(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0010】
〔電池用非水電解液〕
本開示の電池用非水電解液(以下、単に「非水電解液」ともいう)は、
芳香族炭化水素基を有するボロン酸(以下、「特定ボロン酸」ともいう)と、
非水溶媒の全量に対するフッ素化環状カーボネートの含有量(以下、単に「フッ素化環状カーボネートの含有量」ともいう)が0体積%超8体積%以下である非水溶媒と、
を含有する。
【0011】
本開示の非水電解液によれば、満充電状態の電池を高温保存した場合の電池の体積変化を抑制できる。
即ち、本開示の非水電解液を含む電池を満充電状態で高温保存した場合、この電池の、高温保存による体積変化が抑制される。
【0012】
本開示の非水電解液による上記効果(即ち、満充電状態の電池を高温保存した場合の電池の体積変化を抑制できるという効果。以下、「電池の体積変化抑制効果」ともいう。)は、特定ボロン酸と、非水溶媒の全量に対する含有量が0体積%超8体積%以下であるフッ素化環状カーボネートと、の組み合わせによって特異的に発揮される効果である。
即ち、特定ボロン酸を含有し、かつ、非水溶媒としてのフッ素化環状カーボネートを含有しない非水電解液を用いた場合(例えば、後述の比較例1)には、本開示の非水電解液を用いた場合と比較して、電池の体積変化が大きくなる。
また、特定ボロン酸及び非水溶媒としてのフッ素化環状カーボネートを含有し、かつ、非水溶媒の全量に対するフッ素化環状カーボネートの含有量が8体積%超である非水電解液を用いた場合(例えば、後述の比較例2)には、本開示の非水電解液を用いた場合と比較して、電池の体積変化が大きくなる。
【0013】
また、本開示の非水電解液は、フッ素化環状カーボネートの含有量が0体積%超8体積%以下である非水溶媒を含有し、かつ、特定ボロン酸を含有しない非水電解液(例えば、後述の比較例3)と比較して、電池の初期放電容量を上昇させる効果にも優れる。
【0014】
以下、本開示の非水電解液の各成分について説明する。
【0015】
<非水溶媒>
本開示の非水電解液は、フッ素化環状カーボネートの含有量(即ち、非水溶媒の全量に対するフッ素化環状カーボネートの含有量)が0体積%超8体積%以下である非水溶媒を含有する。
【0016】
(フッ素化環状カーボネート)
フッ素化環状カーボネートとしては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、3−トリフルオロメチルエチレンカーボネート(TFPC)、trans−ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)等が挙げられ、FECが特に好ましい。
【0017】
フッ素化環状カーボネートの含有量は、0体積%超8体積%以下である。
前述のとおり、この範囲で、特異的に、電池の体積変化抑制効果が発揮される。
フッ素化環状カーボネートの含有量は、電池の体積変化抑制効果をより効果的に発揮させる観点から、1体積%〜8体積%がより好ましく、2体積%〜7体積%が更に好ましい。
【0018】
(その他の非水溶媒)
フッ素化環状カーボネート以外のその他の非水溶媒(本明細書では、単に「その他の非水溶媒」とも称する)としては、種々公知のものを適宜選択することができる。
その他の非水溶媒としては、環状の非プロトン性溶媒及び鎖状の非プロトン性溶媒から選ばれる少なくとも一方を用いることが好ましい。
電池の安全性の向上のために、溶媒の引火点の向上を志向する場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。
【0019】
−環状の非プロトン性溶媒−
環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状カルボン酸エステル、環状スルホン、環状エーテルを用いることができる。
本明細書において、単に「環状カーボネート」という場合は、フッ素化環状カーボネート以外の環状カーボネートを意味するものとする。
【0020】
環状の非プロトン性溶媒は単独で使用してもよいし、複数種混合して使用してもよい。
環状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%〜100質量%、さらに好ましくは20質量%〜90質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%である。このような比率にすることによって、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
【0021】
環状カーボネートの例として具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、誘電率が高いエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートが好適に使用される。負極活物質に黒鉛を使用した電池の場合は、エチレンカーボネートがより好ましい。また、これら環状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0022】
環状カルボン酸エステルとして、具体的にはγ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、あるいはメチルγ−ブチロラクトン、エチルγ−ブチロラクトン、エチルδ−バレロラクトンなどのアルキル置換体などを例示することができる。
【0023】
環状カルボン酸エステルは、蒸気圧が低く、粘度が低く、かつ誘電率が高く、電解液の引火点と電解質の解離度を下げることなく電解液の粘度を下げることができる。このため、電解液の引火性を高くすることなく電池の放電特性に関わる指標である電解液の伝導度を高めることができるという特徴を有するので、溶媒の引火点の向上を指向する場合は、上記環状の非プロトン性溶媒として環状カルボン酸エステルを使用することが好ましい。環状カルボン酸エステルの中でも、γ−ブチロラクトンが最も好ましい。
【0024】
また、環状カルボン酸エステルは、他の環状の非プロトン性溶媒と混合して使用することが好ましい。例えば、環状カルボン酸エステルと、環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートとの混合物が挙げられる。
【0025】
環状スルホンの例としては、スルホラン、2−メチルスルホラン、3―メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、メチルエチルスルホン、メチルプロピルスルホンなどが挙げられる。
環状エーテルの例としてジオキソランを挙げることができる。
【0026】
−鎖状の非プロトン性溶媒−
鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、鎖状エーテル、鎖状リン酸エステルなどを用いることができる。
【0027】
鎖状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%〜100質量%、さらに好ましくは20質量%〜90質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%である。
【0028】
鎖状カーボネートとして具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、エチルオクチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネートなどが挙げられる。これら鎖状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0029】
鎖状カルボン酸エステルとして具体的には、ピバリン酸メチルなどが挙げられる。
鎖状エーテルとして具体的には、ジメトキシエタンなどが挙げられる。
鎖状リン酸エステルとして具体的には、リン酸トリメチルなどが挙げられる。
【0030】
−その他の非水溶媒の組み合わせ−
その他の非水溶媒は、1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。また、環状の非プロトン性溶媒のみを1種類又は複数種類用いても、鎖状の非プロトン性溶媒のみを1種類又は複数種類用いても、又は環状の非プロトン性溶媒及び鎖状のプロトン性溶媒を混合して用いてもよい。電池の負荷特性、低温特性の向上を特に意図した場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒と鎖状の非プロトン性溶媒を組み合わせて使用することが好ましい。
【0031】
さらに、電解液の電気化学的安定性から、環状の非プロトン性溶媒には環状カーボネートを、鎖状の非プロトン性溶媒には鎖状カーボネートを適用することが最も好ましい。また、環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートの組み合わせによっても電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
【0032】
環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせとして、具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートなどが挙げられる。
【0033】
その他の非水溶媒における環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合割合は、体積比で表して、環状カーボネート:鎖状カーボネートが、5:95〜80:20、さらに好ましくは10:90〜70:30、特に好ましくは15:85〜55:45である。このような比率にすることによって、電解液の粘度上昇を抑制し、電解質の解離度を高めることができるため、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。また、電解質の溶解度をさらに高めることができる。よって、常温又は低温での電気伝導性に優れた電解液とすることができるため、常温から低温での電池の負荷特性を改善することができる。
【0034】
その他の非水溶媒としては、特許第6017697号の段落0074〜0083の記載を参照してもよい。
【0035】
本開示の非水電解液における非水溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、及びフッ素化環状カーボネートを含むことが好ましい。
非水溶媒の全量に対する、環状カーボネート、鎖状カーボネート、及びフッ素化環状カーボネートの合計量は、60体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが特に好ましい。
環状カーボネート及び鎖状カーボネートの混合割合の好ましい範囲については前述のとおりである。
【0036】
<特定ボロン酸>
本開示の非水電解液は、特定ボロン酸(即ち、芳香族炭化水素基を有するボロン酸)を少なくとも1種含有する。
本開示の非水電解液では、前述のとおり、特定ボロン酸と、フッ素化環状カーボネートの含有量が0体積%超8体積%以下である非水溶媒と、の組み合わせにより、電池の体積変化抑制効果が発揮される。
また、本開示の非水電解液では、前述のとおり、フッ素化環状カーボネートの含有量が0体積%超8体積%以下である非水溶媒を含有し、かつ、特定ボロン酸を含有しない非水電解液と比較して、電池の初期放電容量を上昇させる効果にも優れる。
【0037】
特定ボロン酸(即ち、芳香族炭化水素基を有するボロン酸)における芳香族炭化水素基は、1価の芳香族炭化水素基(即ち、アリール基)であってもよいし、2価の芳香族炭化水素基(即ち、アリーレン基)であってもよいし、3価以上の芳香族炭化水素基であってもよい。
【0038】
特定ボロン酸の中でも、六員環の芳香族炭化水素基を有するボロン酸がより好ましい。
ここでいう六員環の芳香族炭化水素基は、置換基によって置換されていてもよい。
【0039】
以下、特定ボロン酸の具体例を示すが、特定ボロン酸は以下の具体例には限定されない。
1,4−フェニレンジボロン酸、4,4’−ビフェニルジボロン酸、2−(メチルチオ)フェニルボロン酸、3−(メチルチオ)フェニルボロン酸、4−(メチルチオ)フェニルボロン酸、2−(ジメチルアミノ)フェニルボロン酸、3−(ジメチルアミノ)フェニルボロン酸、4−(ジメチルアミノ)フェニルボロン酸、2−ホルミルフェニルボロン酸、3−ホルミルフェニルボロン酸、4−ホルミルフェニルボロン酸、2−ヒドロキシフェニルボロン酸、3−ヒドロキシフェニルボロン酸、4−ヒドロキシフェニルボロン酸、2−メトキシフェニルボロン酸、3−メトキシフェニルボロン酸、4−メトキシフェニルボロン酸、2−シアノフェニルボロン酸、3−シアノフェニルボロン酸、4−シアノフェニルボロン酸、2−(トリメチルシリル)フェニルボロン酸、3−(トリメチルシリル)フェニルボロン酸、4−(トリメチルシリル)フェニルボロン酸、2−アセチルフェニルボロン酸、3−アセチルフェニルボロン酸、4−アセチルフェニルボロン酸、4−フェノキシフェニルボロン酸、2,3−ジメトキシフェニルボロン酸、2,4−ジメトキシロフェニルボロン酸、2,5−ジメトキシフェニルボロン酸、3,4−ジメトキシフェニルボロン酸、3,5−ジメトキシフェニルボロン酸、3,6−ジメトキシフェニルボロン酸、
【0040】
2−(メチルスルホニル)フェニルボロン酸、3−(メチルスルホニル)フェニルボロン酸、4−(メチルスルホニル)フェニルボロン酸、2−エトキシフェニルボロン酸、3−エトキシフェニルボロン酸、4−エトキシフェニルボロン酸、2−プロポキシフェニルボロン酸、3−プロポキシフェニルボロン酸、4−プロポキシフェニルボロン酸、2−イソプロポキシフェニルボロン酸、3−イソプロポキシフェニルボロン酸、4−イソプロポキシフェニルボロン酸、2−ヒドロキシメチルフェニルボロン酸、3−ヒドロキシメチルフェニルボロン酸、4−ヒドロキシメチルフェニルボロン酸、2−(トリフルオロメトキシ)フェニルボロン酸、3−(トリフルオロメトキシ)メチルフェニルボロン酸、4−(トリフルオロメトキシ)メチルフェニルボロン酸、2−シアノ−3−フルオロフェニルボロン酸、2−シアノ−4−フルオロフェニルボロン酸、2−シアノ−5−フルオロフェニルボロン酸、2−シアノ−6−フルオロフェニルボロン酸、3−シアノ−2−フルオロフェニルボロン酸、3−シアノ−4−フルオロフェニルボロン酸、3−シアノ−5−フルオロフェニルボロン酸、3−シアノ−6−フルオロフェニルボロン酸、4−シアノ−3−フルオロフェニルボロン酸、
【0041】
2−フルオロ−3−メトキシフェニルボロン酸、2−フルオロ−4−メトキシフェニルボロン酸、2−フルオロ−5−メトキシフェニルボロン酸、2−フルオロ−6−メトキシフェニルボロン酸、3−フルオロ−2−メトキシフェニルボロン酸、3−フルオロ−4−メトキシフェニルボロン酸、3−フルオロ−5−メトキシフェニルボロン酸、3−フルオロ−6−メトキシフェニルボロン酸、4−フルオロ−3−メトキシフェニルボロン酸、2−クロロ−3−メトキシフェニルボロン酸、2−クロロ−4−メトキシフェニルボロン酸、2−クロロ−5−メトキシフェニルボロン酸、2−クロロ−6−メトキシフェニルボロン酸、3−クロロ−2−メトキシフェニルボロン酸、3−クロロ−4−メトキシフェニルボロン酸、3−クロロ−5−メトキシフェニルボロン酸、3−クロロ−6−メトキシフェニルボロン酸、4−クロロ−3−メトキシフェニルボロン酸、2−ニトロフェニルボロン酸、3−ニトロフェニルボロン酸、4−ニトロフェニルボロン酸、2−カルボキシフェニルボロン酸、3−カルボキシフェニルボロン酸、4−カルボキシフェニルボロン酸、2−カルバモイルフェニルボロン酸、3−カルバモイルシフェニルボロン酸、4−カルバモイルフェニルボロン酸、
【0042】
2−(メトキシカルボニル)フェニルボロン酸、3−(メトキシカルボニル)フェニルボロン酸、4−(メトキシカルボニル)フェニルボロン酸、2−(エトキシカルボニル)フェニルボロン酸、3−(エトキシカルボニル)フェニルボロン酸、4−(エトキシカルボニル)フェニルボロン酸、2−メトキシ−3−メチルフェニルボロン酸、2−メトキシ−4−メチルフェニルボロン酸、2−メトキシ−5−メチルフェニルボロン酸、2−メトキシ−6−メチルフェニルボロン酸、3−メトキシ−2−メチルフェニルボロン酸、3−メトキシ−4−メチルフェニルボロン酸、3−メトキシ−5−メチルフェニルボロン酸、3−メトキシ−6−メチルフェニルボロン酸、4−メトキシ−3−メチルフェニルボロン酸、4−メトキシ−2、6−ジメチルフェニルボロン酸、2−(ジメチルカルバモイル)フェニルボロン酸、3−(ジメチルカルバモイル)シフェニルボロン酸、4−(ジメチルカルバモイル)フェニルボロン酸、
【0043】
2−ベンジロキシフェニルボロン酸、3−ベンジロキシシフェニルボロン酸、4−ベンジロキシフェニルボロン酸、2−アセトアミドフェニルボロン酸、3−アセトアミドシフェニルボロン酸、4−アセトアミドフェニルボロン酸、2−ホルミル−3−メトキシフェニルボロン酸、2−ホルミル−4−メトキシフェニルボロン酸、2−ホルミル−5−メトキシフェニルボロン酸、2−ホルミル−6−メトキシフェニルボロン酸、3−ホルミル−2−メトキシフェニルボロン酸、3−ホルミル−4−メトキシフェニルボロン酸、3−ホルミル−5−メトキシフェニルボロン酸、3−ホルミル−6−メトキシフェニルボロン酸、4−ホルミル−3−メトキシフェニルボロン酸、2−メチル−3−ニトロフェニルボロン酸、2−メチル−4−ニトロフェニルボロン酸、2−メチル−5−ニトロフェニルボロン酸、2−メチル−6−ニトロフェニルボロン酸、3−メチル−2−ニトロフェニルボロン酸、3−メチル−4−ニトロフェニルボロン酸、3−メチル−5−ニトロフェニルボロン酸、3−メチル−6−ニトロフェニルボロン酸、4−メチル−3−ニトロフェニルボロン酸、2−ベンジロキシ−3−フルオロフェニルボロン酸、2−ベンジロキシ−4−フルオロフェニルボロン酸、2−ベンジロキシ−5−フルオロフェニルボロン酸、2−ベンジロキシ−6−フルオロフェニルボロン酸、3−ベンジロキシ−2−フルオロフェニルボロン酸、3−ベンジロキシ−4−フルオロフェニルボロン酸、3−ベンジロキシ−5−フルオロフェニルボロン酸、3−ベンジロキシ−6−フルオロフェニルボロン酸、4−ベンジロキシ−3−フルオロフェニルボロン酸、3,4−(メチレンジオキシ) フェニルボロン酸。
【0044】
また、特定ボロン酸としては、下記式(A)で表される化合物(A)が好ましい。
【0046】
式(A)中、R
1は、ハロゲン原子、炭素数1〜6の炭化水素基、及び炭素数1〜6のハロゲン化炭化水素基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基によって置換されていてもよいアリール基を表す。
【0047】
式(A)における上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子がより好ましく、フッ素原子又は塩素原子が更に好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0048】
式(A)における炭素数1〜6の炭化水素基としては、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルケニル基が好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0049】
式(A)中のR
1は、フッ素原子及びビニル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基によって置換されていてもよいフェニル基を表すことが特に好ましい。
【0050】
以下、化合物(A)の具体例を示すが、化合物(A)は、以下の具体例には限定されない。
フェニルボロン酸、1−ナフタレンボロン酸、2−ナフタレンボロン酸、2−フルオロフェニルボロン酸、2−ブロモフェニルボロン酸、2−クロロフェニルボロン酸、2−ヨードフェニルボロン酸、3−フルオロフェニルボロン酸、3−ブロモフェニルボロン酸、3−クロロフェニルボロン酸、3−ヨードフェニルボロン酸、4−フルオロフェニルボロン酸、4−ブロモフェニルボロン酸、4−クロロフェニルボロン酸、4−ヨードフェニルボロン酸、
【0051】
2,3−ジフルオロフェニルボロン酸、2,4−ジフルオロフェニルボロン酸、2,5−ジフルオロフェニルボロン酸、3,4−ジフルオロフェニルボロン酸、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸、3,6−ジフルオロフェニルボロン酸、2,3−ジブロモフェニルボロン酸、2,4−ジブロモフェニルボロン酸、2,5−ジブロモフェニルボロン酸、3,4−ジブロモフェニルボロン酸、3,5−ジブロモフェニルボロン酸、3、6−ジブロモフェニルボロン酸、2,3−ジクロロフェニルボロン酸、2,4−ジクロロフェニルボロン酸、2,5−ジクロロフェニルボロン酸、3,4−ジクロロフェニルボロン酸、3,5−ジクロロフェニルボロン酸、3,6−ジクロロフェニルボロン酸、2,3−ジヨードフェニルボロン酸、2,4−ジヨードロフェニルボロン酸、2,5−ジヨードフェニルボロン酸、3,4−ジヨードフェニルボロン酸、3,5−ジヨードフェニルボロン酸、3,6−ジヨードフェニルボロン酸、
【0052】
2,4,6−トリフルオロフェニルボロン酸、2,4,6−トリブロモフェニルボロン酸、2,4,6−トリクロロフェニルボロン酸、2,4,6−トリヨードフェニルボロン酸、ヘキサフルオロフェニルボロン酸、ヘキサブロモフェニルボロン酸、ヘキサクロロフェニルボロン酸、ヘキサヨードフェニルボロン酸、
【0053】
2−メチルフェニルボロン酸、3−メチルフェニルボロン酸、4−メチルフェニルボロン酸、2−エチルフェニルボロン酸、3−エチルフェニルボロン酸、4−エチルフェニルボロン酸、2−プロピルフェニルボロン酸、3−プロピルフェニルボロン酸、4−プロピルフェニルボロン酸、2−イソプロピルフェニルボロン酸、3−イソプロピルフェニルボロン酸、4−イソプロピルフェニルボロン酸、
【0054】
2,3−ジメチルフェニルボロン酸、2,4−ジメチルロフェニルボロン酸、2,5−ジメチルフェニルボロン酸、3,4−ジメチルフェニルボロン酸、3,5−ジメチルフェニルボロン酸、3,6−ジメチルフェニルボロン酸、2,4,6−トリメチルフェニルボロン酸、2,3−ジエチルフェニルボロン酸、2,4−ジエチルロフェニルボロン酸、2,5−ジエチルフェニルボロン酸、3,4−ジエチルフェニルボロン酸、3,5−ジエチルフェニルボロン酸、3,6−ジエチルフェニルボロン酸、2,4,6−トリエチルフェニルボロン酸、2,3−ジプロピルフェニルボロン酸、2,4−ジプロピルロフェニルボロン酸、2,5−ジプロピルフェニルボロン酸、3,4−ジプロピルフェニルボロン酸、3,5−ジプロピルフェニルボロン酸、3,6−ジプロピルフェニルボロン酸、2,4,6−トリプロピルフェニルボロン酸、2,3−ジイソプロピルフェニルボロン酸、2,4−ジイソプロピルロフェニルボロン酸、2,5−ジイソプロピルフェニルボロン酸、3,4−ジイソプロピルフェニルボロン酸、3,5−ジイソプロピルフェニルボロン酸、3,6−ジイソプロピルフェニルボロン酸、2,4,6−トリイソプロピルフェニルボロン酸、
【0055】
2−クロロ−3−フルオロフェニルボロン酸、2−クロロ−4−フルオロフェニルボロン酸、2−クロロ−5−フルオロフェニルボロン酸、2−クロロ−6−フルオロフェニルボロン酸、3−クロロ−2−フルオロフェニルボロン酸、3−クロロ−4−フルオロフェニルボロン酸、3−クロロ−5−フルオロフェニルボロン酸、3−クロロ−6−フルオロフェニルボロン酸、4−クロロ−3−フルオロフェニルボロン酸、2−フルオロ−3−メチルフェニルボロン酸、2−フルオロ−4−メチルフェニルボロン酸、2−フルオロ−5−メチルフェニルボロン酸、2−フルオロ−6−メチルフェニルボロン酸、3−フルオロ−2−メチルフェニルボロン酸、3−フルオロ−4−メチルフェニルボロン酸、3−フルオロ−5−メチルフェニルボロン酸、3−フルオロ−6−メチルフェニルボロン酸、4−フルオロ−3−メチルフェニルボロン酸、
【0056】
2−(トリフルオロメタン)フェニルボロン酸、3−(トリフルオロメタン)フェニルボロン酸、4−(トリフルオロメタン)フェニルボロン酸、2−ビニルフェニルボロン酸、3−ビニルフェニルボロン酸、4−ビニルフェニルボロン酸、2−(ブロモメチル)フェニルボロン酸、3−(ブロモメチル)フェニルボロン酸、4−(ブロモメチル)フェニルボロン酸、2−クロロ−3−メチルフェニルボロン酸、2−クロロ−4−メチルフェニルボロン酸、2−クロロ−5−メチルフェニルボロン酸、2−クロロ−6−メチルフェニルボロン酸、3−クロロ−2−メチルフェニルボロン酸、3−クロロ−4−メチルフェニルボロン酸、3−クロロ−5−メチルフェニルボロン酸、3−クロロ−6−メチルフェニルボロン酸、4−クロロ−3−メチルフェニルボロン酸、
【0057】
2,3−ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、2,4−ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、2,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、3,4−ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、3,6−ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、2−ビフェニルフェニルボロン酸、3−ビフェニルフェニルボロン酸、4−ビフェニルフェニルボロン酸、2−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、2−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、2−フルオロ−6−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、3−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、3−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、3−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、3−フルオロ−6−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、2−クロロ−6−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、3−クロロ−2−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、3−クロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、3−クロロ−6−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、2−フルオロ−3−ビフェニルボロン酸、2−フルオロ−4−ビフェニルボロン酸、2−フルオロ−5−ビフェニルボロン酸、2−フルオロ−6−ビフェニルボロン酸、3−フルオロ−2−ビフェニルボロン酸、3−フルオロ−4−ビフェニルボロン酸、3−フルオロ−5−ビフェニルボロン酸、3−フルオロ−6−ビフェニルボロン酸、4−フルオロ−3−ビフェニルボロン酸。
【0058】
上記具体例の中でも、化合物(A)としては、フェニルボロン酸、3、5−ジフルオロフェニルボロン酸、4−ビニルフェニルボロン酸、2−フルオロフェニルボロン酸、3−フルオロフェニルボロン酸、4−フルオロフェニルボロン酸、2,3−ジフルオロフェニルボロン酸、2,4−ジフルオロフェニルボロン酸、2,5−ジフルオロフェニルボロン酸、3,4−ジフルオロフェニルボロン酸、3,6−ジフルオロフェニルボロン酸、2−ビニルフェニルボロン酸、又は3−ビニルフェニルボロン酸が特に好ましい。
【0059】
本開示の非水電解液は、特定ボロン酸を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
本開示の非水電解液における特定ボロン酸の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、非水電解液の全量に対し、0.01質量%〜2.0質量%が好ましく、0.05質量%〜1.5質量%がより好ましく、0.1質量%〜1.0質量%が特に好ましい。
【0060】
なお、実際に電池を解体して採取した非水電解液を分析しても、特定ボロン酸の量が、非水電解液への添加量と比較して減少している場合がある。従って、電池から取り出した非水電解液中に少量でも特定ボロン酸が検出できる場合には、本開示の非水電解液の範囲に含まれる。
また、非水電解液から特定ボロン酸が検出できない場合であっても、非水電解液中や電極の被膜中に、特定ボロン酸の分解物由来の化合物が検出される場合も、本開示の非水電解液の範囲に含まれるとみなされる。
これらの取り扱いは、非水電解液に含有され得る特定ボロン酸以外の添加剤についても同様である。
【0061】
<その他の添加剤>
本開示の非水電解液は、特定ボロン酸以外のその他の添加剤(本明細書中では「その他の添加剤」とも称する)を含有してもよい。
本開示の非水電解液がその他の添加剤を含有する場合、含有されるその他の添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
その他の添加剤としては、炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネート化合物、フルオロリン酸化合物、オキサラト化合物、環状スルトン化合物、式(C)で表される化合物、式(D)で表される化合物、及び環状硫酸エステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0062】
(炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネート化合物)
炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネート化合物としては、メチルビニルカーボネート、エチルビニルカーボネート、ジビニルカーボネート、メチルプロピニルカーボネート、エチルプロピニルカーボネート、ジプロピニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどの鎖状カーボネート類;ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,4−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,4−ジエチニルエチレンカーボネート、4,5−ジエチニルエチレンカーボネート、プロピニルエチレンカーボネート、4,4−ジプロピニルエチレンカーボネート、4,5−ジプロピニルエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類;などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネートであり、より好ましくは、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートである。
【0063】
(フルオロリン酸化合物)
フルオロリン酸化合物としては、ジフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸、モノフルオロリン酸、ジフルオロリン酸メチル、ジフルオロリン酸エチル、フルオロリン酸ジメチル、フルオロリン酸ジエチルなどが挙げられる。これらのうち、好ましくはジフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸リチウムである。
【0064】
(オキサラト化合物)
オキサラト化合物としては、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、トリス(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムなどが挙げられる。これらのうち、好ましくはジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムである。
【0065】
(環状スルトン化合物)
環状スルトン化合物としては、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、1−メチル−1,3−プロペンスルトン、2−メチル−1,3−プロペンスルトン、3−メチル−1,3−プロペンスルトン等のスルトン類が挙げられる。これらのうち、好ましくは、1,3−プロパンスルトン、1,3−プロペンスルトンである。
【0068】
式(C)中、R
1は、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜6の炭化水素基、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜6の炭化水素オキシ基、又はフッ素原子を表す。
【0069】
式(C)中、R
1における上記炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
式(C)中、R
1における上記炭化水素基は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されていればよいが、パーフルオロ炭化水素基であることが好ましい。
式(C)中、R
1における上記炭化水素基の炭素数は、1〜3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0070】
式(C)中、R
1における上記炭化水素オキシ基としては、アルコキシ基又はアルケニルオキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
式(C)中、R
1における上記炭化水素オキシ基は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されていればよいが、パーフルオロ炭化水素オキシ基であることが好ましい。
式(C)中、R
1における上記炭化水素オキシ基の炭素数は、1〜3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0071】
式(C)中、R
1としては、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜6の炭化水素基が好ましく、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基が更に好ましく、パーフルオロメチル基(別名:トリフルオロメチル基)又はパーフルオロエチル基(別名:ペンタフルオロエチル基)が更に好ましく、パーフルオロメチル基(別名:トリフルオロメチル基)が特に好ましい。
【0072】
式(C)で表される化合物としては、トリフルオロメチルスルホン酸リチウム又はペンタフルオロエチルスルホン酸リチウムが好ましく、トリフルオロメチルスルホン酸リチウムを含むことが特に好ましい。
【0075】
式(D)中、R
1は、少なくとも1つのフッ素原子によって置換されていてもよい炭素数1〜6の炭化水素基、又は、フッ素原子を表す。
【0076】
式(D)中、R
1における上記炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
式(D)中、R
1における上記炭化水素基は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されていればよいが、パーフルオロ炭化水素基であることが好ましい。
式(D)中、R
1における上記炭化水素基の炭素数は、1〜3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0077】
式(D)中、R
1としては、フッ素原子で置換されてもよい炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、フッ素原子で置換されてもよい炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、又はトリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0078】
式(D)で表される化合物としては、メタンスルホニルフルオリド、エタンスルホニルフルオリド、プロパンスルホニルフルオリド、2−プロパンスルホニルフルオリド、ブタンスルホニルフルオリド、2−ブタンスルホニルフルオリド、ヘキサンスルホニルフルオリド、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド、パーフルオロエタンスルホニルフルオリド、パーフルオロプロパンスルホニルフルオリド、パーフルオロブタンスルホニルフルオリド、エテンスルホニルフルオリド、1−プロペン−1−スルホニルフルオリド、2−プロペン−1−スルホニルフルオリド等が挙げられる。
式(D)で表される化合物としては、メタンスルホニルフルオリドが特に好ましい。
【0079】
(環状硫酸エステル化合物)
環状硫酸エステル化合物としては、下記式(I)で表される化合物が好ましい。
【0081】
式(I)中、R
1及びR
2が、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、式(II)で表される基若しくは式(III)で表される基を表すか、又は、R
1及びR
2が一体となって、R
1が結合する炭素原子及びR
2が結合する炭素原子と共に、ベンゼン環若しくはシクロヘキシル環を形成する基を表す。
式(II)中、R
3は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基を表す。式(II)、式(III)、および式(IV)における波線は、結合位置を表す。
式(I)で表される化合物中に、式(II)で表される基が2つ含まれる場合、2つの式(II)で表される基は、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0082】
式(II)中、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が具体例として挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0083】
式(I)及び(II)中、「炭素数1〜6のアルキル基」とは、炭素数が1以上6以下である直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、3,3−ジメチルブチル基などが具体例として挙げられる。
炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
【0084】
式(II)中、「炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基」とは、炭素数が1〜6である直鎖又は分岐鎖のハロゲン化アルキル基であり、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロイソブチル基、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロプロピル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、ブロモプロピル基、ヨウ化メチル基、ヨウ化エチル基、ヨウ化プロピル基などが具体例として挙げられる。
炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基がより好ましい。
【0085】
式(II)中、「炭素数1〜6のアルコキシ基」とは、炭素数が1以上6以下である直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−エチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基などが具体例として挙げられる。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、炭素数1〜3のアルコキシ基がより好ましい。
【0086】
式(I)における好ましい態様は、R
1が、式(II)で表される基(式(II)において、R
3は、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基であることが好ましい。)若しくは式(III)で表される基であり、かつ、R
2が、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、式(II)で表される基、若しくは式(III)で表される基であるか、又は、R
1及びR
2が一体となって、R
1が結合する炭素原子及びR
2が結合する炭素原子と共に、ベンゼン環若しくはシクロヘキシル環を形成する基である態様である。
【0087】
式(I)中のR
2として、より好ましくは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、式(II)で表される基(式(II)において、R
3は、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は、式(IV)で表される基であることがさらに好ましい。)、又は式(III)で表される基であり、さらに好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0088】
式(I)中のR
1が式(II)で表される基である場合、式(II)中のR
3は前述のとおり、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基であるが、R
3としてより好ましくは、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は、式(IV)で表される基であり、更に好ましくは、フッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、又は、式(IV)で表される基である。
式(I)中のR
2が式(II)で表される基である場合、式(II)中のR
3の好ましい範囲については、式(I)中のR
1が式(II)で表される基である場合におけるR
3の好ましい範囲と同様である。
【0089】
式(I)におけるR
1及びR
2の好ましい組み合わせとしては、R
1が、式(II)で表される基(式(II)中、R
3はフッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基であることが好ましい)、又は式(III)で表される基であり、R
2が、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、式(II)で表される基(式(II)中、R
3はフッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基であることが好ましい。)、又は式(III)で表される基である組み合わせである。
式(I)におけるR
1及びR
2のより好ましい組み合わせとしては、R
1が式(II)で表される基(式(II)中、R
3はフッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、又は式(IV)で表される基であることが好ましい)又は式(III)で表される基であり、R
2が水素原子又はメチル基である組み合わせである。
【0090】
式(I)で表される化合物については、国際公開第2012/053644号の段落0040〜0070の記載を適宜参照できる。
【0091】
上述したその他の添加剤は、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、1,3−プロパンスルトン、1,3−プロペンスルトン、トリフルオロメチルスルホン酸リチウム、メタンスルホニルフルオリド、及び式(I)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0092】
本開示の非水電解液がその他の添加剤を含有する場合、含有されるその他の添加剤は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
本開示の非水電解液がその他の添加剤を含有する場合、その含有量(2種以上である場合には総含有量)には特に制限はないが、本開示の効果がより効果的に奏される観点から、非水電解液の全量に対し、0.001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜4質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜2質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜1質量%であることが特に好ましい。
【0093】
<電解質>
本開示の非水電解液は、一般的に、電解質を含有する。
電解質としては、上記その他の添加剤の例示中に含まれるリチウム塩以外のリチウム塩(以下、「特定リチウム塩」ともいう)が好ましい。
電解質としての特定リチウム塩は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0094】
特定リチウム塩の具体例としては、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、Li
2SiF
6、LiPF
n[C
kF
(2k+1)]
(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)などのリチウム塩が挙げられる。
また、次の一般式で表されるリチウム塩も使用することができる。
【0095】
LiC(SO
2R
27)(SO
2R
28)(SO
2R
29)、LiN(SO
2OR
30)(SO
2OR
31)、LiN(SO
2R
32)(SO
2R
33)(ここでR
27〜R
33は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基である)。これらの電解質は単独で使用してもよく、また2種類以上を混合してもよい。
【0096】
特定リチウム塩は、LiPF
6及びLiBF
4の少なくとも一方を含むことが好ましく、LiPF
6を含むことがより好ましい。
特定リチウム塩がLiPF
6を含む場合、特定リチウム塩中に占めるLiPF
6の比率は、10質量%〜100質量%が好ましく、50質量%〜100質量%がより好ましく、70質量%〜100質量%が特に好ましい。
【0097】
非水電解液中における電解質の濃度は、0.1mol/L〜3mol/Lであることが好ましく、0.5mol/L〜2mol/Lであることがより好ましい。
【0098】
本開示の非水電解液は、リチウム二次電池用の非水電解液として好適であるばかりでなく、一次電池用の非水電解液、電気化学キャパシタ用の非水電解液、電気二重層キャパシタ、アルミ電解コンデンサー用の電解液としても用いることができる。
【0099】
〔リチウム二次電池〕
本開示のリチウム二次電池は、正極と、負極と、本開示の非水電解液と、を含む。
【0100】
(負極)
負極は、負極活物質及び負極集電体を含んでもよい。
負極における負極活物質としては、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種(単独で用いてもよいし、これらの2種以上を含む混合物を用いてもよい)を用いることができる。
リチウム(又はリチウムイオン)との合金化が可能な金属もしくは合金としては、シリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金などを挙げることができる。また、チタン酸リチウムでもよい。
これらの中でもリチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料が好ましい。このような炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料(人造黒鉛、天然黒鉛)、非晶質炭素材料、等が挙げられる。上記炭素材料の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状いずれの形態であってもよい。
【0101】
上記非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)などが例示される。
上記黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが用いられる。また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができる。また、黒鉛材料としては、金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆したもの、非晶質炭素で被覆したもの、非晶質炭素と黒鉛を混合したものも使用することができる。
【0102】
これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
上記炭素材料としては、特にX線解析で測定した(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以下の炭素材料が好ましい。また、炭素材料としては、真密度が1.70g/cm
3以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料も好ましい。以上のような炭素材料を使用すると、電池のエネルギー密度をより高くすることができる。
【0103】
負極における負極集電体の材質には特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
負極集電体の具体例としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられる。中でも、加工しやすさの点から特に銅が好ましい。
【0104】
(正極)
正極は、正極活物質及び正極集電体を含んでもよい。
正極における正極活物質としては、MoS
2、TiS
2、MnO
2、V
2O
5などの遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物、LiCoO
2、LiMnO
2、LiMn
2O
4、LiNiO
2、LiNi
XCo
(1−X)O
2〔0<X<1〕、α−NaFeO
2型結晶構造を有するLi
1+αMe
1−αO
2(Meは、Mn、Ni及びCoを含む遷移金属元素、1.0≦(1+α)/(1−α)≦1.6)、LiNi
xCo
yMn
zO
2〔x+y+z=1、0<x<1、0<y<1、0<z<1〕(例えば、LiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2、LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2等)、LiFePO
4、LiMnPO
4などのリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール、ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料等が挙げられる。これらの中でも、特にリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物が好ましい。負極がリチウム金属又はリチウム合金である場合は、正極として炭素材料を用いることもできる。また、正極として、リチウムと遷移金属との複合酸化物と、炭素材料と、の混合物を用いることもできる。
正極活物質は、1種類で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。正極活物質は導電性が不充分である場合には、導電性助剤とともに使用して正極を構成することができる。導電性助剤としては、カーボンブラック、アモルファスウィスカー、グラファイトなどの炭素材料を例示することができる。
【0105】
正極における正極集電体の材質には特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
正極集電体の具体例としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、タンタルなどの金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパーなどの炭素材料;等が挙げられる。
【0106】
(セパレータ)
本開示のリチウム二次電池は、負極と正極との間にセパレータを含むことが好ましい。
セパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁し且つリチウムイオンを透過する膜であって、多孔性膜や高分子電解質が例示される。
多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が例示される。
特に、多孔性ポリオレフィンが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、又は多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの多層フィルムを例示することができる。多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされてもよい。
高分子電解質としては、リチウム塩を溶解した高分子や、電解液で膨潤させた高分子等が挙げられる。
本開示の非水電解液は、高分子を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用してもよい。
【0107】
(電池の構成)
本開示のリチウム二次電池は、種々公知の形状をとることができ、円筒型、コイン型、角型、ラミネート型、フィルム型その他任意の形状に形成することができる。
なお、電池の基本構造は、形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更を施すことができる。
【0108】
本開示のリチウム二次電池の例として、ラミネート型電池が挙げられる。
図1は、本開示のリチウム二次電池の一例であるラミネート型電池の一例を示す概略斜視図であり、
図2は、
図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の厚さ方向の概略断面図である。
図1に示すラミネート型電池は、内部に非水電解液(
図1中では不図示)及び積層型電極体(
図1中では不図示)が収納され、且つ、周縁部が封止されることにより内部が密閉されたラミネート外装体1を備える。ラミネート外装体1としては、例えばアルミニウム製のラミネート外装体が用いられる。
ラミネート外装体1に収容される積層型電極体は、
図2に示されるように、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介して交互に積層されてなる積層体と、この積層体の周囲を囲むセパレータ8と、を備える。正極板5、負極板6、セパレータ7、及びセパレータ8には、本開示の非水電解液が含浸されている。
上記積層型電極体における複数の正極板5は、いずれも正極タブを介して正極端子2と電気的に接続されており(不図示)、この正極端子2の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(
図1)。ラミネート外装体1の周端部において正極端子2が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
同様に、上記積層型電極体における複数の負極板6は、いずれも負極タブを介して負極端子3と電気的に接続されており(不図示)、この負極端子3の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(
図1)。ラミネート外装体1の周端部において負極端子3が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
なお、上記一例に係るラミネート型電池では、正極板5の数が5枚、負極板6の数が6枚となっており、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介し、両側の最外層がいずれも負極板6となる配置で積層されている。
しかし、ラミネート型電池における、正極板の数、負極板の数、及び配置については、この一例には限定されず、種々の変更がなされてもよいことは言うまでもない。例えば、ラミネート外装体1に収容される積層型電極体は、1枚の正極板5と1枚の負極板6とが1枚のセパレータ7を介して積層された積層型電極体であってもよい。
【0109】
本開示のリチウム二次電池の別の一例として、コイン型電池も挙げられる。
図3は、本開示のリチウム二次電池の別の一例であるコイン型電池の一例を示す概略斜視図である。
図3に示すコイン型電池では、円盤状負極12、非水電解液を注入したセパレータ15、円盤状正極11、必要に応じて、ステンレス、又はアルミニウムなどのスペーサー板17、18が、この順序に積層された状態で、正極缶13(以下、「電池缶」ともいう)と封口板14(以下、「電池缶蓋」ともいう)との間に収納される。正極缶13と封口板14とはガスケット16を介してかしめ密封する。
この一例では、セパレータ15に注入される非水電解液として、本開示の非水電解液を用いることができる。
【0110】
なお、本開示のリチウム二次電池は、負極と、正極と、上記本開示の非水電解液と、を含むリチウム二次電池(充放電前のリチウム二次電池)を、充放電させて得られたリチウム二次電池であってもよい。
即ち、本開示のリチウム二次電池は、まず、負極と、正極と、上記本開示の非水電解液と、を含む充放電前のリチウム二次電池を作製し、次いで、この充放電前のリチウム二次電池を1回以上充放電させることによって作製されたリチウム二次電池(充放電されたリチウム二次電池)であってもよい。
【0111】
本開示のリチウム二次電池の用途は特に限定されず、種々公知の用途に用いることができる。例えば、ノート型パソコン、モバイルパソコン、携帯電話、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、電子手帳、電卓、ラジオ、バックアップ電源用途、モーター、自動車、電気自動車、バイク、電動バイク、自転車、電動自転車、照明器具、ゲーム機、時計、電動工具、カメラ等、小型携帯機器、大型機器を問わず広く利用可能なものである。
【実施例】
【0112】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例によって制限されるものではない。
なお、以下の実施例において、「添加量」とは、最終的に得られる非水電解液全量に対する含有量を表す。
【0113】
〔実施例1〕
以下の手順にて、リチウム二次電池であるラミネート型電池(試験用電池)を作製した。
【0114】
<負極の作製>
人造黒鉛98質量部、カルボキシメチルセルロース1質量部及びSBRラテックス1質量部を水溶媒で混錬してペースト状の負極合剤スラリーを調製した。
次に、この負極合剤スラリーを厚さ10μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層とからなるシート状の負極を得た。このときの負極活物質層の塗布密度は12mg/cm
2であり、充填密度は1.5g/mlであった。
【0115】
<正極の作製>
LiCoO
2を97質量部、アセチレンブラック1.8質量部及びポリフッ化ビニリデン1.2質量部を、N−メチルピロリジノンを溶媒として混錬してペースト状の正極合剤スラリーを調製した。
次に、この正極合剤スラリーを厚さ20μmの帯状アルミ箔の正極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質層とからなるシート状の正極を得た。このときの正極活物質層の塗布密度は25mg/cm
2であり、充填密度は3.6g/mlであった。
【0116】
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)とフルオロエチレンカーボネート(FEC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを、体積比25:5:70(EC:FEC:EMC)の割合で混合することにより、非水溶媒を得た。
ここで、フルオロエチレンカーボネート(FEC)は、フッ素化環状カーボネートの一例であり、非水溶媒全量に対するフッ素化環状カーボネート(FEC)の含有量は5体積%である。
得られた非水溶媒中に、電解質としてのLiPF
6を、最終的に得られる非水電解液中における電解質濃度が1.2モル/リットルとなるように溶解させた。
上記で得られた溶液に対して、特定ボロン酸としてのフェニルボロン酸(PHBA)(添加量0.5質量%)を添加し、非水電解液を得た。
【0117】
<ラミネート型電池の作製>
上述のシート状の負極をタテ42mm、ヨコ31mmで、上述のシート状の正極をタテ40mm、ヨコ29mmで、それぞれ打ち抜き、矩形状の負極板及び矩形状の正極板をそれぞれ得た。また、厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムをタテ45mm、ヨコ35mmに打ち抜き、矩形状のセパレータを得た。
次に、負極板に負極タブを取り付け、正極板に正極タブを取り付けた。
負極タブを取り付けた負極板と正極タブを取り付けた正極板とを、セパレータを介し、負極タブ及び正極タブが同一の一辺に配置されるようにして積層させ、積層電極体を得た。
次に、積層電極体をアルミニウム製のラミネート外装体に収容し、正極タブ及び負極タブが配置された側のラミネート外装体の一辺を熱融着した。このとき、正極タブの一部及び負極タブの一部が、ラミネート外装体の周端部から突出するようにした。正極タブ及び負極タブが突出する部分は、それぞれ、絶縁シールによってシールした。
次に、ラミネート外装体の残りの3辺のうちの2辺を熱融着した。
次に、ラミネート外装体の熱融着していない1辺側からラミネート外装体内に上記非水電解液250μLを注入し、上記非水電解液を、各正極板、各負極板、及び各セパレータに含浸させた。次いで、上記熱融着していない1辺を熱融着することにより、ラミネート外装体を密封した。
以上により、ラミネート型電池(試験用電池)を得た。
【0118】
<高温保存による電池の体積変化量>
満充電状態の電池を高温保存した場合の体積変化を評価するために、以下のようにして、高温保存による電池の体積変化量を測定した。
上記で作製されたラミネート型電池の体積を測定し、「高温保存前の体積」とした。
高温保存前の体積を測定したラミネート型電池を初期充放電した後、定電圧4.2Vで充電し、満充電状態とした。ここで、初期充放電は、0.5Cで4.2Vまで充電した後、0.5Cで3Vまで放電することにより行った。
次に、上記満充電状態としたラミネート型電池を60℃の恒温槽内で30日間保存した(以下、この操作を「高温保存」ともいう)。
次に、高温保存後のラミネート型電池の体積を測定し、「高温保存後の体積」とした。 高温保存前の体積及び高温保存後の体積に基づき、下記式により、高温保存による体積変化量を求めた。
【0119】
高温保存による電池の体積変化量(cm
3)
=高温保存後の体積(cm
3)−高温保存前の体積(cm
3)
【0120】
後述の比較例1においても同様にして、高温保存による電池の体積変化量を求めた。
【0121】
表1に、高温保存による電池の体積変化量を示す。
表1において、高温保存による電池の体積変化量は、比較例1の結果を100%とした場合の相対値(%)で表した。
高温保存による電池の体積変化量は、値が小さいほど、満充電状態の電池を高温保存した場合の体積変化が抑制されていることを意味する。
【0122】
〔比較例1及び2〕
非水電解液の調製において、非水溶媒の種類及び体積比を、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
表1に示すように、特定ボロン酸と、フッ素化環状カーボネートの含有量が0体積%超8体積%以下である非水溶媒と、を含有する非水電解液を用いた実施例1では、高温保存による電池の体積変化量が低減されていた(即ち、満充電状態の電池を高温保存した場合の体積変化が抑制されていた)。
実施例1に対し、
特定ボロン酸を含有し、かつ、非水溶媒としてのフッ素化環状カーボネートを含有しない非水電解液を用いた比較例1、及び、
特定ボロン酸と非水溶媒としてのフッ素化環状カーボネートとを含有し、かつ、非水溶媒全量に対するフッ素化環状カーボネートの含有量が8体積%超である非水電解液を用いた比較例2では、
いずれも、高温保存による電池の体積変化量が上昇した。
【0125】
<初期放電容量>
実施例1のラミネート型電池について、初期充放電(0.5Cで4.2Vまで充電した後、0.5Cで3Vまで放電する操作)において0.5Cで3Vまで放電した時の放電容量を測定し、初期放電容量(mAh)とした。
以下の比較例3のラミネート電池についても同様にして、初期放電容量(mAh)を測定した。
【0126】
表2に、初期放電容量を示す。
表2において、実施例1の初期放電容量は、比較例3の初期放電容量を100%とした場合の相対値(%)で表した。
【0127】
〔比較例3〕
非水電解液の調製において、特定ボロン酸を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてラミネート型電池を作製した。
得られたラミネート型電池について、実施例1と同様にして初期放電容量を測定した。
結果を表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
表2に示すように、特定ボロン酸と、非水溶媒の全量に対するフッ素化環状カーボネートの含有量が0体積%超8体積%以下である非水溶媒とを、含有する非水電解液を用いた場合(実施例1)、特定ボロン酸を含まない非水電解液を用いた場合(比較例3)と比較して、初期放電容量が大きいことがわかる。