特許第6884024号(P6884024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884024
(24)【登録日】2021年5月13日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】ポリカーボネートジオール組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20210531BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20210531BHJP
   C08G 64/02 20060101ALI20210531BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20210531BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08K5/05
   C08G64/02
   C08G18/44
   C08G18/65 011
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-80916(P2017-80916)
(22)【出願日】2017年4月14日
(65)【公開番号】特開2018-178000(P2018-178000A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】上野 英三郎
【審査官】 工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/196516(WO,A1)
【文献】 特開平04−239023(JP,A)
【文献】 特開2000−336140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
C08G 64/00− 64/42
C08G 18/00− 18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表される1種以上の繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基とを有し、20℃で液状の形態であるポリカーボネートジオールを含み、20℃において固体であるポリオールをさらに含み、ポリカーボネートジオール組成物における前記ポリオールの含有量が、0.05重量%以上10重量%以下であり、下記特性(1)〜(3)を満たすポリカーボネートジオール組成物。
【化1】
(式(A)中、Rは、2価の炭化水素基を示す。)

(1)20℃で流動性を有する
(2)20℃における濁度が、5NTU以上100NTU以下である
(3)40℃における濁度が、5NTU未満である
【請求項2】
20℃において固体である低分子アルコールをさらに含み、
ポリカーボネートジオール組成物における前記低分子アルコールの含有量が、1重量%以上20重量%以下である、請求項1に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【請求項3】
下記式(1)を満たす請求項1又は2に記載のポリカーボネートジオール組成物。

90≦Tt1/Tt2×100≦100 (1)

Tt1:前記ポリカーボネートジオール組成物と、イソシアネート化合物と、鎖延長剤とを反応させることにより得られるポリウレタンフィルムを、90℃の蒸留水に1週間浸漬した後の全光線透過率
Tt2:前記ポリウレタンフィルムを、90℃の蒸留水に1週間浸漬する前の全光線透過率
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートジオール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートジオールは、例えば、ポリウレタンや熱可塑性エラストマーなどの樹脂のソフトセグメントとして用いると、優れた耐加水分解性、耐光性、耐酸化劣化性、耐熱性などを有する素材が得られることが知られている。しかしながら、1,6−ヘキサンジオールを主原料としたポリカーボネートジオールは、高い結晶性を有するため、室温では固体の状態で存在する。このため、上記ポリカーボネートジオールを塗料成分として用いる場合や、重合により樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂)を製造する場合には多量の溶媒が必要になるなど、取り扱い性に支障をきたすという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するため、2種以上のジオールを原料に用いることにより、ポリカーボネートジオールの結晶性を低くすることが提案されている。例えば、ジオール成分が、1,6−ヘキサンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなり、常温で液状であるコポリカーボネートジオールが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、3−メチル−1,5−ペンタンジオールを主グリコール原料に用いて得られるコポリカーボネートジオールが提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、1,6−ヘキサンジオール及び1,5−ペンタンジオールに由来する繰り返し単位からなるコポリカーボネートジオールが提案されている(例えば、特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−84751号公報
【特許文献2】国際公開第2007/108198号パンフレット
【特許文献3】特開平2−289616号公報
【特許文献4】国際公開第2009/63768号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4に記載のポリカーボネートジオールは、常温で無色透明であるため、容器や反応器内で存在を確認しにくいという問題があり、これまでの技術では、流動性及び視認性を有することにより取扱い性が良好なポリカーボネートジオールは開発されていない。
【0006】
そこで、本発明は、視認性及び流動性を有することにより取扱い性が良好であり、樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂)の原料や塗料成分として用いると、透明性に優れた樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂)や塗膜を得ることが可能であるポリカーボネートジオール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、所定の特性を満たすポリカーボネートジオール組成物が、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
下記式(A)で表される1種以上の繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基とを有するポリカーボネートジオールを含み、下記特性(1)〜(3)を満たすポリカーボネートジオール組成物。
【化1】
(式(A)中、Rは、2価の炭化水素基を示す。)

(1)20℃で流動性を有する
(2)20℃における濁度が、5NTU以上100NTU以下である
(3)40℃における濁度が、5NTU未満である
〔2〕
20℃において固体であるポリオールをさらに含み、
前記ポリカーボネートジオールが20℃において液状の形態であり、
ポリカーボネートジオール組成物における前記ポリオールの含有量が、0.05重量%以上10重量%以下である、前項〔1〕に記載のポリカーボネートジオール組成物。
〔3〕
20℃において固体である低分子アルコールをさらに含み、
前記ポリカーボネートジオールが、20℃において液状の形態であり、
ポリカーボネートジオール組成物における前記低分子アルコールの含有量が、1重量%以上20重量%以下である、前項〔1〕又は〔2〕に記載のポリカーボネートジオール組成物。
〔4〕
下記式(1)を満たす前項〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のポリカーボネートジオール組成物。

90≦Tt1/Tt2×100≦100 (1)

Tt1:前記ポリカーボネートジオール組成物と、イソシアネート化合物と、鎖延長剤とを反応させることにより得られるポリウレタンフィルムを、90℃の蒸留水に1週間浸漬した後の全光線透過率
Tt2:前記ポリウレタンフィルムを、90℃の蒸留水に1週間浸漬する前の全光線透過率
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリカーボネートジオール組成物は、常温で視認性及び流動性を有するため、取扱い性が良好である。また、本発明のポリカーボネートジオール組成物は、樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂)の原料や塗料成分に用いると、優れた透明性を有する樹脂や塗膜を得ることが可能である。このため、本発明のポリカーボネートジオール組成物は、樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂)の原料や塗料成分に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
[ポリカーボネートジオール組成物]
本実地形態のポリカーボネートジオール組成物は、下記式(A)で表される1種以上の繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基とを有するポリカーボネートジオールを含み、下記特性(1)〜(3)を満たす。
【化1】
(式(A)中、Rは、2価の炭化水素基を示す。)

(1)20℃で流動性を有する
(2)20℃における濁度が、5NTU以上100NTU以下である
(3)40℃における濁度が、5NTU未満である
【0012】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、常温で視認性及び流動性を有するため、取扱い性が良好である。また、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、例えば、樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂)の原料や塗料成分に用いると、透明性に優れた樹脂や塗膜を得ることが出来る。
【0013】
本明細書にいう「視認性」とは、ポリカーボネートジオール組成物における、常温(例えば、20℃)で、目視により存在確認が可能な性質をいい、例えば、後述する実施例に記載する測定方法において、ポリカーボネートジオール組成物の濁度が5NTU以上である性質である。また、「流動性」とは、常温(例えば、20℃)で流動する性質をいい、例えば、後述する実施例に記載の測定方法において、ポリカーボネートジオール組成物における流動時間が90秒以内である性質である。
【0014】
[特性(1)]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、20℃で流動性を有する。本明細書にいう「20℃で流動性を有する」とは、前述のとおり、後述の実施例に記載の方法で評価される流動時間が90秒以内であることをいう。流動時間は、70秒以内であることが好ましく、50秒以内であることがより好ましい。流動時間が90秒以内であると、取扱い性が良好である。
【0015】
[特性(2)]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、20℃における濁度が5NTU以上100NTU以下であり、15NTU以上80NTU以下であることが好ましく、20NTU以上50NTU以下であることがより好ましい。濁度が5NTU以上であると、ポリカーボネートジオール組成物の視認性が優れ、100NTU以下であると、ポリカーボネートジオール組成物から得られる樹脂(特にポリウレタン樹脂)や塗膜の透明性が優れる。
【0016】
[特性(3)]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、40℃における濁度が、5NTU未満であり、4NTU未満であることが好ましく、3NTU未満であることがより好ましい。40℃における濁度が、5NTU未満であると、ポリカーボネートジオール組成物から得られる樹脂(特にポリウレタン樹脂)や塗膜の透明性が優れる。
【0017】
本実施形態において、濁度は、ホルマジンを濁度標準液として用いたNTU(Nephelometric Turbidity Unit)で表され、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0018】
20℃における濁度、40℃における濁度を調整する方法は、特に限定されないが、例えば、20℃で液状のポリカーボネートジオールに、後述する、固体ポリオール及び/又は固体低分子アルコールを含有させる方法が挙げられる。これらの方法のうち、固体ポリオールを含有させることが、添加量が比較的小さくても視認性を良好にできるため好ましい。一方、視認性をより一層優れるために、固体ポリオール及び固体低分子アルコールを含有させる方法がより好ましい。
【0019】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、下記式(1)を満たすことが好ましい。

90≦Tt1/Tt2×100≦100 (1)

Tt1:前記ポリカーボネートジオール組成物と、イソシアネート化合物と、鎖延長剤とを反応させることにより得られるポリウレタンフィルムを、90℃の蒸留水に1週間浸漬した後の全光線透過率
Tt2:前記ポリウレタンフィルムを、90℃の蒸留水に1週間浸漬する前の全光線透過率
【0020】
ポリカーボネートジオール組成物を用いて得られるポリウレタンの透明性の評価基準は、前記式(1)におけるTt1/Tt2×100を算出する方法が挙げられる。浸漬前の全光線透過率(Tt2)に対し、浸漬後の全光線透過率(Tt1)が低下していないことで透明性が良好であると判断でき、浸漬後の全光線透過率(Tt1)が浸漬前の全光線透過率(Tt2)の90%以上100%以下であることが好ましく、92%以上100%以下であることがより好ましく、95%以上100%以上であることがさらに好ましい。
【0021】
[ポリカーボネートジオール]
ポリカーボネートジオールは、前記式(A)で表される1種以上の繰り返し単位と、末端ヒドロキシル基とを含む。
【0022】
前記式(A)中、Rは、例えば、炭素数2〜15の2価の炭化水素基を示す。
【0023】
炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基などが挙げられ、好ましくは脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状の形態であってもよいが、耐薬品性及び機械的強度がより一層優れる観点から、下記式(B)で表される直鎖状の形態であることが好ましい。
【0024】
−(CH2n− (B)
【0025】
前記式(B)中、nは2〜15の整数である。耐薬品性及び機械的強度がより一層バランスよく優れる観点から、3〜10であることが好ましく、3〜6であることがさらに好ましい。
【0026】
また、Rで表される2価の炭化水素基は、本願発明の効果を阻害しない範囲で置換基(例えば、ハロゲン原子など)を有してもよく、有していなくてもよい。
【0027】
本実施形態のポリカーボネートジオールにおいて、前記式(A)で表される繰り返し単位の割合は、耐熱性及び耐加水分解性がより一層向上する観点から、ポリカーボネートジオール全体に対し、好ましくは95モル%以上100モル%以下、より好ましくは97モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは99モル%以上100モル%以下である。
【0028】
ポリカーボネートジオールは、流動性がより一層向上する観点から、20℃において液状の形態であることが好ましい。液状の形態であることは、20℃において、後述の実施例に記載されるポリカーボネートジオール組成物の濁度およびポリカーボネートジオール組成物の流動性評価の方法で評価される。流動時間が90秒以内であり、濁度が5NTU未満であることが好ましい。
【0029】
本実施形態のポリカーボネートジオールの数平均分子量は、300以上5000以下であることが好ましく、400以上4000以下であることがより好ましく、450以上3000以下であることがさらに好ましい。ポリカーボネートジオールの数平均分子量が300以上であると、塗料成分に用いる際、塗膜の優れた柔軟性を付与できる傾向にある。ポリカーボネートジオールの数平均分子量が5000以下であると、塗料成分に用いる際、塗料固形分濃度などが制限されることがなく、また、樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂)の原料に用いると、樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂)の成形加工性が低下することがないため好ましい。なお、本実施形態において、ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0030】
また、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物におけるポリカーボネートジオールの割合は、耐加水分解性及び耐熱性がより一層優れる観点から、50重量%以上100重量%以下であることが好ましく、85重量%以上100重量%以下がより好ましく、95重量%以上100重量%以下がさらに好ましい。
【0031】
本実施形態のポリカーボネートジオールの製造方法は、特に限定されないが、例えば、Schnell著、ポリマー・レビューズ第9巻、p9〜20(1994年)に記載された種々の方法で製造でき、例えば、ジオールとカーボネートとを原料として製造できる。
【0032】
前記ジオールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオールなどの側鎖を有しないジオール;2−メチル−1、8−オクタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1、5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールなどの側鎖を有するジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパンなどの環状ジオールが挙げられる。これらのジオールは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、側鎖を有しないジオールを1種以上原料として用いると、耐薬品性及び機械的強度がより一層向上するため好ましい。また、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールからなる群より選択される2種類以上(好ましくは2種類)のジオールが、ポリカーボネートジオールの原料として用いられることが、より好ましく、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールの組み合わせが、さらに好ましい。
【0033】
本実施形態のポリカーボネートジオールの製造において、2種類以上のジオールを原料として用いる場合、これらの原料の比は特に限定されないが、得られるポリカーボネートジオールが20℃で液状となるように、原料の比を設定することが好ましい。より具体的には、2種のジオールを原料として用いる場合、モル比が20/80〜80/20となるように、仕込み量を設定することが好ましい。モル比が上記範囲内であれば、得られるポリカーボネートジオールが20℃で液状となる傾向にある。モル比は、30/70〜70/30であることがより好ましく、40/60〜60/40であることがさらに好ましい。特に、モル比が40/60〜60/40であると0℃以下でも液状となるため取扱い性がさらに向上する。
【0034】
さらに、本実施形態に用いるポリカーボネートジオールの性能を損なわない範囲で、1分子に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物(例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなど)をポリカーボネートジオールの原料として用いることもできる。1分子中に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物をポリカーボネートジオールの原料として用いると、ポリカーボネートの重合反応中に架橋してゲル化が起きる虞がある。このため、1分子中に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物をポリカーボネートジオールの原料として用いる場合には、上記化合物の割合は、ポリカーボネートジオールの原料として用いるジオール全体のモル数に対し、0.1〜5モル%であることが好ましく、0.1〜1モル%であることがより好ましい。
【0035】
前記カーボネートは、特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート;ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート;エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートなどが挙げられる。これらのカーボネートは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、入手容易性及び重合反応時の条件設定の容易性の観点から、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジブチルカーボネート、及びエチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0036】
本実施形態に用いるポリカーボネートジオールの製造では、触媒を添加することが好ましい。前記触媒としては、特に限定されないが、通常、エステル交換反応に使用される触媒(エステル交換反応触媒)が挙げられる。エステル交換反応触媒としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属の金属化合物(例えば、金属アルコラート(金属アルコキシド)、金属オキシド、金属アミドなどの有機金属化合物;金属水素化物、金属水酸化物などの無機金属化合物;金属炭酸塩、窒素含有金属ホウ酸塩、並びに有機酸の塩基性アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩などの金属塩)が挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、及びカリウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムが挙げられ、その他の金属としては、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、タングステン、レニウム、オスミニウム、イリジウム、白金、金、タリウム、鉛、ビスマス、及びイッテルビウムが挙げられる。これらの触媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カリウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛、及びイッテルビウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む有機化合物(特に金属アルコキシド)及び/又は塩を用いると、ポリカーボネートジオールの重合反応が良好に行われ、得られるポリカーボネートジオールを用いてポリウレタン樹脂などの樹脂を製造する際に影響を与えにくいため好ましい。特に、前記触媒として、チタン、スズ、ジルコニウム、及びイットリビウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む有機化合物(特に金属アルコキシド)及び/又は塩を用いることがより好ましい。
【0037】
本実施形態に用いるポリカーボネートジオールの製造方法の具体例を以下に示す。本実施形態に用いるポリカーボネートジオールの製造は、特に限定されないが、例えば、2段階に分けて行うことができる。ジオールとカーボネートとをモル比(ジオール:カーボネート)で、例えば、20:1〜1:10の割合で混和し、常圧又は減圧下、100〜250℃で1段目の反応を行う。カーボネートとしてジメチルカーボネートを用いる場合、生成するメタノールをジメチルカーボネートとの混合物として除去して低分子量ポリカーボネートジオールを得ることができる。カーボネートとしてジエチルカーボネートを用いる場合、生成するエタノールをジエチルカーボネートとの混合物として除去して低分子量ポリカーボネートジオールを得ることができる。また、カーボネートとしてエチレンカーボネートを用いる場合、生成するエチレングリコールをエチレンカーボネートとの混合物として除去して低分子量ポリカーボネートジオールを得ることができる。次いで、2段目の反応は、前記1段目の反応生成物を、減圧下、160〜250℃で加熱して、未反応のジオールとカーボネートを除去するとともに、低分子量ポリカーボネートジオールを縮合させて、所定の分子量のポリカーボネートジオールを得る反応である。
【0038】
[ポリオール]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、20℃において固体であるポリオール(以下、「固体ポリオール」ともいう。)を含むことが好ましい。本明細書でいう「ポリオール」とは、例えば、数平均分子量が300以上であり、かつヒドロキシル基を2つ以上有する化合物をいう。本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、特定量の固体ポリオールを含むことにより、20℃における濁度及び40℃における濁度を好適な範囲に調整でき、視認性と流動性とを有することで取扱い性が良好となる傾向にあり、樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂)の原料や塗料成分として用いると、優れた透明性を有する樹脂や塗膜を得ることが出来ることが出来る傾向にある。
【0039】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物において、ポリカーボネートジオール組成物中の固体ポリオールの含有量は、0.05重量%以上10重量%以下であることが好ましい。固体ポリオールの含有量が、0.05重量%以上であると、ポリカーボネートジオール組成物の20℃における濁度を高くでき、視認性が優れる傾向にある。固体ポリオールの含有量が、10重量%以下であると、ポリカーボネートジオール組成物の20℃における流動性を維持できる傾向にある。固体ポリオールの含有量が、0.1重量%以上8重量%以下であれば、流動性と視認性とをより一層バランスよく向上できるため好ましい。
【0040】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、20℃において液状の形態であるポリカーボネートジオールと、前記固体ポリオールとを含み、ポリカーボネートジオール組成物における固体ポリオールの割合が、上記範囲内にあることにより、取扱い性(流動性及び視認性)が優れるとともに、樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂)の原料や塗料成分に用いると、透明性に優れた樹脂や塗膜を得ることが出来る傾向にある。
【0041】
本実施形態の固体ポリオールの数平均分子量は、本実施形態の効果をより有効かつ確実に発揮する観点から、300〜10000であることが好ましく、400〜8000であることがより好ましく、500〜5000であることがさらに好ましい。
【0042】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物において、上記固体ポリオールの融点は、30℃以上100℃以下であることが好ましく、35℃以上80℃以下であることがより好ましく、35℃以上60℃以下であることがさらに好ましい。融点が30℃以上であると、ポリカーボネートジオール組成物の20℃における濁度を高くでき、常温(例えば、20℃)での視認性が優れる傾向にある。融点が100℃以下であると、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物から得られる樹脂(例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂などのポリウレタン樹脂)や塗膜の透明性が優れる傾向にある。なお、本実施形態において、固体ポリオールの融点は、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0043】
固体ポリオールの種類としては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリアルキレンポリオール、及びポリカーボネートポリオールが挙げられる。これらの固体ポリオールは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどの1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを1種又は2種以上の多価ヒドロキシ化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール)に付加して得られるポリエーテルポリオール類、テトラヒドロフランなどの開環重合体などが挙げられる。
【0045】
ポリエステルポリオールとしては、特に限定されないが、多価アルコールと多価カルボン酸又はそのエステル、無水物、ハライドなどのエステル形成性誘導体との直接エステル化反応及び/又はエステル交換反応により得られるポリエステルポリオール類が挙げられる。上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール類;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパンなどの3価以上のアルコール類が挙げられる。上記多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類;1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−ジカルボキシルメチレンシクロヘキサン、ナジック酸、メチルナジック酸などの脂環式ジカルボン酸類;トリメリット酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体などのトリカルボン酸類などの多価カルボン酸;これらの多価カルボン酸の酸無水物、該多価カルボン酸のクロライド、ブロマイドなどのハライド、該多価カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステルが挙げられる。
【0046】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリカプロラクトンジオールなどのカプロラクトンの開環重合物が挙げられる。
【0047】
アクリルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、1種又は2種以上のヒドロキル基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体(例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル)の単独重合体、1種又は2種以上のヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体と、このエチレン性不飽和結合含有単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル)との共重合体が挙げられる。
【0048】
ポリアルキレンポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどを挙げることができる。
【0049】
これらの固体ポリオールは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、固体ポリオールは、ポリカーボネートジオールが有する優れた機械強度、耐加水分解性、及び耐熱性を維持できる観点から、ポリカーボネートポリオールであることが好ましい。
ポリカーボネートポリオールとしては、ポリオール成分とカーボネート化合物とを反応させることにより得られる化合物を挙げることができる。ポリオール成分としては、ジオール、3価以上のアルコールなどの多価アルコールを挙げることができる。前記ジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの直鎖状ジオール;2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどの分岐ジオール;1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式系ジオール;4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、1,4−ベンゼンジプロパノール、1,4−ベンゼンジブタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジエタノール、1,3−ベンゼンジプロパノール、1,3−ベンゼンジブタノール、4−(4−ヒドロキシメチルフェニル)ブタノール、3−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]プロパノール等の炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖の二価の脂肪族炭化水素基を有する化合物が挙げられる。p−キシレンジオール、p−テトラクロロキシレンジオールなどの芳香族系ジオール;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテル系ジオールなどを挙げることができ、これらのジオールはそれぞれ1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記カーボネート化合物としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのアルキレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、ホスゲンなどを挙げることができる。
【0050】
[低分子アルコール]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、20℃において固体である低分子アルコール(以下、「固体低分子アルコール」ともいう。)をさらに含んでもよい。本明細書でいう固体低分子アルコールとは、例えば、数平均分子量が300未満のアルコールをいう。
【0051】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、固体低分子アルコールを含むことにより、20℃における濁度及び40℃における濁度を好適な範囲に調整でき、視認性と流動性とを有することで取扱い性が良好となる傾向にあり、樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂)の原料や塗料成分として用いると、優れた透明性を有する樹脂や塗膜を得ることができる傾向にある。
【0052】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物において、固体低分子アルコールの含有量は、1重量%以上20重量%以下であることが好ましく、1重量%以上15重量%以下であることがより好ましく、1重量%以上10重量%以下であることがさらに好ましい。固体低分子アルコールの含有量が、1重量%以上であると、固体ポリオールと併用する際、固体ポリオールの含有量を小さくしても、視認性が優れる傾向にある。固体低分子アルコールの含有量が、20重量%以下であると、ポリカーボネートジオール組成物の流動性がより良好に維持される傾向にある。また、固体低分子アルコールの含有量は、1重量%以上15重量%以下とすると、流動性と視認性とがより一層バランスよく優れる傾向にある。
【0053】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、20℃において液状の形態であるポリカーボネートジオールと、前記固体低分子アルコールとをさらに含み、ポリカーボネートジオール組成物における固体低分子アルコールの割合が、上記範囲内にあることにより、取扱い性(流動性及び視認性)がより一層優れる傾向にある。
【0054】
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物において、固体低分子アルコールの融点は、30℃以上100℃以下であることが好ましく、35℃以上80℃以下であることがより好ましく、35℃以上60℃以下であることがさらに好ましい。融点が30℃以上であると、ポリカーボネートジオール(特に液状の形態であるポリカーボネートジオール)と混ぜ合わせることにより、常温(例えば、20℃)での視認性がより一層優れる傾向にある。固体低分子アルコールの融点が、100℃以下であると、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物から得られる樹脂(特に熱可塑性ポリウレタン樹脂などのポリウレタン樹脂)や塗膜の透明性がより一層優れる傾向にある。なお、本実施形態において、固体低分子アルコールの融点は、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0055】
本実施形態の固体低分子アルコールの種類としては、特に限定されないが、例えば、ペンタデカン−1−オール、ヘキサデカン−1−オール、ヘプタデカン−1−オール、オクタデカン−1−オール、ノナンデカン−1−オール、イタサン−1−オールなどのモノアルコール;ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ノナン−1,9−ジオール、デカン−1、10−ジオール、デカン−1、2−ジオール、ウンデカン−1、11−ジオール、ドデカン−1、12−ジオール、ドデカン−1、2−ジオールなどのジオールが挙げられる。
【0056】
[ポリカーボネートジオール組成物の製造方法]
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物の調製方法は、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネートジオール(例えば、20℃で液状形態であるポリカーボネートジオール)に、固体ポリオール及び/又は固体低分子アルコールを添加して撹拌する方法が挙げられる。撹拌温度及び撹拌時間は、特に限定されず、撹拌温度は、例えば、50〜150℃であり、撹拌時間は、例えば、10分〜5時間であってもよい。
【0057】
<用途>
本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂や熱可塑性エラストマー)の原料、塗料や接着剤などの成分、樹脂(例えば、ポリエステル樹脂やポリイミド樹脂)の改質剤などに好適に用いることができる。特に、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物は、透明性が優れるだけでなく、強度及び耐薬品性が優れる傾向にあるため、特に塗料成分、樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂又は熱可塑性エラストマー、好ましくはポリウレタン樹脂)の原料として好適に利用できる。
【0058】
(ポリウレタン樹脂)
本実施形態のポリウレタン樹脂(例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂)は、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物と有機ポリイソシアネートとを少なくとも反応させることにより得ることができ、さらに鎖延長剤を反応させることにより得ることができる。
【0059】
有機ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、及びその混合物(TDI)、粗製TDI、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;4,4'−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水添XDI)等の脂肪族ジイソシアネート、及びこれらのイソシアネート類のイソシアヌレート化変性品、カルボジイミド化変性品、ビウレット化変性品等が挙げられる。これらの有機ポリイソシアネートは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの有機ポリイソシアネートは、ブロック剤でイソシアネート基をマスク(保護)して用いてもよい。
【0060】
鎖伸長剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン樹脂に用いられる公知の鎖伸長剤、(例えば、水、低分子ポリオール、ポリアミン等)が使用できる。より具体的な鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10−デカンジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン等の低分子ポリオール、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン等のポリアミンが挙げられる。これらの鎖伸長剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
本実施形態の熱可塑性ポリウレタンは、熱安定剤(例えば酸化防止剤)や光安定剤などの安定剤、可塑剤、無機充填剤、滑剤、着色剤、シリコンオイル、発泡剤、難燃剤等を添加してもよく、熱安定剤、光安定剤などの安定剤を添加することが好ましい。
【0062】
本実施形態のポリウレタン樹脂を製造する方法としては、特に限定されず、公知のポリウレタンを製造方法に準じて行ってもよい。具体的には、本実施形態のポリカーボネートジオール組成物と有機ポリイソシアネートとを大気圧下に常温から200℃で反応させることにより、ポリウレタン樹脂を製造できる。さらに鎖延長剤を用いる場合には、ポリカーボネートジオール組成物と有機ポリイソシアネートとの重合反応前に添加してもよく、重合反応中に添加してもよい。本実施形態の熱可塑性ポリウレタンのさらに他の製造方法の具体例としては、例えば、米国特許第5,070,173号を参照できる。
【0063】
ポリウレタン樹脂の製造では、公知の重合触媒や溶媒を用いてもよい。重合触媒としては、特に限定されないが、例えば、ジブチルスズジラウレートが挙げられる。
【0064】
(コーティング組成物)
本実施形態のコーティング組成物は、例えば、以下の(1)〜(3)のいずれかの形態であってもよく、(2)又は(3)の形態であることが好ましく、(3)の形態であることがより好ましい。
(1)本実施形態ポリカーボネートジオール組成物と有機ポリイソシアネートとを含む2液型溶剤系又は水系コーティング組成物
(2)本実施形態のポリカーボネートジオール組成物と有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含む1液型溶剤系又は水系コーティング組成物
(3)本実施形態のポリカーボネートジオール組成物と有機ポリイソシアネートと鎖延長剤とを反応させて得られるポリウレタン樹脂を含む1液型溶剤系又は水系コーティング組成物
【0065】
本実施形態のコーティング組成物(塗料)を製造する方法としては、特に限定されず、公知の製造方法を用いることができる。
【0066】
本実施形態のコーティング組成物(塗料)は、例えば、各種用途に応じて硬化促進剤(触媒)、充填剤、分散剤、難燃剤、染料、有機又は無機顔料、離型剤、流動性調整剤、可塑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤等を含んでもよい。
【0067】
本実施形態のコーティング組成物(塗料)は、溶剤を含んでもよい。溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、水などを挙げることができる。これらの溶剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下に具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態をさらに詳しく説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。後述する実施例及び比較例における各種の物性は下記に示す方法により測定した。
【0069】
1.ポリカーボネートジオール組成物の濁度
ポリカーボネートジオール組成物を測定用セルに入れ、−5℃の冷凍庫に8時間静置する。その後、冷凍庫からセルを取り出し、20±5℃の室温で24時間静置する。測定用セル表面の汚れをふき取った後、濁度計(2100P型、HACH製)を用い自動モードで濁度を測定した。セルをセットし直して3回測定し、その平均値を常温での濁度とした。
40℃での濁度は、ポリカーボネートジオール組成物を入れた測定用セルを40℃の乾燥機に12時間静置し、取り出して3分以内に測定を行った。
【0070】
2.ポリカーボネートジオール組成物の流動性評価
管底から55mm(A線)及び85mm(B線)の高さに標線を付した内径30mm、高さ120mmの平底円筒型透明ガラス製試験権を用いた。50℃の乾燥機で8時間加熱したサンプル(ポリカーボネートジオール組成物)をA線まで計り取った後、20±5℃の室温で、直立状態にて24時間静置する。その後、直ちに台の上で水平に倒し、試験管を倒してからサンプルの液面の先端がB線を通過するまでにかかる時間を流動時間(秒)とし、流動性を評価した。
【0071】
3.ポリカーボネートジオールの組成の決定
ポリカーボネートジオールの組成を以下のとおり決定した。まず、100mlのナスフラスコに、サンプルを1g測り取り、エタノール30g及び水酸化カリウム4gを入れて、混合物を得た。得られた混合物を100℃のオイルバスで1時間加熱した。前記混合物を室温まで冷却後、指示薬としてフェノールフタレインを前記混合物に1〜2滴添加し、塩酸で中和した。その後、前記混合物を冷蔵庫で3時間冷却し、沈殿した塩を濾過で除去した後、濾液をガスクロマトグラフィー(GC)分析した。なお、GC分析は、カラムとしてDB−WAX(米国J&W社製)30m、膜厚0.25μmを付けたガスクロマトグラフィーGC14B(島津製作所製)を用い、ジエチレングリコールジエチルエステルを内部標準として用い、検出器に水素炎イオン化検出器(FID)を用いて行った。カラムの昇温プロファイルは、60℃で5分保持した後、10℃/minで250℃まで昇温するプロファイルとした。
GC分析により得られたジオールの面積値を元に、ポリカーボネートジオール組成物の組成を決定した。
【0072】
4.ポリカーボネートジオール及び固体ポリオールの数平均分子量の決定
ポリカーボネートジオール及び固体ポリオールの数平均分子量は、無水酢酸及びピリジンを用い、水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定すること「中和滴定法(JIS K0070−1992)」によって水酸基価(OH価)を決定し、下記式(1a)を用いて計算した。

数平均分子量=2/(OH価×10-3/56.1) (1a)
【0073】
5.固体ポリオール及び固体低分子アルコールの融点の決定
JIS K0064に準じ、固体ポリオール及び固体低分子アルコールの融点を測定した。
【0074】
6.ポリウレタンフィルムの機械的物性
ポリカーボネートジオール組成物から得られたポリウレタンフィルムを10mm×80mmの短冊型に切り取り、23℃、50%RHの恒温室で3日間養生したものを試験体とした。得られた試験体について、テンシロン引張試験器(ORIENTEC製、RTC−1250A)を用い、チェック間距離50mm、引張速度100mm/分で、破断強度(単位:MPa)及び破断伸度(単位:%)を測定した。
【0075】
7.ポリウレタンフィルムの耐加水分解性
ポリカーボネートジオール組成物から得られたポリウレタンフィルムを10mm×80mmの短冊型に切り取って試験体を得た。得られた試験体を90℃の温水に7日間浸漬した。水分を取った後、23℃、50%RHの恒温室で3日間養生したものを試験体とした。得られた試験体について、テンシロン引張試験器(ORIENTEC製、RTC−1250A)を用い、チェック間距離50mm、引張速度100mm/分で、破断強度(単位:MPa)を測定し、下記式(2a)を用いてポリウレタンフィルムの耐加水分解性を求めた。

耐加水分解性(%)
=(温水浸漬後の破断強度)/(温水浸漬前の破断強度)×100(2a)
【0076】
8.ポリウレタンフィルムの透明性(Tt1/Tt2×100)
ポリカーボネートジオール組成物から得られたポリウレタンフィルムを、90℃の蒸留水に1週間浸漬した。その後、ポリウレタンフィルムから水分を拭き取り、23℃、50%RHの恒温室でポリウレタンフィルムを3日間養生した。JIS K 7105に準じて、浸漬後のポリウレタンフィルムの全光線透過率(Tt1)及び浸漬後のポリウレタンフィルムの全光線透過率(Tt2)を求め、下記式(1)からポリウレタンフィルムの透明性(%)を求めた。

透明性(%)=Tt1/Tt2×100 (1)
【0077】
9.塗膜の透明性(目視評価)
ポリカーボネートジオール組成物から得られた塗膜を50℃で30日間静置後、23℃、50%RHの恒温室で1日間養生した。その後、塗膜の透明性を目視で観察した。高い透明性を有する場合を「1」とし、透明性を有しない場合を「5」として5段階評価で塗膜の透明性を評価した。
【0078】
10.塗膜の耐エタノール性
ポリカーボネートジオール組成物から得られた塗膜について、50%EtOH水溶液に室温で4h浸漬後の塗膜外観を目視で評価した。JISK5600−8−1に準じて欠陥の程度及び量を等級0〜5で表し、塗膜の耐エタノール性とした。
【0079】
11.固体低分子アルコールの含有量
ポリカーボネートジオール組成物(サンプル)1gをアセトン10mlに溶解し、上記のポリカーボネートジオールの組成を決定するための条件と同様にしてGC分析し、得られた内部標準とジオールの面積値を元に、ポリカーボネートジオール組成物中の固体低分子アルコールの含有量を決定した。
【0080】
[重合例1]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコにジメチルカーボネートを680g(7.6mol)、1,5−ペンタンジオールを400g(3.9mol)、1,6−ヘキサンジオールを480g(4.1mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.14gをさらに加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱して反応を開始した。90〜140℃まで温度を上げながら、生成するメタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去して20時間反応を行った。その後、17kPaまで減圧し、メタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら、150℃でさらに15時間反応した。2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.39g加え120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオール(PC−1と称す。)を得た。当該ポリカーボネートジオールは、残留モノマーとして固体アルコールである1,6−ヘキサンジオールを0.2%含んでいた。
【0081】
[重合例2]
重合例1に示す装置を用いて重合を行った。エチレンカーボネートを800g(9.1mol)、1,3−プロパンジオールを700g(9.2mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.13gを加え、常圧で攪拌・加熱した。反応温度を160℃まで徐々に上げ、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら20時間反応を行った。その後、15kPaまで減圧し、ジオールとエチレンカーボネートを留去しながら、160℃でさらに12時間反応した。2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.35g加え120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオール(PC−2と称す。)を得た。
【0082】
[重合例3]
重合例1に示す装置を用いて重合を行った。エチレンカーボネートを580g(6.6mol)、1,4−ブタンジオールを400g(4.4mol)、1,6−ヘキサンジオールを250g(2.1mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.11gを加え、常圧で攪拌・加熱した。反応温度を160℃まで徐々に上げ、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら20時間反応を行った。その後、15kPaまで減圧し、ジオールとエチレンカーボネートを留去しながら、160℃でさらに6時間反応した。2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.33g加え120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオール(PC−3と称す。)を得た。当該ポリカーボネートジオールは、残留モノマーとして固体アルコールである1,6−ヘキサンジオールを1.0%、1,4−ブタンジオールを0.6%含んでいた。
【0083】
[重合例4]
重合例1に示す装置を用いて重合を行った。ジメチルカーボネートを570g(6.3mol)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールを400g(3.4mol)、1,6−ヘキサンジオールを400g(3.4mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.12gを加え、常圧で攪拌・加熱した。反応温度を160℃まで徐々に上げ、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら20時間反応を行った。その後、15kPaまで減圧し、ジオールとエチレンカーボネートを留去しながら、160℃でさらに12時間反応した。2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.34g加え120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオール(PC−4と称す。)を得た。当該ポリカーボネートジオールは、残留モノマーとして固体アルコールである1,6−ヘキサンジオールを0.3%含んでいた。
【0084】
[重合例5]
重合例1に示す装置を用いて重合を行った。ジエチルカーボネートを820g(7.0mol)、1,6−ヘキサンジオールを860g(7.3mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.14gを加え、常圧で撹拌し、90〜160℃まで温度を上げながら、生成するエタノールとジエチルカーボネートとの混合物を留去して20時間反応を行った。その後、17kPaまで減圧し、エタノールとジエチルカーボネートの混合物を留去しながら、160℃でさらに12時間反応した。2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.34g加え120℃で5時間加熱することにより、ポリカーボネートジオール(PC−5と称す。)を得た。当該ポリカーボネートジオールは、残留モノマーとして固体アルコールである1,6−ヘキサンジオールを0.4%含んでいた。
【0085】
[重合例6]
重合例1に示す装置を用いて重合を行った。ジエチルカーボネートを820g(7.0mol)、1,5−ペンタンジオールを770g(7.4mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.14gを加え、常圧で撹拌し、90〜160℃まで温度を上げながら、生成するエタノールとジエチルカーボネートとの混合物を留去して20時間反応を行った。その後、17kPaまで減圧し、エタノールとジエチルカーボネートの混合物を留去しながら、160℃でさらに12時間反応した。2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.34g加え120℃で5時間加熱することにより、ポリカーボネートジオール(PC−と称する。)を得た。
【0086】
重合例1〜5で得られたポリカーボネートジオールの評価結果を、下記表1に示す。
【0087】
以下の実施例、比較例において、固体ポリオールとしてPC−5と6を、固体低分子アルコールとして1,6−ヘキサンジオール(融点:41℃)を用いた。
【0088】
【表1】
※表中の各繰り返し単位の組成は、Rのみを示す。
※表中の20℃の流動性は、90秒以下である場合には融点を測定していない
【0089】
[実施例1−1〜1−10、比較例1−1、及び比較例1−2]
攪拌装置を備えた1Lのガラス製フラスコに、表2に示す原料を、表2に示す添加量で添加して80に加熱して5時間撹拌しポリカーボネートジオール組成物(以下、組成物−1〜組成物−10、組成物20、及び組成物21とする。)を得た。
【0090】
【表2】
【0091】
実施例1−1〜1−10、比較例1−1、及び比較例1−2のポリカーボネートジオール組成物の各種特性を表3に示す。
【0092】
【表3】
【0093】
[実施例2−1〜2―7]
攪拌装置、温度計及び冷却管の付いた反応器に、各実施例1〜7で得たポリカーボネートジオール組成物を200g、ヘキサメチレンジイソシアネート34g、触媒としてジブチルスズジラウレート0.02gを仕込み、70℃で5時間反応させて末端イソシアネート(NCO)基を持つウレタンプレポリマーを得た。前記ウレタンプレポリマーに溶剤としてジメチルホルムアミド600gを加えて溶液を得た。その後、得られた溶液に、鎖延長剤としてイソホロンジアミン17gを加えて35℃で1時間撹拌することにより、ポリウレタン樹脂溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液をガラス板上に流延し、室温で30分間放置して溶剤をとばした後、100℃の乾燥機に2時間入れて乾燥させてポリウレタンフィルムを得た(実施例2−1〜2−7)。該ポリウレタンフィルムを用いて物性の評価を行った。該評価結果を表4に示した。
[比較例2−1及び2−2]
ポリカーボネートジオール組成物として、各比較例1及び2で得られたポリカーボネートジオール組成物を用いた以外は、実施例2−1と同様にしてポリウレタンフィルムを得た(比較例2−1及び2−2)。該ポリウレタンフィルムを用いて物性の評価を行った。該評価結果を表4に示した。
【0094】
【表4】
【0095】
[実施例3−1〜3−4]
実施例1−1〜1−4で得られたポリカーボネートジオール組成物を40g、レベリング剤としてBYK−331(BYKケミカル製)を0.75g、シンナー(キシレン/酢酸ブチル=70/30(重量比))が2重量%となるように溶解したジブチルスズジラウレート溶液を1.25g、並びに前記シンナーを40g混ぜて撹拌し、塗料主剤を得た。得られた塗料主剤に、硬化剤として有機ポリイソシアネート(デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ製、イソシアネート(NCO)含量:23.1%)を7.5g加えて、塗布液を調製した。該塗布液を、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂板上に噴霧塗布し、室温で2時間シンナーを飛ばした後、80℃で2時間加熱硬化させて塗膜を得た。該塗膜を用いて物性の評価を行った。該評価結果を表5に示した。
【0096】
[比較例3−1及び3−2]
ポリカーボネートジオール組成物として、各比較例1−1及び1−2で得られたポリカーボネートジオール組成物を用いた以外は、実施例3−1と同様にして塗膜を得た。該塗膜を用いて物性の評価を行った。該評価結果を表5に示した。
【0097】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のポリカーボネートジオール組成物は、流動性及び視認性が優れ、取扱い性が良好であるとともに、樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂)の原料や塗料成分に用いると、透明性に優れる樹脂や塗膜を得ることができるため、樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂)の原料や塗料成分として好適に用いることができる。