特許第6883868号(P6883868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6883868再充電可能なリチウム電池および他の用途のためのカチオン不規則酸化物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883868
(24)【登録日】2021年5月13日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】再充電可能なリチウム電池および他の用途のためのカチオン不規則酸化物
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20210531BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20210531BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20210531BHJP
【FI】
   C01G53/00 A
   H01M4/525
   H01M4/485
【請求項の数】13
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2018-510105(P2018-510105)
(86)(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公表番号】特表2018-535904(P2018-535904A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】US2016048553
(87)【国際公開番号】WO2017035303
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2019年8月23日
(31)【優先権主張番号】15194519.3
(32)【優先日】2015年11月13日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】62/210,377
(32)【優先日】2015年8月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】シダー, ゲルブランド
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジンヒュク
(72)【発明者】
【氏名】ソ, ドン−ファ
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−110167(JP,A)
【文献】 LIANQI ZHANG et al.,SYNTHESIS AND ELECTROCHEMISTRY OF CUBIC ROCKSALT LI-NI-TI-O COMPOUNDS IN THE PHASE DIAGRAM OF LINIO2-LITIO2-LI[LI1/3TI2/3]O2,JOURNAL OF POWER SOURCES,2008年 7月 1日,Vol.185,pp.534-541,1.Introduction,2.Results and discussion,Fig.3,Fig.4,Fig.8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 53/00
H01M 4/00− 4/62
H01G 11/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:LiM’を有するリチウム金属酸化物であって、LiMOおよびLiM’を含み、カチオン不規則岩塩構造を有し、式中、Mは、Ti、V、Cr、Ni、Co、Fe、Mn、Zr、SbおよびMoからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くを含み、Mは、LiMOがカチオン不規則岩塩構造を形成するように選択され、Mは、第1の平均酸化度nを有し、M’は、Ti、Cr、Mn、Zr、Mo、Sn、SbおよびWからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くを含み、M’は、nよりも大きいかまたはそれに等しい第2の平均酸化度yを有し、4<=y<=6であり、1<a<=1.4、a+b+c=2、d+e=2、d+(e・y)=4、a+(b・n)+(c・y)=4、1.3<=d<=1.7および0.2<=b<1である、リチウム金属酸化物。
【請求項2】
前記不規則LiMO岩塩構造がLiM’で富化されている、請求項1に記載のリチウム金属酸化物。
【請求項3】
nが2.7〜3.3である、請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
【請求項4】
nが3である、請求項3に記載のリチウム金属酸化物。
【請求項5】
M’が、MoおよびCrからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くであり、b=(8−5a)/3、c=[2(a−1)]/3、d=1.6およびe=0.4である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
【請求項6】
Mが、1:1のモル比のNiとTiとの合金であり、および/またはM’がMoであり、yが6に等しい、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
【請求項7】
Cu Kα放射線を使用して収集された前記リチウム金属酸化物のXRDが、5〜70°の2θ(2シータ)範囲内で、一連の正規化強度比I’を示し、I’=I/I(111)であり、Iが(z)ピークの第1の強度であり、I(111)が(111)ピークの第2の強度であり、zが(111)ピークを指す場合、I’=1であり、zが(022)ピークを指す場合、2<I’<5であり、zが(002)ピークを指す場合、4<I’<10であり、前記一連の正規化強度比I’が、Fm−3m空間群を有する不規則岩塩LiMO構造に対応する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
【請求項8】
4オングストロームよりも大きいかまたはそれに等しい格子定数を有する、請求項に記載のリチウム金属酸化物。
【請求項9】
4.13オングストローム〜4.15オングストロームの格子定数を有する、請求項8に記載のリチウム金属酸化物。
【請求項10】
単相カチオン不規則岩塩構造を示す、請求項1〜9のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
【請求項11】
Li1+x/100(NiTi)1/2−x/120Mox/150(式中、0<x<=30である)を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
【請求項12】
xが20である、請求項11に記載のリチウム金属酸化物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物を含む電極を含む、電気デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、Cederらによる“Cation−Disordered Oxides for Rechargeable Lithium Batteries and Other Applications”と題する欧州出願第15194519.3号に基づく優先権を主張しており、この欧州出願は、Cederらによる“Cation−Disordered Oxides for Rechargeable Lithium Batteries and Other Applications”と題する米国仮特許出願番号第62/210,377号に基づく優先権を主張している。本出願はまた、上記米国特許出願番号第62/210,377号に基づく優先権を主張している。これら各々の出願はその全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
分野
開示される実施形態は、一般に、例えば再充電可能なリチウム電池または他の用途のためのリチウム金属酸化物に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
本発明の特定の態様は、一般式:LiM’を特徴とするリチウム金属酸化物であって、LiM’単位で富化された不規則岩塩LiMO構造を含むリチウム金属酸化物に関する。
【0004】
高性能リチウムイオン電池に対する需要の増加により、高エネルギー密度を有するカソード材料が、多様な化学的環境から求められている。特に、酸化物材料は、最も高いエネルギー密度をもたらす傾向があるので、最も注目されている。近年、酸化物領域で進歩があり、高エネルギー密度カソード材料の探索空間がカチオン不規則リチウム遷移金属酸化物(Li−TM酸化物)まで拡大されている。
これは、LiNbOベースの不規則Li過剰材料に関する研究[High−capacity electrode materials for rechargeable lithium batteries:LiNbO−based system with cation−disordered rocksalt structure,published in PNAS,doi:10.1073/pnas.1504901112]を発表したKomabaらから公知である。Nbは、それらの化合物内に高原子価を有するようであるが、Komabaらは、それらの化合物中の各種の役割を特定していなかった。加えて、それらの材料は高容量特性の達成を可能にせず、さらに、最適化が不十分な性能を示す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Komab et al.,High−capacity electrode materials for rechargeable lithium batteries:Li3NbO4−based system with cation−disordered rocksalt structure,published in PNAS,doi:10.1073/pnas.1504901112
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
一実施形態では、リチウム金属酸化物は、一般式LiM’を有する。リチウム金属酸化物は、LiMOおよびLiM’を含み、リチウム金属酸化物は、カチオン不規則岩塩構造を有する。Mは、Ti、V、Cr、Ni、Co、Fe、Mn、Zr、SbおよびMoからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くを含み、Mは、LiMOがカチオン不規則岩塩構造を形成するように選択される。Mは、第1の平均酸化度nを有する。M’は、Ti、Mo、Cr、WおよびSbからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くを含み、M’は、nよりも大きいかまたはそれに等しい第2の平均酸化度yを有する。さらに、いくつかの実施形態では、4<=y<=6、1<a<=1.4、a+b+c=2、d+e=2、d+(e・y)=4、a+(b・n)+(c・y)=4、1.3<=d<=1.7および0.2<=b<1である。
【0007】
別の実施形態では、リチウム金属酸化物は、一般式LiM’を有する。リチウム金属酸化物は、LiM’で富化またはドープされた不規則LiMO岩塩構造を含み、リチウム金属酸化物は、カチオン不規則岩塩構造を有する。Mは、Ti、V、Cr、Ni、Co、Fe、Mn、Zr、SbおよびMoからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くを含み、Mは、LiMOがカチオン不規則岩塩構造を形成するように選択される。Mは、第1の平均酸化度nを有する。M’は、Ti、Cr、Mn、Zr、Mo、Sn、SbおよびWからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くを含み、M’は、nよりも大きいかまたはそれに等しい第2の平均酸化度yを有する。さらに、4<=y<=6、1<a<=1.4、a+b+c=2、d+e=2、d+(e・y)=4、a+(b・n)+(c・y)=4、1.3<=d<=1.7および0.2<=b<1である。
【0008】
また別の実施形態では、リチウム金属酸化物は、カチオン不規則岩塩構造を有するLiM’を含む。Mは、第1の酸化状態nと、nよりも大きい(>)第2の酸化状態n’とを有する少なくとも1つのレドックス活性金属種を含み、M’は、酸化状態yを有する少なくとも1つの電荷補償金属種を含む。いくつかの場合では、yは、nよりも大きくてもよいしまたはそれに等しくてもよい。値aは、1よりも大きく、bおよびcは、0よりも大きいかまたはそれに等しい。さらに、いくつかの場合では、Mは、式LiMOを有するリチウム−M酸化物がカチオン不規則岩塩構造を形成するように選択される。
【0009】
さらなる実施形態では、リチウム金属酸化物は、Li1+x/100(NiTi)1/2−x/120Mox/150(式中、0<x<=30)を含む。
【0010】
この点において本開示は限定されず、上記概念および下記のさらなる概念は、任意の適切な組み合わせで構成され得ることを認識すべきである。さらに、添付の図面と併せて考慮すると、様々な非限定的な実施形態に関する以下の詳細な説明から、本開示の他の利点および新規特徴が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付の図面は、縮尺どおりで描かれたものではない。図面では、様々な図に示されている同一またはほぼ同一の各構成要素は、同様の数字で表され得る。明確性のために、すべての構成要素がすべての図面に示されていない場合がある。図面では:
【0012】
図1図1は、カチオン不規則岩塩型結晶構造の概略図である;
【0013】
図2図2は、Li1+x/100(NiTi)1/2−x/120Mox/150(x=0、5、10、15、20)化合物のX線回折パターンのグラフを示す;
【0014】
図3図3は、LNTOのSEM顕微鏡写真である;
【0015】
図4図4は、LNTMO5のSEM顕微鏡写真である;
【0016】
図5図5は、LNTMO10のSEM顕微鏡写真である;
【0017】
図6図6は、LNTMO15のSEM顕微鏡写真である;
【0018】
図7図7は、LNTMO20のSEM顕微鏡写真である;
【0019】
図8図8は、高エネルギーボールミル後のLNTMO20のSEM顕微鏡写真である;
【0020】
図9図9は、LNTO、LNTMO5、LNTMO10、LNTMO15およびLNTMO20の初回サイクル電圧プロファイルのグラフである;
【0021】
図10図10は、20サイクルの間のLNTO、LNTMO5、LNTMO10、LNTMO15およびLNTMO20の容量変化のグラフである;
【0022】
図11図11は、10サイクルの間のLNTOの電圧プロファイルのグラフである;
【0023】
図12図12は、10サイクルの間のLNTMO20の電圧プロファイルのグラフである;
【0024】
図13図13は、20、40、100、200および400mA/gにおいて充放電した場合のLNTOの電圧プロファイルのグラフである;
【0025】
図14図14は、20、40、100、200および400mA/gにおいて充放電した場合のLNTMO20の電圧プロファイルのグラフである;
【0026】
図15図15は、定電流断続滴定試験(galvanostatic intermittent titration test:GITT)からのLNTMO20の初回放電電圧プロファイルのグラフである;
【0027】
図16図16は、LNTMO20の電圧プロファイルのグラフである;
【0028】
図17図17は、LNTMO20のin situ XRDパターンのグラフである;
【0029】
図18図18は、図17のXRDパターンに対応する電圧プロファイルのグラフである;
【0030】
図19図19は、図17のXRDパターンに対応する格子定数のグラフである;
【0031】
図20図20〜22は、LNTMO20における、それぞれNi K端、Ti K端およびMo K端のX線吸収端近傍スペクトルのグラフである;
図21図20〜22は、LNTMO20における、それぞれNi K端、Ti K端およびMo K端のX線吸収端近傍スペクトルのグラフである;
図22図20〜22は、LNTMO20における、それぞれNi K端、Ti K端およびMo K端のX線吸収端近傍スペクトルのグラフである;
【0032】
図23図23は、LNTMO20におけるTi L端およびO K端の電子エネルギー損失スペクトルのグラフである;
【0033】
図24図24は、LNTMO20の初回サイクルCVプロファイルのグラフである;ならびに
【0034】
図25図25は、LNTMO20について、充電中の電圧プロファイルおよび格子定数と容量とを対比したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
カチオン不規則Li−TM酸化物、例えば本明細書に記載されるものは、前記不規則Li−TM酸化物が適切なリチウム過剰を含む場合、高容量および高エネルギー密度を提供し得る。理論に縛られるものではないが、リチウム過剰は、電気化学性能の改善を可能にするリチウム拡散経路の浸透ネットワークの形成をもたらし得る。いくつかの場合では、Li−TM酸化物への過剰リチウムの添加は、遷移金属イオンの量の相対的な減少をもたらすので、電荷を補償し、それにより、充電中にさらに酸化される遷移金属イオンの容量を減少させるためには、遷移金属イオンをより高次の酸化状態に移行させる必要がある。そして、これが、遷移金属イオンのレドックス容量の減少をもたらすので、Li−TM酸化物材料の全体的な電気化学性能を制限し得る。
【0036】
上記を考慮して、特定の実施形態は、一般に、高原子価電荷補償種を含むカチオン不規則Li−TM酸化物を対象とする。理論に縛られるものではないが、電荷補償種は、高リチウム過剰の場合であっても、Li−TM酸化物中のレドックス活性種がより低次の酸化状態にとどまることを可能にし得る。このように、レドックス活性種のレドックス容量を増加させ得るので、Li−TM酸化物材料の全体的な電気化学性能を改善し得る。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、カチオン不規則Li−TM酸化物は、一般式LiM’(式中、aは、リチウム過剰を提供するために1よりも大きい値を有し、Mは、少なくとも1つのレドックス活性遷移金属種を含み、M’は、少なくとも1つの電荷補償遷移金属種を含む)を有する。さらに、レドックス活性種は、第1の酸化状態nおよび第2の酸化状態n’を有し、n’は、nよりも大きく、電荷補償種は、nよりも大きいかまたはそれに等しい酸化状態yを有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、Mは、M’を添加しなくてもそれがカチオン不規則Li−TM酸化物を形成するように選択される。具体的には、Mは、式LiMOを有するリチウム−M酸化物がカチオン不規則岩塩構造を形成するように選択される任意の適切な割合の1つまたはそれを超える遷移元素を含み得る。例えば、Li(NiTi)1/2は、カチオン不規則岩塩構造を形成することが認識されている。したがって、いくつかの実施形態では、Mは、等量のNiおよびTiを含む(すなわち、Mは、(NiTi)1/2である)。他の実施形態では、Mは、Ti、V、Cr、Ni、Co、Fe、Mn、Zr、SbおよびMoの1つまたはそれよりも多く、Ti、V、Cr、Ni、Co、Fe、MnおよびZrの1つまたはそれよりも多く、Ti、V、Cr、Ni、Co、Fe、Mn、ZrおよびSbの1つまたはそれよりも多く、Ti、V、Cr、Ni、Co、Fe、Mn、ZrおよびMoの1つまたはそれよりも多くなどを含み得る。
【0039】
Li−TM酸化物材料は、任意の適切なリチウム過剰を含み得ることを理解すべきである。いくつかの実施形態では、より高いリチウム過剰は、リチウムイオンのより広い拡散チャネルネットワークを提供することによって性能を改善し得、これが、比較的高割合のリチウムイオンが材料を通って移動することを可能にする。例えば、式LiM’を有する上記実施形態では、値aは、1.05よりも大きくてもよいしもしくはそれに等しくてもよいし(>=)、1.10よりも大きくてもよいしもしくはそれに等しくてもよいし、1.15よりも大きくてもよいしもしくはそれに等しくてもよいし、1.20よりも大きくてもよいしもしくはそれに等しくてもよいし、または1.30よりも大きくてもよいしもしくはそれに等しくてもよい。いくつかの実施形態では、aは、1.40よりも小さくてもよいしもしくはそれに等しくてもよいし(<=)、1.30よりも小さくてもよいしもしくはそれに等しくてもよいし、または1.20よりも小さくてもよいしもしくはそれに等しくてもよい。aに関する上記範囲のいずれかの組み合わせも企図される;例えば、aは、1.0〜1.40、1.05〜1.30または任意の他の適切な範囲またはそれらに等しくてもよい。さらに、特定の実施形態では、適切なレベルの電気化学性能を達成するために必要とされ得るリチウム拡散経路の浸透ネットワークを達成するために、最小リチウム過剰が必要とされ得る。例えば、一実施形態では、最小リチウム過剰は、約1.09のa値に対応し得る。しかしながら、本開示はそのように限定されず、他の実施形態では、リチウム拡散経路の浸透ネットワークを達成するための最小リチウム含有量は、1.09よりも小さいまたは1.09よりも大きいa値に対応し得ることを理解すべきである。
【0040】
いくつかの実施形態では、上記式中のbは、1よりも小さくてもよい。例えば、bは、0.9よりも小さくてもよいし、0.8よりも小さくてもよいし、0.7よりも小さくてもよいし、0.6よりも小さくてもよいし、または0.5よりも小さくてもよい。加えて、bは、0.2よりも大きくてもよいしまたはそれに等しくてもよい。例えば、bは、0.3よりも大きくてもよいしもしくはそれに等しくてもよいし、0.4よりも大きくてもよいしもしくはそれに等しくてもよいし、または0.5よりも大きくてもよいしもしくはそれに等しくてもよい。これらのいずれかの組み合わせも可能であり、例えば、bは、0.2〜1であり得る。同様に、いくつかの実施形態では、上記式中のcは、1よりも小さくてもよい。例えば、cは、0.9よりも小さくてもよいし、0.8よりも小さくてもよいし、0.7よりも小さくてもよいし、0.6よりも小さくてもよいし、または0.5よりも小さくてもよい。加えて、cは、0.2よりも大きくてもよいしまたはそれに等しくてもよい。例えば、cは、0.3よりも大きくてもよいしもしくはそれに等しくてもよいし、0.4よりも大きくてもよいしもしくはそれに等しくてもよいし、または0.5よりも大きくてもよいしもしくはそれに等しくてもよい。これらのいずれかの組み合わせも可能であり、例えば、cは、0.2〜1であり得る。また、いくつかの実施形態では、bおよびcの値は、aの値に関連し得る。例えば、一実施形態では、bはb=(8−5・a)/3として定義され得、cはc=[2(a−1)]/3として定義され得る。しかしながら、本開示はそのように限定されず、a、bおよびcの間の他の関係が可能であり得ることを理解すべきである。
【0041】
いくつかの実施形態では、化合物は、化合物内の陽性種(例えば、Liまたは遷移金属)および陰性種(例えば、酸素)の存在がバランスをとるように、実質的に中性(すなわち、電気的に中性)に変化され得る。したがって、例えば、上記式では、a+b+cは約2であり得、a+(b・n)+(c・y)は、(酸素イオンの電荷の補償に基づいて)約4であり得る。特定の実施形態では、一般式LiM’を有する化合物は、単相カチオン不規則構造を形成するように適量のLiM’で富化された不規則LiMO構造(例えば、カチオン不規則岩塩構造)として記載され得る。例えば、d+eは約2であり得、d+(e・y)は約4であり得る。いくつかの実施形態では、dは約1.3〜1.7であり得、LiMOとLiM’との割合は、適切な値のa、bおよびc(例えば、上記に記載されているもの)を有するLiM’化合物を提供するように適切に選択され得る。
【0042】
上記のように、いくつかの実施形態では、Mは、少なくとも第1の酸化状態nと第2の酸化n’とを有する少なくとも1つのレドックス活性種を含み、n’は、nよりも大きい。いくつかの場合では、Mは、遷移金属である。例えば、いくつかの実施形態では、MはNiを含み得、nは2+であり、n’は4+である。他の実施形態では、Mは、レドックス活性種としてTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、SbおよびMoの少なくとも1つを含み得る。特定の実施形態では、Mは、任意の適切な割合で2つまたはそれを超える種を含み得、前記種の少なくとも1つは、レドックス活性種である。例えば、一実施形態では、Mは、等量のNiおよびTiを含み(すなわち、Mは、(NiTi)1/2である)、Niは、レドックス活性種である。特定の実施形態に応じて、nは2+の値を有し得、n’は3+、4+、5+もしくは6+の値を有し得るか、nは3+の値を有し得、n’は4+、5+もしくは6+の値を有し得るか、またはnは4+の値を有し得、n’は5+もしくは6+の値を有し得る。また、いくつかの実施形態では、Mは、約2.7〜約3.3(例えば、約3)の平均酸化状態を有し得る。例えば、等量のNiおよびTiを含む上記実施形態では、Mは、約3の平均酸化状態を有する(すなわち、等量のNi2+およびTi4+イオンは、約3+の平均酸化度を提供する)。いくつかの場合では、酸化状態は、少なくとも約1.8または少なくとも約2.7であり得る。
【0043】
さらに、いくつかの実施形態によれば、M’は、nよりも大きいかまたはそれに等しい酸化状態yを有する少なくとも1つの高原子価電荷補償種を含む。このように、電荷補償種M’の添加は、nよりも大きい酸化状態へのレドックス活性種Mの移行を不必要に引き起こさずに、過剰リチウムをLi−TM酸化物に含めることを可能にし得る。電荷補償種は、比較的高次の酸化状態を有し得る遷移金属または他の原子であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、M’はMoを含み得、yは6+である。他の実施形態では、M’は、Ti、Cr、Mn、Zr、Nb、Mo、Sn、SbおよびWの少なくとも1つを含み得る。さらなる実施形態では、M’は、Ti、Cr、Mn、Zr、Mo、Sn、SbおよびWの少なくとも1つを含み得る。実施形態に応じて、(電荷補償種の酸化状態を表す)yは、例えば、4+、5+または6+またはそれよりも大きい値を有し得る。
【0044】
特定の実施形態に応じて、カチオン不規則リチウム金属酸化物は、適切な結晶構造、例えば、当業者に公知のような岩塩型構造を有し得る。例えば、図1は、いくつかの実施形態によるカチオン不規則岩塩型構造100の概略図を示す。この構造は、立方最密副格子に配列された酸素イオン110と、前記酸素副格子の8面体位置に配置されたカチオン120とを含む。例えば、上記LiM’化合物では、カチオン120は、酸素副格子の8面体位置にランダムに配置されたLi、MおよびM’イオンのいずれかであり得る。さらに、Mおよび/またはM’が1つを超える元素を含む実施形態では、本明細書で議論されるように、カチオンは、Mおよび/またはM’に含まれる元素のいずれかであり得ることを理解すべきである。規則構造または不規則構造は、例えば、X線回折(XRD)または本明細書で議論される他の技術を使用して同定され得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、所望の結晶構造の形成を促進するために、1つまたはそれを超える種がMおよび/またはM’に含められ得る。例えば、化合物は、不規則酸化リチウム構造を形成することが公知の2つまたはそれを超える種を含み得る。例示的な例として、Li(NiTi)1/2は不規則岩塩型構造を形成することが公知であるので、MとしてNiTiを式LiM’に含めて、カチオン不規則構造をエネルギー的に有利にすることが望ましい場合がある。あるいは、本開示はそのように限定されず、いくつかの実施形態では、カチオン不規則構造は、エネルギー的に有利ではない場合がある。いくつかの実施形態では、不規則構造は、適切な処理によって形成され得る準安定構造であり得る。
【0046】
本開示のいくつかの態様によれば、本明細書に記載されるカチオン不規則Li−TM酸化物材料は、電気デバイス中の電極材料、例えば、再充電可能なリチウムイオン電池中のカソード材料として使用され得る。このようなカソード材料は、それぞれ充放電中にリチウムイオンを可逆的に放出(デインターカレーション)および再挿入(インターカレーション)することによって動作する。このようにして、構造中のリチウム過剰に起因するリチウム拡散経路の浸透ネットワークの存在は、材料へのリチウムイオンの容易な出入を可能にし得る。充電中にリチウムイオンがデインターカレートすると、レドックス活性種は、第1の酸化状態nからより高次の酸化状態n’に酸化する。このように、レドックス活性種をより低次の酸化状態nに維持するための電荷補償種M’の添加は、充電中により高割合のレドックス活性種が酸化されることを可能にするので、Li−TM酸化物の充電容量を増加させる。放電中には、このプロセスは逆になる;具体的には、リチウムイオンはLi−TM酸化物にインターカレートし、レドックス活性種は、その第1のより低次の酸化状態nに還元される。少なくとも特定の実施形態では、充電および/または放電中に、電荷補償種は、その酸化状態を実質的に変化させない(すなわち、充電および/または放電中に、酸化状態は依然として、yに実質的に等しい)場合があることを理解すべきである。
【0047】
いくつかの実施形態では、充電中に、レドックス活性種は、第2の酸化状態n’に完全に酸化されない場合があり、代わりに、nとn’との間の中間酸化状態に部分的に酸化され得るに過ぎない。さらに、特定の実施形態では、充電および/または放電中の他の機構(限定されないが、酸素損失および酸素酸化を含む)によって、レドックス活性種によって提供されるものよりも大きいさらなる容量が提供され得る。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、本開示のLi−TM酸化物材料は、50mAh/gよりも大きい、75mAh/gよりも大きい、100mAh/gよりも大きい、125mAh/gよりも大きい、150mAh/gよりも大きい、175mAh/gよりも大きい、200mAh/gよりも大きい、または室温、20mA/gにおいて1.50〜4.00Vで充放電される場合にはそれらよりも大きい初回放電容量を示し得る。いくつかの実施形態では、Li−TM酸化物は、例えば、最大約680Wh/kgの比エネルギー密度を示し得る。しかしながら、本開示はそのように限定されず、他の放電容量および/または比エネルギー密度も可能であり得ることを理解すべきである。
【0049】
前述のように、特定の実施形態では、カチオン不規則Li−TM酸化物の結晶構造は、X線回折(XRD)測定によって決定および/または確認され得る。XRDパターンは、カチオン不規則岩塩型構造に対応する1つまたはそれを超える特徴的なピーク(例えば、図1に関して上記のもの)を含み得る。例えば、不規則岩塩型構造(Fm−3m空間群)に対応する一実施形態では、Cu Kα放射線を使用して収集されたXRDパターンは、5〜70°の2θ(2シータ)範囲にわたって、正規化強度比I’を有する一連のピークを示し得、I’=I/I(111)であり、Iは、(z)に対応するピークの強度であり、I(111)は、(111)ピークの強度である。この実施形態では、zが(111)ピークを指す場合、I’=1であり、zが(022)ピークを指す場合、2<=I’<=5であり、zが(002)ピークを指す場合、4<=I’<=10である。しかしながら、本開示はそのように限定されず、他の結晶構造は、他のピーク強度値を有する異なるXRDパターンを示し得ることを理解すべきである。
【0050】
カチオン不規則Li−TM酸化物材料およびそれらの特性を一般に記載したので、これらの材料を合成するための1つの可能な方法を以下に記載する。しかしながら、本開示はこれらの化合物のいずれか1つの形成方法に限定されず、これらの材料は、多くの方法のいずれかで形成され得ると考えられる。
【0051】
一実施形態では、例えば、カチオン不規則Li−TM酸化物化合物は、1つまたはそれを超える適切な前駆体を一緒に混ぜ合わせ、前記前駆体を適切な溶媒に分散させ、前記前駆体と溶媒との混合物をミル(例えばボールミル)し、オーブン中でこの混合物を乾燥させることによって調製され得る。続いて、前駆体の混合物をペレット化および/または焼結し、次いで、例えば微粉末に粉砕し得る。適切な前駆体材料としては、限定されないが、リチウムおよび遷移金属塩ならびに遷移金属酸化物が挙げられ得る。例えば、いくつかの実施形態では、LiCO、LiO、NiCO、NiO、TiO、MoOおよびMoOが前駆体として使用され得、アセトンまたはアセトニトリル(CN)が溶媒として使用され得る。
【0052】
Cederらによる「Cation−Disordered Oxides for Rechargeable Lithium Batteries and Other Applications」という表題の欧州特許出願第15194519.3号およびCederらによる「Cation−Disordered Oxides for Rechargeable Lithium Batteries and Other Applications」という表題の米国仮特許出願第62/210,377号は、それぞれ、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0053】
非限定的な実施例
以下では、本開示の様々なカチオン不規則Li−TM酸化物に関するいくつかの非限定的な実施例をさらに議論する。
【0054】
一例では、0、5、10、15および20の値を有するxについて、一般式Li1+x/100(NiTi)1/2−x/120Mox/150を有するカチオン不規則Li−TM酸化物を調査した。この例では、(NiTi)1/2は、上記LiM’化合物におけるMに対応し、MoはM’に対応し、a=1+x/100、b=1−x/60およびc=x/150である。さらに、この例では、Niは、n=2+およびn’=4+のレドックス活性種であり、Moは、y=6+の電荷補償種である。
【0055】
Li1+x/100(NiTi)1/2−x/120Mox/150(x=0、5、10、15、20)を合成するために、LiCO(Alfa Aesar,ACS,99%min)、NiCO(Alfa Aesar,99%)、TiO(Alfa Aesar,99.9%)およびMoO(Alfa Aesar,99%)を前駆体として使用した。LiNi0.5Ti0.5(x=0)の場合以外は、化学量論量の前駆体を使用した。LiNi0.5Ti0.5の場合、所望の組成に近い組成を有する最も純粋な不規則岩塩相をもたらしたので、5%過剰Li前駆体および4%過剰Ni前駆体を使用した。前駆体をアセトンに分散させ、15時間ボールミルし、次いで、オーブン中で一晩乾燥させた。前駆体の混合物をペレット化し、次いで、空気中、750℃で2時間焼結し、続いて、室温に炉冷した。焼結後、ペレットを手動で微粉末に粉砕した。
【0056】
PANalytical多目的回折計(Cuソース)によって、5〜85°の2θ(2シータ)範囲内で、調製したままの状態の化合物のX線回折(XRD)パターンを収集した。PANalytical X’pert HighScore Plusソフトウェアを使用して、リートベルト法を行った。Zeiss Merlin High−resolution SEMによって、走査型電子顕微鏡(SEM)画像を収集した。直流プラズマ発光分光法(ASTM E 1097−12)を用いて、化合物の元素分析を実施した。
【0057】
TEM回折モードで平行入射電子ビームおよび8mradの半集光角を使用して、Gatan分光計を備えるJEOL 2010Fによって薄層標本から、電子エネルギー損失分光法(EELS)スペクトルを得た。50eVの信号積分窓と、部分イオン化断面積のハートリー・スレーターモデルと、べき乗則バックグラウンド減算法とを使用することによって、EELS定量を実施した。
【0058】
in situ XRDのために、X線透過用のBe窓を用いて、in situセルを設計した。作用電極としてLi1.2Ni1/3Ti1/3Mo2/15電極膜と、対電極としてLi金属箔と、電解液として1M LiPFのEC:DMC(1:1)溶液と、セパレーターとしてガラス繊維とを用いて、セルを構成した。10mA/gにおいて1.5〜4.8VでSolartron電気化学ポテンショスタット(SI12287)によって、in situセルの定電流充放電を実施した。Bruker D8 Advanced Da Vinci Moソース回折計(Moソース)から、7〜36°の2θ(2シータ)範囲内で、in situ XRDパターンを1時間間隔で得た。1スキャンごとに、PANalytical X’pert HighScore Plusソフトウェアを使用して、in situ XRDパターンに対してリートベルト法を実施した。
【0059】
先端放射光施設において、ビームライン20BMを使用してトランスミッションモード(transmission made)で、Ni、TiおよびMo K端ex−situ X線吸収端近傍分光法(XANES)測定を実施した。Si(111)モノクロメーターを使用して、入射エネルギーを選択した。適切な金属箔のスペクトルを同時に測定することによって、エネルギー較正を実施した。Rhコーティングミラーを使用して、高調波除去(harmonic rejection)を達成した。(a)サイクル前に、(b)20mA/gにおいて4.8Vに初回充電した後に、および(c)20mA/gにおいて4.8Vに初回充電し、次いで1.5Vに放電した後に、Li1.2Ni1/3Ti1/3Mo2/15電極膜を用いて、測定用のサンプルを調製した。膜の充填密度は、約5mg/cmであった。加えて、XANESデータの解釈を容易にするために、いくつかの参照標準のスペクトルをトランスミッションモードで測定した。Athenaソフトウェアを使用して、データ整理を行った。
【0060】
電気化学特性評価のためのカソードフィルムを調製するために、最初に、Li−Ni−Ti−Mo酸化物の粉末およびカーボンブラック(Timcal,Super P)を、プラネタリーボールミル(Retsch PM200)によって70:20の重量比、300rpmで2時間混合した。次いで、カソードフィルムが、70:20:10の重量比でLi−Ni−Ti−Mo酸化物粉末とカーボンブラックとPTFEとから構成されるように、バインダーとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE,DuPont,Teflon 8C)を混合物に添加した。これらの成分を手動で30分間混合し、アルゴン充填グローブボックス内の薄膜に入れた。すべてのサイクル試験のためのセルをアセンブリするために、1M LiPFのエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)溶液(1:1、Techno Semichem)と、Celgard 2500ポリプロピレンセパレーターと、Li金属箔(FMC)とをそれぞれ電解液、セパレーターおよび対電極として使用した。アルゴン充填グローブボックス内でスウェージロック型セルをアセンブリし、ガルバノスタットモードでMaccor2200によって室温で試験した。0.1mV/sにおいて1.5〜4.1V(または1.5〜4.5V)でSolartron電気化学ポテンショスタット(1470E)によって、サイクリックボルタンメトリー試験を実施した。カソードフィルムの充填密度は、約5mg/cmであった。カソードフィルム中のLi−Ni−Ti−Mo酸化物の量(70wt%)に基づいて、比容量を計算した。
【0061】
図2は、Li1+x/100(NiTi)1/2−x/120Mox/150(x=0、5、10、15、20)化合物のXRDパターンを示す。以下、LiNi0.5Ti0.5(x=0)をLNTOと称し、x=5、10、15および20のLi1+x/100(NiTi)1/2−x/120Mox/150をそれぞれLNTMO5、LNTMO10、LNTMO15およびLNTMO20と称する。図2に示されているXRDパターンは不規則岩塩構造と一致しており、これらのパターンは、16〜20°の2θ(2シータ)角度でいかなる強い強度ピークも示しておらず、これは、カチオンの明らかな短距離秩序または長距離秩序が存在しない場合でも、カチオン不規則構造が(ほぼ)完全であることを裏付けている。さらに、表1に要約されている化合物の元素分析は、ターゲット相の合成の成功を示している。図2の挿入式は、各化合物の格子定数である。格子定数は、Li過剰でわずかに増加する。この傾向は、Li(NiTi)0.5(0.704Å)よりも大きい平均カチオン半径(0.726Å)を有する仮想Li1.6Mo0.4と一致する。したがって、Li1.6Mo0.4を組み込むことによるLi(NiTi)0.5への過剰Liの導入は、格子定数を増加しているはずである。
【表1】
【0062】
図3〜7は、それぞれLNTO、LNTMO5、LNTMO10、LNTMO15およびLNTMO20のSEM顕微鏡写真を示す。これらのSEM結果は、すべての化合物について、直径(d)200nm未満の小さい一次粒子が二次粒子中で高度に凝集していることを示している。一次粒子の平均サイズは、LNTOの場合に最小であり(d約80nm)、LNTMO20の場合に最大である(d約150nm)。図8は、(上記電極製造用の)カーボンブラックで高エネルギーボールミルした後のLNTMO20化合物のSEM顕微鏡写真を示す。図8に示されているように、高エネルギーボールミル後、一次粒子のサイズはd約100nmよりもわずかに小さくなり、サイズ分布は広くなる。
【0063】
定電流充放電試験によって、材料のサイクル性能を試験した。図9は、20mA/gにおいて1.5〜4.5Vでサイクルした場合の、LNTO、LNTMO5、LNTMO10、LNTMO15およびLNTMO20の初回サイクル電圧プロファイルを示す。充放電容量は、Li過剰で約110mAh/gから約225mAh/gに増加する。電圧曲線の形状もLi過剰で進化し、初回充電の開始はより低い電圧で始まり、より高いLi過剰では4.3Vプラトーがより長くなり、これらはすべて、より高い充電容量をもたらす。より高いLi過剰では、放電容量の実質的な増加が達成される。LNTOの初回放電容量はわずか109mAh/gであるが、LNTMO20のものは223mAh/gと同じくらい高い。LNTMO20の容量が、その理論Ni2+/Ni4+容量(=201.6mAh/g)を上回ることは注目すべきであり、これは、Ni2+/Ni4+だけではなく他のレドックス対もLNTMO20中で活性であることを示している。さらに、サイクル数に応じた材料の放電容量を示す図10は、初回充電サイクルを超えてさらにサイクルすると、リチウム過剰による高容量の傾向が継続することを実証している。
【0064】
Li−Ni−Ti−Mo酸化物の中では、LNTMO20が最高性能を発揮することが見出されたので、代表的なLi過剰材料としてそれを選択し、その性能をLNTOのものとさらに比較した。図11および図12は、20mA/gにおいて1.5〜4.5Vでサイクルした場合の、それぞれLNTOおよびLNTMO20の10サイクル電圧プロファイルを示す。LNTMO20は、LNTO(約110mAh/g、約350Wh/kg、約1540Wh/l)よりもかなり高い容量(約230mAh/g)およびエネルギー密度(約680Wh/kg、約2800Wh/l)を供給する。LNTMO20では、LNTOと比較して容量が3V超高い場合、放電容量におけるほとんどのゲインは、3Vよりも小さい電圧で、特に約2.2Vからプラトーになり、これは、サイクルすることでより明らかになる。この結果、LNTMO20の平均放電電圧は約3Vになる。LNTMO20の充放電プロファイルは非対称であり、放電終了時では、充電開始時よりも、電圧が容量の大部分について有意に低いことは注目すべきである。これは、LNTMO20にはある程度の動力学的限界があるが、その性能は依然としてLNTOのものよりも優れていることを示している。
【0065】
図13〜14は、それぞれLNTOおよびLNTMO20の様々なレート(rate)における電圧プロファイルを示す。各化合物から作ったセルを10mA/gにおいて1回充放電し、次いで、その後のサイクルでは20、40、100、200および400mA/gにおいて充放電した。得られた電圧プロファイルから、LNTMO20は、すべてのレートにおいてLNTOよりも高い容量を供給することが見出された。レートが10mA/gから400mA/gに増加するにつれて、放電容量は、LNTMO20の場合には250mAh/g(750Wh/kg)から120mAh/g(365Wh/kg)に減少し、LNTOの場合には120mAh/g(366Wh/kg)から50mAh/g(145Wh/kg)に減少する。注目すべきことに、400mA/gにおけるLNTMO20の容量は、10mA/gにおけるLNTOのものと同程度である。
【0066】
定電流断続滴定試験(GITT)を実施することによって、LNTMO20の動態を分析した。図15は、GITTからのLNTMO20の初回放電電圧プロファイルを示す。270mAh/gへの初回充電および270mAh/gへの初回放電により、9mAh/gの全ステップを20mA/gにおいて定電流で充電または放電し、次いで、各ステップ間で試験セルを5時間緩和した。放電終了時において、分極は最も有意である。各放電ステップ後の電圧緩和は、時間依存的である;理論に縛られるものではないが、これは、分極は物質移動(Li拡散)抵抗に主に起因するが、例えば固体電解質界面(SEI)層による他の種類の抵抗が分極にさらに寄与し得ることを示している可能性がある。さらに、図16に示されているように、分極は、充電カットオフ電圧に依存し得る。カットオフ電圧が4.1Vである場合(実線)、定電流充放電プロファイルは対称であり、分極はごくわずかである。材料を4.5Vに充電した場合(破線)、放電は実質的な分極を伴うが、これは、LNTMO20中のLi拡散が、高電圧で起こり得る構造変化に依存することを示している可能性がある。
【0067】
充放電時のLNTMO20の構造進化を調査するために、in situ X線回折(XRD)を実施した。図17は、10mA/gにおいて1.5〜4.8Vで2サイクル定電流充放電した際の、LNTMO20のin situ XRDパターンを示す。改良単相XRDからの対応する電圧プロファイルおよび格子定数は、それぞれ図18および図19に示されている。より高角度への(002)ピークシフトによって証明されるように、初回充電中に、格子定数は、3つの異なるレジームで減少する。傾斜電圧プロファイルを伴う約110mAh/gの初回充電では、ピークは、より高角度に連続的にシフトする。しかしながら、さらなるピークシフトは、4.3Vプラトーに沿って約215mAh/gの充電までごくわずかである。この領域の後、ピークは、充電でさらに高角度にシフトする。理論に縛られるものではないが、これは、不規則格子が、初回充電の開始および終了時に収縮するが、その途中に、それが有意に収縮しない間隔があることを示している可能性がある。初回放電中に、約100mAh/gに放電することによって、(002)ピークはより低角度に急速にシフトするが、さらなるシフトはわずかである。初回放電後に、ピークは、そのサイクル前(約19.8°)よりも低角度(約19.6°)であるが、これは、初回サイクル後のLNTMO20の膨張を示している。2回目のサイクル中に、格子定数は充電により減少し、2.2Vプラトーに達するまで放電により増加し、その後、格子膨張はわずかである。
【0068】
LNTMO20のレドックス機構を研究するために、X線吸収端近傍構造分光法(XANES)測定を実施した。図20〜22は、それぞれLNTMO20のNi K端、Ti K端およびMo K端XANESスペクトルを示す。各図は、サイクル前(黒色)、4.8Vへの初回充電後(青色:約300mAh/gで充電)および1.5Vへの初回放電後(赤色:約250mAh/gで放電)のスペクトルを示す。図20から、4.8Vへの初回充電により、Ni端は、Ni2+の標準として使用したLiNi2/3Sb1/3に近いエネルギーから、NaNiO中のNi3+に似たより高いエネルギーにシフトすることがわかる。1.5Vへの初回放電後に、Ni端は、その開始位置に戻る。理論に縛られるものではないが、これは、4.8Vへの初回充電により、Ni2+がNi約3+まで酸化され、次いで、初回放電後に還元されてNi2+に戻ることを示している可能性がある。Ni2+/Ni3+容量は約100mAh/gに相当するので、この知見は、残りの充電容量が酸素損失および/または酸素酸化(これらは両方とも、Li過剰材料で起こることが公知である)のいずれかに起因することを示唆している可能性がある。
【0069】
図21〜22に示されている吸収スペクトルから、Ti端およびMo端は、充放電中に有意にシフトしないことがわかる。これは、サイクル中のMoおよびTiの酸化状態の変化が、たとえあったとしても平均でわずかであることを示している可能性がある。しかしながら、約20006eVにおけるMo XANESのプレエッジピークは、初回充電後に強度が増加し、初回放電後に依然として高強度である。遷移金属イオンのサイト対称性が中心対称環境から非中心対称環境に減少するにつれて、プレエッジピークの強度が増加することが以前に示されている。これは、非中心対称環境では、(プレエッジピークに対応する)Mo 1sからMo 4d軌道への電気双極子禁制遷移が部分的に可能になり、これがより強い4d−5p混成をもたらすためであり得る。例えば、MoOで観察されたプレエッジピーク(鎖線)は、非常に歪んだMo−O8面体に由来する。したがって、LNTMO20のMoプレエッジピークの強度増加は、サイクルにより、MO環境が通常の正8面体配位から逸脱しており、これがMo−O8面体の歪みに、または8面体位置から4面体位置へのある程度のMo6+移動に由来し得ることを示している。MoOおよびMoOのスペクトルの比較は、初回放電後に、LNTMO20のMo端位置がエネルギーをシフトダウンしないことを示しており、これは、Moイオンの大部分が依然として6+であることを強く示唆している。同様に、放電によるTi酸化状態の任意の還元は、平均でわずかである。しかしながら、XANESは、バルク粒子全体から情報を収集することに留意すべきである。したがって、アンサンブル平均XANESスペクトルでは、表面領域または表面領域近傍の酸化状態の変化が明確に視認可能ではない可能性がある。
【0070】
酸素損失がLNTMO20から起こるかを調査するために、サイクルの前後に、LNTMO20粒子の表面に対して電子エネルギー損失分光法(EELS)を実施した。図23は、サイクル前(黒色)の、および20mA/gにおいて1.5〜4.5Vで20サイクルした後(赤色)の、LNTMO20のEELSスペクトルからのTi L端およびO K端を示す。Tiに対するOの原子比率のEELS定量を比較したところ、比率のかなりの減少(約39%)がサイクル後に見られる。理論に縛られるものではないが、これは、サイクルにより、酸素損失がLNTMO20の表面から起こり、これが、Ni2+/Ni約3+容量よりも大きいさらなる充電容量に寄与し得ることを示唆している可能性がある。加えて、図23の挿入図に示されているように、サイクル後に、Ti L端は、O K端と比べて約1.5eV低いエネルギーに化学的にシフトすることが観察されるが、これは、表面領域におけるTi還元が4+未満であることを示している可能性がある。
【0071】
サイクリックボルタンメトリー(CV)試験から、LNTMO20からの酸素損失も推測され得る。図24は、LNTMO20の初回サイクルCVプロファイルを示す。酸化カットオフ電圧が4.1Vである場合(赤色)、主還元ピークは約3.7Vで観察され、副還元ピークは約2.7Vで観察される。しかしながら、カットオフが4.5Vに増加した場合(黒色)、CVプロファイルでは、約2.2Vにおけるさらなる還元ピークが観察される。理論に縛られるものではないが、これはおそらく、第2の遷移金属種の還元に関連し、1.5〜4.5Vの定電流サイクルの際の約2.2Vにおける放電プラトーに対応する(図12)。これは、4.1Vよりも大きい充電が、放電の際に以前は還元不可能であった種の還元を可能にする反応をトリガーし得ることを示している。LNTMO20の場合、放電の際のMo6+またはTi4+の還元は、酸素損失によってトリガーされる可能性が高い。MoおよびTi XANESは、初回放電後の平均MoおよびTi酸化状態の減少の明確な証拠を示していないが(図21および22)、CV(またはEELS)とXANESとの間の明らかな矛盾は、バルク中ではなく表面において、酸素損失が有意であり得ることを示唆している。
【0072】
XANESスペクトルからの上記結果に基づいて、初回サイクル中のLNTMO20の酸素損失容量の限界を概算する。Ni XANESは、4.8Vへの初回充電の際に、Ni2+がNi約3+に酸化され、これが約100mAh/gの容量をもたらすことを示している(図20)。上記のように、残りの初回充電容量(約200mAh/g)は、酸素損失および/または酸素酸化に起因し得る。理論に縛られるものではないが、図25に示されているように、この提案機構は、初回充電中のLNTMO20の格子定数の変化と一致する。約110mAh/gへの初回充電の際に、格子定数は連続的に減少する。Ni3+(r=0.56Å)およびNi4+(r=0.48Å)は、Ni2+(r=0.69Å)よりも小さいので、これは、Ni2+/Ni約3+酸化(約100mAh/g)によって説明され得る。約215mAh/gへのさらなる充電の際に、格子定数はほとんど減少しない。酸素損失による充電は、結晶構造中の残存イオンの酸化状態の増加を遅延し得るので、これは酸素損失に関連し得る。この領域の容量は約105mAh/gであり、これは、上記XANES結果からの最大推定酸素損失容量(約90mAh/g)にほぼ一致することに留意すべきである。最後に、約215mAh/gよりも大きい充電は、格子定数を減少させる。これは、酸素イオンのサイズを縮小することによって、またはその酸素−酸素結合距離がより短いペルオキソ様種を導入することによって、酸素骨格を収縮させる酸素酸化によって説明され得る。
【0073】
いくつかの実施形態を本明細書に記載および例証したが、当業者であれば、機能を果たし、ならびに/または本明細書に記載される結果および/もしくは利点の1つもしくはそれよりも多くを得るための様々な他の手段および/または構造を容易に想到し、このような変形および/または改変はそれぞれ、本開示の範囲内であるとみなされる。より一般には、当業者であれば、本明細書に記載されるすべてのパラメータ、寸法、材料および構成は例示的なものであり、実際のパラメータ、寸法、材料および/または構成は、本発明の教示が使用される1つまたは複数の特定の用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者であれば、ルーチンな実験のみを使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識し、または前記等価物を確認することができるであろう。したがって、上記実施形態は単なる例として提示されており、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内であることを理解すべきである;本開示は、具体的に記載および特許請求されている以外の方法で実施され得る。本開示は、本明細書に記載される個々の各特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法を対象とする。加えて、このような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が相互に矛盾しない場合、2つまたはそれを超えるこのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の任意の組み合わせは、本発明の範囲内である。
【0074】
本明細書で定義および使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文献の定義、および/または規定の用語の通常の意味を支配すると理解すべきである。
【0075】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「a」および「an」という不定冠詞は、特に明確な反対の指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解すべきである。
【0076】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「および/または」という語句は、そのように接続された要素(すなわち、いくつかの場合では結合的に存在し、他の場合では離接的に存在する要素)の「一方または両方」を意味すると理解すべきである。「および/または」を用いて列挙される複数の要素は、同じように(すなわち、そのように接続された要素の「1つまたはそれよりも多く」と)解釈されるべきである。具体的に特定される要素との関連または非関連にかかわらず、「および/または」という節によって具体的に特定される要素以外にも、他の要素が場合により存在し得る。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などの非限定的な文言と併せて使用される場合、一実施形態では、(場合によりB以外の要素を含む)Aのみを指し得;別の実施形態では、(場合によりA以外の要素を含む)Bのみを指し得;また別の実施形態では、(場合により他の要素を含む)AおよびBの両方などを指し得る。
【0077】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「または」は、上記で定義される「および/または」と同じ意味を有すると理解すべきである。例えば、リスト中の項目を分ける場合、「または」または「および/または」は包括的であると解釈されるべきである(すなわち、多くの要素または要素のリストうちの少なくとも1つを含むが、さらに、その1つよりも多くと、場合により列挙されていない追加項目とを含む)。明確な反対の指示がない用語、例えば「の1つのみ」もしくは「の正確に1つ」、または特許請求の範囲で使用される場合には「からなる」のみが、多くの要素または要素のリストうちの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書で使用される「または」という用語は、「いずれか」、「の1つ」、「の1つのみ」または「の正確に1つ」などの排他的な用語が先行する場合には、排他的な選択肢(すなわち、「両方ではなく一方または他方」)を示すとしてのみ解釈されるものとする。「から本質的になる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0078】
本明細書および特許請求の範囲で使用される1つまたはそれを超える要素のリストに関して「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト中の要素のいずれか1つまたはそれよりも多くから選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内で具体的に列挙されている各およびあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリスト中の要素の任意の組み合わせを除外しないと理解すべきである。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が指す要素のリスト内で具体的に特定されている要素以外にも、具体的に特定されている要素との関連または非関連にかかわらず、要素が場合により存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBの少なくとも1つ」または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、場合により1つを超えるAを含み、Bが存在しない(および場合によりB以外の要素を含む)少なくとも1つを指し得;別の実施形態では、場合により1つを超えるBを含み、Aが存在しない(および場合によりA以外の要素を含む)少なくとも1つを指し得;また別の実施形態では、場合により1つを超えるAを含む少なくとも1つ、および場合により1つを超えるBを含む少なくとも1つ(および場合により他の要素を含む)などを指し得る。
【0079】
「約」という語が、数字に関して本明細書で使用される場合、本発明のさらに別の実施形態は、「約」という語の存在によって修飾されない数字を含むことを理解すべきである。
【0080】
特に明確な反対の指示がない限り、1つを超えるステップまたは動作を含む特許請求の範囲に記載されている任意の方法において、方法のステップまたは動作の順序は、方法のステップまたは動作が記載されている順序に必ずしも限定されないことも理解すべきである。
【0081】
特許請求の範囲および上記本明細書では、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保有する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「保持する」、「構成される」などの推移的語句はすべて、非限定的である(すなわち、限定されないが、・・・を含むを意味する)と理解すべきである。米国特許商標庁の米国特許審査便覧のセクション2111.03に記載されているように、「からなる」および「から本質的になる」という推移的語句のみが、それぞれ限定的または半限定的な推移的語句であるものとする。
【0082】
いくつかの好ましい実施形態は、以下のとおりである:
【0083】
1.一般式:LiaMbM’cO2を有するリチウム金属酸化物であって、LiMO2およびLidM’eO2を含み、カチオン不規則岩塩構造を有し、式中、Mは、Ti、V、Cr、Ni、Co、Fe、Mn、Zr、SbおよびMoからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くを含み、Mは、LiMO2がカチオン不規則岩塩構造を形成するように選択され、Mは、第1の平均酸化度nを有し、M’は、Ti、Cr、Mn、Zr、Mo、Sn、SbおよびWからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くを含み、M’は、nよりも大きいかまたはそれに等しい第2の平均酸化度yを有し、4<=y<=6であり、1<a<=1.4、a+b+c=2、d+e=2、d+(e・y)=4、a+(b・n)+(c・y)=4、1.3<=d<=1.7および0.2<=b<1である、リチウム金属酸化物。
【0084】
2.nが2.7〜3.3である、実施形態1に記載のリチウム金属酸化物。
【0085】
3.nが約3である、実施形態1〜2のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0086】
4.M’が、MoおよびCrからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くであり、b=(8−5a)/3、c=[2(a−1)]/3、d=1.6およびe=0.4である、実施形態1〜3のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0087】
5.Mが、1:1のモル比のNiとTiとの合金である、実施形態1〜4のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0088】
6.M’がMoであり、yが6に等しい、実施形態1〜5のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0089】
7.Cu Kα放射線を使用して収集された前記リチウム金属酸化物のXRDが、5〜70°の2θ(2シータ)範囲内で、一連の正規化強度比I’zを示し、I’z=Iz/I(111)であり、Izが(z)ピークの第1の強度であり、I(111)が(111)ピークの第2の強度であり、zが(111)ピークを指す場合、I’z=1であり、zが(022)ピークを指す場合、2<I’z<5であり、zが(002)ピークを指す場合、4<I’z<10であり、前記一連の正規化強度比I’zが、Fm−3m空間群を有する不規則岩塩LiMO2構造に対応する、実施形態1〜6のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0090】
8.4オングストロームよりも大きいかまたはそれに等しい格子定数を有する、実施形態1〜7のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0091】
9.前記格子定数が4.13オングストローム〜4.15オングストロームである、実施形態1〜8のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0092】
10.室温、20mA/gにおいて1.5〜4.5Vで充放電される場合、109mAh/gよりも大きい初回容量を有する、実施形態1〜9のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0093】
11.室温、20mA/gにおいて1.5〜4.5Vで充放電される場合、150mAh/gよりも大きい初回容量を有する、実施形態1〜10のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0094】
12.単相カチオン不規則岩塩構造を示す、実施形態1〜11のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0095】
13.実施形態1〜12のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物を含む電極を含む、電気デバイス。
【0096】
14.カチオン不規則岩塩構造を有するLiaMbM’cO2を含むリチウム金属酸化物であって、式中、Mは、第1の酸化状態nと、nよりも大きい第2の酸化状態n’とを有する少なくとも1つのレドックス活性金属種を含み、M’は、nよりも大きいかまたはそれに等しい酸化状態yを有する少なくとも1つの電荷補償金属種を含み、aは、1よりも大きく、bおよびcは、0よりも大きいかまたはそれに等しく、Mは、式LiMO2を有するリチウム−M酸化物がカチオン不規則岩塩構造を有するように選択される、リチウム金属酸化物。
【0097】
15.Mの少なくとも一部が第1の酸化状態にある、実施形態14に記載のリチウム金属酸化物。
【0098】
16.Mの少なくとも一部が第2の酸化状態にある、実施形態14〜15のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0099】
16.nが少なくとも2.7である、実施形態14〜16のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0100】
18.yが少なくとも4である、実施形態14〜17のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0101】
19.yが少なくとも5である、実施形態14〜18のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0102】
20.yが少なくとも6である、実施形態14〜19のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0103】
21.Mが、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、SbおよびMoの少なくとも1つを含む、実施形態14〜20のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0104】
22.Mが少なくともNiおよびTiを含む、実施形態14〜21のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0105】
23.Mが等量のNiおよびTiを含む、実施形態14〜22のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0106】
24.M’が、Ti、Cr、Mn、Zr、Mo、Sn、SbおよびWの少なくとも1つを含む、実施形態14〜23のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0107】
25.aが1.4よりも小さいかまたはそれに等しい、実施形態14〜24のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0108】
26.室温、20mA/gにおいて1.5〜4.5Vで充放電される場合、前記LiaMbM’cO2が、少なくとも150mAh/gの初回放電容量を有する、実施形態14〜25のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0109】
27.前記初回放電容量が少なくとも200mAh/gである、実施形態26に記載のリチウム金属酸化物。
【0110】
28.実施形態14〜27のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物を含む電極を含む、電気デバイス。
【0111】
29.Li1+x/100(NiTi)1/2−x/120Mox/150O2(式中、0<x<=30である)を含む、リチウム金属酸化物。
【0112】
30.xが約20である、実施形態29に記載のリチウム金属酸化物。
【0113】
31.室温、20mA/gにおいて1.5〜4.5Vで充放電される場合、少なくとも150mAh/gの初回放電容量を有する、実施形態29〜30のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0114】
32.前記初回放電容量が少なくとも200mAh/gである、実施形態31に記載のリチウム金属酸化物。
【0115】
33.実施形態29〜32のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物を含む電極を含む、電気デバイス。
【0116】
34.一般式:LiaMbM’cO2を有するリチウム金属酸化物であって、LidM’eO2を富化された不規則LiMO2岩塩構造を含み、カチオン不規則岩塩構造を有し、式中、Mは、Ti、V、Cr、Ni、Co、Fe、Mn、Zr、SbおよびMoからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くを含み、Mは、LiMO2がカチオン不規則岩塩構造を形成するように選択され、Mは、第1の平均酸化度nを有し、M’は、Ti、Cr、Mn、Zr、Mo、Sn、SbおよびWからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くを含み、M’は、nよりも大きいかまたはそれに等しい第2の平均酸化度yを有し、4<=y<=6であり、1<a<=1.4、a+b+c=2、d+e=2、d+(e・y)=4、a+(b・n)+(c・y)=4、1.3<=d<=1.7および0.2<=b<1である、リチウム金属酸化物。
【0117】
35.nが2.7〜3.3である、実施形態34に記載のリチウム金属酸化物。
【0118】
36.nが約3である、実施形態34〜35のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0119】
37.M’が、MoおよびCrからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くであり、b=(8−5a)/3、c=[2(a−1)]/3、d=1.6およびe=0.4である、実施形態34〜36のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0120】
38.Mが、1:1のモル比のNiとTiとの合金である、実施形態34〜37のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0121】
39.M’がMoであり、yが6に等しい、実施形態34〜38のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0122】
40.Cu Kα放射線を使用して収集された前記リチウム金属酸化物のXRDが、5〜70°の2θ(2シータ)範囲内で、一連の正規化強度比I’zを示し、I’z=Iz/I(111)であり、Izが(z)ピークの第1の強度であり、I(111)が(111)ピークの第2の強度であり、zが(111)ピークを指す場合、I’z=1であり、zが(022)ピークを指す場合、2<I’z<5であり、zが(002)ピークを指す場合、4<I’z<10であり、前記一連の正規化強度比I’zが、Fm−3m空間群を有する不規則岩塩LiMO2構造に対応する、実施形態34〜39のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0123】
41.4オングストロームよりも大きいかまたはそれに等しい格子定数を有する、実施形態34〜40のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0124】
42.前記格子定数が4.13オングストローム〜4.15オングストロームである、実施形態34〜41のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0125】
43.室温、20mA/gにおいて1.5〜4.5Vで充放電される場合、109mAh/gよりも大きい初回容量を有する、実施形態34〜42のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0126】
44.室温、20mA/gにおいて1.5〜4.5Vで充放電される場合、150mAh/gよりも大きい初回容量を有する、実施形態34〜43のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0127】
45.単相カチオン不規則岩塩構造を示す、実施形態34〜44のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物。
【0128】
46.実施形態34〜45のいずれか1つに記載のリチウム金属酸化物を含む電極を含む、電気デバイス。
本発明はさらに、例えば、以下を提供する:
(項目1)
一般式:LiM’を有するリチウム金属酸化物であって、LiMOおよびLiM’を含み、カチオン不規則岩塩構造を有し、式中、Mは、Ti、V、Cr、Ni、Co、Fe、Mn、Zr、SbおよびMoからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くを含み、Mは、LiMOがカチオン不規則岩塩構造を形成するように選択され、Mは、第1の平均酸化度nを有し、M’は、Ti、Cr、Mn、Zr、Mo、Sn、SbおよびWからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くを含み、M’は、nよりも大きいかまたはそれに等しい第2の平均酸化度yを有し、4<=y<=6であり、1<a<=1.4、a+b+c=2、d+e=2、d+(e・y)=4、a+(b・n)+(c・y)=4、1.3<=d<=1.7および0.2<=b<1である、リチウム金属酸化物。
(項目2)
前記不規則LiMO岩塩構造がLiM’で富化されている、項目1に記載のリチウム金属酸化物。
(項目3)
Li1+x/100(NiTi)1/2−x/120Mox/150を含み、0<x<=30であり、好ましくはxが約20である、項目1または2に記載のリチウム金属酸化物。
(項目4)
nが2.7〜3.3、好ましくは約3である、項目1〜3のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目5)
M’が、MoおよびCrからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くであり、b=(8−5a)/3、c=[2(a−1)]/3、d=1.6およびe=0.4である、項目1〜4のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目6)
Mが、1:1のモル比のNiとTiとの合金であり、および/またはM’がMoであり、yが6に等しい、項目1〜5のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目7)
Cu Kα放射線を使用して収集された前記リチウム金属酸化物のXRDが、5〜70°の2θ(2シータ)範囲内で、一連の正規化強度比I’zを示し、I’z=Iz/I(111)であり、Izが(z)ピークの第1の強度であり、I(111)が(111)ピークの第2の強度であり、zが(111)ピークを指す場合、I’z=1であり、zが(022)ピークを指す場合、2<I’z<5であり、zが(002)ピークを指す場合、4<I’z<10であり、前記一連の正規化強度比I’zが、Fm−3m空間群を有する不規則岩塩LiMO構造に対応する、項目1〜6のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目8)
4オングストロームよりも大きいかまたはそれに等しい、好ましくは4.13オングストローム〜4.15オングストロームの格子定数を有する、項目1〜7のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目9)
室温、20mA/gにおいて1.5〜4.5Vで充放電される場合、109mAh/gよりも大きい、好ましくは150mAh/gよりも大きい初回容量を有する、項目1〜6のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目10)
単相カチオン不規則岩塩構造を示す、項目1〜9のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目11)
項目1〜10のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物を含む電極を含む、電気デバイス。
(項目12)
Li1+x/100(NiTi)1/2−x/120Mox/150(式中、0<x<=30であり、好ましくはxが約20である)を含む、リチウム金属酸化物。
(項目13)
項目1〜12のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物を含む電極を含む、電気デバイス。
(項目14)
カチオン不規則岩塩構造を有するLiM’を含むリチウム金属酸化物であって、式中、Mは、第1の酸化状態nと、nよりも大きい第2の酸化状態n’とを有する少なくとも1つのレドックス活性金属種を含み、M’は、nよりも大きいかまたはそれに等しい酸化状態yを有する少なくとも1つの電荷補償金属種を含み、aは、1よりも大きく、bおよびcは、0よりも大きいかまたはそれに等しく、Mは、式LiMOを有するリチウム−M酸化物がカチオン不規則岩塩構造を有するように選択される、リチウム金属酸化物。
(項目15)
Mの少なくとも一部が第1の酸化状態にある、項目14に記載のリチウム金属酸化物。
(項目16)
Mの少なくとも一部が第2の酸化状態にある、項目14〜15のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目17)
nが少なくとも1.8である、項目14〜16のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目18)
nが少なくとも2.7である、項目14〜17のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目19)
yが少なくとも4である、項目14〜18のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目20)
yが少なくとも5である、項目14〜19のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目21)
yが少なくとも6である、項目14〜20のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目22)
Mが、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、SbおよびMoの少なくとも1つを含む、項目14〜21のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目23)
Mが少なくともNiおよびTiを含む、項目14〜22のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目24)
Mが等量のNiおよびTiを含む、項目14〜23のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目25)
M’が、Ti、Cr、Mn、Zr、Mo、Sn、SbおよびWの少なくとも1つを含む、項目14〜24のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目26)
aが1.4よりも小さいかまたはそれに等しい、項目14〜25のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目27)
室温、20mA/gにおいて1.5〜4.5Vで充放電される場合、前記LiM’が、少なくとも150mAh/gの初回放電容量を有する、項目14〜26のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目28)
前記初回放電容量が少なくとも200mAh/gである、項目27に記載のリチウム金属酸化物。
(項目29)
項目14〜28のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物を含む電極を含む、電気デバイス。
(項目30)
Li1+x/100(NiTi)1/2−x/120Mox/150(式中、0<x<=30である)を含む、リチウム金属酸化物。
(項目31)
xが約20である、項目30に記載のリチウム金属酸化物。
(項目32)
室温、20mA/gにおいて1.5〜4.5Vで充放電される場合、少なくとも150mAh/gの初回放電容量を有する、項目30〜31のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目33)
前記初回放電容量が少なくとも200mAh/gである、項目32に記載のリチウム金属酸化物。
(項目34)
項目30〜33のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物を含む電極を含む、電気デバイス。
(項目35)
一般式:LiM’を有するリチウム金属酸化物であって、LiM’で富化された不規則LiMO岩塩構造を含み、カチオン不規則岩塩構造を有し、式中、Mは、Ti、V、Cr、Ni、Co、Fe、Mn、Zr、SbおよびMoからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くを含み、Mは、LiMOがカチオン不規則岩塩構造を形成するように選択され、Mは、第1の平均酸化度nを有し、M’は、Ti、Cr、Mn、Zr、Mo、Sn、SbおよびWからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くを含み、M’は、nよりも大きいかまたはそれに等しい第2の平均酸化度yを有し、4<=y<=6であり、1<a<=1.4、a+b+c=2、d+e=2、d+(e・y)=4、a+(b・n)+(c・y)=4、1.3<=d<=1.7および0.2<=b<1である、リチウム金属酸化物。
(項目36)
nが2.7〜3.3である、項目35に記載のリチウム金属酸化物。
(項目37)
nが約3である、項目35〜36のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目38)
M’が、MoおよびCrからなる群より選択される金属種の1つまたはそれよりも多くであり、b=(8−5a)/3、c=[2(a−1)]/3、d=1.6およびe=0.4である、項目35〜37のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目39)
Mが、1:1のモル比のNiとTiとの合金である、項目35〜38のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目40)
M’がMoであり、yが6に等しい、項目35〜39のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目41)
Cu Kα放射線を使用して収集された前記リチウム金属酸化物のXRDが、5〜70°の2θ(2シータ)範囲内で、一連の正規化強度比I’を示し、I’=I/I(111)であり、Iが(z)ピークの第1の強度であり、I(111)が(111)ピークの第2の強度であり、zが(111)ピークを指す場合、I’=1であり、zが(022)ピークを指す場合、2<I’<5であり、zが(002)ピークを指す場合、4<I’<10であり、前記一連の正規化強度比I’が、Fm−3m空間群を有する不規則岩塩LiMO構造に対応する、項目35〜40のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目42)
4オングストロームよりも大きいかまたはそれに等しい格子定数を有する、項目35〜41のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目43)
前記格子定数が4.13オングストローム〜4.15オングストロームである、項目35〜42のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目44)
室温、20mA/gにおいて1.5〜4.5Vで充放電される場合、109mAh/gよりも大きい初回容量を有する、項目35〜43のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目45)
室温、20mA/gにおいて1.5〜4.5Vで充放電される場合、150mAh/gよりも大きい初回容量を有する、項目35〜44のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目46)
単相カチオン不規則岩塩構造を示す、項目35〜45のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物。
(項目47)
項目35〜46のいずれか一項に記載のリチウム金属酸化物を含む電極を含む、電気デバイス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25