特許第6884090号(P6884090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884090
(24)【登録日】2021年5月13日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】シフトノブ装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20210531BHJP
【FI】
   B60K20/02 A
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-230387(P2017-230387)
(22)【出願日】2017年11月30日
(65)【公開番号】特開2019-98861(P2019-98861A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】藤原 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】矢倉 武蔵
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−093558(JP,U)
【文献】 実開平02−081959(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトレバーの把手部を構成するノブハウジングと、
前記ノブハウジングに設けられたスイッチ装置とを有し、
前記スイッチ装置が、前記ノブハウジングに設けられた開口に挿通されたボタンを有し、前記ボタンの押圧面に押圧力を作用させることにより、前記ノブハウジングの内部に向かうストローク方向に押圧操作可能であり、前記ボタンを所定の接点位置に到達するまで押圧操作することを条件として、オン状態及びオフ状態の切り替えが可能なものであり、
前記接点位置が、前記押圧面の少なくとも一部が前記ノブハウジングの外周面と面一となる位置まで到達するように前記ボタンを押圧操作することを条件として前記ボタンが到達する位置に設定されており、
前記開口の縁部の少なくとも一部に、他の部位よりも急峻に前記ストローク方向に向けて屈曲あるいは湾曲した接触規制部が設けられていることを特徴とするシフトノブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のレンジ切り替えのためのシフト操作を行うシフトレバーのシフトノブに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シフトレバーは、車両の前後方向(シフト方向)に操作が行われることにより、車両のレンジ位置を切り替え可能とされている。また、シフトレバーの把手部として機能するシフトノブには、シフトレバーのシフト方向への操作を許容するためのノブボタンや、オーバードライブ状態のオン・オフの切り替え操作を行うためのオーバードライブスイッチ等が設けられている。
【0003】
近年では、オーバードライブスイッチの多くは、モーメンタリー式のスイッチが採用されている。例えば、下記特許文献1のオーバードライブスイッチは、ケーシングに押しボタンを進退可能に内嵌めし、押しボタンを押圧して操作を行うことにより、コントロール回路を介して車両のオーバードライブ状態を交互にオン・オフさせる車両用オーバードライブスイッチが開示されている。オーバードライブスイッチのオン・オフの切り替えを行うボタンは、ノブボタンよりも下方に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−100263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シフトノブに設けられるこれらのオーバードライブスイッチやノブスイッチは、運転者がシフトノブを把手した状態で操作される。そのため、オーバードライブスイッチ等は、シフトノブを把手した状態での操作を容易に行い得るよう、運転席側に突出するようにシフトノブに設けられている。
【0006】
図5の参考図に示すとおり、特許文献1のオーバードライブスイッチ等、従来のスイッチ装置120は、ボタン122の接点位置P’がノブハウジング112から離間する構造とされていた。そのため、従来のオーバードライブスイッチは、運転者が意図的に押圧操作を行った訳ではない場合、例えば、運転者の足が意図せずボタン122に当たるなど、外乱入力によりスイッチの切り替え操作が行われる場合があった。
【0007】
一般的に、オーバードライブ装置の作動状況(オン状態、オフ状態)は、インストルメントパネルに設けられた表示装置に表示される。例えば、オーバードライブ装置の作動状況がオフ状態である場合には、表示装置にオフ状態であることを示す「OFF」の表示が点灯する。これにより、運転者はオーバードライブ装置が「オン状態」であるか「オフ状態」であるかを認識することができる。また、運転者がオーバードライブ状態の切り替え操作を行う場合には、表示装置の表示を視認しながらスイッチ操作を行うものと考えられる。
【0008】
その一方で、運転者の身体の一部や積載物等がスイッチに接触するなど、車両の走行中にスイッチに物理的な外乱入力があった場合、車両が運転者の意図しない挙動をする場合がある。また、このような場合、運転者が意識的にオーバードライブスイッチの切り替えを行ったものではなく、運転者がスイッチの切り替えが行われたことに気づかない場合が想定される。
【0009】
このようなシフトノブから突出するように設けられるスイッチ装置について、誤操作の要因となる外乱入力の問題に対して改善が求められていた。
【0010】
そこで本発明は、外乱入力によるスイッチ装置の誤操作を抑制することができるシフトノブ装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決すべく提供される本発明のシフトノブ装置は、シフトレバーの把手部を構成するシフトノブ装置であって、ノブハウジングと、オン状態とオフ状態との切り替えを行うスイッチ装置とを有し、前記スイッチ装置が、前記ノブハウジングに設けられた開口に挿通されたボタンを有し、前記ボタンの押圧面に押圧力を作用させることにより、前記ノブハウジングの内部に向かうストローク方向に押圧操作可能であり、前記ボタンを所定の接点位置に到達するまで押圧操作することを条件として、オン状態及びオフ状態の切り替えが可能なものであり、前記接点位置が、前記押圧面の少なくとも一部が前記ノブハウジングの外周面と面一となる位置まで到達するように前記ボタンを押圧操作することを条件として前記ボタンが到達する位置に設定されており、前記開口の縁部の少なくとも一部に、他の部位よりも急峻に前記ストローク方向に向けて屈曲あるいは湾曲した接触規制部が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のシフトノブ装置によれば、ボタントップ(ボタンの押圧面)がノブハウジングの外周面と面一となる位置まで押圧されると、スイッチ装置のオン・オフの切り替えが行われる。そのため、例えば、運転者の足や積載物がボタンに接触したとしても、ボタンの略全部がノブケーシングの内部に押し込まれる位置まで変位しない限り、ボタンが接点位置に到達してスイッチ装置のオン・オフの切り替えが行われない。これにより、本発明のシフトノブ装置は、ボタンへの外乱入力により運転者の意図しないスイッチの切替操作が行われることを抑制することができる。その結果、本発明のシフトノブ装置は、スイッチの誤操作を抑制することができる。
【0013】
また、本発明のシフトノブ装置は、ボタンをストローク方向に押し切った状態(フルストローク状態)では、ボタンの押圧面がノブケーシングの外周面と略面一となる位置に到達する。言い換えれば、シフトノブ装置は、ボタンを押し切ると、ボタンがほとんど突出していない状態となる。ここで仮に、ボタンに運転者の身体の一部が強く接触した場合に、ボタンが突出した状態で維持されると、ボタンが突起物として運転者の身体の一部に接触して、攻撃性を帯びる恐れがある。本発明のシフトノブ装置は、フルストローク状態においてボタンをほとんど突出させないことにより、運転者の手や足等への攻撃性を低減することができる。
【0014】
また、本発明のシフトノブ装置は、前記開口の縁部の少なくとも一部に、他の部位よりも急峻に前記ストローク方向に向けて屈曲あるいは湾曲した接触規制部が設けられたものである。これにより、運転者の足や指がボタンに当たり、ボタンがストローク方向に導かれて運転者の意図に反してスイッチの切替操作が行われることを抑制することができる。その結果、本発明のシフトノブ装置は、スイッチの誤操作を抑制することができる。
【0015】
また上述したのとは異なる観点から検討すれば、接触規制部は、前記開口の縁部の少なくとも一部に、前記ノブハウジングの外周面の縁と前記ボタンの周面との離間距離が他の部位よりも小さくなるように形成されたものであることが望ましい。
【0016】
上述の構成によれば、開口において、ボタンとノブハウジングの外周面との間の隙間を小さくすることができる。言い換えれば、開口の縁部に接触規制部を設けることにより、ノブハウジングからのボタンの露出を極力抑え、運転者の身体の一部や積載物がボタンに接触することを規制する。これにより、本発明のシフトノブ装置は、運転者の足や指がボタンに当たり、ボタンがストローク方向に導かれて運転者の意図に反してスイッチの切替操作が行われることを抑制することができる。その結果、本発明のシフトノブ装置は、スイッチの誤操作を抑制することができる。
【0017】
ここで、本発明のシフトノブ装置は、上述のとおり、スイッチ装置の接点位置をボタントップがノブハウジングの外周面と面一となる位置まで到達した位置とされている。従来のシフトノブ装置に対して、ボタンストローク位置の変更により接点位置をこのような構成とした場合には、スイッチ操作時(ボタン押圧時)に運転者の指が開口の縁部(エッジ)と接触することが想定される。より具体的に説明すると、仮にボタンを押し切った状態でもボタンがノブハウジングに対して突出している場合には、開口の縁部に運転者の指等が接触することはない。一方、ボタンを押し切った際にボタンがほとんど突出していない場合には、開口の縁部とボタントップとが隣接する状態となり、開口の縁部が露出して運転者の指などが接触することが想定される。開口のエッジの形状によっては、指などが当たった場合に操作性の悪化(例えば開口部エッジ当たりによる痛みや違和感)が生じることが想定される。そのため、シフトノブ装置は、開口エッジが運転者の身体の一部に接触した場合の攻撃性を低減する措置が講じられることが望ましい。
【0018】
上述の課題に対応するため、本発明のシフトノブ装置は、前記開口の縁部の少なくとも一部に、前記ストローク方向に向けて湾曲又は傾斜した形状とされた勾配部が形成されることが望ましい。
【0019】
上述の構成によれば、開口のエッジを面取りやR加工を施して勾配部を設けることにより、運転者の身体の一部への攻撃性を低減させることができる。
【0020】
また、本発明のシフトノブ装置は、開口縁との接触による運転者の身体の一部への攻撃性を低減することと、運転者の足や積載物がボタンに接触することにより誤操作を抑制することの、双方の課題が同時に解決されることが望ましい。また、仮に、開口の縁部の全部に勾配部が設けられた場合には、ボタンとノブケーシングとの隙間感が大きくなり、見た目を損なう可能性がある。本発明のノブケーシングは、意匠性の低下を最小限に抑えることに加え、上述した2つの課題に対応可能とされることが望ましい。
【0021】
ここで、本発明の発明者らが鋭意検討した結果、本発明の発明者らは、運転者が切り替え操作を行う場合と、足や積載物が接触する場合とで、ボタンの異なる領域が押圧される傾向にあることを見いだした。例えば、スイッチ装置の切替操作を行う場合には、ボタンの上方側が比較的多く押圧操作される。これに対して、運転者の足等がボタンと接触する場合には、ボタンの下方側が接触することが多い。
【0022】
上述の知見に基づき提供される本発明のシフトノブ装置は、前記接触規制部が、前記シフトレバーの把持に伴い操作者の指が位置すると想定される操作時指位置とは前記ボタンを介して反対側の位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明のシフトノブ装置は、前記勾配部が、前記ボタンに対して前記シフトレバーの把持に伴い操作者の指が位置すると想定される操作時指位置側に設けられていることを特徴とするものである。
【0024】
言い換えれば、本発明のシフトノブ装置は、シフトレバーの軸線が延びる方向において、シフトレバーの揺動軸側を下方とし、前記シフトノブ装置が配置される側を上方とした場合に、前記開口の縁部のうちの一部に前記勾配部が設けられ、前記開口において前記勾配部と向かい合う位置に前記接触規制部が設けられるものであり、前記勾配部が上方の領域に設けられ、前記接触規制部が下方の領域に設けられることを特徴とするものである。
【0025】
上述の構成によれば、操作時指位置側となる開口縁部のうち上方の領域は、面取幅やR幅を比較的大きくして、スイッチ装置に対する操作性を確保しつつ、手への攻撃性を低減することができる。また、操作時指位置とはボタンを介して反対側の位置となる開口縁部のうち下方の領域は、面取幅やR幅を小さくする、あるいは設けないこととして、外乱入力に対してロバスト性を高めることができる。また、面取幅やR幅が拡大された勾配部を設けつつ勾配部の範囲を抑え、隙間感に起因する意匠性の低下を抑えることができる。
【0026】
本発明のシフトノブ装置は、前記スイッチ装置が、オーバードライブ機能の切り替え操作に用いられるものとすることができる。
【0027】
上述の構成によれば、オーバードライブ機能の切り替えの誤操作を抑制することができる。これにより、車両が予期せぬタイミングで減速等するのを抑制し、安全性や使用感の向上に資することができる。
【0028】
このように、本発明のシフトノブ装置は、部品点数を増加することなく上記の対策を実現することができる。そのため、本発明のシフトノブ装置は、コストを抑えつつスイッチ装置の誤操作を抑制し、様々な車種に柔軟に対応することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、外乱入力によるスイッチ装置の誤操作を抑制することができるシフトノブ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態に係るシフトノブ装置を示す正面図である。
図2図1のシフトノブ装置の側面図である。
図3図1のシフトノブ装置のボタンを示す側面図である。(a)はフリー状態、(b)はフルストローク状態を示している。
図4図1のシフトノブ装置のボタン及び開口を示す正面図である。
図5】従来のスイッチ装置を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明のシフトノブ装置10について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
なお、以下の説明において、シフトレバー1の軸線が延びる方向において、シフトレバー1の図示を省略した揺動軸側(図1では下方)を「下方Y2」と、シフトノブ装置10が配置される側(図1では上方)を「上方Y1」と記載する場合がある。
【0033】
本発明に係るシフトノブ装置10は、車両のシフト操作を行うためのシフトレバー1に設けられている。シフトレバー1は、運転者がシフトノブ装置10を前後方向(シフト方向)に操作を行うことにより、P(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)のいずれかのレンジに位置させられる。また、トランスミッション(図示を省略)の駆動力の入力から出力までの状態は、シフトレバー1のレンジポジションに応じて、機械的に切り換えられる。
【0034】
シフトノブ装置10は、シフトレバー1の把手部を構成する。図1に示すとおり、シフトノブ装置10は、ノブハウジング12、ノブボタン18、及びオーバードライブスイッチ(スイッチ装置)20を有する。
【0035】
ノブハウジング12には、オーバードライブスイッチ20やノブボタン18等の操作により作動するスイッチ類が収容されている。また、ノブハウジング12は、シフトレバー1を操作するための把手部として機能させるため、運転者が把手しやすい大きさ、及び形状として形成されている。ノブハウジング12には、ノブボタン18が挿通されるボタン開口13や、オーバードライブスイッチ(スイッチ装置)20を取り出すための開口14等の貫通孔が形成されている。
【0036】
ノブボタン18は、ノブハウジング12に対して押圧操作可能に設けられている。ノブボタン18は、車両が右ハンドル車の場合にはシフトノブ装置10を把手した運転者の左手の親指により押圧操作に適した位置に配置されている。また、ノブボタン18は、図示を省略した付勢部材によりノブハウジング12の外側に突出するように付勢された状態で配置されている。ノブボタン18は、ノブハウジング12の外側に突出した状態から、付勢部材の付勢力に対抗して押圧操作することにより、ノブハウジング12の内側に進入するように押圧操作される。また、ノブボタン18は、押圧操作から開放すると、付勢部材の弾性力によりノブハウジング12の外側に突出した位置に復帰する。
【0037】
ノブボタン18は、シフトレバー1のシフト操作の規制を解除するために設けられている。なお、詳細な説明は省略するが、シフトレバー1は、シフトレバー1の内部に設けられた係合構造により、シフト操作が規制及び許容される。具体的には、シフトレバー1は、運転者がノブボタン18を押圧した状態において、シフト方向に操作可能とされている。
【0038】
オーバードライブスイッチ(スイッチ装置)20は、車両のオーバードライブ機能をオン状態及びオフ状態の間で交互に切り替えるために設けられている。オーバードライブスイッチ20には、操作部として機能するボタン22が設けられている。
【0039】
オーバードライブスイッチ20は、いわゆるモーメンタリー式のスイッチ装置である。なお、オーバードライブスイッチ20は、図示を省略した制御手段と接続される。オーバードライブスイッチ20と接続される制御装置は、ボタン22の押圧操作により所定の信号が入力される度に、自動変速機のオーバードライブ機能の作動状態がオン状態及びオフ状態に交互に切り替わる。なお、オーバードライブ機能の作動状態は、図示を省略したインストルメントパネルの表示装置に表示され、運転者がオーバードライブ装置の作動状況を認識可能とされている。このように、オーバードライブスイッチ20は、ボタン22の押圧操作を行うごとに、オーバードライブ装置の作動状況をオン状態、及びオフ状態に交互に切り替え可能としている。
【0040】
図1に示すとおり、ボタン22は、ノブボタン18の下方Y2に配置されている。ボタン22は、開口14に挿通されている。また、ボタン22は、押圧面22aに押圧力を作用させることにより、ノブハウジング12の内部に向かうストローク方向Xに押圧操作可能とされている。オーバードライブスイッチ20は、ボタン22の押圧面22aを後述する接点位置P3に到達するまで押圧操作することを条件として、オン状態及びオフ状態の切り替えを行う。
【0041】
図3(a)に示すとおり、ボタン22は、図示を省略した付勢部材により、ノブハウジング12の外部に突出するように付勢された状態で開口14に挿通されている。そのため、ボタン22は、押圧操作されていない状態ではノブハウジング12の外側に突出した位置(フリー位置P1)に配置される。
【0042】
また、図3(b)に示すとおり、ボタン22は、付勢部材の付勢力に反してノブハウジング12の内部に押し込むように、押圧して操作されると、ノブハウジング12の内部に略全体が収容された状態となる。ボタン22は、ストローク方向Xに押し切られた状態(フルストローク状態)では、ボタン22の押圧操作される面(押圧面22a)がノブハウジング12の外周面12aよりもノブハウジング12の内側の位置(フルストローク位置P2)まで変位可能とされている。
【0043】
図3(b)に示すとおり、フリー位置P1とフルストローク位置P2との中間には、接点位置P3が設けられている。具体的には、ボタン22の押圧面22aがノブハウジング12の外周面12aと面一となる位置まで到達すると、ボタン22と図示を省略したスイッチ接触部とが接触して、所定の信号が入力されて自動変速機のオーバードライブ機能の作動状態の切り替えが行われる。言い換えれば、オーバードライブスイッチ20の接点位置P3は、ボタン22の押圧面22aがノブハウジング12の外周面12aと面一となる位置までボタン22がストローク方向Xに進入して到達した位置とされている。
【0044】
このように、シフトノブ装置10は、ボタン22の押圧面22aがノブハウジング12の外周面12aと面一となるように到達した位置が、オーバードライブスイッチ20の作動状態の切り替えが行われる接点位置P3とされている。そのため、例えば、運転者の足や積載物がボタン22に接触したとしても、ボタン22の略全体がノブハウジング12の内部に押し込まれる位置まで変位しない限り、ボタン22が接点位置P3に到達してオーバードライブ装置の作動状態の切り替えが行われない。これにより、シフトノブ装置10は、ボタン22への外乱入力により運転者の意図しないオーバードライブ装置の作動状態の切り替えが行われることを抑制することができる。その結果、シフトノブ装置10は、スイッチの誤操作を抑制することができる。
【0045】
また、シフトノブ装置10は、ボタン22をストローク方向Xに押し切った状態(フルストローク状態)では、ボタン22の押圧面22aが開口14の縁部15と略面一となるよう隣接する。シフトノブ装置10は、ボタン22を押し切った状態では、ボタン22の略全体がノブハウジング12の内側に収容された状態となる。言い換えれば、シフトノブ装置10は、ボタン22を押し切ると、ボタン22がほとんど突出していない状態となる。ここで仮に、ボタン22に運転者の身体の一部が強く接触した場合、仮にボタン22が突出した状態で維持されると、ボタン22が突起物として運転者の身体の一部に接触して、攻撃性を帯びる恐れがある。シフトノブ装置10は、フルストローク状態においてボタン22を突出させないことにより、運転者の手や足等への攻撃性を低減することができる。
【0046】
続いて、ノブハウジング12の開口14の形状等について、詳細に説明する。上述のとおり、開口14には、ボタン22が挿通される。
【0047】
図3、及び図4に示すとおり、開口14は、ボタン22の径方向周面を取り囲むように形成され、ボタン22の径方向の大きさと概ね一致する開口径とされている。開口14の縁部15は、略全域に面取り、あるいはR加工が施されている。ここで、縁部15に施された面取りやR加工の形状は、開口14の周部の領域によって異なる形状を有する。具体的には、縁部15の面取り加工(面取り)やR加工の形状は、上方Y1側の上方領域R1と、下方Y2側の下方領域R2とで、面取り幅又はR加工の幅が異なる部分が形成されている。
【0048】
なお、操作者がシフトレバー1を把持すると、操作者の指はノブボタン18やボタン22の上方Y1側に位置することが想定される。言い換えれば、シフトレバー1の把持に伴い操作者の指が位置すると想定される操作時指位置P4は、ボタン22の上方Y1側となる(図2参照)。
【0049】
縁部15の下方領域R2には、ノブハウジング12の外周面12aの縁とボタン22の周面22bとの離間距離Lが他の部位よりも小さくなるように形成された接触規制部17が設けられている。言い換えれば、接触規制部17は、縁部15の他の部位よりも急峻にストローク方向Xに向けて屈曲あるいは湾曲した形状とされた部分である。図3に示すとおり、接触規制部17は、縁部15の面取りの幅が小さく施されている(R小)。接触規制部17は、ボタン22の下方Y2側の周面を覆うように形成されている。
【0050】
縁部15の上方領域R1には、ストローク方向Xに向けて湾曲又は傾斜した形状とされた勾配部16が設けられている。図3に示すとおり、本実施形態の勾配部16は、縁部15にR加工を施すことにより形成され、ストローク方向Xに向けて湾曲した断面形状を有する。また、図4に示すとおり、勾配部16は、上方Y1に向かうに従ってR加工の幅が拡大(R拡大)するように形成されている。勾配部16は、開口14の縁部15を面取り加工あるいはR加工が施されることにより、すり鉢状の形状を形成する。
【0051】
このように、シフトノブ装置10は、開口14の縁部15において、上方領域R1に勾配部16が設けられ、下方領域R2に接触規制部17が設けられている。勾配部16及び接触規制部17の位置について異なる観点で説明すると、シフトノブ装置10は、ボタン22に対して操作時指位置P4側となる位置には勾配部16が設けられ、ボタン22を介して操作時指位置P4とは反対側となる位置には接触規制部17が設けられている。
【0052】
シフトノブ装置10は、開口14の縁部15に接触規制部17を設けることにより、開口14において、ボタン22とノブハウジング12の外周面12aとの間の隙間(離間距離L)を小さくすることができる。言い換えれば、シフトノブ装置10は、開口14の縁部15に接触規制部17を設けることにより、ノブハウジング12からのボタン22の露出を極力抑え、運転者の身体の一部や積載物がボタン22に接触することを規制する。これにより、シフトノブ装置10は、運転者の足や指がボタン22に当たり、ボタン22がストローク方向Xに導かれて運転者の意図に反してオーバードライブ装置の作動状態の切り替えが行われることを抑制することができる。その結果、シフトノブ装置10は、オーバードライブスイッチ20の誤操作を抑制することができる。
【0053】
さらに、シフトノブ装置10は、縁部15の上方領域R1に勾配部16を設けてオーバードライブスイッチ20に対する操作性を確保しつつ、手への攻撃性(開口14のエッジ当たり等)を低減することができる。また、シフトノブ装置10は、縁部15の下方領域R2に接触規制部17を設け、外乱入力に対してロバスト性を高めることができる。また、シフトノブ装置10は、勾配部16を効率的に設け、隙間感が生じることに起因する意匠性の低下を極力抑えることができる。
【0054】
以上、本発明のシフトノブ装置の具体的な実施形態について説明したが、本発明のシフトノブ装置は上述した実施形態に限定されない。
【0055】
例えば、上述したシフトノブ装置10の勾配部16は、R加工により形成される例を示したが、勾配部16は、湾曲した断面形状を有さない面取り加工によるものであってもよい。
【0056】
また、上述したシフトノブ装置10は、接点位置P3よりもさらにストローク方向Xにボタン22が進入可能とされ、フルストローク状態においてボタン22の押圧面22aがノブハウジング12の内側に到達する例を示したが、本発明のシフトノブ装置はこれに限定されない。例えば、ボタンのフルストローク位置と、接点位置とが一致するものであってもよい。すなわち、ボタンがフルストローク状態とされると、スイッチ装置の作動状態が切り替わるものであってもよい。
【0057】
さらに、本発明のシフトノブ装置のノブハウジング12は、図1等で例示した形状に限定されない。本発明のシフトノブ装置のノブケーシングの形状は、種々選択可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のシフトノブ装置は、シフトレバーの操作部を構成するシフトノブとして、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 シフトレバー
10 シフトノブ装置
12 ノブハウジング
12a 外周面
14 開口
17 接触規制部
20 オーバードライブスイッチ(スイッチ装置)
22 ボタン
22a 押圧面
X ストローク方向
P3 接点位置
図1
図2
図3
図4
図5