(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
岩盤、コンクリート躯体その他の補強対象部位に補強手段が挿入配置できるようにかつ上向きに形成された挿入穴の開口に設置され該挿入穴の最上部直下に上端が位置するように前記挿入穴に配置されるエア抜き部材が挿通されるエア抜き口と前記挿入穴に充填されるグラウト材を注入するための注入用配管が接続される注入口とが設けられたグラウト材充填用底型枠において、
前記エア抜き部材が引き抜かれた後の前記エア抜き口を塞ぐことで前記挿入穴からのグラウト材の流出を遮断するエア抜き側遮断手段と、前記注入口を塞ぐことで前記挿入穴からのグラウト材の流出を遮断する注入側遮断手段とを備えてなり、前記エア抜き側遮断手段を、前記エア抜き口を塞ぐ閉鎖位置と該閉鎖位置から前進又は後退して前記エア抜き口を開く開放位置との間で進退自在となるようにエア抜き側シャッター板を配置して構成するとともに、前記注入側遮断手段を、前記注入口を塞ぐ閉鎖位置と該閉鎖位置から前進又は後退して前記注入口を開く開放位置との間で進退自在となるように注入側シャッター板を配置して構成したことを特徴とするグラウト材充填用底型枠。
岩盤、コンクリート躯体その他の補強対象部位に補強手段が挿入配置できるようにかつ上向きに形成された挿入穴の開口に設置され該挿入穴の最上部直下に上端が位置するように前記挿入穴に配置されるエア抜き部材が挿通されるエア抜き口と前記挿入穴に充填されるグラウト材が注入される注入口とが設けられたグラウト材充填用底型枠において、
前記エア抜き部材が引き抜かれた後の前記エア抜き口を塞ぐことで前記挿入穴からのグラウト材の流出を遮断するエア抜き側遮断手段と、前記注入口を塞ぐことで前記挿入穴からのグラウト材の流出を遮断する注入側遮断手段とを備えてなり、前記エア抜き側遮断手段を、前記エア抜き口を塞ぐ閉鎖位置と該閉鎖位置から前進又は後退して前記エア抜き口を開く開放位置との間で進退自在となるようにエア抜き側シャッター板を配置して構成するとともに、前記注入側遮断手段を、前記注入口を塞ぐ閉鎖位置と該閉鎖位置から前進又は後退して前記注入口を開く開放位置との間で進退自在となるように注入側シャッター板を配置して構成し、
切込みによって形成された切片とその周囲に拡がるシート本体とからなり、前記切片が押し開かれる形で挿通された前記エア抜き部材の引抜きに伴って該切片が前記シート本体の面外に開かれた状態から該シート本体と概ね同一の平面となる状態に復帰するように構成されてなるシート状弾性材、又は開口が設けられ該開口が押し拡げられる形で挿通された前記エア抜き部材の引抜きに伴って前記開口が拡張された状態から収縮した状態に復帰するように構成されてなるシート状弾性材を前記エア抜き側遮断手段として備えたことを特徴とするグラウト材充填用底型枠。
岩盤、コンクリート躯体その他の補強対象部位に補強手段が挿入配置できるようにかつ上向きに形成された挿入穴の開口に設置され該挿入穴の最上部直下に上端が位置するように前記挿入穴に配置されるエア抜き部材が挿通されるエア抜き口と前記挿入穴に充填されるグラウト材が注入される注入口とが設けられたグラウト材充填用底型枠において、
前記エア抜き部材が引き抜かれた後の前記エア抜き口を塞ぐことで前記挿入穴からのグラウト材の流出を遮断するエア抜き側遮断手段と、前記注入口を塞ぐことで前記挿入穴からのグラウト材の流出を遮断する注入側遮断手段とを備えてなり、前記エア抜き側遮断手段を、前記エア抜き口を塞ぐ閉鎖位置と該閉鎖位置から前進又は後退して前記エア抜き口を開く開放位置との間で進退自在となるようにエア抜き側シャッター板を配置して構成するとともに、前記注入側遮断手段を、前記注入口を塞ぐ閉鎖位置と該閉鎖位置から前進又は後退して前記注入口を開く開放位置との間で進退自在となるように注入側シャッター板を配置して構成し、
切込みによって形成された切片とその周囲に拡がるシート本体とからなり、前記切片が前記グラウト材の注入圧によって前記シート本体の面外に開かれた開放状態になるとともに該注入圧の消失によって該開放状態から前記シート本体と概ね同一の平面となる閉鎖状態に復帰するように構成されてなるシート状弾性材、又は開口が設けられ該開口が前記グラウト材の注入圧によって押し拡げられた拡張状態になるとともに該注入圧の消失によって該拡張状態から収縮状態に復帰するように構成されてなるシート状弾性材を前記注入側遮断手段として備えたことを特徴とするグラウト材充填用底型枠。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、充填されたグラウト材が挿入穴から流出して該挿入穴に空隙が生じることがないよう適切な流出防止策を講じる必要があるが、エア抜き口側では、せん断補強の品質を向上させるべく、エア抜きホースを残置せずに撤去するため、エア抜きホースの撤去後、エア抜き口を速やかに塞ぐ必要がある。
【0011】
しかしながら、従来においては、エア抜き口を確実かつ迅速に塞ぐ手段がないため、グラウト材の加圧注入を継続することで挿入穴に空隙が発生する事態は防止できるものの、エア抜き口を塞ぐ作業に手間取れば、エア抜き口から多量のグラウト材が流出し、その処理に時間と手間を要するという問題も生じていた。
【0012】
また、注入口側においては、従来、注入ホースを折り曲げてその折曲げ箇所を番線等で結束していたが、かかる方法では、作業が煩雑で時間もかかる上、作業員の経験の有無あるいは習熟度の差に起因して結束の仕方にばらつきが生じ、グラウト材が挿入穴から流出するおそれがあるという問題を生じていた。
【0013】
加えて、加圧ポンプの故障や注入ホースの脱落により、グラウト材の加圧注入が予期せぬ形で中断する事態が生じた場合、ホース類を折り曲げて結束するという上述の方法では即時対応が難しい。
【0014】
そのため、注入されたグラウト材の相当量が挿入穴から流出し、その結果、加圧注入を最初からやり直さねばならないという問題も生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、エア抜き口や注入口を介した挿入穴からのグラウト材の流出を確実かつ迅速に防止可能なグラウト材充填用底型枠を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、グラウト材の加圧注入が予期せぬ形で中断した場合であっても、挿入穴からのグラウト材の流出を防止可能なグラウト材充填用底型枠を提供することを目的とする。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明に係るグラウト材充填用底型枠は請求項1に記載したように、岩盤、コンクリート躯体その他の補強対象部位に補強手段が挿入配置できるようにかつ上向きに形成された挿入穴の開口に設置され該挿入穴の最上部直下に上端が位置するように前記挿入穴に配置されるエア抜き部材が挿通されるエア抜き口と前記挿入穴に充填されるグラウト材
を注入するための注入用配管が接続される注入口とが設けられたグラウト材充填用底型枠において、
前記エア抜き部材が引き抜かれた後の前記エア抜き口を塞ぐことで前記挿入穴からのグラウト材の流出を遮断するエア抜き側遮断手段と、前記注入口を塞ぐことで前記挿入穴からのグラウト材の流出を遮断する注入側遮断手段とを備えてなり、前記エア抜き側遮断手段を、前記エア抜き口を塞ぐ閉鎖位置と該閉鎖位置から前進又は後退して前記エア抜き口を開く開放位置との間で進退自在となるようにエア抜き側シャッター板を配置して構成するとともに、前記注入側遮断手段を、前記注入口を塞ぐ閉鎖位置と該閉鎖位置から前進又は後退して前記注入口を開く開放位置との間で進退自在となるように注入側シャッター板を配置して構成したものである。
また、本発明に係るグラウト材充填用底型枠は、前記注入側シャッター板を、その各長手側にかつ該注入側シャッター板と同一面内となるように配置される2つの注入側ガイドプレートとともに、前記注入用配管が接続される接続口が突設された下段プレートと2つの円形開口が形成された上段プレートとの間に挟み込まれるように配置するとともに、前記注入側シャッター板と背中合わせとなるように前記下段プレートに前記エア抜き側シャッター板が挿入されるエア抜き側ガイドプレートを配置し、前記2つの円形開口のうち、一方の円形開口と前記接続口とが前記注入口として互いに同心となり、他方の円形開口と前記注入側ガイドプレートに形成された円形開口、前記下段プレートに形成された円形開口及び前記エア抜き側ガイドプレートに形成された円形開口とが前記エア抜き口として互いに同心となるように位置決めした上、前記上段プレート、前記注入側ガイドプレート、前記下段プレート及び前記エア抜き側ガイドプレートを相互に連結したものである。
【0018】
また、本発明に係るグラウト材充填用底型枠は
請求項3に記載したように、岩盤、コンクリート躯体その他の補強対象部位に補強手段が挿入配置できるようにかつ上向きに形成された挿入穴の開口に設置され該挿入穴の最上部直下に上端が位置するように前記挿入穴に配置されるエア抜き部材が挿通されるエア抜き口と前記挿入穴に充填されるグラウト材が注入される注入口とが設けられたグラウト材充填用底型枠において、
前記エア抜き部材が引き抜かれた後の前記エア抜き口を塞ぐことで前記挿入穴からのグラウト材の流出を遮断するエア抜き側遮断手段と、前記注入口を塞ぐことで前記挿入穴からのグラウト材の流出を遮断する注入側遮断手段とを備えてなり、前記エア抜き側遮断手段を、前記エア抜き口を塞ぐ閉鎖位置と該閉鎖位置から前進又は後退して前記エア抜き口を開く開放位置との間で進退自在となるようにエア抜き側シャッター板を配置して構成するとともに、前記注入側遮断手段を、前記注入口を塞ぐ閉鎖位置と該閉鎖位置から前進又は後退して前記注入口を開く開放位置との間で進退自在となるように注入側シャッター板を配置して構成し、
切込みによって形成された切片とその周囲に拡がるシート本体とからなり、前記切片が押し開かれる形で挿通された前記エア抜き部材の引抜きに伴って該切片が前記シート本体の面外に開かれた状態から該シート本体と概ね同一の平面となる状態に復帰するように構成されてなるシート状弾性材、又は開口が設けられ該開口が押し拡げられる形で挿通された前記エア抜き部材の引抜きに伴って前記開口が拡張された状態から収縮した状態に復帰するように構成されてなるシート状弾性材を前記エア抜き側遮断手段として備えたものである。
【0019】
また、本発明に係るグラウト材充填用底型枠は
請求項4に記載したように、岩盤、コンクリート躯体その他の補強対象部位に補強手段が挿入配置できるようにかつ上向きに形成された挿入穴の開口に設置され該挿入穴の最上部直下に上端が位置するように前記挿入穴に配置されるエア抜き部材が挿通されるエア抜き口と前記挿入穴に充填されるグラウト材が注入される注入口とが設けられたグラウト材充填用底型枠において、
前記エア抜き部材が引き抜かれた後の前記エア抜き口を塞ぐことで前記挿入穴からのグラウト材の流出を遮断するエア抜き側遮断手段と、前記注入口を塞ぐことで前記挿入穴からのグラウト材の流出を遮断する注入側遮断手段とを備えてなり、前記エア抜き側遮断手段を、前記エア抜き口を塞ぐ閉鎖位置と該閉鎖位置から前進又は後退して前記エア抜き口を開く開放位置との間で進退自在となるようにエア抜き側シャッター板を配置して構成するとともに、前記注入側遮断手段を、前記注入口を塞ぐ閉鎖位置と該閉鎖位置から前進又は後退して前記注入口を開く開放位置との間で進退自在となるように注入側シャッター板を配置して構成し、
切込みによって形成された切片とその周囲に拡がるシート本体とからなり、前記切片が前記グラウト材の注入圧によって前記シート本体の面外に開かれた開放状態になるとともに該注入圧の消失によって該開放状態から前記シート本体と概ね同一の平面となる閉鎖状態に復帰するように構成されてなるシート状弾性材、又は開口が設けられ該開口が前記グラウト材の注入圧によって押し拡げられた拡張状態になるとともに該注入圧の消失によって該拡張状態から収縮状態に復帰するように構成されてなるシート状弾性材を前記注入側遮断手段として備えたものである。
【0020】
本発明に係るグラウト材充填用底型枠においては、エア抜き部材が引き抜かれた後のエア抜き口を塞ぐことで挿入穴からのグラウト材の流出を遮断するエア抜き側遮断手段と、注入口を塞ぐことで挿入穴からのグラウト材の流出を遮断する注入側遮断手段とを備えるが、エア抜き側遮断手段は、エア抜き口を塞ぐ閉鎖位置と該閉鎖位置から前進又は後退してエア抜き口を開く開放位置との間で進退自在となるようにエア抜き側シャッター板を配置して構成してあり、注入側遮断手段は、注入口を塞ぐ閉鎖位置と該閉鎖位置から前進又は後退して注入口を開く開放位置との間で進退自在となるように注入側シャッター板を配置して構成してある。
【0021】
このようにすると、エア抜き口側では、従来、エア抜き部材が引き抜かれる場合に有効な流出防止策がなく、エア抜き口を介した挿入穴からのグラウト材の流出を余儀なくされていたが、本発明によれば、エア抜き側シャッター板を前進又は後退させるという短時間の操作だけでエア抜き口を閉じることができるとともに、その操作に、熟練や習熟が要求されることもない。
【0022】
そのため、エア抜き口を介した挿入穴からのグラウト材の流出を迅速かつ確実に防止することができる。
【0023】
また、エア抜き側シャッター板の操作前に、エア抜き口からグラウト材が流出するとしても、その流出時間を短時間に抑えることができるので、従来のように、エア抜き口を塞ぐ作業に手間取って該エア抜き口から多量のグラウト材が流出するおそれがなくなるとともに、注入口側でグラウト材の加圧注入を継続すれば、その流出分がすみやかに補充注入されるため、挿入穴に空隙が発生するおそれもない。
【0024】
一方、注入口側においても、注入側シャッター板を前進又は後退させるという簡単な操作だけで注入口を閉じることができるとともに、その操作に、熟練や習熟が要求されることもない。
【0025】
そのため、注入ホースを折り曲げてその折曲げ箇所を番線等で結束する従来の流出防止策に比べ、注入口を介した挿入穴からのグラウト材の流出をより迅速かつ確実に防止することができる。
【0026】
補強対象部位は、主としてコンクリート躯体、特に鉄筋コンクリート躯体が該当し、その場合の補強手段には、せん断補強筋等のせん断補強部材や、「マルチプルナットバー」(登録商標)に代表されるせん断補強具が含まれるが、補強対象部位と補強手段の組み合わせは、上向き形成された挿入穴に補強手段が挿入され、その状態でグラウト材が充填される限り、任意であって、例えば岩盤等の地山と該地山に埋設されるロックボルトあるいはアンカーとで構成することも可能である。
【0027】
挿入穴は、上向き形成されたものが本発明の対象となるが、上向きとは鉛直上向きだけを意味するものではなく、グラウト材を注入したときに空気が残留するおそれがある場合、すなわち開口位置よりも孔底位置が高い場合を意味するものとする。
【0028】
エア抜き部材は、ホース、パイプ等で構成することが可能であって、その材質も任意である。
【0029】
本発明に係るグラウト材充填用底型枠は、その上面を挿入穴の開口周縁に当接した状態で補強対象部位に設置することが可能であって、必要に応じて挿入穴の開口周縁における不陸を調整しつつ、当接箇所での液密性を確保できるものとする。
【0030】
ここで、本発明に係るグラウト材充填用底型枠は上述したように、エア抜き側シャッター板を配置してなるエア抜き側遮断手段を備えるが、これとは別に、切込みによって形成された切片とその周囲に拡がるシート本体とからなり、前記切片が押し開かれる形で挿通された前記エア抜き部材の引抜きに伴って該切片が前記シート本体の面外に開かれた状態から該シート本体と概ね同一の平面となる状態に復帰するように構成されてなるシート状弾性材、又は開口が設けられ該開口が押し拡げられる形で挿通された前記エア抜き部材の引抜きに伴って前記開口が拡張された状態から収縮した状態に復帰するように構成されてなるシート状弾性材をエア抜き側遮断手段として備えるようにしたならば、エア抜き部材を引き抜いてからエア抜き側シャッター板を操作するまでの間、エア抜き口を介したグラウト材の流出については、その流量が大幅に絞られる。
【0031】
そのため、エア抜き側シャッター板を操作するまでに流出するグラウト材の処理が簡素化されるとともに、エア抜き部材引抜き後のエア抜き側シャッター板の操作を時間的余裕をもって行うことも可能となる。
【0032】
一方、本発明に係るグラウト材充填用底型枠は上述したように、注入側シャッター板を配置してなる注入側遮断手段を備えるが、これとは別に、切込みによって形成された切片とその周囲に拡がるシート本体とからなり、前記切片が前記グラウト材の注入圧によって前記シート本体の面外に開かれた開放状態になるとともに該注入圧の消失によって該開放状態から前記シート本体と概ね同一の平面となる閉鎖状態に復帰するように構成されてなるシート状弾性材、又は開口が設けられ該開口が前記グラウト材の注入圧によって押し拡げられた拡張状態になるとともに該注入圧の消失によって該拡張状態から収縮状態に復帰するように構成されてなるシート状弾性材を注入側遮断手段として備えるようにしたならば、注入口を介したグラウト材の流出については、グラウト材の注入圧の消失に応答する形で、その流量が大幅に絞られる。
【0033】
そのため、加圧ポンプの故障や注入ホースの脱落によってグラウト材の加圧注入が予期せぬ形で中断したときであっても、注入口を介した挿入穴からの流出量が最小限にとどまり、かくして注入ホースを折り曲げて結束するという従来の流出防止策とは異なり、加圧注入を最初からやり直すのではなく、中断時の注入状況から再開することが可能となる。
【0034】
上述の切片は、切込みを入れることによってその隣接部位が弾性変形して挿入穴側に押し開かれるとともに、その押し開きによって切込み箇所にエア抜き部材の挿通空間が形成されるものであれば、必ずしも切込みの形状がコの字状、十字状、C字状等であって、該切込みによる切片の輪郭が矩形状、三角形状(扇形状)、半円状といった包囲形状になる場合に限定されるものではなく、直線状の切込みであってもその隣接部位が上述のように作用する場合もその隣接部位が切片として包摂されるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係るグラウト材充填用底型枠の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0037】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係るグラウト材充填用底型枠2とそれが配置されるグラウト材充填システム1を概略図で示したものである。同図に示すように、グラウト材充填システム1は、鉄筋コンクリート躯体6を補強対象部位とした耐震補強に適用されるものであって、該鉄筋コンクリート躯体にほぼ鉛直上向きに形成された挿入穴7の開口8に設置されるグラウト材充填用底型枠2と、該グラウト材充填用底型枠に設けられた注入口3に注入用配管4を介して連通接続された加圧ポンプ5とを備え、挿入穴7に補強手段であるせん断補強具9が挿入配置された状態で、加圧ポンプ5から注入用配管4に沿って圧送されてきたグラウト材としてのモルタルを注入口3から挿入穴7に注入することにより、該挿入穴に充填されたモルタルを介してせん断補強具9を鉄筋コンクリート躯体6に一体化させ、該鉄筋コンクリート躯体をせん断補強できるようになっている。
【0038】
せん断補強具9は、例えば同図に示すように、ロッド状をなすPC鋼棒と、該PC鋼棒の各端にそれぞれ螺着される一対の定着ナットとで構成すればよい。
【0039】
グラウト材充填用底型枠2には注入口3と並んでエア抜き口11を設けてあり、該エア抜き口に、上端が挿入穴7の最上部直下に位置するようにエア抜き部材10を挿通することにより、モルタルを加圧注入する際、挿入穴7の空気をエア抜き部材10を介して該挿入穴から追い出すとともに、エア抜き部材10の下端からモルタルが流出してきた時点で、挿入穴7の最上部直下までモルタルが注入されたこと、すなわち挿入穴7に空隙を残すことなく隅々までモルタルが注入されたことを確認できるようになっている。
【0040】
エア抜き部材10や注入用配管4は、材質は問わないが、例えば樹脂製のパイプやホースで構成すればよい。
【0041】
図2は、グラウト材充填用底型枠2を、分解斜視図と組立が完了した状態の全体斜視図で示したものである。これらの図でわかるように、グラウト材充填用底型枠2は、注入用配管4が接続される接続口28が下方に突設された下段プレート22と、注入側シャッター板24及び該注入側シャッター板と同一面内となるように該注入側シャッター板の各長手側にそれぞれ配置された2つの注入側ガイドプレート23a,23bと、2つの円形開口27,29が形成された上段プレート21とを、注入側シャッター板24及び2つの注入側ガイドプレート23a,23bが下段プレート22と上段プレート21の間に挟み込まれた状態となるように積層するとともに、下段プレート22の下面にエア抜き側ガイドプレート25を配置して、上段プレート21の円形開口27と下段プレート22の接続口28が互いに同心となり、上段プレート21の円形開口29と注入側ガイドプレート23aに形成された円形開口30と下段プレート22に形成された円形開口31とエア抜き側ガイドプレート25に形成された円形開口32とが互いに同心となるように位置決めした上、エア抜き側ガイドプレート25に形成されたボルト孔33a,33a、下段プレート22に形成されたボルト孔34a,34a、及び注入側ガイドプレート23aに形成されたボルト孔35a,35aにボルト37a,37aを挿通して上段プレート21のボルト孔36a,36aに螺合するとともに、下段プレート22に形成されたボルト孔34b,34b、及び注入側ガイドプレート23bに形成されたボルト孔35b,35bにボルト37b,37bを挿通して上段プレート21のボルト孔36b,36bに螺合して相互連結してある。
【0042】
ここで、上段プレート21の円形開口27及び下段プレート22の接続口28は上述した注入口3を構成し、上段プレート21の円形開口29、注入側ガイドプレート23aに設けられた円形開口30、下段プレート22に設けられた円形開口31及びエア抜き側ガイドプレート25に設けられた円形開口32は、上述したエア抜き口11を構成する。
【0043】
エア抜き側ガイドプレート25は、溝状凹部の各長手側縁部に折返し部をそれぞれ延設して構成してあり、該溝状凹部の底部には上述の円形開口32が、該各折返し部には上述のボルト孔33aがそれぞれ形成してあるが、溝状凹部とその開き側に配置された下段プレート22の下面との間に形成された挿入空間には、T字状のエア抜き側シャッター板26が挿入できるようになっている。
【0044】
エア抜き側シャッター板26は、エア抜き側ガイドプレート25により同図矢印方向に沿って案内されつつ、その先端近傍部位38でエア抜き口11を塞ぐ閉鎖位置(同図一点鎖線)と該閉鎖位置から同図右方向に後退してエア抜き口11を開く開放位置(同図実線)との間で進退自在に構成してあり、該閉鎖位置では、エア抜き口11を介した挿入穴7からのモルタルの流出を遮断するエア抜き側遮断手段として機能する。
【0045】
一方、注入側シャッター板24は、その長手側にそれぞれ配置された注入側ガイドプレート23a,23bに挟み込まれており、該注入側ガイドプレートで同図矢印方向に沿って案内されつつ、該注入側シャッター板に形成された円形開口33が注入口3と全体がずれることで該注入口を塞ぐ閉鎖位置(同図一点鎖線)と該閉鎖位置から同図であれば左側に移動して(左側から見れば後退して)円形開口33が注入口3と同心になることで該注入口を開く開放位置(同図実線)との間で進退自在に構成されてなり、該閉鎖位置では、注入口3を介した挿入穴7からのモルタルの流出を遮断する注入側遮断手段として機能する。
【0046】
注入側シャッター板24は、その短手側縁部にそれぞれ設けられた折曲げ部39a,39bが下段プレート22の対向縁部にそれぞれ当接することで、注入側ガイドプレート23a,23bの間から、あるいは上段プレート21と下段プレート22の間からの抜け出しや脱落が防止されるようになっているが、同図左側に移動して円形開口33が注入口3と同心になる位置で折曲げ部39aが下段プレート22の縁部に当接し、同図右側に移動して円形開口33が全体として注入口3から外れる位置で折曲げ部39bが下段プレート22の縁部に当接するように構成すれば、折曲げ部39a,39bがそれぞれストッパーとして機能するため、注入口3における開き操作と遮断操作を容易に切り替えることが可能となる。
【0047】
なお、上段プレート21の4つの隅部にはボルト孔40をそれぞれ形成してあり、該ボルト孔に挿通されたボルト(図示せず)を用いて、グラウト材充填用底型枠2を鉄筋コンクリート躯体6に固定できるようになっているとともに、該固定作業に支障がないよう、下段プレート22においては、その4つの隅部に切り欠きをそれぞれ形成してある。
【0048】
本実施形態に係るグラウト材充填用底型枠2を用いて挿入穴7にモルタルを充填するには、まず、鉄筋コンクリート躯体6に挿入穴7を上向き形成する。
【0049】
次に、挿入穴7へのせん断補強具9の挿入配置、挿入穴7の最上部直下に上端が位置する形での該挿入穴へのエア抜き部材10の挿入配置及びエア抜き部材10がグラウト材充填用底型枠2のエア抜き口11に挿通された形での挿入穴7の開口への該グラウト材充填用底型枠の設置を任意の順序で行う。
【0050】
具体的には例えば、せん断補強具9を挿入穴7に挿入配置して仮固定した後、グラウト材充填用底型枠2にエア抜き部材10を先付けし、次いで、グラウト材充填用底型枠2を持ち上げながらそれに先付けされたエア抜き部材10を挿入穴7に挿入し、該グラウト材充填用底型枠の上面が挿入穴7の開口周縁に当接したら、その状態で上段プレート21の4つの隅部に形成されたボルト孔40にボルトを挿通してその先端を鉄筋コンクリート躯体6に固着することにより、グラウト材充填用底型枠2を挿入穴7の開口に設置するようにすればよい。
【0051】
次に、グラウト材充填用底型枠2の注入口3に連通接続された加圧ポンプ5を作動させることで、
図3(a)に示すように、挿入穴7へのモルタルの注入を開始し、該注入開始後は、エア抜き部材10からモルタルが流出してくるのを待って(同図(b))、該エア抜き部材をエア抜き口11から引き抜く(
図4(a))。
【0052】
ここで、加圧ポンプ5は、起動による挿入穴7へのモルタルの注入開始以来、エア抜き部材10の引抜き中や引抜き後も継続して作動していて、挿入穴7へは該加圧ポンプによる加圧が続いているため、エア抜き部材10を引き抜いても、その体積減少分に相当する量のモルタルは加圧ポンプ5によってすみやかに補充され、挿入穴7に空隙が生じるおそれはない。
【0053】
次に、エア抜き側シャッター板26を閉鎖位置に前進させ、その先端近傍部位38でエア抜き口11を塞ぐことにより、該エア抜き口を介した挿入穴7からのモルタルの流出を遮断する。
【0054】
次に、注入側シャッター板24を、例えばハンマー等で折曲げ部39bを叩くことにより閉鎖位置に進退させ(
図2の左側から見れば前進、右側から見れば後退)、その円形開口33を注入口3から全体的にずらすことにより、注入口3を介した挿入穴7からのモルタルの流出を遮断する。
【0055】
注入側シャッター板24を閉鎖位置に進退させた後は、適当なタイミングで加圧ポンプ5を停止する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係るグラウト材充填用底型枠2によれば、エア抜き側シャッター板26を前進させるという短時間の操作だけでエア抜き口11を閉じることができるとともに、その操作に、熟練や習熟が要求されることもない。
【0057】
そのため、エア抜き口11を介した挿入穴7からのモルタルの流出を迅速かつ確実に防止することができる。
【0058】
また、エア抜き側シャッター板26の操作前に、エア抜き口11からモルタルが流出するとしても、その流出時間を短時間に抑えることができるので、従来のように、エア抜き口11を塞ぐ作業に手間取って該エア抜き口から多量のモルタルが流出するおそれがなくなるとともに、注入口3の側でモルタルの加圧注入を継続すれば、その流出分がすみやかに補充注入されるため、挿入穴7に空隙が発生するおそれもない。
【0059】
一方、注入口3の側においても、注入側シャッター板24を前進又は後退させるという簡単な操作だけで注入口3を閉じることができるとともに、その操作に、熟練や習熟が要求されることもない。
【0060】
そのため、注入ホースを折り曲げてその折曲げ箇所を番線等で結束する従来の流出防止策に比べ、注入口3を介した挿入穴7からのモルタルの流出をより迅速かつ確実に防止することができる。
【0061】
本実施形態では、グラウト材がモルタルである場合を例としたが、モルタルに代えて、その他の水硬性材料を用いることは可能であるし、薬液その他さまざまなグラウト材を用いることもできる。
【0062】
また、本実施形態では、グラウト材充填用底型枠2をグラウト材充填システム1に組み込む形で用いるようにしたが、本発明に係るグラウト材充填用底型枠は、加圧ポンプとの併用を必須とするものではなく、例えばヘッド差を用いた加圧によってグラウト材を注入するシステムに用いることも可能である。
【0063】
この場合、注入用配管4を、加圧ポンプ5に代えて、グラウト材を貯留する貯留タンクに連通接続した上、該貯留タンクを挿入穴7の最上部よりも高くなるように設置した構成とすればよい。
【0064】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るグラウト材充填用底型枠について説明する。なお、第1実施形態と同一の部品等については同一の番号を付してその説明を省略する。
【0065】
図5は、第2実施形態に係るグラウト材充填用底型枠2aを示した分解斜視図であって、グラウト材充填用底型枠2に代わる形で第1実施形態と同様にグラウト材充填システム1で用いられるものとする。
【0066】
グラウト材充填用底型枠2aは同図に示したように、第1実施形態に係るグラウト材充填用底型枠2と、該グラウト材充填用底型枠の上段プレート21の上面に取り付けられたエア抜き側遮断手段及び注入側遮断手段としてのシート状弾性材41とを備えたものであって、グラウト材充填用底型枠2については、ここではその説明を省略する。
【0067】
シート状弾性材41は、コの字状の切込みによってそれぞれ矩形状に形成された切片43及び切片45とそれらの周囲に拡がるシート本体44とからなり、該シート本体の4つの隅部には、グラウト材充填用底型枠2aを鉄筋コンクリート躯体6に固定するためのボルト(図示せず)を挿通可能なボルト孔40aを上段プレート21のボルト孔40と同心位置となるようにそれぞれ形成してある。
【0068】
ここで、シート状弾性材41は、切片43が押し開かれる形で挿通されたエア抜き部材10の引抜きに伴って該切片がシート本体44の面外に開かれた状態から該シート本体と概ね同一の平面となる状態に復帰するように構成してあるとともに、切片45がモルタルの注入圧によってシート本体44の面外に開かれた開放状態になるとともに該注入圧の消失によって該開放状態からシート本体44と概ね同一の平面となる閉鎖状態に復帰するように構成してある。
【0069】
本実施形態に係るグラウト材充填用底型枠2aを用いて挿入穴7にモルタルを充填するには、第1実施形態と同様、鉄筋コンクリート躯体6に上向き形成された挿入穴7にせん断補強具9を配置するとともに、挿入穴7の開口8にグラウト材充填用底型枠2aを設置し、該グラウト材充填用底型枠のエア抜き口11には、上端が挿入穴7の最上部直下に位置するようにエア抜き部材10を挿通しておく。
【0070】
次に、グラウト材充填用底型枠2aの注入口3に連通接続された加圧ポンプ5を作動させることで、
図6(a)に示すように、挿入穴7へのモルタルの注入を開始する。
【0071】
このとき、エア抜き口11の側では、該エア抜き口に挿通されたエア抜き部材10によって切片43がシート本体44の面外に開かれた状態となり、注入口3の側でも、切片45がモルタルの注入圧によってシート本体44の面外に開かれた開放状態となる。
【0072】
次に、エア抜き部材10からモルタルが流出してきたら、該エア抜き部材をエア抜き口11から引き抜く(同図(b))。
【0073】
このようにすると、エア抜き部材10の引抜きに伴い、切片43がシート本体44の面外に開かれた状態から該シート本体と概ね同一の平面となる状態に復帰する。
【0074】
ここで、モルタル中の砂分が切片43の下方に入り込むことに起因して切片43とシート本体44との間にわずかな隙間が生じ、この隙間を介してモルタルが若干流出するため、エア抜き口11を介したモルタル流出を切片43によって完全に遮断することは難しいが、少なくともその流量については大幅に絞ることができる。
【0075】
一方、注入口3の側では、モルタルの加圧が継続されているので、切片45は、その注入圧により、シート本体44の面外に開かれた開放状態が維持される。
【0076】
なお、モルタルの加圧は上述したように継続されるため、エア抜き部材10を引き抜いても、その体積減少分に相当する量のモルタルは加圧ポンプ5によってすみやかに補充されるとともに、引抜き後に生じる若干の流出についても、同様に補充されるため、挿入穴7に空隙が生じるおそれはない。
【0077】
次に、同図(c)に示すように、エア抜き側シャッター板26を閉鎖位置に前進させ、その先端近傍部位38でエア抜き口11を塞ぐことにより、該エア抜き口を介した挿入穴7からのモルタルの流出を遮断する。
【0078】
次に、注入側シャッター板24を、例えばハンマー等で折曲げ部39bを叩くことにより閉鎖位置に進退させ(
図2の左側から見れば前進、右側から見れば後退)、その円形開口33を注入口3から全体的にずらすことにより、注入口3を介した挿入穴7からのモルタルの流出を遮断する。
【0079】
ここで、注入口側の切片45は、注入側シャッター板24の閉鎖位置への進退操作により、該切片へのモルタルの注入圧が作用しなくなるため、シート本体44と概ね同一の平面となる閉鎖状態に復帰する。
【0080】
注入側シャッター板24を閉鎖位置に進退させた後は、適当なタイミングで加圧ポンプ5を停止する。
【0081】
以上説明したように、本実施形態に係るグラウト材充填用底型枠2aによれば、第1実施形態で述べたグラウト材充填用底型枠2の作用効果に加えて、エア抜き部材10を引き抜いてからエア抜き側シャッター板26を操作するまでの間、エア抜き口11を介したモルタルの流出流量を大幅に絞ることが可能となり、かくしてエア抜き側シャッター板26を操作するまでに流出するモルタルの処理が簡素化されるとともに、エア抜き部材10を引き抜いた後のエア抜き側シャッター板26の操作を時間的余裕をもって行うことも可能となる。
【0082】
また、本実施形態に係るグラウト材充填用底型枠2aによれば、シート状弾性材41を、切片45がモルタルの注入圧によってシート本体44の面外に開かれた開放状態になるとともに、該注入圧の消失によって該開放状態からシート本体44と概ね同一の平面となる閉鎖状態に復帰するように構成したので、切片45が逆止弁として機能し、加圧ポンプ5が正常に作動している状況では、
図7(a)に示すように、モルタルの注入圧によって切片45が開いてモルタルの注入が可能になる一方、加圧ポンプ5の動作異常や注入用配管4の脱落によって注入圧が消失したときには、同図(b)に示すように切片45が閉じ、モルタルの流出流量が制限される。
【0083】
そのため、加圧ポンプ5の故障や注入用配管4の脱落によってモルタルの加圧注入が予期せぬ形で中断したときであっても、注入口3を介した挿入穴7からの流出量が最小限にとどまるとともに、エア抜き部材10の引抜き及びエア抜き側シャッター板26の操作を速やかに行うことにより、エア抜き口11の側においても、挿入穴7からのモルタルの流出量を最小限にとどめることができるので、モルタルの加圧注入を従来のように最初からやり直す必要はなく、中断時の注入状況から再開することが可能となる。
【0084】
なお、注入されたモルタルの天端がエア抜き部材10の上端よりも低い状況であれば、エア抜き部材10を引き抜く必要はない。
【0085】
本実施形態では、グラウト材がモルタルである場合を例としたが、第1実施形態と同様、モルタルに代えて、その他の水硬性材料をはじめ、さまざまなグラウト材を用いることができるし、グラウト材充填用底型枠2aを、加圧ポンプとの併用ではなく、例えばヘッド差を用いた加圧によってグラウト材を注入するシステムに用いることも可能である。以下、その内容については第1実施形態とほぼ同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0086】
また、本実施形態では、本発明のシート状弾性材を、エア抜き側遮断手段及び注入側遮断手段の両方を含むシート状弾性材41で構成したが、本発明のシート状弾性材は、エア抜き側遮断手段又は注入側遮断手段の単独構成とすることが可能であり、例えば
図8に示すように、エア抜き側遮断手段としてのシート状弾性材41aで構成してもかまわない。
【0087】
同図に示したグラウト材充填用底型枠2bは、第1実施形態に係るグラウト材充填用底型枠2と、該グラウト材充填用底型枠の上段プレート21の上面に取り付けられたエア抜き側遮断手段としてのシート状弾性材41aとを備えたものであって、グラウト材充填用底型枠2については、ここではその説明を省略する。
【0088】
シート状弾性材41aは、コの字状の切込みによってそれぞれ矩形状に形成された切片43とそれらの周囲に拡がるシート本体44とからなり、該シート本体の4つの隅部には、グラウト材充填用底型枠2bを鉄筋コンクリート躯体6に固定するためのボルト(図示せず)を挿通可能なボルト孔40aを上段プレート21のボルト孔40と同心位置となるようにそれぞれ形成してあるとともに、円形開口27及び接続口28とともに注入口3を構成する円形開口42をそれらと同心になるように設けてある。
【0089】
かかる変形例においては、エア抜き口11の側では第2実施形態で、注入口3の側では第1実施形態でそれぞれ述べた通りであるので、ここではその説明を省略する。
【0090】
なお、注入側遮断手段の単独構成とする場合には、
図5に示したシート状弾性材41において、その切片43に代えて、該切片位置にエア抜き部材10が挿通される円形開口をエア抜き口11の一つとして設けて構成すればよい。
【0091】
また、本実施形態及び上述の変形例では、コの字状の切込みによって矩形状に形成されてなる切片43、切片45又はそれらの両方を本発明の切片としたが、切込みの入れ方やそれによって形成される形は任意であって、例えば放射状に切込みを入れるようにしてもよい。この場合、三角形状あるいは扇形状からなる複数枚で切片が構成される。
【0092】
図9は、十字状に切込みを入れることで4枚からなる切片43aとした例を示したものであり、
図10は直線状に切込みを入れることで2枚からなる切片43bとした例を示したものである。また、シート状弾性材41に代えて、
図11に示すようにシート状弾性材71を上段プレート21の上面に取り付けて構成してもよい。
【0093】
シート状弾性材71は、挿通されたエア抜き部材10の引抜きに伴って拡張状態から収縮状態に復帰する開口72を設けて構成してあり、4つの隅部に、底型枠2を鉄筋コンクリート躯体6に固定するためのボルト(図示せず)が挿通されるボルト孔40aを上段プレート21のボルト孔40と同心位置となるようにそれぞれ形成してあるとともに、円形開口27及び接続口28とともに注入口3を構成する円形開口42をそれらと同心になるように設けてある。
【0094】
ここで、シート状弾性材71は、モルタルの加圧注入を行っている状況では、同図(a)に示すように、エア抜き部材10が挿通されることで開口72が拡張状態となっているが、エア抜き部材10が引き抜かれた後は、同図(b)に示すように該引抜き操作に応答して、開口72がその弾性復元力とモルタルの加圧作用によって収縮状態に戻る。
【0095】
以下、シート状弾性材71に関する他の作用については、シート状弾性材41と概ね同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0096】
なお、
図9〜
図11の変形例は、切片43の変形例として構成した例であるが、これらの構成を切片45の変形例として適用することが可能である。
【0097】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係るグラウト材充填用底型枠について説明する。なお、第1,2実施形態と同一の部品等については同一の番号を付してその説明を省略する。
【0098】
図12は、第3実施形態に係るグラウト材充填用底型枠2cを示した分解斜視図、
図13は、同じく組立が完了した全体斜視図であって、グラウト材充填用底型枠2に代わる形で第1実施形態と同様にグラウト材充填システム1で用いられるものとする。
【0099】
グラウト材充填用底型枠2cはこれらの図に示したように、注入用配管4が接続される接続口28が下方に突設された下段プレート22と、注入側シャッター板24a及び該注入側シャッター板と同一面内となるように該注入側シャッター板の各長手側にそれぞれ配置された2つの注入側ガイドプレート23c,23dと、だるま状開口81が形成された中間プレート21aと、2つの円形開口88,89が形成された上段プレート86とを、注入側シャッター板24a及び2つの注入側ガイドプレート23c,23dが下段プレート22と中間プレート21aの間に挟み込まれた状態となりかつ上段プレート86が最上段となるように積層するとともに、下段プレート22の下面にエア抜き側ガイドプレート25を配置して、上段プレート86の円形開口88と下段プレート22の接続口28が互いに同心となり、上段プレート21の円形開口89と下段プレート22に形成された円形開口31とエア抜き側ガイドプレート25に形成された円形開口32とが互いに同心となるように位置決めした上、エア抜き側ガイドプレート25に形成されたボルト孔33a,33a、下段プレート22に形成されたボルト孔34a,34a、注入側ガイドプレート23cに形成されたボルト孔35a,35a及び中間プレート21aに形成されたボルト孔36a,36aにボルト37a,37aを挿通して上段プレート86のボルト孔87a,87aに螺合するとともに、下段プレート22に形成されたボルト孔34b,34b、注入側ガイドプレート23dに形成されたボルト孔35b,35b及び中間プレート21aに形成されたボルト孔36b,36bにボルト37b,37bを挿通して上段プレート86のボルト孔87b,87bに螺合して相互連結してある。
【0100】
また、上段プレート86の下面には、その円形開口88,89にそれぞれ同心に位置決めされる円形開口84,85が形成されてなるだるま状のシール保持部材82をネジ止めできるようになっているとともに、該シール保持部材は、その周縁に環状シール部材83が巻き付けられた状態で中間プレート21aのだるま状開口81に嵌め込まれるようになっている。
【0101】
ここで、上段プレート86の円形開口88、シール保持部材82の円形開口84及び下段プレート22の接続口28は上述した注入口3を構成し、上段プレート86の円形開口89、シール保持部材82の円形開口85、下段プレート22に設けられた円形開口31及びエア抜き側ガイドプレート25に設けられた円形開口32は、上述したエア抜き口11を構成する。
【0102】
エア抜き側ガイドプレート25は、溝状凹部の各長手側縁部に折返し部をそれぞれ延設して構成してあり、該溝状凹部の底部には上述の円形開口32が、該各折返し部には上述のボルト孔33aがそれぞれ形成してあるが、溝状凹部とその開き側に配置された下段プレート22の下面との間に形成された挿入空間には、T字状のエア抜き側シャッター板26が挿入できるようになっている。
【0103】
エア抜き側シャッター板26は、エア抜き側ガイドプレート25により同図矢印方向に沿って案内されつつ、その先端近傍部位38でエア抜き口11を塞ぐ閉鎖位置(同図一点鎖線)と該閉鎖位置から同図右方向に後退してエア抜き口11を開く開放位置(同図実線)との間で進退自在に構成してあり、該閉鎖位置では、エア抜き口11を介した挿入穴7からのモルタルの流出を遮断するエア抜き側遮断手段として機能する。
【0104】
一方、注入側シャッター板24aは、その長手側にそれぞれ配置された注入側ガイドプレート23c,23dに挟み込まれており、該注入側ガイドプレートで同図矢印方向に沿って案内されつつ、該注入側シャッター板に形成された円形開口33が注入口3と全体がずれることで該注入口を塞ぐ閉鎖位置(同図一点鎖線)と該閉鎖位置から同図であれば左側に移動して(左側から見れば後退して)円形開口33が注入口3と同心になることで該注入口を開く開放位置(同図実線)との間で進退自在に構成されてなり、該閉鎖位置では、注入口3を介した挿入穴7からのモルタルの流出を遮断する注入側遮断手段として機能する。
【0105】
ここで、注入側シャッター板24aには、上述したようにエア抜き部材10が挿通される円形開口30aが設けてあり、注入側シャッター板24aが閉鎖位置に進退したときには、円形開口30aもエア抜き口11からずれるが、注入側シャッター板24aを操作する段階では、既にエア抜き側シャッター板26によってエア抜き口11が遮断されているので、注入側シャッター板24aの操作によってエア抜き口11が遮断されるわけではない。円形開口30aを注入側ガイドプレート23cではなく、注入側シャッター板24aに設けた理由については後ほど詳述する。
【0106】
注入側シャッター板24aは、その短手側縁部にそれぞれ設けられた折曲げ部39a,39bが下段プレート22の対向縁部にそれぞれ当接することで、注入側ガイドプレート23c,23dの間から、あるいは中間プレート21aと下段プレート22の間からの抜け出しや脱落が防止されるようになっているが、同図左側に移動して円形開口33が注入口3と同心になる位置で折曲げ部39aが下段プレート22の縁部に当接し、同図右側に移動して円形開口33が全体として注入口3から外れる位置で折曲げ部39bが下段プレート22の縁部に当接するように構成すれば、折曲げ部39a,39bがそれぞれストッパーとして機能するため、注入口3における開き操作と遮断操作を容易に切り替えることが可能となる。
【0107】
なお、中間プレート21aの4つの隅部及び上段プレート86の4つの隅部には、ボルト孔40がそれぞれ形成してあり、該ボルト孔に挿通されたボルト(図示せず)を用いて、グラウト材充填用底型枠2を鉄筋コンクリート躯体6に固定できるようになっているとともに、該固定作業に支障がないよう、下段プレート22においては、その4つの隅部に切り欠きをそれぞれ形成してある。
【0108】
本実施形態に係るグラウト材充填用底型枠2cを用いて挿入穴7にモルタルを充填するには、第1,2実施形態と同様、鉄筋コンクリート躯体6に上向き形成された挿入穴7にせん断補強具9を配置するとともに、挿入穴7の開口8にグラウト材充填用底型枠2cを設置し、該グラウト材充填用底型枠のエア抜き口11には、上端が挿入穴7の最上部直下に位置するようにエア抜き部材10を挿通しておく。
【0109】
次に、グラウト材充填用底型枠2cの注入口3に連通接続された加圧ポンプ5を作動させることで、
図14(a)に示すように、挿入穴7へのモルタルの注入を開始し、該注入開始後は、エア抜き部材10からモルタルが流出してくるのを待って、該エア抜き部材をエア抜き口11から引き抜く。
【0110】
ここで、加圧ポンプ5は、起動による挿入穴7へのモルタルの注入開始以来、エア抜き部材10の引抜き中や引抜き後も継続して作動していて、挿入穴7へは該加圧ポンプによる加圧が続いているため、エア抜き部材10を引き抜いても、その体積減少分に相当する量のモルタルは加圧ポンプ5によってすみやかに補充され、挿入穴7に空隙が生じるおそれはない。
【0111】
次に、エア抜き側シャッター板26を閉鎖位置に前進させ(同図(b))、その先端近傍部位38でエア抜き口11を塞ぐことにより、該エア抜き口を介した挿入穴7からのモルタルの流出を遮断する(同図(c))。
【0112】
次に、注入側シャッター板24aを、例えばハンマー等で折曲げ部39bを叩くことにより閉鎖位置に進退させ(
図12の左側から見れば前進、右側から見れば後退)、その円形開口33を注入口3から全体的にずらすことにより、注入口3を介した挿入穴7からのモルタルの流出を遮断する(同図(d))。
【0113】
注入側シャッター板24aを閉鎖位置に進退させた後は、適当なタイミングで加圧ポンプ5を停止する。
【0114】
以上説明したように、本実施形態に係るグラウト材充填用底型枠2cによれば、第1実施形態で述べたと同様の作用効果を奏するほか、
図15に示すように、環状シール部材83を、その上面が上段プレート86の下面に当接し、その下面が注入側シャッター板24aの上面に摺動自在に当接するように、該上段プレートと該注入側シャッター板との間に挟み込んであるので、上段プレート86の円形開口88,89を介して流れ込み、さらにはシール保持部材82の円形開口84,85へと流れ込んできたモルタルは、注入側シャッター板24aが閉鎖位置に進退した状態では、環状シール部材83及び注入側シャッター板24aによって水平放射方向及び下方でその流れが遮断され、かくして充填完了後の挿入穴7からのモルタル漏出が確実に防止される。
【0115】
また、環状シール部材83は、シール保持部材82によって収縮方向への動きが、中間プレート21aのだるま状開口81の内周縁部によって拡張方向への動きがそれぞれ拘束されるため、その下面で注入側シャッター板24aによる摺動作用が加わっても、当初の配置形状が保持され、液密機能が損なわれるおそれもない。
【0116】
このように、注入側シャッター板24aは、注入口3を塞ぐ機能を果たすだけではなく、環状シール部材83等とともに、より確実にモルタル流出を防止する液密機能をも果たすものであり、それゆえ、閉鎖位置でエア抜き口11を塞ぐことができるように、なおかつ退避位置ではエア抜き部材10に干渉せぬように該エア抜き部材を挿通させるための円形開口30aが必要となる。
【0117】
ちなみに、注入側ガイドプレート23cと注入側シャッター板24aの各幅を調整した上、円形開口30aを注入側ガイドプレート23cに設けた場合には(第1実施形態参照)、環状シール部材83が注入側ガイドプレート23cと注入側シャッター板24aとを跨ぐことになるため、それらの隙間からモルタルが流出するおそれがあり、高い液密性能を確保することは難しくなる。