(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記単量体(II)が、前記一般式(2)中のn2が1である単量体(IIa)及び前記一般式(2)中のn2が2〜100である単量体(IIb)を含む、請求項1に記載の液状レオロジー改質剤。
前記ポリカルボン酸系共重合体及びその塩の重量平均分子量が、ポリエチレングリコール換算で5,000〜60,000である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液状レオロジー改質剤。
水溶性セルロース系増粘剤が、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項5に記載の液状レオロジー改質剤。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物に限定されず、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
【0018】
[1.液状レオロジー改質剤]
本発明の液状レオロジー改質剤は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を少なくとも含有する。
【0019】
<(A)成分:水溶性増粘剤>
(A)成分は、水溶性増粘剤である。(A)成分は、(B)及び(C)成分と共に、セメント組成物等の水に粉体を分散させてなる分散体に適度な粘性を付与することができることが好ましい。これにより、任意の材料分離抵抗性及び液状レオロジー特性をももたらすことができる。(A)成分は、(B)及び(C)成分と共に配合して得られる組成物が良好な相溶性を有し、粘性及び流動性を長時間保存後も保持できることが好ましい。
【0020】
水溶性増粘剤は、水溶性を示し、溶解後の水溶液の粘度を溶解前よりも上昇させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ヒドロキシ基を含有する水溶性ポリエチレングリコール系増粘剤、水溶性ポリビニルアルコール系増粘剤、水溶性多糖誘導体系増粘剤が挙げられる。水溶性と粘度を上昇させる度合の調整をし易いので、好ましくは多糖誘導体系増粘剤であり、より好ましくは水溶性セルロース系増粘剤である。水溶性セルロース系増粘剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースなどのヒドロキシアルキルアルキルセルロース、及びそれらの塩が挙げられる。水溶性ポリビニルアルコール系増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール及びその塩が挙げられる。水溶性セルロース系増粘剤としては、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがより好ましい。
【0021】
(置換度)
水溶性セルロース系増粘剤は、通常、その構成単糖中の少なくとも1つの水酸基の水素原子が、置換基に置換されている。置換基としては、水素原子以外の基であればよく、例えば、メチル基、エチル基等の炭素原子数1〜5のアルキル基、水酸基を有する基(例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等の炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基)が挙げられる。水溶性セルロース系増粘剤が有する置換基の種類は、1種でもよいし複数でもよく、混練水への適度な溶解性、液状レオロジーを得ることができればよい。水溶性セルロース系増粘剤の構成単糖1単位当たりの置換度(エーテル化度)は、0.5以上、更に1.0以上が好ましく、そして、2.5以下、更に2.0以下が好ましい。
【0022】
(多糖類)
水溶性セルロース系増粘剤の原料は、通常は、多糖類である。多糖類は、特に限定されるものではないが、例えば、セルロース;スターチ;コンニャクマンナン、トロロアオイ粘着物等の根茎多糖類;アラビアガム、トラガカントガム、カラヤガム等の樹液多糖類;ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム等の種子多糖類;寒天、カラギーナン、アルギン等の海草多糖類;キチン、キトサンヘパリン、コンドロイチン硫酸等の動物性多糖類;デキストラン、キサンタンガム等の微生物多糖類が挙げられる。
【0023】
(水溶性増粘剤の分子量)
水溶性増粘剤の重量平均分子量は、例えばセメント組成物中などで水への溶解性とポンプ圧送性を得る観点から、その下限値が、100,000以上が好ましく、200,000以上がより好ましく、500,000以上がさらに好ましく、その上限値が、5,000,000以下が好ましく、2,000,000以下がより好ましく、1,000,000以下がさらに好ましい。
【0024】
重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にてポリエチレングリコール換算する公知の方法にて測定できる。GPCの測定条件として以下の条件を挙げることができる。本明細書に記載の重量平均分子量は、この条件で測定した値である。
測定装置:東ソー製
使用カラム:Shodex Column OH−pak SB−806HQ、SB−804HQ、SB−802.5HQ
溶離液:0.05mM硝酸ナトリウム/アセトニトリル 8/2(v/v)
標準物質:ポリエチレングリコール(東ソー製、GLサイエンス製)
検出器:示差屈折計(東ソー製)
検量線:ポリエチレングリコール基準
【0025】
(水溶性増粘剤の粘度)
水溶性増粘剤の1質量%水分散液の20℃でのB型粘度は、その下限値が、10mPa・s以上が好ましく、50mPa・s以上がより好ましく、100mPa・sがさらに好ましく、その上限値が、100,000mPa・s以下が好ましく、50,000mPa・s以下がより好ましく、10,000mPa・s以下がさらに好ましい。10mPa・s未満の場合は、液状レオロジー改質剤の粘度が適切とならないおそれがあり、セメント組成物に適切な保水性及び材料分離抵抗性を与えられないおそれがある。一方で、100,000mPa・sを超える場合、水溶性増粘剤の水への溶解性が乏しく、凝集物を形成する傾向がある。
【0026】
(A)成分は、1種類の水溶性増粘剤でもよいし、2種類以上の水溶性増粘剤の組み合わせでもよい。
【0027】
水溶性増粘剤の剤形は特に限定されず、粉末、粒子等の固形、及び、溶液、スラリー、分散液等の液状の何れでもよい。水溶性増粘剤が粉末の場合、グリオキサールなどを予め付加してから(B)及び(C)成分に添加してもよい。これにより、ママコを防ぐことができる。(A)成分と共にトリブチルフォスフェート、ポリアルキレングリコール誘導体等の消泡剤を併用してもよい。(A)成分が空気連行性を有する成分、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む場合には、上記消泡剤の併用が好ましい。
【0028】
<(B)成分:分散剤>
(B)成分は、分散剤である。本発明の液状レオロジー改質剤は、(A)〜(C)成分を特定の含有割合で含むことにより、(B)成分としての分散剤の選択自由度が高い。これにより、本発明の液状レオロジー改質剤は、幅広い水セメント比のセメント組成物に対し好適に利用可能であり、骨材の性能に応じた液状レオロジー改質剤の配合制御が容易である。
【0029】
分散剤は特に限定されないが、例えば、AE減水剤(例えば、リグニンスルホン酸系分散剤、オキシカルボン酸系分散剤)、ナフタレンスルホン酸系分散剤、アミノスルホン酸系分散剤、及び後述する(C)成分以外のポリカルボン酸系分散剤などが挙げられる。
【0030】
(B)成分は、1種類の分散剤でもよいし、2種類以上の分散剤の組み合わせでもよい。
【0031】
<(C)成分:ポリカルボン酸系共重合体及びその塩>
(C)成分は、は、以下に説明するポリカルボン酸系共重合体及びその塩から選ばれる少なくとも1つの化合物である。(C)成分は、(A)及び(B)成分の両方との間で良好な親和性を発揮するが、その理由は、本発明で用いられるポリカルボン酸系共重合体が適切な数のカルボン酸基と適切な数の水酸基を有しているため、(B)成分に含まれるリグニンスルホン酸、オキシカルボン酸、ナフタレンスルホン酸、アミノスルホン酸および(A)成分に含まれる水溶性増粘剤に含まれる水酸基の両者と非常に優れた親和性を持つためであると推測される。
【0032】
(ポリカルボン酸系共重合体)
ポリカルボン酸系共重合体は、単量体(I)〜(III)又は(I)〜(IV)の共重合により得られる共重合体である。共重合体を得る際の単量体(I)の配合率は、5〜90質量%、好ましくは8〜80質量%、より好ましくは10〜70質量%である。単量体(II)の配合率は、5〜90質量%、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは15〜50質量%である。単量体(III)の配合率は、1〜50質量%であり、好ましくは2〜40質量%であり、より好ましくは3〜25質量%である。単量体(IV)の配合率は、0〜50質量%であり、好ましくは0〜30質量%である。従って、配合率はそれぞれ、単量体(I)5〜90質量%、単量体(II)5〜90質量%、単量体(III)1〜50質量%、及び単量体(IV)0〜50質量%の組み合わせが好ましく、単量体(I)8〜80質量%、単量体(II)10〜70重量%、単量体(III)2〜40質量%、及び単量体(IV)0〜50又は0〜30質量%の組み合わせがより好ましく、単量体(I)10〜70質量%、単量体(II)15〜50質量%、単量体(III)3〜25質量%、及び単量体(IV)0〜50又は0〜30質量%の組み合わせが更に好ましい。上記各単量体の配合率は、単量体(I)の配合率+単量体(II)の配合率+単量体(III)+単量体(IV)の配合率=100質量%としたときの配合率である。
【0033】
(一般式(1)で表される単量体(I))
単量体(I)は、下記一般式(1)で表される。
【化3】
(式中、R
1は、炭素原子数2〜5のアルケニル基を表す。A
1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜100の数を表す。R
2は、水素原子又は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。)
【0034】
一般式(1)中のR
1は、炭素原子数2〜5のアルケニル基を表す。該アルケニル基の炭素原子数は、好ましくは3〜5である。R
1として具体的には、アリル基、メタリル基、3−メチル−3−ブテン−1−オールの残基等を例示することができるが、これらに限定されない。
【0035】
一般式(1)中のA
1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。該オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)、オキシブチレン基(ブチレングリコール単位)が挙げられ、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)が好ましい。
【0036】
上記「同一若しくは異なって」とは、一般式(1)中にA
1Oが複数含まれる場合(n1が2以上の場合)、それぞれのA
1Oが同一のオキシアルキレン基であってもよいし、異なる(2種類以上の)オキシアルキレン基であってもよい、ことを意味する。一般式(1)中にA
1Oが複数含まれる場合の態様としては、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)及びオキシブチレン基(ブチレングリコール単位)からなる群から選ばれる2以上のオキシアルキレン基が混在する態様が挙げられ、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシプロピレン基(プロピレングリコール)とが混在する態様、又はオキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシブチレン基(ブチレングリコール単位)とが混在する態様であることが好ましく、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)とが混在する態様であることがより好ましい。異なるオキシアルキレン基が混在する態様において、2種類以上のオキシアルキレン基の付加は、ブロック状の付加であってもよく、ランダム状の付加であってもよい。
【0037】
一般式(1)中のn1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜100の数を表す。n1は、1〜50が好ましく、5〜50がより好ましく、8〜50がさらに好ましい。平均付加モル数とは、単量体1モルに付加しているアルキレングリコール単位のモル数の平均値を意味する。
【0038】
一般式(1)中のR
2は、水素原子又は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。炭素原子数が大きくなると、液状レオロジー改質剤のセメント分散性が十分発揮されないおそれがあるため、R
2は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素原子数1〜5の炭化水素基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましい。
【0039】
単量体(I)の製造方法としては、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを1〜100モル付加する方法が挙げられる。
【0040】
単量体(I)としては、例えば、(ポリ)エチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテルが挙げられる。単量体(I)としては、これらのうち1種若しくは2種以上を用いることができるが、親水性及び疎水性のバランスから、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキサイド付加物又は(ポリ)エチレングリコール(メタ)アリルエーテルが好ましい。前記単量体(I)の具体例においても、オキシアルキレン基(アルキレングリコール単位)の平均付加モル数は1〜70が好ましく、5〜70がより好ましく、8〜70が更に好ましい。なお、本明細書において「(ポリ)」は、その直後に記載される構成要素又は原料が1個又は2個以上結合していることを意味し、「(メタ)アリル」は、「アリル又はメタリル」を意味する。
【0041】
単量体(I)は一般式(1)で表される単量体1種類でもよいし、2種類以上の組み合わせでもよい。
【0042】
単量体(I)の製造方法は、特に制限されないが、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを1〜100モル付加する方法が挙げられる。
【0043】
(一般式(2)で表される単量体(II))
単量体(II)は、下記一般式(2)で表される。
【0045】
(式中、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。mは、0〜2の数を表す。A
2Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。n2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜100の数を表す。Xは、水素原子又は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。)
【0046】
一般式(2)中のR
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。
【0047】
一般式(2)中のA
2Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。該オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)、オキシブチレン基(ブチレングリコール単位)が挙げられ、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)が好ましい。
【0048】
上記「同一若しくは異なって」とは、一般式(2)中にA
2Oが複数含まれる場合(n2が2以上の場合)、それぞれのA
2Oが同一のオキシアルキレン基であってもよいし、異なる(2種類以上の)オキシアルキレン基であってもよい、ことを意味する。一般式(2)中にA
2Oが複数含まれる場合の態様としては、オキシエチレン基(エチレングリコール)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール)及びオキシブチレン基(ブチレングリコール単位)からなる群から選ばれる2以上のオキシアルキレン基が混在する態様が挙げられ、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)とが混在する態様、又はオキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシブチレン基(ブチレングリコール単位)とが混在する態様であることが好ましく、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)とが混在する態様であることがより好ましい。異なるオキシアルキレン基が混在する態様において、2種類以上のオキシアルキレン基の付加は、ブロック状の付加であってもよく、ランダム状の付加であってもよい。
【0049】
一般式(2)中のn2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜100の数を表す。n2は、1〜50が好ましい。平均付加モル数とは、単量体1モルに付加しているアルキレングリコール単位のモル数の平均値を意味する。
【0050】
単量体(II)は、一般式(2)で表される単量体1種類でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。単量体(II)は、オキシアルキレン基の平均付加モル数が異なる2種の単量体(IIa)及び(IIb)の組み合わせを含むことが好ましく、当該組み合わせであることがより好ましい。これにより、セメント組成物は、液状レオロジー改質剤を添加後長時間経過しても優れ及び流動性を発揮することができる。単量体(IIa)の付加モル数n2aは1であり、単量体(IIb)の平均付加モル数n2bが2〜100が好ましく、さらに好ましくは5〜50である。
【0051】
単量体(II)が単量体(IIa)及び(IIb)である場合、それぞれの質量比率(合計を100質量%とする)は、(IIa)/(IIb)が(1〜99)/(99〜1)であることが好ましく、(20〜80)/(80〜20)であることがより好ましく、(40〜70)/(60〜30)であることがさらに好ましい。
【0052】
一般式(2)中のXは、水素原子又は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。炭素原子数が大きくなると、液状レオロジー改質剤のセメント分散性が十分発揮されないおそれがあるため、Xは水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素原子数1〜5の炭化水素基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましい。
【0053】
単量体(II)としては、例えば、(メタ)アクリレート(以下、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート又はメタアクリレート」を意味する)等の不飽和モノカルボン酸と、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールなどの(ポリ)アルキレングリコールとのエステル化物が挙げられる。具体的には、例えば、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。単量体(II)としては、これらのうち1種若しくは2種以上を組み合わせて用いることができるが、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシプロピルアクリレート)を用いることがより好ましい。(ポリ)アルキレングリコールの平均付加モル数は1〜50であることが好ましい。単量体(IIa)が(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートである場合、そのオキシアルキレン基の付加モル数は1であり、単量体(IIb)が(ポリ)アルキレングリコールである場合、単量体(IIb)がメトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートの場合、そのオキシアルキレン基の付加モル数は、2〜100であることが好ましく、5〜50がより好ましい。
【0054】
(不飽和モノカルボン酸系単量体(III))
不飽和モノカルボン酸系単量体(III)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のカルボン酸類、及びこれらの塩(例えば、一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩)を挙げることができる。単量体(III)は、これらのうち1種でもよいし2種以上の組み合わせでもよく、中でも、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩を含むことが好ましい。アクリル酸又はその塩とメタクリル酸又はその塩の2種を併用する場合、アクリル酸又はその塩(III−1)とメタクリル酸又はその塩(III−2)の質量比率(合計を100質量%)〔(III−1)/(III−2)〕が(1〜50%)/(99%〜50%)であることが好ましい。単量体(III)は、上述したような化合物群のうちの1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0055】
((I)〜(III)以外の単量体(IV))
単量体(IV)は、単量体(I)、(II)及び(III)からなる群から選ばれる1又は2以上の単量体と共重合可能な単量体であれば特に限定されない。なお、単量体(IV)は、単量体(I)及び単量体(II)及び単量体(III)を含まない。
【0056】
単量体(IV)としては、例えば、下記の単量体が挙げられる。なお、以下の単量体の例には、単量体(I)〜(III)は含まれない。単量体(IV)は、1種でもよく2種以上の組み合わせでもよい。
【0057】
一般式(IV−1):
【化5】
で示されるジアリルビスフェノール類、例えば4,4’−ジヒドロキシジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの3及び3’位アリル置換物;
【0058】
一般式(IV−2):
【化6】
で示されるモノアリルビスフェノール類、例えば4,4’−ジヒドロキシジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの3位アリル置換物;
【0059】
一般式(IV−3):
【化7】
で示されるアリルフェノール;
【0060】
マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;
上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;
上記アルコール又はアミンに、炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させた(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル又は(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミンと、上記不飽和ジカルボン酸類との、ハーフエステル、ハーフアミド、ジエステル、ジアミド類;
上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;
マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;
炭素原子数1〜30のアルコールに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させた(ポリ)アルキレンアルキルエーテルと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;
(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加した、(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等;
【0061】
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;
ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;
トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;
ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;
メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;
1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;
ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン等のジエン類;
【0062】
(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;
(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;
ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;
(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;
メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のビニルエーテル又はアリルエーテル類;及び、
ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体。
【0063】
ポリカルボン酸系共重合体及びその塩を得るにあたり、必要に応じて、単量体(I)、単量体(II)、単量体(III)及び単量体(IV)以外の単量体を用いてもよい。
【0064】
(ポリカルボン酸系共重合体の塩)
ポリカルボン酸系共重合体の塩としては例えば、上記共重合体の一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が挙げられる。
【0065】
(製造方法)
ポリカルボン酸系共重合体及びその塩は、それぞれの所定の単量体を、公知の方法によって同時に又は逐次に共重合させて製造することができる。該方法としては、例えば、溶媒中での重合、塊状重合などの重合方法が挙げられる。
【0066】
溶媒中での重合において使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。原料単量体又は得られる共重合体の溶解性の面から、水又は低級アルコールからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、その中でも水を用いることがより好ましい。
【0067】
溶媒中で重合反応を行う場合は、各単量体と重合開始剤を各々反応容器に連続滴下してもよいし、各単量体の混合物と重合開始剤を各々反応容器に連続滴下してもよい。また、反応容器に溶媒を仕込み、単量体と溶媒の混合物と、重合開始剤溶液を各々反応容器に連続滴下してもよいし、単量体の一部又は全部を反応容器に仕込み、重合開始剤を連続滴下してもよい。
【0068】
重合反応に使用し得る重合開始剤は、特に限定されない。水溶媒中での重合反応に使用し得る重合開始剤としては例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの水溶性有機過酸化物;過酸化水素などの過酸化物が挙げられる。この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩などの促進剤を併用することもできる。また、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂環式又は脂肪族炭化水素、エステル類あるいはケトン類等の溶媒中で共重合を行う際には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイドなどのパーオキサイド;クメンパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリルなどの芳香族アゾ化合物などが重合開始剤として使用できる。この際、アミン化合物などの促進剤や、アスコルビン酸などの還元剤を併用することもできる。水−低級アルコール混合溶剤中で重合反応を行う場合に使用し得る重合開始剤は、前述の重合開始剤あるいは重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択すればよい。重合温度は、用いる溶媒、重合開始剤の種類等重合条件によって適宜異なるが、通常30〜120℃である。
【0069】
重合反応においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いて分子量を調整してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、又は、2−メルカプトエタンスルホン酸などの既知のチオール系化合物;亜リン酸、次亜リン酸、又はその塩(例えば、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びそれらの塩(例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム)の低級酸化物及びそれらの塩が挙げられる。連鎖移動剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。更に、ポリカルボン酸系共重合体及びその塩の分子量調整のためには、単量体として、上記単量体(I)〜(IV)以外に、更に連鎖移動性の高い単量体(V)を用いることも有効である。連鎖移動性の高い単量体(V)としては、例えば(メタ)アリルスルホン酸(塩)系単量体が挙げられる。単量体(V)の配合率は、ポリカルボン酸系共重合体又はその塩において、通常は20質量%以下であり、10質量%以下であることが好ましい。なお、上記単量体(V)の配合率は、単量体(I)の配合率+単量体(II)の配合率+単量体(III)の配合率+単量体(IV)の配合率=100質量%としたときの配合率である。
【0070】
共重合体を得る際に水溶媒中で重合反応を行う場合、重合反応時のpHは通常不飽和結合を有する単量体の影響で強酸性となるが、適当なpHに調整してもよい。pHの調整には酸性物質を用いることができ、酸性物質としては、例えば、リン酸、硫酸、硝酸、アルキルリン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、(アルキル)ベンゼンスルホン酸が挙げられる。酸性物質は、pH緩衝作用がある等の利点から、リン酸が好ましい。エステル系の単量体が有するエステル結合の不安定さを解消するためには、重合反応のpHは2〜7が好ましい。pHの調整にはアルカリ性物質を用いてもよく、例えば、NaOH、Ca(OH)
2が挙げられる。pH調整は、重合反応前の単量体に対して行ってもよいし、重合反応後の共重合体溶液に対して行ってもよい。また、重合反応前にアルカリ性物質を添加して重合反応を行い、その後得られる共重合体に対してpH調整を行ってもよい。
【0071】
(分子量)
ポリカルボン酸系共重合体及びその塩の重量平均分子量は、5,000以上が好ましい。5,000未満であると、液状レオロジー改質剤はセメント分散剤としての所望の効果を発揮しないおそれがある。例えば、セメント組成物に添加しても、リグニンスルホン酸系分散剤、オキシカルボン酸系分散剤などのAE減水剤を上回る減水率が得られない、流動性又は作業性が改善されない等のおそれがある。重量平均分子量の上限は、50,000以下が好ましい。50,000を超えると、セメント組成物中で凝集作用を示すため作業性の低下を招くおそれがある。従って、重量平均分子量は、5,000〜50,000が好ましく、8,000〜40,000がより好ましい。
【0072】
(分子量分布)
ポリカルボン酸系共重合体又はその塩の分子量分布(Mw/Mn)は1.2以上が好ましく、1.4以上がより好ましい。上限は、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましい。従って、Mw/Mnは、1.2〜3.0が好ましく、1.4〜2.5がより好ましい。
【0073】
(C)成分は、ポリカルボン酸系共重合体及びその塩から選ばれる1種類でもよいし、2種類以上の組み合わせでもよい。
【0074】
<(D)成分:(ポリ)アルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体>
本発明の液状レオロジー改質剤は、(D)成分を含有してもよい。(D)成分は、(ポリ)アルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体である。本発明の液状レオロジー改質剤が(D)成分を含有することにより、得られる液状レオロジー改質剤は、例えば適度な自由水の増加など、セメント組成物の状態を改善させ、ワーカビリティーを向上させることができる。
【0075】
(ポリ)アルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体の具体例及び好ましい例は、前記単量体(I)としての一般式(1)で表される化合物の具体例及び好ましい例と同様である。(ポリ)アルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体は、前記単量体(I)と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0076】
成分(D)は、1種類の(ポリ)アルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体でもよいし、2種類以上の組み合わせでもよい。
【0077】
本発明の液状レオロジー改質剤における(D)成分の含有割合は、(C)成分100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。30質量%を超える場合には、セメント組成物での分散性が十分発揮されないおそれがあるので好ましくない。また、下限は、(D)成分によるワーカビリティーの向上効果を得るためには、通常は0.1質量%である。
【0078】
(D)成分は、(C)成分とは別個に他の成分に配合してもよいし、(C)成分と共に配合してもよい。例えば、ポリカルボン酸系共重合体又はその塩の製造時において共重合されなかった単量体(I)の残留物が存在することがあり、これらを(C)及び(D)成分として使用してもよい。ポリカルボン酸系共重合体又はその塩を製造する際に、原料として用いる単量体(I)が、ポリカルボン酸系共重合体又はその塩とは別に残留している時点で重合反応を停止することによって、(ポリ)アルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体とポリカルボン酸系共重合体又はその塩とを含有する組成物を得ることができる。前記重合反応を停止する時点は、単量体(I)の、ポリカルボン酸系共重合体又はその塩に対する配合率に応じて定めることができる。すなわち、(ポリ)アルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体の、ポリカルボン酸系共重合体又はその塩に対する残留量が、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下の時点で、重合反応を停止する。また、前記残留量の下限が通常1質量%の時点で、重合反応を停止する。
【0079】
<(E)成分:両末端基が水素原子である水溶性ポリアルキレングリコール>
本発明の液状レオロジー改質剤は、(E)成分を含有してもよい。(E)成分は、両末端基が水素原子である水溶性ポリアルキレングリコールである。両末端基が水素原子である、とは、主鎖の末端が水素原子であること、すなわち主鎖の末端が水素原子以外の置換基で置換されていないことを意味する。水溶性とは、水に可溶なことを意味する。
【0080】
両末端基が水素原子である水溶性ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリブチレングリコール等が挙げられ、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0081】
両末端基が水素原子である水溶性ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、300〜2,000が好ましく、300〜1,000がより好ましい。
【0082】
(E)成分は、1種類の両末端基が水素原子である水溶性ポリアルキレングリコールでもよいし、2種類以上の組み合わせでもよい。
【0083】
本発明の液状レオロジー改質剤における(E)成分の含有割合は、(C)成分に対して通常は1重量%未満である。下限は特に限定されないが、(C)成分に対し通常は0.001重量%以上である。
【0084】
(E)成分は、(C)成分とは別個に他の成分に配合してもよいし、(C)成分と共に配合してもよい。例えば、ポリカルボン酸系共重合体又はその塩の製造時において、両末端基が水素原子である水溶性ポリアルキレングリコールが副生成物として生じることがあり、これらを(C)及び(E)成分として使用してもよい。
【0085】
<(A)〜(E)以外の成分>
液状レオロジー改質剤は、所望の効果を阻害しない範囲で、(A)〜(E)以外の他の成分、例えば、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動剤、遅延剤、急結剤、粉塵低減剤、水中不分離性混和剤、分離低減剤、ポンプ圧送助剤、防凍・耐寒剤、アルカリ骨材反応抑制剤、中性化防止剤、収縮低減剤、水和熱抑制剤、起泡剤、発泡剤、即脱用混和剤、及びこれらから選ばれる2以上の組み合わせを含有してもよい。
【0086】
((A)〜(C)成分の含有割合)
本発明の液状レオロジー改質剤における各成分の含量比(固形分)は、任意に設定すればよいが、(A)成分:(B)成分:(C)成分=(0.1〜10質量%):(0.5〜50質量%):(0.1〜10質量%)であり、好ましくは(A)成分:(B)成分:(C)成分=(0.5〜5質量%):(1.0〜30質量%):(0.5〜5質量%)である。
【0087】
(A)成分の含有割合が0.1質量%より低いと、これを活用するセメント組成物に対し、材料分離抵抗性やブリーディング抑制効果を発現させることができないおそれがある。10質量%より高いと、セメント組成物の流動性を発揮できないおそれがあり、また粘性も著しく増加し取り扱いが困難となるおそれがある。
【0088】
(B)成分の含有割合が0.5質量%より低いと、所定のセメント分散性を発揮することができないおそれがある。50質量%より高いと、これを用いるセメント組成物にブリーディングが生じるおそれがある。
【0089】
(C)成分の含有割合が0.1質量%より低いと、レオロジー改質剤の分離によって貯蔵安定性が悪くなり、改質剤として利用できないおそれがある。10質量%より高いと、一定の初期減水性を担保することができなくなるおそれがある。
【0090】
本発明の液状レオロジー改質剤の(A)〜(C)成分の含有割合がそれぞれ上記範囲内であれば、この範囲で(A)及び(B)成分の配合比を任意に設定しても、温度条件に拘らず良好な貯蔵安定性が得られうる。そのため、本発明のレオロジー改質剤は、高温環境下においても、タンク内、輸送ローリー車及び施工現場での貯蔵安定性が非常に良好である。
【0091】
<製造方法>
液状レオロジー改質剤の製造方法は特に限定されず、通常は、(A)〜(C)成分及び任意の成分を混合すればよい。混合方法は特に限定されず、例えば、各成分を溶液に添加して混合してもよいし、少なくとも1つの成分を溶媒中に分散、混合、懸濁又は溶解させ、そこへ残りの成分を添加混合してもよい。少なくとも、(C)成分及び必要に応じて含まれる(D)及び(E)成分は、溶媒中に分散、混合、懸濁又は溶解させた状態であることが好ましい。
【0092】
溶媒は、通常は水性溶媒である。水性溶媒としては、例えば、水、炭素数1〜6のアルコール(エチルアルコール、メチルアルコール、エチレングリコール及びジエチレングリコール等)及び炭素数1〜6のケトン(メチルイソブチルケトン及びアセトン等)等が挙げられる。これらの水性溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。水性溶媒としては、水が好ましい。
【0093】
<剤形、形態>
液状レオロジー改質剤の形態は特に限定されず、溶液、懸濁液、混合液、分散液等の液剤、これらの液の乾燥、粉体化処理物等の粉剤でもよい。また、セメント粉末、ドライモルタル等のセメント組成物を構成する水以外の成分に、本発明の液状レオロジー改質剤を予め混合しておいて、左官、床仕上げ、グラウト等の際に水を添加して用いるプレミックス製品としてもよい。
【0094】
<用途>
本発明の液状レオロジー改質剤は、水及び粉体を含む液状組成物に添加することにより、その流動性を持続的に調整可能である。このため、本発明のレオロジー改質剤は、セメント組成物、石膏組成物、染料組成物に用いることができる。
例えばセメント組成物に液状レオロジー改質剤を添加した場合には、任意の材料分離抵抗性及びレオロジーを付与することができるとともに、セメント組成物の初期の流動性及び継時的な流動性を適宜調整可能である。また、夏場や熱が籠りやすい密閉空間でも好適に利用可能である。そのため、本発明の液状レオロジー改質剤は、セメント組成物用の分散剤、AE減水剤として利用できる。
【0095】
本発明の液状レオロジー改質剤が対象とするセメント組成物は、(A)及び(B)成分の含有比を適宜調整することができるため、特に限定されない。例えば、AE減水剤が用いられる水セメント比60%のセメント組成物から高性能AE減水剤が用いられる水セメント比40%のセメント組成物まで対象とすることができ、幅広い水セメント比のセメント組成物に対し有効的に機能を発現することができる。
【0096】
本発明の液状レオロジー改質剤は、セメント組成物に添加する際に、他のセメント組成物用添加剤と併用してもよい。他の添加剤としては例えば、セメント分散剤、水溶性高分子、高分子エマルジョン、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、遅延剤、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、効果促進剤、消泡剤、AE剤、その他の界面活性剤、以下説明するCA剤及びSA剤などの公知のセメント組成物用添加剤、並びにこれらから選ばれる2以上の組み合わせが挙げられる。例えば消泡剤を併用することにより、泡立ちを向上させることができる。
【0097】
カルボキシル基及び/又はその塩含有化合物(CA剤)としては、例えばポリアクリル酸ナトリウムやグルコン酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。スルホン酸基及び/又はその塩含有化合物(SA剤)としては、リグニンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の液状レオロジー改質剤と上記CA剤及びSA剤から選ばれる少なくとも1つを併用する場合、その比率は、本発明の液状レオロジー改質剤/CA剤又はSA剤=0.1質量%〜99.9質量%/0.1質量%〜99.9質量%であり、3成分を併用する場合の質量比率は、本発明のレオロジー改質剤/CA剤/SA剤=0.1質量%〜99.9質量%/0.1質量%〜99.9質量%/0.1質量%〜99.9質量%である。
【0098】
[2.セメント組成物]
本発明のセメント組成物は、液状レオロジー改質剤を含む。液状レオロジー改質剤の含有量は、セメント組成物の質量100質量%に対して、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。添加量が0.001質量%未満の場合、材料分離抵抗性及びブリーディングの抑制を達成できないおそれがあり、10質量%を超える場合、セメント組成物の凝結時間の大幅な遅延を導くおそれがある。
【0099】
セメント組成物は、通常は水硬性成分を含む。水硬性成分としては、例えば、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスターが挙げられる。
【0100】
セメントは、特に限定はなく、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等が挙げられる。セメントには、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体、石膏などが添加されていてもよい。
【0101】
上述のとおり、液状レオロジー改質剤は幅広い水セメント比のセメント組成物の液状レオロジーを調整できることから、セメント組成物における水セメント比は特に限定されない。
【0102】
セメント組成物は、骨材を含んでもよい。骨材は、細骨材及び粗骨材のいずれであってもよい。骨材としては、例えば、砂、砂利、砕石;水砕スラグ;再生骨材等;珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が挙げられる。
【0103】
セメント組成物が、モルタル又はコンクリートである場合には、液状レオロジー改質剤に含まれる(B)成分の添加量(配合量)は、セメント組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜5.0質量%、より好ましくは0.02〜2.0質量%、更に好ましくは0.05〜1.0質量%である。この添加量とすることにより、得られるセメント組成物には、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果が充分にもたらされる。上記配合割合が0.01質量%未満では、得られるセメント組成物が性能的に充分とはならないおそれがあり、一方、5.0質量%を超える多量を使用しても、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。
【0104】
したがって、本発明のレオロジー改質剤を含むセメント組成物、さらには、当該セメント組成物の硬化物も本発明を構成する。例えば、本発明のレオロジー改質剤は、中流動性セメント組成物、高流動性セメント組成物、水中不分離性セメント組成物に好適に使用することができ、また、空洞、空隙、隙間などを埋めるために注入する流動性の液状物又はペースト(グラウト、注入グラウト)の添加剤として、あるいは普通セメント組成物においてもセメント組成物の状態改善用として好適に使用することができる。
【0105】
本発明の液状レオロジー改質剤は、例えば、レディーミクストセメント組成物、2次製品(プレキャストセメント組成物)用のセメント組成物、遠心成形用セメント組成物、振動締め固め用セメント組成物、蒸気養生セメント組成物、水中セメント組成物、吹付けセメント組成物等のセメント組成物に対し有効に使用できる。さらに、中流動セメント組成物(スランプ値が22〜25cmの範囲のセメント組成物)、高流動セメント組成物(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmの範囲のセメント組成物、自己充填性セメント組成物、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタル又はコンクリート、セメント組成物、及び石膏組成物や染料組成物にも好適に利用可能である。
【0106】
[3.分散組成物]
本発明の分散組成物は、液状レオロジー改質剤を含む。これにより、分散組成物の特性を向上させることができる。分散組成物の例は、前述のセメント組成物の他、石膏組成物及び染料組成物である。
【0107】
[4.石膏組成物]
本発明の石膏組成物は、液状レオロジー改質剤を含む。これにより、石膏組成物の状態を改善することができ、施工性(作業性)を向上させることができる。
【0108】
石膏組成物とは、石膏及び水を混合することで得られるスラリーを意味する。本発明の石膏組成物は、硬化前の組成物及び硬化後の組成物(硬化物)のいずれも包含する。石膏は特に限定されないが、例えば、工業用に多用される半水石膏及び2型無水石膏が挙げられる。石膏組成物における石膏の含有量、液状レオロジー改質剤の含有量は、適宜設定できる。
【0109】
[5.染料組成物]
本発明の石膏組成物は、液状レオロジー改質剤を含む。これにより、染料組成物の状態を改善し作業性を向上させることができる。
染料組成物とは、染料を分散媒に溶解した状態又は分散した状態の組成物を意味する。染料としては例えば、酸性染料、反応性染料、直接性染料、カチオン染料及び塩基性染料等の水溶性染料;分散染料及びソルベント染料等の油溶性染料;有機顔料;及びカーボンブラックが挙げられる。分散媒は染料によって適宜選択され、通常は有機溶媒又は水性溶媒が選択される。染料組成物における染料の含有量、液状レオロジー改質剤の含有量は、適宜設定できる。
【実施例】
【0110】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中特に断りの無い限り%は質量%を、部は質量部、また、濃度は総量に対する固形分濃度を示す。
【0111】
(A)成分
<A−1>ヒドロキシプロピルメチルセルロース(三晶社製、NEOVISCO MC)
<A−2>ヒドロキシエチルセルロース(三晶社製、SANHEC)
<A−3>カルボキシメチルセルロース(日本製紙社製、サンローズF350HC)
【0112】
(B)成分
<B−1>リグニンスルホン酸塩及びオキシカルボン酸塩の混合分散剤(フローリック社製、フローリックS)
<B−2>アミノスルホン酸系分散剤(フローリック社製、フローリックSF−200S)
<B−3>ポリカルボン酸系分散剤(フローリック社製、フローリックSF−500S)
【0113】
(C)成分
実施例及び比較例において、(C)成分及びその比較品として、下記の共重合体(C−1)〜(C−5)を使用した。
<製造例C1>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に水157部、及び、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数25個)111部を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。その後、アクリル酸8部、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数13個)63部、ヒドロキシエチルアクリレート30部、アスコルビン酸5部、水165部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム3部及び水47部の混合液とを、各々2時間で、80℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を80℃に保持した状態で1時間反応させることにより共重合体の水溶液を得た。該共重合体に対する、ポリエチレングリコールアリルエーテルの含有量は25質量%であり、両末端基が水素原子である水溶性ポリエチレングリコールの含有量は0.7質量%であった。この液を30%NaOH水溶液でpH7に調整した。液中の共重合体は、共重合体(C−1)(重量平均分子量28,000、Mw/Mn1.9)であった。
【0114】
<製造例C2>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に水124部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数35個)60部を仕込み、攪拌下で反応容器を80℃に昇温した。その後、メタクリル酸5部、アクリル酸4部、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数13個)122部、ヒドロキシプロピルアクリレート8部、3−メルカプトプロピオン酸2部、水24部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム1部及び水49部の混合液とを、各々2時間で、100℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させることにより共重合体の水溶液を得た。該共重合体に対する、ポリエチレングリコールアリルエーテルの含有量は20質量%であり、両末端基が水素原子である水溶性ポリエチレングリコールの含有量は0.5質量%であった。この液を31%NaOH水溶液でpH6に調整した。液中の共重合体は共重合体(C−2)(重量平均分子量12,400、Mw/Mn1.7)であった。
【0115】
<製造例C3>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に水125部、及び、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数33個、プロピレンオキサイドの平均付加モル数2個、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム付加)30部を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。その後、メタクリル酸11部、アクリル酸1部、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数25個)90部、ヒドロキシプロピルアクリレート100部、3−メルカプトプロピオン酸4部、水20部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム3部及び水47部の混合液とを、各々2時間で、100℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させることにより共重合体の水溶液を得た。この液を31%NaOH水溶液でpH4に調整した。液中の共重合体は共重合体(C−3)(重量平均分子量13,800、Mw/Mn1.4)であった。
【0116】
<製造例C4>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に水100部、及び、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数10個)30部を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で50℃に昇温した。その後、メタクリル酸15部、アクリル酸2部、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数13個)78部、ヒドロキシプロピルアクリレート34部、アスコルビン酸2部、3−メルカプトプロピオン酸5部、水18部を混合したモノマー水溶液と、過酸化水素部1部及び水49部の混合液とを、各々3時間で、50℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を50℃に保持した状態で1時間反応させることにより共重合体の水溶液を得た。この液を31%NaOH水溶液でpH4に調整した。液中の共重合体は共重合体(C−4)(重量平均分子量16,200、Mw/Mn1.5)であった。
【0117】
<製造例C5>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に水733部を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。その後、メタクリル酸21部、アクリル酸30部、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数25個)92部水70部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム3部及び水87部の混合液とを、各々2時間で、50℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を50℃に保持した状態で1時間反応させることにより共重合体の水溶液を得た。該共重合体に対する、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩からなる単量体とメタクリル酸及び/又はメタクリル酸塩からなる単量体との共重合体の含有量は2質量%であり、この液を30%NaOH水溶液でpH7に調整した。液中の共重合体は、共重合体(C−5)(重量平均分子量18,300、Mw/Mn1.6)であった。
【0118】
<レオロジー改質剤試験(実施例1〜7及び比較例1〜5)>
表1に記載の固形分濃度となるよう各成分を混合し、サンプルを得た。各サンプルの貯蔵安定性及び粘度を評価した。
【0119】
<貯蔵安定性>
まず、混合直後の各サンプルの相溶性を下記の基準で評価した。更に、上記サンプルを20℃及び40℃にて1ヶ月間保管し、各温度で保管後の貯蔵安定性を下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
【0120】
<相溶性及び貯蔵安定性の評価基準>
◎:均一に混合されている。
○:一部凝集物が見られる。
×:完全に分離・沈降している。
【0121】
<粘度測定>
貯蔵安定性試験と同時に、各サンプルの粘度測定を行った。すなわち、各サンプルを40℃にて1か月保管し、保管後の粘度をB型粘度計を用いて、20℃、60rpmの条件下で測定した。結果を表2に示す。
【0122】
<実施例1〜7及び比較例1〜5のサンプルについて>
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
<セメント組成物試験(実施例8〜21及び比較例6〜13)>
実施例1〜7及び比較例1〜4のサンプルを添加したセメント組成物を下記手順により調製した。環境温度(20℃)において、表3(W/C=55%)及び表5(W/C=45%)のように配合した粗骨材、細骨材、セメント、及び水、ならびに表4又は表6に記載の量の及び各サンプルを強制二軸ミキサに投入して、強制二軸ミキサによる機械練りにより90秒間練り混ぜることによりセメント組成物を得た(各サンプルは水に混合させて投入した)。得られたセメント組成物について、以下の手順でスランプ試験、空気量測定、粘性評価、及びブリーディング評価を行った。
【0125】
<スランプ試験、空気量測定及び粘性評価>
セメント組成物が強制二軸ミキサから排出された直後に、フレッシュセメント組成物試験(スランプ試験JIS A 1101(フレッシュセメント組成物の頂点からの落下距離をスランプ値として、広がりをフロー値として測定)、空気量JIS A 1128、セメント組成物粘性評価)を行った。セメント組成物の粘性については評価者5名による官能評価で、以下の基準により評価した。試験結果を表4(W/C=55%)、表6(W/C=45%)に示す。また、表3、表4と同様の試験条件で、添加率(セメント組成物の重量に対する重量%)と混練直後のスランプフローの相関を測定した。結果(W/C=55%)を
図1に示す。さらに、表5、表6と同様の試験条件で、添加率(セメント組成物の重量に対する重量%)と混練直後のスランプフローの相関を測定した。結果(W/C=45%)を
図2に示す。
【0126】
<粘性の評価基準>
◎:セメント組成物に適度な粘性が付与されており、ブリーディングはほとんど見られない。
○:セメント組成物に粘性が付与されているが、ブリーディングが見られる。
×:セメント組成物に粘性が付与されておらず、大きなブリーディングも見られる。
【0127】
<ブリーディング評価>
JIS A 1123に定める方法にて評価を行った。ブリーディング量が少ないほど、セメント組成物が材料分離抵抗性を有することを示す。結果を表4及び表6に示す。
【0128】
【表3】
普通ポルトランドセメント(宇部三菱セメント株式会社製、比重3.16)
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製、比重3.16)
普通ポルトランドセメント(株式会社トクヤマ製、比重3.16)
水道水
S1:掛川産山砂(細骨材、比重2.57)
S2:岩瀬産砕砂(細骨材、比重2.61)
G:青梅産砕石(粗骨材、比重2.65)
サンプル(固形分換算) 表4参照
【0129】
【表4】
【0130】
表4中、「添加率(質量%)」は、セメント組成物100質量%に対する液状レオロジー改質剤の有姿添加率を示す。また、SLはスランプ値(cm)をそれぞれ示す。
【0131】
【表5】
普通ポルトランドセメント(宇部三菱セメント株式会社製、比重3.16)
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製、比重3.16)
普通ポルトランドセメント(株式会社トクヤマ製、比重3.16)
水道水
S1:掛川産山砂(細骨材、比重2.57)
S2:岩瀬産砕砂(細骨材、比重2.61)
G:青梅産砕石(粗骨材、比重2.65)
サンプル(固形分換算) 表6参照
【0132】
【表6】
【0133】
表6中、サンプルの「添加率(質量%)」は、セメント組成物100質量%に対するサンプルの有姿添加率を示す。また、SLFはスランプフロー値(mm)をそれぞれ示す。
【0134】
表2から以下のことが分かる。実施例1〜7のサンプルは、相溶性が良好であり、環境温度(20℃)のみでなく高温環境下における貯蔵安定性も非常に優れていた。一方、(C)成分を含まない比較例1〜4及び(B)及び(C)成分を含まない比較例5では、高温環境下での貯蔵後の粘性が低下しており、また、貯蔵安定性が劣り、相溶性も不良なものがあった。中でも、比較例4や比較例5では、高温貯蔵性がゲル化によって悪化していた。これらの結果は、本発明の液状レオロジー改質剤は、相溶性及び貯蔵安定性が良好であることを示している。
【0135】
表4及び表6から以下のことが分かる。実施例8〜21のセメント組成物は、比較例6〜13と比べて適度な粘性を有しブリーディング量が低く抑えられており空気量も適切であり、コンクリートの状態改善が実現できていた。これらの結果は、(A)〜(C)成分を所定濃度で含む本発明のレオロジー改質剤は、多量に添加しても貯蔵安定性を保つことができ添加量に見合った分散性を発揮することができること、さらに、(C)成分が(A)及び(B)成分の凝集を防ぐことができることを示している。また、これらの結果は、幅広い水セメント比のセメント組成物に対し、本発明の液状レオロジー改質剤が、その添加量の多少にかかわらず、流動性を付与することができ、それを継時的に保持することが可能であることを示している。
【0136】
図2及び
図1から以下のことが分かる。一般強度領域と呼ばれる水セメント比(W/C=45%)及びそれよりも若干高い水セメント比(W/C=55%)のセメント組成物配合条件において、比較例4では1.5重量%を超える液状レオロジー改質剤を添加するとスランプフロー値の上昇が認められないか又は低下し、分散性よりも粘性をセメント組成物に与えていた。このように従来のセメント添加剤は、添加率の増加に伴いスランプフロー値の上昇が認められないか又は減少するという逆転現象が生じていた。これに対し、実施例2及び3ではサンプルの添加率の増加に伴いスランプフロー値も上昇していた。これらの結果は、本発明の液状レオロジー改質剤が上記従来問題であった添加量の増加に伴う粘性の悪化を抑制し、添加量に見合う分散性を付与することができること、及び添加量が制限されないことを示している。