(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883986
(24)【登録日】2021年5月13日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】治療用エネルギ送達を含む治療カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20210531BHJP
A61B 18/08 20060101ALI20210531BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20210531BHJP
A61K 38/48 20060101ALI20210531BHJP
A61N 7/00 20060101ALI20210531BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
A61M25/00 534
A61B18/08
A61K38/46
A61K38/48 100
A61N7/00
A61P7/02
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-531014(P2016-531014)
(86)(22)【出願日】2014年11月18日
(65)【公表番号】特表2016-538052(P2016-538052A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】US2014066147
(87)【国際公開番号】WO2015074046
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2017年11月15日
【審判番号】不服2020-197(P2020-197/J1)
【審判請求日】2020年1月8日
(31)【優先権主張番号】61/905,351
(32)【優先日】2013年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン エリック
(72)【発明者】
【氏名】スティガル ジェレミー
【合議体】
【審判長】
内藤 真徳
【審判官】
倉橋 紀夫
【審判官】
莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−511168号公報(JP,A)
【文献】
特表2012−525933号公報(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0112150号明細書(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0143256号明細書(US,A1)
【文献】
国際公開第91/012770号(WO,A1)
【文献】
特開昭62−299254号公報(JP,A)
【文献】
特開2011−125707号公報(JP,A)
【文献】
特表2009−522020号公報(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/049601号(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61B 17/22
A61B 17/32
A61B 18/08
A61N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の遠位端部に複数の開口を有する可撓性の細長い当該本体と、 前記開口のうちの少なくとも1つ及び前記本体の近位端部にあるポートと流体連通するルーメンと、 前記本体の前記遠位端部にある単一の治療用エネルギ変換器であって、前記開口を介して血管系内部の標的に治療剤が送達されるのと同時に、前記標的に治療用エネルギを送達する当該治療用エネルギ変換器と、を含み、 前記治療用エネルギ変換器は、前記本体の長手軸と同一線上の軸を有する螺旋の形状に配置され、当該螺旋の間の部分に前記開口が前記治療用エネルギ変換器から離れて配置される、血管系に治療を施すためのカテーテル。
【請求項2】
前記本体の前記遠位端部は周囲部を有し、前記治療用エネルギ変換器は前記周囲部の半分を超える部分に亘ってエネルギを送達する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記治療用エネルギ変換器は、少なくとも約5cmの長さである、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記治療用エネルギ変換器は、前記標的に超音波エネルギを送達する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記治療用エネルギ変換器は、前記標的に熱エネルギを送達する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記本体は生体適合性ポリマを含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
本体の遠位端部に複数の開口を有する可撓性の細長い当該本体と、前記開口のうちの少なくとも1つ及び前記本体の近位端部にあるポートと流体連通するルーメンと、前記本体の前記遠位端部にある単一の治療用エネルギ変換器であって、前記開口を介して血管系内部の標的に治療剤が送達されるのと同時に、前記標的に治療用エネルギを送達する当該治療用エネルギ変換器と、を含むカテーテルと、 前記治療用エネルギ変換器に動作可能に結合され、前記標的に送達されるエネルギを制御する、治療用エネルギコントローラと、 前記ポートに動作可能に結合され、前記標的への治療剤の送達を制御する、流体送達サブシステムと、を含み、 前記治療用エネルギ変換器は、前記本体の長手軸と同一線上の軸を有する螺旋の形状に配置され、当該螺旋の間の部分に前記開口が前記治療用エネルギ変換器から離れて配置される、血管系に治療を施すためのシステム。
【請求項8】
前記治療用エネルギ変換器は、少なくとも約5cmの長さである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記治療用エネルギ変換器は、前記標的に超音波エネルギを送達する、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記本体の前記遠位端部は周囲部を有し、前記治療用エネルギ変換器は前記周囲部の半分を超える部分に亘ってエネルギを送達する、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記治療剤は、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、及びテネクテプラーゼから選択される、請求項7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、参照により本明細書に全体が組み込まれる、2013年11月18日に出願された米国特許出願第61/905,351号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、血栓等の標的組織に治療剤と治療用エネルギとを同時に送達することのできる、血管カテーテル等の医療装置に関する。
【背景技術】
【0003】
血栓症は、血管内部での血餅すなわち血栓の形成によって生じる病状である。血栓は、多くの場合、弁、足、又は他の下腹部(すなわち深部静脈血栓症)において発現するが、他の血管内でも起こり得る。血餅は、典型的には、例えば人が手術の後に、又は消耗性疾患にかかって臥床しているときといった、異常に長い期間の静養に起因する静脈内部の血液の滞留によって形成される。血栓症に加え、アテローム性動脈硬化は、血管内での閉塞の形成によって生じる別の病状である。アテローム性動脈硬化は、動脈壁に沿ったアテローム物質の構築に起因する。アテローム堆積は、多種多様な特性を有し、一部の堆積は比較的柔らかく、他の堆積は線維性であり、及び/又は石灰化している。後者の場合、堆積はよくプラークと呼ばれる。多くの場合、血栓症とアテローム性動脈硬化とが血管内に両方とも存在する。例えば、血栓は、アテローム性動脈硬化のプラークの周囲で発現する。
【0004】
血栓の形成やプラークの蓄積は、死亡を含む深刻な健康問題をもたらす脳卒中又は塞栓症をもたらす恐れがある。脳卒中は、血餅又はプラークが脳に血液を供給する動脈を閉塞し、したがって脳組織から酸素を奪うときに起こる。酸素がないと、脳細胞は死滅し始める。塞栓症は、血餅が身体中を移動し、血餅自体が臓器に留まるときに起こる。例えば、肺塞栓は、深刻な低酸素症や心不全を引き起こす肺への血液供給の閉塞である。
【0005】
血栓やプラーク蓄積に直接対処するために、様々な介入カテーテル法の技術が利用可能である。これらの技術は、抗凝固薬又はスタチンの投与等の他の治療と組み合わされ得る。介入技術の多くは複雑で、先進的な医療設備、及び適切な使用のためのかなりの訓練を必要とする。更に、現在市販されている一部の介入カテーテルは、過度に複雑で壊れやすく、介入処置を時間及び費用のかかるものにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、血栓溶解剤等の治療剤と、音響エネルギ又は熱エネルギ等の治療用エネルギとを、同時に送達することのできる治療カテーテルである。したがって、本発明のカテーテルは、治療用エネルギ送達と治療剤送達とのために2つの別々のカテーテルを用いる既知の方法とは対照的に、血管系を治療するために必要とされるカテーテル交換の数を低減させる。いくつかの実施形態では、カテーテルは、ただ一つだけの治療用エネルギ変換器を含み、カテーテルのデザインを非常に単純化し、使用するのに単純で、標的組織を治療するのに有効である、よりロバストな装置をもたらす。また、このデザインは、カテーテルがより経済的に製造されることを可能にし、処置をより多くの患者に対して利用可能にする。いくつかの実施形態では、単一の治療用エネルギ変換器が、カテーテルの周囲部の2分の1よりも大きな角度分布に亘って治療用エネルギを送達する。本発明の装置は、血管系からアクセス可能な腫瘍の治療等の、治療剤の送達と治療用エネルギの送達との組合せから恩恵を受ける他の医療処置のためにも用いられ得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態では、本発明は、本体の遠位端部に複数の開口を有する可撓性の細長い本体と、開口のうちの少なくとも1つ及び本体の近位端部にあるポートと流体連通するルーメンとを有するカテーテルである。本体は、本体の遠位端部にある単一の治療用エネルギ変換器であって、開口を介して血管系内部の標的に治療剤が送達されるのと同時に、標的に治療用エネルギを送達する治療用エネルギ変換器を更に含む。開口は、治療エネルギ変換器(又は複数の治療エネルギ変換器)内に点在するか、又は開口は、治療エネルギ変換器(又は複数の治療エネルギ変換器)の遠位若しくは近位に設置されてもよい。いくつかの実施形態では、単一の治療エネルギ変換器が、カテーテルの周囲部の2分の1を超える角度分布に亘って治療エネルギを送達する。
【0008】
更に、本発明は、開示されるカテーテルを用いた治療の方法を含む。斯様な方法は、本明細書に開示されるカテーテルを、評価及び治療を必要とするものとして特定された血管の管腔(すなわち血管系)内へと挿入するステップを含む。標的組織の存在下では、例えば血栓溶解剤といった治療剤が、例えば音響エネルギといった治療エネルギと共に同時に送達される。治療の後、治療の成功のために、血管は撮像されるか又は他の態様で評価される。
【0009】
また、本発明は、血管系を治療するためのシステムを含む。実施形態では、システムは、本体の遠位端部に複数の開口を有する可撓性の細長い本体と、開口のうちの少なくとも1つ及び本体の近位端部にあるポートと流体連通するルーメンとを有するカテーテルを含む。カテーテルは、本体の遠位端部にある単一の治療用エネルギ変換器であって、開口を介して血管系内部の標的に治療剤が送達されるのと同時に、標的に治療用エネルギを送達する治療用エネルギ変換器を更に含む。システムは、治療用エネルギ変換器に動作可能に結合され、標的に送達されるエネルギを制御する治療用エネルギコントローラと、ポートに動作可能に結合され、標的への治療剤の送達を制御する流体送達サブシステムとを更に含む。実施形態では、治療エネルギ変換器は音響エネルギ変換器である。実施形態では、流体送達サブシステムはシリンジ又はポンプを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のカテーテル、及びカテーテルの機能性を制御するための関連するサブシステムを示す。
【
図2A】治療用エネルギ変換器と、治療剤を送達するための開口とのアレンジメントを示す。
【
図2B】治療用エネルギ変換器と、治療剤を送達するための開口とのアレンジメントを示す。
【
図2C】治療用エネルギ変換器と、治療剤を送達するための開口とのアレンジメントを示す。
【
図2D】治療用エネルギ変換器と、治療剤を送達するための開口とのアレンジメントを示す。
【
図3A】血管内の血栓を減らすための本発明のカテーテルの使用を示す。
【
図3B】血管内の血栓を減らすための本発明のカテーテルの使用を示す。
【
図3C】血管内の血栓を減らすための本発明のカテーテルの使用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、治療剤送達能力と治療用エネルギ送達能力とを有する、カテーテル等の医療装置を含む。特定の実施形態では、カテーテルは、カテーテルの周囲部の半分を超える部分にエネルギを送達するただ一つだけの治療用エネルギ変換器を含む。本発明の治療用カテーテルは、治療剤と治療用エネルギとの同時送達のために、より迅速で、より効率的な血栓除去を可能にする。
【0012】
本発明のカテーテルは、静脈及び動脈からの血栓又はプラークの除去等の、多数の医療処置のために利用を見出す。カテーテルは、大腿動脈又は橈骨動脈等の多くの入り口箇所を通じて送達される。カテーテルは、蛍光透視、CAT、又はMRI等の1以上の外部撮像システムを用いて治療のための領域に誘導される。典型的には、カテーテルは、ガイドワイヤに沿って、治療のための標的とされる組織まで誘導される。カテーテルは、他の処置、又は撮像カテーテル若しくは吸引カテーテル等の他のカテーテルと併用されてもよい。しかしながら、本発明のカテーテルは、病気の血管系を治療することに限定されない。カテーテルは、例えば、血管系を通じてアクセス可能な腫瘍を治療するためにも用いられ得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明のカテーテルは、血栓溶解剤、すなわち血餅、プラーク、及び/又は脂肪物質を除去、破壊、又は溶解する化学薬品又は組成物を送達するために用いられる。本発明のカテーテルと共に用いるのに適切な血栓溶解剤は、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、並びに、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、及びテネクテプラーゼ等の組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)を含む。血栓溶解剤は、連鎖球菌等、有機体から分離されて薬剤が自然に生じるか、又は血栓溶解剤は、組換えによって生成され精製されてもよい。いくつかの実施形態では、血栓溶解剤は、へパリン若しくはワルファリン(クマジン(登録商標))等の抗凝固剤、又はリバーロキサバン若しくはアピキサバン等のXa因子阻害剤と併せて投与される。
【0014】
本発明のカテーテルは、例えば血餅又は蓄積した脂肪物質を有する静脈といった治療を必要とする組織に治療用エネルギを送達するための治療用エネルギ変換器を含む。治療用エネルギは、音響エネルギ、熱エネルギ、又は電磁放射線である。したがって、所望の治療用エネルギを達成するように、適切な変換器が本発明のカテーテル内へと組み込まれる。例えば、音響エネルギは、約20kHz〜約50MHzの間で動作する超音波変換器を組み込むことによって、カテーテルの遠位端部から送達される。斯様な変換器は、APCインターナショナル(ペンシルバニア州マケイヴィル)等の供給業者から市販されている。いくつかの場合では、例えば少なくとも長さ約1cm、すなわち少なくとも長さ約2cm、すなわち少なくとも長さ約3cm、すなわち少なくとも長さ約5cmといった、カテーテルの適切な長さに亘ってエネルギを送達するために、単一のより大きな変換器が用いられる。本発明のカテーテル内への組込みに適した熱変換器は、通常、素子を加熱するために抵抗加熱を用いて、この際、素子からの熱が周囲の組織に放熱される。赤外線等の電磁放射線は、マイクロレーザ又は発光ダイオード(LED)を用いて送達される。
【0015】
ある実施形態では、本発明の装置及び方法は、体管腔から塞栓や血栓等の血餅、及び他の閉塞物質を溶解する。体管腔内の欠陥は、新たな(デノボ)血餅であるか、又は例えばステントによって引き起こされた血餅といったように以前の介入によって引き起こされ得る。しかしながら、装置及び方法は、尿管、胆管、気道、膵管、リンパ管等の他の体管腔における体管腔の狭窄、及び他の肥厚や腫瘍性の状態を治療するのにも適している。腫瘍性細胞成長は、多くの場合、腫瘍が体管腔を取り囲み体管腔内へと侵入する結果として発生する。したがって、斯様な物質への治療剤の送達は、体管腔の開存性を維持するのに有益である。残りの議論は動脈内のアテローム又は血栓性閉塞物質の治療に向けられるが、本発明のシステム、装置、及び方法は、様々な体管腔内の様々な閉塞、狭窄又は肥厚物質を治療し、及び/又は貫通するのに用いられ得ることが理解されるであろう。
【0016】
組織を治療する本発明のカテーテル10が
図1に示される。カテーテル10は、近位部16と、中間部14と、遠位部18とを有する本体を含む。カテーテル10は、カテーテル本体の最遠位の端部に設置される治療用エネルギ変換器65を含む。複数の開口45を通じて治療剤が標的血管系に送達され得る当該複数の開口45が、治療用エネルギ変換器65の反対側に設置される。
図2A乃至
図2Dに示されるように、治療用エネルギ変換器65と開口45との配向は、
図1に示される構成に限定されない。更に、治療用エネルギ変換器65と開口45とは、カテーテルの同一の長さ部分を占める必要はない。つまり、開口45が最遠位にあるか、又は治療用エネルギ変換器65が最遠位にあってもよい。
【0017】
図1に示されるように、治療用エネルギ変換器65と開口45とは、本体の外に設置されてインターフェース29を介して連結されるサブシステムに接続される。例えば、
図1に示されるように、治療用エネルギ変換器65は、標的組織に送達されるエネルギのパワー及び期間を制御する治療用エネルギコントローラ60に接続される。更に、
図1に示されるように、本体の遠位端部にある開口45は、カテーテル本体の中の内部ルーメン12を介して、近位端部にあるポート35に接続される。
図1に示されるように、ポート35は、チューブを介して、標的血管系に送達されるべき治療剤を含むリザーバ42に接続されるポンプ40を含む、流体送達サブシステムに接続される。いくつかの実施形態では、治療用エネルギコントローラ60とポンプ40とは、治療用エネルギと治療剤との送達を連係させる、より高いレベルのコントローラ(示されていない)に連結される。いくつかの実施形態では、治療用エネルギと治療剤とは同時に送達される。いくつかの実施形態では、治療用エネルギと治療剤とは、別々の時間に送達される。いくつかの実施形態では、治療剤は連続的に送達され、治療用エネルギはパルス状に送達される。いくつかの実施形態では、治療用エネルギと治療剤とは、時間と共に低減する量で送達される。
【0018】
示されていないが、本発明のカテーテルは、典型的には、カテーテルが治療の箇所に向けられることを可能にするガイドワイヤルーメンを含むことが理解される。ガイドワイヤルーメンは、カテーテルの長さがある別個のガイドワイヤルーメンである。他の実施形態では、例えば「ラピッドエクスチェンジ」ガイドワイヤルーメンといったガイドワイヤルーメンは、カテーテルの一部分の長さがあるにすぎない。ガイドワイヤルーメンは治療用送達ルーメンの上部にあるか、又はガイドワイヤチャネルは治療用送達ルーメンと並んでいてもよい。他の場合では、カテーテルの遠位部分に固定の若しくは一体型のコイル先端若しくはガイドワイヤ先端を提供するか、又はガイドワイヤ全体を省くことさえ可能である。説明の便宜のために、ガイドワイヤは全ての実施形態において示されていないが、ガイドワイヤはこれらのいかなる実施形態にも組み込まれ得ることを理解されたい。
【0019】
血管内導入を目的とするカテーテル本体は、典型的には、50cm〜200cmの範囲内の長さ、及び1フレンチ〜12フレンチ、通常は3フレンチ〜9フレンチ(1フレンチは0.33mm)の外径を有する。冠動脈カテーテルの場合、長さは典型的には125cm〜200cmの範囲内、直径は好ましくは8フレンチを下回り、更に好ましくは7フレンチを下回り、最も好ましくは2フレンチ〜7フレンチの範囲内である。
【0020】
カテーテル本体は、典型的には、従来の押出し技術によって作製される生体適合性ポリマから成る。適切なポリマは、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリコーンゴム、天然ゴム等を含む。オプションで、カテーテル本体は、回転強度、カラム強度、靭性、押出し性等を向上させるために、編組、螺旋状ワイヤ、コイル、軸方向フィラメント等を用いて強化されてもよい。適切なカテーテル本体は、押出しによって形成され、所望の場合に1以上のチャネルが提供される。カテーテル直径は、従来技術を用いて熱膨張又は熱収縮によって修正され得る。したがって、結果としてもたらされるカテーテルは、多くの場合冠動脈である血管系への従来技術による導入のために適している。
【0021】
本発明のカテーテルの遠位部分は、多種多様な形式及び構造を有する。多くの実施形態では、遠位部分は近位部分よりも剛性であるが、他の実施形態では、遠位部分は近位部分と同等に可撓性である。本発明の一態様は、剛性の低減された長さ部分を有する遠位部分を有するカテーテルを提供する。剛性の低減された長さ部分は、カテーテルが、曲がりくねった血管や小径の体管腔にアクセスし、治療することを可能にする。ほとんどの実施形態では、剛性の遠位部分又はカテーテル本体のハウジングは、カテーテル本体の近位部分と略一致する直径を有するが、しかしながら、他の実施形態では、遠位部分はカテーテルの可撓性の部分よりも大きいか、又は小さくてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、カテーテルの剛性の遠位部分に結合される、可撓性の非外傷性遠位先端を含む。例えば、一体型の遠位先端は、遠位先端とカテーテル本体との間の接合部をなくすことによってカテーテルの安全性を増大させ得る。一体型の先端は、先端内にある収集チャンバ内への組織の移動を容易にするための、より滑らかな内径を提供し得る。製造の間、ハウジングから可撓性の遠位先端への移行部は、材料のハウジングを覆うポリマラミネートを用いて仕上げられる。通常、溶接、圧着、又はねじ込みの接合部は必要とされない。非外傷性遠位先端は、カテーテルによって引き起こされる体管腔へのいかなる損傷も低減させながら、カテーテルを血管又は他の体管腔を通じて遠位に進めることを許容する。典型的には、遠位先端は、カテーテルがガイドワイヤに亘って標的組織まで誘導されることを許容する、ガイドワイヤルーメンを有する。いくつかの例示的な構成では、非外傷性遠位先端はコイルを含む。いくつかの構成では、遠位先端は丸くて鈍い遠位端を有する。
【0023】
図2A乃至
図2Dに示されるように、本発明のカテーテルのために様々な構成が用いられ得る。
図2A乃至
図2Dの各々は、治療用エネルギ変換器250と、治療剤を送達するための1以上の開口270とを含む、本発明のカテーテルの例示的な遠位端部210乃至240を示す。
図2A乃至
図2Dに示されるように、開口270の各々は、カテーテル本体を通って近位端部にあるポート(示されていない)に接続し、これにより開口270を介して治療剤が標的組織に送達されることを可能にする、ルーメン280に接続される。
図2A乃至
図2Dに示されるように、いくつかの実施形態では、カテーテルは単一治療用エネルギ変換器250を含む。本発明のカテーテルは、
図2A乃至
図2Dと類似する構成を用いて、多数の治療用エネルギ変換器250を含んでもよいことを認識されたい。
【0024】
特に、治療用カテーテル端部210は、螺旋状に巻かれた単一の治療用エネルギ変換器250を含み、開口270が先端部に沿って螺旋のコイルの間に分散される。他の実施形態では、
図2Bに示されるように、治療用カテーテル端部220は、開口部分を有してカテーテルの周囲部の半分を超えて覆う単一の治療用エネルギ変換器250を含み、開口部分で開口270が治療剤を送達する。
図2Cでは、治療用カテーテル端部230は、ダイヤパターンの開口部分を残した単一の治療用エネルギ変換器250を含み、開口部分に開口270が設置されて治療剤を送達する。
図2Dでは、治療用カテーテル端部240は、開口部分を有してカテーテルの周囲部の大部分を覆う単一の治療用エネルギ変換器250を含み、開口部分で開口270が治療剤を送達する。
【0025】
図2A乃至
図2Dに示されるカテーテル端部210乃至240は、複数の分散された治療用エネルギ変換器を含む他の治療用エネルギ/治療剤送達カテーテルよりも、少ない電気的接続を必要とする。したがって、カテーテルの遠位端部と近位端部との間に形成される接続はより少なく、装置の複雑性を低減させ、よりロバスト且つ経済的なカテーテルをもたらす。更に、低減された数の接続は、より小さな末梢静脈や末梢動脈へのアクセスに用いられ得る、より小さなカテーテルの構築を容易にする。また、低減された接続は、装置の近位での電気的接続の複雑性も低減させる。
図2A乃至
図2Dに示される構成を有する単一の治療用エネルギ変換器を用いることによって、治療用エネルギはカテーテルの周囲部の半分を超える角度分布に送達され得る。例えば、
図2A、
図2C、及び
図2Dの構成は、カテーテルの全周囲部の周りに治療用エネルギが送達されることを可能にする。
【0026】
本発明のカテーテルを用いる方法が、
図3A乃至
図3Cに示される。
図3A乃至
図3Cでは、3つの別々の治療のステップで治療用エネルギと治療剤とを送達することのできるカテーテル300が示される。
図1及び
図2A乃至
図2Dと同様に、カテーテル300は、カテーテルの遠位端部に、治療用エネルギ変換器310と開口355とを有する。(例えば
図2A乃至
図2Dに示される構成といった複数の開口355を有するカテーテルも、
図3乃至
図3Cに示される方法と共に用いられるのに適切であることを理解されたい。)内部ルーメン350は開口355に結合され、治療剤がカテーテル300の近位端部にあるポート(示されていない)から血栓370に送達されることを可能にする。
図3Aに示されるように、カテーテル300は、閉塞の場所まで動かされる。閉塞は、例えば放射線不透過性色素や蛍光透視を用いて処置の前に特定されていてもよい。閉塞の存在下では、カテーテル300を用いて治療用エネルギと共に血栓溶解剤が送達される。血栓溶解剤とエネルギとは、血栓370の部分の溶解を引き起こし、
図3Bに示されるように、狭窄した領域をカテーテル300が通過することを可能にする。カテーテル300が狭窄を通過すると、血栓溶解剤とエネルギとは、閉塞の反対側に送達され、更なる血栓370の除去をもたらす。血栓溶解剤とエネルギとを送達しながら狭窄を通ってカテーテル300を動かすことによって、
図3Cに示されるように狭窄した区間は最終的にほぼ正常に広がる。いくつかの実施形態では、カテーテル300は除去され、処置の有効性を評価するために第2の撮像カテーテル(示されていない)が用いられる。
【0027】
開示されるカテーテルは、血管系、例えば血栓、例えば深部静脈血栓症を治療するためのシステム400の一部を構成する。システム400は、前述のタイプの開口と治療用エネルギ変換器とを含むカテーテル10を含む。治療用エネルギ変換器と開口とは、例えば
図2A乃至
図2Dに示されたような様々な構成で配置されてよい。
図4に示されるように、システムは、各機能のためのサブコントローラ、すなわち治療剤送達コントローラ450と治療用エネルギコントローラ440とを更に含む。また、本発明のシステム400は、診断コントローラ438に連結される圧力、流量、又は温度センサ等の診断センサ(示されていない)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、様々なサブコントローラは、全ての機能性を連係させる全体的システムコントローラ(示されていない)に動作可能に接続される。また、全体的システムコントローラは、前述のようなシステムの様々な機能性の機能を同期させる。本発明のシステムの使用を容易にするために、全ての様々なサブコントローラの他の装置への接続性を、1つ又は2つの接続だけを用いて可能にするペイシェント・インターフェース・モジュール430に、様々なサブコントローラが接続されてもよい。いくつかの実施形態では、ペイシェント・インターフェース・モジュール430は、ペイシェント・インターフェース・モジュール430がネットワーク化された接続を介して制御されることを可能にする、ネットワークコントローラ434を含む。
【0028】
したがって、本発明は、血管系に治療剤と治療用エネルギとを同時に送達するのに用いられ得るカテーテルを含む。本発明の装置の他の使用は、本明細書の開示、請求項及び図面に鑑み、当業者に明らかであろう。
【0029】
(均等物)
本明細書に示され、説明された実施形態に加え、本発明の様々な修正及び本発明の多くの更なる実施形態が、本文書の全内容から当業者に明らかとなるであろう。本明細書の主題は、本発明の様々な実施形態及びその均等物における本発明の実施に適用され得る重要な情報、例示及び指針を含む。