(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上面成形面を有する上型と、下面成形面を有する下型と、側面成形面となる貫通孔が形成された側面型と、を備える型セットによって光学素子を成形する光学素子の成形方法において、
前記側面型の貫通孔内に前記下面成形面が位置するように、前記下型を前記側面型の貫通孔に挿入した後、前記下面成形面に成形素材を配置する配置工程と、
前記側面型の貫通孔内に配置された前記成形素材を加熱する加熱工程と、
前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置を所定位置に保持した状態で、前記側面型および前記下型を前記上型に対して一体的に移動させ、前記上型および前記下型によって前記成形素材をプレス成形するプレス成形工程と、
前記側面型の貫通孔内において、前記所定位置よりも高い位置であって、かつ成形後の前記光学素子の一部が前記側面型の上面から突出する位置に前記下面成形面を移動させ、前記光学素子を押し上げる押し上げ工程と、
を含み、
前記下型および前記側面型の互いに対向する面には、互いに嵌合可能な段差形状が形成されており、
前記押し上げ工程は、前記下型の段差形状に対する前記側面型の段差形状の向きを、段差形状同士が嵌合する向きに切り替えることにより、前記側面型の貫通孔内において前記下面成形面を移動させ、前記光学素子を押し上げることを特徴とする光学素子の成形方法。
前記加熱工程の前に、前記側面型の貫通孔外に前記上面成形面が位置している状態で、前記側面型の貫通孔内の空気を不活性ガスで置換するガス置換工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学素子の成形方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の成形方法では、
図20に示すように、上面成形面61aを有する上型61と、下面成形面62aを有する下型62と、側面成形面63aを有する側面型63と、を備える金型によって光学素子を成形する。具体的には、同図に示すように、筒状の側面型63に挿入された下型62に成形素材Mを配置して加熱した後、
図21に示すように、上型61を下型62に対して移動させることにより、成形素材Mをプレス成形する。そして、
図22に示すように、上型61を除去した後、
図23に示すように、吸着治具70によって光学素子Oの上面を吸着することにより、光学素子Oを型外に取り出す。
【0005】
ここで、例えば直径が1mmを下回るような微小な光学素子Oを成形する場合、
図24に示すように、吸着治具70の幅Wよりも光学素子Oの直径D1が小さくなり、成形後の光学素子Oを取り出せない場合がある。このような場合、
図25に示すように、下型62を側面型63に対して移動させ、成形後の光学素子Oを側面型63から押し上げた後に、吸着治具70によって光学素子Oを型外に取り出すことが行われる。
【0006】
しかしながら、
図25に示すように、プレス成形後の光学素子Oを下型62によって押し出すためには、
図21に示すように、側面型63と下型62との間に、光学素子Oの押出し量に相当する余剰高さHを設けた状態でプレス成形を行う必要がある。そのため、従来の成形方法では、プレス成形の際に、余剰高さHを保持し、かつ側面型63内における下面成形面62aの高さを保持した状態で、側面型63および下型62を上型61に対して一体的に移動(上昇)させるような動きをすることができず、
図21のように、上型61を側面型63および下型62に対して移動(下降)させることしかできない。従って、従来の成形方法では、上型61のみを独立して駆動させる機構を成形装置に別途設ける必要があり、成形装置の構成が複雑化するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成からなる成形装置を用いて、成形後の光学素子を金型から容易に取り出すことができる光学素子の成形方法および光学素子成形用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、光学素子の成形方法は、上面成形面を有する上型と、下面成形面を有する下型と、側面成形面となる貫通孔が形成された側面型と、を備える型セットによって光学素子を成形する光学素子の成形方法において、前記側面型の貫通孔内に前記下面成形面が位置するように、前記下型を前記側面型の貫通孔に挿入した後、前記下面成形面に成形素材を配置する配置工程と、前記側面型の貫通孔内に配置された前記成形素材を加熱する加熱工程と、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置を所定位置に保持した状態で、前記側面型および前記下型を前記上型に対して一体的に移動させ、前記上型および前記下型によって前記成形素材をプレス成形するプレス成形工程と、前記側面型の貫通孔内において、前記所定位置よりも高い位置であって、かつ成形後の前記光学素子の一部が前記側面型の上面から突出する位置に前記下面成形面を移動させ、前記光学素子を押し上げる押し上げ工程と、を含
み、前記下型および前記側面型の互いに対向する面には、互いに嵌合可能な段差形状が形成されており、前記押し上げ工程は、前記下型の段差形状に対する前記側面型の段差形状の向きを、段差形状同士が嵌合する向きに切り替えることにより、前記側面型の貫通孔内において前記下面成形面を移動させ、前記光学素子を押し上げることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る光学素子の成形方法は、上記発明において、前記下型および前記側面型の互いに対向する面のうち、一方には凸部が、他方には前記凸部に対応する形状の凹部が形成されており、前記プレス成形工程は、前記下型または前記側面型における前記凸部に対して、前記下型または前記側面型における前記凹部が形成されていない面が当て付いている状態で実施し、前記押し上げ工程は、前記下型または前記側面型を回転させて、前記下型または前記側面型における前記凸部に対して、前記下型または前記側面型における前記凹部を当て付けることにより、前記側面型の貫通孔内において前記下面成形面を移動させ、前記光学素子を押し上げることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る光学素子の成形方法は、
上面成形面を有する上型と、下面成形面を有する下型と、側面成形面となる貫通孔が形成された側面型と、を備える型セットによって光学素子を成形する光学素子の成形方法において、前記側面型の貫通孔内に前記下面成形面が位置するように、前記下型を前記側面型の貫通孔に挿入した後、前記下面成形面に成形素材を配置する配置工程と、前記側面型の貫通孔内に配置された前記成形素材を加熱する加熱工程と、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置を所定位置に保持した状態で、前記側面型および前記下型を前記上型に対して一体的に移動させ、前記上型および前記下型によって前記成形素材をプレス成形するプレス成形工程と、前記側面型の貫通孔内において、前記所定位置よりも高い位置であって、かつ成形後の前記光学素子の一部が前記側面型の上面から突出する位置に前記下面成形面を移動させ、前記光学素子を押し上げる押し上げ工程と、を含み、前記型セットは、前記側面型と前記下型との間に、着脱可能なスペーサを備え、前記プレス成形工程は、前記側面型と前記下型との間に前記スペーサを装着することにより、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置を前記所定位置に保持した状態で、前記側面型および前記下型を前記上型に対して一体的に移動させ、前記上型および前記下型によって前記成形素材をプレス成形し、前記押し上げ工程は、前記側面型と前記下型との間に装着された前記スペーサを除去することにより、前記側面型の貫通孔内において、前記所定位置よりも高い位置であって、かつ成形後の前記光学素子の一部が前記側面型の上面から突出する位置に前記下面成形面を移動させ、前記光学素子を押し上げることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る光学素子の成形方法は、
上面成形面を有する上型と、下面成形面を有する下型と、側面成形面となる貫通孔が形成された側面型と、を備える型セットによって光学素子を成形する光学素子の成形方法において、前記側面型の貫通孔内に前記下面成形面が位置するように、前記下型を前記側面型の貫通孔に挿入した後、前記下面成形面に成形素材を配置する配置工程と、前記側面型の貫通孔内に配置された前記成形素材を加熱する加熱工程と、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置を所定位置に保持した状態で、前記側面型および前記下型を前記上型に対して一体的に移動させ、前記上型および前記下型によって前記成形素材をプレス成形するプレス成形工程と、前記側面型の貫通孔内において、前記所定位置よりも高い位置であって、かつ成形後の前記光学素子の一部が前記側面型の上面から突出する位置に前記下面成形面を移動させ、前記光学素子を押し上げる押し上げ工程と、を含み、前記型セットは、前記側面型と前記下型との間に弾性部材を備え、前記プレス成形工程は、前記下型によって、前記弾性部材を介して前記側面型を押し上げることにより、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置を前記所定位置に保持した状態で、前記側面型および前記下型を前記上型に対して一体的に移動させ、前記上型および前記下型によって前記成形素材をプレス成形し、前記押し上げ工程は、前記弾性部材を縮ませることにより、前記側面型の貫通孔内において、前記所定位置よりも高い位置であって、かつ成形後の前記光学素子の一部が前記側面型の上面から突出する位置に前記下面成形面を移動させ、前記光学素子を押し上げることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る光学素子の成形方法は、上記発明において、前記加熱工程の前に、前記側面型の貫通孔外に前記上面成形面が位置している状態で、前記側面型の貫通孔内の空気を不活性ガスで置換するガス置換工程をさらに含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る光学素子の成形方法は、上記発明において、前記ガス置換工程において、前記側面型の上面と前記上面成形面との距離は、前記成形素材の厚みよりも小さいことを特徴とする。
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、光学素子成形用金型は、光学素子を成形するための光学素子成形用金型において、上面成形面を有する上型と、側面成形面となる貫通孔が形成された側面型と、前記側面型の貫通孔内に配置される下面成形面を有する下型と、を備え、前記下型は、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置が所定位置に保持された状態で、前記側面型と一体的に前記上型に対して移動する状態と、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置が、前記所定位置よりも高い位置であって、かつ前記側面型の上面近傍の位置となるように、前記上型に対して移動する状態と、をとり得
ると共に、前記下型および前記側面型の互いに対向する面のうち、一方には凸部が、他方には前記凸部に対応する形状の凹部が形成されており、前記下型は、前記下型または前記側面型における前記凸部に対して、前記下型または前記側面型における前記凹部が形成されていない面が当て付いている場合、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置が前記所定位置に保持された状態をとり、前記下型または前記側面型における前記凸部に対して、前記下型または前記側面型における前記凹部が当て付いている場合、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置が、前記所定位置よりも高い位置であって、かつ前記側面型の上面近傍の位置となるように、前記上型に対して移動する状態をとることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る光学素子成形用金型は、
光学素子を成形するための光学素子成形用金型において、上面成形面を有する上型と、側面成形面となる貫通孔が形成された側面型と、前記側面型の貫通孔内に配置される下面成形面を有する下型と、を備え、前記下型は、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置が所定位置に保持された状態で、前記側面型と一体的に前記上型に対して移動する状態と、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置が、前記所定位置よりも高い位置であって、かつ前記側面型の上面近傍の位置となるように、前記上型に対して移動する状態と、をとり得ると共に、前記側面型と前記下型との間に、着脱可能なスペーサを備え、前記下型は、前記側面型と前記下型との間に前記スペーサが装着されている場合、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置が前記所定位置に保持された状態をとり、前記側面型と前記下型との間に前記スペーサが装着されていない場合、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置が、前記所定位置よりも高い位置であって、かつ前記側面型の上面近傍の位置となる状態をとることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る光学素子成形用金型は、
光学素子を成形するための光学素子成形用金型において、上面成形面を有する上型と、側面成形面となる貫通孔が形成された側面型と、前記側面型の貫通孔内に配置される下面成形面を有する下型と、を備え、前記下型は、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置が所定位置に保持された状態で、前記側面型と一体的に前記上型に対して移動する状態と、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置が、前記所定位置よりも高い位置であって、かつ前記側面型の上面近傍の位置となるように、前記上型に対して移動する状態と、をとり得ると共に、前記側面型と前記下型との間に弾性部材を備え、前記下型は、前記弾性部材を介して前記側面型が押し上げられている場合、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置が前記所定位置に保持された状態をとり、前記弾性部材が縮んでいる場合、前記側面型の貫通孔内における前記下面成形面の位置が、前記所定位置よりも高い位置であって、かつ前記側面型の上面近傍の位置となる状態をとることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、成形素材を成形する際に、上型を動かすことなく、側面型および下型を一体的に移動させてプレス成形を行うことができるため、上型を独立して駆動させる必要がなく、成形装置を簡易な構成とすることができる。また、光学素子の成形方法によれば、成形後の光学素子を型セットから取り出す際に、側面型の貫通孔から光学素子を押し出すことができるため、微小な直径の光学素子を成形する場合においても、光学素子を容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る光学素子成形用金型を備える成形装置の要部の構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態1に係る光学素子成形用金型における下型および側面型を示す斜視図であって、下型および側面型の互いに対向する面が見えるように示した図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態1に係る光学素子成形用金型における下型および側面型において、下型の凸部に対して側面型の凹部が嵌合していない状態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態1に係る光学素子成形用金型における下型および側面型において、下型の凸部に対して側面型の凹部が嵌合している状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態1に係る光学素子成形用金型を用いた光学素子の成形方法において、配置工程の様子を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態1に係る光学素子成形用金型を用いた光学素子の成形方法において、プレス成形工程の様子を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態1に係る光学素子成形用金型を用いた光学素子の成形方法において、押し上げ工程および取り出し工程の様子を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態1の変形例に係る光学素子成形用金型における下型および側面型を示す斜視図であって、下型および側面型の互いに対向する面が見えるように示した図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態1の変形例に係る光学素子成形用金型における下型および側面型において、下型の凹部に対して側面型の凸部が嵌合していない状態を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施の形態1の変形例に係る光学素子成形用金型における下型および側面型において、下型の凹部に対して側面型の凸部が嵌合している状態を示す断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施の形態2に係る光学素子成形用金型における下型および側面型の構成を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施の形態2に係る光学素子成形用金型を用いた光学素子の成形方法において、配置工程の様子を示す断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施の形態2に係る光学素子成形用金型を用いた光学素子の成形方法において、プレス成形工程の様子を示す断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施の形態2に係る光学素子成形用金型を用いた光学素子の成形方法において、押し上げ工程および取り出し工程の様子を示す断面図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施の形態2の変形例に係る光学素子成形用金型における下型および側面型の構成を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施の形態3に係る光学素子成形用金型における下型、側面型および弾性部材を示す斜視図であって、下型および側面型の互いに対向する面が見えるように示した図である。
【
図17】
図17は、本発明の実施の形態3に係る光学素子成形用金型を用いた光学素子の成形方法において、配置工程の様子を示す断面図である。
【
図18】
図18は、本発明の実施の形態3に係る光学素子成形用金型を用いた光学素子の成形方法において、プレス成形工程の様子を示す断面図である。
【
図19】
図19は、本発明の実施の形態3に係る光学素子成形用金型を用いた光学素子の成形方法において、押し上げ工程および取り出し工程の様子を示す断面図である。
【
図20】
図20は、従来技術に係る光学素子成形用金型を用いた光学素子の成形方法において、配置工程の様子を示す断面図である。
【
図21】
図21は、従来技術に係る光学素子成形用金型を用いた光学素子の成形方法において、プレス成形工程の様子を示す断面図である。
【
図22】
図22は、従来技術に係る光学素子成形用金型を用いた光学素子の成形方法において、プレス成形工程後に上型を上昇させた様子を示す断面図である。
【
図23】
図23は、従来技術に係る光学素子成形用金型を用いた光学素子の成形方法において、取り出し工程の様子を示す断面図である。
【
図24】
図24は、従来技術に係る光学素子成形用金型を用いた光学素子の成形方法において、成形後の光学素子の直径と吸着治具の幅の一例を示す断面図である。
【
図25】
図25は、従来技術に係る光学素子成形用金型を用いた光学素子の成形方法において、押し上げ工程および取り出し工程の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る光学素子の成形方法および光学素子成形用金型の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、以下の実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものも含まれる。
【0022】
[成形装置の構成]
成形装置1は、加熱軟化させた成形素材(例えばガラス素材)Mをプレス成形することにより光学素子(例えばガラスレンズ)を成形するものである。成形装置1は、
図1に示すように、型セット(光学素子成形用金型)10と、ガス置換室20と、成形室30と、を主に備えている。
【0023】
ガス置換室20では、図示しない搬送アーム等によって搬送された型セット10の内部の空気を、窒素等の不活性ガスで置換する。ガス置換後の型セット10は、図示しない搬送アームによって成形室30に搬送される。
【0024】
成形室30は、搬送された型セット10を挟んで加熱・プレス成形・冷却するための上プレート31および下プレート32を示している。また、下プレート32は、押圧ピン33を備えている。押圧ピン33は、プレス成形時に下型12を上型11の方向に押圧する、図示しない押圧機構と接続されている。
【0025】
[型セットの構成(実施の形態1)]
本発明の実施の形態1に係る型セット10の構成について、
図1〜
図4を参照しながら説明する。型セット10は、
図1に示すように、上型11と、下型12と、側面型13と、スリーブ14と、を備えている。
【0026】
上型11は、光学素子の上側の光学機能面を成形するための上面成形面11aを有している。上型11は、円柱状の凸部111を備えており、この凸部111の先端面が上面成形面11aを構成している。上型11は、スリーブ14の上端部に載置されている。下型12は、光学素子の下側の光学機能面を成形するための下面成形面12aを有している。この下面成形面12aは、側面型13の貫通孔133内に配置される。側面型13は、光学素子の側面を形成するための側面成形面13aを有している。上型11および下型12は、側面型13を挟んで、互いの成形面が対向するように配置されている。
【0027】
下型12は、具体的には
図2に示すように、円柱状の本体部121と、本体部121の上面121aから突出する凸部122と、凸部122の上面122aから突出する円柱状の凸部123と、を備えている。凸部123の先端面は、下型12の下面成形面12aを構成している。
【0028】
下型12は、後記するように、側面型13の貫通孔133内における下面成形面12aの位置が所定位置に保持された状態で、側面型13と一体的に上型11に対して移動する状態と、側面型13の貫通孔133内における下面成形面12aの位置が、前記した所定位置よりも高い位置であって、かつ側面型13の上面131a近傍の位置となるように、上型11に対して移動する状態と、を取り得るように構成されている。
【0029】
側面型13は、具体的には、円柱状の本体部131と、本体部131の下面131bに形成された所定深さの凹部132と、を備えている。凹部132は、下型12の凸部122に対応する形状に形成されている。また、凹部132の底面132aには、本体部131を貫通する貫通孔133が形成されている。この貫通孔133の内周面は、側面型13の側面成形面13aを構成している。また、貫通孔133は、前記した上型11の凸部111および下型12の凸部123が挿入可能に構成されている。
【0030】
図2に示すように、下型12および側面型13の互いに対向する面、すなわち下型12の本体部121の上面121aおよび側面型13の本体部131の下面131bには、互いに嵌合可能な段差形状が形成されている。具体的には、下型12の上面121aには凸部122が形成されており、側面型13の下面131bには凸部122に対応する形状の凹部132が形成されている。
【0031】
これにより、
図3に示すように、下型12の凸部122に対して側面型13の凹部132が形成されていない面が当て付いている場合、すなわち下型12の凸部122の上面122aに対して側面型13の本体部131の下面131bが当て付いている場合は、側面型13の貫通孔133内における下面成形面12aの位置が、所定位置Aに保持された状態をとる。後記する型セット10を用いた光学素子の成形方法では、下型12および側面型13を同図に示すように配置した状態で、配置工程、ガス置換工程、加熱工程、プレス成形工程および冷却工程を実施する。
【0032】
一方、
図4に示すように、下型12の凸部122に対して側面型13の凹部132が当て付いている場合、すなわち下型12の凸部122の上面122aに対して、側面型13の凹部132の底面132aが当て付いている場合は、側面型13の貫通孔133内における下面成形面12aの位置が、所定位置Aよりも高い位置であって、かつ側面型13の上面131a近傍の位置Bとなる状態をとる。後記する型セット10を用いた光学素子の成形方法では、下型12および側面型13を同図に示すように配置した状態で、押し上げ工程および取り出し工程を実施する。
【0033】
なお、「下型12の凸部122に対して側面型13の凹部132が当て付いている状態」には、
図4で示した状態以外も含まれる。すなわち、同図では、下型12の凸部122の高さと側面型13の凹部132の深さとが同じであるため、下型12の凸部122の上面122aに対して側面型13の凹部132の底面132aが当て付き、かつ下型12の本体部121の上面121aに対して側面型13の本体部131の下面131bが当て付いた状態となっている。
【0034】
一方、例えば下型12の凸部122の高さが側面型13の凹部132の深さよりも大きい場合、下型12の凸部122の上面122aに対してのみ側面型13の凹部132の底面132aが当て付き、下型12の本体部121の上面121aに対しては側面型13の本体部131の下面131bが当て付かない状態となる。
【0035】
また、例えば下型12の凸部122の高さが側面型13の凹部132の深さよりも小さい場合、下型12の本体部121の上面121aに対してのみ側面型13の本体部131の下面131bが当て付き、下型12の凸部122の上面122aに対しては側面型13の凹部132の底面132aが当て付かない状態となる。このように、「下型12の凸部122に対して側面型13の凹部132が当て付いている状態」には、上面122aおよび底面132aと、上面121aおよび下面131bのいずれか一方のみが当て付いている状態も含まれる。
【0036】
スリーブ14は、
図1に示すように、円筒状に形成されており、後記する光学素子の成形方法におけるガス置換工程において型セット10内に不活性ガスを導入するための貫通孔14aが形成されている。
【0037】
[光学素子の成形方法(実施の形態1)]
以下、型セット10を用いた光学素子の成形方法について、
図1、
図5〜
図7を参照しながら説明する。本実施の形態に係る光学素子の成形方法は、配置工程と、ガス置換工程と、加熱工程と、プレス成形工程と、冷却工程と、押し上げ工程と、取り出し工程と、をこの順番で行う。
【0038】
(配置工程)
配置工程では、
図5に示すように、スリーブ14内において、前記した
図3と同様に、下型12の凸部122の上面122aに対して、側面型13の本体部131の下面131bが当て付くように下型12および側面型13を配置する。また、側面型13の貫通孔133内に下面成形面12aが位置するように、下型12を側面型13の貫通孔133に挿入する。
【0039】
続いて、下型12の下面成形面12aに、体積を調整した成形素材Mを配置する。成形素材Mは、球形状に限らず、円板形状や、予め近似の球面形状に加工したレンズ形状でも構わない。続いて、スリーブ14の上端面に上型11を載置する。なお、上型11をスリーブ14の上端面に載置した際に、上型11の上面成形面11aと側面型13の本体部131の上面131aとの間に、所定の距離D2が形成されるように型セット10の各部材の高さを調整する。
【0040】
(ガス置換工程)
ガス置換工程では、スリーブ14内に上型11、下型12、側面型13および成形素材Mが配置された型セット10を、
図1に示した成形装置1のガス置換室20に搬送する。そして、
図5に示すように、側面型13の貫通孔133外に上型11の上面成形面11aが位置している状態で、ガス置換室20全体の空気を不活性ガス(例えば窒素ガス)で置換する。これにより、スリーブ14の貫通孔14aから型セット10内に窒素ガスを導入し、成形素材Mが配置された側面型13の貫通孔133内の空気を窒素ガスで置換する。
【0041】
なお、ガス置換工程では、窒素置換を確実にするために、窒素置換前に図示しない真空ポンプによってガス置換室20の大気を減圧し、その後、窒素ガスを充填して窒素置換してもよい。
【0042】
また、ガス置換工程では、ガス置換室20の減圧時、あるいは窒素ガス充填時に、成形素材Mの形状や質量によっては、成形素材Mが側面型13の貫通孔133から外に飛び出てしまう可能性がある。従って、このような成形素材Mの飛び出しを防ぐために、上型11の上面成形面11aと側面型13の本体部131の上面131aとの間の距離D2を、成形素材Mの厚みよりも小さくすることが好ましい。
【0043】
(加熱工程)
加熱工程では、窒素置換後の型セット10を、
図1に示した成形装置1の成形室30に搬送する。そして、成形室30に搬送された型セット10を上プレート31および下プレート32で挟み、当該型セット10と、側面型13の貫通孔133内に配置された成形素材Mと、を成形素材Mの屈伏点以上の温度に加熱する。
【0044】
(プレス成形工程)
プレス成形工程では、図示しない押圧機構によって押圧ピン33(
図1参照)を上昇させ、側面型13および下型12を上昇させる。プレス成形工程は、具体的には
図6に示すように、下型12の凸部122の上面122aに対して、側面型13の本体部131の下面131bが当て付いている状態で実施する。これにより、側面型13の貫通孔133内における下面成形面12aの位置を所定位置に保持した状態で、側面型13および下型12を上型11に対して一体的に移動させ、上型11および下型12によって成形素材Mをプレス成形する。
【0045】
すなわち、プレス成形工程では、側面型13の貫通孔133内における下面成形面12aの高さを保持したまま、スリーブ14内において、側面型13および下型12を一体的に上昇させる。このように側面型13および下型12が一体的に上昇すると、相対的に、上型11の上面成形面11aが側面型13の貫通孔133に挿入される。そして、成形素材Mは、貫通孔133内で上面成形面11aおよび下面成形面12aによってプレスされ、レンズ形状に成形される。
【0046】
(冷却工程)
冷却工程では、型セット10を100℃程度まで冷却した後、成形装置1の外に搬送する。そして、成形装置1の外で室温近傍までさらに型セット10を冷却する。
【0047】
(押し上げ工程)
押し上げ工程では、
図7に示すように、まず型セット10から上型11を除去する。続いて、側面型13の貫通孔133内において、プレス成形工程における位置よりも相対的に高い位置であって、かつ成形後の光学素子Oの少なくとも一部が側面型13の本体部131の上面131aから突出する位置に、下型12の下面成形面12aを移動させる。
【0048】
押し上げ工程では、具体的にはプレス成形工程における下型12の段差形状に対する側面型13の段差形状の向きを、段差形状同士が嵌合する向きに切り替えることにより、側面型13の貫通孔133内において下面成形面12aを移動させる。なお、前記した「段差形状の向き」とは、例えば下型12の場合は、本体部121の上面121aと凸部122との間の境界線の向きのことを示しており、側面型13の場合は、本体部131の下面131bと凹部132との間の境界線の向きのことを示している。
【0049】
押し上げ工程では、より具体的には、側面型13を、例えば前記したプレス成形工程時における状態(
図6参照)から貫通孔133の軸回りに90°回転させることにより、下型12の段差形状に対する側面型13の段差形状の向きを揃える。そして、下型12の凸部122の上面122aに対して側面型13の凹部132を当て付けて、凸部122と凹部132とを嵌合させる。これにより、下型12に対して側面型13を下降させ、側面型13の貫通孔133内において、下面成形面12aを相対的に上昇させる。そして、光学素子Oを貫通孔133の外に押し上げる。
【0050】
なお、
図7では、下型12を固定した状態で、側面型13を貫通孔133の軸回りに90°回転させることにより、側面型13を下降させて凸部122および凹部132を嵌合させているが、それとは反対に、側面型13を固定した状態で、下型12を貫通孔133の軸回りに90°回転させることにより、下型12を上昇させて凸部122および凹部132を嵌合させてもよい。
【0051】
(取り出し工程)
取り出し工程では、
図7に示すように、側面型13の貫通孔133の外に押し出された光学素子Oを、吸着治具70を用いて型セット10から取り出す。
【0052】
以上のような、型セット10を用いた光学素子Oの成形方法によれば、成形素材Mを成形する際に、上型11を動かすことなく、側面型13および下型12を一体的に移動させてプレス成形を行うことができるため、上型11を独立して駆動させる必要がなく、成形装置1を簡易な構成とすることができる。また、光学素子Oの成形方法によれば、成形後の光学素子Oを型セット10から取り出す際に、側面型13の貫通孔133から光学素子Oを押し出すことができるため、微小な直径の光学素子Oを成形する場合においても、光学素子Oを容易に取り出すことができる。
【0053】
また、光学素子Oの成形方法では、下型12の段差形状に対する側面型13の段差形状の向きを、段差形状同士が嵌合する向きに切り替える簡単な動作により、成形素材Mをプレス成形する際と、成形後の光学素子Oを型セット10から取り出す際とで、側面型13の貫通孔133内における下型12の下面成形面12aの高さを容易に切り替えることができる。これにより、側面型13の貫通孔133内に吸着治具70を挿入することができないような微小な直径の光学素子Oを成形する場合においても、光学素子Oを側面型13の貫通孔133から押し出した後に、吸着治具70によって光学素子Oを型セット10から容易に取り出すことができる。
【0054】
また、光学素子Oの成形方法では、窒素置換時は上型11の上面成形面11aが側面型13の本体部131の上面131aよりも上側に位置しているため(
図5参照)、側面型13の貫通孔133が解放された状態で窒素置換することができるため、窒素置換時においても、上型11を独立して駆動させる必要がなく、成形装置1を簡易な構成とすることができる。
【0055】
[型セットの構成(実施の形態1の変形例)]
本発明の実施の形態1の変形例に係る型セットの構成について、
図8〜
図10を参照しながら説明する。なお、本変形例に係る型セットにおいて、下型12Aおよび側面型13A以外の構成は前記した型セット10(
図5参照)と同様である。従って、以下では下型12Aおよび側面型13A以外の構成については図示および説明を省略する。また、本変形例に係る型セットを用いて光学素子Oを成形する場合、型セット10と同様に前記した成形装置1(
図1参照)を用いる。
【0056】
下型12Aは、
図8に示すように、円柱状の本体部121Aと、本体部121Aの上面121aに形成された所定深さの凹部124と、凹部124の底面124aから突出する円柱状の凸部123と、を備えている。この凸部123の先端面は、下型12Aの下面成形面12aを構成している。
【0057】
側面型13Aは、円柱状の本体部131Aと、本体部131Aの下面131bから突出する凸部134と、を備えている。凸部134は、下型12Aの凹部124に対応する形状に形成されている。また、凸部134の下面134aには、当該凸部134および本体部131Aを貫通する貫通孔133が形成されている。この貫通孔133の内周面は、側面型13Aの側面成形面13aを構成している。
【0058】
このように、下型12Aおよび側面型13Aは、前記した型セット10の下型12および側面型13と比較して、段差形状が反対になっている。具体的には、下型12Aの上面121aには凹部124が形成されており、側面型13Aの下面131bには凹部124に対応する形状の凸部134が形成されている。
【0059】
これにより、
図9に示すように、下型12Aの本体部121Aの上面121aに対して、側面型13Aの凸部134の下面134aが当て付いている場合は、側面型13Aの貫通孔133内における下面成形面12aの位置が、所定位置Aに保持された状態をとる。本変形例に係る型セットを用いた光学素子Oの成形方法では、下型12Aおよび側面型13Aを同図に示すように配置した状態で、配置工程、ガス置換工程、加熱工程、プレス成形工程および冷却工程を実施する。
【0060】
一方、
図10に示すように、下型12Aの凹部124の底面124aに対して、側面型13Aの凸部134の下面134aが当て付いている場合は、側面型13Aの貫通孔133内における下面成形面12aの位置が、所定位置Aよりも高い位置であって、かつ側面型13Aの上面131a近傍の位置Bとなる状態をとる。本変形例に係る型セットを用いた光学素子Oの成形方法では、下型12Aおよび側面型13Aを同図に示すように配置した状態で、押し上げ工程および取り出し工程を実施する。
【0061】
以上のような構成を備える変形例に係る型セットを光学素子Oの成形の際に用いることにより、前記した型セット10と同様に、側面型13Aおよび下型12Aを一体的に移動させてプレス成形を行うことができるため、成形装置1を簡易な構成とすることができる。また、前記した型セット10と同様に、側面型13Aの貫通孔133から成形後の光学素子Oを押し出すことができるため、微小な直径の光学素子Oを成形する場合においても、光学素子Oを容易に取り出すことができる。
【0062】
[型セットの構成(実施の形態2)]
本発明の実施の形態2に係る型セット10Aの構成について、
図11〜
図14を参照しながら説明する。なお、
図12は、型セット10Aを、
図11に示したX−X方向で切断した場合の断面形状を示している。型セット10Aは、
図11および
図12に示すように、上型11と、下型12Bと、側面型13Bと、スリーブ14Aと、スペーサ15と、を備えている。
【0063】
下型12Bは、
図11に示すように、円柱状の本体部121Bと、本体部121Bの上面121aから突出する円柱状の凸部123と、を備えている。凸部123の先端面は、下型12Bの下面成形面12aを構成している。
【0064】
側面型13Bは、
図12に示すように、円筒状に形成されており、中心に貫通孔133が形成されている。この貫通孔133の内周面は、側面型13Bの側面成形面13aを構成している。また、貫通孔133は、上型11の凸部111および下型12Bの凸部123が挿入可能に構成されている。
【0065】
スリーブ14Aは、円筒状に形成されており、後記する光学素子Oの成形方法におけるガス置換工程において型セット10A内に不活性ガスを導入するための貫通孔14aと、スペーサ15をスリーブ14A内に挿入するための貫通孔14bと、が形成されている。
【0066】
スペーサ15は、全体としてU字状に形成されており、下型12Bの凸部123に嵌合可能な幅の切欠き151が形成されている。このスペーサ15は、スリーブ14Aの貫通孔14bを介してスリーブ14A内に挿入され、側面型13Bと下型12Bとの間に着脱可能に配置される。
【0067】
ここで、側面型13Bと下型12Bとの間にスペーサ15が装着されている場合、
図12および
図13に示すように、側面型13Bの貫通孔133内における下型12Bの下面成形面12aの位置が所定位置に保持された状態をとる。後記する型セット10Aを用いた光学素子Oの成形方法では、同図に示すようにスペーサ15を装着した状態で、配置工程、ガス置換工程、加熱工程、プレス成形工程および冷却工程を実施する。
【0068】
一方、側面型13Bと下型12Bとの間にスペーサ15が装着されていない場合、
図14に示すように、側面型13Bの貫通孔133内における下型12Bの下面成形面12aの位置が、前記した所定位置よりも高い位置であって、かつ側面型13Bの上面131a近傍の位置となる状態をとる。後記する型セット10Aを用いた光学素子Oの成形方法では、同図に示すようにスペーサ15を装着しない状態で、押し上げ工程および取り出し工程を実施する。
【0069】
[光学素子の成形方法(実施の形態2)]
以下、型セット10Aを用いた光学素子Oの成形方法について、
図12〜
図14を参照しながら説明する。本実施の形態に係る光学素子Oの成形方法は、配置工程と、ガス置換工程と、加熱工程と、プレス成形工程と、冷却工程と、押し上げ工程と、取り出し工程と、をこの順番で行う。なお、上記工程のうち、ガス置換工程、加熱工程、冷却工程および取り出し工程は、実施の形態1に係る光学素子Oの成形方法と同様であるため、説明を省略する。また、本実施の形態に係る光学素子Oの成形方法は、実施の形態1と同様に、成形装置1(
図1参照)を用いて行う。
【0070】
(配置工程)
配置工程では、
図12に示すように、側面型13Bと下型12Bとの間にスペーサ15を装着する。そして、側面型13Bの貫通孔133内に下面成形面12aが位置するように、下型12Bを側面型13Bの貫通孔133に挿入する。
【0071】
続いて、下型12Bの下面成形面12aに、体積を調整した成形素材Mを配置する。成形素材Mは、球形状に限らず、円板形状や、予め近似の球面形状に加工したレンズ形状でも構わない。続いて、スリーブ14Aの上端面に上型11を載置する。なお、上型11をスリーブ14Aの上端面に載置した際に、上型11の上面成形面11aと側面型13Bの上面131aとの間に、所定の距離D2が形成されるように型セット10Aの各部材の高さを調整する。
【0072】
(プレス成形工程)
プレス成形工程では、図示しない押圧機構によって押圧ピン33(
図1参照)を上昇させ、側面型13B、スペーサ15および下型12Bを上昇させる。プレス成形工程は、具体的には
図13に示すように、側面型13Bと下型12Bとの間にスペーサ15を装着した状態で実施する。これにより、側面型13Bの貫通孔133内における下面成形面12aの位置を所定位置に保持した状態で、側面型13B、スペーサ15および下型12Bを上型11に対して一体的に移動させ、上型11および下型12Bによって成形素材Mをプレス成形する。
【0073】
すなわち、プレス成形工程では、側面型13Bの貫通孔133内における下面成形面12aの高さを保持したまま、スリーブ14A内において、側面型13B、スペーサ15および下型12Bを一体的に上昇させる。このように側面型13B、スペーサ15および下型12Bが一体的に上昇すると、相対的に、上型11の上面成形面11aが側面型13Bの貫通孔133に挿入される。そして、成形素材Mは、貫通孔133内で上面成形面11aおよび下面成形面12aによってプレスされ、レンズ形状に成形される。
【0074】
(押し上げ工程)
押し上げ工程では、
図14に示すように、まず型セット10Aから上型11を除去する。続いて、側面型13Bと下型12Bとの間に装着されたスペーサ15を除去することにより、側面型13Bの貫通孔133内において、プレス成形工程における位置よりも相対的に高い位置であって、かつ成形後の光学素子Oの少なくとも一部が側面型13Bの上面131aから突出する位置に、下型12Bの下面成形面12aを移動させる。
【0075】
すなわち、押し上げ工程では、プレス成形工程の際に装着されていたスペーサ15を除去することにより、下型12Bに対して、スペーサ15の高さ分だけ側面型13Bを下降させ、側面型13Bの貫通孔133内において、下面成形面12aを相対的に上昇させる。そして、光学素子Oを貫通孔133の外に押し上げる。なお、スペーサ15を除去する際は、側面型13Bを押さえながら除去することが好ましい。
【0076】
以上のような、型セット10Aを用いた光学素子Oの成形方法によれば、実施の形態1と同様に、側面型13Bおよび下型12Bを一体的に移動させてプレス成形を行うことができるため、成形装置1を簡易な構成とすることができる。また、実施の形態1と同様に、側面型13Bの貫通孔133から成形後の光学素子Oを押し出すことができるため、微小な直径の光学素子Oを成形する場合においても、光学素子Oを容易に取り出すことができる。
【0077】
また、光学素子Oの成形方法では、側面型13Bと下型12Bとの間に配置されたスペーサ15を着脱する簡単な動作により、成形素材Mをプレス成形する際と、成形後の光学素子Oを型セット10Aから取り出す際とで、側面型13Bの貫通孔133内における下型12Bの下面成形面12aの高さを容易に切り替えることができる。これにより、微小な直径の光学素子Oを成形する場合においても、光学素子Oを側面型13Bの貫通孔133から押し出した後に、吸着治具70によって光学素子Oを容易に取り出すことができる。
【0078】
[型セットの構成(実施の形態2の変形例)]
本発明の実施の形態2の変形例に係る型セットの構成について、
図15を参照しながら説明する。なお、本変形例に係る型セットにおいて、スペーサ15A以外の構成は前記した型セット10A(
図12参照)と同様である。従って、以下ではスペーサ15A以外の構成については図示および説明を省略する。また、本変形例に係る型セットを用いて光学素子Oを成形する場合、型セット10Aと同様に前記した成形装置1(
図1参照)を用いる。
【0079】
スペーサ15Aは、
図15に示すように、半円弧状の2つのスペーサ片152,153から構成されており、当該スペーサ片152,153を組み合わせることにより、貫通孔154が形成される。このスペーサ15Aは、前記したスペーサ15と同様に、側面型13Bと下型12Bとの間に着脱可能に配置される。
【0080】
本変形例に係る型セットを用いて光学素子Oを成形する場合、プレス成形工程までは実施の形態2と同様に実施する。そして続く押し上げ工程において、スペーサ15Aがスリーブ14Aの上方にせり出すまで下型12Bを上昇させてスペーサ15Aを除去することにより、下型12Bに対して、スペーサ15Aの高さ分だけ側面型13Bを下降させる。これにより、側面型13Bの貫通孔133内において、下面成形面12aを相対的に上昇させ、光学素子Oを貫通孔133の外に押し上げる。
【0081】
以上のような構成を備える変形例に係る型セットを光学素子Oの成形の際に用いることにより、前記した型セット10Aと同様に、側面型13Bおよび下型12Bを一体的に移動させてプレス成形を行うことができるため、成形装置1を簡易な構成とすることができる。また、前記した型セット10Aと同様に、側面型13Bの貫通孔133から成形後の光学素子Oを押し出すことができるため、微小な直径の光学素子Oを成形する場合においても、光学素子Oを容易に取り出すことができる。
【0082】
[型セットの構成(実施の形態3)]
本発明の実施の形態3に係る型セット10Bの構成について、
図16〜
図19を参照しながら説明する。型セット10Bは、
図16および
図17に示すように、上型11と、下型12Cと、側面型13Bと、スリーブ14と、弾性部材16と、を備えている。なお、型セット10Bにおいて、下型12Cおよび弾性部材16以外の構成は前記した型セット10,10A(
図5および
図12参照)と同様である。従って、以下では下型12Cおよび弾性部材16以外の構成については説明を省略する。
【0083】
下型12Cは、
図16に示すように、円柱状の本体部121Cと、本体部121Cの上面121aから突出する円柱状の凸部122Cと、凸部122Cの上面122aから突出る円柱状の凸部123と、を備えている。凸部123の先端面は、下型12Cの下面成形面12aを構成している。
【0084】
弾性部材16は、コイル状のばねである。弾性部材16は、
図17に示すように、側面型13Bと下型12Cとの間に配置される。
【0085】
ここで、弾性部材16を介して側面型13Bが押し上げられている場合、
図17および
図18に示すように、側面型13Bの貫通孔133内における下型12Cの下面成形面12aの位置が前記所定位置に保持された状態をとる。後記する型セット10Bを用いた光学素子Oの成形方法では、同図に示すように弾性部材16を介して側面型13Bを押し上げた状態で、配置工程、ガス置換工程、加熱工程、プレス成形工程および冷却工程を実施する。
【0086】
一方、弾性部材16が縮んでいる場合、
図19に示すように、側面型13Bの貫通孔133内における下型12Cの下面成形面12aの位置が、前記した所定位置よりも高い位置であって、かつ側面型13Bの上面131a近傍の位置となる状態をとる。後記する型セット10Bを用いた光学素子Oの成形方法では、同図に示すように弾性部材16が縮んでいる状態で、押し上げ工程および取り出し工程を実施する。
【0087】
[光学素子の成形方法(実施の形態3)]
以下、型セット10Bを用いた光学素子Oの成形方法について、
図17〜
図19を参照しながら説明する。本実施の形態に係る光学素子Oの成形方法は、配置工程と、ガス置換工程と、加熱工程と、プレス成形工程と、冷却工程と、押し上げ工程と、取り出し工程と、をこの順番で行う。なお、上記工程のうち、ガス置換工程、加熱工程、冷却工程および取り出し工程は、実施の形態1に係る光学素子Oの成形方法と同様であるため、説明を省略する。また、本実施の形態に係る光学素子Oの成形方法は、実施の形態1と同様に、成形装置1(
図1参照)を用いて行う。
【0088】
(配置工程)
配置工程では、
図17に示すように、側面型13Bと下型12Cとの間に弾性部材16を配置する。そして、側面型13Bの貫通孔133内に下面成形面12aが位置するように、下型12Cを側面型13Bの貫通孔133に挿入する。すなわち、下型12Cの上に配置された弾性部材16は、側面型13Bの重さで縮んだ状態となるが、その際に下型12Cの下面成形面12aが貫通孔133内に位置するように予め設計する。
【0089】
続いて、下型12Cの下面成形面12aに、体積を調整した成形素材Mを配置する。成形素材Mは、球形状に限らず、円板形状や、予め近似の球面形状に加工したレンズ形状でも構わない。続いて、スリーブ14の上端面に上型11を載置する。なお、上型11をスリーブ14の上端面に載置した際に、上型11の上面成形面11aと側面型13Bの上面131aとの間に、所定の距離D2が形成されるように型セット10Bの各部材の高さを調整する。
【0090】
(プレス成形工程)
プレス成形工程では、図示しない押圧機構によって押圧ピン33(
図1参照)を上昇させ、側面型13B、弾性部材16および下型12Cを上昇させる。プレス成形工程は、具体的には
図18に示すように、側面型13Bと下型12Cとの間に弾性部材16を配置した状態で実施する。これにより、側面型13Bの貫通孔133内における下面成形面12aの位置を所定位置に保持した状態で、側面型13B、弾性部材16および下型12Cを上型11に対して一体的に移動させ、上型11および下型12Cによって成形素材Mをプレス成形する。
【0091】
すなわち、プレス成形工程では、下型12Cによって、弾性部材16を介して側面型13Bを押し上げることにより、当該弾性部材16の弾性力によって側面型13Bと下型12Cとの間に所定の隙間を形成させ、側面型13Bの貫通孔133内における下面成形面12aの高さを保持したまま、スリーブ14内において、側面型13B、弾性部材16および下型12Cを一体的に上昇させる。このように側面型13B、弾性部材16および下型12Cが一体的に上昇すると、相対的に、上型11の上面成形面11aが側面型13Bの貫通孔133に挿入される。そして、成形素材Mは、貫通孔133内で上面成形面11aおよび下面成形面12aによってプレスされ、レンズ形状に成形される。
【0092】
(押し上げ工程)
押し上げ工程では、
図19に示すように、まず型セット10Bから上型11を除去する。続いて、側面型13Bを押し下げて弾性部材16を縮ませることにより、側面型13Bの貫通孔133内において、プレス成形工程における位置よりも相対的に高い位置であって、かつ成形後の光学素子Oの一部が側面型13Bの上面131aから突出する位置に、下型12Cの下面成形面12aを移動させる。
【0093】
すなわち、押し上げ工程では、側面型13Bの下の弾性部材16を縮ませることにより、下型12Cに対して、弾性部材16が縮んだ分だけ側面型13Bを下降させ、側面型13Bの貫通孔133内において、下面成形面12aを相対的に上昇させる。そして、光学素子Oを貫通孔133の外に押し上げる。
【0094】
以上のような、型セット10Bを用いた光学素子Oの成形方法によれば、実施の形態1,2と同様に、側面型13Bおよび下型12Cを一体的に移動させてプレス成形を行うことができるため、成形装置1を簡易な構成とすることができる。また、実施の形態1,2と同様に、側面型13Bの貫通孔133から成形後の光学素子Oを押し出すことができるため、微小な直径の光学素子Oを成形する場合においても、光学素子Oを容易に取り出すことができる。
【0095】
また、光学素子Oの成形方法では、側面型13Bと下型12Cとの間に配置した弾性部材16の伸縮させる簡単な動作により、成形素材Mをプレス成形する際と、成形後の光学素子Oを型セット10Bから取り出す際とで、側面型13Bの貫通孔133内における下型12Cの下面成形面12aの高さを容易に切り替えることができる。
【0096】
以上、本発明に係る光学素子の成形方法および光学素子成形用金型について、発明を実施するための形態により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。