特許第6884069号(P6884069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884069
(24)【登録日】2021年5月13日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】表示錠
(51)【国際特許分類】
   E05B 41/00 20060101AFI20210531BHJP
【FI】
   E05B41/00 C
   E05B41/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-165417(P2017-165417)
(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公開番号】特開2019-44360(P2019-44360A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131511
【氏名又は名称】株式会社シブタニ
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100127340
【弁理士】
【氏名又は名称】飛永 充啓
(72)【発明者】
【氏名】川中 勝男
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦士
(72)【発明者】
【氏名】高木 善洋
(72)【発明者】
【氏名】日和 翔吾
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−227744(JP,A)
【文献】 実公昭50−1515(JP,Y1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0016938(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 41/00
G09F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施錠状態のときに施錠時表示域を室外に表示しかつ解錠状態のときに解錠時表示域を室外に表示する表示部を有し、所定の操作具を用いた室外からの非常解錠操作によって解錠される表示錠において、
前記表示部が、使用停止を伝える停止時表示域を有し、
前記操作具を用いた室外からの表示変更操作によって、前記表示部が前記停止時表示域を室外に表示する非常表示状態へ切り替えられることを特徴とする表示錠。
【請求項2】
前記操作具を用いた室外からの非常施錠操作によって施錠され、当該非常施錠操作に連続する前記表示変更操作によって前記非常表示状態へ切り替えられる請求項1に記載の表示錠。
【請求項3】
前記表示部が、室内からの施錠操作に応じて一方向へ回転しかつ室内からの解錠操作に応じて他方向へ回転する伝達軸と、当該伝達軸と同心に回転可能に配置された表示体と、当該表示体と前記伝達軸間の回転伝達と遮断を行うクラッチ機構とを有し、
前記表示体が、前記操作具からの操作を受ける非常入力部と、前記施錠時表示域と、前記解錠時表示域と、前記停止時表示域とを有し、
前記クラッチ機構が、前記伝達軸からの回転を前記表示体に伝達し、前記非常施錠操作による前記表示体の一方向回転を前記伝達軸に伝達し、前記表示変更操作による前記表示体の一方向回転を前記伝達軸に対して遮断し、前記表示体の他方向回転を前記伝達軸に伝達する請求項2に記載の表示錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示錠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、列車、公共施設、一般住宅等に備わるトイレ室、浴室等においては、その室内と室外を仕切るドアをロックするために表示錠が利用されている。表示錠は、室内から施錠、解錠される機械式の錠であって、施錠中(使用中)か否かを室外に表示する表示部を有するものである。また、表示錠は、一般に、所定の操作具を用いた室外からの非常解錠操作によって解錠されるようにもなっている。これは、室内の使用者を救助すべき事態が起こった際、室外からドアを迅速に開放できるようにするためである。
【0003】
操作具の形式は様々であり、鍵、コイン、マイナスドライバ等が採用されている。例えば、列車、公共施設のように不特定多数の人物が室を使用する場合、その室を管理する車掌、警備員等の管理者のみに室外からの解錠を許すため、操作具としては、キーが採用されている。一般住宅のように室の使用者が特定される場合、操作具としては、一般的に入手可能なコイン、マイナスドライバ等が採用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−174176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トイレ室、浴室等の室内設備は、故障、断水、停電等によって不意に使用できなくなることがある。このような場合、その室を管理する車掌、警備員等の管理者は、その室の使用を停止する措置を取らなければならない。そのため、管理者は、その室の使用停止を伝える貼り紙を急きょ用意し、これを当該室の室外に掲示しなければならず、面倒であった。
【0006】
上述の背景に鑑み、この発明が解決しようとする課題は、管理者による簡単な作業で室外に当該室の使用停止を伝えられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、この発明は、施錠状態のときに施錠時表示域を室外に表示しかつ解錠状態のときに解錠時表示域を室外に表示する表示部を有し、所定の操作具を用いた室外からの非常解錠操作によって解錠される表示錠において、前記表示部が、使用停止を伝える停止時表示域を有し、前記操作具を用いた室外からの表示変更操作によって、前記表示部が前記停止時表示域を室外に表示する非常表示状態へ切り替えられる構成を採用した。
【0008】
上記構成によれば、操作具を所持する管理者は、表示錠に対し操作具を用いて表示変更操作を行い、当該表示錠の表示部において当該室の室外に使用停止を伝える停止時表示域を表示させることが可能である。すなわち、管理者は、操作具を用いるだけの簡単な作業で室外に当該室の使用停止を伝えられる。
【0009】
具体的には、前記操作具を用いた室外からの非常施錠操作によって施錠され、当該非常施錠操作に連続する前記表示変更操作によって前記非常表示状態へ切り替えられることが好ましい。このようにすると、管理者が操作具の非常施錠操作で施錠してから表示変更操作で使用停止を表示させることになるため、使用停止する際の施錠忘れを確実に防止することができる。
【0010】
また、前記表示部が、室内からの施錠操作に応じて一方向へ回転しかつ室内からの解錠操作に応じて他方向へ回転する伝達軸と、当該伝達軸と同心に回転可能に配置された表示体と、当該表示体と前記伝達軸間の回転伝達と遮断を行うクラッチ機構とを有し、前記表示体が、前記操作具からの操作を受ける非常入力部と、前記施錠時表示域と、前記解錠時表示域と、前記停止時表示域とを有し、前記クラッチ機構が、前記伝達軸からの回転を前記表示体に伝達し、前記非常施錠操作による前記表示体の一方向回転を前記伝達軸に伝達し、前記表示変更操作による前記表示体の一方向回転を前記伝達軸に対して遮断し、前記表示体の他方向回転を前記伝達軸に伝達することも好ましい。このようにすると、室内の使用を許す通常状態のとき、室内からの操作による施解錠切り替えと、表示体における施錠時表示域と解錠時表示域の表示切り替えとが連動する一方、操作具を一方向回転させることで非常施錠操作と表示変更操作とを行うことができ、操作具を他方向回転させることで非常解錠操作と非常表示状態の解除操作とを行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、上記構成の採用により、管理者による簡単な作業で室外に当該室の使用停止を伝えられるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施形態に係る表示錠をドアに取り付けた状態で示す斜視図
図2図1の上側の切断面を真上から示す部分拡大断面図
図3図2の室内側の側面を示す部分拡大側面図
図4】(a)は図1における表示部の室外側の側面を示す部分拡大側面図、(b)は同図(a)のIVb−IVb線の断面図、(c)は同図(b)のIVc−IVc線の断面図
図5】(a)は施錠時表示域を表示させた表示部の室外側の側面を示す部分拡大側面図、(b)は同図(a)のVb−Vb線の断面図、(c)は同図(b)のVc−Vc線の断面図
図6】(a)は図5の状態から停止時表示域を表示させる際の表示部の室外側の側面を示す部分拡大側面図、(b)は同図(a)のVIb−VIb線の断面図、(c)は同図(b)のVIc−VIc線の断面図
図7】(a)は図6の状態から停止時表示域を表示させた表示部の室外側の側面を示す部分拡大側面図、(b)は同図(a)のVIIb−VIIb線の断面図、(c)は同図(b)のVIIc−VIIc線の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態に係る表示錠を添付図面に基づいて説明する。
図1、2に示す表示錠は、室内と室外を仕切るドアDを閉鎖位置にロックする錠本体1と、所定の表示域を室外に表示する表示部2と、室外から錠本体1や表示部2を操作する目的で使用される操作具3とを備える。
【0014】
ドアDは、トイレ室、浴室等の一室の室内と室外を仕切る開閉体であり、開き戸、引き戸のいずれでもよい。ドアDの戸先に対向する室壁には、表示錠を掛ける相手部材4が取り付けられる。実施形態に係る表示錠は、ドアDに取り付けられる箱錠からなる。相手部材4は、室壁に取り付けられるストライクからなる。
【0015】
錠本体1は、室内からの施錠操作によって施錠され、室内からの解錠操作によって解錠される機械式の錠機構からなる。
【0016】
錠本体1は、錠ケース5と、錠ケース5から相手部材4に対して進退可能に配置された閂6と、サムターン7とを有する箱錠になっている。錠ケース5は、ドアDの室内側に取り付けられている。閂6は、鎌形になっている。サムターン7は、錠ケース5に対して施錠位置と解錠位置との間でのみ回動可能に設けられている。サムターン7の回動が錠ケース5内において閂6の進退動に変換されるようになっている。
【0017】
錠本体1を室内から施錠してドアDをロックする場合、図1に示すように解錠位置に待機しているサムターン7を手で摘み、これを一方向へ回転させて施錠位置まで回す施錠操作を行うことにより、閂6を進出させることができる。これにより、錠本体1が施錠された状態(施錠状態)となり、ドアDが閉鎖位置にロックされた状態になる。
【0018】
錠本体1を室内から解錠してドアDを開放する場合、図3に示すように、施錠位置に待機しているサムターン7を手で摘み、これを他方向(一方向と逆方向)へ回転させて解錠位置まで回す手動操作を行うことにより、閂6を後退させることができる。これにより、錠本体1が解錠された状態(解錠状態)となり、ドアDが開放可能な状態になる。
【0019】
図1図4図7に示すように、表示部2は、錠本体1と連動して室外の表示を切り替え、かつ操作具3の操作によって室外への表示域を切り替えることができる機械式の表示機構からなる。
【0020】
図1図4(a)、(b)に示すように、表示部2は、ドアDに取り付けられるベース部材8と、サムターン7の回動軸9と連結された伝達軸10と、伝達軸10と同心に回転可能に配置された表示体11と、表示体11の大部分を覆うカバー部材12と、表示体11と伝達軸10間の回転伝達と遮断を行うクラッチ機構13とを有する。
【0021】
ベース部材8には、伝達軸10の軸方向にベース部材8を貫通する軸通孔14が形成されている。軸通孔14の内周には、円筒面15が形成されている。軸通孔14に伝達軸10が挿通されている。ベース部材8の円筒面15は、伝達軸10と、表示体11の軸部16とをそれぞれ径方向に支持し、伝達軸10と表示体11を所定の同軸度に保つ。
【0022】
伝達軸10は、サムターン7の回動軸9と一方向及び他方向のいずれの回転方向にも一体に回転可能になっている。このため、伝達軸10は、室内からのサムターン7の施錠操作に応じて一方向へ回転し、かつ室内からのサムターン7の解錠操作に応じて他方向へ回転する。
【0023】
表示体11は、ベース部材8に対して室外側に配置されている。表示体11は、操作具3からの操作を受ける非常入力部17と、ベース部材8に対して室外側に配置された施錠時表示域18と、解錠時表示域19と、停止時表示域20とを有する。
【0024】
非常入力部17は、操作具3の先端部と一方向及び他方向のいずれの回転方向にも係合可能になっている。操作具3は、キーになっている。
【0025】
非常入力部17は、軸部16の室外側に形成されており、軸部16周りの周方向の略半周で軸方向に室内側へ凹んだ形状になっており、その凹みの周方向一端面で操作具3の一方向回転のトルクを受け、その凹みの周方向他端面で操作具3の他方向回転のトルクを受けることができる。
【0026】
表示体11の回転中心軸上には、室外側に突き出たガイド軸21が形成されている。室外から操作具3の中空軸部を表示体11のガイド軸21に差し込み、その操作具3を一方向に回転させる非常施錠操作又は他方向に回転させる非常解錠操作により、その操作具3からの回転トルクを非常入力部17で受ける表示体11を操作具3と同方向に回転させることができる。
【0027】
施錠時表示域18は、施錠状態に対応の情報を室外に伝える表面部からなる。施錠時表示域18には、“使用中”を意味する文字情報が記述されている。解錠時表示域19は、解錠状態に対応の情報を室外に伝える表面部からなる。解錠時表示域19には、“空き”を意味する文字情報が記述されている。停止時表示域20は、室内を使用できない使用停止状態に対応の情報を室外に伝える表面部からなる。停止時表示域20には、“使用停止”を意味する文字情報が記述されている。これら表示域18〜20は、非常入力部17の周囲に周方向に並んでいる。これら表示域18〜20の夫々には、軸部16周りに90°の角度領域が割り当てられている。
【0028】
カバー部材12は、表示窓22と、操作口23とを有する非透明部材からなる。カバー部材12は、表示体11に対して室外側からベース部材8に取り付けられる。表示窓22は、表示体11の静止時に表示域18〜20の中の一つのみが軸方向に露出する形状の開口部になっている。操作口23は、室外から操作具3を非常入力部17、ガイド軸21に差し込める形状の開口部になっている。
【0029】
クラッチ機構13は、錠本体1でサムターン7の回動軸9に許容された回動範囲内において伝達軸10と表示体11との間で両方向(一方向及び他方向)の回転を同位相で伝達可能、かつ前述の回動範囲外において回転不可な伝達軸10に対して表示体11の両方向の回転を遮断可能な噛み合いクラッチとして構成されている。
【0030】
クラッチ機構13は、伝達軸10とベース部材8との間に介在するコイルばね24と、表示体11の軸部16の室内側の端面に形成された四つの第一係合爪25a〜25dと、表示体11の軸部16の室内側の端面に形成された一つの第二係合爪26と、伝達軸10の室外側の端面に形成された四つの係合溝27a〜27dと、伝達軸10の外径面から径方向に凹んだ係合凹部28とを有する。第一係合爪25a〜25dは、軸部16周りに90°間隔で形成されている。係合溝27a〜27dは、第一係合爪25a〜25dに対応の位相で形成されている。係合凹部28は、ガイド部材8の円筒面15に案内される伝達軸10の外径面から径方向に凹んだ形状であり、その円筒面15との間に第二係合爪26の移動空間を形成する。なお、第一係合爪、係合溝、第二係合爪、係合凹部は、表示体と伝達軸のどちらに形成してもよい。
【0031】
図1図4(a)に示すように、表示部2がカバー部材12の表示窓22から解錠時表示域19を室外に表示する状態であって、サムターン7が解錠位置にあるとき、図4(b)、(c)に示すように、第一係合爪25a〜25dと係合溝27a〜27dが1対1で噛み合い、第二係合爪26が係合凹部28の周方向一方側の端に接した状態にある。この状態からサムターン7を一方向回転させる施錠操作が行われることにより、又は、室外から操作具3を用いた非常施錠操作が行われることにより、前述の噛み合いによる回転伝達が成され、伝達軸10と表示体11が同位相で90°一方向回転させられる。これにより、図3図5(a)に示すようにサムターン7が施錠位置となり、表示部2が、施錠状態のときに施錠時表示域18を室外に表示する状態となる。
【0032】
その図3図5(a)に示す状態のとき、サムターン7を他方向回転させる解錠操作が行われることにより、又は、室外から操作具3を用いた非常解錠操作が行われることにより、図5(b)、(c)に示すように、前述の係合溝27a〜27と第一係合爪25a〜25dの噛み合いによる回転伝達が成され、表示体11と伝達軸10が同位相で90°他方向回転させられる。これにより、図1図4(a)に示すように、サムターン7が解錠位置となり、表示部2が、解錠状態のときに解錠時表示域19を室外に表示する状態となる。
【0033】
前述のように、非常施錠操作によって表示部2が図5(a)の状態となり、サムターン7が図3の施錠位置になってから、さらに操作具3を一方向回転させる表示変更操作が行われることにより、図6(b)、(c)に示すように、一方向回転できない伝達軸10の係合溝27a〜27と、一方回転しようとする表示体11の第一係合爪25a〜25dとの接触箇所において軸方向室内側への分力が生じ、この分力によってコイルばね24が圧縮されて伝達軸10が軸方向室内側へ後退させられ、これにより、前述の噛み合いが外れて、一方向回転する第一係合爪25a〜25dが伝達軸10の端面を滑る。このため、表示体11から伝達軸10への一方向回転の伝達が遮断され、停止中の伝達軸10に対して表示体11だけが図6(a)に示すように一方向回転させられる。この表示変更操作によって表示体11が図5(a)の状態に比して90°一方向回転させられると、図7(a)に示すように、表示部2が停止時表示域20を室外に表示する非常表示状態となり、図7(b)、(c)に示すように、第一係合爪25a〜25dと係合溝27a〜27が1対1で噛み合う状態となる。
【0034】
表示部2が図7(a)の状態であって、サムターン7が図3の施錠位置にあるとき、室外から操作具3を用いた非常解錠操作が行われることにより、表示体11が図7(a)の状態から90°他方向回転させられるまでの間、第一係合爪25a〜25dと係合溝27a〜27の噛み合いにより、伝達軸10が表示体11と同位相で90°他方向回転させられる。これにより、サムターン7が図1に示す解錠位置となり、表示部2が、解錠状態のときに施錠時表示域18を室外に表示する状態となる。さらに操作具3が他方向回転させられることにより、他方向回転できない伝達軸10の係合溝27a〜27と、他方回転しようとする表示体11の第一係合爪25a〜25dとの間で前述と同じく分力が生じて、他方向回転する第一係合爪25a〜25dが伝達軸10の端面を滑る。このため、表示体11から伝達軸10への他方向回転の伝達が遮断され、停止中の伝達軸10に対して表示体11だけが他方向回転させられる。これにより、表示体11が図7(a)の状態から180°他方向回転させられると、表示部2が、解錠状態のときに解錠時表示域19を表示する状態となる(図4(a)参照)。
【0035】
第二係合爪26と係合凹部28は、特許文献1に開示の補助回転機構に相当するものであり、サムターン7の回動軸9の回動範囲内で異常に回転伝達が遮断されたとき、第二係合爪26と係合凹部28による回転伝達が成され、施錠状態と施錠時表示域、解錠状態と解錠時表示域の対応表示がずれないようにする。
【0036】
上述のように、実施形態に係る表示錠によれば、表示部2が使用停止を伝える停止時表示域20を有し、操作具3を用いた室外からの表示変更操作によって表示部2が停止時表示域20を室外に表示する非常表示状態へ切り替えられるので、室内の使用を停止すべき事態が発生した場合、操作具3を所持する管理者は、ドアDを閉じ、操作具3を用いて室外から非常施錠操作を行って施錠した後、表示変更操作を行うだけの簡単な作業により、表示部2に停止時表示域20を表示させ、使用停止を室外に伝えることができる。また、管理者は、室内の使用を許し得る状況になれば、操作具3を用いて室外から非常解錠操作を行って解錠し、さらに非常表示状態を解除して解錠時表示域19を室外に表示させることができる。
【0037】
また、実施形態に係る表示錠によれば、操作具3を用いた室外からの非常施錠操作によって施錠され、当該非常施錠操作に連続する表示変更操作によって非常表示状態へ切り替えられるので、管理者が操作具3の非常施錠操作で施錠してから表示変更操作で停止時表示域20を表示させることになるため、使用停止する際の施錠忘れを確実に防止することができる。
【0038】
また、実施形態に係る表示錠によれば、表示部2が、室内からの施錠操作に応じて一方向へ回転しかつ室内からの解錠操作に応じて他方向へ回転する伝達軸10と、伝達軸10と同心に回転可能に配置された表示体11と、表示体11と伝達軸10間の回転伝達と遮断を行うクラッチ機構13とを有し、表示体11が、操作具3からの操作を受ける非常入力部17と、施錠時表示域18と、解錠時表示域19と、停止時表示域20とを有し、クラッチ機構13が、伝達軸10からの回転を表示体11の軸部16に伝達し、非常施錠操作による表示体11の一方向回転を伝達軸10に伝達し、表示変更操作による表示体11の一方向回転を伝達軸10に対して遮断し、表示体11の他方向回転を伝達軸10に伝達するので、室内の使用を許す通常状態のとき、室内からのサムターン7の操作による施解錠切り替えと、表示体11における施錠時表示域18と解錠時表示域19の表示切り替えとが連動する一方、操作具3を一方向回転させることで非常施錠操作と表示変更操作とを行うことができ、操作具3を他方向回転させることで非常解錠操作と非常表示状態の解除操作とを行うことができる。
【0039】
なお、実施形態では、錠本体として箱錠を例示したが、スライドラッチ錠、打掛け錠、チューブラ錠等、他形式の機械錠に変更してもよい。また、ドアは左勝手で開放するものか、右勝手で開放するものかを問わない。また、表示部は、解錠時表示域、施錠時表示域、停止時表示域を一方向回転で切り替えるようにしたが、他方向回転で切り替えるようにサムターンの施解錠回転方向と解錠時表示域等の配置を変更してもよい。また、表示部における施錠時表示域等はテキストメッセージに限られず、色違いやイラストによって表示してもよい。また、操作具としてキーを例示したが、コイン等を採用してもよい。
【0040】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1 錠本体
2 表示部
3 操作具
7 サムターン
10 伝達軸
11 表示体
13 クラッチ機構
17 非常入力部
18 施錠時表示域
19 解錠時表示域
20 停止時表示域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7