(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883852
(24)【登録日】2021年5月13日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】リチウムイオン2次電池を備えた電源装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/615 20140101AFI20210531BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20210531BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20210531BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
H01M10/615
H01M10/633
H01M10/48 301
H02J7/10 L
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-124038(P2017-124038)
(22)【出願日】2017年6月26日
(65)【公開番号】特開2019-9002(P2019-9002A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】591198364
【氏名又は名称】アクソンデータマシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】特許業務法人 日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 努
(72)【発明者】
【氏名】高塚 裕洸
【審査官】
辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】
特表2017−529646(JP,A)
【文献】
特開2012−023836(JP,A)
【文献】
特開2015−037013(JP,A)
【文献】
特開平11−026032(JP,A)
【文献】
特開2004−063397(JP,A)
【文献】
特開2014−157778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00− 7/12
7/34− 7/36
H01M 10/42−10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給された電力を蓄電し、蓄電した前記電力に基づいて放電電流を供給することにより電力を供給するリチウムイオン2次電池と、制御回路と、前記リチウムイオン2次電池の状態を計測する計測回路と、を備え、通常運転モードにおいては、前記リチウムイオン2次電池の放電電流が安全上の観点から予め定められている最大放電電流値A0を超えないように動作する電源装置であって、
前記制御回路は、前記計測回路の計測結果に基づいて、前記リチウムイオン2次電池の状態が所定の温度t1より低い状態かどうかを判断し、
前記リチウムイオン2次電池の状態が前記所定の温度t1より高い状態であれば、前記制御回路は前記通常運転モードを選択し、前記リチウムイオン2次電池から、前記通常運転モードに基づく前記最大放電電流値A0を超えない放電電流が供給され、
前記制御回路が、前記リチウムイオン2次電池の状態が前記所定の温度t1より低い状態であると判断すると、前記制御回路は、温度上昇運転モードを選択し、前記通常運転モードでは流すことがない前記最大放電電流値A0を超える値の放電電流が前記リチウムイオン2次電池から供給される、ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置において、前記リチウムイオン2次電池の温度と前記温度上昇運転モードにおける前記リチウムイオン2次電池の放電電流との関係を記憶する記憶装置が設けられ、
前記制御回路によって前記温度上昇運転モードが選択されると、前記記憶装置に記憶された前記リチウムイオン2次電池の温度と前記リチウムイオン2次電池の放電電流との前記関係に基づいて前記温度上昇運転モードにおける前記リチウムイオン2次電池の放電電流の値が決定される、ことを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2の内の一に記載の電源装置において、前記電源装置の内部に前記温度上昇運転モードにおける放電電流を流すための電流制御回路を備えた放電回路が設けられている、ことを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電源装置において、前記リチウムイオン2次電池の温度と前記温度上昇運転モードにおける前記リチウムイオン2次電池の放電電流を流す放電時間との関係を記憶する記憶装置が設けられ、
前記制御回路によって前記温度上昇運転モードが選択されると、前記記憶装置に記憶された前記リチウムイオン2次電池の温度と前記リチウムイオン2次電池の放電電流を流す放電時間との前記関係に基づいて前記温度上昇運転モードにおける前記リチウムイオン2次電池の放電電流を流す放電時間が決定される、ことを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1あるいは請求項4に記載の電源装置において、前記電源装置の内部に前記温度上昇運転モードにおける放電電流を流すための半導体スイッチング素子を備えた放電回路が設けられている、ことを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の内の一に記載の電源装置において、表示装置が設けられ、前記制御回路により前記温度上昇運転モードが選択されると、前記表示装置に、温度上昇運転モードの実行であることが表示される、ことを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン2次電池を備えた電源装置およびその制御技術に関し、特に、リチウムイオン2次電池備えた低温で使用可能な電源装置およびその制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン2次電池は小型軽量でしかも単位体積当たりのエネルギー密度が大きい特徴を有している。このため広く利用されつつあり、今後その需要が更に増大すると考えられる。リチウムイオン2次電池は充放電動作において、電解質内をリチウムイオンが移動するのみで、他の多くの2次電池のように化学変化を利用して電力を蓄える方式ではないため、使用温度範囲が比較的広い利点を有している。
【0003】
しかし、充放電状態においてリチウムイオンが移動電解質が温度によりその特性が変化する。リチウムイオン2次電池では、電解質内を移動するリチウムイオンの移動特性に依存してリチウムイオン2次電池の性能が変化する。温度が低下すると上記電解質の状態が変化し、電解質内のリチウムイオン移動特性が悪化する。その結果、リチウムイオン2次電池が置かれている環境における温度の低下に伴ってリチウムイオン2次電池の性能が低下する。
【0004】
リチウムイオン2次電池は他の2次電池よりも性能的に優れており、低温状態でもリチウムイオン2次電池を使用したいとの要望がある。しかしマイナス20℃あるいはマイナス30℃の低温状態では、例えばリチウムイオン2次電池の電解質の粘度が上昇し、リチウムイオンの移動度が低下し、2次電池としての性能が低下する。このため上記電解質の改良し、低温状態でのリチウムイオン2次電池の電解質の粘度の増大を抑制しようとする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−134261号公報
【特許文献2】特開2015−5426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2では、低温状態においてもリチウムイオンの移動度の低下が少ないリチウムイオン2次電池用の電解質が提案されている。しかし十分な性能が得られているとは言えない。
【0007】
本発明の目的は、低温状態において、リチウムイオン2次電池の性能を向上させることができるリチウムイオン2次電池を備えた電源装置、あるいはその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、リチウムイオン2次電池と、制御回路と、放電回路と、前記リチウムイオン2次電池の状態を計測する計測回路と、を備え、前記制御回路は前記リチウムイオン2次電池の温度を上昇させるために前記リチウムイオン2次電池から前記放電回路に放電電流を流すようにした、ことを特徴とする電源装置である。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記リチウムイオン2次電池の温度を上昇させるために前記リチウムイオン2次電池から前記放電回路に流す放電電流の最大値が、リチウムイオン2次電池の正常な動作におけるリチウムイオン2次電池の最大電流値より大きな電流値である、ことを特徴とする電源装置である。
【0010】
第3の発明は、第1の発明において、表示装置がさらに設けられ、前記制御回路は前記リチウムイオン2次電池の温度を上昇させるために前記リチウムイオン2次電池から前記放電回路に放電電流を流すときに、前記表示装置に前記リチウムイオン2次電池の温度を上昇させるための運転モードであることを表示する、ことを特徴とする電源装置である。
【0011】
第4の発明は、第3の発明において、前記表示装置にさらに、前記リチウムイオン2次電池の温度を上昇させるための運転モードの終了までの予定時間に係る情報を表示する、ことを特徴とする電源装置である。
【0012】
第5の発明は、第1の発明の電源装置の制御方法であって、前記制御回路は前記計測回路の計測結果に基づいて、前記リチウムイオン2次電池の温度を上昇させるため温度上昇運転モードの運転が必要かどうかを判断し、前記温度上昇運転モードの運転が必要と判断した場合に前記リチウムイオン2次電池から前記放電回路に電流を流す制御を行う、ことを特徴とする電源装置の制御方法である。
【0013】
第6の発明は、第5の発明の電源装置の制御方法において、前記制御回路は前記計測回路の前記計測結果から前記放電回路に流す電流値あるいは通電時間を求め、前記制御回路は前記放電回路に流す電流を制御する、ことを特徴とする電源装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低温状態において、リチウムイオン2次電池の性能を改善することができる電源装置、あるいはその制御方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明を適用した、リチウムイオン2次電池を備えた電源装置の概念を説明する説明図である。
【
図2】リチウムイオン2次電池の温度と運転モードとの関係を説明する説明図である。
【
図3】リチウムイオン2次電池を備えた電源装置の制御を説明するフローチャートである。
【
図4】温度上昇運転モード20における表示装置160の表示内容を説明する説明図である。
【
図5】リチウムイオン2次電池110の温度と温度上昇用電流A1の大きさとの関係、あるいはパルス幅、あるいはパルス回数、との関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.電源装置100の構成および電源装置100の基本動作の説明
図1に本発明の一実施形態である電源装置100の構成を示す。電源装置100はリチウムイオン2次電池110を備えている。リチウムイオン2次電池110に電力を蓄えるためには、充電用電源190から電力が外部接続回路180および内部接続回路140を介してリチウムイオン2次電池110に電力が供給され、リチウムイオン2次電池110において電力が蓄えられる。リチウムイオン2次電池110は直流電力を蓄えるので、充電用電源190が交流電力を供給する場合には、充電用電源190とリチウムイオン2次電池110との間に交流を直流に変換するAC/DC変換回路が設けられる。
【0017】
リチウムイオン2次電池110に蓄えられた電力を電気負荷182に供給する場合には、リチウムイオン2次電池110に蓄えられた電力が内部接続回路140および外部接続回路180を介して電気負荷182へ供給される。電気負荷182が交流電力を必要とする場合には、リチウムイオン2次電池110と電気負荷182との間に直流を交流に変換するDC/AC変換回路が設けられる。
【0018】
リチウムイオン2次電池110に電力を蓄える充電制御や電気負荷182へ電力を供給する電力供給制御は、コンピュータを備えた制御回路150によって行われる。リチウムイオン2次電池110を操作者が直接操作する場合には、操作部142から操作することができ、リチウムイオン2次電池110への充電や電気負荷182への電力供給を、操作部142から行うことができる。また外部機器からの情報に基づいて上述したリチウムイオン2次電池110への電力の充電や電気負荷182への電力の供給を行うことができる。このような指令を外部の機器から行うことができ、情報端子144を介して外部機器から制御回路150に指令が送られてくる。
【0019】
電源装置100はリチウムイオン2次電池110の全体の入力あるいは出力電流を計測する電流計測回路152や、リチウムイオン2次電池110の全体の端子電圧やリチウムイオン2次電池110を構成する各セルの端子電圧を計測する電圧計測回路154や、リチウムイオン2次電池110の表面や内部の温度を計測する温度計測装置156を備えていて、電源装置100の状態を常時検知すると共に、異常状態に関する診断を常時行っている。診断履歴や計測データは記憶装置158に蓄えられ、例えば保守点検時に読み出して確認することができる。表示装置160が設けられ、情報の入出力に使用されるだけではなく、電源装置100の動作モードや状態を表示することが可能となる。
【0020】
2.温度上昇運転モード
電源装置100が低温環境に置かれているとリチウムイオン2次電池110の内部温度も低下し、上述したようにリチウムイオン2次電池110の各セル内の電解質の状態か変化し、電解質内のリチウムイオンの移動度が低下する。この結果リチウムイオン2次電池110の性能が低下する。制御回路150はリチウムイオン2次電池110の温度を温度計測装置156により検出することができ、温度低下によるリチウムイオン2次電池110の性能低下を検知することができる。あるいは温度低下によるリチウムイオン2次電池110の性能低下は電流計測回路152や電圧計測回路154の検出値からも検知することができる。
【0021】
温度低下によるリチウムイオン2次電池110の性能低下は、リチウムイオン2次電池110の内部温度を上昇させることにより改善することができる。電源装置100はリチウムイオン2次電池110の放電電流を流す放電回路146を備えている。リチウムイオン2次電池110からの電流を放電回路146に流すことにより、リチウムイオン2次電池110の内部温度を上昇させることができる。
図2を用いてリチウムイオン2次電池110の内部温度を上昇させる温度上昇運転モードを説明する。
【0022】
リチウムイオン2次電池110はその内部温度が低下するとそれに応じて性能が低下するが、一例として−t1℃以上で動作させたいとした場合に、制御回路150は温度計測装置156により先ずリチウムイオン2次電池110が−t1℃以下の状態であることを検知する。この検知に基づき制御回路150は温度上昇運転モードに入り、リチウムイオン2次電池110から内部接続回路140を介して放電回路146に電流を供給する。放電回路146はリチウムイオン2次電池110の温度上昇のための電流を流す回路であり、一時的にリチウムイオン2次電池110の最大放電電流を超える電流、あるいはリチウムイオン2次電池110の最大放電電流の数倍、さらには数十倍の電流を流すことができる。このような大きな電流を長時間流す場合は大きな危険を伴うが、極めて短い期間に限って大きな電流を流す場合には、もともとリチウムイオン2次電池110の内部温度が低温状態であるために、危険性が伴わない。
【0023】
図2においてリチウムイオン2次電池110の温度が−t1℃を下回っているので、温度上昇運転モード20の制御が行われ、リチウムイオン2次電池110の最大放電電流A0を超える温度上昇用電流A1がリチウムイオン2次電池110から放電回路146に供給される。
図2のグラフ1に示す如く、温度上昇用電流A1が流れることにより、リチウムイオン2次電池110の温度が上昇する。その結果リチウムイオン2次電池110の温度が−t1℃より高くなり、温度上昇運転モード20に代わって通常運転モード30の制御が行われる。放電回路146は内部接続回路140によってリチウムイオン2次電池110から切り離され、リチウムイオン2次電池110から電気負荷182へ、内部接続回路140や外部接続回路180を介して動作電流A2が供給される。電気負荷182からの要求により、動作電流A2は変化するが、最大放電電流A0を超えることは無い。
【0024】
上述したように温度上昇用電流A1は、リチウムイオン2次電池110の内部温度を積極的に短時間に上昇させることが目的であり、この実施形態ではリチウムイオン2次電池110の最大放電電流A0を超える電流を流している。このような大きな電流を流すためには抵抗値の小さい電気負荷が必要であり、放電回路146を設けている。
【0025】
図2では通常運転モード30として電気負荷182への電流の供給モードを例示したが、リチウムイオン2次電池110への充電用電源190からの電力供給モードであっても良い。その場合には動作電流A2は
図2に記載の電流とは逆方向の電流となる。
3.制御回路150の動作説明
電源装置100における温度上昇運転モード20にかかる制御回路150の動作を、
図3に記載の制御フローチャートS500を用いて説明する。電源装置100自身が使用されていない状態では、リチウムイオン2次電池110の温度が例えばマイナス30℃などの低温状態であっても、温度を上昇させる必要がない。従ってリチウムイオン2次電池110の温度を上昇させるための温度上昇運転モード20に基づくリチウムイオン2次電池110の運転は不要である。情報端子144からの指令がなく、また操作部142からの操作に係る入力がない場合には、指令待ちの状態である。この状態は、制御回路150は一定時間毎に制御回路150に対する動作指令の有無を確認する。もし特別な動作指令が無いならば、この実施形態では、温度上昇運転モード20は行わない。
【0026】
操作部142からの操作者による動作指令の入力や、あるいは情報端子144を介しての他の機器からの動作指令が受信されると、制御回路150はリチウムイオン2次電池110を使用した動作が必要と判断する。制御回路150は、ステップS510で運転指令ありの状態と判断して、ステップS512へ、制御回路150の実行が移る。リチウムイオン2次電池110を用いた動作を開始するためには、リチウムイオン2次電池110の状態を検知することが必要であり、ステップS512では、リチウムイオン2次電池110の状態の検知を行う。具体的には一例として、電流計測回路152や電圧計測回路154、温度計測装置156によるリチウムイオン2次電池110の状態に関する計測を行う。
【0027】
ステップS512での計測結果は記憶装置158に記録される。上述したように記憶装置158には、計測データだけでなく過去の診断結果も記憶されており、リチウムイオン2次電池110の状態の履歴や計測結果の履歴が記憶されている。従ってリチウムイオン2次電池110の状態変化を確認することができる。ステップS512での計測結果やそれ以前の計測結果および状態の変化等に基づき、リチウムイオン2次電池110の安全性に関する判断をステップS514で行う。もし異常が検知されれば、ステップS515が実行され、異常状態の内容が表示装置160に表示されると共に、さらに危険を回避する制御を制御回路150が行う。必要に応じて警報を発する。危険を回避する制御として例えば、内部接続回路140を動作させて、リチウムイオン2次電池110を他の機器や回路から切り離す動作を行う。このことにより、リチウムイオン2次電池110の以上状態を回避できる可能性がある。
【0028】
ステップS512におけるリチウムイオン2次電池110に関する計測結果や先に計測したデータから、リチウムイオン2次電池110が安全な状態にあると制御回路150が判断すると、制御回路150の実行がステップS516に移る。ステップS516において、リチウムイオン2次電池110の状態が低温状態になっていないかが判断される。リチウムイオン2次電池110の低温状態の判断は、例えば
図2で説明した、リチウムイオン2次電池110の温度が−t1℃以下であるかを判断し、−t1℃以下の状態で、リチウムイオン2次電池110の状態が低温状態であると判断してもよい。あるいは他の方法で判断してもよい。
【0029】
リチウムイオン2次電池110の状態が低温状態であると判断されると、リチウムイオン2次電池110の性能が低下している状態であり、操作部142や情報端子144を介して制御回路150に支持された動作を行うことができないと制御回路150が判断し、リチウムイオン2次電池110の温度を上昇するための温度上昇運転モード20の制御を実行する。
【0030】
一方リチウムイオン2次電池110の状態が低温状態ではないと制御回路150が判断すると、制御回路150の実行動作がステップS516からステップS517に移り、操作部142や情報端子144を介して支持された、リチウムイオン2次電池110を使用した動作を実行する。この動作としては、例えばリチウムイオン2次電池110から電気負荷182への電力の供給や、充電用電源190からの電力をリチウムイオン2次電池110に供給するリチウムイオン2次電池110の充電動作がある。
【0031】
ステップS516でリチウムイオン2次電池110の状態が低温状態であると判断されると、制御回路150の動作がステップS520に移る。ステップS520では温度上昇運転モード20を実行することを表示装置160に表示する。これにより、操作者は通常運転モード30を実行する前に温度上昇運転モード20が実行されることを知ることができ、更に温度上昇運転モード20が終了すると通常運転モード30が実行されることを知ることができる。さらに表示装置160には温度上昇運転モード20の実行予定時間も表示される。
【0032】
図4は表示装置160の表示画面であり、表示欄162に実行モードとして「リチウムイオン2次電池110の温度上昇運転モード20実行中」が表示され、さらに実行予定時間が表示欄164に表示される。次にステップS520で、温度上昇用電流A1の大きさを決定する。リチウムイオン2次電池110の温度が低い場合には、温度上昇用電流A1の値を大きくすることにより、短時間でリチウムイオン2次電池110の温度を上昇させることができる。ステップS522では計測結果に基づいて温度上昇用電流A1の大きさを決定する。なお、表示欄164における温度上昇運転モード20の終了予定時間を文字で表示しても良いが、グラフで表示しても良い。この場合は予定時間に対する実行済時間と残りの時間との関係がグラフの状態で表示される。
【0033】
リチウムイオン2次電池110の温度と温度上昇用電流A1との関係を
図5のグラフ30に示す。リチウムイオン2次電池110の温度が低いほど温度上昇用電流A1の値が大きくなる。グラフ20は一回の温度上昇用電流A1の通電時間を示す。リチウムイオン2次電池110の温度が低いほど一回の温度上昇用電流A1の通電時間が長くなる。グラフ10は供給するパルス数を示す。グラフ20で示される温度上昇用電流A1の通電時間の間連続して電流を流してもよいが、単位時間の電流パルスを発生させそのパルス数で温度上昇用電流A1の通電時間に対応してもよい。
【0034】
図5に記載のデータである、グラフ30やグラフ20、グラフ10の関係が予め記憶装置158に記憶されている。ステップS522で予め記憶装置158に記憶されているデータに基づいて、温度上昇用電流A1の電流値、あるいは通電時間、あるいはパルスの発生回数が決定され、ステップS524で実行される。例えば放電回路146が抵抗と半導体スイッチング素子、電流制御回路を有しており、制御回路150からの指令に基づき放電回路146の半導体スイッチング素子や電流制御回路が動作して、ステップS522で決定された制御が実行される。
【0035】
制御回路150の実行が再びステップS512に戻り、温度上昇運転モード20実行中における110の状態がステップS512で計測され、ステップS514で安全性の確認が行われ、ステップS516で温度上昇運転モード20を終了すべきかどうかが判断される。さらにリチウムイオン2次電池110に関する新たな計測結果を反映した状態でステップS522で、上記温度上昇運転モード20での制御内容が決定され、ステップS524で実行される。
【0036】
4.実施例の効果
本実施例によれば短時間でリチウムイオン2次電池110の温度を上昇させることができる効果がある。さらに合わせて安全性を確保することができる効果がある。
図5のグラフ30や温度上昇運転モード20、グラフ10の制御内容を選択的に実行してもよいし、組み合わせた形で実行してもよい。電源装置100を寒冷地で使用する場合に、本実施例ではリチウムイオン2次電池110が正常に動作する温度に短時間にリチウムイオン2次電池110を上昇させることができる。従って寒冷地においてもリチウムイオン2次電池電源として使用することができる効果がある。
【符号の説明】
【0037】
10・・・グラフ、20・・・グラフ、30・・・グラフ、100・・・電源装置、110・・・リチウムイオン2次電池、140・・・内部接続回路、142・・・操作部、144・・・情報端子、146・・・放電回路、150・・・制御回路、152・・・電流計測回路、154・・・電圧計測回路、156・・・温度計測装置、158・・・記憶装置、160・・・表示装置、162・・・表示欄、164・・・表示欄、180・・・外部接続回路、182・・・電気負荷、190・・・充電用電源。