(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883668
(24)【登録日】2021年5月12日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】有機EL表示装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/04 20060101AFI20210531BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20210531BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20210531BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20210531BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20210531BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20210531BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20210531BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
H05B33/04
G09F9/00 338
G09F9/30 309
G09F9/30 365
H01L27/32
H05B33/10
H05B33/12 B
H05B33/14 A
H05B33/22 Z
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-550877(P2019-550877)
(86)(22)【出願日】2018年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2018012953
(87)【国際公開番号】WO2019186824
(87)【国際公開日】20191003
【審査請求日】2019年9月13日
【審判番号】不服2020-5813(P2020-5813/J1)
【審判請求日】2020年4月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512225287
【氏名又は名称】堺ディスプレイプロダクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【弁理士】
【氏名又は名称】北 倫子
(72)【発明者】
【氏名】岸本 克彦
【合議体】
【審判長】
樋口 信宏
【審判官】
福村 拓
【審判官】
関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−14176(JP,A)
【文献】
国際公開第2018/003129(WO,A1)
【文献】
特開2017−228480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H05B 33/10
H01L 51/50
H01L 27/32
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有する有機EL表示装置であって、
基板および前記基板に支持された複数の有機EL素子を有する素子基板と、前記複数の有機EL素子を覆う薄膜封止構造とを有し、
前記薄膜封止構造は、第1無機バリア層と、前記第1無機バリア層上に形成された有機バリア層と、前記有機バリア層上に形成された第2無機バリア層とを有し、
前記第1無機バリア層は、SiO2層と、前記SiO2層上に形成されたSiN層またはSiON層を含み、
前記第1無機バリア層の前記有機バリア層に接する表面は、複数の微細な凸部を有し、前記表面の粗さの最大高さRzは20nm以上100nm未満であって、
前記第1無機バリア層の厚さは、200nm以上1500nm以下であり、前記表面の粗さの最大高さRzの5倍以上である、有機EL表示装置。
【請求項2】
前記有機バリア層を構成する樹脂材料は前記複数の微細な凸部の隙間に充填されている、請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記素子基板は、前記複数の画素のそれぞれを規定するバンク層をさらに有し、
前記有機バリア層は、前記バンク層を覆い、平坦な表面を有している、請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記素子基板は、前記複数の画素のそれぞれを規定するバンク層をさらに有し、
前記バンク層は、前記複数の画素のそれぞれの周囲を包囲する斜面を有し、
前記有機バリア層は、離散的に分布する複数の中実部を有し、
前記複数の中実部は、前記第1無機バリア層の、前記斜面上の部分から前記画素内の周辺に至る画素周辺中実部を有し、
前記画素周辺中実部に接する前記第1無機バリア層の表面の粗さの最大高さRzは20nm以上100nm未満である、請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記有機バリア層の厚さは50nm以上200nm未満であり、かつ、前記第1無機バリア層の前記表面の粗さの最大高さRzより大きい、請求項4に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記第1無機バリア層は、屈折率が1.70以上1.90以下のSiON層を含む、請求項1から5のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記有機バリア層はアクリル樹脂で形成されている、請求項1から6のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
有機EL表示装置を製造する方法であって、
前記有機EL表示装置は、複数の画素を有し、
基板および前記基板に支持された複数の有機EL素子を有する素子基板と、前記複数の有機EL素子を覆う薄膜封止構造とを有し、
前記薄膜封止構造は、第1無機バリア層と、前記第1無機バリア層上に形成された有機バリア層と、前記有機バリア層上に形成された第2無機バリア層とを有し、
前記第1無機バリア層の前記有機バリア層に接する表面は、複数の微細な凸部を有し、前記表面の粗さの最大高さRzは20nm以上100nm未満であって、
前記第1無機バリア層の厚さは、200nm以上1500nm以下であり、前記表面の粗さの最大高さRzの5倍以上であり、
前記第1無機バリア層を形成する工程は、プラズマCVD法を用いてSiNまたはSiONを含む無機絶縁膜を堆積する工程を包含し、
前記堆積工程は、前記素子基板の温度を上昇させる、または、プラズマエネルギーを上昇させる工程を包含する、製造方法。
【請求項9】
有機EL表示装置を製造する方法であって、
前記有機EL表示装置は、複数の画素を有し、
基板および前記基板に支持された複数の有機EL素子を有する素子基板と、前記複数の有機EL素子を覆う薄膜封止構造とを有し、
前記薄膜封止構造は、第1無機バリア層と、前記第1無機バリア層上に形成された有機バリア層と、前記有機バリア層上に形成された第2無機バリア層とを有し、
前記第1無機バリア層の前記有機バリア層に接する表面は、複数の微細な凸部を有し、前記表面の粗さの最大高さRzは20nm以上100nm未満であって、
前記第1無機バリア層の厚さは、200nm以上1500nm以下であり、前記表面の粗さの最大高さRzの5倍以上であり、
前記第1無機バリア層を形成する工程は、SiNまたはSiONを含む無機絶縁膜を堆積する工程と、前記堆積工程の後に、前記無機絶縁膜の表面を酸素またはオゾンを含むガスでアッシングする工程とを包含する、製造方法。
【請求項10】
前記有機バリア層を構成する樹脂材料は前記複数の微細な凸部の隙間に充填されている、請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記素子基板は、前記複数の画素のそれぞれを規定するバンク層をさらに有し、
前記有機バリア層は、前記バンク層を覆い、平坦な表面を有している、請求項8から10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記有機バリア層の厚さは3μm以上5μm以下である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記素子基板は、前記複数の画素のそれぞれを規定するバンク層をさらに有し、
前記バンク層は、前記複数の画素のそれぞれの周囲を包囲する斜面を有し、
前記有機バリア層は、離散的に分布する複数の中実部を有し、
前記複数の中実部は、前記第1無機バリア層の、前記斜面上の部分から前記画素内の周辺に至る画素周辺中実部を有し、
前記画素周辺中実部に接する前記第1無機バリア層の表面の粗さの最大高さRzは20nm以上100nm未満である、請求項8から10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
前記有機バリア層の厚さは50nm以上200nm未満であり、かつ、前記第1無機バリア層の前記表面の粗さの最大高さRzより大きい、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記第1無機バリア層は、SiO2層と、前記SiO2層上に形成されたSiN層またはSiON層を含む、請求項8から14のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)表示装置が実用化され始めた。有機EL表示装置の特徴の1つにフレキシブルな表示装置が得られる点が挙げられる。有機EL表示装置は、画素ごとに少なくとも1つの有機EL素子(Organic Light Emitting Diode:OLED)と、各OLEDに供給される電流を制御する少なくとも1つのTFT(Thin Film Transistor)とを有する。以下、有機EL表示装置をOLED表示装置と呼ぶことにする。このようにOLEDごとにTFTなどのスイッチング素子を有するOLED表示装置は、アクティブマトリクス型OLED表示装置と呼ばれる。また、TFTおよびOLEDが形成された基板を素子基板ということにする。
【0003】
OLED(特に有機発光層および陰極電極材料)は、水分の影響を受けて劣化しやすく、表示むらを生じやすい。OLEDを水分から保護するとともに、柔軟性を損なわない封止構造を提供する技術として、薄膜封止(Thin Film Encapsulation:TFE)技術が開発されている。薄膜封止技術は、無機バリア層と有機バリア層とを交互に積層することによって、薄膜で十分な水蒸気バリア性を得ようとするものである。OLED表示装置の耐湿信頼性の観点から、薄膜封止構造のWVTR(Water Vapor Transmission Rate)としては、典型的には1×10
-4g/m
2/day以下が求められている。
【0004】
現在市販されているOLED表示装置に使われているTFE構造は、厚さが約5μm〜約20μmの有機バリア層(高分子バリア層)を有している。このように比較的厚い有機バリア層は、素子基板の表面を平坦化する役割も担っている。比較的厚い有機バリア層は例えばインクジェット法を用いて形成される。
【0005】
一方、最近、比較的薄い有機バリア層を有するTFE構造が検討されている。比較的薄い有機バリア層は、下層の無機バリア層(第1無機バリア層)の凸部(凸部を被覆した第1無機バリア層)の周囲にのみ離散的に有機樹脂膜(有機バリア層の「中実部」ということがある。)を有している。
【0006】
例えば、特許文献1、2には以下の方法が記載されている。加熱気化させたミスト状の有機材料(例えばアクリルモノマー)を、室温以下の温度に維持された素子基板上に供給し、基板上で有機材料が凝縮し、滴状化する。滴状化した有機材料が、毛細管現象または表面張力によって、基板上を移動し、第1無機バリア層の凸部の側面と基板表面との境界部に偏在する。その後、有機材料を硬化させることによって、境界部に有機樹脂膜が形成される。また、特許文献3には、素子基板の平坦部上にも有機樹脂膜を形成した後、アッシングすることによって、離散的に分布した複数の中実部を有する有機バリア層を形成する方法が開示されている。参考のために、特許文献1〜3の開示内容のすべてを本明細書に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2014/196137号
【特許文献2】特開2016−39120号公報
【特許文献3】国際公開第2018/003129号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者の検討によると、TFE構造を設けると、有機EL表示装置の光利用効率が低下するという問題がある。この原因の1つは、OLED(発光層)から出射された光がTFE構造内の界面で反射されることにある。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、TFE構造における光の反射を抑制したOLED表示装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある実施形態による有機EL表示装置は、複数の画素を有する有機EL表示装置であって、基板および前記基板に支持された複数の有機EL素子を有する素子基板と、前記複数の有機EL素子を覆う薄膜封止構造とを有し、前記薄膜封止構造は、第1無機バリア層と、前記第1無機バリア層上に形成された有機バリア層と、前記有機バリア層上に形成された第2無機バリア層とを有し、前記第1無機バリア層の前記有機バリア層に接する表面は、複数の微細な凸部を有し、前記表面の粗さの最大高さRzは20nm以上100nm未満である。前記有機バリア層は、無色透明の光硬化性樹脂(例えば、アクリル樹脂)で形成されることが好ましい。
【0011】
ある実施形態において、前記有機バリア層を構成する樹脂材料は前記複数の微細な凸部の隙間に充填されている。
【0012】
ある実施形態において、前記素子基板は、前記複数の画素のそれぞれを規定するバンク層をさらに有し、前記有機バリア層は、前記バンク層を覆い、平坦な表面を有している。前記有機バリア層の厚さは、例えば3μm以上20μm以下である。
【0013】
ある実施形態において、前記有機バリア層の厚さは3μm以上5μm以下である。
【0014】
ある実施形態において、前記素子基板は、前記複数の画素のそれぞれを規定するバンク層をさらに有し、前記バンク層は、前記複数の画素のそれぞれの周囲を包囲する斜面を有し、前記有機バリア層は、離散的に分布する複数の中実部を有し、前記複数の中実部は、前記第1無機バリア層の、前記斜面上の部分から前記画素内の周辺に至る画素周辺中実部を有し、前記画素周辺中実部に接する前記第1無機バリア層の表面の粗さの最大高さRzは20nm以上100nm未満である。
【0015】
ある実施形態において、前記有機バリア層の厚さは50nm以上200nm未満であり、かつ、前記表面の粗さの最大高さRzより大きい。前記有機バリア層の厚さは前記最大高さRzの2倍以上5倍未満が好ましい。
【0016】
ある実施形態において、前記第1無機バリア層は、SiN層またはSiON層を含む。
【0017】
ある実施形態において、前記第1無機バリア層は、SiN層および/またはSiON層のみで形成されている。
【0018】
ある実施形態において、前記第1無機バリア層は、屈折率が1.70以上1.90以下のSiON層を含む。
【0019】
ある実施形態において、前記第1無機バリア層は、SiO
2層をさらに含む。
【0020】
ある実施形態において、前記SiO
2層の表面が前記有機バリア層と接触している。
【0021】
ある実施形態において、前記SiO
2層の厚さは20nm以上50nm以下である。
【0022】
ある実施形態において、前記第1無機バリア層の厚さは、200nm以上1500nm以下であり、前記表面の粗さの最大高さRzの5倍以上である。
【0023】
本発明の実施形態による、有機EL表示装置の製造方法は、上記のいずれかの有機EL表示装置を製造する方法であって、前記第1無機バリア層を形成する工程は、プラズマCVD法を用いてSiNまたはSiONを含む無機絶縁膜を堆積する工程を包含し、前記堆積工程は、前記素子基板の温度を上昇させる、または、プラズマエネルギーを上昇させる工程を包含する。
【0024】
本発明の実施形態による、有機EL表示装置の他の製造方法は、上記のいずれかの有機EL表示装置を製造する方法であって、前記第1無機バリア層を形成する工程は、SiNまたはSiONを含む無機絶縁膜を堆積する工程と、前記堆積工程の後に、前記無機絶縁膜の表面を酸素またはオゾンを含むガスでアッシングする工程を包含する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のある実施形態によると、TFE構造における光の反射を抑制したOLED表示装置およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】(a)は本発明の実施形態によるOLED表示装置100のアクティブ領域の模式的な部分断面図であり、(b)は、OLED3上に形成されたTFE構造10の部分断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1によるOLED表示装置100の構造を模式的に示す平面図である。
【
図3】(a)〜(c)は、比較的厚い有機バリア層14Aを有するTFE構造10Aを備えるOLED表示装置100Aの模式的な断面図であり、(a)は
図2中の3A−3A’線に沿った画素Pixを含む断面図であり、(b)は
図2中の3A−3A’線に沿ったパーティクルPを含む断面図であり、(c)は
図2中の3C−3C’線に沿った断面図である。
【
図4】(a)〜(c)は、比較的薄い有機バリア層14Bを有するTFE構造10Bを備えるOLED表示装置100Bの模式的な断面図であり、(a)は
図2中の3A−3A’線に沿った画素Pixを含む断面図であり、(b)は
図2中の3A−3A’線に沿ったパーティクルPを含む断面図であり、(c)は
図2中の3C−3C’線に沿った断面図である。
【
図5】(a)および(b)は、TFE構造10Aにおける第1無機バリア層12と有機バリア層14Aとの界面の状態を示す模式的な断面図である。
【
図6】TFE構造10Bにおける第1無機バリア層12と有機バリア層14Bとの界面の状態を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるOLED表示装置およびその製造方法を説明する。なお、本発明の実施形態は、以下に例示する実施形態に限定されない。例えば、本発明の実施形態による有機EL表示装置は、フレキシブル基板に代えて、例えばガラス基板を有してもよい。
【0028】
まず、
図1(a)および(b)を参照して、本発明の実施形態によるOLED表示装置100の基本的な構成を説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態によるOLED表示装置100のアクティブ領域の模式的な部分断面図であり、
図1(b)は、OLED3上に形成されたTFE構造10の部分断面図である。
【0029】
OLED表示装置100は、複数の画素を有し、画素ごとに少なくとも1つの有機EL素子(OLED)を有している。ここでは、簡単のために、1つのOLEDに対応する構造について説明する。
【0030】
図1(a)に示すように、OLED表示装置100は、フレキシブル基板(以下、単に「基板」ということがある。)1と、基板1上に形成されたTFTを含む回路(バックプレーン)2と、回路2上に形成されたOLED3と、OLED3上に形成されたTFE構造10とを有している。OLED3は例えばトップエミッションタイプである。OLED3の最上部は、例えば、上部電極またはキャップ層(屈折率調整層)である。TFE構造10の上にはオプショナルな偏光板4が配置されている。
【0031】
基板1は、例えば厚さが15μmのポリイミドフィルムである。TFTを含む回路2の厚さは例えば4μmであり、OLED3の厚さは例えば1μmであり、TFE構造10の厚さは例えば1.5μm以下である。
【0032】
図1(b)は、OLED3上に形成されたTFE構造10の部分断面図である。TFE構造10は、第1無機バリア層(例えばSiN層)12と、第1無機バリア層12上に形成された有機バリア層(例えばアクリル樹脂層)14と、有機バリア層14上に形成された第2無機バリア層(例えばSiN層)16とを有する。第1無機バリア層12は、OLED3の直上に形成されている。有機バリア層14は、比較的厚く、平坦化層を兼ねてもよいし(
図3(a)参照)、比較的薄く、離散的に分布する複数の中実部を有してもよい(
図4(a)参照)。有機バリア層14は、無色透明の光硬化性樹脂(例えば、アクリル樹脂)で形成されることが好ましく、例えば、厚さが1μmのときの可視光の透過率は95%以上であることが好ましい。光硬化性樹脂の屈折率は、例えば、約1.48〜約1.61である。
【0033】
OLED3から出射された光の内でTFE構造10を通過した光(一部)が、OLED表示装置100から出射され、表示に用いられる。しかしながら、TFE構造10内に入射した光の一部は、第1無機バリア層12と有機バリア層14との界面で反射される。例えば、SiN層の屈折率は、1.85であり、アクリル樹脂層の屈折率は、1.54であり、屈折率差(Δn)が0.31以上と大きい。したがって、第1無機バリア層12と有機バリア層14との界面において、OLED3から出射された光が反射され、ロスとなる。
【0034】
本発明の実施形態によるOLED表示装置100が有するTFE構造10は、第1無機バリア層12の有機バリア層14に接する表面12Sが複数の微細な凸部を有し、表面12Sの粗さの最大高さRzは20nm以上100nm未満である(
図5(b)参照)。この様な微細な凸部を有すると、後述するように、可視光に対する実効的な屈折率が連続して変化することになるので、可視光にとっては界面が存在せず、反射を抑制できる。その結果、本発明の実施形態によるOLED表示装置100は、従来よりも高い光の利用効率を実現することができる。
【0035】
このとき、有機バリア層を構成する樹脂材料は複数の微細な凸部の隙間に充填されていることが好ましい。有機バリア層と複数の微細な凹凸との間に空気が存在すると、反射を十分に抑制できないことがある。
【0036】
次に、
図2〜
図4を参照して、本発明の実施形態によるOLED表示装置が有するTFE構造の例を説明する。
【0037】
図2に本発明の実施形態によるOLED表示装置100の模式的な平面図を示す。
【0038】
OLED表示装置100は、フレキシブル基板1と、フレキシブル基板1上に形成された回路(バックプレーン)2と、回路2上に形成された複数のOLED3と、OLED3上に形成されたTFE構造10とを有している。複数のOLED3が配列されている層をOLED層3ということがある。なお、回路2とOLED層3とが一部の構成要素を共有してもよい。TFE構造10の上にはオプショナルな偏光板(
図1中の参照符号4を参照)がさらに配置されてもよい。また、例えば、TFE構造10と偏光板との間にタッチパネル機能を担う層が配置されてもよい。すなわち、OLED表示装置100は、オンセル型のタッチパネル付き表示装置に改変され得る。
【0039】
回路2は、複数のTFT(不図示)と、それぞれが複数のTFT(不図示)のいずれかに接続された複数のゲートバスライン(不図示)および複数のソースバスライン(不図示)とを有している。回路2は、複数のOLED3を駆動するための公知の回路であってよい。複数のOLED3は、回路2が有する複数のTFTのいずれかに接続されている。OLED3も公知のOLEDであってよい。
【0040】
OLED表示装置100は、さらに、複数のOLED3が配置されているアクティブ領域(
図2中の破線で囲まれた領域)R1の外側の周辺領域R2に配置された複数の端子38と、複数の端子38と複数のゲートバスラインまたは複数のソースバスラインのいずれかとを接続する複数の引出し配線30を有しており、TFE構造10は、複数のOLED3の上および複数の引出し配線30のアクティブ領域R1側の部分の上に形成されている。すなわち、TFE構造10はアクティブ領域R1の全体を覆い、かつ、複数の引出し配線30のアクティブ領域R1側の部分の上に選択的に形成されており、引出し配線30の端子38側および端子38は、TFE構造10では覆われていない。
【0041】
以下では、引出し配線30と端子38とが同じ導電層を用いて一体に形成された例を説明するが、互いに異なる導電層(積層構造を含む)を用いて形成されてもよい。
【0042】
次に、
図3(a)〜(c)を参照して、比較的厚い有機バリア層14Aを有するTFE構造10Aを備えるOLED表示装置100Aの構造を説明する。
図3(a)は
図2中の3A−3A’線に沿った画素Pixを含む断面図であり、
図3(b)は
図2中の3A−3A’線に沿ったパーティクルPを含む断面図であり、
図3(c)は
図2中の3C−3C’線に沿った断面図である。
【0043】
図3(a)に示す様に、薄膜封止構造10Aは、第1無機バリア層12と、第1無機バリア層12上に形成された有機バリア層14Aと、有機バリア層14A上に形成された第2無機バリア層16とを有している。
【0044】
OLED表示装置100Aの素子基板20は、複数の画素Pixのそれぞれを規定するバンク層48をさらに有している。バンク層48は、絶縁材料から形成されており、OLED3の下部電極42と有機層(有機EL層)44との間に形成されている。OLED3は、下部電極42と、下部電極42上に形成された有機層44と、有機層44上に形成された上部電極46とを含み、下部電極42および上部電極46は、例えば、それぞれ、陽極および陰極を構成する。上部電極46は、アクティブ領域の画素全体にわたって形成されている共通の電極であり、下部電極(画素電極)42は画素ごとに形成されている。下部電極42と有機層44との間にバンク層48が存在すると、下部電極42から有機層44に正孔が注入されない。従って、バンク層48が存在する領域は画素Pixとして機能しないので、バンク層48が画素Pixの外縁を規定する。バンク層48は、PDL(Pixel Defining Layer)と呼ばれることもある。
【0045】
バンク層48は、画素Pixに対応する開口部を有し、開口部の側面は、順テーパー側面部分TSFを有する斜面を有する。バンク層48の斜面は、各画素の周囲を包囲している。バンク層48は、例えば感光性樹脂(例えばポリイミドまたはアクリル樹脂)を用いて形成される。バンク層48の厚さは、例えば1μm以上2μm以下である。バンク層48の斜面の傾斜角θbは、60°以下である。バンク層48の斜面の傾斜角θbが60°超であると、バンク層48の上に位置する層に欠陥が生じることがある。
【0046】
有機バリア層14Aは、バンク層48を覆い、平坦な表面を有している。有機バリア層14Aの厚さは、バンク層48の厚さよりも大きく、例えば、3μm以上20μm以下である。第2無機バリア層16は、有機バリア層14Aの平坦な表面に形成されている。有機バリア層14Aの厚さは、3μm以上5μm以下であってもよい。厚さが5μmを超える有機バリア層14Aを形成するためには、比較的粘度の高い樹脂材料が必要になる。粘度の高い樹脂材料は、第1無機バリア層12の複数の微細な凸部の隙間に充填されないことがある。樹脂材料が複数の微細な凸部の隙間に充填されないと、十分な反射防止効果が得られないことがある。有機バリア層14Aの厚さが3μm以上5μm以下であると、比較的粘度の低い樹脂材料で形成され得るので、第1無機バリア層12の複数の微細な凸部の間に樹脂材料を十部に充填することができる。このような厚さの有機バリア層14Aは、例えば、インクジェット法、スリットコート法で形成することができる。
【0047】
第1無機バリア層12および第2無機バリア層16は、例えば、SiN層であり、マスクを用いたプラズマCVD法で、アクティブ領域R1を覆うように所定の領域だけに選択的に形成される。有機バリア層14Aは、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触する無機バリア層接合部によって包囲される領域内にのみ形成されている。したがって、有機バリア層14Aが水分の侵入経路となって、OLED表示装置のアクティブ領域R1に水分が到達することがない。有機バリア層14Aは、例えば、インクジェット法を用いて所定の領域に、無色透明の光硬化性樹脂(例えば、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂)で形成される。アクリル樹脂の屈折率は、例えば、1.48以上1.55以下である。エポキシ樹脂の屈折率は、例えば、1.55以上1.61以下である。
【0048】
アクティブ領域R1内にパーティクル(例えば直径が約1μm以上)Pが存在すると、
図3(b)に模式的に示す様に、第1無機バリア層12にクラック(欠陥)12cが形成されることがある。これは、パーティクルPの表面から成長するSiN層12aと、OLED3の表面の平坦部分から成長するSiN層12bとが衝突(インピンジ)するために生じたと考えられる。このようなクラック12cが存在すると、TFE構造のバリア性が低下する。十分な厚さを有する有機バリア層14Aで第1無機バリア層12を覆うことによって、TFE構造10Aは、バリア性の低下を抑制することができる。
【0049】
次に、
図3(c)を参照して、引出し配線30上のTFE構造10Aの構造を説明する。
図3(c)は、
図2中の3C−3C’線に沿った断面図であり、引出し配線30のアクティブ領域R1側の部分32の断面図である。
【0050】
有機バリア層14Aは、
図2におけるTFE構造10の内のアクティブ領域(
図2中の破線で囲まれた領域)R1内にのみ形成されており、アクティブ領域R1の外側に形成されていない。したがって、アクティブ領域R1の外側では、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触している。すなわち、有機バリア層14Aは、上述したように、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触する無機バリア層接合部によって包囲される。したがって、
図3(c)に示すように、引出し配線30のアクティブ領域R1側の部分32は、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とによって覆われている。
【0051】
次に、
図4(a)〜(c)を参照して、比較的薄い有機バリア層14Bを有するTFE構造10Bを備えるOLED表示装置100Bの構造を説明する。
図4(a)は
図2中の3A−3A’線に沿った画素Pixを含む断面図であり、
図4(b)は
図2中の3A−3A’線に沿ったパーティクルPを含む断面図であり、
図3(c)は
図2中の3C−3C’線に沿った断面図である。
【0052】
図4(a)に示すTFE構造10Bの有機バリア層14Bは、離散的に分布する複数の中実部を有する。複数の中実部は、バンク層48の開口部の側面上の第1無機バリア層12の斜面から画素Pix内の周辺に至る画素周辺中実部14Baを有する。
【0053】
また、
図4(b)に示す様に、パーティクルPが存在すると、第1無機バリア層12のクラック12cを充填するように中実部14Bbが形成され、かつ、中実部14Bbの表面は、パーティクルP上の第1無機バリア層12aの表面と、OLED3の平坦部上の第1無機バリア層12bとの表面を連続的に滑らかに連結する。有機バリア層14Bは、液状の光硬化性樹脂を硬化することによって形成されるので、表面張力によって凹状の表面を形成する。このとき、光硬化性樹脂は、第1無機バリア層12に対して良好な濡れ性を示している。光硬化性樹脂の第1無機バリア層12に対する濡れ性が悪いと、逆に凸状になることがある。なお、有機バリア層14がパーティクルP上の第1無機バリア層12aの表面にも薄く形成されることがある。
【0054】
凹状の表面を有する中実部14Bbによって、パーティクルP上の第1無機バリア層12aの表面と、平坦部上の第1無機バリア層12bとの表面が連続的に滑らかに連結されるので、この上に、欠陥の無い、緻密な膜で第2無機バリア層16を形成することができる。このように、有機バリア層14Bによって、パーティクルPが存在しても、TFE構造10Bのバリア性を維持することができる。
【0055】
次に、
図4(c)を参照して、引出し配線30上のTFE構造10Bの構造を説明する。
図4(c)は、
図2中の3C−3C’線に沿った断面図であり、引出し配線30のアクティブ領域R1側の部分32の断面図である。
【0056】
図4(c)に示すように、有機バリア層14Bは、引出し配線30の部分32の断面形状を反映した第1無機バリア層12の表面の凸部の周辺に形成された中実部14Bcを含む。中実部14Bcが存在することによって、第1無機バリア層12の段差上に、欠陥の無い、緻密な膜で第2無機バリア層16を形成することができる。
【0057】
有機バリア層14Bは、例えば、上記特許文献1または2に記載の方法で形成され得る。例えば、チャンバー内で、蒸気または霧状の有機材料(例えばアクリルモノマー)を、室温以下の温度に維持された素子基板上に供給し、素子基板上で凝縮させ、液状になった有機材料の毛細管現象または表面張力によって、第1無機バリア層12の凸部の側面と平坦部との境界部に偏在させる。その後、有機材料に例えば紫外線を照射することによって、凸部の周辺の境界部に有機バリア層(例えばアクリル樹脂層)14Bの中実部を形成する。この方法によって形成される有機バリア層14Bは、平坦部には中実部が実質的に存在しない。このとき、バンク層48の斜面上にも液膜が形成されるように、光硬化性樹脂の粘度、斜面に対する濡れ性等が制御される。斜面の表面を改質してもよい。また、特許文献3に記載されているように、最初に成膜する樹脂層の厚さを調整する(例えば、100nm未満とする)、および/または、アッシング条件(時間を含む)を調整することによって、有機バリア層14Bを形成することもできる。
【0058】
なお、例えば、端子38から引出し配線30に沿って中実部14Bcが形成されると、中実部14Bcが水分の侵入経路となって、OLED表示装置100Bのアクティブ領域R1に水分が到達することがある。これを防止するために、引出し配線30上に形成されるTFE構造10Bの一部に、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触する無機バリア層接合部を形成する。このような無機バリア層接合部は、例えば、引出し配線30のテーパー角を例えば70°以下にする、あるいは、光硬化性樹脂を硬化させるまでに赤外線等を照射して、光硬化性樹脂を気化させる、などすればよい。
【0059】
有機バリア層14Bは、例えば、スプレイ法、スピンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷またはインクジェット法を用いて形成してもよい。アッシング工程をさらに含んでもよい。有機バリア層を、感光性樹脂を用いて形成し、マスク露光を行ってもよい。マスク露光によって、画素周辺中実部14Baを形成するとともに、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触する無機バリア層接合部を形成してもよい。
【0060】
次に、
図5(a)および(b)を参照して、OLED表示装置100AのTFE構造10Aにおいて、第1無機バリア層12と有機バリア層14Aとの界面における反射が抑制されることを説明する。
【0061】
第1無機バリア層12は、例えば、屈折率が1.80以上2.00以下のSiN層(窒化シリコン層、典型的にはSi
3N
4)で形成されている。よく知られているように、窒化シリコン膜の成膜条件によって、ある程度は屈折率を制御することができる。しかしながら、有機バリア層14は、例えば、屈折率が1.54の光硬化性アクリル樹脂で形成されている。したがって、第1無機バリア層12と有機バリア層14との界面において、OLED3から出射された光が反射され、ロスとなる。
【0062】
図5(b)に示す様に、TFE構造10Aにおいては、第1無機バリア層12の有機バリア層14Aに接する表面12Sが複数の微細な凸部を有し、表面12Sの粗さの最大高さRzは20nm以上100nm未満である。有機バリア層を構成するアクリル樹脂が複数の微細な凸部の隙間に充填されている。微細な凸部は、先端が尖った形状を有しているので、第1無機バリア層12の層法線に沿って、第1無機バリア層12を構成するSiNの存在割合が減少し、有機バリア層14Aを構成するアクリル樹脂の存在割合が増加する。したがって、第1無機バリア層12と有機バリア層14Aとの界面において、屈折率は連続して変化する。屈折率が連続的に変化する界面領域の厚さは、表面粗さの最大高さRz(JISによる)程度であり、可視光の波長(400nm〜800nm)の4分の1未満であるので、可視光にとっては界面が存在せず、反射が抑制される。表面粗さの最大高さRzが20nmよりも小さいと、界面領域の屈折率を連続的に変化される効果が十分に発揮されないことがある。また、第1無機バリア層12の厚さは、200nm以上1500nm以下が好ましく、表面の粗さの最大高さRzの5倍以上であることが好ましい。第1無機バリア層12の厚さが、これよりも小さいと、十分なバリア性が得られないことがある。また、第1無機バリア層12の厚さが1500nmを超えると、バリア性は飽和する反面、タクトタイムが長くなるので、量産性が低下する。
【0063】
このような表面12Sを有するSiN層は、例えば、プラズマCVD法を用いてSiN膜を堆積する過程で、素子基板20の温度を上昇させる、または、プラズマエネルギーを上昇させることによって、形成することができる。すなわち、素子基板20の温度を上昇させる、または、プラズマエネルギーを上昇させることによって、SiN膜の密度が低下させることができる。これは、表面において、SiNのクラスターがマイグレーションしやすいためと考えられる。
【0064】
あるいは、プラズマCVD法を用いてSiN膜を堆積した後、SiN膜の表面を酸素またはオゾンを含むガスでアッシングしてもよい。SiN膜は、水素を含むので、酸素またはオゾンを含むガスでアッシングを行うと、脱水素の過程で、SiN膜の密度が低下し、表面が粗面化される。もちろん、上記の方法と組み合わせてもよい。
【0065】
無機バリア層12は、SiN層に代えて、SiON層(酸窒化シリコン層)を用いることもできる。SiON層は、SiN層よりも堆積速度が大きいという利点を有している。SiN層を用いる場合にも、SiN層と同様の方法で、表面を粗面化できる。SiON層としては、バリア性の観点から、屈折率が1.70以上1.90以下のものが好ましい。
【0066】
SiN層またはSiON層の上に、厚さが100nm未満のSiO
2層を形成してもよい。SiO
2層は、SiN層およびSiON層に比べて疎な膜が形成され易く、CVD法による堆積条件を調整することによって、表面粗さの最大高さRzが20nm以上100nmの表面を得ることができる。このとき、SiO
2層の厚さは20nm以上50nm以下であってもよい。SiO
2を例えばCVD法で堆積すると、厚さ50nm以下のとき、SiO
2の塊が島状に分布し、一定の厚さを有する膜とならないことが多い。このような、不均一なSiO
2層も有機バリア層14との界面における光の反射を抑制することができる。なお、不均一なSiO
2層の厚さは、SiO
2の塊(島)の最大高さで評価すればよい。また、SiO
2層を設けると、有機バリア層14Aとの密着性を向上させることができる。また、下地との密着性を改善するために、SiN層またはSiON層の下にSiO
2層を設けてもよい。なお、SiO
2層の屈折率は、1.46程度である。
【0067】
次に、
図6を参照して、OLED表示装置100BのTFE構造10Bにおいて、第1無機バリア層12と有機バリア層14Bとの界面における反射が抑制されることを説明する。
【0068】
TFE構造10Bにおいても、第1無機バリア層12の有機バリア層14Bの画素周辺中実部14Baに接する表面12Sが、複数の微細な凸部を有し、表面12Sの粗さの最大高さRzは20nm以上100nm未満である。第1無機バリア層12は上述のTFE構造10Aにおける第1無機バリア層12と同じであってよい。
【0069】
なお、画素周辺中実部14Baを形成する際に、素子基板の平坦部上にも有機樹脂膜を形成した後、アッシングする場合、平坦部上に存在する第1無機バリア層12の表面12Sの微細な凹部(微細な凸部の間)を埋めている有機樹脂をすべて除去する必要はなく、微細な凹部を埋めている有機樹脂を残してもよい。
【0070】
有機バリア層14Bの厚さ(ここでは画素周辺中実部14Baの厚さ)は、50nm以上200nm未満であり、かつ、表面の粗さの最大高さRzより大きいことが好ましく、最大高さRzの2倍以上5倍未満が好ましい。画素周辺中実部14Baの厚さが大きくなると、離散的に分散した中実部が、連続した膜となってしまう。有機バリア層14Bが離散的に分散した中実部を有するOLED表示装置100Bは、比較的厚い有機バリア層14Aを有するOLED表示装置100Aよりも、フレキシビリティに優れるという利点を有する。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の実施形態は、TFE構造を有するOLED表示、特にフレキシブルな有機EL表示装置およびその製造方法に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0072】
1 :基板(フレキシブル基板)
2 :回路
3 :OLED層
4 :偏光板
10 :TFE構造
12 :第1無機バリア層
12S :第1無機バリア層の表面(粗面)
14 :有機バリア層
14a :画素周辺中実部
16 :第2無機バリア層
30 :引出し配線
38 :端子
42 :下部電極
44 :有機層(有機EL層)
46 :上部電極
48 :バンク層
100、100A、100B :OLED表示装置
P :パーティクル
Pix :画素
R1 :アクティブ領域
R2 :周辺領域