用しても白濁しにくい十分な耐湿熱性を有している必要がある。
また、光重合により硬化する粘着剤組成物は、光照射したときに影ができる形状を有する基材上に、一様な性質を持つ硬化物を形成しにくいという問題がある。
また、エチレン性不飽和結合を有する反応性モノマーを成分として含む粘着剤組成物では、保存安定性を確保するために保存状態を綿密に管理する必要があり、場合によっては該成分が反応して粘着剤組成物が変質する懸念があった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高温高湿下で使用しても白濁しにくい優れた耐湿熱性を有する硬化物が得られ、かつ、様々な材料からなる被接着物に対して良好な接着性を有する、熱硬化可能な粘着剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために、モノマー単位としてN−ビニルアセトアミド(NVA)を含む共重合体に着目し、鋭意検討した。その結果、水酸基を有するモノマーとN−ビニルアセトアミドとを所定量含む単量体成分を共重合してなるアクリル系樹脂と、所定量のイソシアネート系架橋剤とを含む粘着剤組成物とすればよいことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の構成を採用する。
【0013】
[1]アクリル系樹脂(A)とイソシアネート系架橋剤(B)とを含み、前記アクリル系樹脂(A)100質量部に対する前記イソシアネート系架橋剤(B)の含有量が0.05〜5質量部であり、
アクリル系樹脂(A)が、モノマー単位として、20質量%以上の水酸基を有するモノマー(a1)と、0.5〜5質量%のN−ビニルアセトアミド(a2)とを含むことを特徴とする粘着剤組成物。
【0014】
[2]前記イソシアネート系架橋剤(B)が、2つまたは3つのイソシアナト基を有する化合物である[1]に記載の粘着剤組成物。
[3]前記イソシアネート系架橋剤(B)が1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート三量体である[1]または[2]に記載の粘着剤組成物。
[4]前記アクリル系樹脂(A)のモノマー単位に含まれるアミノ基および/またはアミド基を有するモノマーが、前記N−ビニルアセトアミド(a2)のみである[1]〜[3]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【0015】
[5]水酸基を有するモノマー(a1)とN−ビニルアセトアミド(a2)とを含む単量体成分(I)を共重合してアクリル系樹脂(A)を製造する工程であって、
前記単量体成分(I)中の前記水酸基を有するモノマー(a1)の含有量が20質量%以上、前記単量体成分(I)中の前記N−ビニルアセトアミド(a2)の含有量が0.5〜5質量%である工程と、
前記アクリル系樹脂(A)とイソシアネート系架橋剤(B)とを、前記アクリル系樹脂(A)100質量部に対する前記イソシアネート系架橋剤(B)の含有量が0.05〜5質量部となるように混合する工程とを含むことを特徴とする粘着剤組成物の製造方法。
【0016】
[6]前記イソシアネート系架橋剤(B)が、2つまたは3つのイソシアナト基を有する化合物である[5]に記載の粘着剤組成物の製造方法。
[7]前記イソシアネート系架橋剤(B)が1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート三量体である[5]または[6]に記載の粘着剤組成物の製造方法。
[8]前記単量体成分(I)中のアミノ基および/またはアミド基を有するモノマーが、前記N−ビニルアセトアミド(a2)のみである[5]〜[7]のいずれかに記載の粘着剤組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の粘着剤組成物は、モノマー単位として所定量の水酸基を有するモノマーと所定量のN−ビニルアセトアミドとを含むアクリル系樹脂と、所定量のイソシアネート系架橋剤とを含む。このため、本発明の粘着剤組成物は、熱硬化可能であり、様々な材料からなる被接着物に対して良好な接着性を有する。また、本発明の粘着剤組成物の硬化物は、高温高湿下で使用しても白濁しにくく、優れた耐湿熱性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
(粘着剤組成物)
本実施形態の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)とイソシアネート系架橋剤(B)とを含む。
「アクリル系樹脂(A)」
アクリル系樹脂(A)は、モノマー単位として、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを含み、かつ、水酸基を有するモノマー(a1)と、N−ビニルアセトアミド(a2)とを含む共重合体である。ただし、水酸基を有するモノマー(a1)自身が、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであってもよい。
【0019】
水酸基を有するモノマー(a1)は、アクリル系樹脂(A)中にモノマー単位として、20質量%以上含まれる。水酸基を有するモノマー(a1)が、アクリル系樹脂(A)のモノマー単位に20質量%以上含まれていることにより、粘着剤組成物の硬化物を高温高湿下で使用した場合における白濁を十分に抑制できる。水酸基を有するモノマー(a1)は、アクリル系樹脂(A)中にモノマー単位として、25質量%以上含まれていることが好ましい。一方、アクリル系樹脂(A)のモノマー単位に含まれる水酸基を有するモノマー(a1)が多すぎると、粘着剤組成物の親水性が高くなり、疎水性の被接着物に対する接着性が低下する傾向がある。このため、水酸基を有するモノマー(a1)は、アクリル系樹脂(A)のモノマー単位に70質量%以下含まれることが好ましく、60質量%以下含まれることがより好ましい。
【0020】
水酸基を有するモノマー(a1)としては、特に限定されないが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;1,3−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート等の各種ポリオール由来の(メタ)アクリロイル基を有するモノオール等が挙げられる。水酸基を有するモノマー(a1)は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの水酸基を有するモノマー(a1)の中でも特に、イソシアナト基との反応性の点で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0021】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの一方または両方を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルの一方または両方を意味する。
【0022】
N−ビニルアセトアミド(a2)は、アクリル系樹脂(A)中に、共重合体のモノマー単位として、0.5〜5質量%含まれる。アクリル系樹脂(A)のモノマー単位に、N−ビニルアセトアミド(a2)が0.5質量%以上含まれていると、様々な材料からなる被接着物に対して良好な接着性を有する粘着剤組成物となる。N−ビニルアセトアミド(a2)は、アクリル系樹脂(A)中に、共重合体のモノマー単位として、1質量%以上含まれていることが好ましい。一方、アクリル系樹脂(A)のモノマー単位に含まれるN−ビニルアセトアミド(a2)が多すぎると、粘着剤組成物の親水性が高くなり、疎水性の被接着物に対する接着性が低下する傾向がある。このため、N−ビニルアセトアミド(a2)は、アクリル系樹脂(A)のモノマー単位に、5質量%以下含まれるものとし、3質量%以下含まれることが好ましい。
【0023】
アクリル系樹脂(A)は、共重合体のモノマー単位として、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーおよび水酸基を有するモノマー(a1)(または水酸基を有するモノマー(a1)が(メタ)アクリロイル基を有するモノマーである)と、N−ビニルアセトアミド(a2)に加えて、他のモノマーを含んでいてもよい。
他のモノマーとしては、アミノ基および水酸基を有しない(メタ)アクリルエステル(a3)、アミノ基および/またはアミド基を有し、水酸基を有せず、N−ビニルアセトアミドでないモノマー(a4)を挙げることができる。さらに上記以外の他のモノマーとして、メタクリロキシプロピルメトキシシラン、酢酸ビニル、塩化ビニル、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0024】
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびメタクリルの一方または両方を意味する。
【0025】
アミノ基および水酸基を有しない(メタ)アクリルエステル(a3)は、アクリル系樹脂(A)中に、共重合体のモノマー単位として、30〜79質量%含まれることが好ましく、40〜75質量%含まれることがより好ましい。アクリル系樹脂(A)のモノマー単位に含まれるアミノ基および水酸基を有しない(メタ)アクリルエステル(a3)の含有量が30〜79質量%であると、アクリル系樹脂(A)のモノマー単位に含まれる水酸基を有するモノマー(a1)とN−ビニルアセトアミド(a2)とのバランスが良好となる。その結果、疎水性と親水性のバランスが良く、粘着性および耐湿熱に優れた粘着剤組成物が得られる。
【0026】
アミノ基および水酸基を有しない(メタ)アクリルエステル(a3)としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルナニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル(メタ)アクリレートなどを、単独、または2種類以上を併用して、用いることができる。
【0027】
これらの中でも特に、アミノ基および水酸基を有しない(メタ)アクリルエステル(a3)としては、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらの(メタ)アクリルエステル(a3)は、入手が容易で、適当な反応性を有するため、好ましい。
【0028】
アミノ基および/またはアミド基を有し、水酸基を有せず、N−ビニルアセトアミドでないモノマー(a4)は、アクリル系樹脂(A)中に、共重合体のモノマー単位として、5質量%以下含まれていてもよい。アミノ基および/またはアミド基を有し、水酸基を有せず、N−ビニルアセトアミドでないモノマー(a4)が5質量%以下含まれていることにより、アクリル系樹脂(A)に塩基性を持たせたり、最終生成物である粘着剤組成物の物性を変えたりできる。
【0029】
アミノ基および/またはアミド基を有し、水酸基を有せず、N−ビニルアセトアミドでないモノマー(a4)としては、N−(メタ)アクリル化合物やN−ビニルアミド化合物が挙げられる。具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルモルホリン、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルメタクリルアミド、N−n−ブトキシメチルメタクリルアミド、N−イソブトキシメチルメタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド等を、単独または2種類以上を併用して用いることができる。
【0030】
これらの中でも特に、アミノ基および/またはアミド基を有し、水酸基を有せず、N−ビニルアセトアミドでないモノマー(a4)としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよび/またはN−アクリロイルモルホリンが好ましい。N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよび/またはN−アクリロイルモルホリンは、入手が容易である上、アクリル系樹脂(A)の親水性が向上するため、好ましい。
【0031】
アクリル系樹脂(A)は、共重合体のモノマー単位に含まれるアミノ基および/またはアミド基を有するモノマーが、N−ビニルアセトアミド(a2)のみであることが好ましい。この場合、親水性と疎水性のバランスのとれた、化学的に安定なアクリル系樹脂(A)となる。
【0032】
アクリル系樹脂(A)の分子量は、特に制限されないが、重量平均分子量(Mw)で5万〜200万であることが好ましい。アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量の測定には、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)などを用いることができる。
【0033】
「イソシアネート系架橋剤(B)」
イソシアネート系架橋剤(B)としては、2つ以上のイソシアナト基などの官能基、例えば2つまたは3つのイソシアナト基を有するポリイソシアネートが挙げられる。また、イソシアネート系架橋剤(B)は、イソシアネート、または熱などの作用によりイソシアナト基に変換できる官能基、から選ばれた二つ以上の官能基を持つ化合物であってもよい。こうした化合物としては、従来の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び芳香族のイソシアネートが含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
イソシアネート系架橋剤(B)としては、具体的には、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマーなどが挙げられる。
イソシアネート系架橋剤(B)としては、上記のイソシアネートモノマーに、トリメチロールプロパンなどを付加反応させたイソシアネート化合物、イソシアヌレート化物にポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどを付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどを用いてもよい。
上記のイソシアネート系架橋剤(B)の中でも特に、入手の容易性と、反応性の高さから、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート三量体が好ましい。
【0035】
本実施形態の粘着剤組成物では、アクリル系樹脂(A)100質量部に対するイソシアネート系架橋剤(B)の含有量は0.05〜5質量部であり、0.1〜1質量部であることが望ましい。アクリル系樹脂(A)100質量部に対するイソシアネート系架橋剤(B)の含有量が0.05質量部未満であると、イソシアネート系架橋剤(B)による架橋効果が、十分に発揮されない。一方、アクリル系樹脂(A)100質量部に対するイソシアネート系架橋剤(B)の含有量が5質量部を超えると、粘着剤組成物を硬化させた硬化物の柔軟性が不十分となる。
【0036】
(粘着剤組成物の製造方法)
次に、本実施形態の粘着剤組成物の製造方法について説明する。
「アクリル系樹脂(A)を製造する工程」
本実施形態の粘着剤組成物の製造方法では、まず、アクリル系樹脂(A)を製造する工程を行う。この工程では、上述した少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを含み、かつ、水酸基を有するモノマー(a1)とN−ビニルアセトアミド(a2)とを含む単量体成分(I)を共重合して、アクリル系樹脂(A)を製造する。水酸基を有するモノマー(a1)が(メタ)アクリロイル基を有するモノマーである場合には、単量体成分(I)として、水酸基を有するモノマー(a1)とN−ビニルアセトアミド(a2)だけを使用してもよい。
【0037】
単量体成分(I)に使用するN−ビニルアセトアミド(a2)は、既知文献に記載の合成方法を用いて合成できる。しかし、一般的な合成方法により合成したN−ビニルアセトアミドを使用すると、N−ビニルアセトアミドに混入している不純物によって重合が阻害されて、好ましいアクリル系樹脂(A)が得られない場合がある。そのため、単量体成分(I)に使用するN−ビニルアセトアミド(a2)としては、重合を阻害する不純物が少なく、重合性の良い市販のN−ビニルアセトアミド(昭和電工株式会社製)を用いることが望ましい。
【0038】
アクリル系樹脂(A)を製造する工程においては、単量体成分(I)中の水酸基を有するモノマー(a1)の含有量を20質量%以上とし、単量体成分(I)中の前記N−ビニルアセトアミド(a2)の含有量を0.5〜5質量%とする。
【0039】
単量体成分(I)は、水酸基を有するモノマー(a1)と、N−ビニルアセトアミド(a2)に加えて、上述した他のモノマーを含んでいてもよい。
単量体成分(I)が、他のモノマーとしてアミノ基および水酸基を有しない(メタ)アクリルエステル(a3)を含む場合、単量体成分(I)中の含有量を30〜79質量%とすることが好ましく、40〜75質量%とすることがより好ましい。
単量体成分(I)が、他のモノマーとしてアミノ基および/またはアミド基を有し、水酸基を有せず、N−ビニルアセトアミドでないモノマー(a4)を含む場合、単量体成分(I)中の含有量を5質量%以下とすることが好ましい。
【0040】
単量体成分(I)中のアミノ基および/またはアミド基を有するモノマーは、N−ビニルアセトアミド(a2)のみであることが好ましい。
【0041】
本実施形態において単量体成分(I)を共重合する方法としては、溶液重合、滴下重合、逆相懸濁重合、乳化重合、沈殿重合等の一般的な重合法を使用できる。これらの中でも特に、単量体成分(I)を共重合する方法としては、簡便な方法である溶液重合が好ましい。
単量体成分(I)を、溶液重合を用いて共重合する方法としては、例えば、溶媒に単量体成分(I)を溶解した溶液に重合開始剤を加えて混合液とし、混合液を昇温して重合反応を行う方法が挙げられる。
【0042】
単量体成分(I)を共重合する際に用いる重合開始剤としては、従来公知のものを単独で使用でき、2種以上を組合せて使用してもよい。具体的には、重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド・ラウロイルパーオキサイドなどの各種過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられる。
単量体成分(I)を共重合する際に用いる溶媒としては、酢酸メチル・酢酸エチルなどのエステル類、ベンゼン・トルエン・キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトン・メチルエチルケトン・メチルイソブチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0043】
また、単量体成分(I)を、滴下重合を用いて共重合する方法としては、例えば、上記の重合開始剤を溶解させた溶液を35〜75℃に昇温し、温度の調整された溶液中に単量体成分(I)を経時滴下する方法が挙げられる。
【0044】
「アクリル系樹脂(A)とイソシアネート系架橋剤(B)とを混合する工程」
次に、上記のアクリル系樹脂(A)を製造する工程により得られたアクリル系樹脂(A)と、イソシアネート系架橋剤(B)と、必要に応じて添加される溶媒とを、アクリル系樹脂(A)100質量部に対するイソシアネート系架橋剤(B)の含有量が0.05〜5質量部となるように混合する。
アクリル系樹脂(A)とイソシアネート系架橋剤(B)とを混合する工程において用いる溶媒としては、単量体成分(I)を共重合する際に用いる溶媒と同じものを用いることができる。
【0045】
アクリル系樹脂(A)として、溶液重合により調製したものを用いる場合、重合完了後のアクリル系樹脂(A)を含む溶液にイソシアネート系架橋剤(B)を添加する方法により、アクリル系樹脂(A)とイソシアネート系架橋剤(B)とを混合することが好ましい。
以上の工程により、本実施形態の粘着剤組成物が得られる。
【0046】
本実施形態の粘着剤組成物は、モノマー単位として、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを含み、かつ、20質量%以上の水酸基を有するモノマー(a1)と、0.5〜5質量%のN−ビニルアセトアミド(a2)とを含むアクリル系樹脂(A)と、イソシアネート系架橋剤(B)とを所定量含む。このため、本実施形態の粘着剤組成物は、様々な材料からなる被接着物に対して良好な接着性を有する。具体的には、本実施形態の粘着剤組成物は、例えば、以下に示す被接着物に対して優れた粘着性を有する。
【0047】
被接着物としては、ガラス、樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリシクロオレフィンフィルムなどが挙げられる。
【0048】
また、本実施形態の粘着剤組成物は、エチレン性不飽和結合を有する反応性モノマーを成分として含まないことが好ましい。その場合の粘着剤組成物は、エチレン性不飽和結合を有する反応性モノマーを成分として含む粘着剤組成物と比較して、容易に保存安定性を確保できる。
【0049】
また、本実施形態の粘着剤組成物は、常温又は加熱下で架橋反応させることにより、硬化物を形成するので、熱硬化可能な組成物である。本実施形態の粘着剤組成物の硬化物は、高温高湿下で使用しても白濁しにくく、優れた耐湿熱性を有する。
一方、本実施形態の粘着剤組成物は、紫外線(UV)等の活性エネルギー線では硬化させることが困難な場合がある。例えば、アクリル系樹脂(A)とイソシアネート系架橋剤(B)とを含む本実施形態の粘着剤組成物に、さらに水酸基を有するモノマー(a1)とN−ビニルアセトアミド(a2)と(メタ)アクリロイル基を有するモノマーとを添加した混合物は、UV等の活性エネルギー線を照射しても、硬化性樹脂部分の硬化反応が充分に進まず、目的とする粘着力や耐湿熱性等の効果が得られない場合がある。
【0050】
本発明の粘着剤組成物およびその製造方法は、上述した実施形態に限定されない。
例えば、上述した実施形態においては、アクリル系樹脂(A)とイソシアネート系架橋剤(B)と必要に応じて添加される溶媒とを混合することにより粘着剤組成物を製造した。しかし、本発明の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)と、イソシアネート系架橋剤(B)に加えて、他の粘着付与樹脂を含有していてもよい。このような粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)とイソシアネート系架橋剤(B)とを混合する工程において、アクリル系樹脂(A)とイソシアネート系架橋剤(B)と他の粘着付与樹脂と必要に応じて添加される溶媒とを混合する方法により製造できる。他の粘着付与樹脂としては、例えば、キシレン樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、フェノール樹脂、ロジンないしロジン変性樹脂などが挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、以下に示す実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中に記載の「部」「%」は、質量基準を意味する。
【0052】
(アクリル系樹脂A−1〜A−8の調整)
還流冷却器、攪拌器、窒素ガスの吹込み管、及び温度センサーをセットした三口ジャケットつき平底セパラブルフラスコを用意した。その平底セパラブルフラスコに、酢酸エチル(表1中の酢酸エチル(1))110部及びアセトン22.5部を仕込み、撹拌、窒素脱気をしながら65℃まで昇温した。窒素脱気を開始してから一時間後、酢酸エチル(表1中の酢酸エチル(2))0.5部に、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.05部溶解させた溶液を、シリンジを用いて平底セパラブルフラスコに投入した。
【0053】
重合開始剤を含む溶液を投入したおよそ5分後から2時間かけて、表1に示す単量体成分(I)からなる混合物100部を、平底セパラブルフラスコに滴下した。混合物の滴下が終了した1分後から70℃で30分かけて、撹拌を継続しながら、酢酸エチル(表1中の酢酸エチル(3))を表1に示す添加量で平底セパラブルフラスコに滴下(追加添加)した。そのまま70℃にて撹拌を継続したまま1.5時間反応させ、A−1〜A−8のアクリル系樹脂を含む溶液を得た。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示す「BA」「HEA」「DMAEA」「NVA」はそれぞれ下記に示す化合物である。
BA:n−ブチルアクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
DMAEA:N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート
NVA:N−ビニルアセトアミド(昭和電工株式会社製)
【0056】
このようにして得られたA−1〜A−8のアクリル系樹脂を含む溶液の粘度を、以下に示す装置を用いて、以下に示す条件で測定した。その結果を表1に示す。粘度の単位は、mPa・sである。
(粘度測定方法)
装置:HADV−E(ブルックフィールド社製)
使用したスピンドル:HA No.7
回転数:50rpm
粘度は、製造したアクリル系樹脂を含む溶液を冷却し、溶液温度が温度20℃で5分間安定して経過した時点で測定した。
表1に示すように、N−ビニルアセトアミドを10質量部含むA−8では、アクリル系樹脂を含む溶液の粘度が、160000超であり測定できなかった。
【0057】
また、A−1〜A−2のアクリル系樹脂を含む溶液に含まれるアクリル系樹脂の分子量を、以下に示す装置を用いて以下に示す条件で測定した。その結果を表1に示す。
表1に示す「Mn」は数平均分子量であり、「Mw」は重量平均分子量である。
【0058】
(分子量測定方法)
装置(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)):ポンプ(PU−2080Plus)、オーブン(CO−2065Plus)、サンプラー(AS−2065)、検出器(RI−2031)(何れも日本分光株式会社製)
カラム:shodex LF−804×3(商品名:昭和電工社製)
条件:溶媒THF(テトラヒドロフラン)、測定温度40℃
【0059】
(実施例1〜3、比較例1〜4)
A−1〜A−7のアクリル系樹脂を含む溶液と、以下に示すイソシアネート系架橋剤(B)と、酢酸エチル(表2中の酢酸エチル(4))とを、表2に示す割合で配合し、以下に示す混合装置を用いて、以下に示す方法で混合し、実施例1〜3、比較例1〜4の粘着剤組成物を得た。
イソシアネート系架橋剤(B)としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート三量体(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHX」)を用いた。
混合装置としては、あわとり練太郎(商品名:ARE−300、(株)シンキー社製)を用いた。混合方法としては、2000rpmで60秒間撹拌した後、2200rpmで60秒間脱泡する方法を実施した。
【0060】
次に、実施例1〜3、比較例1〜4の粘着剤組成物を用いて、以下に示す方法により評価用シートを製造した。
(評価用シートの作製)
厚み75μmの重剥離型PETフィルム(HY−S−10(東山フィルム製))上に、厚み300μmのアプリケーターを用いて粘着剤組成物を塗工した。次いで、粘着剤組成物の塗工された重剥離型PETフィルムを、室温にて5分間乾燥させ、オーブンを用いて50℃で5分間、80℃で10分間、110℃で10分間乾燥させた。その後、乾燥した粘着剤組成物上に、厚み75μmの軽剥離型PETフィルム(E7006(東洋紡製))を貼りあわせ、40℃で10日養生した。
以上の工程により、重剥離型PETフィルムと軽剥離型PETフィルムの間に、粘着剤組成物の硬化物からなる粘着剤層を有する評価用シートを得た。
【0061】
次に、実施例1〜3、比較例1〜4の評価用シートを用いて、以下に示す方法により、粘着剤層の耐湿熱性と接着性とを調べた。
(耐湿熱性試験)
評価用シートを30mm×30mmの大きさに裁断し、軽剥離型PETフィルムを剥離して、評価用シートの粘着剤層側をガラス板(コーニング1737(コーニング社製))に貼り合わせた。その後、オートクレーブ処理(40℃、0.5MPa、15分)を行なって、ガラス板と粘着剤層と重剥離型PETフィルムとがこの順に積層された試験片を得た。該試験片を用いて、温度85℃、相対湿度85%の雰囲気下で200時間の耐湿熱性試験を行った。耐湿熱性試験後の試験片について、以下に示す方法によりヘイズ値を算出し、下記の基準で評価した。その結果を表2に示す。
【0062】
ヘイズ値は、濁度計(NDH5000(日本電色工業株式会社))を用いて、拡散透過率と全光線透過率とを測定し、その結果を下記式に代入して算出し、評価した。
ヘイズ値(%)=(拡散透過率/全光線透過率)×100
(評価)
○・・・耐湿熱性試験後のヘイズ値が3.0未満
×・・・耐湿熱性試験後のヘイズ値が3.0以上
【0063】
(粘着力試験)
評価用シートを25mm×130mmの大きさに裁断し、軽剥離型PETフィルムを剥離して、評価用シートの粘着剤層側を以下に示す試験対象物に貼り合わせた。評価用シートの試験対象物への貼り合わせは、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で1kgのゴムローラーを10往復させて加圧貼付し、同雰囲気下で30分放置する方法により行った。その後、以下に示す測定機器を用いて剥離速度200mm/minで評価用シートの180度剥離強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0064】
(試験対象物)
PC(ポリカーボネート):住友ベークライト社製、ポリカエースECK100UU
ガラス板:コーニング社製、コーニング1737
PET(ポリエチレンテレフタレート):東洋紡(株)製、コスモシャインA4100
COP(シクロオレフィンポリマー):日本ゼオン(株)製、ゼオノアZF14−100
PMMA(ポリメチルメタクリレート):住化アクリル販売(株)製、テクノロイS001G
TAC(セルローストリアセテート):富士フィルム(株)製、フジタック80μm(測定機器)
テンシロン万能試験機(株式会社オリエンテック社製、PM−100)
【0065】
【表2】
【0066】
各試験対象物の粘着力試験の結果について、比較例1の粘着力を1とした時の実施例1の粘着力を算出した。その結果を表3に示す。
各試験対象物の粘着力試験の結果について、比較例4の粘着力を1とした時の実施例2、3、比較例2、3の粘着力を算出した。その結果を表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
表2に示すように、実施例1、比較例1の粘着剤層は、いずれも耐湿熱性試験後のヘイズ値が十分に低く、耐湿熱性が良好であった。
また、表2〜表3に示すように、実施例1の粘着剤層は、全ての試験対象物において粘着力試験の結果が0.80(N/25mm)以上となり、全ての試験対象物に対して良好な接着性を有していた。特に、実施例1の粘着剤層では、PC、PMMA、ガラス、PETにおける粘着力試験の結果が1.50(N/25mm)以上であり、接着性が良好であった。
【0069】
これに対し、N−ビニルアセトアミドを含まない単量体成分(I)を用いた比較例1の粘着剤層は、COPを除く全ての試験対象物の粘着力試験の結果が0.80(N/25mm)未満であり、接着性が不十分であった。
【0070】
表2に示すように、実施例2および実施例3、比較例2〜4では、アクリル系樹脂(A)100質量部に対するイソシアネート系架橋剤(B)の含有量が同じである。
実施例2および実施例3の粘着剤層は、いずれも耐湿熱性試験後のヘイズ値が十分に低く、耐湿熱性が良好であった。
これに対し、アクリル系樹脂(A)にモノマー単位として含まれる水酸基を有するモノマー(a1)が少ない比較例2では、耐湿熱性試験後のヘイズ値が高く、耐湿熱性が不十分であった。
【0071】
また、表2〜表3に示すように、実施例2および実施例3の粘着剤層は、全ての試験対象物における粘着力試験の結果が、アクリル系樹脂(A)にモノマー単位として含まれる水酸基を有するモノマー(a1)が少ない比較例3およびN−ビニルアセトアミドを含まない単量体成分(I)を用いた比較例4以上であり、良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本実施形態の粘着剤組成物は、ガラス、各種樹脂材料など様々な材料からなる被接着物に対して良好な接着性を有する。また、本実施形態の粘着剤組成物の硬化物は、高温高湿下で使用しても白濁しにくく、優れた耐湿熱性を有する。
よって、本実施形態の粘着剤組成物は、携帯電話、カーナビゲーション装置、パソコン用モニタ、テレビなどの画像表示装置に用いられる偏光板、位相差板、ガラス板を貼り合わせる用途に、特に有用である。