(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面を参照して、本発明に係る高圧フィルタプレス式脱水装置及び本発明に係る高圧フィルタプレス式脱水装置を含む脱水処理システムについて説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明との均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0022】
(高圧フィルタプレス式脱水装置を含む脱水処理システムの構成)
図1は、高圧フィルタプレス式脱水装置1を含む脱水処理システム100の一例を示す図である。
【0023】
脱水処理システム100は、揚土部110と、前処理部120と、貯泥部130と、反応部140と、高圧脱水処理部150と、水処理部160とを有する。
【0024】
揚土部110は、受入装置111を有する。受入装置111は、振動篩を有し、トラック等の移送手段により移送された浚渫土112に含まれる流木等の所定の大きさ以上の夾雑物を除去した上で、ベルトコンベアを介して浚渫土を前処理部120に移送する。
【0025】
前処理部120は、受入トロンメル121と、砂礫除去装置122と、トロンメル用ベルトコンベア123と、砂礫用ベルトコンベア124とを有する。受入トロンメル121は、円筒形の回転部を有し、回転部を回転させて、夾雑物及び石等を除去する。砂礫除去装置122は、受入トロンメル121で夾雑物及び石等が除去された浚渫土を上下方向に振動する水平面を有するスクリーン上に案内することにより、浚渫土から砂礫を除去する。トロンメル用ベルトコンベア123は、受入トロンメル121で除去された夾雑物及び石等を夾雑物収集所に運搬する。砂礫用ベルトコンベア124は、砂礫除去装置122で除去された砂礫を砂礫収集所に運搬する。
【0026】
貯泥部130は、複数の濃度調整槽131と、複数の貯泥槽132とを有する。複数の濃度調整槽131はそれぞれ、不図示の希釈水槽を介して供給される希釈水と、砂礫除去装置122で砂礫が除去された浚渫土とを混合して泥水を生成する。複数の貯泥槽132はそれぞれ、複数の濃度調整槽131で生成された泥水を貯蔵する。複数の濃度調整槽131及び複数の貯泥槽132はそれぞれ、攪拌機を有する。攪拌機は、一定速度で回転し、泥水が沈殿することを防止する。
【0027】
反応部140は、複数の反応槽141と、複数のスラリー槽142と、低圧ポンプ143と、PAC槽144と、消石灰貯槽145とを有する。複数の貯泥槽132に接続される配管を介して、泥水が複数の貯泥槽132から複数の反応槽141へそれぞれ移送される。複数の貯泥槽132と複数の反応槽141とを接続する配管には、PAC槽144からPAC(Poly Aluminum Chloride、ポリ塩化アルミニウム)が管注入される。また、複数の反応槽141にはそれぞれ、消石灰貯槽145から消石灰が注入される。PAC及び消石灰は、脱水助剤であり、PACは反応槽141の内部で攪拌装置により泥水と攪拌されることにより、泥水中に存在する微粒子を凝集して集塊化する。また、消石灰は脱水ケーキの強度増加に寄与するものである。低圧ポンプ143は、吐出量が大きく、揚程が小さい、すなわち吐出圧が低いポンプであり、複数のスラリー槽142にそれぞれ配置される。
【0028】
高圧脱水処理部150は、高圧ポンプ151と、高圧フィルタプレス式脱水装置1と、濾水槽152と、圧油装置153とを有する。高圧ポンプ151は、吐出量が低圧ポンプ143よりも小さく、揚程が低圧ポンプ143よりも大きい、すなわち吐出圧が低圧ポンプ143よりも高いポンプであり、低圧ポンプ143と直列に配置される。高圧ポンプ151は、停止しているときは、低圧ポンプ143から移送されたスラリーを加圧せずに、高圧フィルタプレス式脱水装置1の濾室に移送する。また、高圧ポンプ151は、作動しているときは、低圧ポンプ143から移送されたスラリーを加圧して、高圧フィルタプレス式脱水装置1の濾室に圧入する。
【0029】
濾水槽152は、高圧フィルタプレス式脱水装置1の濾室での脱水処理で発生する濾水を貯蔵する水槽であり、貯蔵した濾水を不図示のポンプにより後述する水処理部160の浄化装置161に移送する。
【0030】
圧油装置153は、作動油を貯蔵する圧油タンクと、圧油タンク内部の作動油に所定の圧力を加えて圧油として吐出する圧油ポンプと、圧油ポンプから吐出された圧油を送り出す方向を選択する方向切換弁とを有する。圧油装置153は、高圧ポンプ151及び高圧フィルタプレス式脱水装置1にそれぞれ、加圧された作動油を供給することにより、高圧ポンプ151及び高圧フィルタプレス式脱水装置1をそれぞれ駆動する。
【0031】
水処理部160は、浄化装置161と、放流水槽162と、浄化剤注入装置163と、中和装置164とを有する。浄化装置161は、濾水槽152から移送された濾水と、PAC槽144から注入されるPACと、浄化剤注入装置163から注入される浄化剤とを混合して、濾水を浄化する。放流水槽162は、浄化装置161で浄化された濾水を中和装置164から注入される中和剤でpH調整をした上で、川、海等の自然界へ放流する。
【0032】
図2は、高圧ポンプ151の概念図である。
図2において、スラリーが流れる配管は実線で示され、圧油又は作動油が流れる圧油管は一点鎖線で示される。
【0033】
高圧ポンプ151は、第1ポンプ室154と、第2ポンプ室155と、第1吸入弁157aと、第1吐出弁157bと、第2吸入弁157cと、第2吐出弁157dと、定量シリンダ158と、駆動シリンダ159とを有する。
【0034】
第1ポンプ室154は、第1作動油室154pと、第1中間室154mと、第1吸吐室154wとを有する。第1作動油室154pには、定量シリンダ158の動きに応じて作動油が流入及び流出する。第1中間室154mは、不凍液が混入された液体を含み、第1作動油室154p及び第1吸吐室154wとゴム膜を介して隣接する。第1中間室154mの両端に位置するゴム膜は、第1作動油室154pに流入及び流出する作動油の流れに応じて凹凸運動を繰り返す。第1吸吐室154wは、第1中間室154mとの間に位置するゴム膜の動きに応じて、スラリーを吸入及び吐出する。
【0035】
第2ポンプ室155は、第2作動油室155pと、第2中間室155mと、第2吸吐室155wとを有する。第2作動油室155pには、定量シリンダ158の動きに応じて作動油が流入及び流出する。第2中間室155mは、不凍液が混入された液体を含み、第2作動油室155p及び第2吸吐室155wとゴム膜を介して隣接する。第2中間室155mの両端に位置するゴム膜は、第2作動油室155pに流入及び流出する作動油の流れに応じて凹凸運動を繰り返す。第2吸吐室155wは、第2中間室155mとの間に位置するゴム膜の動きに応じて、スラリーを吸入及び吐出する。
【0036】
第1吸入弁157aは、高圧ポンプ151が作動しているときは、複動形の圧油シリンダにより開閉制御される。第1吸入弁157aは、第1ポンプ室154の第1吸吐室154wにスラリーが吸入されるときに開状態となり、第1ポンプ室154の第1吸吐室154wからスラリーが吐出されるときに閉状態となる。
【0037】
第1吐出弁157bは、高圧ポンプ151が作動しているときは、複動形の圧油シリンダにより開閉制御される。第1吐出弁157bは、第1ポンプ室154の第1吸吐室154wにスラリーが吸入されるときに閉状態となり、第1ポンプ室154の第1吸吐室154wからスラリーが吐出されるときに開状態となる。
【0038】
第2吸入弁157cは、高圧ポンプ151が作動しているときは、複動形の圧油シリンダにより開閉制御される。第2吸入弁157cは、第2ポンプ室155の第2吸吐室155wにスラリーが吸入されるときに開状態となり、第2ポンプ室155の第2吸吐室155wからスラリーが吐出されるときに閉状態となる。
【0039】
第2吐出弁157dは、高圧ポンプ151が作動しているときは、複動形の圧油シリンダにより開閉制御される。第2吐出弁157dは、第2ポンプ室155の第2吸吐室155wにスラリーが吸入されるときに閉状態となり、第2ポンプ室155の第2吸吐室155wからスラリーが吐出されるときに開状態となる。
【0040】
定量シリンダ158は、駆動シリンダ159に連結される駆動軸と、駆動軸に結合される区画壁とを有する。定量シリンダ158は、駆動軸の動きに応じて、第1ポンプ室154の第1作動油室154p及び第2ポンプ室155の第2作動油室155pそれぞれに交互に作動油を流入及び流出させる。
【0041】
駆動シリンダ159は、定量シリンダ158に連結される駆動軸と、駆動軸に結合される区画壁とを有する。駆動シリンダ159は、圧油装置153から圧油管301及び302を介して供給される圧油に応じて、駆動軸を左右方向(駆動軸の軸方向)に移動させる。
【0042】
停止状態では、高圧ポンプ151は、第1吸入弁157a、第1吐出弁157b、第2吸入弁157c及び第2吐出弁157dを全て開状態にして、低圧ポンプ143から移送されたスラリーを加圧することなく、高圧フィルタプレス式脱水装置1に移送する。
【0043】
高圧ポンプ151は、作動しているときには、第1ポンプ室154及び第2ポンプ室155の内部においてスラリーを作動油で加圧して移送する。第1ポンプ室154及び第2ポンプ室155の内部で加圧されるため、高圧ポンプ151が作動することにより、高い吐出圧でスラリーを移送することが可能になる。しかしながら、高圧ポンプ151の吐出量は、第1吸吐室154w及び第2吸吐室155wの容量に依存するため、低圧ポンプ143の吐出量よりも小さくなる。高圧ポンプ151が作動しているとき、低圧ポンプ143から吐出され且つ高圧ポンプ151に吸入されないスラリーは、不図示の戻り弁を介してスラリー槽142に戻る。
【0044】
図3は、高圧脱水処理部150の部分拡大図である。
図3において、スラリー又は濾水が流れる配管201〜204は実線で示され、圧油が流れる圧油管301〜304は一点鎖線で示される。
【0045】
(高圧フィルタプレス式脱水装置の構成)
高圧脱水処理部150の一部である高圧フィルタプレス式脱水装置1は、複数の濾板10と、濾板駆動部102と、圧力計103とを有する。複数の濾板10はそれぞれ、隣接する濾板10との間に複数の濾室を形成する。濾板駆動部102は、圧油装置153から圧油管303及び304を介して供給される圧油により複数の濾板10を、濾板10に直交する軸方向に移動するように制御される。濾板駆動部102に圧油が圧入されると、複数の濾板10は互いに密接して配置されて、隣接する濾板10の間に複数の濾室が形成される。濾板駆動部102から圧油が排出されると、複数の濾板10は互いに所定の間隔を空けて配置される。圧力計103は、ダイアフラム圧力計であり、濾室内部の圧力を検出する。圧力計103が検出した濾室圧力に基づいて脱水処理が終了したか否かが判定される。
【0046】
図4は高圧フィルタプレス式脱水装置1で使用する濾板10の一例の斜視図である。
【0047】
高圧フィルタプレス用の濾板10は、方形状の樹脂板11及び裏面樹脂板12と、樹脂板11及び裏面樹脂板12の両方の側面の上部に配置される一対の把手部17及び18とを有する。
【0048】
樹脂板11は、樹脂材料で形成された板状の樹脂であり、スラリーの濾過に用いる濾過面11aと、濾過面11aの周囲を囲う額縁部11bと、ボス部11cとを有する。すなわち、濾過面11a、額縁部11b及びボス部11cは樹脂板11に形成されている。
【0049】
濾過面11aは、凸形状の溝形成部11aaと、溝形成部11aaに囲まれた複数の底面部11adとを含む面である。底面部11adの外縁は溝形成部11aaにより形成される。濾過面11aは、隣接する濾板の濾過面との間に濾室を形成する。濾過面11aの中央部には、スラリーを圧入するための貫通孔14が形成される。
【0050】
額縁部11bは濾過面11aを囲む枠状の形状を有する面である。額縁部11bの枠状の面の内側の縁は、濾過面11aの外縁を形成する。また、額縁部11bは、プレス時に隣接する濾板10の裏面額縁部12bと濾布を介して接触する。なお、額縁部11bは樹脂材料で形成されており、樹脂自体に柔軟性があるため、濾板10同士を近接して配置した際に額縁部11bと裏面額縁部12bとの間に不要な隙間は生じない。このため、金属製の額縁部同士を用いる際に必要なゴム製のシール材を、額縁部11b及び裏面額縁部12bに配置する必要はない。
【0051】
ボス部11cは濾過面11aから突起し、濾過面11aの外縁の内側に形成され、濾過面11aと一体を成している。ボス部11cの形状は円形である。ボス部11cは、プレス時に隣接する濾板10の裏面ボス部12cと濾布を介して接触して、濾室内に圧力が印加されたときに濾板10が湾曲することを防止する。
【0052】
裏面樹脂板12は、樹脂材料で形成された板状の樹脂であり、スラリーの濾過に用いる裏面濾過面12aと、裏面濾過面12aの周囲を囲う裏面額縁部12bと、裏面ボス部12cとを有する。すなわち、裏面濾過面12a、裏面額縁部12b及び裏面ボス部12cは裏面樹脂板12に形成されている。裏面濾過面12aの向きが樹脂板11の濾過面11aの向きと反対になるよう、裏面樹脂板12は濾板10に配置される。すなわち、濾板10において、裏面濾過面12a及び裏面額縁部12bは、濾過面11a及び額縁部11bを含む樹脂板11の面を含む濾板10の1つの面の裏面に配置される。
【0053】
裏面濾過面12aは、凸形状の裏面溝形成部12aaと、裏面溝形成部12aaに囲まれた複数の裏面底面部12adとを含む面である。裏面底面部12adの外縁は裏面溝形成部12aaにより形成される。裏面濾過面12aは、隣接する濾板の濾過面との間に濾室を形成する。裏面濾過面12aの中央部には、スラリーを圧入するための貫通孔14が形成される。
【0054】
裏面額縁部12bは裏面濾過面12aを囲む枠状の形状を有する面である。裏面額縁部12bの枠状の面の内側の縁は、裏面濾過面12aの外縁を形成する。また、裏面額縁部12bは、プレス時に隣接する濾板10の額縁部11bと濾布を介して接触する。
【0055】
裏面ボス部12cは裏面濾過面12aから突起し、裏面濾過面12aの外縁の内側に形成され、裏面濾過面12aと一体を成している。裏面ボス部12cの形状は円形である。裏面ボス部12cは、プレス時に隣接する濾板10のボス部11cと濾布を介して接触して、濾室内に圧力が印加されたときに濾板10が湾曲することを防止する。
【0056】
一対の把手部17及び18はそれぞれ、下端部で、高圧フィルタプレス式脱水装置1の支持部により支持される。
【0057】
図5は濾過面11aに濾布60が配置された濾板10の斜視図である。
【0058】
濾板10は、不図示の結合部材により支持部材50と結合される。支持部材50は、鉄からなり、円筒状の形状を有する。支持部材50は、一対の把手部17及び18と共に、濾板10を支持する。
【0059】
濾布60は、濾板10及び支持部材50の一部を覆うように配置される。
【0060】
図6(a)は
図5の矢印第1方向から見た、濾布60を装着した濾板10の正面図であり、
図6(b)は
図5の矢印第2方向から見た、濾布60を装着した濾板10の背面図である。
【0061】
濾布60は第1濾布60aと第2濾布60bとを含む。濾板10の一方の濾過面には第1濾布60aが配置され、濾板10の他方の濾過面には第2濾布60bが配置される。第1濾布60a及び第2濾布60bはそれぞれ、ナイロンで織成された方形の形状を有する。第1濾布60a及び第2濾布60bの中央部には、貫通孔14に対応する穴が設けられ、濾室内へのスラリーの圧入を可能とする。第1濾布60a及び第2濾布60bは、額縁部11b及び裏面額縁部12bに固定部材60cによって固定される。
【0062】
図7(a)は
図5の矢印C方向からみた濾板10の側面図であり、
図7(b)は
図5の矢印D方向からみた濾板10の平面図である。
【0063】
第1濾布60a及び第2濾布60bは、一辺においてファスナ60dで互いに接合されている。
【0064】
図8(a)は
図4に示す濾板10の樹脂板11の平面図であり、(b)は(a)のB−B´線に沿う断面図であり、(c)は(a)のC−C´線に沿う断面図である。
図8(d)は(a)のD−D´線に沿う断面図であり、(e)は(a)のE−E´線に沿う断面図である。
図9は
図4に示す濾板10の分解斜視図である。但し、
図9において把手部17及び18の記載は省略している。
【0065】
樹脂板11と裏面樹脂板12との間には、
図8(b)〜(e)及び
図9に示すように鋼板13が配置されている。鋼板13は、樹脂板11と裏面樹脂板12との間に、額縁部11bと裏面額縁部12bとの間から貫通孔14の近傍にかけて配置される。鋼板13は、例えば引張強さ590〜710N/mm
2の高張力鋼板であり、濾室内に圧力が印加される脱水時に濾板10が湾曲することを防止する。濾板10が湾曲しない圧力で脱水する場合、鋼板13として引張強さのより弱い鋼板、例えばSS400等の鋼板を使用してもよい。
【0066】
樹脂板11及び裏面樹脂板12は、
図8(a)〜(e)及び
図9に示すように鋼板13の周囲すべてを覆い、ボルト15により固定される。樹脂板11と裏面樹脂板12との間から水分等が濾板10の内部に入ることを防止するため、樹脂板11と裏面樹脂板12との接触面に、例えばニトリルゴム等、合成ゴム製のOリング16が配置されても良い。鋼板13の外周を囲むOリング16及び鋼板13の内周(貫通孔14の周囲)を囲むOリング16は、どちらもボルト15と鋼板13との間に配置される。これにより、鋼板13は樹脂板11及び裏面樹脂板12を含む樹脂材料により封止され、鋼板13の腐食は防止される。さらに、樹脂板11にボルト15を埋め込んだ後に残る孔は、ポリプロピレンなどの樹脂材料により埋められる。これにより、濾板10の表面全体が樹脂製となる。
【0067】
(濾過面11aの構成)
樹脂板11の濾過面11aは、
図8(a)に示すように、第1溝形成部11abと、第2溝形成部11acと、底面部11adと、ボス部底面部11aiと、貫通孔底面部11ajとを有する。第1溝形成部11abと第2溝形成部11acとは、
図4に示す溝形成部11aaの一部であり、これらを総称して溝形成部と記載することがある。
【0068】
特に断りがない限り、樹脂板11に関する説明は、裏面樹脂板12についても同様に適用される。
【0069】
溝形成部は、スラリーから生成される脱水ケーキに溝を形成するための構造であり、凸形状を有する。脱水ケーキに形成された溝は、脱水ケーキを所定の形状に分割しやすくする効果を奏する。
【0070】
濾過面11aに含まれる溝形成部である溝形成部11aaは、第1溝形成部11abと、第2溝形成部11acとを含む。
【0071】
第1溝形成部11abは、
図8(a)中で平行な二辺が濾板10の上下方向に延びる台形で表現される部分である。第2溝形成部11acは、
図8(a)中で平行な2辺が濾板10の左右方向に延びる台形で表現される部分である。
【0072】
底面部11adは、濾過面11aに含まれる面であり、溝形成部11aaによりその外縁が形成される。底面部11adは濾過面11aに複数含まれる。
図8(a)の例では、底面部11adは、2つの第1溝形成部11abと2つの第2溝形成部11acとにより囲まれる方形で表現される部分である。底面部11adの形状は、
図8(a)の例では正方形だが、長方形、平行四辺形等、他の形状でも良い。
【0073】
本明細書において、第1溝形成部11abの延伸する方向を第1方向、第2溝形成部11acの延伸する方向を第2方向と称する。
図8(a)の例では、第1溝形成部11abの平行な二辺が延伸する方向(上下方向)が第1方向、第2溝形成部11acの平行な二辺が延伸する方向(左右方向)が第2方向である。なお、例えば第1溝形成部11ab及び第2溝形成部11acを
図8(a)の例に対してそれぞれ所定の角度だけ回転させて濾過面11aに形成してもよい。また、第1方向及び第2方向は、異なる方向であれば、直交する方向でなくてもよい。
【0074】
第1溝形成部11abの台形の平行な二辺に直交する平面における断面は、
図8(b)に示すように直角三角形である。2つの第1溝形成部11abの台形の長辺同士が接するように形成される箇所においては、2つの第1溝形成部11abが一体となり、その断面は二等辺三角形となる。
【0075】
第2溝形成部11acの断面は、第1溝形成部11abの断面と同様に直角三角形である。2つの第2溝形成部11acの台形の長辺同士が接するように形成される箇所においては、2つの第2溝形成部11acが一体となって、その断面は二等辺三角形となる。
【0076】
底面部11adからの高さについては、第1溝形成部11ab及び第2溝形成部11acの最も高い部分の高さは、額縁部11bの高さより低い。
【0077】
2つの第1溝形成部11abと、2つの第2溝形成部11acと、これらにより囲まれる底面部11adとにより、スラリーから生成された脱水ケーキを収容する凹形状の収容部11ahが形成される。収容部11ahは、濾過面11a上に複数個形成される。複数の収容部11ahは、縦横に格子状に形成されても、隣接する収容部11ahと上下方向又は左右方向にずれて形成されても、他の収容部11ahとの間に間隔を空けて形成されてもよい。
【0078】
ボス部11cの周囲には濾過面11aの一部である斜面が形成され、斜面の周囲には多角形状のボス部底面部11aiが形成される。ボス部底面部11aiは、底面部11adと同一平面上に形成される。額縁部11b及びボス部11cが前述した湾曲防止機能を発揮するため、ボス部底面部11aiからボス部11cまでの高さと、ボス部底面部11aiから額縁部11bまでの高さとは等しいことが好ましい。
【0079】
濾過面11aの中央部には貫通孔14が形成されており、貫通孔14の周辺に貫通孔底面部11ajが形成される。貫通孔底面部11ajは、底面部11ad及びボス部底面部11aiと同一平面上に形成される。
【0080】
第1溝形成部11ab、第2溝形成部11ac、底面部11ad、ボス部底面部11ai及び貫通孔底面部11ajを含む濾過面11aと、額縁部11bと、ボス部11cとは、樹脂により一体として形成されている。これらの形状は、樹脂板11を切削して形成されても、金型を用いて形成されてもよい。
【0081】
第1溝形成部11ab、第2溝形成部11ac、及び底面部11adを一体として形成することにより、脱水ケーキが濾板から剥離した後に、スラリーに含まれる微細な土粒子及び水分が濾板と溝形成部材との間等に滞留することを軽減できる。また、第1溝形成部11ab、第2溝形成部11ac及びボス部11cを一体として形成することにより、これらが別個に設けられているときとは異なり、それぞれの位置が重複しないよう使用時に調整することが不要となる。また、第1溝形成部11ab、第2溝形成部11ac及び額縁部11bを一体として形成することにより、額縁部11b、第1溝形成部11ab及び第2溝形成部11acの相対的な位置を濾板10の使用時に調整することが不要となる。
【0082】
(高圧フィルタプレス式脱水装置による脱水処理)
図10は、濾板10を使用する高圧フィルタプレス式脱水装置1による脱水処理工程を示す図である。図(a)は準備工程を示し、(b)は濾過工程を示し、(c)は残液処理工程を示し、(d)は開枠工程を示す図である。
【0083】
まず、
図10(a)に示す準備工程において、濾板駆動部102に圧油が圧入され、複数の濾板10A〜10Cが近接して配置されることにより、複数の濾室が形成される。複数の濾板10A〜10Cの濾過面にはそれぞれ、濾布60が配置される。複数の濾板10A〜10Cの濾過面に濾布60がそれぞれ配置されるので、濾板10A〜10Cが近接して配置されることにより形成される濾室は、端面に濾布が挟着された構成になる。
【0084】
次いで、
図10(b)に示す濾過工程において、低圧ポンプ143及び高圧ポンプ151からスラリー401が濾室に圧入される。スラリーが圧入されることにより、濾布60は濾板10A〜10Cの溝形成部11aa及び裏面溝形成部12aaに密着する。
【0085】
濾室の内部では脱水されたスラリーから脱水ケーキ403が徐々に形成される。脱水ケーキ403が徐々に形成され始めると、濾室に圧入されたスラリーの水分は、濾布60を透過して、濾板10A〜10Cの濾過面11a及び裏面濾過面12aの方向に流れ始める。溝形成部11aa及び裏面溝形成部12aaの近傍の水分は、隣接する収容部11ah及び裏面収容部12ahに流れ出す。隣接する収容部11ah及び裏面収容部12ahに流れ出した水分は、最終的には濾過面11a及び裏面濾過面12aから濾板10A〜10C内部に形成される濾水溝11ba及び裏面濾水溝12baを経由して、濾板10の外部に濾水402として排出される。
【0086】
濾板10の外部に排出された濾水402は、濾水槽152に貯蔵される。濾水槽152に貯蔵された濾水402は、不図示のポンプによって、水処理部160の浄化装置161に移送される。濾過工程は、高圧フィルタプレス式脱水装置1の濾室の内部の圧力が4〔MPa〕に達するまで続けられる。高い吐出圧を有する高圧ポンプ151で高圧フィルタプレス式脱水装置1の濾室の内部にスラリーを圧入するため、高圧フィルタプレス式脱水装置1の濾室の内部の圧力を4〔MPa〕まで高めることができる。高い圧力で脱水ケーキ403を生成することにより、浚渫土を大幅に減容化することができる。
【0087】
また、脱水ケーキ403には、濾板10A〜10Cの溝形成部11aa及び裏面溝形成部12aaの形状に対応する溝が形成される。
【0088】
次いで、
図10(c)に示す残液処理工程において、低圧ポンプ143及び高圧ポンプ151が停止した後に、圧入されたスラリー401の残液が濾室からエアブロー404によって排出される。スラリー401の残液が濾室から排出されると、濾板10と隣接する濾板10との間には固形物である脱水ケーキ403が濾室の内部側面に挟持された状態で残る。
【0089】
そして、
図10(d)に示す開枠工程において、濾板駆動部102から圧油が排出され、複数の濾板10は互いに所定の間隔を空けて配置される。複数の濾板10が互いに所定の間隔を空けて配置されると、一対の濾板10に挟持されていた脱水ケーキ403は下方に落下する。脱水ケーキ403は、下方に存在する不図示の処理土ピットに落下する。処理土ピットの床又は既に落下した脱水ケーキ403と衝突した際の衝撃により、脱水ケーキ403は、溝形成部11aa及び裏面溝形成部12aaに対応する溝で切断される。これにより、脱水ケーキ403は所定の形状を有する一群の脱水ケーキに分割される。
【0090】
なお、所定の位置でより確実に脱水ケーキ403を分割するためには、脱水ケーキ403の一方の面に形成される溝と、脱水ケーキ403の他方の面に形成される溝とが対向することが好ましい。このため、濾板10A〜10Cの濾過面11a及び裏面濾過面12aに、溝形成部11aa及び裏面溝形成部12aaを互いに対向するよう形成することが好ましい。対向する濾過面11a及び他の濾板の裏面濾過面12aの形状は、上下が同じで左右が反対の鏡像の関係を有する。
【0091】
ただし、脱水ケーキ403を分割すべき部分が他の部分と比較して十分薄ければ、溝同士が対向することは必須ではない。このため、例えば濾板10Aの濾過面11aのみに溝形成部を設け、対向する濾板10Bの裏面濾過面12aは平面であってもよい。また、一対の樹脂板11及び裏面樹脂板12を含む濾板10の場合、少なくとも1つの樹脂板に濾過面、溝形成部及び額縁部が形成され、他方の樹脂板には溝形成部が形成されなくてもよい。
【0092】
また、樹脂板11に溝形成部11aa及び底面部11adを形成することは、鉄板に溝形成部11aa及び底面部11adを形成することに比べて、溝形成部11aaの形及び位置を自由に形成しやすい点で優れている。これにより、溝形成部11aa及び底面部11adにより形成される収容部11ahの形状、すなわち所定の形状を有する脱水ケーキの形状を、規格で定まる砕石の様々な形状に合わせることが容易になる。
【0093】
(第1変形例)
図11は、第1変形例に係る樹脂板11の平面図である。第1変形例に係る樹脂板11を有する濾板10は、収容部11ahとその収容部11ahに隣接する他の収容部11ahとを通水可能なように接続する通水路を溝形成部11aaが有する点で、実施例1に係る濾板10と異なる。
【0094】
溝形成部11aaに形成される通水路である通水路11akは、縦通水路11am(第2通水路)と、横通水路11an(第1通水路)とを含む。以下に示すように、通水路11akは、底面部11ad及び溝形成部11aaにより形成された凹形状の収容部11ahと、収容部11ahに隣接する他の収容部11ahとを通水可能なように接続する。
【0095】
縦通水路11amは、第2溝形成部11acに形成され、第1方向に延伸する通水路である。縦通水路11amは、第1方向に隣接して形成される凹形状の収容部11ah同士、又は収容部11ahと貫通孔底面部11ajが形成する空間とを通水可能なように接続する。
【0096】
横通水路11anは、第1溝形成部11abに形成され、第2方向に延伸する通水路である。横通水路11anは、第2方向に隣接して形成される凹形状の収容部11ah同士、又は収容部11ahと貫通孔底面部11ajが形成する空間とを通水可能なように接続する。
【0097】
樹脂板11の一番下にある、第2溝形成部11acの斜面上及び額縁部11b上には、第1方向に延伸する濾水溝11baが所定の深さで形成される。濾水溝11baは、濾板10の最下部に形成されたすべての収容部11ahに対して形成することが好ましい。
【0098】
脱水時において、収容部11ahから排出される水分は、縦通水路11amを経由して下方に隣接する収容部11ahに流出し、最下部にある収容部11ahからは濾水溝11baを経由して濾板10の外部に濾水として排出される。また、何らかの理由により収容部11ahからその下方にある収容部11ahに水分が流れない場合、その水分は横通水路11anを経由して、左右方向に隣接する収容部11ahに流れる。これにより、隣接する収容部11ahからその下方にある収容部11ahに水分が流れ、水分は最終的に濾板10の外部に濾水として排出される。
【0099】
通水路に冗長性を持たせるため、以下の構成を用いてもよい。
【0100】
貫通孔底面部11ajの下方に隣接する収容部11ahの例では、この収容部11ahの下部の1つの第2溝形成部11acと隣接して、第2の収容部11ap及び第3の収容部11aqが形成されている。また、この第2溝形成部11acには、収容部11ahと第2の収容部11apとを通水可能なように接続する縦通水路11amと、収容部11ahと第3の収容部11aqとを通水可能なように接続する他の縦通水路11amとが形成されている。
【0101】
同様に、貫通孔底面部11ajの横方向に隣接する収容部11ahの例では、1つの第1溝形成部11abに形成された複数の横通水路11anの一部の通水路は、第1溝形成部11abに隣接する収容部11ahに通水可能である。この際、複数の横通水路11anの他の一部の通水路は、第1溝形成部11abに隣接する他の収容部11ahに通水可能であってもよい。
【0102】
これらの構成により、1つの第1溝形成部11ab又は第2溝形成部11acに隣接する複数の収容部11ahの一部から水分が流れない場合でも、他の収容部11ahを経由して水分を流すことが可能となる。
【0103】
なお、通水路11akは、第1溝形成部11ab及び第2溝形成部11acの少なくとも一方に形成されてもよい。また、ボス部底面部11aiに隣接する第1溝形成部11ab及び第2溝形成部11acには、横通水路11an及び縦通水路11amが形成されなくてもよい。
【0104】
図12(a)は通水路11akを有する溝形成部11aaの平面図であり、(b)及び(c)は(a)の斜線部に対応する部分の斜視図である。
図12(b)及び(c)において、通水路11akの底面は斜線で示される。通水路11akは、
図12(b)に示すように、溝形成部11aaの斜面に沿って所定の深さで形成されてもよいし、
図12(c)に示すように、溝形成部11aaの底面と平行に形成されてもよい。
図12(a)〜(c)には、通水路11akが1つの溝形成部11aaに2本形成される例が記載されているが、通水路11akが1つの溝形成部11aaに4本程度形成されることが好ましい。
【0105】
図12(a)において、溝形成部11aaの台形の長辺が90mm、台形の高さが40mm程度の場合、通水路11akの幅及び深さは、それぞれ3.5mm〜4.0mm程度であることが好ましい。また、溝形成部11aaの傾斜面の面積に対する通水路11akの開口面の面積の比率は、0.8%以上にすることが好ましい。また、溝形成部11aaの傾斜面の面積に対する通水路11akの開口面の面積の比率の上限は、溝形成部11aaを形成する部材の硬度により決定される。
【0106】
図12(d)は通水路11akを有する2つの溝形成部11aaが一体となった部分の平面図であり、(e)及び(f)は(d)の斜線部に対応する部分の斜視図である。
図12(e)及び(f)において、通水路11akの底面は斜線で示される。2つの溝形成部11aaそれぞれに形成される通水路11akは、
図12(e)のように二等辺三角形の頂点付近で接続されても、
図12(f)のように溝形成部11aaの底面付近で接続されてもよい
【0107】
裏面濾過面12aに形成される裏面溝形成部12aa及び裏面通水路12akの構造は、濾過面11aに形成される溝形成部11aa及び通水路11akの構造と同様である。
【0108】
(通水路の作用)
図13(a)は、溝形成部に通水路が形成されていない濾板10を使用する濾過工程における濾室内のスラリー及び水の流れを示す図である。
図13(b)は、溝形成部に
図12(e)に示す通水路が形成された濾板10を使用する濾過工程における濾室内のスラリー及び水の流れを示す図である。
図13(a)及び13(b)においてスラリーの流れは実線矢印Aで示され、水の流れは破線矢印Bで示される。
【0109】
図13(a)に示すように、スラリーが濾室内に打ち込まれるとき、濾板10から離れた濾室の中央部分から徐々に脱水され、スラリーに含まれる水分は、濾布60を透過して濾布60と濾板10との間から排出される。しかしながら、溝形成部材の近傍では、濾布60は、溝形成部11aa及び裏面溝形成部12aaの表面に接触する。濾布60が溝形成部11aa及び裏面溝形成部12aaの表面に接触するため、溝形成部11aa及び裏面溝形成部12aaの近傍に水溜りCが形成される。水溜りCが形成されると、濾室内にスラリーが高圧で圧入されても水溜りCの水圧により、脱水が阻害されるおそれがある。水溜りCが形成されなかったため良好に脱水された脱水ケーキと、水溜りCの水圧により脱水が阻害された脱水ケーキとが混在すると、生成される脱水ケーキの含水比が不均一になる。
【0110】
通水路が形成された濾板10を使用する場合、溝形成部11aaの近傍の水分は通水路11akを介して隣接する収容部11ahに流出し、裏面溝形成部12aaの近傍の水分は裏面通水路12akを介して隣接する裏面収容部12ahに流出する。溝形成部11aa及び裏面溝形成部12aaの近傍の水分が隣接する収容部11ah及び裏面収容部12ahに流出することで、溝形成部11aa及び裏面溝形成部12aaの近傍に水溜りが形成されることを防止することができる。溝形成部11aa及び裏面溝形成部12aaの近傍に水溜りが形成されることを防止することで、高圧フィルタプレス式脱水装置1は、形状及び含水比が均一な一群の脱水ケーキを形成することができる。
【0111】
通水路が形成された濾板10を使用して生成される一群の脱水ケーキは、形状及び含水比が均一であり、十分な強度を有すると共に粒度が均一になるので、高強度及び粒度の均一性が要求される人工骨材として再利用できる。
【0112】
また、通水路が形成された濾板10を使用して生成される脱水ケーキは、生成されるときに溝形成部11aa及び裏面溝形成部12aaの近傍の水分が通水路11ak及び裏面通水路12akを介して排出されるので、含水比を低くすることができる。
【0113】
また、通水路が形成された濾板10を使用する場合、収容部11ahと第1方向に隣接する収容部11ahとの間に縦通水路11amが形成され、収容部11ahと第2方向に隣接する収容部11ahとの間に横通水路11anが形成される。この場合、収容部11ahのそれぞれが通水路を介して隣接する収容部11ahと通水可能であるので、何れかの通水路が目詰まりした場合でも他の通水路を介して排水することができる。
【0114】
また、通水路11akが形成される溝形成部11aa、溝形成部11aaが形成される濾過面11a、濾過面11aを囲む額縁部11b、濾過面11aと一体を成すボス部11cは樹脂板11に形成されている。このため、濾板10が金属製の場合のように、錆等が濾板10上、特に濾過面11a上で発生することがなく、発生した錆等が通水路11akを塞ぐことによる通水不良を防止することができる。
【0115】
(第2変形例)
図14(a)は第2変形例に係る濾板20の部分拡大平面図であり、(b)は(a)のB−B´線に沿う断面図であり、(c)は(a)のC−C´線に沿う断面図である。
【0116】
第2変形例に係る濾板20は、以下の4点において第1変形例の濾板10と異なる。
【0117】
第1の相違点は、濾板20が樹脂板21により一体として形成されており、その内部に鋼板13等の補強板を含まない点である。
図14(b)及び(c)に示す通り、濾板20は1枚の樹脂板21により形成されている。樹脂板21は例えばポリプロピレン製であり、第1溝形成部11ab、横通水路11an、底面部11ad等の表面形状は、ポリプロピレン製の板を切削して形成される。濾板20が1枚の樹脂板21から形成されることにより、2枚の樹脂板を固定するためのボルト15、2枚の樹脂板の隙間から水分が入ることを防止するためのOリング16は不要となる。
【0118】
濾板20が樹脂で一体として形成されていることにより、内部に鋼板等を含む場合と比べて軽量化することが可能であり、これにより濾板の取扱いの際の安全性が高くなり、輸送コストが低減できる。また、濾板20は鋼板等の金属部分を含まないため、腐食及び錆が発生しない。また、シール性が高いため、濾板20はメンテナンスフリーとなる。また、濾板20は樹脂製のため、形状作成の自由度が高いという利点を有する。
【0119】
第2の相違点は、底面部11adに底面部通水路21aeが形成されている点である。底面部通水路21aeは底面部11adに形成された溝であり、第1方向に延伸する第1底面部通水路21afと第2方向に延伸する第2底面部通水路21agとを含む。また、縦通水路11am、横通水路11an、第1底面部通水路21af及び第2底面部通水路21agは、互いに接続されてもよい。
図14(a)に示す例においては、5本の縦通水路11am及び3本の横通水路11anは、第1底面部通水路21af及び第2底面部通水路21agと接続するように形成されている。これにより、
図10(b)に示す濾過工程において、濾布60と濾過面11aとの間の空間である通水路11ak及び底面部通水路21aeを経由して、スラリーの水分は濾板20の下方へ容易に移動する。
【0120】
第3の相違点は、濾水溝21baが樹脂板21の内部を貫通する点である。
図14(a)及び(c)に示す通り、濾水溝21baは、底面部通水路21aeから樹脂板21の反対面方向(
図14(c)において左から右への方向)に延伸し、樹脂板21の中央部付近から下方向に延伸し、樹脂板21の外部に接続する。この際、濾水溝21baは、濾板20の最下部の底面部11adに形成された底面部通水路21aeのうち、最下部の第2底面部通水路21agに形成されることが好ましい。また、
図14(c)に示す通り、濾水溝21baは、樹脂板21の反対面側に形成された裏面濾水溝22baと接続してもよい。
【0121】
第4の相違点は、額縁部11bに近接する第1溝形成部11ab及び第2溝形成部11acの底面部11adからの高さが、他の位置に形成された第1溝形成部11ab及び第2溝形成部11acの底面部11adからの高さと同じ点である。これにより、額縁部11bに隣接する収容部11ahの形状を、より濾板内部に形成された収容部11ahの形状に近づけることが可能となり、各収容部11ahにより形成された脱水ケーキ403の形状を揃えることが可能となる。
【0122】
(その他の変形例)
第1溝形成部11ab及び第2溝形成部11acの断面形状は、三角形に限らず、底面部11adからの高さが高くなるほど幅が狭くなる形状であれば、台形等、その他の多角形の形状であってもよい。
【0123】
また、第1濾布60aと第2濾布60bとは、それぞれの一辺がファスナ60dで互いに接合されると共に、固定部材60cによって単一の濾板10に固定されている。しかしながら、第1の濾板の濾過面に配置される第1濾布60aと、第2の濾板の第1の濾板に対向する濾過面に配置される第2濾布60bとにより一対の濾布セットを形成してもよい。この場合、第1濾布60aと、第2濾布60bとは貫通孔14を介して接続されてもよい。
【0124】
また、縦通水路11am及び横通水路11anは、
図11上で上下方向及び左右方向に通水するよう形成される例を記載したが、これに限らず、第1方向及び第2方向に通水するものであってもよい。