特許第6883934号(P6883934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883934
(24)【登録日】2021年5月13日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20210531BHJP
   B62D 21/00 20060101ALN20210531BHJP
【FI】
   B62D25/20 G
   B62D25/20 D
   !B62D21/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-8425(P2019-8425)
(22)【出願日】2019年1月22日
(65)【公開番号】特開2020-117012(P2020-117012A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2020年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】辻本 尚之
(72)【発明者】
【氏名】角 将人
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−162144(JP,A)
【文献】 特開2017−56799(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0355213(US,A1)
【文献】 特開2011−126365(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公開第19812679(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B62D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に間隔を隔てて車両前部の下部に位置し、かつ車両前後方向に延びており、フロントサスペンションのサスペンションメンバの取付け箇所周辺部が、車両後方側ほど車幅方向相互間隔が狭くなる内入り傾斜部とされている左右一対のフロントサイドメンバと、
これら一対のフロントサイドメンバの上側に配設され、かつダッシュパネルの後端部にフロントフロアパネルの前端部が接合された構成のフロア部と、
前記一対のフロントサイドメンバよりも車幅方向内方側に位置して車両前後方向に延びるフロアトンネル部と、
を備えている、車両前部構造であって、
前記各フロントサイドメンバの上側に前記フロア部を挟んで接合されたアッパメンバと
前記フロアトンネル部の上下高さ方向に起立する起立壁部の下部寄り領域の内側に重ねられて車両前後方向に延びる起立片部、および前記フロア部の下面部に接合されて車両前後方向に延びるフロア接合部を有するインナトルクメンバと、
前記フロア部の上側のうち、前記内入り傾斜部よりも車両後方側に位置して車幅方向に延び、かつ前記アッパメンバと前記フロアトンネル部とを車幅方向に橋渡し接続するクロスメンバと、
をさらに備えており、
前記クロスメンバと前記インナトルクメンバの前記起立片部との相互間には、前記フロアトンネル部の前記起立壁部が挟まれ、かつ前記クロスメンバと前記インナトルクメンバの前記フロア接合部との相互間には、前記フロア部が挟まれた構成とされており、
前記クロスメンバの少なくとも一部は、前記ダッシュパネルの後端部と前記フロントフロアパネルの前端部との接合部に重ねられて接合されていることを特徴とする、車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前部構造の一例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載の車両前部構造は、車体前部の骨格部材として、左右一対のフロントサイドメンバを備えている。これら一対のフロントサイドメンバは、車幅方向に間隔を隔てて車両の下部に配置され、かつ車両前後方向に延びており、これらフロントサイドメンバの下側には、フロントサスペンションのサスペンションメンバが取付けられている。一方、前記一対のフロントサイドメンバの上側には、フロア部が接合されるが、このフロア部は、ダッシュパネルの後端部とフロントフロアパネルの前端部とを接合して構成され、かつこのフロア部のうち、車幅方向略中央部には、車両前後方向に延びるフロアトンネル部が設けられている。このフロアトンネル部の基部を補強するための補強部材(インナトルクメンバ)の前部は、インナトルクボックスを介してフロントサイドメンバに連結されている。このような構成によれば、インナトルクボックスの存在により、車体強度が高められる。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
第1に、一対のフロントサイドメンバのうち、サスペンションメンバの取付け箇所周辺部は、車両後方側ほど車幅方向相互間隔が狭くなる内入り傾斜部とされているが、このような構成によれば、車両が前突を生じて、フロントサイドメンバにその車両前方側から衝突荷重が入力した際に、曲げモーメントなどを生じ易くなり、フロントサイドメンバのうち、内入り傾斜部の車両後方側近傍部分が車幅方向内方側に変形または変位し易くなる。このような現象は、内入り傾斜部の内入り幅(車幅方向の幅)が大きいほど顕著となるが、このような現象を生じたのでは、フロントサイドメンバの荷重伝達性が損なわれて、優れた衝撃吸収性能を得る上で不利となる。また、車両の前突時における耐衝撃性(耐荷重性)をよくする上でも不利となる。
第2に、車両の前突時には、車両前方から衝突荷重を直接的に受けるフロントサイドメンバと、前記衝突荷重を間接的に受けるフロアトンネル部との間には、車両後方側への変位または変形に大きな差を生じ、前記両者間に車両前後方向における位置ずれを生じ易い。このことに起因し、ダッシュパネルとフロントフロアパネルとの接合状態が解除され、フロア部の剥がれなどを生じる虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−162144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、簡易な構成により、車両の前突時の衝撃吸収性能ならびに耐衝撃性を優れたものとし、フロア部のダッシュパネルとフロントフロアパネルとの接合部に剥離を生じるといった不具合も適切に防止または抑制することが可能な車両前部構造を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される車両前部構造は、車幅方向に間隔を隔てて車両前部の下部に位置し、かつ車両前後方向に延びており、フロントサスペンションのサスペンションメンバの取付け箇所周辺部が、車両後方側ほど車幅方向相互間隔が狭くなる内入り傾斜部とされている左右一対のフロントサイドメンバと、これら一対のフロントサイドメンバの上側に配設され、かつダッシュパネルの後端部にフロントフロアパネルの前端部が接合された構成のフロア部と、前記一対のフロントサイドメンバよりも車幅方向内方側に位置して車両前後方向に延びるフロアトンネル部と、を備えている、車両前部構造であって、前記各フロントサイドメンバの上側に前記フロア部を挟んで接合されたアッパメンバと、前記フロアトンネル部の上下高さ方向に起立する起立壁部の下部寄り領域の内側に重ねられて車両前後方向に延びる起立片部、および前記フロア部の下面部に接合されて車両前後方向に延びるフロア接合部を有するインナトルクメンバと、前記フロア部の上側のうち、前記内入り傾斜部よりも車両後方側に位置して車幅方向に延び、かつ前記アッパメンバと前記フロアトンネル部とを車幅方向に橋渡し接続するクロスメンバと、をさらに備えており、前記クロスメンバと前記インナトルクメンバの前記起立片部との相互間には、前記フロアトンネル部の前記起立壁部が挟まれ、かつ前記クロスメンバと前記インナトルクメンバの前記フロア接合部との相互間には、前記フロア部が挟まれた構成とされており、前記クロスメンバの少なくとも一部は、前記ダッシュパネルの後端部と前記フロントフロアパネルの前端部との接合部に重ねられて接合されていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、フロントサイドメンバまたはその上側のアッパメンバとフロアトンネル部とは、クロスメンバによって車幅方向に橋渡し接続されているため、車両の前突時において、内入り傾斜部の車両後方側の部分が車幅方向に大きく変形または変位することを効果的に防止することが可能である。その結果、フロントサイドメンバの荷重伝達性をよくし、車両の衝撃吸収性能を良好とすることができるとともに、車体強度をアップし、耐衝撃性能を高めることができる。
第2に、クロスメンバは、車両の前突時において、フロントサイドメンバとフロアトンネル部とが車両前後方向に大きく位置ずれすることを防止する効果を発揮する。これに加え、クロスメンバは、ダッシュパネルの後端部とフロントフロアパネルの前端部との接合部に重ねられて接合されており、ダッシュパネルとフロントフロアパネルとの接合を強固なものとする。このため、車両の前突時において、フロントサイドメンバとフロアトンネル部との位置ずれに起因して、ダッシュパネルとフロントフロアパネルとの接合部に剥離を生じる不具合を適切に防止または抑制することができる。
【0010】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は、本発明に係る車両前部構造の一例を示す要部側面図であり、(b)は、(a)の要部拡大側面断面図である。
図2図1の要部底面図である。
図3図2の要部拡大図である。
図4】(a)は、図2のIVa−IVa断面図であり、(b)は、(a)の矢視IVbの要部概略平面図であり、(c)は、(b)のIVc−IVc要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0013】
図1図4に示す車両前部構造Aは、車両1の前部の下部に配設された左右一対のフロントサイドメンバ3(図2では、網点模様を付している)、前輪19を懸架するフロントサスペンションのサスペンションメンバ4(サブフレームとも称される)、フロア部11、フロアトンネル部12、アッパメンバ3A、ならびにクロスメンバ6を具備している。
【0014】
一対のフロントサイドメンバ3は、車幅方向に間隔を隔てた配置とされ、かつ車両1の
前部において車両前後方向に一連に延びている。図4(a)に示すように、各フロントサイドメンバ3は、たとえば断面ハット状などの部材を用いて構成されており、車両1のフロア部11が設けられている箇所においては、このフロア部11の下面部に溶接されている。
【0015】
図2に示すように、一対のフロントサイドメンバ3は、フロント部32、内入り傾斜部33(同図の符号Saで示す範囲)、および後側延設部34が一連に繋がった構成とされている。
車両1の前部には、エンジンや変速機などから構成されたパワープラント2が内部に配されているエンジンルーム10が設けられており、一対のフロントサイドメンバ3のフロント部32は、エンジンルーム10の両側に位置して車両前後方向に略直線状に延びている。
内入り傾斜部33は、フロント部32の後部に屈曲部B1を介して繋がった部分であって、一対のフロントサイドメンバ3のうち、サスペンションメンバ4の取付け箇所周辺部が、車両後方側ほど車幅方向相互間隔が狭くなるように、底面視(平面視も含む、以下同様)において傾斜した部分である。フロントサイドメンバ3に対するサスペンションメンバ4の具体的な取付け構造については後述する。
後側延設部34は、内入り傾斜部33の後部に屈曲部B2を介して繋がった部分であり、車幅方向においてフロアトンネル部12とロッカ15との相互間に位置してフロア部11の下面部に接合され、車両前後方向に延びている(図4(a)も参照)。
【0016】
フロア部11は、ダッシュパネル11aの後端部と、フロントフロアパネル11bの前端部とが接合部17を介して接合された構成である。この接合は、たとえばスポット溶接により図られているが、後述するように、この接合部17には、クロスメンバ6がさらに溶接される。図4(a)に示すように、フロア部11の車幅方向両端部は、左右一対のロッカ15に接合(溶接)されている。
【0017】
アッパメンバ3Aは、フロア部11の上面部に溶接されて車両前後方向に延びる部材であり、たとえば断面ハット状である。このアッパメンバ3Aは、図4(b)に示すように、フロア部11上のうち、フロントサイドメンバ3の後側延設部34の上側に重なった配置に設けられている。このアッパメンバ3Aの後端部は、追加のクロスメンバ6aに溶接されている。この追加のクロスメンバ6aは、クロスメンバ6とは異なり、本発明でいうクロスメンバに相当するものではなく、クロスメンバ6よりも車両後方側に配されて、ロッカ15とフロアトンネル部12とを車幅方向において橋渡し接続するものである。
【0018】
クロスメンバ6は、たとえば断面ハット状部材を用いて構成されており、フロアトンネル部12とアッパメンバ3Aとを車幅方向において橋渡し接続するように設けられている。より具体的には、フロアトンネル部12の基部下面側には、インナトルクメンバ12aが車両前後方向に延びて溶接されており、かつこのインナトルクメンバ12aの前端部には、底面視において湾曲してフロントサイドメンバ3の後側延設部34の前端部付近に一端が溶接された曲げ部12b(インナトルクボックス部に相当)が設けられている。クロスメンバ6は、その曲げ部12bよりも車両後方側の位置において、車幅方向に延び、かつその両端部が、フロアトンネル部12とアッパメンバ3Aとに溶接されている。
【0019】
図4(c)によく表れているように、クロスメンバ6の一対のフランジ部61,62は、フロア部11に溶接部Wa,Wbを介して溶接されている。ただし、フランジ部61は、ダッシュパネル11aとフロントフロアパネル11bとの接合部17上に重ねられた上で、この接合部17に溶接部Waを介して接合されている。溶接部Waは、好ましくは、フランジ部61、フロントフロアパネル11bの前端部、およびダッシュパネル11aの後端部を同時に溶接するスポット溶接などである。
【0020】
サスペンションメンバ4は、前輪19を支持するロアアーム7の基端部を回転可能に支持する部材である。フロントサイドメンバ3の内入り傾斜部33の周辺部は、図1に示すように、車両側面視において後下がり状に傾斜した上下傾斜部30として形成されており、その下方にサスペンションメンバ4が配されている。サスペンションメンバ4およびフロントサイドメンバ3には、サスペンションメンバ4の車幅方向両端部の前部および後部をフロントサイドメンバ3に取付けるための前側取付け部9Aおよび後側取付け部9B,9B’が設けられている。
【0021】
前側取付け部9Aは、サスペンションメンバ4の前部寄り領域の上面部に起立して設けられた前側ブラケット部41の上部が、支持部材39を介してフロントサイドメンバ3に固定された部位である。フロントサイドメンバ3内には、支持部材39の取付け強度を高めるためのリインフォース39aが適宜設けられている。
後側取付け部9Bは、上下傾斜部30の下面側に溶接された台座部38に、サスペンションメンバ4の後部が、ボルト90を用いて締結された部位である。後側取付け部9B’は、サスペンションメンバ4の後部に固定されたステー42が、上下傾斜部30の台座部38よりも下側の部分にボルト91を用いて締結された部位である。
【0022】
ロアアーム7は、その先端部に前輪19が支持され、前輪19とサスペンションメンバ4との相対的な上下動を可能とするように、その基端部は、サスペンションメンバ4に対して回転可能に連結されている。より具体的には、ロアアーム7の基端部は、前部および後部に分岐しており、かつ前側回転支持部8Aおよび後側回転支持部8Bを介してサスペンションメンバ4に取付けられている。前側回転支持部8Aは、中心軸が略水平方向に延びる姿勢のゴムブッシュ81を用いて構成されており、後側回転支持部8Bは、中心軸が上下高さ方向に延びる起立姿勢のゴムブッシュ82を用いて構成されている。ゴムブッシュ82、ステー42、サスペンションメンバ4、および台座部38は、ボルト90を用いて共締めされている。
【0023】
図3によく表れているように、ロアアーム7の後側回転支持部8Bの中心P2は、前側回転支持部8Aの中心P1よりも車幅方向内方側に適当な寸法L1だけオフセットされている。このような構成によれば、そうでない構成と比較して、操安性をよくすることが可能である。また、前記した中心P2は、フロントサイドメンバ3の直下に位置している。このため、構成の簡素化を図りつつ、後側回転支持部8Bおよびその周辺部の建付け剛性を高め、操安性をより向上させることが可能である。
前記した構成に対応し、後側取付け部9B,9B’は、前側取付け部9Aよりも車幅方向内方側に適当な寸法L2だけオフセットされている。内入り傾斜部33は、サスペンションメンバ4の前側取付け部9Aよりも後側取付け部9B,9B’を車幅方向内方側に配置させ、かつロアアーム7の後側回転支持部8Bの中心P2を、前側回転支持部8Aの中心P1よりも車幅方向内方側に適当な寸法L1だけオフセットするのに適する。
【0024】
図2に示すように、フロントサイドメンバ3の後側取付け部9B,9B’付近とロッカ15の前端部とは、トルクボックス14(アウタトルクボックス)を介して相互に連結されている。このことにより、車体の捩じり剛性が高められる他、後側取付け部9B,9B’付近の剛性を効果的に高め、サスペンションメンバ4の支持状態を安定させることが可能である。
【0025】
次に、前記した車両前部構造Aの作用について説明する。
【0026】
まず、アッパメンバ3Aとフロアトンネル部12とは、クロスメンバ6によって車幅方向に橋渡し接続されているが、アッパメンバ3Aは、フロントサイドメンバ3の内入り傾
斜部33の後端に繋がった後側延設部34上に重ねられて接合された部位である。このため、車両1の前突が発生して、車両前方側から衝突荷重F(図2に示す)がフロントサイドメンバ3に入力した際に、内入り傾斜部33の存在に起因し、後側延設部34を車幅方向内方に大きく変形させようとする力が発生したとしても、クロスメンバ6の突っ張り力によって、後側延設部34が車幅方向内方に大きく変形することは適切に防止される。その結果、フロントサイドメンバ3の荷重伝達性をよくし、車両1の衝撃吸収性能を良好とすることができる。また、車両1の車体強度が高くなるため、耐衝撃性能を良好にすることもできる。
【0027】
また、クロスメンバ6は、車両1の前突時において、アッパメンバ3Aおよびフロントサイドメンバ3とフロアトンネル部12とが車両前後方向に大きく位置ずれすることを防止する。さらに、クロスメンバ6は、ダッシュパネル11aの後端部とフロントフロアパネル11bの前端部との接合部17に重ねられてこれらと接合されているため、これら三者の接合強度が高められる。このようなことから、車両1の前突時において、アッパメンバ3Aおよびフロントサイドメンバ3とフロアトンネル部12との位置ずれに起因して、ダッシュパネル11aとフロントフロアパネル11bとの接合部17に不当な剥離が生じることを、適切に防止または抑制することも可能となる。
【0028】
本実施形態の車両前部構造Aにおいては、ロアアーム7の後側回転支持部8Bの中心P2を、前側回転支持部8Aの中心P1よりも車幅方向内方側にオフセットさせているため、そうでない場合と比較すると、内入り傾斜部33の傾斜角を大きくする必要がある。このため、本来的には、車両1の前突時において後側延設部34は、より曲げ変形などを生じ易くなり、またフロア部11の接合部17における前記した剥離も、より生じ易くなる。これに対し、本実施形態においては、既述したクロスメンバ6を設けた構成により、前記した不具合を適切に解消することが可能である。
【0029】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る車両前部構造の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0030】
両1の操安性を良好にする観点からすると、フロントサスペンションのロアアーム7の後側回転支持部8Bの中心P2を、前側回転支持部8Aの中心P1よりも車幅方向内方側にオフセットすることが好ましいものの、これとは異なる構成とすることも可能である。
本発明の車両前部構造は、エンジン自動車に限らず、ハイブリッド車や電気自動車にも適用することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
A 車両前部構造
1 車両
11 フロア部
11a ダッシュパネル
11b フロントフロアパネル
12 フロアトンネル部
17 接合部
3 フロントサイドメンバ
3A アッパメンバ
33 内入り傾斜部(フロントサイドメンバの)
4 サスペンションメンバ
6 クロスメンバ
図1
図2
図3
図4