特許第6883706号(P6883706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883706
(24)【登録日】2021年5月12日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】挿入具、内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20210531BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   A61B1/00 612
   A61B1/00 713
   G02B23/24 A
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-508952(P2020-508952)
(86)(22)【出願日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】JP2018033078
(87)【国際公開番号】WO2019187210
(87)【国際公開日】20191003
【審査請求日】2020年9月9日
(31)【優先権主張番号】特願2018-64864(P2018-64864)
(32)【優先日】2018年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 公彦
【審査官】 牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/006598(WO,A1)
【文献】 特開2013−158542(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/050575(WO,A1)
【文献】 特開平07−184848(JP,A)
【文献】 特表2008−528068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00− 1/32
G02B 23/24−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓管部を有し、長手軸に沿って延設される挿入部と、
前記可撓管部において前記長手軸に沿う筒状に形成され、駆動力が伝達されることにより前記長手軸周りに回転する筒状部材と、
前記可撓管部の外周における前記筒状部材の前記長手軸方向の位置を保持するフランジ部と、
前記フランジ部における前記長手軸方向に沿った基端側に設けられ、基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐形状のテーパ部と、
外表面に前記テーパ部の基端部から基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐面を有し、前記円錐面の前記長手軸に対する傾斜は、前記テーパ部の前記長手軸に対する傾斜よりも緩やかであって、前記テーパ部の基端部と前記可撓管部の外周とを滑らかに接続するよう形成された接着剤層と、
を含むことを特徴とする挿入具。
【請求項2】
前記円錐形状のテーパ部は基端を丸められたR形状とし、
前記接着剤層は、基端側の凸部に向かうにつれて外径が小さくなる円錐形状の外形に形成した
ことを特徴とする請求項1に記載の挿入具。
【請求項3】
前記接着剤層は、前記可撓管部の外周に設けられた糸巻き部を覆うように形成されることを特徴とする請求項1に記載の挿入具。
【請求項4】
可撓管部を有し、長手軸に沿って延設される挿入部と、
前記可撓管部において前記長手軸に沿う筒状に形成され、駆動力が伝達されることにより前記長手軸周りに回転する筒状部材を前記可撓管部に装着した際に、前記可撓管部の外周における前記筒状部材の前記長手軸方向の位置を保持するためのフランジ部と、
前記フランジ部における前記長手軸方向に沿った基端側に設けられ、基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐形状のテーパ部と、
外表面に前記テーパ部の基端部から基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐面を有し、前記円錐面の前記長手軸に対する傾斜は、前記テーパ部の前記長手軸に対する傾斜よりも緩やかであって、前記テーパ部の基端部と前記可撓管部の外周とを滑らかに接続するよう形成された接着剤層と、
を含むことを特徴とする挿入具。
【請求項5】
前記円錐形状のテーパ部は基端を丸められたR形状とし、
前記接着剤層は、基端側の凸部に向かうにつれて外径が小さくなる円錐形状の外形に形成した
ことを特徴とする請求項に記載の挿入具。
【請求項6】
可撓管部を有し、長手軸に沿って延設される挿入部と、
前記可撓管部において前記長手軸に沿う筒状に形成され、駆動力が伝達されることにより前記長手軸周りに回転する筒状部材と、
前記可撓管部の外周における前記筒状部材の前記長手軸方向の位置を保持するフランジ部と、
前記フランジ部における前記長手軸方向に沿った基端側に設けられ、基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐形状のテーパ部と、
外表面に前記テーパ部の基端部から基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐面を有し、前記円錐面の前記長手軸に対する傾斜は、前記テーパ部の前記長手軸に対する傾斜よりも緩やかであって、前記テーパ部の基端部と前記可撓管部の外周とを滑らかに接続するよう形成された接着剤層と、
を含むことを特徴とする内視鏡。
【請求項7】
前記円錐形状のテーパ部は基端を丸められたR形状とし、
前記接着剤層は、基端側の凸部に向かうにつれて外径が小さくなる円錐形状の外形に形成した
ことを特徴とする請求項に記載の内視鏡。
【請求項8】
可撓管部を有し、長手軸に沿って延設される挿入部と、
前記可撓管部において前記長手軸に沿う筒状に形成され、駆動力が伝達されることにより前記長手軸周りに回転する筒状部材を前記可撓管部に装着した際に、前記可撓管部の外周における前記筒状部材の前記長手軸方向の位置を保持するためのフランジ部と、
前記フランジ部における前記長手軸方向に沿った基端側に設けられ、基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐形状のテーパ部と、
外表面に前記テーパ部の基端部から基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐面を有し、前記円錐面の前記長手軸に対する傾斜は、前記テーパ部の前記長手軸に対する傾斜よりも緩やかであって、前記テーパ部の基端部と前記可撓管部の外周とを滑らかに接続するよう形成された接着剤層と、
を含むことを特徴とする内視鏡。
【請求項9】
前記円錐形状のテーパ部は基端を丸められたR形状とし、
前記接着剤層は、基端側の凸部に向かうにつれて外径が小さくなる円錐形状の外形に形成した
ことを特徴とする請求項に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入部の外周に配置される筒状部材を備える挿入具、内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
生体や構造物等の被検体内における観察や処置のために、被検体内に挿入される挿入部を備える挿入具が例えば医療分野や工業分野において利用されている。挿入具は、例えば国際公開WO2017/006598号公報に開示されているような内視鏡を含む。
【0003】
国際公開WO2017/006598号公報に開示の内視鏡は、挿入部の外周において回転する筒状部材を回転させる構成を有する。また、国際公開WO2017/006598号公報に開示の内視鏡は、筒状部材の挿入部に対する位置を保持するための、挿入部から突出するフランジ部を有する。国際公開WO2017/006598号公報に開示の技術では、フランジ部にテーパ面を設けることにより、挿入部に径方向の段差が生じることを防止している。
【0004】
国際公開WO2017/006598号公報に開示されている従来技術では、フランジ部は硬質な部材であることから、フランジ部にテーパ面を形成する場合には、テーパ面の端の薄肉部に所定の強度を発揮する厚さを持たせなければならない。このため、従来技術では、フランジ部に設けられたテーパ面の端において、依然、挿入部の径方向の段差が発生してしまう。挿入部に径方向の段差が生じると、被検体内における挿入部の移動の妨げとなる可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した点を解決するものであって、挿入部の外周に配置される筒状部材を備える挿入具、内視鏡において、被検体内における挿入部の滑らかな移動を可能とすることを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による挿入具は、可撓管部を有し、長手軸に沿って延設される挿入部と、前記可撓管部において前記長手軸に沿う筒状に形成され、駆動力が伝達されることにより前記長手軸周りに回転する筒状部材と、前記可撓管部の外周における前記筒状部材の前記長手軸方向の位置を保持するフランジ部と、前記フランジ部における前記長手軸方向に沿った基端側に設けられ、基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐形状のテーパ部と、外表面に前記テーパ部の基端部から基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐面を有し、前記円錐面の前記長手軸に対する傾斜は、前記テーパ部の前記長手軸に対する傾斜よりも緩やかであって、前記テーパ部の基端部と前記可撓管部の外周とを滑らかに接続するよう形成された接着剤層と、を含む。
本発明の他態様による挿入具は、可撓管部を有し、長手軸に沿って延設される挿入部と、前記可撓管部において前記長手軸に沿う筒状に形成され、駆動力が伝達されることにより前記長手軸周りに回転する筒状部材を前記可撓管部に装着した際に、前記可撓管部の外周における前記筒状部材の前記長手軸方向の位置を保持するためのフランジ部と、前記フランジ部における前記長手軸方向に沿った基端側に設けられ、基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐形状のテーパ部と、外表面に前記テーパ部の基端部から基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐面を有し、前記円錐面の前記長手軸に対する傾斜は、前記テーパ部の前記長手軸に対する傾斜よりも緩やかであって、前記テーパ部の基端部と前記可撓管部の外周とを滑らかに接続するよう形成された接着剤層と、を含む。
本発明の一態様による内視鏡は、可撓管部を有し、長手軸に沿って延設される挿入部と、前記可撓管部において前記長手軸に沿う筒状に形成され、駆動力が伝達されることにより前記長手軸周りに回転する筒状部材と、前記可撓管部の外周における前記筒状部材の前記長手軸方向の位置を保持するフランジ部と、前記フランジ部における前記長手軸方向に沿った基端側に設けられ、基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐形状のテーパ部と、外表面に前記テーパ部の基端部から基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐面を有し、前記円錐面の前記長手軸に対する傾斜は、前記テーパ部の前記長手軸に対する傾斜よりも緩やかであって、前記テーパ部の基端部と前記可撓管部の外周とを滑らかに接続するよう形成された接着剤層と、を含む。
本発明の他態様による内視鏡は、可撓管部を有し、長手軸に沿って延設される挿入部と、前記可撓管部において前記長手軸に沿う筒状に形成され、駆動力が伝達されることにより前記長手軸周りに回転する筒状部材を前記可撓管部に装着した際に、前記可撓管部の外周における前記筒状部材の前記長手軸方向の位置を保持するためのフランジ部と、前記フランジ部における前記長手軸方向に沿った基端側に設けられ、基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐形状のテーパ部と、外表面に前記テーパ部の基端部から基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐面を有し、前記円錐面の前記長手軸に対する傾斜は、前記テーパ部の前記長手軸に対する傾斜よりも緩やかであって、前記テーパ部の基端部と前記可撓管部の外周とを滑らかに接続するよう形成された接着剤層と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】挿入具である内視鏡の構成を説明する図である。
図2】筒状部材と、筒状部材を取り外した状態の動力伝達部を示す図である。
図3】動力伝達部の断面図である。
図4図3の一部を拡大した図である。
図5】本体枠に固定環を固定する構成を分解して示す図である。
図6】溝内にストッパを嵌め込んだ状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0009】
図1に示す挿入具である内視鏡1は、人体等の被検体内に導入可能な細長の挿入部2を有し、挿入部2に被検体内を観察するための構成を有する。なお、内視鏡1の挿入部2が導入される被検体は、人体に限らず、他の生体であってもよいし、機械や建造物等の人工物であってもよい。また、挿入具は、内視鏡に限らず、被検体内において切除や吸引等を行う処置具であってもよい。
【0010】
本実施形態では一例として、内視鏡1は、医療用内視鏡である。内視鏡1は、長手軸に沿って延設される挿入部2と、挿入部2の一方の端である基端に位置する操作部3と、操作部3から延出するユニバーサルコード4と、挿入部2の外周に配置される筒状部材50と、を含む。
【0011】
挿入部2は、先端から基端に向かって、先端部2a、湾曲部2b、第1可撓管部2c、動力伝達部10、および第2可撓管部2dが順に連接されて構成されている。
【0012】
先端部2aには、被検体内を観察するための構成等が配設されている。具体的には、先端部2aには、対物レンズおよび撮像素子を備え光学的に被検体内を観察するための撮像装置が配設されている。また、先端部2aには、撮像装置の被写体を照明する光を出射する照明光出射部も設けられている。なお、先端部2aには、超音波を用いて音響的に被検体内を観察するための超音波振動子が配設されていてもよい。湾曲部2bは、操作部3に設けられている操作ノブ6の回動に応じて湾曲する。先端部2aおよび湾曲部2bの構成は、公知の内視鏡と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0013】
第1可撓管部2cおよび第2可撓管部2dは、可撓性を有しており、加えられる外力に応じて湾曲する。一方、第1可撓管部2cおよび第2可撓管部2dを接続する動力伝達部10は、硬性であり湾曲しない。
【0014】
動力伝達部10は、第1可撓管部2cの外周に配置される筒状部材50が結合される。動力伝達部10は、内視鏡1が備える電動モータ等のアクチュエータ8が発生する動力を、筒状部材50に伝える。アクチュエータ8は、図示しないスイッチの操作に応じて動力の発生の有無を切り替えることができる。
【0015】
操作部3および第2可撓管部2c内には、ドライブシャフト8aが挿通されている。ドライブシャフト8aは、可撓性を有し、アクチュエータ8が発生する動力により長手軸周りに回転する。ドライブシャフト8aは、アクチュエータ8が発生する動力を動力伝達部10に伝達する。
【0016】
筒状部材50は、アクチュエータ8が発生する動力により、第1可撓管部2cに対して、挿入部2の長手軸周りに回転する。動力伝達部10の構成については後述する。
【0017】
ユニバーサルコード4の基端部には図示しない外部装置に接続可能に構成された内視鏡コネクタ5が設けられている。内視鏡コネクタ5が接続される外部装置は、先端部2aに設けられた撮像装置を制御するカメラコントロールユニット等を備える。
【0018】
図2は、筒状部材50と、筒状部材50を取り外した状態の動力伝達部10の外観図である。図2中における一点鎖線は、挿入部2の長手軸Lである。また、図3は、動力伝達部10の部分断面図である。図3は、図2において破線の四角で囲んだ部位の、長手軸Lに平行な平面による断面を示している。図2および図3において、長手軸Lに沿って図中左側が先端側であり、右側が基端側である。
【0019】
図3に示すように、動力伝達部10は、本体枠11、回転環12、被覆部材13、固定環20、および接着剤層30を含む。
【0020】
本体枠11は、第1可撓管部2cの基端と第2可撓管部2dの先端とを接続する筒状の部材である。すなわち、本体枠11は、挿入部2に固定されている。本体枠11の周囲に、回転環12、被覆部材13、固定環20、および接着剤層30が配設される。
【0021】
本体枠11は、金属、樹脂、セラミック等の所定の剛性を有する材料からなる硬質な部材である。なお、図3では本体枠11を単一の部材として示しているが、本体枠11は複数の部材に分割可能であってもよい。
【0022】
本体枠11には、挿入部2の径方向外側に向かって開口する開口部11aが形成されている。なお、挿入部2の径方向外側とは、長手軸Lに直交する軸に沿って挿入部2の内側から外側に向かう方向である。
【0023】
開口部11a内には、ドライブギヤ11bが配設されている。ドライブギヤ11bは外歯車である。ドライブギヤ11bは、本体枠11に対して、長手軸Lと平行な軸周りに回転可能に支持されている。ドライブギヤ11bの歯面の一部は、開口部11aを介して本体枠11の外側に露出している。
【0024】
ドライブギヤ11bの回転軸は、第2可撓管部2d内に挿通されたドライブシャフト8aの先端に連結されている。ドライブシャフト8aの基端は、アクチュエータ8に接続されている。ドライブシャフト8aは、アクチュエータ8が発生する動力をドライブギヤ11bに伝達する。すなわち、アクチュエータ8が動力を発生すると、ドライブギヤ11bが回転する。
【0025】
本体枠11の基端には、円筒形状の結合部11cが設けられている。結合部11cは、第2可撓管部2dの外皮2d1が嵌合する部位である。外皮2d1は、主に樹脂からなり、可撓性を有する管状の部材である。外皮2d1は、第2可撓管部2dの外表面を構成する。
【0026】
なお、図3では、外皮2d1を、単一の部材として示しているが、外皮2d1は、厚さ方向に複数の部材を重ねることにより構成されていてもよい。また、外皮2d1の外周面には、例えばフッ素を含有したコーティング等の表面処理が施されていてもよい。
【0027】
結合部11cは、外皮2d1の先端の開口から、当該開口を押し広げるように圧入されている。結合部11cの外周面と外皮2d1の内周面との間には、両者間の結合強度と水密性を向上させる接着剤が配置されていてもよい。
【0028】
また、本実施形態では一例として、外皮2d1の結合部11cが圧入されている部位の外周面上には、糸巻き部11dが設けられている。糸巻き部11dは、糸を外皮2d1の結合部11cが圧入されている部位を締め付けるよう複数回巻回した部位である。糸巻き部11dは、結合部11cと外皮2d1との間の結合強度と水密性を向上させる。
【0029】
回転環12は、本体枠11の外周に配置され、本体枠11に対して長手軸L周りに回転する環状の部材である。
【0030】
回転環12の内周には、ドライブギヤ11bに噛合するドリブンギヤ12aが設けられている。ドリブンギヤ12aは内歯車である。すなわち、ドライブギヤ11bの回転に応じて、回転環12は長手軸L周りに回転する。
【0031】
回転環12には、複数のローラ12bが配設されている。個々のローラ12bは、回転環12に対して長手軸Lと平行な軸周りに回転可能に支持されている。複数のローラ12bの回転軸は、長手軸Lに直交する平面における長手軸Lを中心とした同一の円上に、所定の間隔で配置されている。図3に示すように、ローラ12bは、本体枠11の外周よりも径方向外側に突出している。
【0032】
被覆部材13は、本体枠11および回転環12の外周を被覆する管状の膜である。被覆部材13は、ゴム等の弾性変形可能な材料からなる。被覆部材13は、動力伝達部10の外表面の一部を構成する。被覆部材13は、本体枠11の開口部11aを経由して挿入部2の内側に液体や異物等が入り込むことを防止する。被覆部材13は、本体枠11に対して固定されている。したがって、回転環12は、被覆部材13の内側において被覆部材13の内周面と接しながら回転する。
【0033】
被覆部材13は弾性変形する膜であることから、図2に示すように、被覆部材13の内側にローラ12bが接している箇所において、動力伝達部10の外表面において径方向外側に向かって突出する係合突起10aが形成される。この係合突起10aの位置は、回転環12にともない、長手軸L周りに移動する。
【0034】
固定環20は、本体枠11の外周に固定された環状の部材である。固定環20は、係合突起10aよりも基端側に配置されている。図5に示すように、固定環20は、本体枠11の基端側の部位を挿通可能な貫通孔20aを有している。固定環20は金属、樹脂、セラミック等の所定の剛性を有する材料からなる硬質な部材である。
【0035】
固定環20は、摺動部21、フランジ部22、およびテーパ部23が先端側から基端側に向かって順に連接されて構成されている。本実施形態では一例として、固定環20は単一の部材からなる。
【0036】
摺動部21は、長手軸Lを中心とした円筒形状の部位である。摺動部21の外径は、複数の係合突起10aに外接する円と略同一かそれよりも大きい。摺動部21の外周には、筒状部材50の後述するコネクタ部52が摺接する。
【0037】
フランジ部22は、摺動部21よりも外側に突出する部位である。具体的に、フランジ部22の外周形状は、長手軸Lを中心とした円筒形状である。すなわち、フランジ部22の外径は摺動部21よりも大きい。また、フランジ部22の外径は、第2可撓管部2dの外径よりも大きい。フランジ部22は、筒状部材50の基端に当接することにより、筒状部材50の挿入部2に対する長手軸Lに沿う方向の位置を保持する。
【0038】
テーパ部23は、長手軸Lを中心とした円錐形状の部位である。テーパ部23は、長手軸Lに沿って基端側に向かうにつれて外径が小さくなる。テーパ部23の先端の外径は、フランジ部22と同一である。一方、テーパ部23の基端の外径は、先端の外径よりも小さいが、第2可撓管部2dの外径よりも大きい。
【0039】
フランジ部22は、筒状部材50を外した状態の挿入部2において、最も外径の大きい部位である。テーパ部23は、フランジ部22と、フランジ部22の基端側に位置する第2可撓管部2dと、の間の外径の差によって生じる段差を解消する。ここで、段差とは、長手軸Lに沿う方向における、挿入部2の外径の急激な変化のことを指す。
【0040】
本実施形態では、テーパ部23の基端側の一部は、結合部11cの外側に重なっている。すなわち、結合部11cの外周を覆う外皮2d1の先端は、テーパ部23の基端部よりも先端側に位置している。したがって、本実施形態では、テーパ部23の基端部は、外皮2d1の外周面に対して径方向外側に位置しており、テーパ部23の基端部と、外皮2d1の外周面との間には依然、段差が生じている。
【0041】
接着剤層30は、テーパ部23の基端部と、外皮2d1の外周面とを滑らかに接続するよう形成されている。接着剤層30は、テーパ部23の基端部と外皮2d1の外周面との間の段差を埋め、かつ基端側に向かうにつれて外径が小さくなる円錐形状の外形を有する。
【0042】
また、本実施形態では、接着剤層30は、外皮2d1の外周の他に、糸巻き部11dを覆うように形成されている。糸巻き部11dへの接着剤層30の密着強度は、外皮2d1の外周への接着剤層30の密着強度よりも低い。このため、内視鏡1のメンテナンス時等において動力伝達部10を分解する際において、接着剤層30を剥離する作業が容易となる。
【0043】
図4は、図3のテーパ部23および接着剤層30の部分を拡大して示す図である。本実施形態では、長手軸Lを含む平面による断面において、接着剤層30の外表面の長手軸Lに対する角度θ1は、テーパ部23の円錐面の長手軸Lに対する角度θ2よりも小さい。すなわち、接着剤層30における長手軸Lに沿う方向の所定の距離あたりの外径の変化量は、テーパ部23における長手軸Lに沿う方向の所定の距離あたりの外径の変化量よりも小さい。本実施形態のように、接着剤層30の傾斜をテーパ部23の傾斜よりも緩やかにすることにより、被検体内で挿入部2を基端方向に移動する際において、動力伝達部10が被検体内の狭窄部や凸部に引っ掛かりにくくすることができる。
【0044】
また、本実施形態では、内視鏡1の組み立て時において接着剤層30を前述した円錐形状となるように塗布する指標となる凸部2d2が、外皮2d1の外周に形成されている。凸部2d2は、外皮2d1の先端から長手軸Lに沿って所定の距離の位置に設けられている。凸部2d2は、外皮2d1の外周の周方向全体に形成されている。
【0045】
凸部2d2は、接着剤層30の基端の位置を示す。内視鏡1の組み立て時には、テーパ部23の基端部から凸部2d2の位置まで塗布すれば、接着剤層30の傾斜をテーパ部23の傾斜よりも確実に緩やかにすることができる。また、凸部2d2を目安に接着剤層30を形成することにより、接着剤層30の形状のばらつきを抑えることができる。
【0046】
なお、凸部2d2の形成方法は特に限定されない。例えば、凸部2d2は、外皮2d1の外周に形成されたコーティングを切削することにより形成することができる。
【0047】
また、本実施形態では、接着剤層30の基端は、外皮2d1内に圧入されている結合部11cの基端よりも先端側に配置されている。すなわち、外皮2d1の接着剤層30により覆われる部分の内側には、硬質の結合部11cが圧入されている。言い換えれば、本実施形態では、接着剤層30は、外皮2d1の湾曲しない領域のみを覆うように配設されている。このような本実施形態によれば、内視鏡1の使用時において接着剤層30と外皮2d1との密着面が変形しないことから、接着剤層30と外皮2d1との間に隙間が生じることを防止できる。
【0048】
また、本実施形態では、テーパ部23の基端は、丸められたR形状である。テーパ部23の基端をR形状とすることにより、テーパ部23の外表面とその周囲に配置される接着剤層30の外表面とを滑らかに連続させることができる。
【0049】
次に、筒状部材50の構成について説明する。図2に示すように、筒状部材50は、内側に第1可撓管部2cを挿通することが可能な貫通孔50aが形成された筒形状である。筒状部材50は、先端側に設けられ可撓性を有する変形部51と、基端側に設けられ硬性のコネクタ部52と、が長手軸Lに沿う方向に連接されて構成されている。
【0050】
変形部51は、可撓性を有することから、貫通孔50a内に挿通された第1可撓管部2cと共に湾曲する。変形部51の外周には、フィン51aが設けられている。フィン51aは、長手軸Lを中心軸とした螺旋形状である。すなわち、フィン13bは、雄ネジの山の部分に相当する形状を有している。
【0051】
コネクタ部52は、動力伝達部10の摺動部21の外周に摺接する円筒形状の部位である。コネクタ部52の内径は、摺動部21の外径よりも大きく、フランジ部22の外径よりも小さい。したがって、コネクタ部52をフランジ部22に突き当てることにより、筒状部材50の挿入部2に対する長手軸Lに沿う方向の位置決めがなされる。また、コネクタ部52は、摺動部21の周囲で挿入軸L周りに回転することができる。
【0052】
コネクタ部52の内周面には、径方向内側に向かって突出する複数の係合爪52aが形成されている。係合爪52aは、コネクタ部52をフランジ部22に突き当てた状態において、係合突起10aと係合する位置に配置されている。
【0053】
前述のように、係合突起10aは、アクチュエータ8が発生する動力によって動力伝達部10の外表面において長手軸L周りに移動する。アクチュエータ8の動力は、係合突起10aおよび係合爪52aの係合により、筒状部材50に伝達される。したがって、本実施形態の内視鏡1では、アクチュエータ8が発生する動力によって、筒状部材50を長手軸L周りに回転させることができる。
【0054】
筒状部材50が外周に配置された状態の挿入部2を被検体内に挿入し、アクチュエータ8によって筒状部材50を長手軸L周りに回転させることにより、螺旋形状であるフィン51aが被検体内において長手軸L周りに回転する。被検体の内壁に当接した状態でフィン51aが回転することによって、筒状部材50は、挿入部2に先端方向または基端方向への推進力を付与する。この推進力の付与により、挿入部2の被検体内における長手軸方向の移動性が向上する。
【0055】
以上に説明したように、本実施形態の挿入具である内視鏡1は、長手軸Lに沿って延設される挿入部2と、挿入部2において長手軸Lに沿う筒状に形成され、駆動力が伝達されることにより長手軸L周りに回転する筒状部材50と、挿入部2の外周における筒状部材50の長手軸L方向の位置を保持するフランジ部22と、フランジ部22における長手軸L方向に沿った基端側に設けられ、基端側に向かうにつれて外径が小さくなるテーパ部23と、テーパ部23の基端部と挿入部2の外周とを滑らかに接続するよう形成された接着剤層30と、を含む。
【0056】
このような構成を有する本実施形態の内視鏡1では、挿入部2から径方向外側に突出するフランジ部22の外周面と、挿入部2(第2可撓管部2d)の外周面と、を円錐形状であるテーパ部23および接着剤層30により滑らかに連続した面で接続することができる。特に接着剤層30の端は、挿入部2の外表面に沿って薄く形成することが可能であるから、挿入部2における径方向の僅かな段差も解消することができる。したがって、本実施形態の内視鏡1は、被検体内における挿入部2の滑らかな移動を可能とすることができる。
【0057】
次に、動力伝達部10において、本体枠11に固定環20を固定する構成について説明する。図5は、本体枠11に固定環20を固定する構成を分解して示す図である。図5において、長手軸Lに沿って図中左側が先端側であり、右側が基端側である。
【0058】
図4および図5に示すように、本体枠11と固定環20との間には、ストッパ14が介在している。ストッパ14は、本体枠11および固定環20の双方から分離可能な部材である。固定環20は、ストッパ14を介して本体枠11に固定されている。
【0059】
具体的に、ストッパ14は、本体枠11の外周面に周方向に彫られた溝11e内に嵌り込む円環状の部材である。ストッパ14が溝11e内に嵌り込むことにより、ストッパ14の本体部11に対する長手軸Lに沿う方向の位置決めがなされる。
【0060】
ストッパ14の内周面の一部には、平面部14dが形成されている。図4に示すように、溝11e内には、平面部14dと当接する平面部11fが形成されている。平面部14dと平面部11fを当接させることにより、ストッパ14の本体部11に対する長手軸L周りの回転方向の位置決めがなされる。
【0061】
ストッパ14は、金属、樹脂、セラミック等の所定の剛性を有する材料からなる硬質な部材である。本体枠11は、溝11eよりも先端側および基端側に、溝11eの底部の外径よりも径方向外側に突出した部位を有する。
【0062】
硬質であるストッパ14を、溝11e内に嵌め込むために、ストッパ14は第1部材14aおよび第2部材14bの2つの部材に分割されている。第1部材14aおよび第2部材14bは、円環状であるストッパ14を等分した形状である。すなわち、第1部材14aおよび第2部材14bは、それぞれ180度の円弧状である。
【0063】
円弧状である第1部材14aおよび第2部材14bのそれぞれの両端には、係止爪14cが形成されている。係止爪14cは、第1部材14aおよび第2部材14bのそれぞれの両端から、長手軸Lに沿う方向に突出している。
【0064】
溝11eの側面部には、係止爪14cが係合する係合凹部11gが形成されている。図6に示すように、第1部材14aおよび第2部材14bを溝11e内に嵌め込むと、係止爪14cが係合凹部11gと係合する。係止爪14cと係合凹部11gとの係合により、第1部材14aおよび第2部材14bの溝11e内からの脱落が防止される。この構成により、2つの部材に分割されているストッパ14が本体枠11に保持されるため、内視鏡1の組立時の作業が容易となる。
【0065】
また、ストッパ14には、ピン15が径方向外側から嵌合する穴14eが形成されている。穴14eは、第1部材14aおよび第2部材14bの双方に形成されている。また、固定環20には、ピン15が挿通されるピン挿通孔20bが形成されている。
【0066】
ストッパ14は、固定環20の貫通孔20a内に、先端側から挿入可能な外径を有している。そして、固定環20の貫通孔20a内には、ストッパ14の基端が突き当たる突き当て面20cが形成されている。
【0067】
ストッパ14の基端を固定環20の突き当て面20cに当接させ、ピン15をピン挿通孔20bおよび穴14e内に挿入することにより、固定環20はストッパ14に対して位置決めされた状態で固定される。前述のように、ストッパ14は、溝11e内において本体枠11に対して位置決めされた状態で固定されている。
【0068】
以上に説明した構成により、固定環20は、本体枠11に対して位置決めされた状態で固定される。以上に説明した構成では、固定環20を、本体枠11の基端側から本体枠11の外周に嵌め込んで固定することができる。
【0069】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う挿入具もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0070】
本出願は、2018年3月29日に日本国に出願された特願2018−064864号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6