特許第6883576号(P6883576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファーマフィルター・ベー・フェーの特許一覧

<>
  • 特許6883576-汚水ピット 図000002
  • 特許6883576-汚水ピット 図000003
  • 特許6883576-汚水ピット 図000004
  • 特許6883576-汚水ピット 図000005
  • 特許6883576-汚水ピット 図000006
  • 特許6883576-汚水ピット 図000007
  • 特許6883576-汚水ピット 図000008
  • 特許6883576-汚水ピット 図000009
  • 特許6883576-汚水ピット 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883576
(24)【登録日】2021年5月12日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】汚水ピット
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/10 20060101AFI20210531BHJP
   E03F 5/22 20060101ALI20210531BHJP
   E03F 5/14 20060101ALI20210531BHJP
   C02F 11/02 20060101ALI20210531BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20210531BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20210531BHJP
   A61G 12/00 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   E03F5/10 A
   E03F5/22
   E03F5/14
   C02F11/02ZAB
   B09B3/00 Z
   B09B3/00 304Z
   B09B3/00 304H
   B09B3/00 A
   B09B5/00 L
   B09B5/00 Z
   A61G12/00 W
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-523731(P2018-523731)
(86)(22)【出願日】2016年7月21日
(65)【公表番号】特表2018-525553(P2018-525553A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】NL2016050547
(87)【国際公開番号】WO2017014636
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2019年7月22日
(31)【優先権主張番号】2015201
(32)【優先日】2015年7月21日
(33)【優先権主張国】NL
(31)【優先権主張番号】2016583
(32)【優先日】2016年4月11日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】518023038
【氏名又は名称】ファーマフィルター・ベー・フェー
【氏名又は名称原語表記】PHARMAFILTER B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】エデュアルド・アレクサンデル・ファン・デン・ベルフ
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−077697(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/097204(WO,A1)
【文献】 特開2002−126719(JP,A)
【文献】 特開平07−207744(JP,A)
【文献】 特開平09−000964(JP,A)
【文献】 特開平08−108171(JP,A)
【文献】 特開2011−125865(JP,A)
【文献】 特開2000−317483(JP,A)
【文献】 特開平06−240736(JP,A)
【文献】 特表2010−538809(JP,A)
【文献】 特開2013−199839(JP,A)
【文献】 米国特許第03897600(US,A)
【文献】 独国実用新案第08903057(DE,U1)
【文献】 国際公開第2009/035317(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/069772(WO,A1)
【文献】 米国特許第07082952(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/00−5/22
E03F 1/00
A61G 12/00
B09B 1/00−5/00
B09C 1/00−1/10
C02F 11/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体及び固体成分を含む廃棄物を受け入れて、下水道に放出する汚水ピットであり、
容スペースを有する開閉可能なハウジングであって、当該ハウジングの一以上の壁部に、前記受容スペース内に前記廃棄物を運ぶ少なくとも一の導入口、前記廃棄物を懸濁するべく、前記受容スペースへの洗浄液の供給を実行する洗浄液供給口、ならびに、前記下水道に接続されることができて、廃棄物と洗浄液の混合物を前記受容スペースから前記下水道に放出する少なくとも一の排出口を設けたハウジングと、
懸濁された前記混合物を前記受容スペースからくみ上げて、前記混合物を一以上の前記排出口を介して放出する、一以上の前記排出口に接続可能な又は接続された少なくとも一のポンプと
を備え
前記受容スペースの下方側に形成されて、前記洗浄液とともに、供給された廃棄物を少なくとも部分的に旋回運動させ始める受容表面を備え、
前記受容表面が、受容板で形成されるとともに、前記受容スペースに傾斜させて取り付けることができ又は取り付けられており、前記洗浄液供給口が、前記受容板の上方側の前記受容表面に斜面方向の下方側に沿う洗浄液の流れを可能にするべく構成され、
前記洗浄液は水の形態をなす汚水ピット。
【請求項2】
前記洗浄液供給口が、スプレーノズルを設けた一以上の供給管を備え、前記スプレーノズルが、洗浄液を受容表面上に及び/又は受容表面に斜面方向の下方側に沿って噴霧できるように配置される請求項に記載の汚水ピット。
【請求項3】
前記受容表面が、相対的に高い位置で斜めに配置された平坦な第一表面部と、前記第一表面部よりも相対的に低い位置に配置された凹状の第二表面部とを備える請求項1又は2に記載の汚水ピット。
【請求項4】
前記洗浄液供給口が、前記第一表面部から前記第二表面部の方向で、前記第一表面部上に及び/又は第一表面に沿って、洗浄液を下方側へ案内するべく構成される請求項に記載の汚水ピット。
【請求項5】
前記第二表面部は湾曲部である請求項3又は4に記載の汚水ピット。
【請求項6】
懸濁された前記混合物が、前記受容表面に近い位置から離れてくみ上げられる請求項1〜のいずれか一項に記載の汚水ピット。
【請求項7】
前記ポンプ用の吸入口が、前記受容表面の前記第二表面部上で、前記第二表面部ら2mより短い距離に配置される請求項に記載の汚水ピット。
【請求項8】
前記受容表面と縦向きの壁部との間の傾斜角度(α)が、30〜80度の間になる請求項1〜のいずれか一項に記載の汚水ピット。
【請求項9】
前記洗浄液供給口が、家庭の主水供給源に接続可能であり又は接続される請求項1〜のいずれか一項に記載の汚水ピット。
【請求項10】
前記ハウジングが、コンクリートから製造される請求項1〜のいずれか一項に記載の汚水ピット。
【請求項11】
液体及び固体成分を含む廃棄物を、建物内で破砕するとともに移送する廃棄物処理システムであり、
前記建物内に配置されて、供給される廃棄物を破砕する一以上の破砕装置
一方側が一以上の前記破砕装置の一以上の放出部に接続されるとともに、他方側が、下水道に接続され又は接続可能な請求項1〜10のいずれか一項に記載の汚水ピットの少なくとも一つに接続されて、破砕された前記廃棄物を少なくとも一の前記汚水ピットに移送する導管システム
を備え、さらに任意に、
前記導管システム内に配置され、前記導管システム内で移送される前記廃棄物を、少なくとも第一廃棄物部分と第二廃棄物部分とに分離して、前記第一廃棄物部分のみを前記汚水ピットに運ぶ一以上の分離装置及び/又は、
前記導管システム内に配置され、前記導管システム内で移送される前記廃棄物の少なくとも一の廃棄物部分を浄化する一以上の浄化装置及び/又は、
前記導管システム内に配置され、前記導管システム内で移送される前記廃棄物の少なくとも一の廃棄物部分を発酵させる一以上の発酵槽
を備える廃棄物処理システム。
【請求項12】
液体及び固体成分を含む廃棄物を、汚水ピット内に受け入れて、当該廃棄物を下水道に放出する方法であり、
請求項1〜11のいずれか一項に記載したように、汚水ピットの受容スペース内に廃棄物を供給することと、
前記受容スペース内に洗浄液を供給し、前記固体成分を懸濁させるべく、前記洗浄液を、供給された廃棄物と混合させることと、
洗浄液と廃棄物の懸濁液を、前記受容スペースから放出することと
を含む方法。
【請求項13】
前記放出することが、前記受容スペースの下方側で実現される洗浄液と廃棄物の前記懸濁液をくみ上げることを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記廃棄物の前記固体成分を懸濁させるべく、供給された洗浄水と廃棄物を旋回運動させ始めることを含む請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記受容表面上に受け入れられた前記廃棄物を下向きの方向に変位させるべく、洗浄水を前記受容スペースの下部に設けた傾斜した受容表面に沿って斜面方向の下向きに運ぶことを含む請求項1213又は14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも一の受容表面部に受け入れられる廃棄物を、旋回運動させ始めるべく、まず洗浄水を、傾斜した受容表面部に沿って斜面方向の下向きに運び、その後、前記洗浄水を、窪んだ受容表面部に沿って、傾斜した受容表面部から窪んだ受容表面部への方向に運ぶことを含む請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物、特に、液体及び固体成分を含む家庭、医療及び/又は産業廃棄物等を受け入れて、下水設備に放出する汚水ピット及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院廃棄物を処理する既知のシステムでは、廃棄物は、病院内の多様な場所で受け取られて、人手により中央貯蔵場所及び処理場に運ばれている。特許文献1には、改良されたシステムについて記載されている。この後者のシステムでは、たとえば、室内用便器といった容器内の糞尿等からなる病院廃棄物の破砕及び、当該廃棄物のさらなる処理の実行に適した多数の破砕装置を使用する。破砕された病院廃棄物は導管で分離装置へ運ばれ、ここでは、破砕された容器の材料から実際の病院廃棄物が分離される。既知のシステムはさらに、一以上の洗浄装置及び/又は浄化装置を備え、これにより、廃棄物をさらに洗浄及び/又は浄化することができる。洗浄・浄化された廃棄物はその後、このシステムを介して、公共下水設備(ここでは下水道ともいう。)に案内されて放出される。
【0003】
既知のシステムにおける導管システムが、下水道の下水道管に直接的に接続されており、破砕された廃棄物が、これらの下水道管を経て直接的に放出される必要がある場合、特に、破砕装置の破砕の質及び/又は、廃棄物の組成に依存する、下水道の閉塞というリスクがある。導管システムを、病院の周辺地域の地中に配置された汚水ピットに接続することも必要に応じて可能である。そのような汚水ピット(汚水槽または検査井戸ともいう。)は、下水設備内での検査の実施を可能にし、さらに、生じ得る閉塞を除去する選択肢を与える。たとえば、検査井戸を定期的に洗浄することも可能であるが、このことは、追加コスト及び不便さを必然的に伴うことが明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2188069号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した問題に関し、本発明の目的は、固体及び液体成分からなる廃棄物を、確実な方法で下水道に放出することができる廃棄物を放出する汚水ピット及び/又は方法を提供することにある。また、本発明の目的は、閉塞の可能性を低減する汚水ピット及び方法を提供することにある。また、本発明の目的は、建物内で発生するそのような廃棄物を迅速に、確実に及び/又は効果的な方法で処理し、下水道に運ぶことに適した廃棄物処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一側面では、上記の目的の少なくとも一つ及び/又は他の目的を達成する汚水ピットは、廃棄物、特に、液体及び固体成分を含む家庭、医療及び/又は産業廃棄物を受け入れて、下水道に放出するものであり、該汚水ピットは、
開閉可能な受容スペースを有するハウジングであって、当該ハウジングの一以上の壁部に、前記受容スペース内に前記廃棄物を運ぶ少なくとも一の導入口、前記廃棄物を懸濁するべく(for bringing the waste material into suspension)、前記受容スペースへの洗浄液の供給を実行する洗浄液供給口、ならびに、前記下水道に接続されることができて、廃棄物と洗浄液の混合物を前記受容スペースから前記下水道に放出する少なくとも一の排出口が設けられたハウジングと、
懸濁された前記混合物を前記受容スペースからくみ上げて、前記混合物を一以上の前記排出口を介して放出する、一以上の前記排出口に接続可能な又は接続された少なくとも一のポンプと
を備えるものである。
【0007】
少なくとも一の前記導入口、前記洗浄液供給口及び少なくとも一の前記排出口が配置された前記壁部は、確定した実施形態では、一以上の側壁部とすることができるが、他の実施形態では、上壁部、たとえばピットカバーに、少なくとも一の導入口、洗浄液供給口及び排出口を配置することも可能である。
【0008】
洗浄液の供給により、廃棄物、特にその固体成分は、(より一層)懸濁されることができる。これによって、廃棄物をより一層放出することができ、及び/又は、閉塞の可能性は相対的に低くなる。
【0009】
汚水ピットはブロック状のものとすることができ、この場合、当該ピットは、四つの縦向きの側壁部及び、横向きのコンクリート製の下壁部もしくは床を備える。他の実施形態も当然ながら可能であり、たとえば、実質的にシリンダー型の実施形態がある。上部は、開くことのできるアクセス用ハッチを設けた上壁部で閉じられたものとすることができる。汚水ピットはさらに、全体的に又は部分的に地中に配置され、その中に支持されるものとして具現化される。汚水ピットは、異なる材料、たとえばプレハブのコンクリート又はプラスチック(PE、PVCもしくはGRP)等からなるものとすることができる。
【0010】
汚水ピットの排出口は、(ピットの及びそれによる地中の高さ、放出管の径等の観点から)好ましくは、地中にある下水道管に直接的に、好適にはさらなる技術的手段なしで接続されるように構成される。
【0011】
汚水ピットは、好ましくは、受容スペースの下部に形成されて、供給された廃棄物を洗浄液とともに少なくとも部分的に旋回運動させ始める受容表面を備える。供給された廃棄物は、受容表面上に、たとえばその固体成分が当該面上に沈殿するように受け取られることができる。受容表面に沿って噴霧液を案内することにより、受容された廃棄物は動き出すことができ、それにより、固体成分は再度、液体成分及び/又は噴霧液中に懸濁する傾向にある。
【0012】
確定した実施形態では、受容表面は汚水ピットの基部で形成される。他の実施形態では、受容表面は受容板、たとえば鋼板で形成される。受容表面は、確定した実施形態において、より具体的には受容板、特に鋼製受容板で形成され、これは、受容スペース内に実質的に斜めに取り付けることができ、又は取り付けられる。ここでは、洗浄液供給口は、受容板の上部に沿って洗浄液が流れることを可能にするよう構成される。固体成分は、このようにして決められた側に移動させられて、そこで旋回運動し始めることができる。
【0013】
確定した実施形態では、受容表面と縦向きの壁部との間の傾斜角度(α)は、30〜80度の間であり、好ましくは40〜60度の間である。
【0014】
洗浄液供給口は、スプレーノズルが設けられた一以上の供給管を備えることができ、ここでは、スプレーノズルは、洗浄液を、受容表面上に及び/又はそれに沿って噴霧することができるように配置される。供給管は、必要に応じて、一般的な家庭の主水供給源(standard domestic mains water supply)に直接的に又は間接的に接続することができる。供給する洗浄液の圧力は、必要に応じて、たとえば一以上のポンプによりさらに増加させるが、これは、いかなる場合も必要というわけではない。
【0015】
さらなる実施形態では、上記の受容表面は、高い位置に実質的に斜めに配置された第一平滑受容表面部と、低い位置に配置されたほぼ凹状の第二受容表面部とを備える。当該凹状(窪み)の態様は、好ましくは、それに沿って流れる噴霧液及び廃棄物の混合物が旋回運動し始めるようなものとして、ここでは具現化される。洗浄液供給口は、洗浄液を、第一表面部上で及び/又はそれに沿って第二表面部の方向に案内するものとして、ここでは構成される。
【0016】
混合物は、(さらに)懸濁されると除去されて下水道に放出されることができる。懸濁された混合物は、好ましくは、受容表面に近接する位置、たとえば、凹状の受容表面部に対して2m未満の位置又は、それから1m未満でも位置から離れて、くみ上げられることができる。当該凹状部分に近接する領域では、混合物が懸濁される可能性が比較的高く、また廃棄物が適切に放出される可能性が比較的高い。
【0017】
本発明の他の側面では、汚水ピットは、廃棄物処理システムの一部をなす。そのようなシステムの例は、欧州特許出願公開第2188069号明細書に記載されており、その内容は全体として、ここに組み込まれるとみなされるべきである。確定した実施形態では、廃棄物処理システムは、建物内、特にケア施設又は空港内での廃棄物、特に液体及び固体成分を含む家庭、医療及び/又は産業廃棄物の破砕及び移動のために設けられるものであり、当該廃棄物処理システムは、
前記建物内の異なる場所に配置されて、供給される廃棄物を破砕する一以上の破砕装置、
一方側が、一以上の前記破砕装置の一以上の放出部に接続されるとともに、他方側が、下水道に接続された又は接続可能な少なくとも一の汚水ピットに接続され、破砕された前記廃棄物を少なくとも一の前記汚水ピットに移送する導管システム、
前記導管システム内に配置され、前記導管システム内で移送される前記廃棄物を、少なくとも第一廃棄物部分と第二廃棄物部分とに分離して、前記第一廃棄物部分のみを前記汚水ピットに運ぶ一以上の分離装置及び/又は、
前記導管システム内に配置され、前記導管システム内で移送される前記廃棄物の少なくとも一の廃棄物部分を浄化する一以上の浄化装置及び/又は、
前記導管システム内に配置され、前記導管システム内で移送される前記廃棄物の少なくとも一の廃棄物部分を発酵させる一以上の発酵槽
を備えるものである。
【0018】
一以上の汚水ピットを廃棄物処理システムに追加することにより、建物内で発生する廃棄物のより効果的で確実な処理(すなわち加工及び移送)を実現することができ、当該システム内及び/又は、当該システムに接続された下水道内の閉塞の可能性は比較的低くなる。
【0019】
本発明のさらに他の側面では、廃棄物、特に、液体及び固体成分を含む家庭、医療及び/又は産業廃棄物を、汚水ピット内に受け入れて、当該廃棄物を下水道に放出する方法であり、
汚水ピットの受容スペース内に廃棄物を供給することと、
前記受容スペース内に洗浄液を供給し、前記固体成分を懸濁させるべく、前記洗浄液を、供給された廃棄物と混合させることと、
前記洗浄液と前記廃棄物の懸濁液を、前記受容スペースから放出することと
を備えるものを提供する。
【0020】
いくつかの実施形態では、廃棄物を運動させ始め、及び/又は懸濁することだけが行われる。他の実施形態でも、廃棄物を旋回運動させ始め、これは、懸濁し始める廃棄物の固体成分の処理を促進させる。廃棄物を旋回運動させることは、様々な方法により実現することができる。有利な実施形態では、該方法は、この目的のため、洗浄水を受容スペースの下部に設けた傾斜受容表面に沿って運ぶことを備える。このことは、受容表面上に受け入れられた廃棄物の下向きの変位をもたらす。その後、まず傾斜した受容表面部に沿って洗浄水を運ぶこと、次いで実質的に窪んだ受容表面部に沿って洗浄水を運ぶことにより、変位された廃棄物を旋回運動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に従う汚水ピットの実施形態の部分断面斜視図である。
図2図1の汚水ピットの下部のさらなる断面斜視図である。
図3】本発明の実施形態に従う汚水ピットの平面図である。
図4】汚水ピットの図3のA−A軸に沿う断面図である。
図5図3のB−Bに沿う断面図である。
図6図5のC−Cに沿う断面図である。
図7図4のD−Dに沿う断面図である。
図8】生物分解が不可能な容器を有する廃棄物とともに使用するための廃棄物処理システムの第一変形例の概略図である。
図9】生物分解が可能な容器を有する廃棄物とともに使用するための廃棄物処理システムの第二変形例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照しながら、本発明のいくつかの実施形態について説明し、それにより、本発明の利点、構成及び詳細を明らかにする。
【0023】
ここで述べる汚水ピットが接続されることができる廃棄物処理システムの例は、欧州特許出願公開第2859952号明細書に記載されており、その内容は、ここに組み込まれたものとみなされるべきである。この特許出願公開明細書及び、添付図面の図8を参照して、本発明の実施形態に従う廃棄物処理システムの例について説明する。廃棄物処理システム41は、たとえば、ケア施設(病院、介護施設または老人ホーム等)、空港ターミナル、オフィスビル、スタジアム等のような建物内に利用することができ、このようなところでは、多くの異なる場所で廃棄物の流れが発生する。これらの廃棄物の流れは、ここでは多かれ少なかれ液体であり、それ故に、それらは導管システムを介して、たとえば、ここで述べる形態の汚水ピット60等へと放出された後、公共下水設備52に放出することができる。廃棄物の流れのなかには、液体物質に加えて、固体物質(多様な大きさ、物体の粒子等)も存在することがある。ケア施設でのケアの過程では、たとえば、糞等の廃棄物が発生し、この廃棄物は、容器(室内用便器)内に放出されることがあり、その内部に廃棄物が存在する。ここでは、廃棄物の流れは、固体物質(容器)と液体物質(糞)からなる。空港の場合、廃棄物の流れはまた、固体物質(たとえば食品パッケージ等)と液体物質(糞、洗浄水等)からなることがある。
【0024】
図8に示す実施形態は、多くの導入口ユニット42を備えるものであり、ここに廃棄物が存在し得る。導入口ユニットは、建物内の異なる場所、たとえばケア施設の全バスルーム内等に配置される。二つの導入口ユニットが図示されているが、この数は勿論、少なくし、又は(さらに)多くすることもできる。導入口ユニット42は、図示の実施形態では、内部に破砕装置44が配置されたハウジング43を備える。この破砕装置44は、廃棄物内に存在し得る固体物質を細かく破砕するため、導入口ユニット内に設けられる。破砕装置を有する導入口ユニットに代えて、又はそれに加えて、導入口ユニットは、そのような破砕装置が配置されないものとして実現することもできる。これらの実施形態では、他の場所(つまり導入口ユニットの外部)で廃棄物を破砕し、または、たとえば廃棄物の流れが固体物質を有しない場合等には、破砕プロセスは必要ではない。
【0025】
そのような破砕装置のより具体的な例は、欧州特許出願公開第3015750号明細書に記載されており、これは、ここで述べる廃棄物処理システム41の実施形態の一部を形成するものとすることができるとともに、その内容はここに組み込まれたものとみなされるべきである。
【0026】
導入口ユニット42のそれぞれは、共通の導管システム45に連結されており、それに沿って廃棄物が放出され、その内部で必要に応じてさらに処理され得る。「導管」との用語は、ここでは、廃棄物を移送できることに適した任意の形態のチューブ、シャフト、ダクト、パイプ等を意味すると理解される。導入口43のすぐ下流に配置されたものは破砕装置44である。破砕の後、廃棄物は、単純な方法で導管システムを通って移動することができる。好ましくは中央分離装置46が存在し、この内部へ異なる導入口が進出する。この分離装置内では、実際の廃棄物(糞等)と固体物質、たとえば破砕された容器の容器材料等との分離が行われる。実際の廃棄物は、導管49を介して浄化設備50へ供給される。導管49を介して供給される廃棄物の液体部分(主に水からなる)は、浄化設備50で浄化され、その後、放出管51を経て下水設備52へ放出される。この廃棄物の流れは、それが必要に応じて再利用できるように洗浄することができる。
【0027】
固体物質、たとえば破砕された容器材料等を有する廃棄物の流れは、分離装置46で分離されて、導管53を経て洗浄装置54へ案内される。容器材料の洗浄は、たとえば、排出口55で利用可能になる洗浄水といったような洗浄水等の洗浄液を用いて行われる。洗浄装置46はさらに、洗浄された固体物質と、洗浄に使用された液体(たとえば洗浄水)との分離を行うものとして具現化される。この液体は、導管56を経て浄化設備50へ戻される。洗浄された固体物質(たとえば洗浄された容器材料)は、排出口57を経て、たとえば受容ユニット58へ放出される。そこで受け取られた固体物質はその後、たとえばその再利用をするべく放出することができる。
【0028】
図9に、この発明に従う廃棄物処理システムの他の例を示す。この廃棄物処理システムは全体として61の符号で示し、廃棄物は、導入口ユニット42又は43を経て供給されて導管システム45を介して放出される。異なる導入口ユニットの廃棄物の流れは、図8を参照しながら説明したものと同じ方法で発生する。導入口ユニット42は、図8に示す導入口ユニット2に対応するものである。導入口ユニット43は、それを介して、たとえば、廃棄物の流れがシャワー水からなる場合のように、破砕を要しない廃棄物の流れを放出できるユニットである。
【0029】
上述した状況とは異なり、図9の廃棄物は、他の材料のなかでも、生物分解が可能な固体物質を含む。廃棄物の流れにおいて、破砕された容器の材料は、たとえば、生物分解が可能な種類の材料からなるものとすることができ、たとえば、紙のような種類の材料、PLAプラスチック等の生物分解が可能なプラスチック等である。破砕装置44で先に述べたように破砕されて、中央に分離装置46へ供給され、ここでは、(導管49を経由する)実際の廃棄物の流れと、(導管53を経由する)容器材料との分離を再度行う。実際の廃棄物の流れは浄化設備50へ供給され、ここで得られる水は、予定される再利用のため、排出口50を介して放出される。
【0030】
分離装置46で得られる生物分解が可能な固体物質(たとえば、破砕された容器材料であるが、これに限らない。)は、まず洗浄装置54内で上述した方法にて洗浄される。この場合、排出口60からもたらされ得る使用後の液体(たとえば洗浄水)は再度、浄化設備54に供給される。導管64を経て、廃棄物の流れの液体部分は、浄化設備50の方向に放出することができ、洗浄された容器材料は、導管47を経由して発酵槽48に供給される。調理場廃棄物のような更なる廃棄物の流れは同様に、導入口49及びさらなる破砕装置60を経て、この発酵槽48に供給することができる。
【0031】
発酵槽48での発酵の間、熱/ガスが解放される。この熱/ガスは、発酵槽での微生物の状態及び分解プロセスを強化するため、発酵槽48の加熱及び/又はエネルギーの生成に用いることができる。固体/液体の廃棄物の流れは、分離器61に供給される。ここで、硬質の成分は、堆肥化用途62のため、濾過して除去されるとともに放出される。必要に応じて加熱工程も行い、加熱の間に硬質の成分中に存在し得るバクテリアを取り除く。液体を含むより軟質の成分は、導管63を経て浄化設備50に供給される。浄化された廃棄物はその後、一以上の汚水ピット60に移送され、しかる後に汚水ピット60から公共下水設備52に放出される。図1及び2に、そのような汚水槽もしくは汚水ピット1の実施形態を示す。図示の実施形態では、汚水ピットは実質的にブロック状をなすものであり、横向きの壁部箇所2もしくは基部、四つの縦向きの壁部箇所3、ならびに、ピット内に形成された受容スペース9を上方側で包囲する横向きの壁部箇所4を備える。さらに図3に示すところでは、汚水ピットの上壁部4に、水滴底板(tear plate floor)等のアクセス用ハッチ6で閉めることのできる凹部が設けられている。アクセス用ハッチ6は、汚水ピットにアクセスするため、簡単な方法で持ち上げることができるような重量の軽いものである。労働者が、上壁部箇所4内の凹部からピット1内に入ることができるように、汚水ピット内にさらに階段(図示せず)が配置される。
【0032】
図7に、ピットの上部に、導入口導管または洗浄導管10を設けたものを示す。洗浄導管10は、ピットの側壁部3内の対応する開口部に配置され、一般的な方法で家庭の主水供給源に接続される。水の形態をなす洗浄液は、この主水供給源内で(方向PAに)供給される。ここでは、水圧を、たとえば1〜5バールの間で変化させることができる。洗浄導管10は、受容スペース9の内部で分配器11に進出し、これは、マニホールド12を介して供給水を多数の供給管13〜17(図示の例では五つであるが、他の実施形態ではこの数を多くし又は少なくすることができる。)に分配するものである。これらの供給管は、受容板5の上部の高さの位置に到達するまで、汚水ピットの側壁部3(たとえば図4)に沿って延びる。供給管13〜17は、受容板5の上面に沿って、当該板のおよそ中間の位置まで続く。スプレーノズル18は、供給管13〜17の外端のそれぞれに配置される。洗浄導管10を経て供給される水は、圧力の作用下で、(方向PBに)スプレーノズル18へと案内されることができ、それにより、液体(特に水)を、当該板5上に噴霧することができる。洗浄液は、受容板5の下方側の方向で、方向(図4では方向P2)を含む下向きに噴霧される。
【0033】
図示の実施形態では、受容板5は、二つの板部分で構成される。第一板部分20は、ほぼ平ら/平坦な形態をなす第一表面部を形成する。第二部分は湾曲部21を含む。この湾曲部は、下向きに噴霧される供給管13〜16の水を案内する凹状表面部(方向P3図4)を形成する。図4に示すように、供給管を経て供給される水は、受容板5の表面に沿って下向きに流れて、その部分21の形成の結果として旋回運動し始める。
【0034】
建物からの廃棄物、たとえば、破砕され、必要に応じて洗浄され、及び/又は分離された病院廃棄物は、供給口19(図4)を介して到達し、多量に受容スペース9にくみ上げられる。スプレーノズルが洗浄液を供給しなかった場合、破砕された廃棄物は、重力の作用下で下向き(方向P1図4)に移動し、ピットの下部近くに蓄積する。しかしながら、受容板5の傾斜配置及びスプレーノズルの動作により、液体及び固体成分の混合物からなる廃棄物は、使用時に、凹状部分21の方向に案内される。受容板5の形態に起因する上記の旋回運動及び、噴霧器で噴霧される液体の圧力により、廃棄物の固体成分は、(さらに)懸濁され始める。汚水ピットの下方側では、この大量の懸濁液に、液体廃棄物、廃棄物の固体部分及び洗浄液が含まれる。この懸濁液は簡単な方法、たとえばポンプ25、26(図4)によるこの懸濁液のくみ上げ並びに、放出管28及び排出口29を介した下水道への放出により放出される。排出口29(排出管)は、下水設備に直接的に接続するこの目的のためのものである。
【0035】
受容スペース内に配置される廃棄物が、できる限り汚水ピット側から離れて移動することは、局所的に懸濁されるために重要である。このため、上述したように受容板5は傾斜して配置される。縦向きの壁部3と受容板5、より具体的には受容板5の平坦部分20との間の傾斜角度(α)(図4参照)は、好ましくは、40°と80°との間にある。特に破砕された病院廃棄物では、この傾斜角度は、廃棄物を下向きの方向(P1図4)に変位させるのに十分であることが解かった。廃棄物が、スプレーノズル18を越えた位置に到達し、洗浄水に取り込まれると、廃棄物は、受容板5の湾曲部上に位置することになり、旋回運動し始める。
【0036】
図7に示すように、必要に応じて、汚水ピットに、洗浄液のための多数の追加の供給管を設けることが可能である。これらの供給管は、図7に部分的にだけ示されている(供給管30、31、32、33)。供給管は、これらの管の上側外端(図示せず)に接続することができ、これらの管のそれぞれの下側に、スプレーノズル18に類似するスプレーノズル35を設けることができる。これらの追加の管30〜33により、受容板の上部及び、廃棄物の流れに対してさらに上流の位置に、洗浄液を噴霧することも可能になる。廃棄物の流れは、このようにして、受容板5の湾曲部21への下向きの方向で、(必要であれば、廃棄物の流れの組成に応じて)さらに良好に変位することができる。
【0037】
図示の実施形態では、基部2の上部とポンプ25、26の位置との間の距離A(図4)は、好ましくは2m、より好ましくは1mより短くする。このようにして、廃棄物は、廃棄物が懸濁状態になる可能性が最も高い位置で除去される。ポンプ25、26、少なくともその開口は、他の実施形態では、受容スペース9の内部の異なる位置に配置することもできる。
【0038】
本発明は、ここで述べたその実施形態に限定されるものではない。範囲は特許請求の範囲で規定されるものであり、その範囲内で多くの変更及び調整が想定され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9