特許第6884210号(P6884210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6884210燐光PtAg2錯体並びにその製造方法及び用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884210
(24)【登録日】2021年5月13日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】燐光PtAg2錯体並びにその製造方法及び用途
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20210531BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20210531BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20210531BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20210531BHJP
   C07F 15/00 20060101ALI20210531BHJP
   C07F 1/10 20060101ALI20210531BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   H01L27/32
   G09F9/30 365
   C09K11/06 660
   C07F15/00 F
   C07F1/10
   C07F19/00
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-531368(P2019-531368)
(86)(22)【出願日】2017年9月20日
(65)【公表番号】特表2020-515032(P2020-515032A)
(43)【公表日】2020年5月21日
(86)【国際出願番号】CN2017102504
(87)【国際公開番号】WO2018107841
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2020年7月8日
(31)【優先権主張番号】201611155024.X
(32)【優先日】2016年12月14日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516290586
【氏名又は名称】中国科学院福建物質結構研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】陳忠寧
(72)【発明者】
【氏名】舒輝星
(72)【発明者】
【氏名】王金云
【審査官】 辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104892685(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第105481910(CN,A)
【文献】 国際公開第2012/039347(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/053976(WO,A1)
【文献】 SHU, Hui-Xing et al.,Photophysical and Electroluminescent Properties of PtAg2 Acetylide Complexes Supported with meso- and rac-Tetraphosphine,Inorganic Chemistry,2017年 4月25日,Vol.56,pp.9461-9473
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C07F 1/10
C07F 15/00
C07F 19/00
C09K 11/06
G09F 9/30
H01L 27/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造が下記の式(I)或は式(II)で表されるイオン型燐光金属錯体。
[PtAg2{rac-(PPh2CH2PPhCH2-)2}(C≡CR)2(PR'3)2]2+An-2/n (I)
或は
[PtAg2{meso-(PPh2CH2PPhCH2-)2}(C≡CR)2(PR'3)(μ-X)]+mAm- (II)
(Rは、同じであっても異なっていても良く、独立的にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールアリール基から選ばれ;
R'は、同じであっても異なっていても良く、独立的にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基から選ばれ;
上記のアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基は、いずれも1つまたは複数の置換基によって置換されても良く、上記置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、ハロアルキル基、アリール基から選ばれ;
Xは、ハロゲンから選ばれ;
Am-、An-は一価または二価のアニオンであり、m又はnは、1又は2であり、上記アニオンは、例えばClO4-、PF6-、SbF6-、BF4-、SiF62-であり、μは、架橋を表す。)
【請求項2】
上記式(I)または式(II)の燐光金属錯体の立体構造が以下の構造式である請求項1に記載の燐光金属錯体。
【化1】
【請求項3】
上記Rは、アリール基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、カルバゾリルアリール基であり;上記アリール基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基は、任意的に1個または複数の置換基によって置換されても良く、上記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、ハロアルキル基、アリール基から選ばれ;上記R'は、アリール基、窒素含有複素環であり、上記アリール基、窒素含有複素環は、任意的に1個または複数の置換基によって置換されても良く、上記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、ハロアルキル基、アリール基から選ばれる;
さらに好ましくは、Rはフェニル、アルキルフェニル、ハロアルキルフェニル、カルバゾリルフェニル、カルバゾリル、アルキルカルバゾリル、フェニルカルバゾリル、フェノチアジニル、アルキルフェノチアジニルであり;R'は、フェニル、アルキルフェニル、カルバゾリル、アルキルカルバゾリル、フェニルカルバゾリルである請求項1又は請求項2に記載の燐光金属錯体。
【請求項4】
上記金属錯体が、具体的に下記の11個の錯体である請求項1又は請求項2に記載の燐光金属錯体。
【化2】
【請求項5】
上記式(I)の燐光金属錯体の製造方法は、以下のステップを含む:1)rac-(PPh2CH2PPhCH2-)2と、Pt(PPh3)2(C≡CR)2と、を溶媒中で反応させることで、中間体を得る;2)そして、ステップ1)で得られた中間体を、[Ag(tht)](An-)及びPR'3と溶媒中で反応させることで、上記式(I)の燐光錯体が得られる;そのうち、上記tht(tetrahydrothiophene)は、テトラヒドロチオフェンであり、上記An-、R、R'、Xは、請求項1-4のいずれか1項に定義の通りである;
あるいは、
上記式(II)の燐光錯体の製造方法は、以下のステップを含む:A)meso-(PPh2CH2PPhCH2-)2と、Pt(PPh3)2(C≡CR)2と、を溶媒中で反応させることで、中間体が得られる;B)PR'3nBu4NX、[Ag(tht)](Am-)を、ステップA)で得られた中間体と溶媒中で反応させることで、上記式(II)の燐光錯体が得られる;そのうち、tht(tetrahydrothiophene)は、テトラヒドロチオフェンであり、上記Am-、R、R'、Xは、請求項1-4のいずれか1項に定義の通りである、請求項1-4のいずれか1項に記載の燐光金属錯体の製造方法。
【請求項6】
請求項1-4のいずれか1項に記載の燐光金属錯体を有機発光ダイオードに用いる用途。
【請求項7】
発光層を含み、
上記発光層には、請求項1-4のいずれか1項に記載の式(I)或は式(II)の燐光錯体が含まれる;
好ましくは、上記発光層の中で、請求項1-4のいずれか1項に記載の式(I)の燐光錯体は、全材料の3-20%(重量比)を占める;請求項1-4のいずれか1項に記載の式(II)の燐光錯体は、全材料の5-25%(重量比)を占める、有機発光ダイオード。
【請求項8】
上記有機発光ダイオードはさらに、陽極層と、正孔注入層と、任意的の正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、電子注入層と、陰極層と、を含む請求項7に記載の有機発光ダイオード。
【請求項9】
上記陽極は、インジウム錫酸化物であり、上記正孔注入層はPEDOT : PSS(PEDOT : PSS =ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン) - ポリ(スチレンスルホン酸))であり;上記正孔輸送層はCuSCN、CuI、CuBrであり;上記発光層は、請求項1-4のいずれか1項に記載の燐光錯体と、正孔輸送性を特徴とする物質及び/又は電子輸送性を特徴とする物質と、を含む;上記電子輸送層は、BmPyPB(3,3'',5,5''-テトラ(3-ピリジル)-1,1':3',1''-ターフェニル)、TPBi(1,3,5-トリ(1-フェニル-1H -ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ベンゼン)、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)またはOXD-7中の一種または多種であり;上記電子注入層は、LiFであり、上記陰極はAlである;
好ましくは、上記式(I)の燐光錯体を含む素子の構造は、ITO / PEDOT : PSS/CuSCN/70.5% 2,6-DCZPPY : 23.5% OXD-7 : 6% wtの請求項1-4のいずれか1項に記載の式(I)の錯体/BmPyPB /LiF /Alであり、またはITO/PEDOT : PSS/70.5%mCP : 23.5% OXD-7 : 6% wtの請求項1-4のいずれか1項に記載の式(I)の錯体/BmPyPB /LiF /Alである;
上記式(II)の燐光錯体を含む素子の構造は、ITO/PEDOT : PSS/CuSCN/90% 2,6-DCZPPY : 10%wtの請求項1-4のいずれか1項に記載の式(II)の錯体/ BmPyPB / LiF/ Alであり、またはITO/PEDOT : PSS / 90%mCP : 10%wtの請求項1-4のいずれか1項に記載の式(II)の錯体/BmPyPB /LiF / Alである;
そのうち、ITOは酸化インジウム錫導電薄膜であり、PEDOT : PSSは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン) - ポリ(スチレンスルホン酸)であり、2,6-DCZPPYは(2,6-ビス(3-(9-カルバゾリル)フェニル)ピリジン)であり、mCPは(1,3-ビス(9-カルバゾリル)ベンゼン)であり、OXD-7は(1,3-ビス(5-(4-(tert -ブチル)フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ベンゼン)であり、BmPyPBは(3,3'',5,5''-テトラ(3-ピリジル)-1,1':3',1''-ターフェニル)である、請求項8に記載の有機発光ダイオード。
【請求項10】
フラットパネル表示及び日常照明分野に用いる、請求項7-9のいずれか1項に記載の有機発光ダイオードの用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス分野に属し、カラーフラットパネルディスプレイおよび照明分野での活用可能である。具体的には、PtAg2(meso-/rac-dpmppe)ヘテロ三核金属有機アルキニル錯体を有機発光ダイオードの製造に用いることに関するものである。
【0002】
[技術背景]
有機エレクトロルミネセンスとは、有機発光ダイオード(OLED)が3-12Vの低い直流電圧で、電気エネルギーを光エネルギーに直接的に変換させる発光現象を指す。当該現象はフラットパネルディスプレイおよび照明分野で幅広く活用できる。伝統的な照明およびディスプレイ技術と比較して、有機エレクトロルミネセンスは、フルカラーディスプレイ、広視野角、高解像度、高速応答、低消費電力、耐低温性など多くの長点を示している。なお、有機発光素子は、構造の単純さ、超軽量、超薄、可撓性、フォルダブルなどの優れた特性を有する。
【0003】
有機発光ダイオードの核心は、発光薄膜材料である。現在、商業用の有機エレクトロルミネッセンス素子に使われている燐光材料のほとんどは、電気中性シクロ金属イリジウム(III)錯体である。電気中性シクロ金属イリジウム(III)錯体を有機ホスト材にドーピングし発光層を形成する。その最大の長点は、真空熱蒸着により理想的な薄膜発光層を製造しやすいことである。だが、真空蒸着設備は高価であり、しかも、有機物ドーピング発光薄膜層の製造工程は複雑なため、有機発光ダイオードのフルカラーディスプレイ分野での産業化発展及び商業化活用を極めて大きく制限している。このような技術的なボトルネックを乗り越えるため、量子効率の高いイオン型燐光有機金属化合物を発光材料として選択することは実行可能な代替案である。電気中性化合物と比較して、イオン型燐光金属錯体は、製造がより簡単で、安価で、安定性がより良く、また有機溶媒に溶解し易いため、溶液スピン塗布またはインクジェット印刷による大面積成膜に適しており、製品の製造コストを大幅に削減できる。
【0004】
[発明の内容]
本発明の目的は、メソ(meso-)またはラセミ(rac-)のイオン型燐光PtAg2錯体、並びにその製造方法および用途を提供する。
【0005】
本発明のもう一つの目的は、上記イオン型燐光金属錯体を含む発光材料を提供し、またこれらの発光材料を用いることにより高性能の有機発光ダイオードを製造することである。
【0006】
本発明の目的は以下の方法を通じて実現する:
構造が下記の式(I)或は式(II)で表される、ラセミ構造を有するイオン型リン光金属錯体。
【0007】
[PtAg2{rac-(PPh2CH2PPhCH2-)2}(C≡CR)2(PR'3)2]2+An-2/n(I)
或は
[PtAg2{meso-(PPh2CH2PPhCH2-)2}(C≡CR)2(PR'3)(μ-X)]+mAm-(II);
そのうち、Rは、同じであっても異なっていても良く、独立的にアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアリールから選ばれる;
R'は、同じであっても異なっていても良く、独立的にアルキル、アリール、ヘテロアリールから選ばれる;
上記アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基は、いずれも1つまたは複数の置換基に置換されても良く、上記置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、ハロアルキル基、アリール基から選ばれる;
Xは、ハロゲンから選ばれる;
Am-、An-は一価または二価のアニオンであり、m或はnは1、2であり、上記アニオンは、例えばClO4-、PF6-、SbF6-、BF4-、SiF62-等である。μは、架橋を表す。
【0008】
本発明により、上記式(I)錯体はラセミ構造であり、上記式(II)錯体はメソ構造である。
【0009】
本発明により、上記式(I)または式(II)の燐光金属錯体の立体構造は以下の通り:
【0010】
【化1】
【0011】
本発明のうち、上記のアルキル基とは、炭素数が1-10であり、好ましくは1-6の直鎖または分岐鎖のアルキル基を指し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基などである。
【0012】
上記のアルケニル基とは、炭素数が2-6の直鎖または分岐鎖アルケニル基を指し、例えばエチレン、プロピレン、ブテンなどである。
【0013】
上記のアルキニル基とは、炭素数が2-6の直鎖または分岐鎖アルキニル基を指し、例えばエチニル、プロピニル、ブチニルなどがある。
上記のアリール基とは、6-20個の炭素原子を有する単環、多環の芳香族基であり、代表的なアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが含まれる。
【0014】
上記のヘテロアリール基とは、1-20個の炭素原子を有して、また少なくとも1個、好ましくは1-4個のN、S、Oから選ばれるヘテロ原子を含む単環または多環式芳香族基であり、代表的なヘテロアリール基としては、ピロリル、ピリジル、ピリミジニル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、カルバゾリル、キノリル、キノゾリニル、インドリル、フェノチアジニルなどが含まれる。
【0015】
本発明により、上記Am-或はAn-は、好ましくはClO4-、PF6-、SiF62-等であり、m/nは1または2である。
【0016】
本発明により、上記Rは、好ましくはアリール基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基、カルバゾリルアリール基である。上記アリール基、カルバゾリル基、フェノチアジニル基は、1個または複数の置換基に任意に置換されても良く、上記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、ハロアルキル基、アリール基から選ばれる;上記R'は好しくは、アリール基、窒素含有複素環(例えばカルバゾリル基)であり、上記アリール基、窒素含有複素環は、1個または複数の置換基に任意に置換されても良く、上記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、ハロアルキル基、アリール基から選ばれる。さらに好ましくは、Rはフェニル、アルキルフェニル、ハロアルキルフェニル、カルバゾリルフェニル、カルバゾリル、アルキルカルバゾリル、フェニルカルバゾリル、フェノチアジニル、アルキルフェノチアジニルである;R'は、フェニル、アルキルフェニル、カルバゾリル、アルキルカルバゾリル、フェニルカルバゾリルである。
【0017】
本発明により、上記イオン型燐光金属錯体の具体的な構造は、好ましくは以下の通り:
【0018】
【化2】
【0019】
本発明ではさらに上記式(I)の燐光錯体の製造方法を提供する。前記の製造方法は、以下のステップを含む:1)rac-(PPh2CH2PPhCH2-)2と、Pt(PPh3)2(C≡CR)2と、を溶媒中で反応させ中間体を得る;2)そしてステップ1)で得られた中間体を、[Ag(tht)](An-)及びPR'3と溶媒中で反応させ上記式(I)の燐光錯体が得られる。そのうち、上記tht(tetrahydrothiophene)はテトラヒドロチオフェンであり、上記An-、R、R'、Xは上記定義の通りである。
【0020】
本発明ではさらに上記式(II)の燐光錯体の製造方法を提供する。前記の製造方法は、以下のステップを含む:A)meso-(PPh2CH2PPhCH2-)2と、Pt(PPh3)2(C≡CR)2と、を溶媒中で反応させ中間体を得る;B)PR'3nBu4NX、[Ag(tht)](Am-)を、ステップA)中で得られた中間体と溶媒中で反応させ上記式(II)の燐光錯体を得る。そのうち、上記tht(tetrahydrothiophene)は、テトラヒドロチオフェンであり、上記Am-、R、R'、Xは上記定義の通りである。
【0021】
本発明により、上記ステップ1)、ステップA)のうち、上記溶媒は、好ましくはハロゲン化炭化水素であり、例えばジクロロメタンである。好ましくは、反応で得られた中間体に対して濃縮再結晶を行う。
【0022】
本発明により、上記ステップ2)、ステップB)のうち、上記溶媒は、好ましくはハロゲン化炭化水素であり、例えばジクロロメタンである。好ましくは、ステップB)でまずPR'3と、nBu4NXと、を混合してから、当該混合溶液及び[Ag(tht)](Am-)を上記ステップA)中で得られた中間体を溶解した溶液中に添加する。
本発明により、上記方法のうち、rac-(PPh2CH2PPhCH2-)2 :Pt(PPh3)2(C≡CR)2 : [Ag(tht)](An-): PR'3のモル比は1〜1.5:1〜1.5:2〜3:2〜3であり、好ましいモル比は1:1:2:2である;meso-(PPh2CH2PPhCH2-)2 :Pt(PPh3)2(C≡CR)2 :[Ag(tht)](Am-) : nBu4NX : PR'3のモル比は1〜1.5:1〜1.5:2〜3:1〜1.5:1〜1.5であり、好ましいモル比は1:1:2:1:1である。
【0023】
本発明により、上記反応は全て室温で行う。好ましくは、反応終了後にシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離精製を行う。
【0024】
本発明に記載の式(I)または式(II)の燐光錯体は、固体及び薄膜のいずれにも比較的強い燐光発光性を示し、その燐光量子収率は、薄膜中で50%以上である;なお、その発射光の色分布も比較的幅広いもので、スカイブルーからオレンジ赤までである。従って、当該物質は発光層のドーピング材として使え、有機発光ダイオードの製造に用いることができる。
【0025】
本発明はさらに上記燐光錯体の用途を提供するもので、当該燐光錯体を有機発光ダイオードに用いる。
【0026】
さらに、本発明では発光層を含む有機発光ダイオードを提供する。そのうち、上記発光層には本発明に記載の式(I)または式(II)の燐光錯体が含まれる。
【0027】
本発明により、上記発光層で、本発明記載の式(I)の燐光錯体は、好ましくは全材料の3-20%(重量比)を占め、より好ましくは5-10%を占め、さらに好ましくは本発明記載の式(I)の燐光錯体を6%重量の割合でホスト材中にドーピングし発光層とする。本発明記載の式(II)の燐光錯体は、好ましくは全材料の5-25%(重量比)を占め、より好ましくは8-15%を占め、さらに好ましくは本発明記載の式(II)の燐光錯体を10%重量の割合でホスト材中にドーピングし発光層とする。
【0028】
本発明により、上記有機発光ダイオードの構造は、既存技術で知られている各種構造でよい。好ましくは陽極層と、正孔注入層と、任意的の正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、電子注入層と、陰極層と、を含む。上記有機発光ダイオードはさらに基板(例えばガラス基板)を含む。上記陽極はインジウム錫酸化物で良く、上記正孔注入層はPEDOT : PSS(PEDOT : PSS =ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン) - ポリ(スチレンスルホン酸))で良い。上記正孔輸送層はCuSCN、CuI、CuBrで良い。上記発光層は、本発明記載の燐光錯体と、正孔輸送性を特徴とする物質及び/又は電子輸送性を特徴とする物質と、を含む。そのうち、正孔輸送性を特徴とする物質としては、2,6-DCZPPY(2,6-ビス(3-(9-カルバゾール)フェニル)ピリジン)、mCP(1,3-ビス(9-カルバゾリル)ベンゼン)、CBP(4,4'-ビス(9-カルバゾール)-1,1'-ビフェニル)、またはTCTA(トリ(4-(9-カルバゾール)フェニル)アミン)中の一種または多種で良い。電子輸送性を特徴とする物質としては、OXD-7(1,3-ビス(5-(4-(tert-ブチル)フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ベンゼン)で良い;上記電子輸送層としては、BmPyPB(3,3'',5,5''-テトラ(3-ピリジル)-1,1':3',1''-ターフェニル)、TPBi(1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ベンゼン)、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)またはOXD-7中の一種または多種で良い;上記電子注入層はLiFであり、上記陰極はAlである。
【0029】
本発明により、上記式(I)の燐光錯体を含む素子の好ましい構造は、ITO / PEDOT : PSS(50 nm)/CuSCN(30nm)/70.5% 2,6-DCZPPY : 23.5% OXD-7 : 6% wt本発明式(I)の錯体(50 nm)/BmPyPB (50 nm)/LiF (1 nm)/Al (100 nm)であり、またはITO/PEDOT : PSS (50nm)/70.5%mCP : 23.5% OXD-7 : 6% wt 本発明式(I)の錯体(50nm)/BmPyPB (50 nm)/LiF (1nm)/Al(100nm)である;上記式(II)の燐光錯体を含む素子の好ましい構造は、ITO/PEDOT : PSS(50nm)/CuSCN(30nm)/90% 2,6-DCZPPY : 10%wt 本発明式(II)の錯体(50nm) / BmPyPB (50nm) / LiF (1nm) / Al (100nm)であり、またはITO/PEDOT : PSS (50nm) / 90%mCP : 10%wt 本発明式(II)の錯体(50nm)/BmPyPB (50nm)/LiF (1nm) / Al(100nm)である。そのうち、ITOは酸化インジウム錫導電薄膜であり、PEDOT : PSSは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン) - ポリ(スチレンスルホン酸)であり、2,6-DCZPPYは(2,6-ビス(3-(9-カルバゾリル)フェニル)ピリジン)であり、mCPは(1,3-ビス(9-カルバゾリル)ベンゼン)であり、OXD-7は(1,3-ビス(5-(4-(tert-ブチル)フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ベンゼン)であり、BmPyPBは(3,3'',5,5''-テトラ(3-ピリジル)-1,1':3',1''-ターフェニル)である。
【0030】
本発明では更に上記有機発光ダイオードの製造方法を提供する。前記の製造方法は、以下のステップを含む:1)溶液法により陽極上に有機発光ダイオードにおける正孔注入層を製造する;2)任意的に溶液法により有機発光ダイオードにおける正孔輸送層を製造する;3)溶液法により本発明の燐光錯体をドーピングした発光層を製造する;4)そして、真空熱蒸着法により電子輸送層と、電子注入層と、および陰極層と、を順次製造する。
【0031】
一つの好ましい実施方法では、上記式(I)の燐光錯体に関する上記方法は、以下を含む:まず、水溶性のPEDOT : PSSにより正孔注入層を製造する;その次、チオシアン酸第一銅の硫化ジエチル溶液により正孔輸送層を製造する;そして、更に正孔輸送特性を有する2,6-DCZPPY及び電子輸送特性を有するOXD-7を混合ホスト材とし、本発明記載の式(I)の燐光錯体をドーピングして発光層を製造する;そして、真空熱蒸着法によりBmpypb電子輸送層と、LiF電子注入層と、およびAl陰極層と、を順次製造する;上記式(II)の燐光錯体に関する上記方法は、以下を含む:まず、水溶性のPEDOT : PSSにより正孔注入層を製造する;その次、チオシアン酸第一銅の硫化ジエチル溶液により正孔輸送層を製造する;そして、更に正孔輸送特性を有する2,6-DCZPPYと、本発明記載の式(II)の燐光錯体をドーピングして発光層を製造する;そして、真空熱蒸着法によりBmpypb電子輸送層と、LiF電子注入層と、およびAl陰極層と、を順次製造する。
【0032】
本発明により、上記方法のうち、PEDOT : PSS正孔注入層、2,6-DCZPPY:OXD-7または2,6-DCZPPYドーピング発光層は、それぞれに溶液スピン塗布により薄膜を製造し、BmPyPB電子輸送層及びLiF電子注入層は、真空熱蒸着法により薄膜を製造する。
【0033】
本発明の燐光錯体から製造された有機発光ダイオードは優れた性能を有しており、比較的高い電気-光変換効率を有する。
【0034】
本発明では更に上記有機発光ダイオードの用途を提供しており、そのものはフラットパネルディスプレイおよび日常照明分野に用いることができる。
【0035】
本発明は従来技術と比べて、以下の長点を有する:
1)本発明の燐光錯体は、固体および薄膜のいずれにも強い燐光発射性を示し、薄膜の燐光量子効率は50%以上であり、はなはだしくは90%に達している。
【0036】
2)本発明では初めて燐光Pt-Agヘテロ金属錯体を発光材料とした有機発光素子を組み立て、本発明の燐光錯体を発光層のドーピング体として製造した有機発光ダイオードは、高いエレクトロルミネセンス外部量子変換効率を有する。
【0037】
3)本発明では直交溶液法により有機発光ダイオードの正孔注入層および発光層を製造することで、素子の製造コストを大幅に削減することができる。
【0038】
4)本発明記載の燐光錯体の配位子はメソ/ラセミの異なる構造を有し、なお、エレクトロルミネセンスの色はスカイブルーからオレンジレッドまで変化しており、各種色の発光効率も比較的高い。
【0039】
[添付図]
図1は、素子の構造イメージ図および有機材料の化学構造図である。
【0040】
[実施方法]
本発明の目的、技術案および技術的効果をより明確にするため、以下、添付図および実施例を参照しながら本発明に対して更に詳しく説明する。理解すべきなことは、本明細書に記載の実施例はただ本発明を解釈するためのものであり、本発明を限定するするものではないことである。
【0041】
以下の実施例で、dpmppeは(PPh2CH2PPhCH2-)2を表し、carbはカルバゾリルを表し、PhBut-4は4- tert-ブチルーフェニル基を表し、9-Ph-carb-3は9-フェニル-カルバゾール-3-イルを表し、9-Et-carb-3は9-エチルカルバゾール-3-イルを表し、PhCF3-4は4-トリフルオロメチル - フェニルを表し、9-(4-Ph)-carbは9-(4-フェニル)- カルバゾリルを表し、10-Et-PTZ-3は10-エチルフェノチアジン-3-イルを表し、thtはテトラヒドロチオフェンである。
【実施例1】
【0042】
錯体[PtAg2(rac-dpmppe)(C≡CC6H4But-4)2{PhP(9-Ph-carb-3)2}2] (ClO4)2 (rac-1)の製造
Pt(PPh3)2(C≡CC6H4But-4)2(80.6 mg, 0.078 mmol)を溶解した20mLのジクロロメタン溶液中にrac-dpmppe (50mg、0.078mmol)を添加する。30分撹拌してから濃縮させ、20mLのヘキサンを添加すると、中間体である薄い黄色の固体が析出され、収率は90% (80.8mg)である。20mLの上記中間体を溶解したジクロロメタン溶液中にAg(tht)ClO4 (41.4 mg、0.14 mmol) 及びPhP(9-Ph-carb-3)2 (82.9mg、0.14 mmol)を添加し、反応液を室温で1時間撹拌する後に、薄い緑に変わる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成物を精製して、CH2Cl2-MeCN (8 : 1)を脱離液として使用して、薄緑の生成物を集積する。収率は70%である。元素分析 (C148H122Ag2Cl2N4O8P6Pt) 計算値: C、64.59; H、 4.47; N、 2.04。 測定値: C、 64.40; H、 4.55; N、 1.96。 エレクトロスプレーイオン化MS のm/z (%):1276.2909 (100) [M-2ClO4]2+1H-NMR (CDCl3、ppm): 8.20-8.14 (dd、4H、 J1 = 16Hz、J2 = 12Hz )、8.08-8.04 (dd、 4H、J1 = 12Hz、J2 = 8Hz)、7.73-7.59 (m、12H)、 7.53-7.35 (m、36H)、 7.27-7.11 (m、20H)、6.95-6.88 (m、12H)、 6.69-6.67 (d、4H、J = 8Hz)、 6.59-6.57 (d、4H、J = 8Hz)、 4.29 (m、2H)、3.02-2.93 (3、 2H)、2.63-2.46 (m、2H)、0.97 (s、18H) 、 0.54 (m、 2H).31P-NMR (CDCl3、 ppm): 46.0 (d、 2P、 JP-P = 78Hz、 JPt-P = 2448Hz)、 13.8 (m、 2P、 JP-Ag = 526Hz)、 1.8 (m、2P、 JP-Ag = 526Hz、 JP-P= 52Hz)。赤外線スペクトル (KBr、cm-1): 2081w (C≡C)、1099s (ClO4-)。
【実施例2】
【0043】
錯体[PtAg2(rac-dpmppe){(C≡C-4)C6H4-carb-9}2(PPh3)2](ClO4)2(rac-2)の製造
製造方法は実施例1の方法とほぼ同じである。ただPt(PPh3)2{(C≡C-4)C6H4-carb-9}2にてPt(PPh3)2(C≡CC6H4But-4)2を代替し、PPh3にてPhP(9-Ph-carb-3)2を代替する。収率:71%。元素分析(C116H92Ag2Cl2N2O8P6Pt) 計算値: C、60.33; H、 4.02; N、1.21。測定値: C、60.12; H、4.02; N、1.15。エレクトロスプレーイオン化MSのm/z (%): 1055.1713 (100%、[M-2ClO4]2+)。1H-NMR (CDCl3、ppm): 8.21-8.13 (m、8H)、7.59-7.54 (m、14H)、 7.48-7.14 (m、18H)、 7.34-7.24 (m、22H)、7.20-7.12 (m、 14H)、7.02-6.98 (m、4H)、6.86-6.85 (d、4H、 J=7Hz) 、4.59 (m、2H) 、3.15-3.06 (m、2H) 、 2.73-2.59 (m、2H) 、0.61 (m、2H)。31P-NMR (CDCl3、ppm): 47.0 (d、2P、JP-P = 76Hz、JPt-P = 2375 Hz) 、11.8 (m、 2P、JP-Ag = 506Hz) 、3.4 (m、2P、 JP-Ag = 410Hz、JP-P= 45Hz)。赤外線スペクトル (KBr、 cm-1): 2091w (C≡C) 、1099s (ClO4-)。
【実施例3】
【0044】
錯体[PtAg2(rac-dpmppe){C≡C-(9-Ph-carb-3)}2(PPh3)2](ClO4)2(rac-3)の製造
製造方法は実施例1の方法とほぼ同じである。ただPt(PPh3)2(C≡C-(9-Ph-carb-3))2にてPt(PPh3)2(C≡CC6H4But-4)2を代替し、PPh3にてPhP(9-Ph-carb-3)2を代替する。収率: 71%。元素分析 (C116H92Ag2Cl2N2O8P6Pt) 計算値: C、60.33; H、4.02; N、1.21。 測定値: C、60.10; H、4.05; N、1.16。エレクトロスプレーイオン化MSのm/z (%): 1055.1717 (100%、 [M-2ClO4]2+)。1H-NMR (CDCl3、 ppm): 8.17-8.12 (dd、 4H、 J1 = 12Hz、J2 = 8Hz) 、7.67-7.63 (t、 4H、 J= 8Hz) 、7.54-7.46 (m、 22H) 、7.43-7.40 (m、8H) 、7.37-7.31 (m、10H) 、 7.29-7.18 (m, 10H) 、7.13-7.03 (m、 20H) 、 6.95-6.92 (m、 4H) 、6.83-6.81 (d、2H) 、4.45 (m、 2H) 、 3.18-3.09 (m、 2H) 、2.69-2.50 (m、 2H) 、 0.59 (m、2H)。31P-NMR (CDCl3、 ppm): 46.3 (d、2P、JP-P = 75Hz、 JPt-P = 2384Hz) 、 11.9 (m、 2P、 JP-Ag = 510Hz) 、2.4 (m、 2P、JP-Ag = 398 Hz、JP-P= 51Hz)。赤外線スペクトル (KBr、cm-1): 2075w (C≡C) 、1093s (ClO4-)。
【実施例4】
【0045】
錯体[PtAg2(rac-dpmppe)(C≡C-(9-Ph-carb-3))2{P(9-Et-carb-3)3}2](ClO4)2(rac-4)の製造
製造方法は実施例1の方法とほぼ同じである。ただPt(PPh3)2{C≡C-(9-Ph-carb-3)}2にてPt(PPh3)2(C≡CC6H4-But-4)2を代替し、P(9-Et-carb-3)3にてPhP(9-Ph-carb-3)2を代替する。収率: 71%。元素分析 (C164H134Ag2Cl2N8O8P6Pt)計算値: C、 65.39; H、 4.48; N、 3.72。測定値: C、 65.14; H、 4.53; N、3.53。エレクトロスプレーイオン化MSのm/z (%):1406.8446 [M-2ClO4]2+1H-NMR (CDCl3、 ppm): 8.27-8.22 (dd、 4H、 J1 = 12Hz、 J2 = 8Hz) 、8.20-8.17 (d、 6H、 J=12Hz) 、 8.04-7.99 (dd、 6H、 J1 = 12Hz、 J2 = 8Hz) 、7.71 (s、2H) 、 7.50-7.40 (m、 16H) 、 7.37-7.32 (m、 12H) 、 7.27-7.25 (m、10H) 、7.17-7.14 (m、 6H) 、7.07-7.03 (t、 2H、 J = 7Hz) 、 7.0-6.90 (m、12H) 、 6.88-6.77 (m、16H) 、6.73-6.66 (m、4H) 、4.4 (m、2H) 、3.88-3.83 (q、12H、J =7Hz) 、3.27-3.18(m、2H)、2.62-2.44 (m、2H) 、 1.0-0.97 (d、18H、 J =7Hz) 、 0.72 (m、2H)。 31P-NMR (CDCl3、 ppm): 46.5 (d、2P、 JP-P = 78Hz、 JPt-P = 2380Hz) 、15.3 (m、 2P、 JP-Ag = 534Hz) 、0.8 (m、 2P、 JP-Ag = 378Hz、JP-P= 53Hz)。赤外線スペクトル (KBr、 cm-1): 2081w (C≡C) 、 1093s (ClO4-)。
【実施例5】
【0046】
錯体[PtAg2(rac-dpmppe){C≡C-(9-Et-carb-3)}2{P(9-Et-carb-3)3}2] (ClO4)2 (rac-5)の製造
製造方法は実施例1の方法とほぼ同じである。ただPt(PPh3)2{C≡C-(9-Et-carb-3)}2にてPt(PPh3)2(C≡CC6H4But-4)2を代替し、P(9-Et-carb-3)3にてPhP(9-Ph-carb-3)2を代替する。収率: 72%。元素分析(C156H134Ag2Cl2N8O8P6Pt)計算値: C、64.25; H、 4.63; N、 3.84。 測定値: C、 64.02; H、 4.65; N、 3.58。 エレクトロスプレーイオン化MSのm/z (%): 1358.3459 (100%) [M-2ClO4]2+1H-NMR (CDCl3、 ppm): 8.25-8.16 (m、 8H) 、 8.01 (m、 6H) 、 7.73-7.68 (m、10H) 、 7.44-7.27 (m、 28H) 、 7.18-7.02 (m、 10H) 、 6.94-6.82(m、 22H) 、 6.70-6.64 (m、 4H) 、 4.33 (m、 2H) 、 4.05-3.99 (q、 4H、 J = 7Hz) 、 3.85-3.79 (q、 12H、 J = 7Hz) 、 3.26-3.22 (m、 2H) 、 2.64-2.51 (m、 2H) 、 1.29-1.15 (t、 6H、 J=7Hz) 、 1.11-0.97 (t、 18H、 J=7Hz) 、 0.71 (m、 2H)。 31P-NMR (CDCl3、 ppm): 46.2 (d、 2P、 JP-P= 78Hz、 JPt-P= 2376Hz) 、 15.3 (m、 2P、 JP-Ag= 524Hz) 、 0.6 (m、 2P、 JP-Ag= 369Hz、 JP-P= 52Hz)。 赤外線スペクトル (KBr、 cm-1) (KBr、 cm-1): 2073w (C≡C) 、 1093s (ClO4-)。
【実施例6】
【0047】
錯体[PtAg2(rac-dpmppe){C≡C-(10-Et-PTZ-3)}2{P(9-Et-carb-3)3}2](ClO4)2 (rac-6)の製造
製造方法は実施例1の方法とほぼ同じである。ただPt(PPh3)2{C≡C-(10-Et-PTZ-3)}2にてPt(PPh3)2(C≡CC6H4But-4)2を代替し、P(9-Et-carb-3)3にてPhP(9-Ph-carb-3)2を代替する。収率: 73%。元素分析(C156H134Ag2Cl2N8O8P6PtS2)計算値: C、 62.86; H、 4.53; N、 3.76. 測定値: C、 62.62; H、 4.57; N、3.59。 エレクトロスプレーイオン化MSのm/z (%): 1390.8150 (100%) [M-2ClO4]2+1H-NMR (CDCl3、 ppm): 8.16-8.13 (m、 8H)、8.01-7.96(dd、6H、 J = 8Hz) 、 7.58-7.55 (m、6H) 、 7.42-7.38 (m、12H)、 7.34-7.30(m、8H)、7.15-6.99(m、 22H)、 6.90-6.86 (m、14H) 、 6.69-6.67 (d、 2H、 J = 8Hz)、 6.54-6.52 (d、2H、 J = 8Hz), 6.35-6.32 (m、 4H) 、 5.92-5.90 (d、 2H、 J = 8Hz) 、4.23(m、2H) 、 4.05-3.99 (q、12H、 J =7Hz)、3.45-3.39 (q、 4H、 J = 7Hz) 、3.06-2.97 (m、2H) 、 2.64-2.45(m、2H) 、1.18-1.14 (t、18H、J = 7Hz)、1.06-1.02 (t、6H、J = 7Hz) 、 0.59(m、2H)。 31P-NMR (CDCl3、 ppm): 46.5(d、 2P、JP-P = 78Hz、JPt-P =2376Hz) 、 15.2 (m、2P、JP-Ag = 536Hz) 、1.5(m、2P、 JP-Ag = 381Hz、JP-P= 54Hz)。赤外線スペクトル (KBr, cm-1): 2081w (C≡C) 、1093s (ClO4-)。
【実施例7】
【0048】
錯体[PtAg2(meso-dpmppe)(C≡CC6H4CF3-4)2(PPh3)Cl](ClO4) (meso-7)の製造
Pt(PPh3)2(C≡CC6H4CF3-4)2(82.5mg、0.078mmol)を溶解した20mLのジクロロメタン溶液中にmeso-dpmppe (50mg, 0.078mmol)を添加する。30分撹拌してから濃縮させ、20mLのヘキサンを添加すると、中間体である薄黄色の固体が析出され、収率は90% (82.4mg)である。まず、PPh3(18.3mg、0.07mmol)と、nBu4NCl (19.5mg、0.07mmol)と、を混合させ、当該混合溶液及びAg(tht)ClO4 (41.4mg、0.14mmol)を、上記中間体を溶解したジクロロメタン溶液に添加し、反応液は室温で1時間撹拌した後、薄いブルーに変わる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成物を精製し、CH2Cl2-MeCN (15:1)を脱離液として使用して黄色の生成物を集積する。収率:75%。元素分析(C76H61Ag2Cl2F6O4P5Pt) 計算値: C、51.03; H、3.44。 測定値: C、51.21; H、 3.60。 エレクトロスプレーイオン化MSのm/z (%): 1688.0808 (100%、[M-ClO4]+)。 1H-NMR (CDCl3、 ppm): 8.03-7.96 (m、8H)、 7.59-7.36 (m、22H)、 7.33-7.29 (t、4H、J =7Hz) 、 7.25-7.17 (m、11H) 、6.92-6.89 (m、4H) 、6.65-6.62 (m、4H) 、3.86 (m、2H) 、3.37 (m、2H) 、2.28-2.11 (m、 4H)。 31P-NMR (CDCl3、 ppm): 47.6 (dd、2P、JP-P = 30Hz、JPt-P = 2412Hz) 、7.6 (m、1P、JP-Ag = 579Hz)、-8.9 (m、2P、JP-Ag = 422Hz、JP-P= 59Hz)。赤外線スペクトル (KBr、cm-1): 2092w (C≡C) 、1104s (ClO4-)。
【実施例8】
【0049】
錯体[PtAg2(meso-dpmppe)(C≡CC6H4But-4)2(PPh3)Cl](ClO4) (meso-8)の製造
製造方法は実施例7の方法とほぼ同じである。ただPt(PPh3)2(C≡CC6H4But-4)2にてPt(PPh3)2(C≡CC6H4CF3-4)2を代替する。収率:74%。元素分析(C82H79Ag2Cl2O4P5Pt) 計算値: C、55.80; H、4.51。 測定値: C、 56.02; H、 4.74。エレクトロスプレーイオン化MSのm/z (%):1665.2304 (100%, [M-ClO4]+)。 1H-NMR (CDCl3, ppm): 8.03-7.97 (m、 8H)、7.53-7.50 (m、 7H)、 7.41-7.31 (m、 20H) 、 7.24-7.16 (m、 12H) 、6.71-6.59 (m、 8H) 、 3.81 (m、 2H) 、 3.46 (m、2H) 、2.18-2.01 (m、 4H) 、1.45 (s、18H)。31P-NMR (CDCl3、ppm): 47.1 (q、 2P、JP-P = 30Hz、JPt-P = 2409Hz) 、7.2 (m、1P、JP-Ag = 565Hz) 、 -9.5 (m、2P、 JP-Ag = 417Hz、 JP-P= 58Hz)。 赤外線スペクトル (KBr、 cm-1): 2092w (C≡C) 、1093s (ClO4-)。
【実施例9】
【0050】
錯体[PtAg2(meso-dpmppe)(C≡CC6H4But-4)2{P(9-Et-carb-3)3}Cl] (ClO4) (meso-9)の製造
製造方法は実施例7の方法とほぼ同じである。ただPt(PPh3)2(C≡CC6H4But-4)2にてPt(PPh3)2(C≡CC6H4CF3-4)2を代替し、P(9-Et-carb-3)3にてPPh3を代替する。収率:74%。元素分析(C106H100Ag2Cl2N3O4P5Pt) 計算値: C、 60.15; H、 4.76; N、 1.99。 測定値: C、60.32; H、4.73; N、1.88。 エレクトロスプレーイオン化MSのm/z (%):2016.4011 (100%、 [M-ClO4]+)。 1H-NMR (CDCl3、ppm): 8.48-8.45 (d、2H、J = 12Hz)、 8.08-8.04 (dd、4H、J1 = 12Hz、J2 = 8Hz)、7.94-7.92 (d、2H、J = 8Hz)、7.89 (m、4H) 、7.53-7.41 (m、26H) 、7.25-7.15 (m、13H) 、6.61-6.59 (m、4H)、 6.40-6.38 (m、4H)、4.41-4.37 (q、6H、J = 7Hz)、3.76 (m、2H)、3.49 (m、2H)、2.24-2.05 (m、4H)、1.49-1.47 (t、9H、J = 7 Hz)、0.76 (s、18H)。 31P-NMR (CDCl3、ppm): 47.5 (q、2P, JP-P = 29Hz、JPt-P = 2394Hz)、10.4 (m、1P、JP-Ag = 601Hz) 、-9.3 (m、2P、JP-Ag = 417Hz、JP-P = 56Hz)。 赤外線スペクトル(KBr、cm-1): 2110w (C≡C)、1093s (ClO4-)。
【実施例10】
【0051】
錯体[PtAg2(meso-dpmppe)(C≡CC6H4But-4)2{P(9-Et-carb-3)3}I] (ClO4) (meso-10)の製造
製造方法は実施例7の方法とほぼ同じである。ただPt(PPh3)2(C≡CC6H4But-4)2にてPt(PPh3)2(C≡CC6H4CF3-4)2を代替し、P(9-Et-carb-3)3にてPPh3、を代替し、nBu4NIにてnBu4NClを代替する。収率:72%。元素分析(C106H100Ag2ClIN3O4P5Pt) 計算値: C、 57.66; H、4.56; N、1.90. 測定値: C、57.57; H、4.60; N、1.83。エレクトロスプレーイオン化MSのm/z (%): 2108.3387 (100%、 [M-ClO4]+)。1H-NMR (CDCl3、 ppm): 8.51-8.48 (d、2H、J = 12Hz) 、8.11-8.07 (dd、4H、J1 = 12Hz、J2 = 8Hz)、 7.98-7.96 (d、2H、J = 8Hz)、7.82 (m、4H) 、7.54-7.40 (m、26H) 、7.29-7.16 (m、13H)、6.54-6.52 (m、4H)、6.37-6.35 (m、4H)、4.39-4.35 (q、6H、J = 7Hz)、3.71(m、2H)、3.52 (m、2H)、2.25-2.05 (m、4H)、1.49-1.47 (t、9H、J = 7Hz)、0.72 (s、18H)。 31P-NMR(CDCl3、ppm): 48.5 (q、2P、JP-P = 30Hz、JPt-P = 2391Hz) 、9.0 (m、1P、JP-Ag = 547Hz)、-11.7(m、2P、JP-Ag = 386Hz、JP-P = 59Hz)。赤外線スペクトル(KBr、cm-1): 2104w (C≡C)、1093s(ClO4-)。
【実施例11】
【0052】
錯体[PtAg2(meso-dpmppe)(C≡C-(10-Et-PTZ-3))2 {P(9-Et-carb-3)3}(μ-I)](ClO4) (meso-11)の製造
製造方法は実施例7の方法とほぼ同じである。ただPt(PPh3)2{C≡C-(10-Et-PTZ-3)}2にてPt(PPh3)2(C≡CC6H4CF3-4)2を代替し、P(9-Et-carb-3)3にてPPh3を代替し、nBu4NIにてnBu4NClを代替する。収率:75%。元素分析(C114H98Ag2ClIN5O4P5PtS2) 計算値: C、57.19; H、4.13; N、2.93。 測定値: C、57.42; H、4.33; N、2.84. エレクトロスプレーイオン化MSのm/z (%): 2294.2671 (100%、[M-ClO4]+)。 1H-NMR (CDCl3、ppm): 8.54-8.51 (d、2H、J = 12Hz) 、8.09-8.04 (dd、4H、 J1 = 12Hz、J2 = 8Hz)、7.95-7.93 (d、2H、J = 8Hz)、7.80 (m、4H)、7.59-7.29 (m、29H)、7.18-7.01 (m、 12H)、6.75 (m、4H)、6.51-6.49 (d、2H、J = 8Hz)、6.41-6.39 (d、2H、J = 8Hz)、6.22 (s、2H) 、5.63-5.61 (d、2H、J = 8Hz)、4.45-4.27 (q、6H、J = 7Hz)、3.71 (m、2H)、 3.46 (m、2H)、3.14-3.08 (q、4H、J = 6Hz)、2.28-2.03 (m、4H)、1.44-1.40 (t、9H、J= 7Hz)、0.86-0.81 (t、6H、J = 6Hz). 31P-NMR (CDCl3、ppm): 48.6 (q、2P、JP-P = 29Hz、JPt-P = 2391Hz)、9.1 (m、1P、JP-Ag = 548Hz)、-11.4 (m、2P、JP-Ag = 384Hz、JP-P= 60Hz)。 赤外線スペクトル(KBr、cm-1): 2101w (C≡C)、1094s (ClO4-)。
【実施例12】
【0053】
フォトルミネッセンス性能測定
Edinburgh FLS920蛍光分光計で実施例1、4、5、6で製造した錯体rac-1、rac-4、rac-5、rac-6の、固体粉末および70.5% 2,6-DCZPPY:23.5% OXD-7:6%の本発明錯体rac-1、4、5、または6(重量比)の薄膜における励起スペクトル、発射スペクトル、発光寿命および発光量子収率、及び実施例11で製造した錯体meso-11の、固体粉末および90% 2,6-DCZPPY:10%の本発明錯体meso-11(重量比)の薄膜における励起スペクトル、発射スペクトル、発光寿命および発光量子収率をそれぞれに測定する。直径142mmの積分球により固体粉末サンプルの発光量子収率を測定する。
【0054】
錯体rac-1、rac-4、rac-5、rac-6、またはmeso-11の固体状態での発射波長及び量子収率はそれぞれに500nm及び15.1%(rac-1)、566nm及び37.1%(rac-4)、580nm及び30.4%(rac-5)、662nm及び1.7%(rac-6)、600nm及び8.1%(meso-11)である。
【0055】
錯体rac-1、rac-4、rac-5、またはrac-6の、70.5% 2,6-DCZPPY : 23.5% OXD-7 : 6% 本発明錯体rac-1、4、5、または6(重量比)の薄膜における発射波長及び量子収率はそれぞれに487nm及び52.2%(rac-1)、527nm及び90.5% (rac-4)、535nm及び77.0% (rac-5)、616nm及び56.8% (rac-6) である。錯体meso-11の、90% 2,6-DCZPPY :10%の本発明錯体meso-11(重量比)の薄膜における発射波長及び量子収率はそれぞれに570nm及び52.2% (meso-11)である。
【実施例13】
【0056】
有機発光ダイオード素子の製造及びエレクトロルミネッセンス性能の測定
実施例1、4、5、6で製造した燐光錯体rac-1、rac-4、rac-5、またはrac-6を発光材料とし、それを6%の重量比で2,6-DCZPPY (70.5%) : OXD-7 (23.5%)の混合ホスト材料中にドーピングして、発光層になり、有機発光ダイオードを製造する。素子構造:ITO/PEDOT : PSS (50nm)/CuSCN(30nm)/70.5% 2,6-DCZPPY : 23.5% OXD-7 : 6% の本発明錯体rac-1、4、5、または6(50nm)/Bmpypb (50nm)/LiF (1nm)/Al(100nm)。実施例11で製造した燐光錯体meso-11を発光材料とし、10%の的重量比で2,6-DCZPPY (90%)ホスト材にドーピングして、発光層になり、有機発光ダイオードを製造する。素子構造:ITO/PEDOT : PSS (50nm)/CuSCN (30nm)/90% 2,6-DCZPPY : 10% の本発明錯体meso-11 (50nm) / Bmpypb (50nm)/LiF (1nm) / Al (100nm)。
【0057】
まず、脱イオン水、アセトン、イソプロパノールによりITO基板をそれぞれに洗浄してから、UV-オゾンで15分間処理する。濾過後のPEDOT : PSS水溶液をスピンコーターで4800回転/分の回転数でITO基板上にスピンコーティングし、140℃で20分間乾燥させることで、厚さ50nmの正孔注入層が得られる。次に、CuSCNのジエチルスルファイド溶液(10mg/mL)を4800回転/分の回転数でPEDOT : PSS正孔注入層上にスピンコーティングし、120℃で30分間乾燥することで、厚さ30nmの正孔輸送層が得られる。その次に、スピンコーターにより濾過後の濃度が5.5mg/mLの70.5% 2,6-DCZPPY : 23.5% XD-7 : 6% の本発明錯体rac-1、rac-4、rac-5、またはrac-6(重量比)、または5.5mg/mLの90% 2,6-DCZPPY : 10% の本発明錯体meso-11(重量比)のジクロロメタン溶液を2100回転/分の回転数でPEDOT : PSSの薄膜上にコーテイングすることで厚さ50nmの発光層を形成する。引き続き、ITO基板を真空度が4×10-4 Pa以上の真空チャンバーに入れ、厚さ50nmのBmpypb、厚さ1nmのLiF電子注入層、および厚さ100nmのAlを素子とする陰極として順次熱蒸着する。
【0058】
発光ダイオード素子性能の実験は、乾燥した室温環境で行う。エレクトロルミネセンス波長(λEL)、起動最低電圧(Von)、最大輝度(Lmax)、最大電流効率(CEmax)、最大出力効率(PEmax)、最大外部量子効率(EQEmax)を含むエレクトロルミネセンス性能のパラメーターを表1に示してある。
【0059】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は、素子の構造イメージ図および有機材料の化学構造図である。
図1