特許第6883724号(P6883724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883724
(24)【登録日】2021年5月13日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】潮流発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/26 20060101AFI20210531BHJP
【FI】
   F03B13/26
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-66853(P2017-66853)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-168762(P2018-168762A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年1月31日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「橋脚・港湾構造物利用式潮流発電」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】森屋 陽一
(72)【発明者】
【氏名】田口 智
(72)【発明者】
【氏名】杉原 広晃
(72)【発明者】
【氏名】山下 徹
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/010675(WO,A1)
【文献】 特開2014−159815(JP,A)
【文献】 特開2006−329091(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0936907(KR,B1)
【文献】 特開2016−113987(JP,A)
【文献】 特開昭50−053750(JP,A)
【文献】 特表2013−503995(JP,A)
【文献】 特開昭54−094729(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/036170(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0260148(US,A1)
【文献】 特表2015−520690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/00 − 13/26
E02B 9/08
E02B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潮流を利用した潮流発電装置において、
水中に自立した状態で立設された管体と、該管体内に昇降可能に挿入された発電ユニットと、該発電ユニットを昇降させる昇降手段とを備え、
前記管体には、所定の高さに形成され潮流方向に開口した通水部を備え、
前記発電ユニットは、前記通水部の位置に合わせて設置され、該通水部を通る潮流により発電機が駆動するようにしたことを特徴とする潮流発電装置。
【請求項2】
前記昇降手段は、前記発電ユニットに固定された浮力調節可能な浮力調節体を備えている請求項1に記載の潮流発電装置。
【請求項3】
前記発電ユニットは、潮流を受けて回転する回転体と、該回転体の回転軸が接続された発電機とを備え、前記回転体が前記開口の位置に合わせて設置されている請求項1又は2に記載の潮流発電装置。
【請求項4】
前記管体の上端部と水中構造物とを連結する連絡通路を備えている請求項1〜3の何れか一に記載の潮流発電装置。
【請求項5】
前記管体は、上部工を支持する杭体である請求項1〜4の何れか一に記載の潮流発電装置。
【請求項6】
前記管体の上端部と水中構造物とを連結する連絡通路又は前記管体に支持された上部工には、前記管体と連通した作業用孔と、該作業用孔を閉鎖する開閉蓋とを備えている請求項4又は5に記載の潮流発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潮流を利用して発電する潮流発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーを利用した発電装置が注目されており、その一つとして、水中に発電ユニットを設置し、潮流を利用して発電機を駆動させる潮流発電装置が知られている。
【0003】
一方、潮流発電装置は、その構造上、潮流が発生する所定の水域に発電ユニットを設置する必要があり、当該水域に安定して発電ユニットを支持する構造体を必要としていた。
【0004】
また、潮流発電装置では、発電ユニットで発電した電力を水中から地上に送電する設備を必要とするが、そのような送電設備の設置は容易でなかった。
【0005】
そこで、従来では、発電ユニットを橋脚やその他の水中構造物に支持させることにより、発電ユニットを支持する構造を簡便化するとともに、送電線を水中構造物に支持させることにより送電設備の設置を容易にする取り組みがなされている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
この潮流発電装置は、例えば、発電ユニットを構成するタービンの支持軸下端を土台に支持させるとともに、タービン支持軸の上端が支持部材を介して橋脚等の水中構造物に支持させることにより、水中に安定して設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−214142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、既存の水中構造物に支持させる場合、支持構造の水中構造物への依存度が高く、発電ユニットを設置する位置の自由度が制限されるという問題がある。
【0009】
また、水中構造物の当初設計においては、潮流発電装置の設置が想定されていないため、発電ユニットの設置場所によって、潮流に乱れが生じ、安全上は問題なくても橋脚や港湾構造物の安定性が低下するおそれがあった。
【0010】
さらに、潮流発電装置は、潮流の速い水域に設置される為、発電ユニットの設置や保守点検が容易ではなく、水中構造物に支持させた場合であっても、発電ユニットの設置や保守点検作業のために作業船やクレーンを必要とし、そのためのコストが嵩むという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、安定して水中に設置でき、且つ、設置作業や保守点検作業が容易な潮流発電装置の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、潮流を利用した潮流発電装置において、水中に自立した状態で立設された管体と、該管体内に昇降可能に挿入された発電ユニットと、該発電ユニットを昇降させる昇降手段とを備え、前記管体には、所定の高さに形成され潮流方向に開口した通水部を備え、前記発電ユニットは、前記通水部の位置に合わせて設置され、該通水部を通る潮流により発電機が駆動するようにした潮流発電装置にある。
【0013】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記昇降手段は、前記発電ユニットに固定された浮力調節可能な浮力調節体を備えていることにある。
【0014】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記発電ユニットは、潮流を受けて回転する回転体と、該回転体の回転軸が接続された発電機とを備え、前記回転体が前記開口の位置に合わせて設置されていることにある。
【0015】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1〜3の何れか一の構成に加え、前記管体の上端部と水中構造物とを連結する連絡通路を備えていることにある。
【0016】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1〜4の何れか一の構成に加え、前記管体は、上部工を支持する杭体であることにある。
【0017】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項4又は5の構成に加え、前記管体の上端部と水中構造物とを連結する連絡通路又は前記管体に支持された上部工には、前記管体と連通した作業用孔と、該作業用孔を閉鎖する開閉蓋とを備えていることにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る潮流発電装置は、請求項1に記載の構成を具備したことによって、管体に案内させて発電ユニットを移動させることができ、潮流の速い水域においても発電ユニットの設置作業や発電ユニットの保守点検作業を容易に行うことができる。また、橋脚や港湾構造物等の水中構造物に依存せずに管体を自立して設置することができるため、設置位置の自由度が高く、橋脚や港湾構造物等の水中構造物と発電装置とを互いに乱れの影響を受け難いように設置することができる。
【0019】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、浮力を利用して小さな力によって管体内で発電ユニットを容易に昇降させることができ、ウインチやクレーン等の装置の小型化を図り、その分のコストを削減することができる。
【0020】
また、本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、効率よく潮流を利用して発電することができる。
【0021】
また、本発明において、請求項4に記載の構成を具備することによって、発電装置をより安定した状態で設置することができる。また、既存の水中構造物を利用して効率的に潮流発電装置及び送電設備の設置ができる。
【0022】
また、本発明において、請求項5に記載の構成を具備することによって、桟橋等の杭によって支持される構造物に潮流発電装置を組み合わせることができる。
【0023】
また、本発明において、請求項6に記載の構成を具備することによって、発電ユニットの設置作業や保守点検作業を容易に行うことができ、且つ、管体内への落下防止や見栄えの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る潮流発電装置の一例を示す正面図である。
図2】同上の他の一例を示す正面図である。
図3】同上の他の一例を示す正面図である。
図4】同上の他の一例を示す正面図である。
図5図1中の発電ユニット設置部分を示す部分拡大断面図である。
図6】同上のA-A線矢視断面図である。
図7】発電ユニットの設置作業の状態を示す部分破断断面図である。
図8】本発明に係る潮流発電装置の他の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明に係る潮流発生装置の実施態様を図1図8に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は潮流発電装置、符号2は橋脚や港湾構造物等の水中構造物、符号3は水底、符号wは水面である。
【0026】
尚、本実施例では、主に紙面奥行き方向の潮流を利用する場合を例に説明する。また、本発明において、潮流とは、潮の流れ及び海水の流れのみに限定されず、発電に有用な水流をも含むものとする。
【0027】
潮流発電装置1は、水中に立設された管体4と、管体4内に昇降可能に挿入された発電ユニット5と、発電ユニット5を昇降させる昇降手段6とを備え、潮流を利用して発電ユニット5を駆動させ、発電するようになっている。
【0028】
管体4は、鋼管等によって構成され、上端が水面wより突出し、下端が水底3部に埋め込まれて自立した状態で立設され、潮流に対抗し、単独で水中において安定した状態を維持できるようになっている。
【0029】
尚、管体4は、上述の実施例の他、図2に示すように、下端を水底に設置されたコンクリート版等の土台構造体7に固定したもの、図3及び図4に示すように、下端が水底3部に埋め込まれた固定用管杭8を使用し、固定用管杭8と管体4の下端が嵌合しているものであってもよい。
【0030】
また、管体4は、その上端部と水中構造物2とが連絡通路9によって連結され、より安定した状態で支持されている。
【0031】
連絡通路9は、平板状に形成され、管体4の上端と連通した作業用孔10と、作業用孔10を閉鎖する着脱可能な開閉蓋11とを備え、開閉蓋11を開くことによって作業用孔10を通して管体4内に発電ユニット5を出し入れできるようになっている。
【0032】
また、この管体4には、所定の高さに形成された開口12a,12aからなる通水部12を備えるとともに、通水部12の下方に発電ユニット5を支持するストッパー13を備え、発電ユニット5を通水部12の位置に合わせて設置できるようになっている。
【0033】
各開口12a,12aは、管体4の外周面において潮流方向、且つ、管体4の管径方向で対称配置に開口し、潮流を妨げないようになっている。
【0034】
また、開口12a,12aの形状は、通水部12の断面形状が管体4の強度に影響を及ぼさない形状とし、例えば、実施例のように矩形穴状としてもよく、複数のスリットが縦又は横方向に平行に設けてもよい。
【0035】
ストッパー13は、円環状に形成され、管体内周面の所定高さ、即ち、開口13aよりやや下の位置に固定され、発電ユニット5の下面周縁を支持するようになっている。
【0036】
発電ユニット5は、図5図6に示すように、上下に間隔を置いて配置された複数の仕切板14a,14a…及び各仕切板14a,14a間を連結する支柱14b,14bを有するフレーム14と、フレーム14内に配置された回転体15と、回転体15の回転軸16が接続された発電機17とを備えている。
【0037】
回転体15は、両端をフレーム14の仕切板14a,14aに回転自在に支持させた回転軸16と、回転軸16に支持されたタービン18,18とを備え、タービン18,18の回転に伴い回転軸16が回転するようになっている。
【0038】
タービン18は、周方向に間隔をおいて配置された複数の回転翼18a,18a…を備え、通水部12の開口12a,12aを通して回転翼18a,18a…が潮流を受けることにより回転軸16を所望の方向に回転させるようになっている。
【0039】
回転翼18aは、図6に示すように、流線形断面を有し、潮流を受けて回転軸16を効率よく回転させるようになっている。
【0040】
発電機17は、天板14a上に固定され、回転軸16の端部が磁気ギア等のギアボックス19を介して接続されている。そして、回転体15の回転によって発電し、送電線(特に図示しない)によって電力を送電するようになっている。尚、図中符号24はブレーキユニットであり、回転軸の回転を制御できるようになっている。
【0041】
尚、送電線は、管体4内を通して連絡通路9に引き出され、更に、橋脚や港湾構造物等の水中構造物2に支持させて所望の送電先まで延長されている。
【0042】
昇降手段6は、図7に示すように、連絡通路9上に設置されるウインチ装置20と、発電ユニット5のフレーム14下に固定された浮力調節可能な浮力調節体21とを備えている。
【0043】
ウインチ装置20は、作業用孔10を跨いで設置される門型フレーム22と、門型フレーム22に支持されたウインチ23とを備え、ウインチ23より繰り出されたワイヤー23aの下端に発電ユニット5が接続され、吊り持ちされるようになっている。
【0044】
浮力調節体21は、中空状の浮体をもって構成され、浮体内に水等の流体を注排水することによって浮力を調整できるようになっている。
【0045】
よって、この昇降手段6では、発電ユニット5を下降させる場合、浮力調節体21内に注水し、浮力を低下させることによって、管体4に案内された状態で自重によって発電ユニット5が下降し、上昇させる場合には、浮力調節体21内より排水し、浮力を上昇させることによって、浮力が加わり、小さな力で発電ユニット5を気中まで吊り上げることができるようになっている。
【0046】
このように構成された潮流発電装置1は、管体4が自立して設置され、潮流に対抗することができ、且つ、発電ユニット5がこの管体4に案内されて昇降可能であるので、潮流の速い水域においても、発電ユニット5の設置作業や保守点検作業を容易に行うことができる。
【0047】
また、この潮流発電装置1では、橋脚や港湾構造物等の水中構造物2に依存せずに管体4を自立して設置することができるため、設置位置の自由度が高く、橋脚や港湾構造物等の水中構造物2と発電装置とが互いに潮流の乱れの影響を受け難いように設置することができ、その分、水中構造物2の安定化や発電効率の向上を図ることができる。
【0048】
さらに、この潮流発電装置1では、管体4の上端と水中構造物2とを連絡通路9で結ぶことによって、より高い安定性を確保できるとともに、発電装置及び送電設備の設置を好適に行うことができ、且つ、橋脚や港湾構造物等の水中構造物2と発電装置とが互いに潮流の乱れの影響を受け難い。
【0049】
尚、上述の実施例では、管体4の上端と水中構造物2とを連絡通路9で結んだ例について説明したが、潮流発電装置1を単独で設置してもよい。
【0050】
また、潮流発電装置1は、図8に示すように、管体4を、上部工30を支持する杭体とし、桟橋等の杭支持構造物31に適用することもできる。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
さらに、上述の実施例では、昇降装置にウインチ装置20と浮力調節体21とを備えたものについて説明したが、ウインチ装置20のみで構成してもよい。また、ウインチ装置20の他、図8に示すように、クレーン装置32を使用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 潮流発電装置
2 水中構造物
3 水底
4 管体
5 発電ユニット
6 昇降手段
7 土台構造体
8 固定用管杭
9 連絡通路
10 作業用孔
11 開閉蓋
12 通水部
12a 開口
13 ストッパー
14 フレーム
15 回転体
16 回転軸
17 発電機
18 タービン
19 ギアボックス
20 ウインチ装置
21 浮力調節体
22 門型フレーム
23 ウインチ
24 ブレーキユニット
30 上部工
31 杭支持構造物
32 クレーン装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8