(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、部品実装システム1の構成の概略を示す構成図である。
図2は、実装ヘッド40の構成の概略を示す構成図である。
図3は、ノズルホルダ42の配列と第1Z軸駆動装置70および第2Z軸駆動装置75の配置を説明する説明図である。
図4は、エア配管経路を説明する説明図である。
図5は、圧力供給装置80の構成の概略を示す構成図である。
図6は、制御装置90および管理装置100の電気的な接続関係を示す説明図である。なお、
図1の左右方向がX軸方向であり、前(手前)後(奥)方向がY軸方向であり、上下方向がX軸方向およびY軸方向(水平面)に直交するZ軸方向である。
【0012】
部品実装システム1は、
図1に示すように、部品実装機10と、システム全体をコントロールする管理装置100と、を備える。部品実装システム1は、実施形態では、複数台の部品実装機10を備える。
【0013】
部品実装機10は、
図1に示すように、筐体12と、部品供給部22と、基板搬送装置24と、XYロボット30と、実装ヘッド40と、制御装置90(
図6参照)と、を備える。また、部品実装機10は、これらの他に、パーツカメラ26やノズルステーション28、マークカメラ(図示せず)なども備えている。なお、パーツカメラ26は、部品供給部22と基板搬送装置24との間に設けられ、実装ヘッド40の吸着ノズル44に吸着された部品Pの姿勢を下方から撮像するためのものである。また、ノズルステーション28は、部品供給部22と基板搬送装置24との間に設けられ、実装ヘッド40のノズルホルダ42に装着する吸着ノズル44をストックするためのものである。マークカメラは、実装ヘッド40に設けられ、基板Sに付された位置決め基準マークを上方から撮像して読み取るためのものである。
【0014】
部品供給部22は、
図1に示すように、部品実装機10の前部に設けられ、X軸方向(左右方向)に沿って複数のテープフィーダ23が配列される。なお、テープフィーダ23は、部品Pが並ぶテープTを収容したリールを備え、リールからテープTを引き出して後方(Y軸方向)へ送り出すことにより部品Pを部品供給位置まで供給するものである。テープTは、長手方向に所定の間隔で形成された複数の凹部を有する。複数の凹部には、それぞれ同一種類の部品Pが収容されている。凹部に収容された部品Pは、テープTの表面を覆うフィルムによって保護されており、部品供給位置の手前でフィルムが剥がされて露出し、部品供給位置にて吸着ノズル44により吸着される。
【0015】
基板搬送装置24は、
図1の前後に間隔を開けて設けられX軸方向(左右方向)に架け渡された1対のコンベアベルトを有している。基板Sは、基板搬送装置24のコンベアベルトにより図中左から右へと搬送される。
【0016】
XYロボット30は、実装ヘッド40をXY軸方向(前後左右の方向)に移動させるものであり、
図1に示すように、X軸スライダ32と、Y軸スライダ34と、を備える。X軸スライダ32は、Y軸スライダ34の前面にX軸方向(左右方向)に延在するように設けられた上下一対のX軸ガイドレール31に支持され、X軸モータ36(
図6参照)の駆動によってX軸方向に移動可能である。Y軸スライダ34は、筐体12の上段部にY軸方向(前後方向)に延在するように設けられた左右一対のY軸ガイドレール33に支持され、Y軸モータ38(
図6参照)の駆動によってY軸方向に移動可能である。なお、X軸スライダ32は、X軸位置センサ37(
図6参照)によりX軸方向の位置が検知され、Y軸スライダ34は、Y軸位置センサ39(
図6参照)によりY軸方向の位置が検知される。X軸スライダ32には実装ヘッド40が取り付けられている。このため、実装ヘッド40は、XYロボット30(X軸モータ36およびY軸モータ38)を駆動制御することにより、XY平面(水平面)上の任意の位置に移動可能である。
【0017】
実装ヘッド40は、
図2に示すように、ヘッド本体41と、複数(実施形態では、8個)のノズルホルダ42と、複数(実施形態では、8個)の吸着ノズル44と、R軸駆動装置50と、Q軸駆動装置60と、第1Z軸駆動装置70と、第2Z軸駆動装置75と、側面カメラ47,48とを備える。
【0018】
実装ヘッド40は、X軸スライダ32に対して着脱可能に構成されている。すなわち、X軸スライダ32には、例えば、搭載するノズルホルダ42(吸着ノズル44)の数が異なる複数種類のヘッドが着脱可能となっている。
【0019】
ヘッド本体41は、R軸駆動装置50によって回転可能な回転体である。ノズルホルダ42は、ヘッド本体41に対して円周方向に所定角度間隔(実施形態では、45度間隔)で配列され、且つ、ヘッド本体41に昇降自在に支持されている。ノズルホルダ42の先端部には、吸着ノズル44が装着される。吸着ノズル44は、ノズルホルダ42に対して着脱可能であり、吸着する部品Pの種類に応じてその吸着に適したものに交換される。
【0020】
R軸駆動装置50は、複数のノズルホルダ42(複数の吸着ノズル44)をヘッド本体41の中心軸回りに円周方向に旋回(公転)させるものである。R軸駆動装置50は、
図2に示すように、R軸モータ51と、ヘッド本体41の中心軸から軸方向に延出されたR軸52と、R軸モータ51の回転をR軸52に伝達する伝達ギヤ53と、を備える。R軸駆動装置50は、R軸モータ51により伝達ギヤ53を介してR軸52を回転駆動することにより、ヘッド本体41を回転させる。各ノズルホルダ42は、ヘッド本体41の回転によって、吸着ノズル44と一体となって円周方向に旋回(公転)する。また、R軸駆動装置50は、この他に、R軸52の回転位置、即ち各ノズルホルダ42(吸着ノズル44)の旋回位置を検知するためのR軸位置センサ55(
図6参照)も備える。
【0021】
Q軸駆動装置60は、各ノズルホルダ42(各吸着ノズル44)をその中心軸回りに回転(自転)させるものである。Q軸駆動装置60は、
図2に示すように、Q軸モータ61と、円筒ギヤ62と、伝達ギヤ63と、Q軸ギヤ64と、を備える。円筒ギヤ62は、その内部にR軸52が同軸かつ相対回転可能に挿通され、外周面に平歯の外歯62aが形成されている。伝達ギヤ63は、Q軸モータ61の回転を円筒ギヤ62に伝達するものである。Q軸ギヤ64は、各ノズルホルダ42の上部に設けられ、円筒ギヤ62の外歯62aとZ軸方向(上下方向)にスライド可能に噛み合うものである。Q軸駆動装置60は、Q軸モータ61により伝達ギヤ63を介して円筒ギヤ62を回転駆動することにより、円筒ギヤ62の外歯62aと噛み合う各Q軸ギヤ64を纏めて同方向に回転させることができる。各ノズルホルダ42は、Q軸ギヤ64の回転によって、吸着ノズル44と一体となってその中心軸回りに回転(自転)する。また、Q軸駆動装置60は、この他に、Q軸ギヤ64の回転位置、即ち各ノズルホルダ42(吸着ノズル44)の回転位置を検知するためのQ軸位置センサ65(
図6参照)も備える。
【0022】
第1および第2Z軸駆動装置70,75は、ノズルホルダ42の旋回(公転)軌道上の2箇所においてノズルホルダ42を個別に昇降可能に構成されている。実施形態では、
図3に示すように、第1Z軸駆動装置70は、ヘッド本体41に支持されるノズルホルダ42のうち0度の位置(以下、Z1ともいう)にあるノズルホルダ42を昇降可能である。また、第2Z軸駆動装置75は、ヘッド本体41に支持されるノズルホルダ42のうち180度の位置(以下、Z2ともいう)にあるノズルホルダ42を昇降可能である。なお、0度の位置とは、ヘッド本体41の中心軸を通りX軸方向(基板搬送方向)に平行な線上にある2点のうち基板搬送方向上流側の位置であり(
図3中、A)、180度の位置は、上記2点のうち基板搬送方向下流側の位置である(
図3中、E)。
【0023】
第1および第2Z軸駆動装置70,75は、何れも、
図2に示すように、Z軸スライダ72,77と、対応するZ軸スライダ72,77を昇降させるZ軸モータ71,76と、を備える。第1および第2Z軸駆動装置70,75は、それぞれZ軸モータ71,76を駆動して対応するZ軸スライダ72,77を昇降させることにより、Z軸スライダ72,77の下方にあるノズルホルダ42と当接して、当該ノズルホルダ42を吸着ノズル44と一体的に昇降させる。なお、第1および第2Z軸駆動装置70,75は、Z軸モータ71,76としてリニアモータを用いてZ軸スライダ72,77を昇降させるものとしてもよいし、回転モータと送りねじ機構とを用いてZ軸スライダ72,77を昇降させるものとしてもよい。また、第1および第2Z軸駆動装置70,75は、Z軸モータ71,76に代えてエアシリンダなどのアクチュエータを用いてZ軸スライダ72,77を昇降させるものとしてもよい。このように、実施形態の実装ヘッド40は、それぞれノズルホルダ42(吸着ノズル44)を個別に昇降可能な2つのZ軸駆動装置70,75を備え、Z軸駆動装置70,75を用いて吸着ノズル44による部品Pの吸着動作を個別に行なうことができる。このため、実装ヘッド40は、2つのZ軸駆動装置70,75によって昇降可能な2つの吸着ノズル44と同じ間隔でX軸方向(左右方向)に並ぶように2つの部品Pを対応するテープフィーダ23から供給することにより、2つの吸着ノズル44を同時的に下降させて当該2つの部品Pを同時的に吸着させることができる。また、第1および第2Z軸駆動装置70,75は、この他に、対応するZ軸スライダ72,77の昇降位置、即ち対応するノズルホルダ42(吸着ノズル44)の昇降位置を検知するためのZ軸位置センサ73,78(
図6参照)も備える。
【0024】
吸着ノズル44は、圧力供給装置80によって供給される圧力(負圧,正圧)により部品Pの吸着や吸着した部品Pの基板Sへの実装が可能である。圧力供給装置80は、
図5に示すように、負圧源(負圧ポンプ)81と、正圧源(工場エア)82と、各吸着ノズル44の吸着口に供給する圧力を負圧と正圧と大気圧とのいずれかに切り替え可能な切替弁86と、を備える。切替弁86は、負圧源81と連通する負圧流路83と、正圧源82と連通する正圧流路84と、大気と連通する大気圧流路85と、吸着ノズル44の吸着口と連通するノズルホルダ42内部に形成されたホルダ流路42aとが接続された4ポート3位置弁である。切替弁86は、弁位置をホルダ流路42aが負圧流路83と連通すると共に他の流路から遮断する位置(負圧供給位置)に切り替えることにより、吸着ノズル44の吸着口に負圧を供給することができる。また、切替弁86は、弁位置をホルダ流路42aが大気圧流路85と連通すると共に他の流路から遮断する位置(大気圧供給位置)に切り替えることにより、吸着ノズル44の吸着口に大気圧を供給することができる。さらに、切替弁86は、弁位置をホルダ流路42aが正圧流路84と連通すると共に他の流路から遮断する位置(正圧供給位置)に切り替えることにより、吸着ノズル44の吸着口に正圧を供給することができる。切替弁86は、
図4に示すように、各ノズルホルダ42(ホルダ流路42a)にそれぞれ対応して設けられ、ヘッド本体41の軸中心から放射状に延びる放射状流路41aを介して負圧流路83に接続されると共に同様に延びる放射状流路(図示せず)を介して正圧流路84に接続されている。また、負圧流路83には、その内部の圧力(負圧)を検出するための圧力センサ88が設けられている。
【0025】
また、切替弁86は、自動復帰機能を有しておらず、弁操作レバー87の操作によって弁位置が負圧供給位置と大気圧供給位置と正圧供給位置とに切り替えられるようになっている。弁操作レバー87は、
図2に示すように、第1および第2弁駆動装置45,46の何れかによって操作される。第1弁駆動装置45は、第1Z軸駆動装置70により昇降可能な位置(Z1)にあるノズルホルダ42に対応する切替弁86の弁操作レバー87を駆動することができる。第2弁駆動装置46は、第2Z軸駆動装置75により昇降可能な位置(Z2)にあるノズルホルダ42に対応する切替弁86の弁操作レバー87を駆動することができる。なお、第1および第2弁駆動装置45,46は、例えば、モータと、モータの回転運動をストローク運動に変換する変換機構(カム機構やリンク機構など)とを用いて構成することができる。
【0026】
側面カメラ47,48は、吸着ノズル44による吸着動作の実行後に当該吸着ノズル44の部品吸着有無や部品吸着姿勢を判定するために、当該吸着ノズル44の先端部付近を側方から撮像するものである。実施形態では、側面カメラ47は、第1Z軸駆動装置70により吸着ノズル44を下降させて吸着動作を実行した後、当該吸着ノズル44がR軸駆動装置50により1つ先に旋回されたときに当該吸着ノズル44を撮像可能である。また、側面カメラ48は、第2Z軸駆動装置75により吸着ノズル44を下降させて吸着動作を実行した後、当該吸着ノズル44がR軸駆動装置50により1つ先に旋回されたときに当該吸着ノズル44を撮像可能である。
【0027】
制御装置90は、
図6に示すように、CPU91を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU91の他に、ROM92やHDD93、RAM94、入出力インタフェース95などを備える。これらはバス96を介して接続されている。制御装置90には、X軸位置センサ37やY軸位置センサ39、R軸位置センサ55、Q軸位置センサ65、Z軸位置センサ73,78、圧力センサ88などからの各種検知信号が入力されている。また、制御装置90には、パーツカメラ26やマークカメラ、側面カメラ47,48からの画像信号なども入出力インタフェース95を介して入力されている。一方、制御装置90からは、テープフィーダ23や基板搬送装置24、X軸モータ36、Y軸モータ38、R軸モータ51、Q軸モータ61、Z軸モータ71,76、第1および第2弁駆動装置45,46、パーツカメラ26、マークカメラ、側面カメラ47,48などへの各種制御信号が出力されている。
【0028】
管理装置100は、例えば、汎用のコンピュータであり、
図6に示すように、CPU101やROM102、HDD103、RAM104、入出力インタフェース105等により構成される。管理装置100には、入力デバイス107からの入力信号が入出力インタフェース105を介して入力されている。管理装置100からは、ディスプレイ108への表示信号が入出力インタフェース105を介して出力されている。HDD103には、基板Sの生産プログラムやその他の生産情報を含むジョブ情報が記憶されている。ここで、生産プログラムは、部品実装機10において、どの基板Sにどの部品Pをどの順番で実装するか、また、そのように実装した基板Sを何枚作製するかを定めたプログラムをいう。また、生産情報には、基板Sに実装すべき部品Pに関する部品情報(部品Pの種類やその部品供給位置)や使用する吸着ノズル44に関するノズル情報(ノズル径Rn)、部品Pの目標実装位置(XY座標)等が含まれる。管理装置100は、部品実装機10の制御装置90と通信可能に接続され、各種情報や制御信号のやり取りを行なう。
【0029】
こうして構成された実施形態の部品実装機10は、管理装置100によりジョブ情報を受信したときに、吸着動作と撮像動作と実装動作とを1サイクルとして実行する。吸着動作は、実装ヘッド40を部品供給位置の上方へ移動させ、部品供給位置において吸着ノズル44の吸着口に部品Pが当接するように各ノズルホルダ42(吸着ノズル44)を旋回させつつ対応するノズルホルダ42を下降させると共に、対応する吸着ノズル44の吸着口に負圧を供給する動作である。撮像動作は、吸着動作で吸着ノズル44に吸着させた部品Pをパーツカメラ26で撮像し、得られた撮像画像を処理することにより吸着ずれを検出して部品Pの目標実装位置を補正する動作である。実装動作は、実装ヘッド40を基板Sにおける目標実装位置の上方へ移動させ、吸着ノズル44に吸着させた部品Pが目標実装位置に当接するように各ノズルホルダ42(吸着ノズル44)を旋回させつつ対応するノズルホルダ42を下降させ、対応する吸着ノズル44の吸着口に正圧を供給する動作である。
【0030】
図7は、制御装置90のCPU91により実行される吸着制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。吸着制御ルーチンが実行されると、制御装置90のCPU91は、まず、負圧流路83内部の圧力(負圧Pm)を取得すると共に(S100)、吸着対象ノズルのノズル径Rnを取得する(S110)。なお、負圧Pmは、圧力センサ88の検知信号から取得することができる。また、ノズル径Rnは、管理装置100から受信したジョブ情報に含まれるノズル情報から取得することができる。続いて、CPU91は、ノズル径Rnに基づいて閾値Pref1,Pref2を設定し(S120)、負圧Pmの絶対値が閾値Pref1未満であるか否か(S130)、負圧Pmの絶対値が閾値Pref2以上であるか否か(S140)、をそれぞれ判定する。CPU91は、負圧Pmの絶対値が閾値Pref1未満でない、即ち閾値Pref1以上と判定すると、同時吸着動作を実行する(S150)。同時吸着動作は、2つの吸着対象ノズルにそれぞれの吸着対象部品が同時的に吸着されるようテープフィーダ23とXYロボット30とR軸駆動装置50と第1および第2Z軸駆動装置70,75と第1および第2弁駆動装置45,46とを順次制御することにより行なわれる。具体的には、CPU91は、2つの吸着対象部品がそれぞれの部品供給位置に供給されるように対応するテープフィーダ23に制御信号を送信すると共に、2つの吸着対象部品の上方へ実装ヘッド40が移動するようXYロボット30を制御する。続いて、CPU91は、実装ヘッド40の2つの吸着対象ノズルがそれぞれZ1,Z2に来るように各ノズルホルダ42が旋回しつつそれぞれの吸着対象部品に当接するまで対応する2つノズルホルダ42が下降するようR軸駆動装置50と第1および第2Z軸駆動装置70,75とを制御する(Z1ホルダおよびZ2ホルダ下降)。そして、CPU91は、2つの吸着対象ノズルの吸着口にそれぞれ負圧が供給されるよう第1および第2弁駆動装置45,46を制御する(Z1バルブおよびZ2バルブ開弁)。一方、CPU91は、負圧Pmの絶対値が閾値Pref1未満で且つ閾値Pref2以上と判定すると、単吸着動作を実行する(S160)。単吸着動作は、1つの吸着対象ノズルに吸着対象部品が吸着されるようテープフィーダ23とXYロボット30とR軸駆動装置50と第1および第2Z軸駆動装置70,75と第1および第2弁駆動装置45,46とを順次制御することにより行なわれる。具体的には、CPU91は、1つの吸着対象部品がその部品供給位置に供給されるように対応するテープフィーダ23に制御信号を送信すると共に、当該吸着対象部品の上方へ実装ヘッド40が移動するようXYロボット30を制御する。続いて、CPU91は、実装ヘッド40の1つの吸着対象ノズルがZ1に来るように各ノズルホルダ42が旋回しつつ吸着対象部品に当接するまで対応する1つノズルホルダ42が下降するようR軸駆動装置50と第1Z軸駆動装置70とを制御する(Z1ホルダ下降)。そして、CPU91は、1つの吸着対象ノズルの吸着口に負圧が供給されるよう第1弁駆動装置45を制御する(Z1バルブ開弁)。なお、実施形態では、単吸着動作は、第1Z軸駆動装置70によりZ1でノズルホルダ42を下降させ、対応する吸着ノズル44に負圧が供給されるよう第1弁駆動装置45を制御するものとしたが、第2Z軸駆動装置75によりZ2でノズルホルダ42を下降させ、対応する吸着ノズル44に負圧が供給されるよう第2弁駆動装置46を制御するものであってもよい。
【0031】
ここで、上述したように、各ノズルホルダ42のホルダ流路42aは、対応する切替弁86を介して共通の負圧流路83(負圧源81)に接続されている。そして、吸着動作は、吸着対象ノズルの吸着口に負圧が供給されるよう対応する切替弁86を駆動して対応するノズルホルダ42のホルダ流路42aと共通の負圧流路83とを連通させることにより行なわれる。このとき、何らかの原因によって吸着対象ノズルに部品Pが吸着されないと(吸着ミス発生)、開放された吸着口から負圧がリークし、負圧流路83の負圧Pmの絶対値は低下する。この場合、共通の負圧流路83から他の吸着ノズル44の吸着口へ供給される負圧Pmの絶対値も低下し、負圧Pmの絶対値が下限値未満となると、当該他の吸着ノズル44は、部品Pを保持することができなくなる。閾値Pref1は、同時吸着動作の後、2つの吸着対象ノズルの何れにも吸着ミスが発生しても、負圧Pmの絶対値が上記下限値未満とならないように定められる。一方、閾値Pref2は、単吸着動作の後、1つの吸着対象ノズルに吸着ミスが発生しても、負圧Pmの絶対値が上記下限値未満とならないように定められる。例えば、吸着ノズル44が部品Pを保持できなくなる負圧流路83の負圧Pmの絶対値が10[kPa]であり、1つ吸着ミスが発生すると、負圧流路83の負圧Pmの絶対値が1[kPa]だけ低下する場合、同時吸着動作を行なう吸着対象ノズルが2つであるから、閾値Pref1は、12[kPa]となり、閾値Pref2は、11[kPa]となる。例えば、いま、負圧流路83の負圧Pmの絶対値が11.5[kPa]である場合、同時吸着動作を行なうと、2つの吸着対象ノズルの何れにも吸着ミスが発生した場合に、負圧Pmの絶対値が9.5[kPa]となるため、他の吸着ノズル44は、部品Pを保持することができなくなる。一方、単吸着動作であれば、1つの吸着対象ノズルに吸着ミスが発生しても、負圧Pmの絶対値が10.5[kPa]となるため、他の吸着ノズル44は、部品Pを保持することができる。また、負圧流路83の負圧Pmの絶対値が10.5[kPa]である場合、以降、1つでも吸着ミスが発生すると、負圧Pmの絶対値が10[kPa]未満となるため、他の吸着ノズル44は、部品Pを保持することができなくなる。このように、部品実装機10は、現在の負圧流路83の負圧Pmに応じて、吸着ミスが発生しても負圧Pmの絶対値が下限値未満とならないように同時吸着動作を実行するか、単吸着動作を実行するか、吸着動作を実行しないかを選択するのである。これにより、部品実装機10は、吸着ミスが生じた場合であっても他の吸着ノズル44が吸着している部品が落下するのを抑制しつつ、複数の吸着ノズル44にできる限り多くの部品を吸着させることができる。なお、吸着ミスが発生したときの負圧流路83の負圧低下(負圧のリーク量)は、吸着対象ノズルのノズル径Rnが大きいほど大きくなる。このため、閾値Pref1,Pref2は、ノズル径Rnが大きいほど、大きくなるように定められる。閾値Pref1の設定は、実施形態では、ノズル径Rnと閾値Pref1との関係を予め求めてマップとしてROM92に記憶しておき、ノズル径Rnが与えられると、マップから対応する閾値Pre1を導出することにより行なうことができる。閾値Pref2の設定も、同様に行なうことができる。
【0032】
そして、CPU91は、複数の吸着ノズル44に予定数の部品Pが吸着されたか否かを判定する(S170)。CPU91は、予定数の部品Pが吸着されていないと判定すると、次の吸着対象ノズルがZ1またはZ2(第1Z軸駆動装置70または第2Z軸駆動装置75により昇降可能な位置)に来るようR軸駆動装置50を駆動制御し(S180)、S100に戻ってS100〜S170の処理を繰り返す。CPU91は、予定数の部品Pが吸着されたと判定すると、部品Pを基板Sに実装するために、撮像動作を経て実装動作へ移行して(S190)、吸着制御ルーチンを終了する。
【0033】
CPU91は、S140で負圧Pmの絶対値が閾値Pref2以上でない、即ち閾値Pref2未満と判定すると、そのまま実装動作を経て実装動作へ移行して(S190)、吸着制御ルーチンを終了する。負圧Pの絶対値が閾値Pref2未満の場合、CPU91は、以降、一つでも吸着ミスが発生すると、他の吸着ノズル44に吸着させている部品Pを保持できないと判断し、予定数の部品Pが吸着されていなくても、他の吸着ノズル44に吸着させている部品Pを実装するために、実装動作(撮像動作)へ移行する。CPU91は、同時吸着動作を実行できないが、単吸着動作を実行できる場合には、単吸着動作において吸着ミスが発生して負圧Pmの絶対値が閾値Pref未満となるか所定数の部品Pが吸着されるまで単吸着動作を繰り返し実行する。
【0034】
ここで、実施形態の構成要素と請求の範囲に記載の本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。実施形態の部品供給部22が本開示の部品供給部に相当し、テープフィーダ23がパーツフィーダに相当し、部品実装機10が部品実装機に相当し、吸着ノズル44がノズルに相当し、実装ヘッド40がヘッドに相当し、負圧源81が負圧源に相当し、圧力供給装置80が負圧供給装置に相当し、第1および第2Z軸駆動装置70,75が昇降装置に相当し、制御装置90が制御装置に相当する。また、実装ヘッド40がロータリヘッドに相当し、第1Z軸駆動装置70が第1昇降装置に相当し、第2Z軸駆動装置75が第2昇降装置に相当する。
【0035】
以上説明した実施形態の部品実装機10は、吸着動作として、一つの吸着対象ノズルを下降させると共に当該一つの吸着対象ノズルの吸着口に負圧を供給して一つの吸着対象ノズルに部品Pを吸着させる第1吸着動作と、複数の吸着対象ノズルを同時的に下降させると共に当該複数の吸着対象ノズルの吸着口に負圧を供給して複数の吸着対象ノズルに部品を同時的に吸着させる第2吸着動作とを実行可能な制御装置90を備える。制御装置90は、負圧源81からの負圧Pmの絶対値が閾値Pre1以上の場合には第2吸着動作を実行し、負圧Pmの絶対値が閾値Pre1未満で且つ閾値Pre1よりも低い閾値Pref2以上の場合には第1吸着動作を実行し、負圧Pmの絶対値が閾値Pref2未満の場合には吸着動作を実行しない。これにより、部品実装機10は、吸着ミスが生じた場合であっても他の吸着ノズル44が吸着している部品が落下するのを抑制しつつ、複数のノズルにできる限り多くの部品Pを吸着させることができる。この結果、部品実装機10は、1サイクルあたりに吸着・実装する部品Pの数を増やして、実装効率をより高めることができる。
【0036】
また、実施形態の部品実装機10は、吸着対象ノズルのノズル径Rnが大きいほど大きくなるよう閾値Pref1,Pref2を設定して同時吸着動作、単吸着動作の可否を判定する。吸着ノズル44はノズル径Rnが大きいほど吸着ミスが発生した場合の負圧のリーク量が多くなるため、ノズル径Rnが大きいほど閾値Pref1,Pref2の大きくすることで、閾値Pref1,Pref2を最適化することができる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0038】
例えば、上述した実施形態では、部品実装機10は、ヘッド本体41に対して複数のノズルホルダ42が周方向に配列されたロータリ型の実装ヘッド40を備えるものとした。しかし、部品実装機10は、パーツフィーダ(テープフィーダ23)の配列方向に沿って当該パーツフィーダと同ピッチで配列され且つそれぞれ独立して昇降可能なノズルホルダ(吸着ノズル)を有する並列型の実装ヘッドを備えるものとしてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、実装ヘッド40は、所定位置にある2つのノズルホルダ42(吸着ノズル44)をそれぞれ個別に昇降させる2つのZ軸駆動装置70,75を備えるものとした。しかし、実装ヘッド40は、Z軸駆動装置をN個(Nは3以上の自然数)備えてもよく、N個のZ軸駆動装置によりN個の吸着ノズルを同時的に下降させ、各吸着ノズルにN個の部品Pを同時的に吸着するものとしてもよい。この場合、同時吸着動作の可否を判定するための閾値Pref1として、N個の部品Pの同時吸着動作を許容する閾値P(N),(N−1)個の部品Pの同時吸着動作を許容する閾値P(N−1),…,1個の部品Pの単吸着動作を許容する閾値P1のN個の閾値が設けられる。CPU91は、負圧流路83内部の圧力(負圧Pm)の絶対値が閾値P(N)以上である場合には、N個の部品Pの同時吸着動作を実行し、閾値P1未満である場合には、吸着動作を実行せず、閾値P1以上で且つ閾値P(N)未満である場合には、負圧Pmの絶対値がN個の閾値P1,P(N−1),P(N)のうちどの閾値間にあるかにより同時吸着可能な部品数を求めて吸着動作を実行する。なお、CPU91は、N個よりも少ない数の部品Pの吸着動作を実行した場合には、吸着ミスの発生により負圧Pmの絶対値が閾値P1未満となるか予定数の部品Pが吸着されるまで、吸着動作後の負圧Pmに応じて残りの部品Pの吸着動作を実行する。
【0040】
上述した実施形態では、同時吸着動作の可否を判定するための閾値Pref1と単吸着動作の可否を判定するための閾値Pref2は、吸着対象ノズルのノズル径Rnが大きいほど大きくなるよう設定された。しかし、閾値Pref1,Pref2の設定に、吸着ノズルの吸着口が複数存在するものや吸着口の形状が特殊なもの等、ノズル径Rn以外の要因が考慮されてもよい。また、閾値Pref1,Pref2に、固定値が設定されてもよい。この場合、閾値Pref1,Pref2は、ノズルホルダ42に装着可能な複数種類の吸着ノズル44のうち最もノズル径が大きいものに対応するように設定されるとよい。
【0041】
上述した実施形態では、閾値Pref1,Pref2は、吸着ノズルの種類に応じて設定された。しかし、閾値Pref1,Pref2は、部品実装機10(X軸スライダ32)に装着されるヘッドの種類(例えば、搭載するノズルホルダの数)に応じて設定されてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、実装ヘッド40は、所定位置にある2つのノズルホルダ42(吸着ノズル44)をそれぞれ個別に昇降させる2つのZ軸駆動装置70,75を備えるものとした。しかし、実装ヘッド40は、Z軸駆動装置を1つしか備えず、Z軸駆動装置により1つの吸着ノズルを下降させ、吸着ノズルに1つの部品Pを吸着するものとしてもよい。但し、この場合は、同時吸着動作を実行することはできない。この場合、吸着動作の可否を判定するための閾値として、吸着対象ノズルのノズル径Rnが大きいほど大きくなるよう設定される閾値Prefが設けられる。そして、CPU91は、負圧流路83内部の圧力(負圧Pm)の絶対値が閾値Pref以上である場合には、吸着動作を実行し、負圧Pmの絶対値が閾値Pref未満である場合には、吸着動作を実行しない。即ち、本開示の他の部品実装機は、部品供給部に配列された複数のパーツフィーダから部品を吸着して基板に実装する部品実装機であって、吸着口に前記部品を吸着可能なノズルを複数有するヘッドと、負圧を発生させる負圧源を有し、該負圧源からの負圧を前記複数のノズルの吸着口に供給可能な負圧供給装置と、前記複数のノズルのうち少なくとも所定位置にあるノズルを昇降可能な昇降装置と、前記ノズルが下降するよう前記昇降装置を制御すると共に該ノズルの吸着口に負圧が供給されるよう前記負圧供給装置を制御して前記ノズルの吸着口に部品を吸着させる吸着動作を実行可能な制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記負圧源からの負圧の絶対値が閾値以上の場合には前記吸着動作を実行し、前記負圧源からの負圧の絶対値が前記閾値未満の場合には前記吸着動作を実行せず、前記ヘッドには、前記吸着口の径が異なる複数種類のノズルを装着可能であり、前記閾値は、前記ヘッドに装着されているノズルの径が大きいほど大きくなるよう定められるものとしてもよい。
【0043】
上述した実施形態では、XYロボット30は、実装ヘッド40をXY軸方向に移動させるものとしたが、基板BをXY軸方向に移動させてもよい。
【0044】
上述した実施形態では、部品実装機10は、各軸(X軸、Y軸、R軸、Q軸およびZ軸)の位置を検出する位置センサ37,39,55,65,73,78を備えたが、「位置センサ」には、エンコーダやリニアスケールが含まれてもよい。