特許第6884136号(P6884136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6884136車両の壁を覆いかつ/または防音にするためのパネル、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884136
(24)【登録日】2021年5月13日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】車両の壁を覆いかつ/または防音にするためのパネル、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/00 20060101AFI20210531BHJP
   B29C 43/20 20060101ALI20210531BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20210531BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20210531BHJP
   B29C 70/50 20060101ALI20210531BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20210531BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20210531BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20210531BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20210531BHJP
【FI】
   B60R13/00
   B29C43/20
   B32B5/18
   B32B5/24 101
   B29C70/50
   B29C70/16
   B29K105:04
   B29K105:08
   B29L9:00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-509998(P2018-509998)
(86)(22)【出願日】2016年5月2日
(65)【公表番号】特表2018-524236(P2018-524236A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】FR2016051033
(87)【国際公開番号】WO2016177960
(87)【国際公開日】20161110
【審査請求日】2018年12月11日
(31)【優先権主張番号】1553979
(32)【優先日】2015年5月4日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517385302
【氏名又は名称】ホーワ・トラミコ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クレマン・ユベール
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・ボナン
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ムーニャール
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01875822(EP,A1)
【文献】 特開平01−197539(JP,A)
【文献】 特表2007−509250(JP,A)
【文献】 特開2008−222846(JP,A)
【文献】 特開昭58−005346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/08
B29C 43/20
B29C 70/16
B29C 70/50
B32B 5/18
B32B 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の天井または側壁を覆いかつ/または防音にするためのパネル(10)を製造する方法であって、
撓多孔性材料(20)上に粉末形態の熱成形性樹脂(21)を堆積させるステップ(42)であって、前記樹脂(21)は20〜500g/m2の範囲で堆積されるエポキシ粉末に対応している、ステップ(42)と
前記可撓多孔性材料(20)を貫通して交番電界を加えることによって、前記可撓多孔性材料(20)内部深くまで前記熱成形性樹脂(21)を含浸させるステップ(46)と、
前記熱成形性樹脂(21)を含浸させる前記ステップ(46)の後に、前記可撓多孔性材料(20)の下面に下側補強層(13)を組み込むステップ(41)と、
前記熱成形性樹脂(21)を含浸させる前記ステップ(46)の後に、前記可撓多孔性材料(20)の上面に上側補強層(15)を組み込むステップ(43)と、
第2の多孔性材料(23、63)から前記下側補強層(13)および前記上側補強層(15)を製作するステップであって、
各補強層(13、15)に関し、前記方法は、
前記第2の多孔性材料(23、63)上に粉末形態の熱成形性樹脂(22)を堆積させるステップ(42')と、
前記第2の多孔性材料(23、63)を貫通して交番電界を加えることによって、前記第2の多孔性材料(23、63)内部深くまで前記熱成形性樹脂(22)を含浸させるステップ(46')と、
軟化させることによって前記熱成形性樹脂(22)を前記第2の多孔性材料(23、63)に接着するステップ(47')とを含み、
軟化させることによって前記熱成形性樹脂(21)を前記可撓多孔性材料(20)に接着するステップ(47)と
を含む方法。
【請求項2】
前記熱成形性樹脂(22)を含浸させる前記ステップ(46')の前に、前記下側補強層(13)および前記上側補強層(15)の前記第2の多孔性材料(23、63)同士を組み合わせるステップ(52)と、
軟化させることによって前記熱成形性樹脂(22)を接着する前記ステップ(47')の後に、2つの前記第2の多孔性材料(23、63)を分離するステップ(56)と
を含み、
前記熱成形性樹脂(22)を含浸させる前記ステップ(46')が、2つの前記第2の多孔性材料(23、63)に含浸させることができることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
軟化させることによって前記熱成形性樹脂(21、22)を前記可撓多孔性材料(20、23、63)に接着する前記ステップ(47、47')が、
前記可撓多孔性材料(20、23、63)を熱間プレスするステップ(47、47')と、
前記可撓多孔性材料(20、23、63)が再膨張するように圧力を解放するステップ(48、48')と
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱成形性樹脂(21、22)を堆積させる前記ステップ(42、42')が、前記可撓多孔性材料(20、23、63)の面全体に前記熱成形性樹脂(21、22)を散布することによって実施されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記熱成形性樹脂(21、22)を堆積(42、42')し含浸(46、46')する前記ステップが、局所的になるように実施されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、たとえば自動車両を覆いかつ/または防音するためのパネルに関する。前記パネルは、天井の下または側壁に配置されたパネルのように、自動車両の車室を覆いかつ/または防音するのに特に適している。
【背景技術】
【0002】
自動車両の内装パネルには多くの制約がある。前記パネルは、車両の重量を最適化するために軽量でなければならず、車両の形状に倣うために熱成形可能でなければならず、音波を効果的に吸収し車内の騒音を抑えなければならず、火災安全規則を満足しなければならず、経時変形を防止するように堅固でなくてはならない。そのような材料を製造するための方法は殆ど存在しない。
【0003】
特許出願FR2503721は、これら制約を満足するパネルの製造方法を記載する。前記パネルは、中央層と、その中央層の両面に配置された2つの補強層とから構成される。中央層は、軽量、可撓性、および吸音の要件を満足し、一方、2つの補強層は、機械的強度の要件を満足する。これを達成するために、中央層は、その後架橋結合される液体樹脂を含浸させた発泡体から製作される。使用される樹脂はMDI(4-4'ジフェニルメタンジイソシアネートを指す)である。上面は、車両の構成要素と接触することが意図された保護層によって覆われ、下面は、車両のユーザに対するパネルの美観を向上させるために、装飾層によって覆われる。発泡体に含有された樹脂は、パネルが所望の形状を取るように熱成形中に全ての層が接着されるとき、剛性化する。
【0004】
しかし、架橋結合された発泡体の機械的強度は十分でなく、ファイバグラスなど、特に高剛性の補強層を使用する必要がある。ファイバグラス補強層は、パネルのリサイクルに問題がある。車両にガラス天井用の開口を作るためにパネルの一部分を切り取ることは珍しくない。そのような場合、ガラス天井のために除去されたパネルの部分は、切り刻まれて廃棄される。この廃棄物内の樹脂およびガラスの存在は、リサイクルを制約する。
【0005】
パネルを製造する方法には、シールローラによって液体樹脂を発泡体に滲入させて発泡体に含浸させ、次いで触媒と接触させるので、さらに制約がある。触媒との樹脂の反応が、パネル製造作業員に対して不快な悪臭を生じることがある揮発性有機化合物(VOCs)を空気中に放出させる。さらに、パネルを、樹脂が架橋結合する前に成形しなければならず、製造ラインを絶え間なく動かすことが必要になる。たとえば、組立ラインが停止した場合、樹脂含浸発泡体が、熱成形型に入って行く前に硬化を開始し、未完成部品を廃棄しなければならない。
【0006】
発泡体を樹脂で含浸する方法は、また、発泡体内の樹脂の量は極めて重要な因子なので、一連の部品ごとに注意深く調整しなければならない。発泡体が含有する樹脂が多過ぎる場合、樹脂が装飾層を通り抜け、隅部で目に付くようになり、装飾層の外観を損なう。発泡体が含有する樹脂が少な過ぎる場合、パネルが柔らかくなり過ぎ、十分な機械的強度を有さなくなる。一連の部品ごとに樹脂の量を完璧にすることは、多大な経験を必要とする複雑な繰返し手順である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】FR2503721
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、前述の要件を満足する一方で、改良された製造工程を有する、自動車の内装用の新規なパネルの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、全ての上記要件を満足する新たな材料に関し、発泡体が、液体含浸ではなく、乾式方法を使用して含浸される。
【0010】
本発明の第1の態様は、車両の壁を覆いかつ/または防音にするためのパネルに関し、そのパネルは、
- 可撓多孔性材料に熱成形性樹脂を含浸させ、次いで熱成形性樹脂を剛性化することによって製造された中央層と、
- 中央層の両面に配置された2つの補強層と、
- 前述の熱成形性樹脂の粉末を交番電界に曝すことによって可撓多孔性材料内部深くまで行われた、熱成形性樹脂による前記可撓多孔性材料の含浸と、
- 可撓性または準剛性材料を用いて製造された2つの補強層と
を含む。
【0011】
このように、本発明は、軽量であると共に熱成形可能であり、防音性を有し、安全性および堅固性に関する全ての要件に適合する自動車両内の車室用のパネルを実現する。中心層を形成する可撓多孔性材料は、有利には、少なくとも部分的に連続気泡からなる発泡体であり得る。
【0012】
発泡体の気泡中心内深くまでの樹脂の含浸、および可撓性または準剛性材料から製作された補強層の使用が、樹脂の分割および補強層と中央層との粘着を強化する。補強ファイバグラス層はもはや必要なく、今後、パネルのリサイクルが容易になる。
【0013】
また、湿式製作工程の異臭および熟練度の問題も、液体を使用せずに熱成形性樹脂が可撓多孔性材料に含浸される乾式方法によって解消される。熱成形性樹脂の剛性化は、熱成形性樹脂が材料に充分浸透した後に行うことができ、可撓多孔性材料内の液体熱成形性樹脂の乾燥に関する時間的制約が取り除かれる。
【0014】
一実施形態によれば、少なくとも1つの補強層が、成形性樹脂粉末を交番電界に曝すことにより第2の多孔性材料内に熱成形性樹脂粉末を含浸させることによって製造される。乾式含浸樹脂は後に剛性化することができ、補強層は、付随的製造ラインで中央層と同様な方法によって製造することができる。好ましくは、第2の多孔性材料は、合成繊維系の不織布である。あるいは、第2の多孔性材料は、天然繊維または他の繊維から製作される布である。
【0015】
一製造方法によれば、パネルは、補強層の面にヒートシーリング層によって接着された装飾層を備える。有利には、パネルは、補強層の一方の面にヒートシーリング層によって接着された保護層をさらに備える。
【0016】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様によるパネルを製造する方法に関し、その方法は、
- 可撓多孔性材料上に粉末形態の熱成形性樹脂を堆積させるステップと、
- 可撓多孔性材料を貫通して交番電界を加えることによって、可撓多孔性材料内部深くまで熱成形性樹脂を含浸させるステップと、
- 軟化させることによって熱成形性樹脂を可撓多孔性材料に接着するステップと
を含む。
【0017】
製造工程の第1の実施形態によれば、本方法は、
- 熱成形性樹脂を堆積させるステップの前に、可撓多孔性材料の下面に下側補強層を組み込むステップと、
- 熱成形性樹脂を含浸させるステップの前に、可撓多孔性材料の上面に上側補強層を組み込むステップと、
- 第2の多孔性材料を使用して補強層を製造するステップと、
- 補強層の第2の多孔性材料に含浸させることが可能な熱成形性樹脂を含浸させるステップと
を含む。
【0018】
前記実施形態は、中央層と補強層とを同時に含浸させることを可能にする。
【0019】
製造工程の第2の実施形態によれば、本方法は、
- 熱成形性樹脂を含浸させるステップの後に、可撓多孔性材料の下面に下側補強層を組み込むステップと、
- 熱成形性樹脂を含浸させるステップの後に、可撓多孔性材料の上面に上側補強層を組み込むステップと、
- 第2の多孔性材料を使用して補強層を製造するステップと
を含み、
各補強層に関し、
- 第2の多孔性材料上に粉末形態の熱成形性樹脂を堆積させるステップと、
- 第2の多孔性材料を貫通して交番電界を加えることによって、第2の多孔性材料内部深くまで熱成形性樹脂を含浸させるステップと、
- 軟化させることによって熱成形性樹脂を第2の多孔性材料に接着するステップと
を含む。
【0020】
前記実施形態は、中央層と補強層との間で、樹脂化合物および/または可撓多孔性材料の変更を可能にする。
【0021】
有利には、本方法は、
- 熱成形性樹脂を含浸させるステップの前に、補強層の第2の多孔性材料同士を組み合わせるステップと、
- 軟化させることによって熱成形性樹脂を接着する前記ステップの後に、2つの第2の多孔性材料を分離するステップと
を含み、
- 熱成形性樹脂を含浸させるステップが、両方の第2の多孔性材料に含浸させることができる。
【0022】
前記実施形態は、単一の製造ラインで2つの補強層を製作することを可能にする。
【0023】
一実施形態によれば、軟化させることによって熱成形性樹脂を可撓多孔性材料に接着するステップは、
- 可撓多孔性材料に熱間接着圧力を加えるステップと、
- 可撓多孔性材料が再膨張するように圧力を解放するステップと
を含む。
【0024】
前記実施形態は、樹脂を可撓多孔性材料中に分散させ、様々な層に接着することを可能にし、熱い間に、もはや拘束されていない場合、その部分に最初の厚さを回復することができる可撓多孔性材料の特性を利用することができる。
【0025】
前記再膨張は、後で熱成形を行う比較的厚い半製品の部品を作るために、多孔性材料に圧力を掛ける装置を出た直後に行ってもよい。また、再膨張を、熱成形装置内にある熱を利用して、熱成形中に行うことも可能であり、その場合、半製品の部品はそれほど厚くなく、製造設備が簡略化される。
【0026】
一実施形態によれば、樹脂を堆積させるステップは、可撓多孔性材料の一方の面全体に樹脂を散布することによって実施される。
【0027】
一実施形態によれば、樹脂を堆積し含浸するステップが、局所的な適用によって実施される。前記実施形態は、また、可撓多孔性材料が樹脂を含浸していないか、さもなければ不十分な量しか含浸していない潰れた面を生じるように、熱成形性樹脂を可撓多孔性材料内部で局所的になるように堆積し含浸させることを可能にする。前記毀損面は、ある特別な用途、たとえばサンルーフを作るために後で切り取ることができる。前記毀損面は、ファイバグラスを有さない非含浸層を分離することによって、既存の廃棄物より容易にリサイクルすることができる。さらに、この実施形態は樹脂を節減する。
【0028】
本発明の実行方式ならびにそこから得られる利点が、添付図面を参照して非限定的例として示される以下の実施形態から明瞭に分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態による自動車の内装パネルの概略断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態による、図1のパネルを製造する工程の概略図である。
図3】本発明の第2の実施形態による、図1のパネルを製造する工程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、自動車の内装用の、多数の層11〜17を有するパネル10を示す。中央層14は、上側層18および下側層19によって挟装されている。中央層14は、2つの補強層13、15によって直接囲まれている。中央層14は、可撓多孔性材料20の内部深くまで熱成形性樹脂21を含浸46させ、次いで熱成形性樹脂21を剛性化することによって形成される。たとえば、可撓多孔性材料20は、少なくとも部分的に連続気泡によって形成された5Kg/m3より大きい密度を有するポリエーテル発泡体である。この実施形態の記述では、用語「発泡体」は、可撓多孔性材料20を示すために使用するものとする。
【0031】
熱成形性樹脂21の含浸46は、発泡体20を貫通して交番電界を加えることによって行われる。各補強層13、15は、ヒートシーリング層12、16によって外側層11、17に接着される。たとえば、ヒートシーリング層は、薄膜、開孔薄膜、粉末層、またはヒートシーリングワイヤでもよい。好ましくは、装飾層に接着されるヒートシーリング層は、発泡体が音響特性を要件とするときは、空気に対して透過性でなければならない。下側補強層13は、ヒートシーリング層12によって装飾層11に接着され、上側補強層15は、ヒートシーリング層16によって保護層17に接着される。補強層13、15は、可撓性または準剛性材料を使用して製造される。好ましくは、補強層13、15は、第2の多孔性材料23、63を使用して製造される。たとえば、第2の多孔性材料23、63は、合成繊維系、特にポリエステルの、質量面密度が10g/m2より大きい不織布である。この実施形態の記述では、用語「不織布」は、第2の可撓多孔性材料23、63を示すために使用するものとする。
【0032】
図2は、パネル10の実施形態の第1の例を示す。発泡体20は、製造ライン60の始点では巻かれている。前記発泡体20は、製造工程ではパネル10を形成するために巻き解かれる。第1のステップ40では、製造ライン60を停止せずにローラ交換を行うために、発泡体20を集積する。
【0033】
発泡体20の下面は、次いで、補強層13を形成する不織布23によって被覆41される。次のステップでは、中央層14を形成するために、発泡体20の上面上に粉末形態の熱成形性樹脂21を堆積42する。たとえば、熱成形性樹脂21は、0〜100μmの粒度範囲を有するエポキシ粉末である。堆積される熱成形性樹脂21の量は、精密に測定され、たとえば20〜500g/m2の範囲にある。
【0034】
熱成形性樹脂21を堆積するステップ42に続いて、上側補強層15を形成することができる不織布63が、発泡体20の上面に付加43される。ヒートシーリング層16および保護層17が、次いで、不織布63に付加44される。ヒートシーリング層12および装飾層11が、さらに、不織布23に付加45される。このようにして得られた製造物は、熱成形性樹脂21を発泡体20および不織布23、63の中心まで移動させるために、発泡体20および不織布23、63を貫通して交番電界を生じる上側電極31および下側電極32を有する含浸チャンバ30に送り込まれる。好ましくは、交番電界の振幅は、約50Hzの周波数で、500〜5000ボルト/mm、より好ましくは1000〜3000ボルト/mmである。含浸チャンバ30は、このようにして、熱成形性樹脂21を発泡体20および不織布23、63の内部に一様に分布させることを可能にする。含浸46に際し、熱成形性樹脂21を透さないヒートシーリング層12、16の存在が、熱成形性樹脂21を発泡体20および不織布23、63の内部に封じ込める。
【0035】
チャンバ30から出て来ると、得られた製造物は、熱成形性樹脂21が発泡体20および不織布23、63に有効に含浸46された、最終的層11〜17からなる全ての構成要素を有する。得られた製造物に、2組の円筒間でカレンダ処理(calendering)することによる熱間プレス47を行って、熱成形性樹脂21を繊維の中心部まで広げ、熱成形性樹脂21を接着する。次いで、発泡体20が体積を回復することができるように、圧力が加熱状態で解放48される。仕上げとして、半製品が、所望の寸法に切断49され、次いで積み重ね50られる。パネル10の製作を完成するために、半製品は、中央層14および補強層13、15を得るために、熱成形型(図示せず)内で熱成形される。図2に示された製造ライン60は、1分当たり数10メートルの半製品を数メートルの幅に亘って製造する。剛性化は、半製品の貯蔵および/または搬送後に行うことができ、それによって、パネル10の製造工程が容易になる。あるいは、切断49および貯蔵50のステップを省略して、剛性化を、同一の製造ライン60上で実施することもできる。貯蔵50は、半製品を巻き取ることによって行うこともでき、それによって切断ステップ49が省略される。
【0036】
図3は、パネル10を製造する第2の例を示す。図2の製造ライン60と同じように、発泡体20は、製造ライン61の始点では巻かれている。第1のステップ40は、製造ライン61を停止せずにローラ交換を行うために、発泡体20を集積する。次のステップでは、発泡体20の上面上に粉末形態の熱成形性樹脂21を堆積42する。このようにして得られた製造物は、熱成形性樹脂21を発泡体20の中心部に入り込ませるために、発泡体20を貫通して交番電界を生じる含浸チャンバ30に送り込まれる。
【0037】
チャンバ30から出て来ると、発泡体20の下面が下側層19に接着41され、上面が上側層18に接着43される。得られた製造物は、熱成形性樹脂21が発泡体20に有効に含浸46された、最終的層11〜17からなる全ての構成要素を有する。得られた製造物に、2組の円筒間でカレンダ処理することによる熱間でプレス47を行って、熱成形性樹脂21を繊維の中心部まで広げ、発泡体の気泡の内側を裏打ちするように熱成形性樹脂21を接着する。次いで、発泡体20および不織布23、63が体積を回復することができるように、加熱状態で圧力が解放48される。仕上げとして、半製品が、所望の寸法に切断49され、次いで積み重ね50られる。パネル10の製造を完成するために、半製品は、熱成形型(図示せず)内で熱成形される。
【0038】
図2での製造方法とは異なり、特有の製造ライン62では、補強層13、15を形成する要素が、ヒートシーリング層12、16および外側層11、17に接着される。前記製造ライン62は、巻かれた不織布23を製造ラインの始点に担持する。第1のステップ42'では、粉末形態の熱成形性樹脂22を不織布23の上面に堆積する。堆積される熱成形性樹脂22の量は、精密に測定され、たとえば20〜500g/m2の範囲にある。熱成形性樹脂22を堆積するステップ42'に引き続き、別の不織布63が、不織布23の上面に付加52される。次いで、ヒートシーリング層12および装飾層11が、不織布23の下面に付加54される。ヒートシーリング層16および保護層17が、さらに、不織布63に付加53される。このようにして得られた製造物は、熱成形性樹脂22を不織布23、63の中心部に入り込ませるために、不織布23、63を貫通して交番電界を生じる含浸チャンバ30に送り込まれる。このようにして得られた製造物に、2組の円筒間でカレンダ処理することによる熱間でプレス47'を行って、熱成形性樹脂22を繊維の中心部まで広げ、熱成形性樹脂22を定着させる。次いで、不織布23、63が体積を回復することができるように、加熱状態で圧力が解放48'される。
【0039】
2つの不織布23、63は、次いで、分離56されて、上側層18および下側層19の構成要素が得られる。前記要素は、次いで、製造ライン61のステップ41および43用の中間製品として使用される。仕上げとして、半製品の熱成形性樹脂21を剛性化する最終ステップ(図示せず)が、補強層13、15の熱成形性樹脂22を剛性化することを可能にする。
【0040】
この例では、2つの補強層13、15の、ヒートシーリング層12、16および外側層11、17への接着が、不織布23、63を組み合わせることによって同一の製造ライン62上で実施される。別法として、ヒートシーリング層12、16および外側層11、17に接着された2つの補強層13、15を別々の製造ラインで製造することができる。代替形態として、本発明を変更することなしに、パネル10の層11〜17の数、または外側層11、17の配置を変更することができる。
【0041】
このように、本発明は、軽量であると共に熱成形可能であり、音波を吸収し、安全性および堅固性の要件に適合する自動車の内装用のパネル10を製造することを可能にする。中心層を形成する可撓多孔性材料は、有利には、少なくとも部分的に連続気泡からなる発泡体であり得る。
【符号の説明】
【0042】
10 パネル
11 外側層、装飾層
12 ヒートシーリング層
13 補強層
14 中央層
15 補強層
16 ヒートシーリング層
17 外側層、保護層
18 上側層
19 下側層
20 可撓多孔性材料、発泡体
21 熱成形性樹脂
22 熱成形性樹脂
23 第2の多孔性材料、不織布
30 含浸チャンバ
31 上側電極
32 下側電極
40 第1のステップ
41 被覆、接着
42 堆積
42' 堆積
43 付加、接着
44 付加
45 付加
46 含浸
46' 含浸
47 熱間プレス
47' 熱間プレス
48 圧力解放
48' 圧力解放
49 切断
50 積重ね、貯蔵
52 付加
53 付加
54 付加
56 分離
60 製造ライン
61 製造ライン
62 製造ライン
63 第2の多孔性材料、不織布
図1
図2
図3