【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シフトノブに設けられるこれらのオーバードライブスイッチやノブスイッチは、運転者がシフトノブを把手した状態で操作される。そのため、オーバードライブスイッチ等は、シフトノブを把手した状態での操作を容易に行い得るよう、運転席側に突出するようにシフトノブに設けられている。
【0006】
図5の参考図に示すとおり、特許文献1のオーバードライブスイッチ等、従来のスイッチ装置120は、ボタン122の接点位置P’がノブハウジング112から離間する構造とされていた。そのため、従来のオーバードライブスイッチは、運転者が意図的に押圧操作を行った訳ではない場合、例えば、運転者の足が意図せずボタン122に当たるなど、外乱入力によりスイッチの切り替え操作が行われる場合があった。
【0007】
一般的に、オーバードライブ装置の作動状況(オン状態、オフ状態)は、インストルメントパネルに設けられた表示装置に表示される。例えば、オーバードライブ装置の作動状況がオフ状態である場合には、表示装置にオフ状態であることを示す「OFF」の表示が点灯する。これにより、運転者はオーバードライブ装置が「オン状態」であるか「オフ状態」であるかを認識することができる。また、運転者がオーバードライブ状態の切り替え操作を行う場合には、表示装置の表示を視認しながらスイッチ操作を行うものと考えられる。
【0008】
その一方で、運転者の身体の一部や積載物等がスイッチに接触するなど、車両の走行中にスイッチに物理的な外乱入力があった場合、車両が運転者の意図しない挙動をする場合がある。また、このような場合、運転者が意識的にオーバードライブスイッチの切り替えを行ったものではなく、運転者がスイッチの切り替えが行われたことに気づかない場合が想定される。
【0009】
このようなシフトノブから突出するように設けられるスイッチ装置について、誤操作の要因となる外乱入力の問題に対して改善が求められていた。
【0010】
そこで本発明は、外乱入力によるスイッチ装置の誤操作を抑制することができるシフトノブ装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決すべく提供される本発明のシフトノブ装置は、シフトレバーの把手部を構成するシフトノブ装置であって、ノブハウジングと、オン状態とオフ状態との切り替えを行うスイッチ装置とを有し、前記スイッチ装置が、前記ノブハウジングに設けられた開口に挿通されたボタンを有し、前記ボタンの押圧面に押圧力を作用させることにより、前記ノブハウジングの内部に向かうストローク方向に押圧操作可能であり、前記ボタンを所定の接点位置に到達するまで押圧操作することを条件として、オン状態及びオフ状態の切り替えが可能なものであり、前記接点位置が、前記押圧面の少なくとも一部が前記ノブハウジングの外周面と面一となる位置まで到達するように前記ボタンを押圧操作することを条件として前記ボタンが到達する位置に設定されており、前記開口の縁部の少なくとも一部に、他の部位よりも急峻に前記ストローク方向に向けて屈曲あるいは湾曲した接触規制部が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のシフトノブ装置によれば、ボタントップ(ボタンの押圧面)がノブハウジングの外周面と面一となる位置まで押圧されると、スイッチ装置のオン・オフの切り替えが行われる。そのため、例えば、運転者の足や積載物がボタンに接触したとしても、ボタンの略全部がノブケーシングの内部に押し込まれる位置まで変位しない限り、ボタンが接点位置に到達してスイッチ装置のオン・オフの切り替えが行われない。これにより、本発明のシフトノブ装置は、ボタンへの外乱入力により運転者の意図しないスイッチの切替操作が行われることを抑制することができる。その結果、本発明のシフトノブ装置は、スイッチの誤操作を抑制することができる。
【0013】
また、本発明のシフトノブ装置は、ボタンをストローク方向に押し切った状態(フルストローク状態)では、ボタンの押圧面がノブケーシングの外周面と略面一となる位置に到達する。言い換えれば、シフトノブ装置は、ボタンを押し切ると、ボタンがほとんど突出していない状態となる。ここで仮に、ボタンに運転者の身体の一部が強く接触した場合に、ボタンが突出した状態で維持されると、ボタンが突起物として運転者の身体の一部に接触して、攻撃性を帯びる恐れがある。本発明のシフトノブ装置は、フルストローク状態においてボタンをほとんど突出させないことにより、運転者の手や足等への攻撃性を低減することができる。
【0014】
また、本発明のシフトノブ装置は、前記開口の縁部の少なくとも一部に、他の部位よりも急峻に前記ストローク方向に向けて屈曲あるいは湾曲した接触規制部が設けられたものである。これにより、運転者の足や指がボタンに当たり、ボタンがストローク方向に導かれて運転者の意図に反してスイッチの切替操作が行われることを抑制することができる。その結果、本発明のシフトノブ装置は、スイッチの誤操作を抑制することができる。
【0015】
また上述したのとは異なる観点から検討すれば、接触規制部は、前記開口の縁部の少なくとも一部に、前記ノブハウジングの外周面の縁と前記ボタンの周面との離間距離が他の部位よりも小さくなるように形成されたものであることが望ましい。
【0016】
上述の構成によれば、開口において、ボタンとノブハウジングの外周面との間の隙間を小さくすることができる。言い換えれば、開口の縁部に接触規制部を設けることにより、ノブハウジングからのボタンの露出を極力抑え、運転者の身体の一部や積載物がボタンに接触することを規制する。これにより、本発明のシフトノブ装置は、運転者の足や指がボタンに当たり、ボタンがストローク方向に導かれて運転者の意図に反してスイッチの切替操作が行われることを抑制することができる。その結果、本発明のシフトノブ装置は、スイッチの誤操作を抑制することができる。
【0017】
ここで、本発明のシフトノブ装置は、上述のとおり、スイッチ装置の接点位置をボタントップがノブハウジングの外周面と面一となる位置まで到達した位置とされている。従来のシフトノブ装置に対して、ボタンストローク位置の変更により接点位置をこのような構成とした場合には、スイッチ操作時(ボタン押圧時)に運転者の指が開口の縁部(エッジ)と接触することが想定される。より具体的に説明すると、仮にボタンを押し切った状態でもボタンがノブハウジングに対して突出している場合には、開口の縁部に運転者の指等が接触することはない。一方、ボタンを押し切った際にボタンがほとんど突出していない場合には、開口の縁部とボタントップとが隣接する状態となり、開口の縁部が露出して運転者の指などが接触することが想定される。開口のエッジの形状によっては、指などが当たった場合に操作性の悪化(例えば開口部エッジ当たりによる痛みや違和感)が生じることが想定される。そのため、シフトノブ装置は、開口エッジが運転者の身体の一部に接触した場合の攻撃性を低減する措置が講じられることが望ましい。
【0018】
上述の課題に対応するため、本発明のシフトノブ装置は、前記開口の縁部の少なくとも一部に、前記ストローク方向に向けて湾曲又は傾斜した形状とされた勾配部が形成されることが望ましい。
【0019】
上述の構成によれば、開口のエッジを面取りやR加工を施して勾配部を設けることにより、運転者の身体の一部への攻撃性を低減させることができる。
【0020】
また、本発明のシフトノブ装置は、開口縁との接触による運転者の身体の一部への攻撃性を低減することと、運転者の足や積載物がボタンに接触することにより誤操作を抑制することの、双方の課題が同時に解決されることが望ましい。また、仮に、開口の縁部の全部に勾配部が設けられた場合には、ボタンとノブケーシングとの隙間感が大きくなり、見た目を損なう可能性がある。本発明のノブケーシングは、意匠性の低下を最小限に抑えることに加え、上述した2つの課題に対応可能とされることが望ましい。
【0021】
ここで、本発明の発明者らが鋭意検討した結果、本発明の発明者らは、運転者が切り替え操作を行う場合と、足や積載物が接触する場合とで、ボタンの異なる領域が押圧される傾向にあることを見いだした。例えば、スイッチ装置の切替操作を行う場合には、ボタンの上方側が比較的多く押圧操作される。これに対して、運転者の足等がボタンと接触する場合には、ボタンの下方側が接触することが多い。
【0022】
上述の知見に基づき提供される本発明のシフトノブ装置は、前記接触規制部が、前記シフトレバーの把持に伴い操作者の指が位置すると想定される操作時指位置とは前記ボタンを介して反対側の位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明のシフトノブ装置は、前記勾配部が、前記ボタンに対して前記シフトレバーの把持に伴い操作者の指が位置すると想定される操作時指位置側に設けられていることを特徴とするものである。
【0024】
言い換えれば、本発明のシフトノブ装置は、シフトレバーの軸線が延びる方向において、シフトレバーの揺動軸側を下方とし、前記シフトノブ装置が配置される側を上方とした場合に、前記開口の縁部のうちの一部に前記勾配部が設けられ、前記開口において前記勾配部と向かい合う位置に前記接触規制部が設けられるものであり、前記勾配部が上方の領域に設けられ、前記接触規制部が下方の領域に設けられることを特徴とするものである。
【0025】
上述の構成によれば、操作時指位置側となる開口縁部のうち上方の領域は、面取幅やR幅を比較的大きくして、スイッチ装置に対する操作性を確保しつつ、手への攻撃性を低減することができる。また、操作時指位置とはボタンを介して反対側の位置となる開口縁部のうち下方の領域は、面取幅やR幅を小さくする、あるいは設けないこととして、外乱入力に対してロバスト性を高めることができる。また、面取幅やR幅が拡大された勾配部を設けつつ勾配部の範囲を抑え、隙間感に起因する意匠性の低下を抑えることができる。
【0026】
本発明のシフトノブ装置は、前記スイッチ装置が、オーバードライブ機能の切り替え操作に用いられるものとすることができる。
【0027】
上述の構成によれば、オーバードライブ機能の切り替えの誤操作を抑制することができる。これにより、車両が予期せぬタイミングで減速等するのを抑制し、安全性や使用感の向上に資することができる。
【0028】
このように、本発明のシフトノブ装置は、部品点数を増加することなく上記の対策を実現することができる。そのため、本発明のシフトノブ装置は、コストを抑えつつスイッチ装置の誤操作を抑制し、様々な車種に柔軟に対応することができる。