(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態にかかる物品は、意匠面を備え、種々の部品の被着面に貼り付けることで、部品を意匠面で加飾することのできるものである。加飾する対象である部品の種類は限定されず、代表的には、車両部品、電気部品、建築部品等が挙げられる。
【0012】
本発明の一実施の形態にかかる物品は、意匠面となる表面及び裏面を有する本体部と、本体部の一辺から延在し、該本体部表面に対して所定の角度を形成する表面を有する端部と、本体部の裏面側の少なくとも一部に配置される接着部と、を備える。そして、本体部は、被着面の形状に応じて変形可能であるとともに、貼り付け時には実質的に伸展せず、接着部を介して被着面に貼り付け固定可能である。具体的な構造例については、後述するが、代表的には、本実施の形態の物品は、
図1〜
図3に示すような、自動車用部品であるドアフレーム部品や窓枠部品に貼り付ける物品1である。
【0013】
なお、本明細書において、
「意匠面」とは、部品を加飾するために、種々の意匠が施された面をいう。意匠は、物品が貼り付けられる部品の用途に応じて異なる。代表的な意匠として、黒色その他の単一色、または透明、あるいは、複数の色彩、文字、図形等からなる模様が挙げられる。さらに、それらに加え、表面にエンボス等の微細な凹凸パターンを施してもよい。
「被着面の形状に応じて変形し」とは、被着面が湾曲している場合は、その湾曲面に追従して面に沿った変形をすることをいう。被着面の湾曲の方向性は限定しないが、例えば、ドアフレーム用部品の被着面では、長手方向に半径500mm〜2000mm程度湾曲面を代表的に備えることが多い。
「本体部表面に対して所定の角度を形成する表面を有する」とは、典型的には、本体部表面の面を基準として0°以上180°の間で、例えば90°、端部が表面に対し傾斜若しくは湾曲していることを言う。角度の形成は、一箇所に限らず、端部の複数個所で段階的に角度を変更してもよい。ちなみに、角度の形成は直線状に限られず曲面状によって形成されてもよい。
「本体部は、接着部を介して被着面に貼り付け固定可能」とは、本体部を接着層を介して被着面に貼り付けた後は、接着層による接着力によって、本体部が被着面に固定されたままの状態を維持することができる状態である。例えば、本体部の曲げ剛性が高く、作業者が過度な押し付け力を付与することで無理に被着面に固定したとしても、本体部の復元力が接着層の接着力を上まわることで、本体部が被着面から剥がれる状態は、「接着部を介して被着面に貼り付け固定可能」な状態には含まれない。
「貼り付け時には実質的に伸展せず」とは、作業者が物品を貼り付け作業するときに物品に加える通常の力程度では本体部の当初の長さや幅が変化しないことをいう。例えば、少なくとも、貼り付け作業時に物品に50mN〜2.5N程度の力がかかっても弾性あるいは非弾性変形による伸展は生じない。
【0014】
本発明の一態様によれば、本体部は、被着面の形状に応じて変形可能であり、かつ、実質的に伸展せず、接着部を介して被着面に貼り付け固定可能である。すなわち、本体部は、被着面の形状に応じて変形する程度の柔軟性と貼り付け時に伸展しない程度の剛性とを有する。この剛性により、物品は自立性を有し、貼り付け時の作業者の通常の力では容易に伸展しないため、変形やしわ等が生じにくく、貼り付け作業が容易になる。また、この剛性により、端部には、本体部表面に対して一定の角度を維持した表面を持つことができ、これにより、作業者は、貼り付け時に端部を折り曲げる必要がなく、予め形成された折り曲げ部を利用することで、位置調整を容易にできる。さらに、物品の意匠面は、被着面の傷やごみによる微細な凹凸の影響を受けにくいため、凹凸のない良好な外観の意匠面を部品に付与できる。また、このように、柔軟性と剛性を併せ持つ物品は、従来のガーニッシュに比べ軽量であり、燃費の改善及び物品の荷重によりかかる作業者の負担を軽減できる。さらに、その柔軟性により、成型方法は射出成型に限定されず、折り曲げ加工を含む、より容易な成型方法が選択できる。
【0015】
本実施の形態において、物品の曲げ剛性が0.05N〜2.5Nであってもよい。すなわち、物品の曲げ剛性が0.05N以上、0.1N以上、あるいは0.2N以上であってもよい。また、2.5N以下、2N以下、あるいは1.5N以下でもよい。0.05N以上の場合は、物品の貼り付け時に、物品が自立でき、自重で垂れ下がりにくいため、作業が容易となる。一方、2.5N以下であれば、曲面を持つ被着面に対し、容易に追従して物品を変形させ、接着部を介して、容易に本体部を被着面に固定させることができる。
【0016】
本実施の形態において、物品の2%伸び引っ張り強度が40N/10mm以上であってよい。また、物品の2%伸び引っ張り強度が、50N/10mm以上、60N/10mm以上であってもよい。40N/10mm以上であれば、物品の貼り付け時に物品にかける作業者の力では、容易に物品が伸展しない。このため、作業時に物品に皴等が生じることがなく、作業が容易となる。
【0017】
本実施の形態において、物品の本体部の厚みが0.2〜1.2mmでもよい。すなわち、本体部の厚みは、0.2mm以上、0.3mm以上、あるいは0.4mm以上であってもよい。また、1.2mm以下、1.0mm以下、あるいは0.8mm以下でもよい。0.2mm以上とすることで、物品に一定の剛性を付与できる。また、1.2mm以下とすることで軽量化させることが可能になる。
【0018】
本実施の形態において、物品の本体部としては、種々の樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、無延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、硬質塩化ビニル(PVC)樹脂などの単層、あるいは積層体を使用することができるが、特に、ガラス転移温度が130℃以上の樹脂層を含むことが望ましい。これらの樹脂層であれば、適切な柔軟性と剛性を併せ持つ本体部を形成することができる。特に、耐熱性を有するポリカーボネート層を用いる場合は、80℃以上の温度での端部の折り曲げ加工が容易となる。
【0019】
本実施の形態において、物品の本体部は、表面保護層を備えてもよい。表面保護層として好ましくは、ポリウレタン層を含んでよい。これにより、意匠面への傷つきを防止し、さらに耐候性を改善することができる。また、表面保護層は、80℃以上において破断伸度が100%以上であることが好ましい。このような材料を使用することで、本体部と端部は、一体の接着部付きシート状部材を使用し、端部はシート状部材の端部を加熱しながら折り曲げて形成することが可能になる。
【0020】
本実施の形態において、接着部は本体部の裏面全面に積層されてもよい。本体部裏面全面に接着部を形成することで、本体部を被着面に、均一に確実に固定できる。なお、接着部は、微細化構造を有するものであってもよい。例えば、微細化構造で形成された接着部の凹凸は、貼り付け時の物品の被着面に対する滑り性が改善され、貼付がより容易になる。
【0021】
本実施の形態において、端部は、被着面に貼り付けた際に、被着面の一端縁に沿い、一端縁の側面の少なくとも一部を覆う形状を有してもよい。このような形状を採用することで外観を良好にすることができる。この場合、端部は、本体部表面に対して略90°の角度を形成する表面を有してもよい。また、端部は、段階的に角度を変化させることも可能であり、一辺と対向する第2の一辺から延在し、本体部表面に対して一定の角度を形成する表面を有する第2の端部を有してよい。第2の端部に接続され、第2の端部と異なる角度を有する第3の端部を有してもよい。また、第3の端部は本体部表面に対して略0°の角度、すなわち第3の端部は本体部表面と平行な表面としてもよい。
【0022】
本実施の形態において、物品を部品の被着面への貼り付けた前後において、物品の意匠面表面の表面粗さを実質的同一にすることができる。すなわち、本実施形態の物品は、一定以上の剛性を有するため、部品の被着面の傷やごみの存在による微細な凹凸の影響を受けにくく、それらの凹凸にかかわらず、表面粗さを実質的に同一に維持することができる。
【0023】
本実施の形態において、意匠面となる表面を有する接着剤付きシート状部材を準備する工程と、シート状部材の端部を折り曲げ、表面に対して一定の角度を形成する折り曲げ工程とで製造することが可能である。例えば、この折り曲げ工程は、一対の金型を準備する工程と一方の金型にシート状部材を固定する工程と、一方の金型と他方の金型の少なくともどちらか一方を相対的に移動させることにより、シート状部材に対して一定の角度を形成する工程とを有することもできる。本実施形態の物品であれば柔軟性と剛性を備えるため、従来のガーニッシュのように射出成型等のプロセスによらず、このような簡易な折り曲げ工程で端部の成型が可能である。なお、折り曲げ工程時に80℃以上の加熱を行うことで、より容易に折り曲げ加工を行うことが可能になる。
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
本発明の実施形態に係る物品は、部品の被着面に貼り付けるものである。物品は、貼り付けられた部品の被着面側に意匠面を形成する。物品を貼り付ける対象となる部品は、意匠面を形成する必要のあるものであればあらゆる部品を採用することができる。例えば、物品は、部品としての自動車部品等に貼り付けられてよい。また、物品は、部品としての車両用ドアフレーム部品に貼り付けられてよい。車両用ドアフレーム部品として、例えば、自動車のAピラー(前側のピラー)、Cピラー(後側のピラー)等が挙げられる。また、物品は、部品としての車両用窓枠部品に貼り付けられてよい。車両用窓枠部品として、Bピラー(車両前後方向の中央のピラー)等が挙げられる。
【0026】
[物品の構成]
図1〜
図4に示す実施形態では、物品が、自動車用ドアフレーム部品としてのBピラー50に貼り付けられるカバー部材である場合を例にして説明を行うものとする。Bピラー50は、前側のドア51Aに設けられるBピラー50Aと、後側のドア51Bに設けられるBピラー50Bと、を備える(
図3参照)。Bピラー50の車両外側の面が被着面50aとして形成される(
図4参照)。被着面50aは、上下方向に延在すると共に、車両外側へ向かって凸となるように緩やかに湾曲する。
図1及び
図2に示すように、物品1は、本体部2と、端部3と、接着層(接着部)4と、を備える。
【0027】
本体部2は、意匠面となる表面2a及び裏面2bを有する。本体部2は、平面視において車両のBピラーの被着面50aの少なくとも一部を覆う形状を有している。本実施形態では、本体部2は、Bピラーの被着面50aの略全体を覆う形状を有している。具体的に、本体部2は、第1の方向(
図1に示す紙面上下方向)に沿って延在しており、帯状形状を有している。本体部2は、長手方向(第1の方向)に延びると共に互いに対向する一対の辺2c,2cを有している。また、本体部2は、短手方向に延びると共に互いに対向する一対の辺2e,2fを有している。本体部2の一対の辺2c,2cは、上端側の辺2eから下端側の辺2fへ向かうに従って互いの距離が離間するように傾斜するように延びている。ただし、本体部2の形状は、被着面50aの形状に合わせて適宜変更してよい。
【0028】
端部3は、本体部2の少なくとも一辺から延在し、該本体部2の表面2aに対して一定の角度を形成する表面3aを有する。本実施形態では、端部3は、本体部2の各辺2c,2cのそれぞれから延在している。端部3は、本体部2の各辺2c,2cから、当該本体部2の表面2a側から裏面2b側へ向かうようにそれぞれ延在する。なお、一方の辺2cが請求項における「一辺」に該当し、他方の辺2cが請求項における「第2の一辺」に該当するが、どちらが「一辺」「第2の一辺」に該当するかは特に限定されない。すなわち、一方の端部3が請求項における「端部」に該当し、他方の端部3が請求項における「第2の端部」に該当するが、どちらが「端部」「第2の端部」に該当するかは特に限定されない。本実施形態では、端部3は本体部2に対して略90°の角度をなしている。従って、端部3は、本体部2の表面2aに対して略90°の角度を形成する表面3aを有する。ただし、端部3が本体部2に対してなす角度は特に限定されず、端部3の表面3aが本体部2の表面2aに対してなす角度も限定されない。端部3は、本体部2の外周側に表面3aを有し、本体部2の内周側に裏面3bを有している。端部3は、本体部2をBピラー50の被着面50aに貼り付けた際に、被着面50aの一端縁に沿い、一端縁の側面50bの少なくとも一部を覆う形状を有する(
図4参照)。被着面50aの一端縁及び側面50bは、Bピラー50Bの長手方向に沿って延在する。本実施形態では、端部3は、本体部2の辺2cの略全域に沿って形成されているが、例えば、上端付近や下端付近の一部には、端部3が形成されていなくてもよい。また、端部3の本体部2からの突出量は、他の部品と干渉しない限り特に限定されない。例えば、端部3の本体部2からの突出量はBピラー50の厚みよりも小さくてもよく、同一量でもよい。
【0029】
例えば、
図4(a)に示すように、Bピラー50Bの後端付近(紙面右側の端部付近)は、物品1の端部3と、ガラスをシールしながら受容するウェザーストリップ60の一部によって保護される。Bピラー50Bの前端付近(紙面左側の端部付近)は、物品1の端部3と、ドアの隙間をシールするパーティングシール61の一部によって保護される。Bピラー50Aの前端付近は、物品1の端部3と、ガラスをシールしながら受容するウェザーストリップ60の一部によって保護される。Bピラー50Aの後端付近は、物品1の端部3によって保護される。なお、
図4(b)に示すように、Bピラー50Bの前端の形状に応じて、パーティングシール61の形状を変更してもよい。
【0030】
また、物品1の端部3の形状は、Bピラーの端部の形状に応じて適宜変更してもよい。例えば、
図5(a)に示すように、物品1の一方の端部3が本体部2に対して略90°ではなく、所定の角度(θ)で傾斜していてもよい。
図5(b)に示すように、物品1の一方の端部3が本体部2に対して略90°の角度を形成し、先端部で更に内側向かって本体部2と平行に延びてよい。
図5(c)に示すように、物品1の一方の端部3が本体部2に対して所定の角度(θ)で傾斜し、先端部で更に外側へ向かって本体部2と平行に延びてよい。
図5(d)に示すように、物品1の一方の端部3が本体部2に対して所定の角度(θ)で傾斜し、先端部で更に外側へ向かって本体部2と平行に延び、物品1の他方の端部3が本体部2に対して略90°の角度を形成し、先端部で更に内側向かって本体部2と平行に延びてよい。
図5(b),(c),(d)のうち、端部3のうち、本体部2に対して直角、または傾斜する部分と異なる角度を有し、本体部表面と平行に延びる部分は、請求項における「第3の端部」に対応する。
【0031】
図2に示すように、接着層4は、本体部2を被着面50aに貼り付けて固定する。接着層4は、本体部2の裏面2b側の少なくとも一部に配置される。接着層4は本体部2の裏面全面に積層されてよい。本実施形態では、接着層4は、本体部2の裏面2bと端部3の裏面3bに積層されている。接着層4は、本体部2の裏面2bの略全面に配置される。また、接着層4は、端部3の裏面3bの略全面に配置される。ただし、接着層4は、裏面2b,3bの一部のみに配置されていてもよく、端部3の裏面3bには配置されていなくともよい。
【0032】
[物品の層構成]
次に、物品1の層構成について説明する。本体部2は、基体層6と、基体層6上に積層された表面保護層7と、を含んでいる。表面保護層7は、基体層6の略全面を覆っている。表面保護層7は、意匠面である表面2a及び裏面2bを有している。従って、表面保護層7の裏面2b上に接着層(接着部)4が積層されている。端部3は、基体層8と、基体層8上に積層された表面保護層9と、を含んでいる。表面保護層9は、基体層8の略全面を覆っている。表面保護層9は、意匠面である表面3a及び裏面3bを有している。従って、表面保護層9の裏面3b上に接着層4が積層されている。表面保護層9の表面側に剥離可能なアプリケーションフィルム層を有してもよい。接着層4の裏面側に剥離可能なライナーフィルム層を有してもよい。基体層6と表面保護層9の間もしくは基体層6と接着層4の間には印刷による模様やロゴ、自動車塗装色のコーティング、金属外観を再現する金属蒸着といった意匠層、意匠層を施すためのベース層、層間の密着力を強化する接合層等を設けてもよい。
【0033】
本体部2と端部3は、一体の接着層4付きシート状部材を使用し、端部3はシート状部材の端部を折り曲げることで形成されてよい。この場合、本体部2の基体層6と端部3の基体層8とは、一体的に形成されて互いに連続した層として構成される。また、本体部2の表面保護層7と端部3の表面保護層9とは、一体的に形成されて互いに連続した層として構成される。従って、本実施形態では、本体部2の基体層6と端部3の基体層8とは、同一の材質によって構成される。本体部2の表面保護層7と端部3の表面保護層9とは、同一の材質によって構成される。ただし、本体部2の基体層6と端部3の基体層8とは、異なる材質によって構成されてよい。本体部2の表面保護層7と端部3の表面保護層9とは、異なる材質によって構成されてよい。
【0034】
なお、接着層4が積層されていないシート状部材を使用し、折り曲げた後に接着層4を積層してもよい。あるいは、端部3はシート状部材の端部を折り曲げることで形成されていなくともよい。
【0035】
[物品の各種特性]
本体部2は、被着面50aの形状に応じて変形し、実質的に非弾性変形せず、接着層4を介して被着面50aに貼り付け固定可能である。
【0036】
本体部2は、物品1を被着面50aに貼り付ける際に、被着面50aの形状に追従するように変形する。本実施形態では、本体部2は、長手方向(第1の方向)に沿って延在し、長手方向において湾曲可能である。この場合、作業者は、物品1に過度な押し付け力を付与しなくとも、被着面50aの湾曲形状に追従させるように、容易に本体部2を湾曲させることができる。なお、本明細書において、本体部2(または物品1)が「曲がる」、「湾曲する」と言った場合は、表面2a及び裏面2bが丸められるように曲がることを指す。
【0037】
例えば、物品1は、曲げ剛性が0.05〜2.5Nであってよく、0.10〜2.0N、0.30〜1.0Nであってよい。ここでの「曲げ剛性」は、JIS L−1096曲げ反発性A法にのっとり物品を長手方向に規定長突き出してその根本を固定しておき、先端部を主平面と垂直方向にたわませて測定される最大荷重と定義される。幅が25mmを超える場合は、25mm以下になるよう幅方向に分割して測定した値にそれぞれの幅で加重平均をとることで値を求めることができる。物品1がこれらの曲げ剛性を有することで、本体部2が被着面50aの形状に応じて変形し、且つ、接着層4を介して被着面50aに貼り付け固定可能な状態とすることができる。ただし、物品1の曲げ剛性は、当該範囲に限定されるものではない。物品1は、2%引っ張り強度が20N/10mm幅以上であってもよく、40N/10mm幅以上、60N/10mm幅以上、80N/10mm幅以上であってもよい。ここでの「引っ張り強度」は、物品長手方向に沿って10mm幅に裁断し引っ張り試験機でつかみ間隔50mm、速度300mm/分で延伸した時の荷重と定義される。物品1が当該引っ張り強度を有することで、本体部2が実質的に伸び変形しない状態とすることができる。ただし、物品1の2%伸び引っ張り強度は、当該範囲に限定されるものではない。
【0038】
物品1の曲げ剛性及び引っ張り強度を上述のような条件とするために、例えば、本体部2の基体層6及び端部3の基体層8の材質がポリカーボネートであってよく、本体部2の表面保護層7及び端部3の表面保護層9の材質がポリウレタンであってよい。また、本体部2と接着層4をあわせた厚みが、0.20mm〜1.20mmであってよく、0.30〜1.00mmであってよい。端部3と接着層4をあわせた厚みは、0.20mm〜1.20mmであってよく、0.30〜1.00mmであってよい。より詳細には、本体部2の基体層6は、0.15〜1.15mmであってよい。本体部2の表面保護層7は、0.03〜0.10mmであってよい。端部3の基体層8は、0.15〜1.15mmであってよい。端部3の表面保護層9は、0.03〜0.10mmであってよい。ただし、物品1の曲げ剛性及び引っ張り強度を上述のような条件と出来る限り、各構成要素の材質や寸法等はあらゆる態様に変形させてよい。
【0039】
本体部2は、ガラス転移温度が130℃以上の樹脂層を含んでよい。本体部2のうち、少なくとも基体層6,8のガラス転移温度が130℃以上の樹脂層であってよい。ガラス転移温度が当該温度以上の樹脂層を用いることで、車両に用いられるのに必要な耐熱性を確保することができる。当該条件を満たすために、例えば基体層6,8の材質をガラス転移温度150℃のポリカーボネートにしてよい。例えば、物品1を80℃雰囲気下に240時間配置した場合、本体部2の材質としてポリカーボネートを採用した場合、表面2aが変形等することなく、良好な状態を維持することができた。一方、本体部2の材質としてガラス転移温度が130℃より低い樹脂を採用した場合、同様の試験を行った時の表面2aの変形が、ポリカーボネートの場合に比して大きくなった。例えば、ガラス転移温度80〜125℃のABS樹脂、ガラス転移温度90℃のアクリル(PMMA)樹脂、ガラス転移温度87℃のPVC樹脂を採用した場合、表面2aの変形が大きくなった。ガラス転移温度69℃のPET樹脂を採用した場合、表面2aの変形がさらに大きくなった。なお、ガラス転移温度130℃以上の樹脂層であれば、ポリカーボネート以外の樹脂であってもよい。本段落に記載の条件は物品1にとっての必須の条件ではなく、当該条件が満たされていなくともよい。
【0040】
被着面50aへの物品1の貼り付けの前後において、表面2aの表面粗さが実質的に同一であってよい。「表面粗さが実質的に同一」とは、本体部2が下地である被着面50aの凹凸の影響を受けないことにより、表面2aの表面粗さに影響が及ぼされないことを示す。当該特性は、物品1の曲げ剛性を0.05〜2.5N、0.10〜2.0N、または0.30〜1.0Nすることによって得られる。例えば、曲げ剛性の低い薄いフィルムなどを被着面50aに貼り付けた場合は、下地である被着面50aの凹凸形状の影響を受けることで、フィルムの表面粗さも粗くなる。本段落に記載の条件は物品1にとっての必須の条件ではなく、当該条件が満たされていなくともよい。
【0041】
被着面50aへの物品1の貼り付け後の本体部2の表面2aの鮮明度は、例えば0.5以上または0.7以上に設定してよい。なお、本体部2の表面2aの鮮明度(sharpness)は、平らな鋼板に外板用塗料をスプレー塗装して焼き付けた鮮明度0.2の塗装板に本体部2を貼りつけて被着面への貼り付けの前後における鮮明度について携帯用鮮明度光沢度計形式PGD−IV(日本色彩研究所社製)で測定することができる。被着面50aの貼り付け後に表面2aの鮮明度を上記値とするには、表面2aを構成する材質自体を調整することに加え、物品1が、前述のように被着面50aの凹凸形状に影響を受けないだけの曲げ剛性を有することが条件となる。例えば、本体部2の基体層6をポリカーボネートで構成して厚みを0.5mmに設定し、表面保護層7としてポリウレタンを採用した場合、貼り付け後の表面2aの鮮明度が0.9となる。なお、ハイグロス・ブラックアウトフィルムを被着面50aに貼り付けた場合、鮮明度が0.2となる。本段落に記載の条件は物品1にとっての必須の条件ではなく、当該条件が満たされていなくともよい。
【0042】
本体部2の表面2aは、傷防止性が高くてよい。すなわち、本体部2の表面2aは、スポンジ等で洗浄された際に、傷がつきにくく、且つ、傷がついたとしても元の状態へ戻る復元性を有していてよい。例えば、本体部2の基体層6及び端部3の基体層8の材質がポリカーボネートであり、本体部2の表面保護層7及び端部3の表面保護層9の材質がポリウレタンである場合、上述の傷防止性を得ることができる。本段落に記載の条件は物品1にとっての必須の条件ではなく、当該条件が満たされていなくともよい。
【0043】
本体部2の表面2aの鉛筆硬度が高くてよく、例えばB以上であってよい。鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4に従い測定される。例えば、本体部2の表面保護層7及び端部3の表面保護層9の材質がポリウレタンである場合、鉛筆でなぞった際に下地である基体層に変形力が伝達することを抑制できる。例えば、ハイグロス・ブラックアウトフィルムの鉛筆硬度は、4Bより小さくなる。本段落に記載の条件は物品1にとっての必須の条件ではなく、当該条件が満たされていなくともよい。
【0044】
本体部2の表面2aは、耐候性が高くてよい。例えば、物品1を2年間室外に配置した場合に、表面光沢が80%以上維持できていればよい。例えば、本体部2の表面保護層7及び端部3の表面保護層9の材質がポリウレタンである場合、高い耐候性を得ることができ、5年間室外に配置しても、表面光沢を88%維持できる。本段落に記載の条件は物品1にとっての必須の条件ではなく、当該条件が満たされていなくともよい。
【0045】
本体部2は、端部3を形成するための折り曲げ加工のために、スタンピングによる変形性が高くてよい。すなわち、端部3をスタンピングによって折り曲げたときにクラックが発生しなければよい。例えば、本体部2の表面保護層7及び端部3の表面保護層9の材質がポリウレタンである場合、スタンピングによってクラックが発生しないが、PMMA樹脂である場合はクラックが発生する。また、表面保護層7,9の材質は、80℃の温度条件下において伸縮性を有していてよい。例えば、スタンピングにより折り曲げられた物品1を、80℃の雰囲気下に240時間配置した後でも、表面保護層7,9にクラックが発生していなければよい。表面保護層7,9は、80℃で100%以上の破断伸びを有する。
【0046】
Bピラー50に貼り付けた後の物品1は、十分な割裂性を有していてよい。例えば、Bピラー50に貼り付けられた物品1の一方の端部3の先端部にフックを引っ掛け、本体部2の表面2aと垂直な方向へ引っ張って引っ張り力を付与する。このとき、40N以上の引っ張り力を付与した場合であっても、物品1がBピラー50に貼り付けられた状態が維持されてよい。具体的には、接着層4の材質や塗布面積を調整することにより、接着強度を調整することで、割裂性を高めてよい。この場合、割裂強度を60N以上、または80N以上としてもよい。あるいは、端部3を
図5(b),(d)のようにBピラー50に回り込むようなU字状の形状にした場合、端部3の引っ掛り力によっても割裂性を高めることができる。本段落に記載の条件は物品1にとっての必須の条件ではなく、当該条件が満たされていなくともよい。
【0047】
上述のように端部3を
図5(b),(d)のようにBピラー50に回り込むようなU字状の形状にした場合、Bピラー50に貼り付ける際には、一度接着層4を被着面50aに当接させた状態で、接着層4を被着面50a上でスライドさせる必要がある。これによって、U字状の端部をBピラー50の縁部に引っ掛けることができる。従って、接着層4は、被着面50aに対して十分なスライダビリティを有していてよい。例えば、接着層4が微細構造化表面を有することで、スライダビリティを向上してよい。具体的には、当該微細構造化表面に形成された所定パターンの溝は、当該パターンに対するいずれの位置に設定される直径500μmの円形領域においても、少なくとも1×10
3μm
3の体積を規定していてよい。当該構造によれば、スライド時における接着層4と被着面50aとの接触面積を溝によって減少させておくことで、スライダビリティを向上できる。位置合わせが終了したら、本体部2を被着面50aに押圧することで、十分な固定力を確保する。あるいは、接着層4中にガラスビーズ等の粒子を混入することで、スライド時におけるスライダビリティを向上してもよい。本段落に記載の条件は物品1にとっての必須の条件ではなく、当該条件が満たされていなくともよい。
【0048】
[物品の各構成要素の材質]
本体部2の基体層6及び端部3の基体層8は平滑で硬く厚さを持っておりこの材質は、熱可塑性樹脂であってよい。すなわち、本体部2及び端部3は、熱可塑性樹脂層を含む構成を有する。熱可塑性樹脂として、例えばポリカーボネート、無延伸PET、ABS、硬質PVCなど、もしくはこれらの混合物等を採用してよい。あるいは、それらの材質のうちの複数種類の層を積層させることによって、基体層6,8を構成してもよい。ポリカーボネート又は、ポリカーボネートとポリカーボネート以外の他の熱可塑性樹脂との混合物が耐熱性が優れる点で特に好ましい。基体層が薄すぎると曲げ加工した形状保持性が低下し、貼り付け後に基材の凹凸を拾って表面平滑性が損なわれる。基体層が厚すぎると曲げ加工が困難になる。また曲げ部の外面側の曲率が大きいものしか作れなくなり形状再現性が損なわれる。さらに連続的に加工するために有利な巻きの形態にすることが困難になる。基体層の厚みは0.2〜1.5mm、好ましくは0.3〜1mm、更に好ましくは0.4〜0.8mmであってよい。
【0049】
本体部2の表面保護層7及び端部3の表面保護層9は、ポリウレタンを含んでよい。すなわち、本体部2は表面保護層7としてポリウレタン層を含み、端部3は表面保護層9としてポリウレタン層を含む。ポリウレタンとして、例えば無黄変のポリエステルポリオール、グリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール、アクリルポリオールのいずれかもしくはそれらの混合物と、IPDI(イソホロンジイシソアネート)、水添MDI(4,4‘−シクロヘキシルメタンジイソシアネート)、水添XDI(キシリレンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)かそのポリマーもしくはそれらの混合物とを反応させたもの等を採用してよい。また、本体部2の表面保護層7及び端部3の表面保護層9の材質は、無黄変の水系ポリカーボネートポリウレタンにポリカーボジイミド、アジリジン等で架橋したもの等であってよい。また、本体部2の表面保護層7及び端部3の表面保護層9は、前述の樹脂にカーボンブラック等の着色剤を混入させて、着色してよい。本実施形態では、表面保護層9は、黒色に着色されるが、色は特に限定されない。前述の材質のうちの複数種類の層を積層させることによって、表面保護層7,9を構成してもよい。また、表面保護層9の材質は、屋外で使用する場合には屋外で何年かに渡り使用しても色変化、光沢変化の少ない耐候性の観点からも選択されるとよい。そして、表面保護層9の材質は、折り曲げにより延伸された後に80℃といった高温環境にさらされてもクラックを生じない、高温での高い破断伸度とを合わせもつことが好ましい。そのようなポリウレタン組成としては特開H05−155976の実施例にあるポリカプロラクトンポリオールとIPDIのイソシアヌレート体との反応によるポリウレタン、特開2007−297569の請求項1であるポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、IPDIのポリマー3成分の反応によるポリウレタン、WO2013/173424の請求項1であるポリカーボネートジオール、カルボキシル基含有脂肪族ジオール、水添MDIを鎖長延長してポリカーボジイミドで架橋したポリウレタン等が挙げられ、それらは全て自動車外装での一般的な促進耐候性試験(SWOM2000h、Xenon750MJ)、もしくは屋外暴露1年後で光沢保持率80%以上、色差値3以下、及び80℃もしくは120℃雰囲気での引っ張り試験で破断伸度が100%以上(元の長さの2倍以上)の性能を持っている。表面保護層7,9が薄すぎると基体層など下層をキズ付き、薬品、紫外線等から保護する性能が低下する。表面保護層7,9が厚すぎると曲げ加工時の局所的な力を変形することで吸収して形状再現性が低下する。表面保護層の厚みは0.003〜0.2mm、好ましくは0.01〜0.1mm、更に好ましくは0.02〜0.07mmであってよい。
【0050】
表面保護層7,9の更に表面側に剥離可能なアップリケーションフィルム、例えばPETフィルムを設けることで折り曲げ加工時、施工時、保管、輸送時の表面保護層への変形、キズ付き、汚れ付着を防ぐことができる。PETフィルムとしては2軸延伸のものが好ましい。常温もしくは高温でより延伸し易くした易成形性PETフィルムを使うこともできる。表面保護層7,9に接するPETフィルムの表面の光沢を設定することでその光沢が剥がした後に現れる表面保護層の表面光沢を高光沢から低光沢までデザインすることが可能。PETフィルムが薄すぎると曲げ加工や施工時、輸送時などに発生する打痕などの表面保護層7,9の変形を防ぐ性能が低下する。PETフィルムが厚すぎると曲げ加工する際の局所的な延伸を妨げて形状再現性が低下する。PETフィルムの厚みは0.006〜0.288mm、好ましくは0.016〜0.125mm、更に好ましくは0.025〜0.075mmであってよい。
【0051】
接着層4は、感圧型、感熱型、2液硬化型、1液湿気硬化型等の接着剤によって構成されてよい。なお、接着層4は、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ポリオレフィン等の感圧接着剤(いわゆる粘着剤)によって構成されてもよい。製品の可使期間の制約がなく加熱や反応時間を待つ必要のない感圧型が実用性に優れ、屋外で使用する場合には耐久性に優れたアクリル系、シリコーン系粘着剤が好ましい。経済性や多様な特性を市場に求めることができる点でアクリル系が特に好ましい。接着層4が薄すぎると基材面への接着面積が減少するのと特に粘着剤の場合に剥がそうとする力に対して変形する体積が少ないことにより接着力が低下する。接着層が厚すぎると、接着層4に曲げ加工時の力が吸収され曲げ加工しにくくなると共に、形状再現性が低下する。接着層の厚みは0.005〜0.4mm、好ましくは0.01〜0.15mm、更に好ましくは0.02〜0.075mmである。接着層4の接合強度は、変形したまま物品1に貼り付けられ形状を維持できる接合強度である。具体的には、物品1を自動車外板塗装上に貼りつけて48時間後に90°方向へ300mm/minの速度で引きはがした時の接着力が5N/25mm以上あることが好ましく10N/25mm以上あることがより好ましく、15N/25mm以上あることがさらに好ましい。
【0052】
接着層4の裏面側に更に剥離ライナーを設けてもよい。接着層4が粘着剤の場合に異物付着を防ぐためとりわけ有用である。この剥離ライナー表面に、日本特許3550096あるいはWO98/29516のような微細構造を施し、それを接着層4に転写させることにより貼り付け時の滑り性とエア抜け性を付与する。このような日本特許3820438のようにガラスビーズを含む層を部分的に設けて接着層4に転写させることにより貼り付け時の基材に対する滑り性を持たせて位置決め性を向上させる、といった機能性を付与することもできる。剥離ライナーが薄すぎると曲げ加工時の局所的な力で接着層が変形することを防ぐ性能が低下し、剥離ライナーが厚すぎると曲げ加工する際の延伸を妨げるのと熱の伝わりにくくなることでいずれも形状再現性が低下する。剥離ライナーの厚みは0.01〜0.3mm、好ましくは0.02〜0.2mm、更に好ましくは0.05〜0.15mmである。接着層4は、微細構造化表面を有してよい。当該微細構造化表面に形成された所定パターンの溝は、当該パターンに対するいずれの位置に設定される直径500μmの円形領域においても、少なくとも1×10
3μm
3の体積を規定していてよい。
【0053】
[製造方法]
次に、物品1の製造方法の一例について説明する。ただし、物品1の製造方法は以下の方法に限定されるものではない。
【0054】
物品1の製造方法は、意匠面となる表面2aを有する接着剤付きシート状部材100を準備する工程(シート準備工程)と、シート状部材100の端部3を折り曲げ、表面2aに対して一定の角度を形成する折り曲げ工程と、を有する。
【0055】
シート準備工程では、基体層(完成後の基体層6,8に対応する層)の全面が表面保護層(完成後の表面保護層7,9に対応する層)に覆われると共に、一方の面(完成後の裏面2bに対応する面)に接着剤が積層されたシート状部材100が準備される。具体的には、熱可塑性樹脂を融点より高い温度に溶融させた状態から一定厚のすきまから塗出させる押し出し工法、一定にすきまに調整された2本のロール間を通すカレンダー工法等の方法によって、基体層が所定の厚み及び大きさに成形される。基体層の一方の面に接着剤溶液をバーコート、ロールコート、グラビアコート、スプレーコート等の方法で塗布してから、溶剤を含む場合は熱風オーブン等に所定時間入れて溶剤分を除いて塗膜化する。接着剤塗膜がべたつき性を持つ場合、とりわけ粘着剤である場合は、塗膜化した直後に剥離ライナーをラミネートすることで異物付着を防ぎ、また枚様で重ねたりロール状に巻き取ることができる。剥離ライナー上に接着層を塗布して基体層をラミネートすることもできる。基体層の反対面に表面保護層を積層する場合、表面保護層用の溶液をバーコート、ロールコート、グラビアコート、スプレーコート等で直接塗布した後に必要に応じて乾燥や硬化を行い塗膜化させる、表面保護層が溶剤系2液硬化型ポリウレタンの場合は塗布後に熱風オーブンに入れて硬化した塗膜化することもできるし溶剤を取り除いてポリウレタンとしては未反応でべたつきのある状態でPETフィルムをラミネートしてから常温保管することで反応が進み、べたつきのないポリウレタン塗膜となりPETフィルムも剥離できる状態になる。表面保護層が水系ポリウレタンの場合は予めPETフィルム上に塗布して乾燥塗膜化しておいたものをポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド等の接合層を介して基体層にラミネートすることができる。アイオノマー、EAA(エチレンーエチルアクリレート共重合)、PVdFとPMMA共重合体、ETFE(エチレンとテトラフルオロエチレン共重合体)といったフィルムを単独もしくは予めPETフィルムを積層した状態のものを接合層を介してラミネートすることもできる。表面保護層の積層と接着層の積層の順は問わない。表面保護層の積層もしくは接着層の積層の前に、基体層の表面に意匠の付与や形状印刷、着色層の塗布、着色フィルムの貼り合わせ、金属蒸着、金属蒸着を含む複数層フィルムを貼り合わせてもよい。層間の密着性や耐久性を向上させるためにプライマーを塗布する等の追加の層を設けることができる。
【0056】
折り曲げ工程は、例えば、スタンピングによって実行されてよい。スタンピングを採用する場合、
図8(a)に示すように、折り曲げ工程は、一対の金型80,81を準備する工程と、一方の金型80にシート状部材100を固定する工程と、一方の金型80と他方の金型81の少なくともどちらか一方を相対的に移動させることにより、シート状部材100に対して一定の角度を形成する工程と、を備える。一方の金型80はV字状の溝部を有しており、他方の金型81は、当該溝部に入り込む形状を有している。従って、他方の金型81が一方の金型80の溝部に入り込むに伴って、シート状部材100が溝部に沿って折り曲げられる。このような工程によって、本体部2に対して一定の角度を有する端部3が形成される。折り曲げの角度は、金型80と金型81同士の相対的な移動量を調整することによって調整することができる。折り曲げ工程は、80℃以上において実施されてよい。例えば、完成品の耐熱性を向上させるためにシート状部材100が耐熱性の高い材質を含んでいたとしても、折り曲げ工程を80℃以上で実施することで、応力を緩和して、スタンピングで容易に折り曲げ加工をできる。また、折り曲げた端部3が元の形状に戻ることを抑制できる。金型の片側もしくは両方を加熱しておいてスタンピングした状態で一定時間保持することによりシート状部材100に熱が伝わることで加温してもよい。例えば
図9(a)に示す金型85,86のように、溝部先端を曲面にすることでシート状部材100の折り曲げ部の断面形状を、例えば貼り付ける基材の形状に合うよう調整することができる。金型を加熱して折り曲げる場合は
図8の金型81より
図9(a)の金型86の方が接触面積が広い分シート状部材100に熱が伝わり易いという利点もある。金型86を加熱してスタンピングを行う場合、金型温度120〜150℃で実施してもよい。
【0057】
また、端部を略U字状に折り曲げる場合は、
図8(b)に示す金型90,91を用いてよい。
図8(b)に示すように、折り曲げ工程は、一対の金型90,91を準備する工程と、一方の金型90にシート状部材100を固定する工程と、一方の金型90と他方の金型91の少なくともどちらか一方を相対的に移動させることにより、シート状部材100に対して一定の角度を形成する工程と、を備える。一方の金型90は互いに平行に対向する側面を有する溝部を有しており、他方の金型91は、シート状部材100を巻き込んで当該溝部に入り込む形状を有している。従って、他方の金型91が一方の金型90の溝部に入り込むに伴って、シート状部材100が溝部に沿って略U字状に折り曲げられる。このような工程によって、本体部2に対して一定の角度を有する端部3が形成される。
図8(b)に示す金型90を用いてスタンピングを行う場合、金型91の温度を約120〜170℃で実施してもよい。スタンピングした状態で金型90開口部からシート状部材100の折り曲げ外面を熱風、赤外線、水蒸気等で加熱して応力を緩和してもよい。端部を複数の面とその間を斜面でつなぐような形状に折り曲げる場合は、
図9(b)に示す金型95,96を用いてもよい。シート状部材100の端部を金型間に差し込んだ状態で金型を閉じて並行する山折りと谷折りを同時に行う。この場合、金型95,96の温度を100〜135℃で実施してもよい。
【0058】
[貼り付け方法]
次に、
図6及び
図7を参照して、物品であるBピラー50の被着面50aに物品1を貼り付ける方法について説明する。ここでの物品1は、例えば
図5(a)、(c)に示す端部形状を有している場合の方法について説明する。当該方法は、意匠面となる表面2a及び裏面2bを有する本体部2と、本体部2の一辺から延在し、該本体部表面2aに対して一定の角度を形成する表面3aを有する端部3と、本体部2の裏面2b側の少なくとも一部に配置される接着層4と、を備える物品1を準備する工程と、本体部2を、被着面50aの形状に応じて変形させ、実質的に非弾性変形させず、接着層4を介して被着面50aに貼り付け固定する工程、とを有する。また、当該固定する工程は、端部3と被着面50aの端部を位置決めする工程を含む。
【0059】
図6(a)に示すように、固定する工程では、Bピラー50の上端部に、物品1を支持するための治具70を設置する。
図6(b)及び
図7(a)に示すように、固定する工程の初期段階では、物品1の上端部を治具70に固定する。この時、端部3と被着面50aの端部を位置決めしながら、物品1を治具70に固定する。なお、接着層4の表面がライナーで覆われている場合は、当該ライナーを剥がしてよい。物品1を治具70に固定する場合、例えば
図6(c)に示すように、治具70の溝部に物品1の上端を嵌めることによって位置合わせが行われてもよい。ただし、治具70の支持構造は特に限定されず、治具70に複数のスリットを形成すると共に、物品1の上端に複数の突出部を形成し、物品1の各突出部を治具70の各スリットに挿入する構造を採用してもよい。
【0060】
図6(b)及び
図7(b)に示すように、治具70で物品1の上端を支持した後、作業者は、スキージ71で本体部2の表面2aを押圧して本体部2を被着面50aに押し付けた状態で、上方から下方へスキージ71を移動させる。これによって、本体部2は、被着面50aの形状(ここでは湾曲形状)に応じて変形しながら、接着層4を介して被着面50aに貼り付けられる。この工程では、作業者は過度な押圧力を付与せずとも、容易に本体部2を被着面50aに沿って変形させることができる。
図7(c)に示すように、作業者がスキージ71で本体部2の下端へ至るまで表面2aを押圧することで、物品1全体が被着面50aに貼り付けられ、固定する工程が完了する。
【0061】
次に、物品1が、例えば
図5(b)、(d)に示す端部形状を有している場合の方法について説明する。シート状部材100の端部をU字に曲げておいて、ヘミングと呼ばれる金属板を折り曲げてすきまなくつぶしたような板状の被着体端部を巻き込むように施工する場合には、
図10(a)に示すように、基材の端部側からシート状部材100のU字端面が最後に差し込まれるよう滑らせてゆき、突き当たったら表面をスキージで押圧して貼り付ける。
図10(b)に示すように、被着体が自動車センターピラーのように台形形状の場合はその細い側(上端側)から差し込むようにすべらせていってもよい。いずれの場合も接着層が粘着剤の場合に被着体表面との滑り性が得ることで施工が容易になる。剥離ライナーに部分的に施した非粘着成分を接着層表面に転写させて粘着剤層が被着体に直接触れるのを防ぐことで滑り性を得て位置決め後は押圧により非粘着成分が粘着剤層内に押し込まれて粘着剤層が被着体に接着する。もしくは、表面に剥離成分を持ったもしくはかつ表面に接触面積を少なくするための細かい凹凸がある薄いシートをU曲げした以外の粘着剤層の上に乗せておくことで粘着剤層と被着体の接触を防いだ状態で滑らせて、位置決めをしてからシートをU字端部と反対側に引き抜いて押圧することもできる。
【0062】
本実施形態に係る物品によれば、本体部2は、被着面50aの形状に応じて変形可能であるとともに、実質的に伸展せず、接着層4を介して被着面50aに貼り付け固定可能である。すなわち、本体部2は、被着面50aに貼り付ける際に、作業者が本体部2を引っ張ったとしても伸展変形しない。また本体部2は、形状保持性があるため自重で垂れ下がらないよう引っ張り続ける必要もない。また、本体部2は、適度な剛難度を付与されているため被着面50aの形状に応じて変形し、接着層4を介して被着面50aに貼り付け固定可能である。従って、作業者が、被着面50aの形状に合わせて本体部2を変形させて被着面50aに物品1を貼り付ける際には、従来の伸展性フィルムを用いた場合とは異なり、本体部2を引っ張って伸ばす事によって位置調整を行う必要がない。端部3は、本体部の表面2aに対して一定の角度を形成する表面3aを有するため、作業者は、貼り付け時に端部3を折り曲げる必要がない。また、射出成形等の方法によって物品を形成した場合のように、被着面50aの形状に合わせて、予め本体部2の形状を対応させたものに形成しておく必要はなく、被着面50aの形状によらず、物品1を被着面50aに貼り付けることができる。以上より、被着面50aへの物品1の貼り付けを容易に行うことができ、物品1の取り扱い性を向上できる。また、接着層が少なくとも被着体の主平面全面に施されてその全面で接着して被着体との空間ができないので従来のガーニッシュのように厚く硬くする必要がなく薄く軽いものとして構成できる、被着体側に穴を開ける必要もない。
【0063】
また、物品1において、曲げ剛性が0.05〜2.5Nでであってよい。この場合、本体部2が、被着面50aの形状に応じて変形し、接着層4を介して被着面50aに貼り付け固定可能な構成とすることができる。曲げ剛性が低すぎると端部折り曲げ加工形状を保持しにくくなり取り扱いにくいものとなり、曲げ剛性が高すぎると被着面50aの形状に追従するよう変形させることが出来なくなる。もしくは強い力で曲げて追従させても元に戻ろうとする応力が強くなり経時や高温下で被着体から剥れるようになる。本実施形態による物品1は適度な曲げ剛性により曲げ加工形状と自重で垂れ下がらない形状保持性および貼り付け時の変形し易さを両立して貼り易い。
【0064】
また、物品1において、2%伸び引っ張り強度が20N/10mm幅以上であってよい。この場合、物品1が実質的に伸展しない構成とすることができる。貼り付け等を行う場合の手の力は最大で5N/10mm程度であり、概ね70mm幅の自動車センターピラーに貼りつける場合に5.7N/10mmに相当する。引っ張り強度が5N/10mmの物品は最大の力をかけて貼り付けた場合に2%以上伸びるのに対して、本実施形態に係る物品1は実質伸展しないので手作業で貼り付けても伸びにくく位置ズレしにくく貼り易い。
【0065】
また、物品1において、本体部2の厚みが0.2〜1.0mmであってよい。射出成形等の方法によって物品を形成した場合より薄く軽い物品ができる。自動車センターピラー装飾物品として取り付けた場合に、前後に隣接するガラス窓との高低差を少なくして一体感を持たせることができえる。側面の高さが減ることは空気抵抗の低減できる可能性もあり、また軽量化できるため燃費の向上が期待できる。
【0066】
[変形例]
例えば、上述の実施形態では、シート状部材はスタンピングによる折り曲げがなされていたが、折り曲げを行うことができる限り、どのような方法も採用してもよい。例えば、真空成形によって折り曲げを行ってもよい。真空成形は、金型とシート状部材との間の空間を真空引きすることによって、シート状部材を金型に対応した形状に成形する方法である。端部に折り曲げ形状を形成する金型を用いることで、シート状部材の端部を折り曲げることができる。ただし、スタンピングによる折り曲げ加工に比して、真空成形は、最終的な物品として用いられることなく切断されて廃棄する必要のある部分が大きくなる。
【0067】
また、物品1の貼り付け対象となるBピラー(あるいは、Aピラー、Cピラー)は、被着面を有する部品の一例にすぎず、部品として、意匠面を形成する必要があるものであれば、あらゆるものを部品として採用してもよい。例えば、貼り付けたい車両用外装部品(バンパー、ミラー)、車両用内装部品(ダッシュボード)、家具部品、電化製品部品、建築部品を採用できる。
【0068】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明の一形態に係る物品を具体的に説明するが、物品の構成は下記の実施例に限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
実施例1に係る物品の製造方法
住友ベークライト社のポリカーボネートシートEC105の0.5mm厚の片面上に黒色着色したポリウレタンプレ溶液(配合は、表1を参照)をバーコートにより塗布して60℃熱風オーブンに5分間入れた後にロールラミネーターでアプリケーションフィルム(東レ社の2軸延伸PETフィルムT60の0.05mm厚)をラミネートした。常温で3日保管すると、塗布したポリウレタンプレ溶液は、ポリウレタン反応が進み、表面べた付きのない0.05mm厚の黒色ポリウレタン層(表面保護部)になりPETフィルムも剥がすことができる状態になった。ポリカーボネートシート(基体層)の反対側面にアクリル粘着剤溶液(イソオクチルアクリレート90質量部、アクリル酸10質量部を重合させた固形分40%の溶液にアジリジン硬化剤を1.25質量部加えた粘着剤溶液)をバーコートにより塗布して80℃熱風オーブンに10分間入れて0.06mm厚塗膜(接着層)にした後にロールラミネーターで東セロのSP−PET−01−25−BO剥離処理PETフィルム0.025mm厚をラミネートした。以下の手順で接着剤付きシート状部材を準備した。実施例1に係る物品の本体部と接着層をあわせた厚みは、0.61mmであった。
【0071】
被着体として、鋼板のプレス加工と外板塗装による自動車のセンターピラーを準備した。ピラーの上端と隣接するガラス窓の上端とを同じ高さに設定し、そのピラーの上端の幅が57mm、下端の幅が77mm、それらの間の高さが450mm、幅方向の両端は鋼板が折り返されておよそ2mm厚の直線になっている。水平方向に広がる平面で切断した断面を見た時、ピラーの両端は、半径およそ1mmの半円に形成され、両端同士の間は実質的な平面となっている。センターピラーを車の左右方向に広がる平面で切断した断面を見た時に、車の外側に張り出す方向で半径620mmの円弧になっている。シートの長さはピラーに応じた長さ、幅はピラー幅左右からそれぞれ1.5mmずつ拡張した長さになるようにシート状部材を切り取った。
図9(a)に示す金型85,86のような断面で長さ500mmの金属製下型、上型を準備してプレス機の下上の盤面にそれぞれ固定した。上型の刃の角度はおよそ20°、刃先の断面はおよそ半径1mmの円弧になっている。下型のくぼみは上型よりやや広い角度、大きな円弧になっている。上型にヒーターを付けて実測温度150℃に加熱した状態でシートの横方向端部から約2.5mm内側のラインに上型が当たる位置にシートを置いて上下型を閉じて10秒保持してから型を開いた。
【0072】
反対側の端部も同様に加工した。加工されたシートは全層が横方向の両端部がおよそ90°に曲げられその高さは内寸でおよそ2mm、曲げたラインの内面は断面で見た時におよそ半径1mmの円弧になっていた。剥離ライナーを剥がした状態で下端を持って水平に保っても垂れ下がることなく形状を保持する自立性があることを確認した。ピラー部上端に、物品の上端を位置を合わせて表側からスキージで圧着した。そのままスキージを下方向にしごく形で物品を順に圧着していったところ、物品はピラー面縦方向の曲率に沿って曲がり粘着層の接着性によりその形を維持し固定されてゆき、途中で横方向の位置がずれることなく容易に貼り付けることができた。ピラーの両端部はその曲率に合う形で附形シートの両端曲げ部により被覆されており、表面のPETフィルムを剥がすとピラー形状と同じ面形状で高光沢黒色の美しい外観が得られた。ピラー面から0.6mm弱厚くなっているが、見た目ではその高低差はほぼ判らなかった。表面で反射させて見る周囲の景色は鮮明で表面平滑性が高いことが判った。直射日光の元で見ても濁りのない透明感のある黒色に見えた。ライナー、PETフィルムを除いたシートの重さは24gだった。
【0073】
(実施例2)
実施例1のライナーを変更することで実施例2に係る物品を作成した。実施例2のライナーは、0.05mm厚PETフィルムの両面に接着層を介して0.045mm厚ポリエチレンを積層し、その片面にシリコン剥離処理剤を塗布し、更に熱エンボッシングにより深さおよそ6μmで縦横およそ300μm周期の凹凸を施したライナーである。実施例2では、曲げ加工の型温度を120℃保持時間を20秒にすることでサンプルを作成した。実施例2では、実施例1と同様に両端部が約90°に曲がって貼り付け性、表面平滑性に優れるサンプルが得られた。
【0074】
(実施例3)
実施例3に係る物品は、実施例1の粘着剤層の厚みを0.03mmにして、切り取る右端の長さを5mm広げて180°折り返したものである。実施例3では、左方の端部の曲げ加工まで実施例1と同様の工程を行った。右端部を折り曲げる際は、断面が
図8(b)の金型90、91における金型91側を165℃に加熱した状態で、シートの横方向端部から約7mm内側のラインに上型が当たるような位置にシートを置いて、上下型を閉じて10秒保持してから型を開いた。最初に加工した左側の端部が約90°、次に加工した右側の端部が約180°に折り返すよう曲がったサンプルが得られた。
【0075】
実施例3では、剥離ライナーを剥がした状態で下端を持って水平に保っても垂れ下がることなく形状を保持する自立性があることを確認した。成形品をピラー縦方向の曲率に合わせてたわませた状態でピラー右端から差し込んで180°に折り返した部分がピラー右端に当たったら表面をスキージで圧着した。ピラーの両端部はその曲率に合う形で附形シートの両端曲げ部により被覆されており、特に右端部は約5mm幅で裏面まで巻き込んでいる。表面のPETフィルムを剥がすとピラー形状と同じ面形状で高光沢黒色の美しい外観が得られた。
【0076】
(実施例4)
実施例4に係る物品は、被着体が実施例1と異なっている。実施例4の被着体として、実施例1と異なる形状の鋼板のプレス加工と外板塗装による自動車のセンターピラーを準備した。ピラーの上端を隣接するガラス窓の上端と同じ高さに設定し、その上端の部分の幅が85mm、下端の幅が85mm、それらの間の高さが445mm、表面側から見た時に幅方向の右端は鋼板が折り返されておよそ2mm厚の直線になっている。水平方向に広がる平面で切断した断面を見た時、ピラーの右端は、半径およそ1mmの半円状に形成されている。左端は、表面側から見たときに、上端から下方へ約10mmまで半径10mmの慨1/4円を描いて全幅が狭くなって、そこから下端までは直線になっている。端部から約10mm幅は右端から続く主平面部と平行な平面(端部側平面)だが約2.5mm車体側に低くなっており、その端部側平面と主平面との間は約5mm幅で、主平面から端部側平面へ向かって傾斜する、約30°の斜面になっている。その斜面と主平面の角、及び斜面と端部側平面の間の角は、水平方向に広がる平面で切断した断面で見た時に、およそ半径1mmの円弧となっている。センターピラーを車の左右方向に広がる平面で切断した断面を見た時に、車の外側に張り出す方向で半径約1500mmの円弧になっている。
【0077】
シートの長さはピラーに応じた長さ、幅方向はピラーに応じた幅よりも右端を1.5mm拡張し、左端を4mm短縮した形状になるように実施例1と同じシートから切り取った。
【0078】
左端側の斜面の角度を折り曲げ時のスプリングバックを考慮して大きく折り曲げ可能にした表面形状を持つ上型と下型とを組み合わせるプレス金型を準備した。ただし上下型ともに、ピラーの斜面と主平面の間の角から右端へ5mmの位置よりピラー左端に該当する部分のみの金型である。
【0079】
実施例4では、右端部の曲げ加工までの工程は実施例1同様の工程を行った後に、断面が
図9(b)の金型95、96を用いて折り曲げ加工を行う。この折り曲げ加工では、120℃に加熱した上下型でシートの横方向左端部を上下型により挟みこむ。そして、その状態を30秒保持する。その後、型を解放することにより、左端部の加工を行った。最初に加工した右端部が約90°、次に加工した左端部はピラー左端から約7mmの位置で、そこから約3mm右側までは主平面と平行であって約2.5mm車体側に低い端部側平面で、そこから約30°傾いた斜面が5mmの幅で形成されて、主平面につながる形状のサンプルが得られた。
【0080】
剥離ライナーを剥がした状態で下端を持って水平に保っても垂れ下がることなく形状を保持する自立性があることを確認した。ピラー部上端に附形したシートの上端を位置を合わせて表側からスキージで圧着した。そのままスキージを下方向にしごく形で附形シートを順に圧着していったところ、附形シートはピラー面縦方向の曲率に沿って曲がり粘着層の接着性によりその形を維持し固定されてゆき、途中で横方向の位置がずれることなく容易に貼り付けることができた。ピラーの両端部はその曲率に合う形で附形シートの両端曲げ部により被覆されており、特に左端は縦に並んだ3つのピラー面(端部側平面、斜面、及び主平面)に合う形で黒く装飾被覆されている、ピラー端部から約7mmまではゴム部品が被覆するのでシート成形品で被覆する必要はない部分である。PETフィルムを剥がすとピラー形状と同じ面形状で高光沢黒色の美しい外観が得られた。ピラー面から0.6mm弱厚くなっているが、見た目ではその高低差はほぼ判らない。表面で反射させて見る周囲の景色は鮮明で表面平滑性が高いことが判る。
【0081】
(実施例5、6、7、8、9)
実施例1の基体層を構成するポリカーボネートシートの厚みをそれぞれ0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.8mm、1mmに変えたシートを作成して、実施例1と同じ加工を行い、実施例5、6、7、8、9に係る物品を作成した。自立性があり表面が平滑で両端が約90°に曲がったサンプルを得ることができた。
【0082】
(実施例10,11,12)
実施例2のポリカーボネートシートを同じ厚みのABS(信越ポリマー社975BK1)、無延伸PET(住友ベークライト社EPG101WP)、硬質PVC(セキスイ化学社AM−1000)にそれぞれ変えて、実施例2と同様の加工を行うことで、両端が約90°に曲がった実施例10、11、12に係る物品を作成した。
【0083】
(実施例13)
実施例1の表面保護層を以下の配合表に変更することで実施例13に係る物品を作成した。
【0085】
(比較例1)
比較例1に係る物品として、自動車センターピラー加飾用ホンダ純正部品72930−TY2−A01を用いた。黒色着色したアクリル樹脂射出成型した後に裏面にアクリル粘着剤による幅10mmの両面テープを縦方向に2列間をはなして貼り付けた。比較例1に係る物品は、厚み2.7mm、重さ85gであった。該当するピラーの縦方向の曲率に合わせて曲がっており、両面テープの剥離ライナーを剥がしてから位置が合うように圧着することで容易に施工ができた。表面は高光沢で直射日光の元で見ても濁りのない透明感のある黒色、平滑で蛍光灯の像も鮮明に見える。しかしながら施工前のピラー面より明らかに高くなっており隣接するガラス面との高低差が目立ってしまった。
【0086】
(比較例2)
比較例2に係る物品として、トヨタ純正部品75932−28010−Fというハイグロス・ブラックアウトフィルムを用いた。このフィルムは約0.1mmの黒色軟質PVCフィルムの表面にポリウレタン塗膜、その裏面にはアクリル粘着剤による接着層と剥離ライナーが形成されている。フィルムの厚さは0.16mm、重さは10gであった。薄く柔らかいため片端を持って水平に保とうとしても垂れ下がってしまい自立性がないことが判る。とりわけ剥離ライナーを剥がした後は粘着剤面が被着体以外の部分に接したり自身同士でくっついてしまわないよう長手方向の両端をそれぞれ持ってしっかりと張った状態を維持し続ける必要があり、取り扱いが難しかった。該当するセンターピラーを準備して、上端を圧着してからスキージで下方向に貼ってゆく際もフィルムの下端を常に引っ張っていなければならず、その力が強すぎるとフィルムが伸びて寸法が変わる、もしくはゆがんで張る方向がズレる不具合になり、力が弱すぎるとフィルムが余ってシワや気泡が入った状態で貼られるという不具合が起きた。縦方向の平面部を貼った後に更にフィルム横方向両端部をピラー端部に沿って貼り込んでゆく作業が必要であり合計で3回の貼り作業が必要だった。うまく貼り付けできた場合もピラー塗装のユズ肌を拾って平滑性がなく蛍光灯の像がぼやけて見えてしまった。更に直射日光の元で見るとPVC樹脂の濁りが目立つ透明感に欠けた黒色に見えた。
【0087】
(比較例3、4)
実施例1のPCシートの厚みをそれぞれ0.075mm、1,5mmに変えたシートを作成して、実施例1と同じ加工を行い、比較例3、4に係る物品を作成した。比較例3は、自立性がなく伸展し、比較例4は被着面への追従が困難であった。
【0088】
[評価試験]
上述の実施例に係る物品、比較例に係る物品を用いて(あるいは、同条件で形成された試験片を用いて)各種評価試験を行った。
【0089】
(貼り付け評価試験)
実施例1に係る物品、比較例1に係る物品、比較例2に係る物品を対象となる部品であるセンターピラーの被着面に貼り付けることで、貼り付けの容易性について評価をおこなった。作業者としてはいずれの物品の施工にも習熟していない者を3名選んで施工方法を伝えた上で、各人が各物品を5回づつ施工して、その時間と施工後の位置ズレや施工作業により発生した外観不良の有無を評価した。
【0090】
比較例2に係る物品は、まずピラー上端部に2本のピンが手前に飛び出した位置決めジグを磁石で仮固定し、フィルム上端部から延長した切り離し可能な部分にある開口部をピンに通し、上端部から剥離ライナーを剥がした。この時にフィルムに自立性がないためフィルムがうねって粘着面がピラー接触し、くっついてしまう事象が2回起きた。反対側を持って常にピンと貼った状態で上から下にスキージングで貼ってゆくが、展伸性があるためフィルムを引っ張る力が強すぎると全体が伸びたり、一部が伸びて貼る方向が変わって貼り付け位置が狙いより0.5mm以上ずれる事象が3回起きた。フィルムを伸びないよう引っ張る力を小さくして貼り付けたら、フィルムが余ってシワになる事象が3回起きた。これらの不良が起きたフィルムは全て廃棄となり、貼ったものは剥がして新しいものを貼り直した。また、うまく貼れた時でも本体部を被着面に貼り付けた後に、両端部に沿って更に貼り込む必要があり、合計で3回の貼り作業をする必要があるため時間と手間がかかり、貼り付け完了に平均70秒の時間を要した。
【0091】
比較例1に係る物品は、非伸展性の本体部を有し、形状(湾曲形状)が既に被着面に対応したものとなっているため、両面テープのライナーを剥がして位置を定めて物品をピラーに押し当てて貼り付けるだけの作業でよく、不良発生は1個もなく貼り付け完了に平均18秒の時間を要した。
【0092】
実施例1に係る物品は、ライナーを剥がして、ピラー上部に磁石で仮固定した下面を、直線壁の位置決めジグに当てて位置を決めたら、上から下にスキージングで貼りつけた。自立性があるため扱い易く、非伸展性のため貼り位置がズレない。また両端部を更に貼り込む必要もないため貼り付けが容易であり、不良発生は1個もなく貼り付け完了に平均18秒の時間を要した。以上より、比較例2に比して、実施例1に係る物品は貼り付けが容易であることが理解される。
【0094】
(貼り付け後の厚み、重量の影響を評価)
実施例1に係る物品、比較例1に係る物品、比較例2に係る物品をピラーに貼りつけたもので厚み外観と車両重量増加を測定した。実施例1に係る物品は本体の総厚が約0.6mmと薄いため貼りつけたことによるピラー高さの変化は目視では判別できなかった。また前後左右全4枚のドアに1枚ずつ施工した場合の車両重量増加は96gにとどまった。比較例1に係る物品は本体の総厚が約2.9mmと厚いため貼りつけたことにより明らかにピラーが高くなったことが目視で判った。センターピラーを黒く加飾する目的である前後ガラス窓の一体感を求めるデザイン要求においてセンターピラーはガラス面からできるだけ飛び出さないことが好ましく、この点で大きく意匠性を損なっていた。また左右全4枚のドアに1枚ずつ施工した場合の車両重量増加も340gと大きく燃費等への悪影響が懸念される。比較例2に係る物品は0.15mmと薄く、40g/台と厚み外観、重量ともに優れた。
【0096】
また、実施例1に係る物品、比較例1に係る物品、比較例2に係る物品について、自動車用と同じ平らな鋼板に外板用塗料をスプレー塗装して焼き付けた鮮明度0.2の塗装板に貼りつけた。その後、被着面への貼り付けの前後における鮮明度について携帯用鮮明度光沢度計形式PGD−IV(日本色彩研究所社製)で測定した。実施例1に係る物品は、貼り付け前も貼り付け後も、表面の鮮明度(sharpness)は0.9であった。比較例1に係る物品は、貼り付け前も貼り付け後も、表面の鮮明度は0.8であった。すなわち、実施例1及び比較例1に係る物品は、貼り付け前後において、表面平滑性が高く実質的に同一であることが理解される。一方、比較例2に係る物品は、貼り付け前は鮮明度が0.7という状態である一方、貼り付け後は鮮明度が0.2という状態であった。すなわち、貼り付け後は、下地である被着面の凸凹の影響が及ぼされていた。これより、比較例2に係る物品は、貼り付け前後において、鮮明度が実質的に同一ではなく平滑性の低い被着体に貼り付け後は平滑性に低い外観品質になることが理解される。被着体である自動車の塗装面は特にピラーのような縦面において塗装の垂れにより、水平面より一層平滑性が失われ、一般にユズ肌と言われる状態になることが多い。このように、実施例1に係る物品が被着体の品質の影響を受けないことは大きな利点である。
【0098】
(曲げ剛性)
実施例1,3,4,5,6,7,8に係る物品、比較例1に係る物品、比較例2に係る物品の曲げ剛性について評価を行った。当該試験は、各物品を構成する本体部と同じ材質・同じ厚みの試験片を形成し、当該試験片を用いて試験を行った。本試験は、ガーレー式柔軟度試験機を用いてJIS L−1096曲げ反発性A法に従って行った。各サンプルの横方向左右端からそれぞれ40mm幅、長さ4.5インチ(114mm)を切り取って試験機に上下方向の片端を固定してサンプルの突き出した長さより短い規定の位置を通過するバーに当たり、たわんでゆき、最終的にすり抜ける際の最大荷重を記録した。左右端のデータを平均することで幅80mmの物品だった場合の曲げ剛性値を求めた。
【0099】
比較例1に係る物品は曲げ剛性が実施例に係る物品に比して大きすぎるため、被着体に形状に合うよう曲げながら施工することが難しいことが理解される。また、比較例2に係る物品は曲げ剛性が実施例に係る物品に比して小さすぎるため自立性がなく扱いづらいことが理解される。実施例に係る物品は適度な曲げ剛性のために自立性による扱い易さと曲げ性ともに優れている。
【0101】
(伸び引っ張り強度)
実施例1,5,6,7,8に係る物品、比較例1に係る物品、比較例2に係る物品の伸び引っ張り強度について評価を行った。当該試験は、PET、剥離ライナーを除いたサンプルを10mm幅にカットして、引っ張り試験機を使ってつかみ、間隔50mm、引っ張り速度300mm/minで引っ張った時に2%延伸時荷重を求めた。この値を元に3通りのケーススタディーを行った。
・想定限界1;80mm幅の物品を2%延伸するのに必要な力(実測値を幅換算で8倍したもの)
・想定限界2;80mm幅の物品を1%延伸するのに必要な力(低伸度引っ張り荷重曲線実質的に直線であることから想定限界1の値を0.5倍したもの)
・想定限界3;80mm幅の物品の片側半分を1%延伸するのに必要な力(想定限界2の値を幅換算で0.5倍したもの)。これは貼り付け時に物品を左右どちらかに偏った方向に引っ張ってしまう場合を想定している。
【0102】
一方で貼り作業時に手でかける荷重は標準で20N程度、最大で40N程度である。
この値と想定限界値を比べると、比較例2の想定限界2の値は手作業荷重最大値と同じであり、貼り作業時に条件が揃うと1%伸びる可能性を示している。想定限界3の値は手作業荷重標準値と同じであり、通常の貼り作業で片側に1%伸ばすことが頻繁に起こりうることを示している。前述の貼り性評価でも位置ズレが発生していることと一致している。実施例1,5,6,7,8に係る物品および比較例1に係る物品はいずれの想定でも手作業荷重最大値を上回る値を示しており、貼り作業時に伸びて位置ズレする可能性が低いことを示している。
【0104】
(鉛筆硬度試験)
実施例1に係る物品、比較例1に係る物品、比較例2に係る物品について、前述の
鮮明度を測定した塗装鋼板に物品を貼りつけたものについて、JIS K5600−5−4.に従い、荷重750g、 角度45°速度600mm/min、 距離10mm を各芯硬度の鉛筆で5回ずつこすってキズ跡を確認した。塗装鋼板自身はHB以上の硬度を持つ。
【0105】
比較例2に係る物品は硬度6Bでも明確なキズが付くレベルであり、実使用上でも人の爪で容易にキズが付くことが想定される。実施例1に係る物品および比較例1に係る物品は高い鉛筆硬度を示しており実使用上でも人の爪で容易にキズが付ことはない耐キズ付き性を示している。
【0107】
(洗車スリキズ試験)
実施例1に係る物品、比較例1に係る物品、比較例2に係る物品について、前述の鮮明度を測定用に塗装鋼板に物品を貼りつけたサンプルの表面の60°グロスを光沢度計で測定した。それから表面に泥を塗って乾かした後に自動車洗車機で洗車を行いブラシで表面にキズを付けた。3回繰り返した直後に水で泥を洗い流して10日後に再度60°グロスを測定して保持率を計算した。目視外観も記録した。比較例1は全面にスリキズが付いて表面の反射レベルが明確に落ちている。実使用上でも洗車等で容易に擦りキズが付くことが想定される。実施例1に係る物品および比較例2に係る物品は目視でキズが確認できず、光沢度もほぼ試験前の状態であることを示しており、実使用上でも洗車等によるスリキズが付くことはないことを示している。
【0109】
(ヘイズの評価)
前述の貼り付け評価でピラーに施工した実施例1に係る物品、比較例1に係る物品、比較例2に係る物品について、室内蛍光灯下と屋外直射日光下で黒色のヘイズを目視確認した。軟質PVCに顔料着色している比較例2は弱い蛍光灯下では判らなかったものの強い直射日光下では明らかな曇りが見える。実施例1と比較例1はどちらの環境でも曇が観測されなかった。ピアノブラックと呼ばれる透明感のある好ましい黒色であることを示している。
【0111】
(90°剥離強度)
実施例1,5,6,7,8に係る物品、比較例2に係る物品を25mm幅にカットして関西ペイント社白色アミラック塗料を塗布して焼き付けた塗装平板に貼りつけて、1時間後に90°方向に300mm/minで引きはがした時の平均荷重を測定した。厚みによって差異があるが、いずれの実施例に係る物品も市場で実績のある比較例2よりも高い剥離強度を示しており、市場でも十分な接着性を得られていると考えられる。
【0113】
(90°曲げ加工性)
実施例1,2,5,6,7,8と比較例6,8のシートを前記90°曲げの金型を使って上型温度150℃、120℃、23℃の条件で曲げサンプルを作成した。PCを基体層としてPURを表面保護層として上型を120℃か150℃に加熱した実施例サンプルは、表11の「本体厚み」、「剥離ライナー厚み」の範囲でいずれも狙い通りのほぼ90°曲げることが出来た。比較例6は保護層のPMMAが曲げ加工時にクラックを起こして、実施例2と同じ構成のシートを上型温度23℃で加工したものは145°と狙いよりはるかに広い角度になり、いずれも良品を得ることができなかった。
【0115】
(80℃耐熱性)
実施例2と実施例10、11、12のシートを前記90°曲げの金型を使って上型温度120℃の条件で、実施例1と同じピラー貼り付け用サンプルを作成して、PET、剥離ライナーを剥がして80℃、240時間の耐熱試験にかけた後に外観を確認した。実施例13は表面にひび割れが発生した。一方、実施例2、10、11、12はいずれも耐熱試験後でも物品表面にひび割れが発生しないことが確認された。また、一方、実施例2、13は、80℃の耐熱試験でも基体のうねりが発生しなかった。実施例10、11、12はいずれもシート全体が大きくうねった。なお、破断伸びは10mm幅の試験片を切り出した上で、50mmつかみ間隔にて300mm/minの速度で引っ張り試験で測定した。