【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、水酸基含有ビニル化合物の製造方法について種々検討したところ、アクリル酸エステルとアルデヒド化合物とを反応させる工程と反応後の反応液からアクリル酸エステルを除去する工程とを行う製造方法において、上記除去工程後の反応液中の水酸基含有ビニル化合物のエーテルダイマーの含有量を特定の量以下とすることで、水酸基含有ビニル化合物のエーテルダイマーの含有量が充分に抑制された水酸基含有ビニル化合物を従来よりも低いコストで製造することができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、水酸基含有ビニル化合物の製造方法であって、上記製造方法は、アクリル酸エステルとアルデヒド化合物とを第3級アミン化合物の存在下で反応させる工程と反応工程後の反応液からアクリル酸エステルを除去する工程とを含み、上記アクリル酸エステル除去工程後の反応液中の水酸基含有ビニル化合物のエーテルダイマーの含有量が、水酸基含有ビニル化合物100質量%に対して9.0質量%以下である水酸基含有ビニル化合物の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0009】
本発明の水酸基含有ビニル化合物の製造方法は、後述するアクリル酸エステルとアルデヒド化合物とを第3級アミン化合物の存在下で反応させる工程(以下、反応工程ともいう)とアクリル酸エステルを除去する工程(以下、アクリル酸エステル除去工程ともいう)とを含み、アクリル酸エステル除去工程後の反応液中の水酸基含有ビニル化合物のエーテルダイマー(以下、単にエーテルダイマーともいう)の含有量を、水酸基含有ビニル化合物100質量%に対して9.0質量%以下とすることにより、水酸基含有ビニル化合物の製品に、エーテルダイマーが混入することを充分に抑制することができる。
本発明の製造方法では、従来の方法の精製工程よりも前の段階でエーテルダイマーを除去することとなるため、従来の方法の精製工程で本発明と同程度にエーテルダイマーを除去しようとする場合よりもコストを削減することができる。
上記エーテルダイマーの含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
上記アクリル酸エステルとアルデヒド化合物との反応は、下記式(1)で表すことができる。
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R
1は有機残基を表す。R
2は、水素原子又は1価の炭化水素基を表す。)
上記エーテルダイマーは、下記式(2)で表すことができる。
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R
1は有機残基を表す。R
2は、水素原子又は1価の炭化水素基を表す。)
【0014】
本発明の水酸基含有ビニル化合物の製造方法では、アクリル酸エステル除去工程後の反応液中の水酸基含有ビニル化合物のエーテルダイマーの含有量を、水酸基含有ビニル化合物100質量%に対して9.0質量%以下とすることができる限り、上記エーテルダイマーの含有量を低減させる方法は特に制限されないが、エーテルダイマーの生成量を抑制することが好ましい。
アクリル酸エステルとアルデヒド化合物とを触媒としてはたらく第3級アミン化合物の存在下で反応させることで水酸基含有ビニル化合物を製造する場合、反応後の溶液中には、生成した水酸基含有ビニル化合物と、第3級アミン化合物とが含まれることになる。この溶液中で生成した水酸基含有ビニル化合物同士が反応(2量体化)することで、水酸基含有ビニル化合物のエーテルダイマーが生成することになるが、本発明者は、反応溶液中の第3級アミン化合物が2量体化を促進する触媒としても機能していることを見出した。このようなエーテルダイマーの生成を抑制する方法として、(1)水酸基含有ビニル化合物を製造した後、触媒としてはたらく第3級アミン化合物を反応溶液から早めに除去する、(2)水酸基含有ビニル化合物の2量体化反応が進行する環境に水酸基含有ビニル化合物が置かれる時間を適切に制御する、ことが考えられる。
上記(1)の方法として、アクリル酸エステル除去工程開始前に、反応液中の第3級アミン化合物を除去し、その含有量を特定の量以下とすることが考えられる
また、本発明の水酸基含有ビニル化合物の製造方法では、アクリル酸エステル除去工程を蒸留により行うことが好ましいが、本発明者は、アクリル酸エステル除去工程を蒸留により行った場合には、2量体化反応が主にこの蒸留中に進行することを見出した。このため、上記(2)の方法として、蒸留時間をなるべく短くすることが考えられる。
本発明の水酸基含有ビニル化合物の製造方法では、これらのいずれか又は両方の組合せにより、アクリル酸エステル除去工程後の反応液中の水酸基含有ビニル化合物のエーテルダイマーの含有量を、水酸基含有ビニル化合物100質量%に対して9.0質量%以下とすることが好ましい。
【0015】
上記反応液中のエーテルダイマーの含有量としてより好ましくは7.5質量%以下であり、更に好ましくは7.0質量%以下である。上記反応液中のエーテルダイマーの含有量をより少なくすることにより、その後の精製工程におけるコストをより削減することができるため、生産性の面で好ましいが、上記反応液中のエーテルダイマーを完全に除去することは困難な場合があり、反応液中にエーテルダイマーが0.01質量%程度含まれていてもよい。
【0016】
上記(1)の方法として、本発明の製造方法は、アクリル酸エステル除去工程開始前の反応液中の第3級アミン化合物を、水酸基含有ビニル化合物100質量%に対して3.0質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは2.5質量%以下であり、更に好ましくは1.5質量%以下である。上記反応液中の第3級アミン化合物の含有量をより少なくすることにより、その後の精製工程におけるコストをより削減することができるため、生産性の面で好ましいが、上記反応液中の第3級アミン化合物を完全に除去することは困難な場合があり、反応液中に第3級アミン化合物が0.01質量%程度含まれていてもよい。上記第3級アミン化合物の含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0017】
上記製造方法において、アクリル酸エステル除去工程開始前の反応液中の第3級アミン化合物の含有量を上記範囲とする方法は、特に制限されないが、例えば、反応工程後の反応液を、ろ過、再結晶、晶析、蒸留、水洗すること等により行うことができるが、これらの中でも、反応工程後の反応液を水洗することが好ましい。
このように、本発明の製造方法が、アクリル酸エステル除去工程の前に、反応工程後の反応液を水洗する工程を含み、上記水洗工程後の反応液中の第3級アミン化合物の含有量が、水酸基含有ビニル化合物100質量%に対して3.0質量%以下である製造方法であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記製造方法のアクリル酸エステル除去工程前に、反応工程後の反応液を水洗する工程を行って第3級アミン化合物を除去して含有量を低減することで、水酸基含有ビニル化合物の2量体化反応の進行を充分に抑制することができる。
【0018】
上記水洗工程は、水洗工程後の反応液中の第3級アミン化合物の含有量を、水酸基含有ビニル化合物100質量%に対して3.0質量%以下とすることができる限り特に制限されないが、水洗工程において使用する水の量(以下、洗浄水量ともいう)が、反応工程において得られた水酸基含有ビニル化合物1kgに対して、150〜700gであることが好ましい。より好ましくは180〜650g、最も好ましくは200〜600gである。洗浄水量が上記好ましい範囲であれば、反応液の水洗を効果的に行うことができるため、水洗工程後の反応液中の第3級アミン化合物の含有量をより低減することができる。
【0019】
上記水洗工程における水洗方法は、特に制限されないが、バッチ洗浄により行うことが好ましい。また、水洗回数も制限されないが、1〜5回行うことが好ましい。本発明の水洗工程では、上記水洗回数にかかわらず、水洗工程において使用する洗浄水量の総量が、上述の範囲となればよい。水洗回数は、生産性の面から少ない方が好ましく、1〜3回が好ましく、1〜2回がより好ましい。
【0020】
上記(2)の方法として、本発明の製造方法におけるアクリル酸エステルの除去を蒸留により行い、その蒸留時間が18時間以下であることが好ましい。
このように、本発明の製造方法が、アクリル酸エステル除去工程が、アクリル酸エステルの除去を蒸留により行う工程であり、上記蒸留時間が18時間以下である製造方法であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
蒸留時間は、より好ましくは15時間以下であり、更に好ましくは、13時間以下である。また、不要なアクリル酸エステルを充分に除去するためには、蒸留時間は、60分以上であることが好ましい。より好ましくは、90分以上である。
【0021】
上記蒸留の方法は、特に制限されないが、単蒸留により行うことが好ましい。
単蒸留の条件は、330hPaから67hPaまで減圧し、ボトム温度が100℃に到達した時点で終了することが好ましい。
【0022】
本発明の水酸基含有ビニル化合物の製造方法では、上述の(1)の方法、(2)の方法以外のエーテルダイマーの含有量を低減させる方法を用いてもよい。
上記その他の方法としては、特に制限されないが、例えば、反応時間の短縮が挙げられる。
【0023】
上記アクリル酸エステル除去工程後の反応液中のエーテルダイマーの含有量を水酸基含有ビニル化合物100質量%に対して9.0質量%以下とする方法として、(1)の方法、(2)の方法のいずれを用いてもよく、これら両方を組み合わせて用いてもよいが、これら両方を組み合わせることが好ましい。
上記(1)及び(2)の方法を組み合わせる場合には、アクリル酸エステル除去工程後の反応液中のエーテルダイマーの含有量が水酸基含有ビニル化合物100質量%に対して9.0質量%以下となるように(1)及び(2)の条件を適宜調整して行えばよい。
【0024】
上記(1)及び(2)の方法を組み合わせる方法として、例えば、上記(1)の条件を一定として、(2)の好ましい条件を調整することが挙げられる。
この場合、上記製造方法は、反応工程後の反応液を水洗する工程を行い、上記水洗工程後の反応液中の第3級アミン化合物の含有量を、水酸基含有ビニル化合物100質量%に対して3.0質量%以下とした後、アクリル酸エステルの除去を蒸留により行い、上記蒸留時間を1〜18時間とすることが好ましい。この場合において、蒸留時間は2〜15時間であることがより好ましく、更に好ましくは4〜12時間である。
【0025】
また、例えば、上記(1)の好ましい条件を調整したうえで、(2)の条件を一定とすることが挙げられる。
この場合、上記製造方法は、反応工程後の反応液を水洗する工程を含み、上記水洗工程後の反応液中の第3級アミン化合物の含有量を、水酸基含有ビニル化合物100質量%に対して3.0質量%以下とした後、アクリル酸エステルの除去を蒸留により行い、上記蒸留時間を5〜13時間とすることが好ましい。この場合において、水洗工程後の反応液中の第3級アミン化合物の含有量は2.5質量%以下であることがより好ましく、更に好ましくは1.5質量%以下である。上記反応液中の第3級アミン化合物の含有量をより少なくすることにより、その後の精製工程におけるコストをより削減することができるため、生産性の面で好ましいが、上記反応液中の第3級アミン化合物を完全に除去することは困難な場合があり、反応液中に第3級アミン化合物が0.01質量%程度含まれていてもよい。また、この場合の水洗工程の洗浄水量は、反応工程において得られた水酸基含有ビニル化合物1kgに対して、150〜700gであることが好ましい。より好ましくは180〜650g、更に好ましくは200〜600gである。
【0026】
上述の水洗工程及びアクリル酸エステル除去工程等において、アクリル酸エステル、第3級アミン化合物、溶媒は回収してもよく、回収分の全量又は一部を再度反応原料、触媒、溶媒として使用してもよい。
アクリル酸エステルを回収する処理は、通常の分離操作であればよく、水酸基含有ビニル化合物の物性にもよるが、蒸留や有機溶媒による抽出処理が挙げられる。
【0027】
以下においては、本発明の水酸基含有ビニル化合物の製造方法における反応工程について記載する。
本発明の水酸基含有ビニル化合物の製造方法における反応工程は、アクリル酸エステルとアルデヒド化合物とを第3級アミン化合物の存在下で反応させる限り特に制限されないが、前述した実用的な製法である森田−Baylis−Hilman反応を用いて行うことができる。
上記反応は各種アクリル酸エステル(以下、アクリル酸エステル類ともいう)とアルデヒド化合物とを触媒存在下で反応させることで水酸基含有ビニル化合物類を得る反応である。
【0028】
上記反応工程は、触媒として第3級アミン化合物の存在下において反応を行う。上記第3級アミン化合物としては、具体的には例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン等のトリアルキルアミン;N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N,N−ジメチルイソブチルアミン、N,N−ジメチル−t−ブチルアミン、N,N−ジメチル(トリメチルシリル)アミン等のN,N−ジメチルアルキルアミン;N,N−ジエチルメチルアミン、N,N−ジエチルプロピルアミン、N,N−ジエチルイソプロピルアミン等のN,N−ジエチルアルキルアミン;1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、ジアザビシクロウンデセン等の環状ジアミン等が挙げられる。これら第3級アミン化合物は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらの第3級アミン化合物のうち、水に対する溶解度が比較的高い化合物が好ましく、常圧における沸点が100℃以下であり、且つ、少なくとも1個のN−メチル基を有するN−メチルアルキルアミン(N−メチル化合物)がより好ましく、常圧における沸点が100℃以下であり、且つ、少なくとも2個のN−メチル基を有するN,N−ジメチルアルキルアミンがさらに好ましい。特に好ましくは、トリメチルアミンである。
【0029】
上記第3級アミン化合物は、液体状、ガス状等、種々の状態での使用が可能であるが、取り扱い易さの点から1〜95質量%水溶液として使用することが好ましく、更に好ましくは5〜80質量%水溶液として、最も好ましくは10〜60質量%水溶液として使用することが好ましい。上記第3級アミン化合物を水溶液の状態で使用することにより、反応開始時及び反応時における取り扱いが容易になると共に、反応終了後に触媒を回収して再使用する場合における取り扱い等も容易となる。
【0030】
上記第3級アミン化合物の使用量としては、特に限定されるものではないが、第3級アミン化合物/アルデヒド化合物(モル比)は0.05〜2であることが好ましく、より好ましくは0.05〜1であり、更に好ましくは0.07〜0.9である。
【0031】
上記アクリル酸エステル類としては、下記式 (3):
【0032】
【化3】
【0033】
(式中、R
1は有機残基を表す。)で表されることが好ましい。
上記有機残基としては、特に制限されないが、炭素数1〜18の炭化水素基であることが好ましい。より好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基であり、更に好ましくは炭素数3〜10のアルキル基である。
上記アクリル酸エステル類として具体的には例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル等のアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸シクロアルキルエステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸o−メトキシフェニル、アクリル酸p−メトキシフェニル、アクリル酸p−ニトロフェニル、アクリル酸p−メチルフェニル、アクリル酸p−t−ブチルフェニル等のアクリル酸アリールエステル;等が挙げられる。これらのアクリル酸エステル類のうち、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが特に好適である。
【0034】
上記アルデヒド化合物としては、下記式(4);
【0035】
【化4】
【0036】
(式中、R
2は、水素原子又は1価の炭化水素基を表す。)で表されることが好ましい。上記アルデヒド化合物としてこのような構造の化合物を用いると、アクリル酸エステルにR
2より炭素数が1多い水酸基含有炭化水素基が導入された水酸基含有ビニル化合物を得ることができる。
上記1価の炭化水素基としては、炭素数1〜12の炭化水素基が挙げられる。
上記R
2としては、水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基が好ましい、より好ましくは、水素原子又は炭素数3〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、特に好ましくは、水素原子である。すなわち、アルデヒド化合物としてはホルムアルデヒドが特に好ましい。
【0037】
上記アルデヒド化合物がホルムアルデヒドである場合、どのような形態で用いてもよく、例えば、ホルムアルデヒドの20〜50%水溶液、パラホルムアルデヒド、ジオキサン、トリオキサン等を用いることができる。
【0038】
上記アクリル酸エステル類(アクリレート化合物類)の使用量としてはアクリル酸エステル類/アルデヒド化合物(モル比)は0.5〜10であることが好ましい。より好ましくは0.8〜8であり、更に好ましくは1〜8である。
上記反応には水が用いられるが、その水の量としては全反応液量に対して0.001質量%以上60質量%以下にすることが好ましい。より好ましくは、0.005質量%以上50質量%以下であり、更に好ましくは、0.01質量%以上40質量%以下である。
上記反応においては、必要に応じて、有機溶媒を用いることができるが、特に使用しなくても構わない。上記溶媒の種類は、反応に用いる基質及び触媒を溶解し、且つ、反応に対して不活性な化合物であれば、特に限定されるものではない。
【0039】
上記反応において反応原料であるアクリル酸エステル類及び生成物である水酸基含有ビニル化合物が共に重合しやすい性質を有することから、反応時の重合を抑制するために、反応系に重合禁止剤や分子状酸素を添加することが好ましい。
上記重合禁止剤の具体例等は、これらの具体例としては、WO2009/084320号公報に記載のものと同様のものが挙げられる。これら重合禁止剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0040】
上記重合禁止剤の添加量は、特に限定されるものではないが、通常、粗水酸基含有ビニル化合物に対する割合が、0.0001質量%〜5質量%の範囲内となるようにすればよく、当該範囲が本発明における好ましい形態である。
上記の分子状酸素としては、例えば、酸素−窒素の混合ガスや空気を用いることができる。この場合、反応系に酸素含有ガスを吹き込む(いわゆる、バブリング)ようにすればよい。尚、上記重合禁止剤と分子状酸素とを併用してもよい。
上記反応において、反応温度は、反応が進行する範囲であれば特に限定されるものではないが、上記重合を抑制するために、40〜160℃で行うのが好ましい。反応温度が40℃よりも低い場合には、反応速度が小さく反応時間が長くなり過ぎ、粗水酸基含有ビニル化合物を工業的に製造するに際して好ましくない。より好ましくは60〜100℃の範囲内である。
【0041】
上記の手段で得られた粗水酸基含有ビニル化合物の反応液について、上述の水酸基含有ビニル化合物のエーテルダイマーの含有量を低減させる工程(以下、エーテルダイマー低減工程ともいう)を行うことが好ましい。
【0042】
本発明の製造方法は、上記エーテルダイマー低減工程以外のその他の精製工程を行ってもよい。他の精製工程としては、特に制限されず、ろ過、再結晶、晶析、蒸留、水若しくは有機溶媒による抽出・洗浄処理等が挙げられる。また、その他の精製工程を行うタイミングも特に制限されないが、上記エーテルダイマー低減工程の後に行うことが好ましい。
他の精製工程では、反応工程における未反応のアルデヒド化合物の除去を行ってもよい。未反応のアルデヒド化合物を除去する方法は、WO2009/084320号公報に記載のものと同様のものが挙げられる。
【0043】
本発明の製造方法は、上記アルデヒド化合物の除去の他、更に精製を行うことが好ましい。精製方法は、粗水酸基含有ビニル化合物の物性にもよるが、通常の精製処理であれば特に限定されない。例えば、蒸留、結晶化、晶析等の処理によって行われる。この中でも蒸留による精製処理が特に好ましい。
すなわち、本発明の製造方法は、上述した水酸基含有ビニル化合物のエーテルダイマーの含有量を低減させる工程の後に、更に蒸留による精製工程を有する形態が好ましい。
通常の蒸留による精製工程においては、沸点差を利用して成分ごとに分別して精製する場合は、蒸留塔内に充填材を入れて蒸留塔の理論段数を適宜調整する必要がある。
上記蒸留による精製は、分別蒸留であることが好ましい。
【0044】
この蒸留時の処理温度(ボトム温度又は塔底温度ともいう。)は、粗水酸基含有ビニル化合物の種類、処理圧力にもよるが、重合防止の観点から160℃以下に制限されるが、好ましくは80℃〜150℃、更に好ましくは90℃〜140℃で行う。
また蒸留時の圧力条件としては、粗水酸基含有ビニル化合物の種類、蒸留温度にもよるが、10hPa〜150hPaの減圧下で行うことが好ましく、より好ましいのは10hPa〜120hPaであり、特に好ましいのは10hPa〜100hPaである。
蒸留処理の時間は、粗水酸基含有ビニル化合物の種類や重合禁止剤の種類にもよるが、重合防止の観点から24時間以内で行うのがよく、好ましくは3時間〜12時間である。
また、粗水酸基含有ビニル化合物は、高い重合性を有することから、粗水酸基含有ビニル化合物を蒸留精製処理する際には、粗水酸基含有ビニル化合物の重合を抑制するために、処理系に重合禁止剤や分子状酸素を添加することが好ましい。
【0045】
上記エーテルダイマー低減工程後の蒸留は、通常は、充填材の入った蒸留塔を用いて行うことになる。充填材を入れることにより蒸留塔の理論段数を調製し、好適に蒸留を行うためである。上記充填材としては、ラシヒリング、ベルルサドル、マクマホンパッキング、カスケードミニリング、キャノン、ポールリング等の不規則充填物、スルザーパッキング、メラパック、ジェムパック、テクノパック、モンツパック、グリッチグリッド、フレキシグリッド、スナップグリッド、パーフォームグリッド等の規則充填物が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。充填材を入れることにより、より容易に不純物を除去することができる。中でも、スルザーパッキング(住友重機械工業(株)製充填材)を充填したものが特に好ましい。
【0046】
本発明の製造方法により得られた水酸基含有ビニル化合物もまた、本発明の1つであり、本発明の製造方法により得られた水酸基含有ビニル化合物含有組成物100質量%に対するエーテルダイマーの割合は、0.01質量%以下であることが好ましい。
【0047】
上記重合禁止剤の具体例、好ましい形態、使用態様等は、上述した通りである。
上記の分子状酸素としては、例えば、酸素−窒素の混合ガスや空気を用いることができる。この場合、反応系に酸素含有ガスを吹き込む(いわゆる、バブリング)ようにすればよい。尚、上記重合禁止剤と分子状酸素とを併用してもよい。