特許第6883952号(P6883952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6883952衝突を回避する方法、アクチュエータにより昇降させる方法および昇降させる装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883952
(24)【登録日】2021年5月13日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】衝突を回避する方法、アクチュエータにより昇降させる方法および昇降させる装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20210531BHJP
   B41J 11/00 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   B41J2/01 401
   B41J2/01 303
   B41J11/00 Z
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-101786(P2016-101786)
(22)【出願日】2016年5月20日
(65)【公開番号】特開2017-56718(P2017-56718A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2019年2月19日
(31)【優先権主張番号】10 2015 217 688.6
(32)【優先日】2015年9月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン レナー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ツァプフ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ シュタインメッツ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル エストライヒャー
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハート ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート ホイスラー
(72)【発明者】
【氏名】ダーフィト エーアバー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー クナーベ
【審査官】 牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−522794(JP,A)
【文献】 特開2013−202990(JP,A)
【文献】 特開2012−096863(JP,A)
【文献】 特開2009−274272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
B41J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴状の搬送要素(10)上で搬送されるシート(1000)と、シート(1000)に印刷を行うための、前記搬送要素(10)の上方に前記シート(1000)の搬送方向に相前後して取り付けられた複数のインクジェットヘッド(4,4.1,4.2,4.3,4.4)との衝突を回避する方法であって、
a)前記インクジェットヘッド(4,4.1,4.2,4.3,4.4)の上流側でそれぞれのシート(1000)の位置を監視するステップと、
b)位置監視の測定結果を評価して、エラーを含むシート(1001)を検出するステップと、
c)エラーを含むシート(1001)がそれぞれの前記インクジェットヘッド(4.1,4.2,4.3,4.4)に到達する前に、その都度、それぞれの前記インクジェットヘッド(4.1,4.2,4.3,4.4)を個別に上昇(h)させるステップと、
を有することを特徴とする、衝突を回避する方法。
【請求項2】
d)エラーを含むシート(1001)がそれぞれの前記インクジェットヘッド(4.1,4.2,4.3,4.4)を通過した後で、その都度、それぞれの前記インクジェットヘッド(4.1,4.2,4.3,4.4)を降下(h)させる追加的なステップを有し、
それぞれの前記インクジェットヘッド(4,4.1,4.2,4.3,4.4)を昇降させるために、それぞれ少なくとも1つのアクチュエータ(19)が設けられている、請求項1記載の衝突を回避する方法。
【請求項3】
ステップc)で、降下(h)時でも衝突が回避される範囲内でそれぞれの前記インクジェットヘッド(4.1,4.2,4.3,4.4)を上昇させておき、
d)エラーを含むシート(1001)がそれぞれの前記インクジェットヘッド(4.1,4.2,4.3,4.4)をまだ通過している間に、それぞれの前記インクジェットヘッド(4.1,4.2,4.3,4.4)を降下(h)させる追加的なステップを有する、
請求項1記載の衝突を回避する方法。
【請求項4】
ステップb)で、エラー量の特定を、特に等級付けも行い、ステップc)で、エラー量に依存する、上昇(h)のための移動距離を設定する、請求項1から3までのいずれか1項記載の衝突を回避する方法。
【請求項5】
前記アクチュエータ(19)は、サーボモータとして構成されていて、前記アクチュエータ(19)を、振動に関して最適化された制御プロファイルを用いて、機械制御装置(15)により駆動制御する、請求項2を引用する請求項4記載の衝突を回避する方法。
【請求項6】
前記搬送要素(10)は、シートガイド胴として、いわゆるジェッティング胴として構成されていて、複数のシート載置面(11)と、該複数のシート載置面(11)の間に配置された溝(12)とを有し、
エラーを含むシート(1001)に隣り合う溝(12)がそれぞれの前記インクジェットヘッド(4.1,4.2,4.3,4.4)を通過する間に、それぞれの前記インクジェットヘッド(4.1,4.2,4.3,4.4)のその都度の上昇(h)または降下(h)を行う、請求項1から5までのいずれか1項記載の衝突を回避する方法。
【請求項7】
インクジェットヘッド(4,4.1,4.2,4.3,4.4)の振動を制限するために、かつ前記インクジェットヘッド(4,4.1,4.2,4.3,4.4)へのインク供給部における圧力変動を制限するために、振動に関して最適化されかつインク印刷に関して最適化された加速度に関する移動プロファイルを用いて前記インクジェットヘッド(4,4.1,4.2,4.3,4.4)をアクチュエータにより昇降(h)させる方法であって、
機械制御装置(15)に制御プロファイルが格納されており、該制御プロファイルにより、前記インクジェットヘッド(4,4.1,4.2,4.3,4.4)に対応して配置されたアクチュエータ(19)が駆動制御可能であり、該アクチュエータ(19)は、インクジェットヘッド(4,4.1,4.2,4.3,4.4)を所定の移動距離だけ、該移動距離に対して設定された前記移動プロファイルに基づいて移動させることを特徴とする、インクジェットヘッドをアクチュエータにより昇降させる方法。
【請求項8】
それぞれ異なる移動距離に対してそれぞれ異なる移動プロファイルが設定されており、移動距離に応じた所望の移動プロファイルがアクチュエータ(19)に制御プロファイルにより供給され
前記アクチュエータ(19)による前記インクジェットヘッド(4,4.1,4.2,4.3,4.4)の最大加速度を規定された限界値よりも低くなるように維持する、請求項7記載のインクジェットヘッドをアクチュエータにより昇降させる方法。
【請求項9】
インクジェットヘッド(4,4.1,4.2,4.3,4.4)をアクチュエータにより昇降(h)させる装置であって、
被印刷物(1000)が搬送される胴状の搬送要素(10)に対する間隔(a)を変更するために、インクジェットヘッド(4,4.1,4.2,4.3,4.4)を昇降させるアクチュエータ(19)と、
該アクチュエータ(19)の駆動回転運動を前記インクジェットヘッド(4,4.1,4.2,4.3,4.4)の並進移動に変換する伝動装置(20,21,28,29)と、
前記インクジェットヘッド(4,4.1,4.2,4.3,4.4)の重量を減らすように補償する補償システムであって、前記インクジェットヘッド(4,4.1,4.2,4.3,4.4)を当該アクチュエータにより昇降移動させる装置の機械フレーム(27)に対して緊締する、補償システムと、
を備えることを特徴とする、インクジェットヘッドをアクチュエータにより昇降させる装置。
【請求項10】
前記伝動装置(20,21,28,29)は、連接部(29)とアーム(28)と駆動シャフト(21)とを有するリンク機構として構成されている、請求項9記載のインクジェットヘッドをアクチュエータにより昇降させる装置。
【請求項11】
前記インクジェットヘッド(4,4.1,4.2,4.3,4.4)の重量を減らすように補償する前記補償システムは、ばねシステム(30,31,32)として構成されており、
該ばねシステムは、少なくとも1つの引張りばね(30)または少なくとも1つの圧縮ばね(31)を有し、かつ/または
前記ばねシステムは、ばね応力を適合させる調整装置(32)を有する、請求項9または10記載のインクジェットヘッドをアクチュエータにより昇降させる装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の構成を有する、衝突を回避する方法、請求項7に記載の構成を有する、アクチュエータにより昇降させる方法、および請求項9に記載の構成を有する、アクチュエータにより昇降させる装置に関する。
【0002】
背景技術
小ロットで、または独特の印刷柄で、紙、厚紙およびボール紙から成るシートに印刷を行うために、デジタル印刷機を使用することが知られている。シートに印刷を行うためにインクジェットヘッド使用する場合、それぞれのシートは、搬送システムにより、最小間隔を置いてインクジェットヘッドの下方を通過させられる。搬送システムとして、たとえば吸込ベルトとして構成された、循環走行する搬送ベルト、および回転する胴、いわゆるジェッティング胴、または循環走行するトレーが、たとえば米国特許第8579286号明細書に記載されているように、知られている。
【0003】
胴を使用する機械構想では、たとえば米国特許出願公開第2009/0284561号明細書に記載されているように、ジェッティング胴の上方で半径方向の間隔を置いて複数のインクジェット印刷ヘッドが配置されており、インクジェット印刷ヘッドは、印刷ヘッドに対してわずかな間隔を置いて印刷ヘッドの傍を通過させられるシートに印刷を行う。ジェッティング胴上で、複数のシートを同時に吸着して搬送することができる。高い印刷品質を確保しつつ、印刷ヘッドの破損を回避するために、それぞれのシートが良好にジェッティング胴に載置することが重要である。
【0004】
追加的に、シート走行を監視して、エラーを含むシートまたはエラーを含んで載置しているシートを検出することが知られている。たとえば起立している角隅部、縁部または折れ部によるインクジェットヘッドの極めて敏感な印刷ノズルの破損を阻止するために、通常、印刷機が停止させられ、エラーを含むシートが除去される。
【0005】
そのような印刷機の1つが、米国特許出願公開第2013/0307893号明細書に記載されている。インクジェットヘッドに前置されたセンサにより、エラーを含むシートが検出されると、機械が停止させられるだけではなく、全てのインクジェットヘッドも上昇させられ、ひいては後退位置へ動かされる。そうすると、エラーを含むシートは、問題なく機械操作工により除去することができる。
【0006】
択一的な構成は、米国特許出願公開第2015/0116395号明細書に記載されている。デジタルウェブ印刷機において、被印刷物ウェブがエラーを含む場合に被印刷物ウェブとインクジェットヘッドとの衝突を回避するために、一時的にウェブ走行が降下させられる。デジタル枚葉印刷機には、この構成手段は、選択肢を成さない。インクジェットヘッドの領域に存在する搬送要素の、前置されたかつ後置された搬送要素、たとえば渡し胴へのロジスティックな接続が、ウェブ走行が降下させられた場合には、シートの継続的な引渡しおよび搬送をもはや許容しないからである。
【0007】
公知の、デジタル枚葉印刷機において衝突を回避する方法の欠点は、エラーを含むシートを手動で除去するための多大な手間および延長された停止時間に基づく機械の生産性の著しい低下にある。
【0008】
発明の課題
したがって、本発明の課題は、できるだけわずかな損紙しか発生せず、インクジェット印刷ヘッドの生産性が最良に発揮される、衝突を回避する方法を提供することである。
【0009】
別の課題は、前述の方法に適用可能であり、昇降移動の結果生じるエラー源が低減される、インクジェットヘッドを昇降させる方法を提供することである。
【0010】
別の課題は、シート厚さの変化に基づくまたはシート内の被印刷物厚さ変動に基づく印刷エラーが回避され、できるだけわずかな損紙しか発生せず、インクジェット印刷ヘッドの生産性が最良に発揮される、インクジェットヘッドを昇降させる装置を提供することである。
【0011】
最初の課題は、搬送要素上で搬送される、特に紙、厚紙およびプラスチックから成るシートと、シートに印刷を行うための、搬送要素の上方に取り付けられた複数のインクジェットヘッドとの衝突を回避する方法であって、以下のステップを有する方法により解決される。特に少なくとも1つのセンサまたはカメラを使用して、インクジェットヘッドの、搬送方向にみて上流側でそれぞれのシートの位置およびシートの縁部ならびに角隅部の持続的な監視が行われる。機械制御装置により、エラーを含むシート、たとえばドッグイヤー、折れ部などを有するシートを検出するために位置監視の測定結果の評価が行われる。測定結果の評価に依存して、特にインクジェットヘッドに対応して配置されたアクチュエータを使用して、エラーを含むシートがそのインクジェットヘッドに到達する直前に、その都度、場合によりそれぞれのインクジェットヘッドの上昇が行われる。換言すると、エラーを含むシートがインクジェットヘッドに到達し、場合によりそのインクジェットヘッドを破損し得るまたは破壊さえし得る直前に、インクジェットヘッドは、間隔を置いた防護位置へ上昇させられる。つまり、まず第1のインクジェットヘッドが、次いで第2のインクジェットヘッドなどが上昇させられる。要するに、搬送要素またはシートに対するそれぞれのインクジェットの間隔が増大される。全てのインクジェットヘッドが一度に一緒に上昇させられることはない。
【0012】
インクジェットヘッドが逐次上昇させられるこの種の方法は、デジタル印刷機を、エラーを含むシートの場合に停止させなくてよく、その生産性が、停止時間に基づいて不必要に低減されないという利点を有する。搬送要素の主駆動装置を、これが極めて迅速に停止するように設計しなくてもよく、搬送要素は、原則として、より高い速度で走行することができる。
【0013】
衝突を回避する方法の、特に好適で、したがって有利な改良形態によれば、別の追加的なステップで、エラーを含むシートがそれぞれのインクジェットヘッドを通過した直後に、その都度、それぞれのインクジェットヘッドの、印刷位置の付近への戻し降下が行われる。つまり、相前後して第1のインクジェットヘッドが、次いで第2のインクジェットヘッドなどが、それぞれ元々の位置へ戻される。
【0014】
このことは、エラーを含むシートに基づく損紙の量が減らされるという利点を有する。個々のインクジェットヘッドの逐次行われる上昇および降下により、実際にエラーを含むシートだけに印刷が行われず、これに対して先行するシートにも後続のシートにも印刷を行うことができるからである。
【0015】
デジタル印刷ステーションに続いて塗装部が使用される場合には、さらなる利点が得られる。連続的なシート流れに基づいて、つまり1枚のシートが別のシートに追従するので、場合によりシートの1枚がエラーを含むシートであってもよいが、つまり印刷されていなくてよいが、塗装部は、連続的に作動させることがでる。したがって、塗装部のオン、オフによるさらなる損失シートを生じさせない。
【0016】
同一の利点を有する択一的な方法によれば、インクジェットヘッドは、エラーを含むシートがこのインクジェットヘッドを通過したときにはじめて降下させられることはない。むしろ、エラーを含むシートがまだそのインクジェットヘッドの下方に位置する間に、降下移動が既に開始される。このことは、インクジェットヘッドをよりゆっくりと、またはより小さな加速度で降下させることができ、それにもかかわらずそのインクジェットヘッドが再び適時下側の印刷位置に位置するという追加的な利点を有する。そのために、インクジェットヘッドを、エラーを含むシートのエラーが実際に必要とするよりも高く上昇させる必要がある。換言すると、降下移動のためのより長い期間が、上昇時により大きな移動距離を進行することにより得られる。
【0017】
本発明に係る方法の好適な改良形態によれば、第2のステップで、エラー量の特定、特に等級付けも行われ、特定のエラー量に依存して、これに続くステップで、それぞれのインクジェットヘッドを上昇させるための移動距離が機械制御装置により設定される。このことは、極めて小さなエラーの場合にはインクジェットヘッドの極めて小さな昇降移動しか行われず、これに対して大きなエラーの場合には大きな昇降移動が必要であり、大きな昇降移動が行われるという利点を有する。直前に記載の方法の形態によれば、降下移動は、予め早期に開始するべきであり、そうすると、このことは、第2の方法ステップで同様に考慮される。エラー量の特定が行われ、エラー量が所定の最大許容限界値を超えている場合には、逐次行われるインクジェットヘッドの上昇の代わりに、提供される時間で最大限可能な移動距離、つまりできるだけ大きな移動距離で全てのインクジェットヘッドの即座の上昇がトリガされ、これにより、インクジェットヘッドの破壊に対する追加的な安全性が得られる。
【0018】
方法の改良形態によれば、それぞれのインクジェットヘッドを昇降させるために、制御技術的に機械制御装置と接続され、かつインクジェットヘッドに対応して配置されたそれぞれ1つのアクチュエータ、たとえば電動モータまたはピエゾアクチュエータが設けられている。特に好適には、アクチュエータは、サーボモータとして構成されていて、アクチュエータは、振動に関して最適化された制御プロファイルを用いて、機械制御装置により駆動制御される、つまり、機械制御装置に制御プロファイルが格納されており、制御プロファイルは、たとえば特定のエラー量に依存して使用することができる。昇降は、特に後で詳しく記載する、アクチュエータにより昇降させる方法により行うことができる。
【0019】
衝突を回避する方法の1つの形態によれば、搬送要素は、シートガイド胴、いわゆるジェッティング胴として構成されていて、複数のシート載置面と、複数のシート載置面の間に配置された溝とを有する。本発明によれば、エラーを含むシートに隣り合う溝がそれぞれのインクジェットヘッドを通過する間に、それぞれのインクジェットヘッドのその都度の上昇または降下が行われる。換言すると、第1の溝通走の間に、インクジェットヘッドが上昇させられ、次の溝通走の間に、インクジェットヘッドは、再び降下させられる。したがって、既に後続のシートに再び印刷を行うことができ、損紙の量が減らされる。
【0020】
択一的な実施の形態によれば、搬送要素は、搬送台として、いわゆるトレーとして構成されている。シートは、循環走行するトレーにより、インクジェットヘッドの下方を通過させられる。この場合、ヘッドの昇降は、トレーの間の隙間がヘッドを通過する間に行うことができる。
【0021】
最初のエラーを含むシートに別のエラーを含むシートが追従するとき、インクジェットヘッドの、元々の印刷位置への降下移動が不要となり、それぞれのインクジェットヘッドは、後続のエラーを有しないシートが追従するまで、その防護位置に留まる。
【0022】
エラーを含むシートは、シートが積み重ねられるかつ/または排出される前に、材料流れから除去することができる。そのために、デジタル印刷機のデリバリに、排出モジュール、たとえば切換装置または排出ドラムが設けられてよい。
【0023】
本発明は、上述の両方の方法に使用することができる、インクジェットヘッドをアクチュエータにより昇降させる方法にも関する。本発明によれば、それぞれのインクジェットヘッドは、インクジェットヘッドの振動を制限するために、かつインクジェットヘッドへのインク供給部における圧力変動を制限するために、振動に関して最適化されかつインク印刷に関して最適化された移動プロファイルを用いて移動させられ、この場合、機械制御装置に制御プロファイルが格納されており、機械制御装置により、インクジェットヘッドに対応して配置されたアクチュエータが、制御プロファイルを用いて駆動制御可能であり、アクチュエータは、移動プロファイルに基づいて、インクジェットヘッドを移動させる。
【0024】
方法の好適な改良形態によれば、機械制御装置の記憶装置において、移動プロファイル群に対して制御プロファイル群が格納されてよい。そうして、たとえば特定のエラー量に、特定の移動プロファイルひいては制御プロファイルが割り当てられてよい。一般的に、それぞれ異なる移動距離に対してそれぞれ異なる移動プロファイルが設定されてよい。それぞれの移動プロファイルが確定された最大加速限界値を維持すると、特に好適である。
【0025】
好適な移動プロファイルは、台形加速度として構成されてよい加加速度が制限された移動である。
【0026】
本発明は、被印刷物搬送路に対するインクジェットヘッドの間隔を変更するためにインクジェットヘッドをアクチュエータにより昇降させる装置にも関する。被印刷物搬送路上で、シート状またはウェブ状の被印刷物が、インクジェットヘッドの下方を通過させられ、その際に印刷を行うことができる。この装置は、アクチュエータと、アクチュエータの駆動回転運動をインクジェットヘッドの並進移動に変換する伝動装置と、たとえば補償重量を使用してインクジェットヘッドの重量を補償する補償システムとを備える。補償システムは、好適な実施の形態によれば、ばねシステムとして構成されてよく、ばねシステムは、インクジェットヘッドを、装置の機械フレームに対して緊締する。この種の装置により、好適には、駆動装置エラーまたは駆動装置故障または給電停止の場合に、インクジェットヘッドの不意の移動が行われない、つまり上昇も降下も行われないことが達成される。この場合、ばねシステムは、インクジェットヘッドの重力を補償して、アクチュエータの機械摩擦、つまりセルフロックが、あらゆる位置で、インクジェットヘッドの不意の移動を阻止するのに十分であるようにする。そのような不意の移動は、印刷動作時における降下または動作時間外のキャップ位置(このキャップ位置ではノズルが乾燥に対して防護される)からの上昇である。
【0027】
好適な実施の形態によれば、伝動装置は、連接部とアームと駆動シャフトとを有するリンク機構として構成されている。このリンク機構は、機械的に、決して下回ることがない、インクジェットヘッドの最も低い位置が規定されているという利点を有する。
【0028】
本発明に係る装置の好適な改良形態によれば、ばねシステムは、少なくとも1つの引張りばねまたは少なくとも1つの圧縮ばねを有する。ばねシステムも、ばね応力を適合させる調整装置を有してよい。
【0029】
記載された本発明および記載された本発明の好適な改良形態は、技術的に有意義である限り、互いに組み合わせても、本発明の好適な改良形態を成すものである。
【0030】
原則として、本発明は、デジタル式のウェブ印刷機にも使用することができる。この場合、シート走行の代わりに、ウェブ走行が監視される。
【0031】
さらなる利点に関して、かつ本発明の好適な形態の構造および機能に関して、従属請求項および添付の図面に関する実施の形態の説明が参照される。
【0032】
実施の形態
本発明を、添付の図面に基づいてさらに詳しく説明する。相互に対応する構成要素および構成部材には、複数の図面にわたって同一の符号が設けられている。図面を見やすくするために、縮尺通りの図示はしていない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】方法を実施するデジタル印刷機を示す概略図である。
図2】上昇可能な個々の印刷ヘッドを有する印刷ステーションを示す概略図である。
図3】印刷ヘッドの昇降移動を示す概略図である。
図4a】ばねシステムを有する印刷ヘッドの上昇を示す概略図である。
図4b】ばねシステムを有する印刷ヘッドの上昇を示す概略図である
図4c】ばねシステムを有する印刷ヘッドの上昇を示す概略図である
図5】印刷ヘッドの択一的な実施の形態を示す図である。
【0034】
図1は、デジタル印刷機として構成されたシート印刷機100を示している。それぞれのシート1000は、フィーダ1から到来して、搬送方向Tで印刷部2を通ってデリバリ3へ搬送される。この場合、それぞれのシート1000の搬送は、主に胴、つまり渡し胴5と印刷胴10とを用いて行われる。印刷胴10の上方に、印刷胴10に対して所定の間隔aを置いてインクジェットヘッド4が配置されており、インクジェットヘッド4は、わずかな間隔を置いて印刷胴10の傍を通過するシート1000に印刷を行う。したがって、印刷胴10は、ジェッティング胴ともいわれる。
【0035】
図示の実施の形態では、印刷胴10は、3つのシート保持領域11を有し、シート保持領域11は、それぞれ1本の溝12により互いに分けられている。シート1000は、グリッパ13により、シート保持領域11上で保持される。
【0036】
印刷機100を駆動制御するために、ユーザインタフェースおよび記憶装置を有する機械制御装置15が設けられている。搬送方向Tでみて、インクジェットヘッド4の上流側に、カメラまたは択一的にセンサ14が配置されている。カメラまたはセンサ14は、シート1000を継続的に監視するのに用いられる。シート走行またはシート厚さdを監視することができる。カメラまたはセンサ14は、データ伝送技術的に機械制御装置15と接続されている。この場合、カメラまたはセンサ14は、インクジェットヘッド4の上流側で十分に離れて配置しなければならず、これにより、シート後縁にエラー1001がある場合でも、依然として、シート1000とインクジェットヘッド4との衝突を回避することができる。
【0037】
図2は、インクジェットヘッド4を有するジェッティング胴10を瞬間的に記録した詳細図で示している。ジェッティング胴10に対して半径方向の間隔を置いて4つのインクジェットヘッド4.1,4.2,4.3,4.4が配置されており、これらのインクジェットヘッド4.1,4.2,4.3,4.4の全ては、昇降移動hを行うことができる。搬送方向Tでみて、インクジェットヘッド4の上流側に、シート走行を監視するために、センサ14が配置されている。センサ14は、データ伝送技術的に、ここでは図示されていない機械制御装置15と接続されている。センサ14により、シート1000がエラーを含んでいるか、たとえばドッグイヤー、起立している縁部または折れ部を有する、かつ/またはシート1000が正しくジェッティング胴10上に載置しているかチェックすることができる、かつ/またはシート1000の厚さdを監視することができる。センサ14によりシートに欠陥が、つまりエラーを含むシートが識別されると、インクジェットヘッド4.1,4.2,4.3,4.4は、機械制御装置15により駆動制御されるアクチュエータ(図示されていない)を用いて、相前後して、それも、欠陥1001を含むシート1000がそれぞれのインクジェットヘッド4.1,4.2,4.3,4.4に到達する直前に上昇させられる。インクジェットヘッド4の上昇は、両矢hにより示されている。図2に示された瞬間記録では、インクジェットヘッド4.1,4.2,4.3は、既に上昇させられている。第1のインクジェットヘッド4.1は、既に防護位置に達し、別のインクジェットヘッド4.2,4.3は、引き続きこの位置まで上昇させられる。第4のインクジェットヘッド4.4の下方に、さらに1枚の先行するシート1000が位置し、このシート1000は、インクジェットヘッド4.4により、さらに最後まで印刷が行われる。ジェッティング胴10の溝12がインクジェットヘッド4.4を通過すると直ちに、これに続いてこの第4のインクジェットヘッド4.4も上昇させられる。換言すると、インクジェットヘッド4の上昇は、全ての個々のヘッド4.1,4.2,4.3,4.4において別個に逐次行われる。各ヘッド4は、溝12がインクジェットヘッド4を通過する、または「インクジェットヘッド4の下を通り抜ける」まさにその時に上昇させられる。欠陥1001を含む、エラーを含むシート1000がそれぞれのヘッド4.1,4.2,4.3,4.4の下を通走すると直ちに、つまり、欠陥のあるシート1001に隣り合う後続の通路12がインクジェットヘッド4を通過すると、インクジェットヘッド4.1,4.2,4.3,4.4は、相前後して再び降下させられ、その印刷位置に動かされる。これにより、次の後続のシート1000に再び通常に印刷を行うことができる。
【0038】
後続のシート1000においてセンサ14により同様に欠陥1001が検出されると、インクジェットヘッド4は、その防護位置に留まり、あとになってから再び印刷位置に降下させられる。
【0039】
エラー1001が所定の限界値を上回る大きさを有するという、機械制御装置15におけるセンサ14の測定結果の評価が生じると、検出の直後に全てのインクジェットヘッドが即座に上昇させられ、できるだけ大きな移動距離を動かされる。これにより、先行するシート1000にもはや最後まで印刷を行うことができず、後続のエラーを含まないシート1000のためにインクジェットヘッド4を十分な程度には迅速に再び印刷位置に降下させることができないので、損紙の量が増えるが、インクジェットヘッド4の重大な破損を回避することができる。インクジェットヘッド4のこの種の上昇は、機械制御装置15により、デジタル印刷機100の非常停止の場合でも指示することができる。
【0040】
通常の逐次行われる、相前後するインクジェットヘッド4.1,4.2,4.3,4.4の上昇および降下のために、たとえば、15mmの昇降移動を設定してよい。特に大きな欠陥1001の場合に全てのインクジェットヘッド4を一緒に上昇させるために、たとえば50mm以上の昇降移動hを設定してよい。
【0041】
図3において、インクジェットヘッド4の支持部が詳しく示されていて、どのように印刷ヘッド4の昇降移動が実現されるのか看取可能である。それぞれのインクジェットヘッド4は、水平のリニアガイド16内で搬送方向Tに対して直交方向に摺動可能であり、これにより、インクジェットヘッド4を側方で保守位置へ移動させることができる。この移動は、手動で、または図示されていない駆動装置を用いて行うことができる。インクジェットヘッド4は、統合されたプリントバー17を備え、プリントバー17は、ノズルストリップ24の隣で、特に図示されていない、たとえばフィルタおよび圧力調整器などの供給モジュールを備える。統合されたプリントバー17は、リニアガイド18で、ジェッティング胴10に対して半径方向摺動可能に支持されている。このリニアガイド18に沿った摺動は、ジェッティング胴10またはシート1000に対するインクジェットヘッド4の間隔を変更するための昇降移動hに相当し、駆動ユニット19,20,21,22により実現される。統合されたプリントバー17に、駆動シャフト21が支持されており、駆動シャフト21は、サーボモータ19により駆動される。駆動シャフト21の両端部において、つまり駆動シャフト21の駆動側の端部および操作側の端部において、駆動シャフト21にカムディスク20が嵌められており、カムディスク20は、駆動装置19によりシャフト21を介して回転させることができる。カムディスク20は、カムローラ22と直接に接触しており、カムローラ22は、リニアガイド18に取り付けられている。駆動シャフト21ひいてはカムディスク20の回動により、統合されたプリントバー17は、カムローラ22を有するリニアガイド18に対して相対的に上昇させる、または降下させることができる。このために、サーボモータ19は、データ伝送技術的に、ここでは図示されていない機械制御装置15と接続されている。機械制御装置15の記憶装置に制御プロファイルを格納することができる。制御プロファイルは、統合されたプリントバー17に、所望の移動プロファイルを供給し、この移動プロファイルは、インクジェットヘッド4の振動とインク供給部(図示されていない)の圧力変動とに関して最適化されている。サーボモータ19のエネルギ供給部は、図示されていないドラグチェンにより実現され、ドラグチェンは、ノズルストリップ24の駆動制御ラインおよびインク供給部も有する。
【0042】
統合されたプリントバー17を、その下側の領域で精密に案内し、ひいては上側のリニアガイド16,18の正確な角度位置および撓曲性とは無関係にするために、支持ローラ23が設けられており、支持ローラ23は、側壁、つまり枚葉印刷機100のフレームと固く結合されている。統合されたプリントバー17の側面は、支持ローラ23に接触していて、相応に加工された接触面を有してよい。統合されたプリントバー17の片側に配置された支持ローラ23は、ばね弾性的に構成されてもよい。支持ローラ23の配置に応じて、支持ローラ23を、統合されたプリントバー17に対して片側だけに配置しても十分であり得る。たとえば15mm〜20mmの極めて小さな昇降移動hによるインクジェットヘッド4の逐次行われる昇降時に、支持ローラ23は、統合されたプリントバー17に対して持続的に接触したまま、統合されたプリントバー17を案内する。インクジェットヘッド4が、大きな欠陥1001に基づく衝突を回避するために大きく上昇させられ、つまり、たとえば50mmの大きな昇降移動hが行われると、支持ローラ23は、統合されたプリントバー17に対する接触を失い、統合されたプリントバー17の後続の降下時および「通し」時に、降下速度を場合により低減しなければならないので、インクジェットヘッド4の、より大きな振動励起を招いてしまうことはない。そのような速度低下は、機械制御装置15に格納された制御プロファイルにより形成されてよい。
【0043】
シート厚さdに適合させるために、ジェッティング胴10に対するインクジェットヘッド4の間隔aの適合を実施しようとするとき、この適合は、インクジェットヘッド4の、図3に示された実施の形態によっても同様に可能である。そのために、通常、サーボモータ19ひいてはカムディスク20の極めて小さな回転運動で十分である。
【0044】
図4a〜図4cには、インクジェットヘッド4の懸架部の択一的な実施の形態が示されている。インクジェットヘッド4のノズルストリップ24は、印刷ヘッド支持体17を有する、統合されたプリントバーの端部に取り付けられている。印刷ヘッド支持体17は、リンク機構28,29を介して支持体27と結合されており、この場合、支持体27も、水平のリニアガイド16により、機械フレームの支持ビーム26に支持されている。搬送方向Tに搬送されるシート1000に対するノズルプレート24の間隔aを調整するために、調整移動hが行われ、印刷ヘッド支持体17は、支持体27に対して相対的に移動させられる。そのために、駆動シャフト21を有する駆動装置(図示されていない)が設けられている。この駆動シャフト21の回転運動は、アーム28と連接部29とを有するリンク機構28,29により、鉛直方向移動hに変換される。図4aの図面では、アーム28は変位されておらず、したがってゼロ度位置(0°)にあり、ノズルプレート24とシート1000との間の間隔aは、最小である。リンク機構28,29は、印刷ヘッド4がこれ以上低く降下できないことを保証している。そうして、搬送要素10とノズルプレート24との衝突は、確実に阻止される。駆動シャフト21を有する駆動装置の相応の駆動制御により、印刷ヘッド支持体17はノズルプレート24とともに、図4bおよび図4cから判るように、方向hに上昇させることができる。図4bの図面では、アーム28は、真ん中の90°位置まで回動させられ、そうして間隔aが拡大される。図4cの図面では、アーム28は、180°の当接位置まで回動させられ、この場合、最大間隔aが得られる。たとえば駆動装置のトラブルまたは故障時の場合、または給電不能時でも、印刷ヘッド支持体17がノズルプレート24とともに、不意に突然降下させられる、または上昇させられることを阻止するために、ばねシステムが設けられている。ばねシステムは、図4a〜図4cの実施の形態では、引張りばね30を有し、引張りばね30は、印刷ヘッド支持体17を支持体27に緊締する。引張りばね30の作用を調整可能にするために、調整装置としてばねテンショナ32が設けられている。ばね作用は、ばね力と駆動装置のセルフロックとの合計がインクジェットヘッドの重力を補償し、印刷ヘッド支持体17をその位置で保持するのに十分であるように調整されている。
【0045】
図5による択一的な実施の形態では、ばねシステムが圧縮ばね31を有する。
【符号の説明】
【0046】
1 フィーダ
2 印刷部
3 デリバリ
4 インクジェットヘッド
4.1 第1のインクジェットヘッド
4.2 第2のインクジェットヘッド
4.3 第3のインクジェットヘッド
4.4 第4のインクジェットヘッド
5 渡し胴
6 駆動装置
10 印刷胴、(ジェッティング胴)、(搬送要素)
11 シート保持領域またはシート載設面
12 溝
13 グリッパ
14 センサ/カメラ
15 機械制御装置
16 リニアガイド
17 印刷ヘッド支持体を有する統合されたプリントバー
18 リニアガイド
19 駆動装置(サーボモータ)
20 カム
21 駆動シャフト
22 カムローラ
23 支持ローラ
24 ノズルストリップ
25 排出ドラム
26 支持ビーム
27 支持体
28 アーム
29 連接部
30 引張りばね
31 圧縮ばね
32 調整装置としてのばねテンショナ
100 枚葉印刷機
1000 シート
1001 欠陥/エラー
a 間隔
d シート厚さ
h 昇降移動
T 搬送方向
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5