(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下では、各図面において同じ機能を有するものには同じ符号を付け、その説明を省略する場合がある。また、以下の各実施形態では、本発明の粒子観測装置として、原水中の濁度成分が凝集されることで形成された粒子であるフロックの状態を観測するフロック形成状態観測装置100を例にとって説明するが、本発明の粒子観測装置は、液体中の粒子の状態を観測する一般的な装置に適用することができる。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態のフロック形成状態観測装置100の構成を示す図である。
図1に示すフロック形成状態観測装置100は、液体を収容する容器である撹拌槽1に対して、撹拌槽1の外部からシート光(レーザシート光)を照射し、撹拌槽1内の液体におけるシート光で照射された照射領域を撹拌槽1の外部から撮影する形態である。具体的には、
図1に示すフロック形成状態観測装置100は、撹拌槽1と、凝集剤・pH調整剤添加部2と、撹拌機3と、シート光照射部4と、撮影部5と、制御部6と、表示部7とを有し、シート光照射部4および撮影部5が撹拌槽1の外部に設けられている。
【0016】
撹拌槽1は、液体として、濁度成分を含む水(原水)を収容する容器である。本実施形態では、撹拌槽1は、浄水場の混和池のような、収容している液体を乱流域(例えば、レイノルズ数が1400以上)で高速に撹拌する容器である。撹拌槽1は、少なくとも一部が光を透過する透明部材で形成される。具体的には、撹拌槽1は、全体が透明部材で形成されてもよいし、後述するシート光が入射される入射領域と撮影が行われる視野領域とが透明部材で形成されてもよい。透明部材は、例えば、アクリルやガラスなどで形成される。
【0017】
凝集剤・pH調整剤添加部2は、撹拌槽1に収容された液体内の濁度成分を凝集させてフロックを形成させるための薬剤を、撹拌槽1に収容された液体に添加する添加部である。本実施形態では、薬剤は、液体内の濁度成分を凝集させる凝集剤と、液体のpHを調整するためのpH調整剤とを含む。なお、薬剤は、凝集剤だけでもよいし、凝集剤による凝集効果を促進する促進剤などをさらに含んでもよい。
【0018】
撹拌機3は、撹拌槽1に収容された液体を撹拌する撹拌部である。具体的には、撹拌機3は、液体を乱流域で高速に撹拌する。撹拌機3による撹拌処理は、連続的に撹拌を行う連続処理でもよいし、撹拌と撹拌停止を繰り返すバッチ処理でもよい。
【0019】
シート光照射部4は、撹拌槽1の外部に設けられる。シート光照射部4は、所定の平面に沿って扇状に進行するレーザ光であるシート光を撹拌槽1に向けて照射することで、フロックを含む液体にシート光を照射する。シート光照射部4は、光源41と、光学系42とを有する。
【0020】
光源41は、レーザ光を光学系42に向けて出射する。レーザ光の色には、特に限定はなく、単色でもよいし、多色でもよいが、コストや撮影の容易性などの観点から緑色が望ましい。光学系42は、光源41から出射されたレーザ光を扇形に拡開してシート光に変換する。光学系42は、例えば、シリンドリカルレンズやスリットなどを含む。シート光の幅としては、被写体となるフロックの大きさの0.1倍〜10000倍が望ましく、フロックの1〜100倍がさらに望ましい。光学系42は、シート光の幅を変化させることが可能なものでもよい。
【0021】
撮影部5は、撹拌槽1におけるシート光照射部4からのシート光にて照射された照射領域を撮影して撮影画像を生成し、その撮影画像を示す画像データを出力する。撮影部5は、撮影を行うカメラや、被写体をカメラ上に結像させる結像光学系などを含む。撮影画像は、静止画像でもよいし、動画像でもよい。また、撮影部5は、撮影画像として静止画像を所定の時間間隔で繰り返し生成してもよい。
【0022】
撮影部5は、撮影部5の光軸がシート光の進行方向とは交差する方向(望ましくは、直交する方向)から照射領域を撮影するように配置される。このとき、
図2に示すように、撮影部5は、撮影部5の光軸がシート光を横断する横断長が撮影部5の被写界深度以下になるように配置されることが望ましい。これは、シート光で照射されたフロック(すなわち、シート光が通過する領域内のフロック)の全てにピントを合わせることができるからである。
【0023】
なお、撹拌槽1における撮影部5が撮影する撮影領域にはシート光以外の外光が少ないほどよい。このため、撹拌槽1には外光を遮蔽する遮蔽手段(図示せず)が設けられることが望ましい。遮蔽手段は、例えば、撹拌槽1の少なくとも一部を覆う暗幕や、撹拌槽1に被せる蓋などである。また、シート光が撹拌槽1などに反射し、その反射光が撮影されると、撮影画像にノイズが生じるため、撹拌槽1やシート光照射部4には、反射光を軽減する反射軽減手段が設けられることが望ましい。反射軽減手段は、例えば、反射防止剤などの塗料や、偏光板フィルムや偏光レンズなどの偏光手段などである。
【0024】
制御部6は、コンピュータで構成され、フロック形成状態観測装置100全体を制御する。例えば、制御部6は、凝集剤・pH調整剤添加部2および撹拌機3を制御して、撹拌槽1内の原水に凝集剤およびpH調整剤を添加するとともに、原水を撹拌して、撹拌槽1内にフロックを形成させる。
【0025】
また、制御部6は、シート光照射部4および撮影部5を制御して、撮影部5にフロックを映した撮影画像を生成させる。このとき、制御部6は、シート光照射部4から出射されるシート光の輝度や、撮影部5の撮影条件(例えば、撮影部5の感度(ゲイン)やシャッター速度など)を制御してもよい。
【0026】
具体的には、撹拌機3による撹拌の撹拌強度が高いほど、撹拌槽1に収容された原水内のフロックの移動速度も速くなるため、シャッター速度を高くする必要がある。一方、シャッター速度を高くすると、撮影画像が暗くなるため、撮影部5の感度やシート光の輝度をある程度上げるが必要となる。なお、シート光の輝度を上げるためには、光源41の出力強度を上げてもよいし、シート光の幅を細くしてシート光の拡散量を減らしてもよい。また、撮影部5の感度が高くなり過ぎると、撮影画像のノイズが生じる恐れがあるため、撮影部5の感度やシャッター速度は、撹拌強度などに応じて適切に制御されることが望ましい。
【0027】
例えば、光源41の出力強度を50mW、撮影部5のf値を1.8、撹拌機3による撹拌の撹拌強度を示すG値が90〜400s
-1の場合、シャッター速度は1/20〜1/1000sが望ましく、撮影部5の感度は、シャッター速度が高いほど高く設定し、10〜30dBであることが望ましい。また、G値が90s
-1以下の場合(撹拌しない場合を含む)、シャッター速度は1/100s以上が望ましく、感度は20dB以下が望ましい。本例は、単なる一例であって、撮影条件は、撹拌槽1の大きさや種類、外光の強度などに応じても適宜変更される。また、シート光の輝度(光源41の出力強度)が撹拌強度などに応じて適宜変更されてもよい。
【0028】
また、制御部6は、撮影部5から出力された画像データにて示される撮影画像を解析して、フロックの特徴量を測定する。例えば、制御部6は、撮影画像に対して、撮影画像内のノイズを除去するノイズ処理、および、撮影画像を2階調の画像である2値化画像に変換する2値化処理などの画像処理を行う。これにより、撮影画像は、フロックが存在しない背景領域と、フロックが形成された粒子領域とを表すようになる。そして、制御部6は、粒子領域を解析して、フロックの特徴量を測定する。フロックの特徴量は、例えば、フロックの形状、面積、粒子径(フロックの半径)、粒子長(フロックの直径)、縦横比、周囲長、個数および移動度や、それらの統計量(例えば、粒度分布)などであり、制御部6は、これらの特徴量の少なくとも一つを測定する。
【0029】
制御部6は、測定した特徴量や撮影画像を表示部7に表示する。表示する撮影画像は、画像処理が施されたものでもよいし、画像処理が施されていない元の画像でもよい。
【0030】
制御部6は、測定したフロックの特徴量に基づいて、凝集剤・pH調整剤添加部2および撹拌機3の少なくとも一方を制御してもよい。具体的には、制御部6は、凝集剤・pH調整剤添加部2が添加する薬剤の添加量や、撹拌機3による撹拌強度などを制御する。例えば、制御部6は、所定の特徴量(例えば、粒子径の平均値)が大きくなるほど、薬剤の添加量を減らしたり、撹拌強度を低くしたりする。
【0031】
なお、所望の特徴量を測定するために撮影画像以外のデータが必要な場合、フロック形成状態観測装置100は、上記構成に加えて、そのデータを取得するための装置を備えてもよい。例えば、特徴量を測定するために撹拌槽1内の原水の温度が必要な場合、フロック形成状態観測装置100は、撹拌槽1内の原水の温度を取得する温度計を備え、制御部6は、画像データおよび温度計で取得されたデータ(原水の温度)に基づいて、フロックの特徴量を測定する。
【0032】
図3は、フロック形成状態観測装置100の動作を説明するためのフローチャートである。
【0033】
先ず、制御部6は、シート光照射部4内の光源41を駆動して、光源41からレーザ光を出射させる。光源41から出射されたレーザ光は、光学系42でシート光に変換される。シート光は、光学系42から出射され、撹拌槽1の光透過部材を介して撹拌槽1内の原水を照射する(ステップS1)。
【0034】
続いて、制御部6は、凝集剤・pH調整剤添加部2を駆動して、凝集剤およびpH調整剤の撹拌槽1内の液体への添加を開始する(ステップS2)。さらに制御部6は、撹拌機3を駆動して、撹拌槽1内の液体の撹拌を開始する(ステップS3)。そして制御部6は、撮影部5を駆動して、撹拌槽1内の液体内のシート光にて照射される照射領域の撮影を開始させる。撮影部5は、照射領域を撮影すると、照射領域を映した撮影画像を示す画像データを制御部6に出力する(ステップS4)。このとき、撮影部5は、撮影画像として動画像を撮影して画像データを連続的に出力してもよいし、静止画像を断続的に撮影して画像データを断続的に出力してもよい。
【0035】
制御部6は、画像データを受け付け、その画像データが示す撮影画像を解析して、フロックの特徴量を測定し(ステップS5)、その測定した特徴量および画像データを表示部7に表示する(ステップS6)。そして、制御部6は、特徴量に基づいて、凝集剤・pH調整剤添加部2による凝集剤およびpH調整剤の添加量および撹拌機3による撹拌強度を制御する(ステップS7)。このとき、制御部6は、撹拌強度の調整に応じて、撮影部5の撮影条件を制御してもよい。
【0036】
その後、制御部6は、撹拌を終了するか否かを判断する(ステップS8)。このとき、例えば、制御部6は、フロック形成状態観測装置100の管理者などから撹拌の終了が指示された場合、撹拌を終了すると判断する。
【0037】
撹拌を終了する場合、制御部6は、凝集剤・pH調整剤添加部2、撹拌機3、光源41および撮影部5を停止して(ステップS9)、動作を終了する。一方、撹拌を終了しない場合、制御部6は、ステップS5の処理に戻る。
【0038】
以上説明したように本実施形態によれば、シート光照射部4がフロックを含む原水に対してシート光を照射する。撮影部5は、シート光照射部4が照射したシート光の進行方向とは交差する方向から、原水内のシート光にて照射される照射領域を撮影して撮影画像を生成する。制御部6は、撮影部5にて生成された撮影画像を解析して、フロックの特徴量を測定する。したがって、シート光は通常のランプの光に比べて光量を大きくすることができるため、撮影部5のシャッター速度を大きくしても、撮影画像の品質が高くすることが可能になり、その結果、フロックの特徴量を精度良く測定することが可能になる。したがって、フロックの状態を精度良く観測することが可能になる。
【0039】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態のフロック形成状態観測装置100の構成を示すブロック図である。
図4に示すフロック形成状態観測装置100は、シート光照射部4および撮影部5が撹拌槽1の内部に設けられている点で
図1に示す第1の実施形態のフロック形成状態観測装置100とは異なる。
【0040】
具体的には、実施形態では、シート光照射部4および撮影部5は、それぞれ防水機能を有する防水ケース8aおよび8bに収容されている。防水ケース8aおよび8bは、少なくとも一部が透明部材で形成される。具体的には、防水ケース8aは、少なくともシート光が出射する出射領域が透明部材で形成される。同様に、防水ケース8bは、少なくとも撮影が行われる視野領域が透明部材で形成される。
【0041】
また、フロック形成状態観測装置100は、防水ケース8aおよび8bのそれぞれを洗浄する洗浄部9aおよび9bを有する。洗浄部9aおよび9bは、防水ケース8aおよび8bのそれぞれにおける撹拌槽1内の液体と接触する接液部を洗浄する。このとき、洗浄部9aおよび9bは、接液部のうち少なくとも出射領域および視野領域を洗浄すればよい。洗浄部9aおよび9bは、例えば、水流を接液部に吹き付ける装置や、ワイパーなどである。
【0042】
なお、洗浄部9aおよび9bは、設けられることが望ましいが、洗浄部9aおよび9bを設けずに、防水ケース8aおよび8bを撹拌槽1から引き揚げて洗浄する構成でもよい。また、シート光照射部4および撮影部5のそれぞれに防水機能を設けることができれば、防水ケース8aおよび8bはなくてもよい。また、
図4の例では、シート光照射部4および撮影部5の両方が撹拌槽1の内部に設けられていたが、シート光照射部4および撮影部5のいずれか一方が撹拌槽1に設けられ、他方が第1の実施形態のように撹拌槽1の外部に設けられてもよい。
【0043】
本実施形態によれば、シート光照射部4および撮影部5が撹拌槽1の内部に設けられるので、撹拌槽1を形成する透明部材を減らすことが可能になる。したがって、既存の撹拌槽1に対して容易にかつ低コストでフロックの状態を精度良く観測することが可能になる。
【0044】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態のフロック形成状態観測装置100の構成を示すブロック図である。
図5に示すフロック形成状態観測装置100は、シート光照射部4からのシート光を撹拌槽1の内部に導くとともに、撹拌槽1内の原水におけるシート光で照射された照射領域からの光を撮影部5に導く導光部10を備える点で
図1に示す第1の実施形態のフロック形成状態観測装置100とは異なる。
【0045】
導光部10は、
図5の例では、シリンダ10aと、ミラー10b〜10dとを含む。シリンダ10は、光が内部を伝達する部材であり、例えば、中空構造または内部の少なくとも一部が透明部材で形成された構造を有する。
【0046】
シリンダ10aには、シート光が入射する入射部11aと、入射部11aに入射されたシート光が出射し、照射領域からの光が入射する入出射部11bと、入出射部11bに入射した光を出射する出射部11cとを有する。シリンダ10aは、入出射部11bが撹拌槽1の内部に設けられ、入射部11aおよび出射部11cが撹拌槽1の外部に設けられるように、撹拌槽1に挿入される。入射部11a、入出射部11bおよび出射部11cは、例えば、透過部材または開口などで形成される。
【0047】
ミラー10b〜10dは、シート光または拡散光を反射して偏向する偏向素子である。具体的には、ミラー10bは、シリンダ10aの内部に設けられ、入射部11aに入射したシート光を入出射部11bに向けて反射させる。ミラー10cは、シリンダ10aの外部に設けられ、入出射部11bから出射したシート光の照射領域からの光を入出射部11bに向けて反射させる。ミラー10cは、シリンダ10aの内部に設けられ、入出射部11bに入射した拡散光を出射部11cに向けて反射させる。
【0048】
図5の例では、シート光照射部4からのシート光を撹拌槽1の内部に導く導光部と、照射領域からの光を撮影部5に導く導光部とが導光部10として共通化されていたが、これらの導光部が別々に設けられてもよい。また、これらの導光部の一方だけが設けられてもよい。この場合、シート光照射部4または撮影部5は、第1の実施形態のように撹拌槽1の外部に配置されてもよいし、第2の実施形態のように撹拌槽1の内部に設けられてもよい。
【0049】
また、フロック形成状態観測装置100は、導光部10を洗浄する洗浄部12を有する。洗浄部12は、導光部10における入出射部11bを洗浄する。洗浄部12は、第2の実施形態の洗浄部9aおよび9bと同様に、例えば、水流を入出射部11bに吹き付ける装置や、ワイパーなどである。なお、フロック形成状態観測装置100には、ミラー10cを洗浄する洗浄部が設けられてもよい。
【0050】
以上説明したように本実施形態によれば、シート光照射部4からのシート光を撹拌槽1の内部に導くとともに、撹拌槽1内の原水におけるシート光で照射された照射領域からの光を撮影部5に導く導光部10が設けられているため、撹拌槽1を形成する透明部材を減らすことが可能になる。したがって、既存の撹拌槽1に対して容易にかつ低コストでフロックの状態を精度良く観測することが可能になる。また、シート光照射部4や撮影部5を撹拌槽1の内部に設けなくてもよいため、シート光照射部4や撮影部5のメンテナンスが容易になる。
【実施例】
【0051】
以下では、第1〜第4の実施例として、フロックの特徴量のより具体的な測定方法について詳細に説明する。
【0052】
(第1の実施例)フロックの成長挙動の測定
本実施例では、撹拌槽1として、15cm×15cm×15cmの角型透明アクリル水槽を用いた。撹拌機3としては、撹拌速度を制御可能なジャーテスターを用いた。シート光照射部4としては、最大出力強度が50mWの緑色レーザービーム発生装置(カトウ光研株式会社製、PIV Lasar G50)を用いた。撹拌槽1に収容する液体は、フミンの濃度が10mg/Lの溶解液であり、ろ過水にフミンを溶解させることで作成した。凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム(PAC)を用い、pH調整剤としては塩酸を用いた。なお、pH調整剤として水酸化ナトリウムを用いた場合でも、以下と同様な結果が得られた。
【0053】
上記の例において、以下の測定手順でフロックの成長挙動としてフロックの平均粒子径の時間変化の測定を行った。
手順1:撹拌槽1内のシート光の表面にピントが合うように、撮影部5の位置や撮影部5内のレンズを調整した。
手順2:撮影部5のf値を1.8に調整し、撹拌機3を撹拌速度120rpm(G値=93s
-1)で駆動した。
手順3:撮影部5の感度(ゲイン)を28.96dB、シャッター速度を1/799.46sに設定した。
手順4:撹拌槽1に凝集剤およびpH調整剤を添加し、その添加したタイミングで撮影を開始した。
手順5:10sごとに、撮影画像として静止画像を生成する撮影を行い、その撮影画像に対してノイズ処理および2値化処理を行った。
手順6:ノイズ処理および2値化処理を行った各画像データを解析して、各画像データに映されたフロックのそれぞれの粒子径を測定し、各画像データにおける各粒子径の平均値である平均粒子径の時間変化をフロックの成長挙動として測定した。このとき、撮影画像内の各粒子領域の外周の長さを求め、その長さを円周とする円の半径を各フロックの粒子径とした。
以上の手順を凝集剤(PAC)の添加量を変えて複数回行った。
【0054】
図6は、本実施例によるフロックの成長挙動を示す図である。
図6では、凝集剤(PAC)の添加量をそれぞれ40mg/L、80mg/L、160mg/Lおよび200mg/Lとしたときの平均粒子径μmの時間変化が示されている。本実施例では、
図6に示されたように、フロックの成長挙動が精度良く測定することができた。
【0055】
(第2の実施例)粒度分布の測定
本実施例における、撹拌槽1、撹拌機3およびシート光照射部4、原水、凝集剤およびpH調整剤は、第1の実施例と同様である。また、手順1〜5までは実施例1と同じである。
手順6:ノイズ処理および2値化処理を行った各撮影画像を解析して、各画像データに映されたフロックのそれぞれの粒子径を測定し、さらに、そのフロックの粒子径の体積基準の頻度を粒度分布として測定した。
以上の手順を凝集剤(PAC)の添加量を変えて複数回行った。
【0056】
図7は、本実施例によるフロックの粒度分布を示す図である。
図7では、凝集剤(PAC)の添加量をそれぞれ、0mg/L(原水)、40mg/L、80mg/L、120mg/Lおよび160mg/Lとしたときの、フロックの粒度分布(粒子径の体積基準の頻度)が示されている。なお、
図7は、手順4で凝集剤を添加してから180s後の粒度分布を示している。本実施例では、
図7に示されたように、フロックの粒度分布を精度良く測定することができ、凝集剤の添加量が増えるほど、フロックが大きくなる挙動が確認することができた。
【0057】
(第3の実施例)撹拌強度がフロックの粒子径に及ぼす影響(撹拌強度とフロックの粒子径の相関)
本実施例における、撹拌槽1、撹拌機3、シート光照射部4、原水、凝集剤およびpH調整剤は、第1の実施例と同様である。また、手順1〜3までは実施例1と同様である。
手順4:撹拌槽1に凝集剤およびpH調整剤を添加し、撹拌速度を120rpm(G値=93s
-1)を維持したまま3min撹拌し(第1の撹拌条件)、その後、撹拌速度を150rpm(G値=130s
-1)に上げて3min撹拌し(第2の撹拌条件)、さらに、撹拌速度を190rpm(G値=180s
-1)に上げて3min撹拌させた(第3の撹拌条件)。
手順5:10sごとに、撮影画像として静止画像を生成する撮影を行い、その撮影画像に対してノイズ処理および2値化処理を行った。
手順6:ノイズ処理および2値化処理を行った各画像データを解析して、各画像データに映されたフロックのそれぞれの粒子径を測定し、各画像データにおける各粒子径の平均値である平均粒子径を測定した。
【0058】
図8は、第1〜第3の撹拌条件(G値=93s
-1、130s
-1、180s
-1)のそれぞれにおける平均粒子径を示す。
図8では、第1〜第3の撹拌条件のそれぞれにおいて、フロックの挙動が安定するタイミングでの(具体的には、各撹拌条件において、撹拌が開始されてから2〜3min後の)平均粒子径が示されている。本実施例では、
図8に示されたように、撹拌強度とフロックの粒子径の相関が精度良く測定することができた。
【0059】
(第4の実施例)撹拌後のフロックの沈降速度および有効密度の測定
本実施例における、撹拌槽1、撹拌機3、シート光照射部4、原水、凝集剤およびpH調整剤は、第1の実施例と同様である。
手順1:撹拌槽1内のシート光の表面にピントがあるように、撮影部5の位置や撮影部5内のレンズを調整した。
手順2:撮影部5のf値を1.8、撮影部5の感度(ゲイン)を28.96dB、シャッター速度を1/799.46sに設定した。
手順3:撹拌槽1に凝集剤およびpH調整剤を添加し、撹拌を所定時間行い、撹拌の終了後に撮影画像として動画像を生成する撮影を行った。
手順4:撮影した撮影画像から、所定の撮影間隔で静止画像を抽出し、各静止画像に対してノイズ処理および2値処理を行った。
手順5:ノイズ処理および2値化処理を行った各静止画像を解析して、フロックごとにフロックの移動距離を測定し、その移動距離と撮影間隔から沈降速度を測定した。
手順6:温度計にて測定された液体のデータ(温度)から、水の粘度と密度を算出した。
手順7:ストークスの式「ρ
e=ρ
p−ρ
f=(v×18μ)/(d
2×g)」を用いて、各フロックの有効(水中)密度を測定した。ここで、ρ
e[g/cm
3]はフロックの有効密度、ρ
p[g/cm
3]はフロックの密度、ρ
f[g/cm
3]は水の密度、v[cm/s]は沈降速度、μ[pa・s]は水の粘度、d[cm]はフロック径、g[cm/s
2]は重力加速度である。
【0060】
表1は、フロック#1〜#6の移動距離、撮影間隔、沈降速度、粒子径および有効密度を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1では、凝集剤(PAC)の添加量は120mg/Lである。また、撹拌として、撹拌速度を120rpm、撹拌時間を3minとした急速撹拌、撹拌速度を40rpm、撹拌時間を5minとした緩速撹拌の順で行った。本実施例では、表1に示されたように、フロックの沈降速度および有効密度を精度良く測定することができた。
【0063】
なお、第1〜第3の実施例では、撮影部5は撮影画像として静止画像を断続的に生成し、第4の実施例では、撮影部5は撮影画像として動画像を連続的に生成していたが、第1〜第3の実施例において、撮影部5が動画像を連続的に生成し、第4の実施例において、撮影部5が静止画像を断続的に生成してもよい。
【0064】
以上、第1〜第4の実施例で示したように、凝集沈澱において非常に重要なエンジニアリングデータである、1.急速撹拌時のフロックの成長挙動、2.撹拌強度がフロックの粒子径に及ぼす影響、3.フロックの沈降速度および密度を精度良く測定することができる。また、これらのエンジニアリングデータは同一の撮影画像から測定することができるため、これらのエンジニアリングデータを一連の手順で測定することができる。
【0065】
(第5の実施例)
本実施例では、各実施形態で説明したフロック形成状態観測装置100と、シート光照射部4の代わりにランプ光源(蛍光灯)を用いた比較例のフロック形成状態観測装置とを比較する。
【0066】
図9および
図10は、同一の撹拌条件および同一の撮影条件における、フロック形成状態観測装置100と比較例のフロック形成状態観測装置との測定結果を比較した図である。具体的には、
図9は、フロック形成状態観測装置100および比較例のフロック形成状態観測装置のそれぞれを用いて測定した、フロックの粒子径と粒子数の関係を示し、
図10は、
図9に示したデータに基づいて生成した粒度分布を示す。
【0067】
図9および
図10で示されたように、フロック形成状態観測装置100では粒度分布を精度良く測定することができたが、比較例のフロック形成状態観測装置では、粒度分布をほとんど測定することができなかった。これは、比較例のフロック形成状態観測装置では、ランプの光量が足りないため、検出できるフロックの数が少ないためである。
【0068】
図11は、フロック形成状態観測装置100による撮影画像の一例を示す図であり、
図12は、比較例のフロック形成状態観測装置による撮影画像を示す図である。なお、
図11および
図12で示した撮影画像は、2値化処理を行う前の元の撮影画像を示す。
図11に示すようにフロック形成状態観測装置100による撮影画像では、フロックを示す粒子領域(白領域)が明確に確認することができるが、比較例のフロック形成状態観測装置による撮影画像では、
図12に示すように、フロックを示す粒子領域をほとんど確認することができない。このため、比較例のフロック形成状態観測装置では、検出できるフロックの数が少なくなる。
【0069】
以上説明した各実施形態および各実施例において、説明した構成や動作は単なる一例であって、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0070】
例えば、シート光照射部4において、光源41と光学系42とが光ファイバのような導光部材を介して光学的に接続されていてもよい。この場合、光源41を撹拌槽1の外部に設置し、光学系42を撹拌槽の内部に設置することができる。
【0071】
また、フロック形成状態観測装置100は、通信ネットワークを介してサーバや記憶装置などの外部装置に接続され、制御部6は、特徴量や画像データを外部装置に送信してもよい。さらに液体を収容する容器として撹拌槽1を想定していたが、本発明の容器は、液体を収容することができればよい。
【0072】
さらにフロック形成状態観測装置100は、撮影部5を複数備えていてもよい。複数の撮影部5は、互いに異なる領域を撮影してもよいし、同一の領域を互いに異なる角度から撮影してもよい。後者の場合、制御部6は、複数の撮影部5のそれぞれからの複数の画像データが示す撮影画像を解析することで、フロックを立体的に観測することが可能になる。