(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理ユニットが、前記境界誤り領域の特性に基づいて前記第1のX線画像データの画像完成指標を更に生成し、前記第2のX線画像データは、前記画像完成指標が画像完成条件を上回った場合に前記処理ユニットによって取得される、請求項1又は2に記載の装置。
前記処理ユニットが、画像縫合アルゴリズムを使用して前記第1のX線画像データ及び前記第2のX線画像データを結合する、請求項1から3の何れか一項に記載の装置。
前記処理ユニットが、前記関心領域において前記第1のX線画像データに隣接する前記第2のX線画像データを提供するように前記更新視野状態を選択する、請求項1から4の何れか一項に記載の装置。
前記処理ユニットが、前記関心領域の少なくとも一部にわたって前記第1のX線画像データと重なる前記第2のX線画像データを提供するように、前記更新視野状態を選択する、請求項1から4の何れか一項に記載の装置。
前記処理ユニットが、前記初期視野状態及び/又は前記更新視野状態に基づいて人工的な結合領域マーカを前記出力画像に付加し、前記結合領域マーカは、前記出力画像において歪みの可能性のある領域をユーザに示すものである、請求項1から7の何れか一項に記載の装置。
前記処理ユニットが、入力デバイスから再照射コマンドを受け取り、前記処理ユニットは、前記再照射コマンドが前記入力デバイスから受け取られるまで、前記第2のX線画像データを取得しない、請求項1から8の何れか一項に記載の装置。
請求項1から10の何れか一項に記載の装置及び/又は請求項11に記載のX線撮像システムを制御するためのコンピュータプログラムであって、プロセッサ及び/又はシステムによって実行された場合に、請求項12に記載の方法を実行する、コンピュータプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
米国特許出願公開第2015/0228071号明細書では、X線撮像装置のコリメータを自動的又は半自動的に制御するための装置及び方法が説明されている。しかしながら、そのような方法はさらに改良することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そのため、第1の態様によれば、合成視野を有するX線画像を取得するための装置が提供される。この装置は、
− 処理ユニット
を備える。
【0005】
処理ユニットは、X線撮像装置を使用して対象者の関心領域の一部の第1のX線画像データを取得するように構成され、第1のX線画像データは、調整可能な視野が初期視野状態に設定されたX線撮像装置から取得され、処理ユニットは、第1のX線画像データを解剖学的モデルと比較し、第1のX線画像データと解剖学的モデルとの比較に基づいて第1のX線画像データに隣接する境界誤り領域を規定し、関心領域における境界誤り領域の位置に基づいて更新視野状態を生成し、更新視野状態をX線撮像装置に送信し、更新視野状態に設定された場合にX線撮像装置を使用して対象者の関心領域の第2のX線画像データを取得し、第1のX線画像データ及び第2のX線画像データを結合して合成視野を有する関心領域の出力画像を取得するように構成される。
【0006】
したがって、第1のX線画像における取得欠損を識別するX線撮像装置を制御することが可能な装置が提供される。X線撮像装置の視野を調整して、関心領域の撮像を完了するさらなるX線画像を提供するために使用可能な設定が生成される。更新視野は、たとえば、初期視野よりも面積が小さい。この場合、患者はX線画像の再撮影時に、第1のX線画像の照射と比較してより少ない線量のX線放射線を受けることになる。そのような装置によって、患者に届く総X線量を減少させることが可能になる。
【0007】
任意選択で、第1の態様による装置では、解剖学的モデルは複数の解剖学的要素を表す確率的解剖学アトラスを含む。処理ユニットは、第1のX線画像の一部を確率的解剖学アトラス内の解剖学的要素と比較するようにさらに構成される。
【0008】
したがって、第1のX線画像における境界誤り領域の正確な印(impression)を導き出して、第2のX線画像を取得することが可能になる。
【0009】
任意選択で、第1の態様による装置では、処理ユニットは、解剖学的モデル及び/又は確率的解剖学アトラスにおいて、第1のX線画像データから欠落している想定要素又は想定要素の一部を識別するようにさらに構成される。処理ユニットは、関心領域の一部からの解剖学的モデル及び/又は確率的解剖学アトラスの外挿に基づいて、X線画像データにおける境界誤り領域を規定するようにさらに構成される。
【0010】
したがって、正確な解剖学的データを使用して、第1のX線画像の視野における誤りの範囲が特定される。
【0011】
任意選択で、処理ユニットが、境界誤り領域の特性に基づいて第1のX線画像データの画像完成指標を生成するようにさらに構成される、第1の態様の装置。第2のX線画像データは、画像完成指標が画像完成条件を上回った場合に処理ユニットによって取得される。
【0012】
したがって、たとえば、解剖学的モデルと比較した後、第1のX線画像データ内の肺要素は95%完全であり、わずかな程度の肺の端部しか第1のX線画像データから欠落していないことが分かる。この場合、第2のX線画像は必要とされないので、患者の不要な余分なX線被曝が省かれる。
【0013】
任意選択で、処理ユニットが、画像縫合アルゴリズムを使用して第1のX線画像データ及び第2のX線画像データを結合するようにさらに構成される、第1の態様による装置が提供される。
【0014】
したがって、画像内の第1のX線画像データ及び第2のX線画像データの間の画像の不連続性は、医療専門家には見えない。
【0015】
任意選択で、処理ユニットが、関心領域において第1のX線画像データに隣接する第2のX線画像データを提供するように更新視野状態を選択するよう構成される、第1の態様による装置が提供される。
【0016】
したがって、更新視野状態は、第1のX線画像データの視野と重ならないので、極力小さい更新視野を提供する。このようにして、患者が不要なX線放射線に被曝することがさらに低減される。
【0017】
任意選択で、処理ユニットが、関心領域の少なくとも一部にわたって第1のX線画像データと重なる第2のX線画像データを提供するように、更新視野状態を選択するよう構成される、第1の態様による装置が提供される。
【0018】
したがって、第2のX線画像データは、少なくともある程度、第1のX線画像データに既に存在している画像情報を含む。このようにして、臨床診断を形成するのにあまり関連性がない画像の領域において、第1のX線画像データ及び第2のX線画像データを結合することが可能になる。たとえば、重なる点は、特定の患者を撮像する場合には、主に肺葉の端部にある疾患の診断に関連性がない場合がある、患者の脊椎の下にある視野内のエリアを辿り得る。
【0019】
任意選択で、処理ユニットは、解剖学的モデル及び/又は確率的解剖学アトラスを使用して第1のX線画像データ内の画像結合領域を識別し、画像結合経路にさらに基づいて更新視野状態を生成するようにさらに構成され、第1のX線画像データ及び第2のX線画像データは画像結合領域に沿って結合される、第1の態様による装置が提供される。
【0020】
したがって、事前に提供される解剖学的情報を使用して、更新視野状態を規定することによって、より正確な画像結合領域が規定される。
【0021】
任意選択で、第1の態様による装置は、初期及び/又は更新視野状態に基づいて人工的な結合領域マーカを出力画像に付加するようにさらに構成される処理ユニットが設けられ、結合領域マーカは、出力画像において歪みの可能性のある領域をユーザに示すものである。
【0022】
したがって、エンドユーザは、合成出力画像内の領域が医療診断の形成に適していないと警告され得る。
【0023】
任意選択で、第1の態様の装置によれば、処理ユニットは、3Dカメラから対象者の3D光学画像データを受信するようにさらに構成され、初期及び/又は更新視野状態は、3D光学画像データにおける対象者の位置にさらに基づく。
【0024】
したがって、初期又は更新視野は、カメラなどによって捕捉された視野内の患者の位置を使用して規定される。これにより、初期視野並びに更新視野を正確に設定して、患者の不要なX線被曝をさらに低減することが可能になる。
【0025】
任意選択で、処理ユニットは、入力デバイスから再照射コマンドを受け取るようにさらに構成され、プロセッサは、再照射コマンドが入力デバイスから受け取られるまで第2のX線画像データを取得しないように構成される、第1の態様の装置が提供される。
【0026】
したがって、この装置は、患者への2回目の照射を実行するX線源を作動させる前に、オペレータのコマンドを待機するように構成することができるので、この装置の安全性が高まる。
【0027】
任意選択で、X線撮像装置は調整可能なコリメータを備え、初期視野状態は第1の調整可能なコリメータ設定を含み、処理ユニットは、処理ユニットを使用して第2の調整可能なコリメータ位置設定を生成することによって、更新視野状態を生成するように構成され、処理ユニットは、第2の調整可能なコリメータ位置設定をX線撮像装置の調整可能なコリメータに送信することによって、X線撮像装置の視野を調整するようにさらに構成される、第1の態様による装置が提供される。
【0028】
したがって、X線コリメータ設定は、視野状態を変更するためにを使用される。
【0029】
第2の態様によれば、X線撮像システムが提供される。
【0030】
X線撮像システムは、
− 目標位置に向けて調整可能な視野を有するX線源と、
− 第1の態様又はその任意選択の実施形態のうちのいずれかに記載した合成視野を有するX線画像を取得するための装置と、
− X線源から放出されたX線を受けるために目標位置の背後に配置されるX線検出器と
を備える。
【0031】
X線撮像システムは第1のX線画像データを装置に提供するように構成され、装置は目標位置の視野を調整可能にするために更新視野状態をX線源に提供するように構成され、X線撮像システムはX線画像を生成するための装置に第2のX線画像情報を提供するように構成され、装置は合成視野を有する関心領域の出力画像を提供するように構成される。したがって、X線撮像システムの視野は、第1のX線画像から放出された、撮像される患者の関心領域内の要素を撮影するように自動的に調整される。
【0032】
第3の態様によれば、合成視野を有するX線画像を取得するための方法が提供される。この方法は、
a)X線撮像装置を使用して対象者の関心領域の一部の第1のX線画像データを取得するステップであって、X線画像データは、調整可能な視野が初期視野状態に設定されたX線撮像装置を使用して取得される、取得するステップと、
b)X線画像データを解剖学的モデルと比較するステップと、
c)第1のX線画像データと解剖学的モデルとの比較に基づいて第1のX線画像データに隣接する境界誤り領域を規定するステップと、
d)関心領域における境界誤り領域の位置に基づいて更新視野状態を生成するステップと、
e)更新視野状態をX線撮像装置に送信するステップと、
f)送信された視野状態に設定された場合にX線撮像装置を使用して対象者の関心領域の第2のX線画像データを取得するステップと、
g)第1のX線画像データ及び第2のX線画像データを結合して合成視野を有する関心領域の出力画像を取得するステップと
を有する。
【0033】
したがって、患者の関心領域内の全ての関連する要素を含むX線画像を生成するための方法であって、第1のX線内に既に包含されていた関連する要素全てを包含するように第2のX線の視野状態が設定された場合よりも少ない量のX線放射線被曝が生成される、方法が提供される。
【0034】
第4の態様によれば、第1又は第2の態様に記載した装置及び/又はX線システムを制御するためのコンピュータプログラム要素であって、プロセッサ及び/又はシステムによって実行された場合に、第3の態様の方法を実行するように構成される、コンピュータプログラム要素が提供される。
【0035】
第5の態様によれば、第4の態様のコンピュータプログラム要素が記憶された、コンピュータ可読媒体が提供される。
【0036】
以下の明細書において、「X線画像データ」という用語はピクセルアレイを含むデータ構造を指し、各ピクセルは、X線が患者の関心領域を横断した後に、特定のピクセルにおいて受けたX線の強度を表す。強度値は、2次元画像に組み立てられる場合、各ピクセル位置におけるX線吸収量の積分を表す可算性の画像を提供する。
【0037】
以下の明細書において、「X線源」という用語は、回転陽極X線管などを含むX線源を指す。これは、撮像される患者の関心領域に向けてX線放射線を放出する。X線放射線は関心領域において患者を横断し、X線検出器によって受け取られ、X線検出器もまたX線撮像システムの一部と見なされ得る。X線撮像装置は自動設定可能な視野パラメータ、たとえば、調節可能なコリメータ配置、調節可能なパン又はチルトサーボモータ、調節可能な高さ又はx−y座標設定などを含む。加えて、X線検出器は垂直又は水平に平行移動される。
【0038】
以下の明細書において、「視野」という用語は、典型的な照射中にX線撮像装置が撮影する「関心領域」の一部を指す。視野は、一般に、X線検出器及び/又は患者からX線撮像装置までの距離と、X線検出器の開口部の大きさとによって規定される。視野は、X線撮像装置をx−z平面内で移動させることによって、関心領域を横切って平行移動される。視野はX線撮像装置をパン又はチルトすることによっても変更される。視野は、X線源の1つ又は複数のコリメータシャッタを調整することによって、切り落とし又は拡大される。そのため、X線撮像装置の視野を調整するには多くのやり方があることは理解されよう。
【0039】
以下の明細書において、「解剖学的モデル」という用語は、典型的には記憶されコンピュータなどの処理手段上で実行されるデータ構造を指す。解剖学的モデルは、患者の一般的な解剖学的特徴の位置及び形状を定義する情報を含む。典型的な解剖学的モデルは一般的な患者の体の一部を定義する。解剖学的モデルは、たとえば、肺、肋骨、脊椎などの構造の表現と、特定の解剖学的要素が特定の位置に存在する尤度とを含む。解剖学的モデルは、解剖学的要素が臓器の画像の不完全な部分から識別可能になるように設計される。
【0040】
「境界誤り領域」という用語は、X線画像データにおける解剖学的でない領域を定義したものである。視野の視準が不正確である場合、境界誤り領域が切り落とされているように見えることは理解されよう。たとえば、肺葉の最も左手側又は最も右手側の部分がX線画像データから欠落している場合がある。しかしながら、パン又はチルト設定が不十分であるために視野が不正確に設定された場合、境界誤り領域は、存在はしているが「台形形状」などに歪んだ解剖学的要素によって規定され得る。換言すれば、X線画像データの境界誤り領域は、患者の解剖学的構造の忠実又は正確な再現ではない画像のエリアを規定する。
【0041】
このように、視野に関する問題について初期X線画像をロバストにチェックし、視野を自動的に再設定して、初期照射内で照射されていない解剖学的領域の2回目の取得を可能にし、それによって画像結合方法を使用して完全な視野を完成させるための自動化された方法を提供することが本明細書の基本概念である。このようにして、誤った初期照射を利用して、より小さい視野を有する2回目の照射を完了することによって、2枚の完全な画像を受諾するために必要なはずの放射線被曝よりも、患者の放射線被曝を低減することが可能になる。
【0042】
本出願では前後方向のビューに基づく肺撮像に関する概念を論じているが、本明細書で論じる技術は、初期X線画像が欠落している境界要素を有するいかなる場合でも、X線撮影において広い適用性を有することは理解されよう。
【0043】
以下の図面を参照して例示的な実施形態を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0045】
胸部X線撮影は最も一般的に行われている臨床画像検査であり、胸部の解剖学的構造の多くの疾患の検出及び診断に重要な役割を果たしている。画質は広範囲の特定の個々の要因、たとえば、適切な解剖学的構造の視野内への包含、背景信号に対する関心のある構造のコントラスト、並びにX線取得機器に対する患者の胸郭の位置調整のいくつかの態様などに依存する。
【0046】
照射の視野(FOV)を設定する作業は、通常、放射線技師によって行われる。まず、患者はX線検出器の前の関心領域内に配置される。次いで、X線機器のチューブヘッド内から発せられ、X線放射パターンの範囲と一致する可視光を使用して、患者の体の上に視野を確立する。たとえば、最初にチューブヘッドの高さが変更され、次いで検出器を含む「ブッキー」の高さが変更され、最後にコリメータの開口部が調整される。
【0047】
図1に、臨床用X線撮影において最も一般的な投影配置の1つである胸部の前後方向のビューで患者が検査される様子を示す。
図1では、X線源は、X線ビームが胸部の後方から入り、胸部の前方を出た後、X線検出器に到達するように配置されている。
図1a)に、オペレータがX線源の高さ10を調整する様子を示す。
図1b)に、オペレータがX線検出器を含む「ブッキー」の高さ12を調整する様子を示す。
図1c)に、特定の視準状態における視野を表す可視光視準パターン14の投影を示す。視準パターンは、X線照射中のX線照射のパターンに対応する。典型的には、視準パターン14は、X線源制御機器18のアイテム上のコントロール16a、16bを使用して精細化される。視準パターンを変化させると、システムの視野が拡大又は縮小される。
【0048】
臨床的な慣例では、画質を決定する側面は、システムオペレータの技術にある程度依存する。事前定義された最低品質基準を保証して、潜在的な誤りの一般的な原因の最小化を可能にすることを目的として標準的な操作手順が医療機関によって確立されているが、視野誤りを引き起こす機会自体は依然として存在する。
【0049】
X線機器の視野の設定はオペレータの仕事の重要な一部であるが、誤りを起こしやすい仕事でもある。一般的な状況は「切り取り(cut−off)」である。これは、関心のある解剖学的構造の一部が意図せずX線画像内に含まれないという、視野設定における誤りを意味する。切り取りは最も一般的な誤りの1つであり、典型的にはX線画像全体の再撮影が必要になる。
【0051】
図2a)に、左肺葉22の一部が意図せず切り落とされている前後方向のX線視野20を示す。したがって、境界誤り領域は、一例では、実線の棒状エリア24によって規定されると考えることができる。
【0052】
図2b)を参照すると、視野26は他の前後方向のX線画像を示している。この場合、視野誤りは、肺画像の頂部の視準が不十分である結果として生じており、肺葉の頂部を含むはずの境界誤り領域28が見えている。
【0053】
通常、完全な前後方向の肺画像を取得するためには、
図2a)及び
図2b)の照射は破棄される必要がある。いずれの場合も、まったく新しい照射が行われる必要がある。これはX線設備の時間の無駄であり、1回の撮影で画像が正しく撮影された場合と比較して、患者は必要な線量の少なくとも2倍を受けることになる。したがって、視野誤りに応じてそのような余分な線量を低減するための手法が必要になる。
【0054】
図3に、X線撮像システム35を示す。X線撮像システムは、制御装置30、検出アセンブリ31、及びX線撮像源アセンブリ34を備える。患者は典型的には、X線源アセンブリ34と検出アセンブリ31との間の関心領域36内に立つ。
【0055】
図3には、前後の配置の患者を示している。X線撮像源アセンブリ34は、X線撮像スイートの天井レール40から吊り下げられるように構成される天井設置型ドリー38を備える。
【0056】
X線撮像源アセンブリ34は典型的には天井レール40上に支持され、X線源を患者に向かう又は患者から離れるように平行移動させることができる(YS)。X線撮像源は支持部材42によってレールから吊り下げられており、支持部材42は上下方向(床に向かう及び床から離れる方向、ZS軸)に移動可能であって、さらに支持部材の軸の周りに回転可能である(βS)。
【0057】
X線撮像源44は支持部材42から吊り下げられており、関心領域36に向けてX線放射線を放出するように構成されるX線源46と、関心領域36に向けて可視光を放出するように構成される可視光源48とを含む筐体を備える。
【0058】
X線源46は、たとえば、回転陽極X線管である。可視光源48は典型的には白熱灯又はLEDライトとして設けられる。関心領域36と、X線源46及び可視光源48との間にあるのは視準要素Cである。
【0059】
視準要素Cは、X線ビームの外縁を成形するように構成される。単純なコリメータは、X線撮像装置の開口部を徐々に覆うように構成されるシャッタを備える。より高機能な視準要素は、互いに直交する平面関係に配置された2つのシャッタを備え、視野の大きさを変化させることが可能になる。より複雑な視準構成は、3辺、4辺、又は「虹彩」コリメータシャッタ構成を含む。
【0060】
そのため、視準要素Cによって、X線放射パターン及び可視光放射パターンの両方の視野の外側範囲を規定しやすくなる。X線撮像源が角度αSだけチルト可能であることにも留意されたい。X線撮像構成全体も、図面に示すようにXS次元を通る横方向に(
図3では紙面に出入りする方向に)平行移動される。
【0061】
このように、
図3に示すX線撮像システムでは、関心領域の視野は、1つ又は複数のコリメータ要素Cを操作することによって調整される。代替的に又は追加的に、X線撮像ヘッドをYS方向に前後させることによって、視野の大きさを変更することが可能である。視野はZS次元及びXS次元を調整することによって平行移動される。最後に、視野は、X線撮像構成をパン又はチルトすることによって(BS、AS)再形成される。
【0062】
前述のコリメータ設定及び位置設定を含む視野状態は、可視光源48を使用して患者を照明しながら、オペレータによって選択される。関心領域がうまくカバーされると、X線源が作動され、検出器要素50が関心領域36に関するX線情報を受け取る。これはデータリンク52を介して制御装置30に送信される。オペレータは照射を受けたX線画像をモニタ54などの出力デバイス上で見る。
【0063】
以上、従来のX線撮像システムを説明した。視野は、たとえば、自動サーボモータを使用してコリメータ又はX線撮像源の位置を設定することによって制御されてもよいことは理解されよう。
【0064】
図4に、第1の態様による合成視野を有するX線画像を取得するための装置を示す。この装置は、
− 処理ユニット32
を備える。
【0065】
処理ユニット32は、X線撮像装置34を使用して対象者の関心領域の一部の第1のX線画像データを取得するように構成され、第1のX線画像データは、調整可能な視野が初期視野状態に設定されたX線撮像装置から取得され、処理ユニット32は、第1のX線画像データを解剖学的モデルと比較し、第1のX線画像データと解剖学的モデルとの比較に基づいて第1のX線画像データに隣接する境界誤り領域を規定し、関心領域における境界誤り領域の位置に基づいて更新視野状態を生成し、更新視野状態をX線撮像装置に送信し、更新視野状態に設定された場合にX線撮像装置を使用して対象者の関心領域の第2のX線画像データを取得し、第1のX線画像データ及び第2のX線画像データを結合して合成視野を有する関心領域の出力画像を取得するように構成される。
【0066】
この装置は、業界標準の遠隔操作プロトコルを使用して既存のX線撮像システムに接続可能な独立型モジュールとして実装されてもよい。換言すれば、この装置は、一実施形態では、既存のシステムに後付け可能であってもよい。代替的には、この装置は、既存のX線システムの制御ソフトウェアを更新することによって提供されてもよい。代替的には、この装置は、新しいX線システム内のモジュールとして提供されてもよい。
【0067】
この装置は、X線システムのX線検出器、たとえば、
図3のシステムのX線検出器50から入力画像信号を受信するように構成される。
【0068】
この装置は、処理ユニット32がX線撮像システムの視野を制御又は調整することを可能にするための出力インターフェースをさらに備える。たとえば、装置30は、チルト(αS)、パン(βS)、高さ(ZS)、側方変位(XS)、前後変位(YS)、又はX線検出器の高さ(ZD)を調整するように動作するサーボモータを制御するための出力インターフェースを備える。
【0069】
任意選択で、境界誤り領域は、解剖学的モデルの解剖学的要素を第1のX線画像データ内の一致する要素に当てはめて、第1のX線画像データ内の境界を識別することによって生成される。境界誤り領域は、モデルから当てはめられた解剖学的要素が及ぶ、第1のX線画像の視野外の領域(「境界誤りエリア」)から識別可能である。任意選択で、境界誤り領域は、境界誤りエリアの範囲付近に「境界ボックス」をはめ込むことによって生成することができる。当然ながら、前述の議論は「境界誤り領域」を生成するための1つの手法であるが、他の多くの手法を適用することができる。
【0070】
任意選択で、境界ボックスの座標を使用して、調整可能な視野設定、たとえば、コリメータ位置設定を生成する。
【0071】
任意選択で、更新視野状態は、初期視野状態によって生じる、関心領域における境界誤り領域の座標を関心領域における開口部の座標と比較することによって生成される。座標の差が計算される。更新視野設定は、少なくとも境界誤り領域を含むように視野を変更するよう計算される。
【0072】
実際には、これを実現する多くのやり方がある。任意選択で、関心領域における境界誤り領域の座標を直接使用して、第2のX線照射用にコリメータを設定する。この手法によって、切り落としの誤りを補正するための余分なX線照射が最小限になる。しかしながら、これには、最終画像において重要な領域に及び得る画像縫合ラインが必要になる。したがって、任意選択で、境界誤り領域の座標は、関心領域全体の幅の5%、10%、15%、20%、25%などの品質マージンだけ、第1のX線画像データの視野内に拡大される。X線源をチルト、パン、又は平行移動させるためのコマンドを生成することによって更新視野をさらに設定するには、たとえば、当業者に知られているように、追加のルックアップテーブル又は最適化手法が必要になる。
【0073】
装置30は、任意選択で、X線源内の可視光源48又は線源制御シャッタの制御を可能にするためのインターフェースを備える。装置30は、任意選択で、X線源44上の調整可能なコリメータ要素Cを制御するための制御インターフェースを備える。
【0074】
そのため、装置30は、X線システムの視野を調整することが可能なサーボモータ及び/又はアクチュエータとインターフェースすることができる。
【0075】
装置30に備えられる処理ユニット32は、本態様のタスク専用の、又はX線システムを制御するために使用される従来のオペレーティングシステムと共有される、従来のCPUプロセッサでもよい。この装置はパーソナルコンピュータ(PC)でもよい。
【0076】
処理ユニット32は複数のプロセッサを備えてもよく、たとえば、視野制御インターフェースとインターフェースするなどの単純なタスクは汎用プロセッサによって実行され、X線画像データを解剖学的モデルと比較するなどの計算集約的なタスクは、グラフィック処理ユニット、デジタル信号プロセッサ、又は他の形態の加速プロセッサによって実行される。
【0077】
装置30は、解剖学的モデルを処理ユニットに提供することを可能にするためのデータインターフェースをさらに備えてもよい。たとえば、解剖学的モデルは、安全なインターネットリポジトリ、ローカルの病院データリポジトリなどからダウンロードすることができる。解剖学的モデルは、WLAN、LAN又はPACSシステムを介して装置30に通信される。解剖学的モデルは、外部ディスクドライブ、CD−ROM、又はUSBスティックによって装置30に提供されてもよい。このようにして、解剖学的モデルを継続的に更新することが可能である。
【0078】
動作に際して、患者はX線システム35の視野36内に配置される。任意選択でX線源内の光源48を使用して、患者をX線検出器50の前に最初に位置決めした後、X線撮像源44からX線放射線を患者36に照射することによって、第1のX線画像が取得される。X線検出器50は2Dエリア内の受光強度を検出する。X線検出器50は、データリンク52を使用して検出したデータを装置30に送信する。このようにして、第1のX線画像は、X線システムの初期視野状態において取得された第1のX線画像データによって表される。
【0079】
処理ユニット32は第1のX線画像データを受信し、このX線画像データを解剖学的モデルと比較する。
【0080】
関連する解剖学的構造を検出するための多くの自動化された方法が適用され得ることは理解されよう。適用される典型的な方法は、探索している解剖学的構造のいくつかの要素が第1のX線画像に存在しない場合でも、選択された解剖学的構造、たとえば肺野の境界、又は選択された解剖学的構造の一部を識別することが可能なものである。
【0081】
一例として、国際公開第2014/033614号パンフレットでは、患者の解剖学的構造の確率的アトラスが基準座標系として使用される手法が論じられている。これにより、患者から撮影されたX線視野内の要素を確率的アトラス内の要素と比較することが可能になる。このようにして、第1のX線画像データ内に存在する解剖学的要素は、確率的アトラス内の要素と照合され識別される。
【0082】
任意選択で、(たとえば、X線源の視準が不適切なことによる)初期視野状態の誤りのせいで第1のX線画像データ内の特徴が不完全であっても、第1のX線画像の視野内で検出された特徴が照合される。
【0083】
この手法は、不完全な画像が与えられた場合に、第1のX線画像の視野を信頼性高くロバストに推定するようにする。
【0084】
第1のX線画像を解剖学的モデル(たとえば、確率的アトラス)と比較することによって、初期視野状態における欠損を識別し、改善された提案視野を規定することが可能になる。そのため、第1のX線画像データと解剖学的モデルとの比較に基づいて、第1のX線画像の端部における境界誤り領域を導き出すことができる。境界誤り領域は、たとえば、有用な情報が内部で又は隣で欠落している画像の一部を表す。たとえば、境界誤り領域は、第1の画像データ内で肺葉が切り取られている位置を規定することができる。
【0085】
一例では、境界誤り領域は、第1のX線画像データにおいてロバストに一致しない解剖学的モデル又は確率的アトラス内のエリアの周囲に矩形の「境界ボックス」をプロセッサがはめ込むことによって提供される。境界ボックスの座標は、視野の座標に置き換えられる。次いで、更新視野パラメータが生成される。
【0086】
処理ユニット32は、関心領域における境界誤り領域の位置に基づいて、更新視野状態を生成する。更新視野状態は、関心領域内の視野の変更された範囲を反映する。処理ユニット32は更新視野状態を、チルト(αS)、パン(βS)、高さ(ZS)、側方平行移動(XS)、前後平行移動(YS)、検出器高(ZD)及び視準設定(C)を設定するための更新されたパラメータ内に表現する。
【0087】
たとえば、これらの更新されたパラメータは、第2のX線照射でカバーされる必要がある視野内の領域間のルックアップテーブル又は補間関数と、チルト(αS)、パン(BS)、高さ(ZS)、側方平行移動(XS)、前後平行移動(βS)、検出器高(ZD)、及び視準設定(C)についての設定とに基づいて生成される。
【0088】
任意選択で、個々のパラメータのみが変更される。たとえば、更新視野状態は、視準要素Cの変更のみに基づいて生成することができる。次いで、処理ユニット32は、視準要素Cを変更する必要がある場合、更新視野状態をX線撮像システム、たとえばX線源44に送信する。処理ユニット32は、更新視野状態を設定した場合に、X線撮像装置を使用して対象者の関心領域の第2のX線画像を取得する。
【0089】
処理ユニット32は、第1のX線画像データ及び第2のX線画像データを結合して、異なる視野で撮影された2つの別々のX線画像の結合による合成視野を有する画像を生成することによって、画像処理演算を完了する。たとえば、画像縫合アルゴリズムを使用して画像を結合する。
【0090】
任意選択で、更新視野状態の生成は、視準要素Cの位置を更新することを含む。
【0091】
任意選択で、更新視野状態の生成は、X線源44のチルト(αS)の調整を実行することを含む。
【0092】
任意選択で、更新視野状態の生成は、X線撮像源44のパン(βS)を変更することを含む。
【0093】
任意選択で、更新視野状態の生成は、X線撮像源44の高さ(ZS)を変更することを含む。
【0094】
任意選択で、更新視野状態の生成は、X線撮像源44の水平方向の平行移動(XS)を調整することを含む。
【0095】
任意選択で、更新視野状態の生成は、X線源44の前後位置(YS)を調整することを含む。
【0096】
任意選択で、更新視野状態の生成は、X線検出器の高さ(ZD)を調整することを含む。
【0097】
視野状態の前に挙げたサブコンポーネントの任意の組み合わせを、処理ユニット32によって単独で又は組み合わせて調整することによって、更新視野状態を生成してもよいことは理解されよう。
【0098】
任意選択で、コリメータは単一の軸を有し、更新視野状態の生成は、単一のシャッタを更新後の位置に移動させることを含む。
【0099】
任意選択で、コリメータ要素Cは2軸コリメータを備える。
【0100】
任意選択で、更新視野状態の生成は、欠落している解剖学的構造を第2のX線画像の照射で撮影できるように、境界誤り領域を含む更新視野状態を生成することを含む。
【0101】
任意選択で、更新視野状態の生成は、境界誤り領域の位置を含む視野状態であって、第1のX線画像を作成する際にX線撮像装置によって以前に撮像された関心領域の一部又は全部を除外した視野状態を生成することを含む。
【0102】
そのため、更新視野状態を提供することによって、関心領域の一部のみを使用して第1のX線画像を拡張することができ、又はX線画像をその全範囲にわたって、欠落しているエリアをさらに含むように再撮影することができる。代替的には、手法を組み合わせることによって、欠落している部分と、最初に撮像されたエリアの一部とを含むX線画像を再撮影することが可能になる。
【0103】
図5に、X線画像の取得についての説明図を提供する。第1段階60において、前後の配置で患者の背中に初期視準パターンが提供されていることが分かる。1回目の照射62が取得される。1回目の照射は初期視野状態で、たとえば、初期視準設定Cで取得される。画像64に示すように、第1のX線画像62は解剖学的モデルと比較される。画像64は、肺領域66の点線の輪郭が、境界誤り領域を表す切り取り部分68を含むことを示す。肺の欠落している範囲の位置は解剖学的モデルから推測することができるので、境界誤り領域に広がる更新視野状態が生成される。処理ユニット32は、70においてX線システムの視野状態を更新し、第2のX線画像72を取得する。第2のX線画像は肺の解剖学的構造の欠落している要素を含む。72に示す画像は上述のオプションを反映しており、ここで、更新視野は前の(第1の)X線画像から欠落しているデータのみを取り込んでいる。しかしながら、第2のX線画像は、第1のX線画像の視野内に及んでもよい。
【0104】
最後に、画像74は、第1のX線画像及び第2のX線画像を縫合した後に提供される完全な視野の照射を表す。
【0105】
図5に示すように、最初に視野が誤って設定された場合であっても、2つのX線画像の合成として完全な視野が提供される。
【0106】
換言すれば、1回目の照射を取得した後、画像内に存在すると想定される重要な解剖学的特徴を検出するための自動検査が行われる。解剖学的構造の一部が欠落している場合、たとえば、X線源の視準要素などを自動的に再配置することができ、オペレータは、1回目の照射には意図せず含まれなかった視野の一部のみが取得される2回目の照射を行うことができる。最後に、2回の照射からの画像を結合して、視野画像の合成を生成することができる。
【0107】
任意選択で、解剖学的モデルは複数の解剖学的要素を表す確率的解剖学アトラスを含み、処理ユニット32は、第1のX線画像の一部を確率的解剖学アトラス内の解剖学的要素と比較するようにさらに構成される。
【0108】
確率的解剖学アトラスは、解剖学的要素又は欠落している解剖学的要素のロバストな識別を実現する。
【0109】
任意選択で、処理ユニット32は、解剖学的モデル及び/又は確率的解剖学アトラスにおいて、第1のX線画像データから欠落している想定要素又は想定要素の一部を識別するようにさらに構成され、処理ユニット32は、関心領域の一部からの解剖学的モデル及び/又は確率的解剖学アトラスの外挿に基づいて、第1のX線画像データにおける境界誤り領域を決定するようにさらに構成される。
【0110】
換言すれば、解剖学的モデル及び/又は確率的解剖学アトラスにおいて想定要素又は想定要素の一部が識別されると、不適切な初期視野状態(たとえば、不適切な視準設定)によって意図せず視野から切り落とされた関心領域内のエリアは、解剖学的モデル及び/又は確率的解剖学アトラスを参照して規定することができる。
【0111】
任意選択で、処理ユニット32は、境界誤り領域の特性に基づいて第1のX線画像データの画像完成指標を生成するようにさらに構成され、第2のX線画像データは、画像完成指標が画像完成条件を上回った場合に処理ユニットによって取得される。
【0112】
したがって、境界誤り領域において欠落している画像の量が最低限である場合、第2のX線画像を撮影する必要がない場合がある。
【0113】
任意選択で、画像完成条件は、第1のX線画像データ内に存在する解剖学的要素の99%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%などとして定義することができる。代替的には、画像完成条件は、解剖学アトラスと組み合わせて患者固有のデータを使用することができる。関心領域の患者固有の部分が第1のX線画像に含まれている場合に、画像完成条件を満足することができる。代替的な規則ベースの構成を可能にするために、ユーザ固有及び/又は機関固有のやり方で規則を定義及び構成することができる。
【0114】
任意選択で、処理ユニット32は、画像縫合アルゴリズムを使用して第1のX線画像データ及び第2のX線画像データを結合するようにさらに構成される。画像縫合アルゴリズムは、第1のX線画像データを第2のX線画像データと位置合わせし、2つの画像を互いに較正し、次いで2つの画像を混合することを必要とする。
【0115】
画像縫合を実行するための適切な画像処理アルゴリズムは当業者に知られている。
【0116】
したがって、第1のX線画像データ及び第2のX線画像データから合成視野が生成される。
【0117】
任意選択で、処理ユニット32は、関心領域において第1のX線画像データに隣接する第2のX線画像データを提供するように更新視野状態を選択するよう構成される。
【0118】
そのため、第1のX線画像データは、関心領域において第2のX線画像データと共通の境界を共有するが、重ならない。そのため、第1のX線画像内に既に存在する不要な情報は第2のX線画像内で重複しないので、このオプションでは患者に加えられる線量が減少する。
【0119】
図6b)に、先の段落で論じたオプションによる合成視野の組み立てを示す。具体的には、初期視野80によって、左肺部分が撮影されたエリア82と除外されたエリア84とに分割されていることが分かる。そのため、解剖学的モデルと比較した後、初期視野80と隣接した関係にある境界誤り領域86が規定される。これにより、更新視野を計算し、視準設定を調整して、欠落している肺領域90を包含する更新視野88を提供することが可能になる。視野80及び視野88から撮影された画像を縫合した後、合成画像92が提供される。初期視野80と、更新視野88によって覆われるエリアとは、このオプションでは互いに排他的であることが分かる。これには、2回目の照射を行う場合にX線放射線被曝が最小限に抑えられるという利点がある。
【0120】
任意選択で、処理ユニット32は、関心領域の少なくとも一部にわたって第1のX線画像データと重なる第2のX線画像データを提供するように、更新視野状態を選択するよう構成される。
【0121】
初期視野及び境界誤り領域が臨床的に重要な関心領域の特徴に干渉している場合、その境界において第2の(更新)視野を生成することは有益ではない場合があることは理解されよう。必然的に、画像縫合アルゴリズムの使用時にいくらかの劣化が生じ、これを臨床的に関心のある任意の特徴から離して配置することが好ましい。
【0122】
したがって、
図6a)に、肺96の一部が除外された初期視野94を示す。前述のように、解剖学的モデルを使用して、肺96の一部が初期視野から欠落していることが決定され、境界誤り領域は関心領域全体の中の領域98として規定される。
【0123】
境界誤り領域における特徴が臨床的に関心があるものであると自動認識することによって、又はプロセッサ32によって取得された患者固有のデータを使用して、第2のX線画像データを取得するための更新視野が、関心領域全体の中の領域100として生成される。領域100は領域94と部分的に重なっていることが分かる。そのため、縫合境界102は、境界誤り領域98内の左肺葉の領域内ではなく、2つの肺の間の中央分割線の下にある。これが有利なのは、たとえば、確実に識別されなければならない臨床病理が境界誤り領域に存在する場合である。この手法では、患者のX線量がわずかに増えるが、より鮮明なX線画像の利益が提供されることは理解されよう。
【0124】
更新時に隣接する視野、又は重なる更新視野を提供するか否かに関する判定は、解剖学的モデル又は確率的アトラスに基づいて半自動化又は自動化される。
【0125】
図7に、視準誤りを有する1回目の照射104を示す。確率的アトラスモデル106を使用して、1回目の照射104の視野が照合される。確率的アトラスモデルは、後続の照射のために視野をどのように構成するかについて複数のオプションを提供する。第1のオプション108では、隣接画像110が肺葉自体を通過する線112で縫合されるように視野が選択される。代替的には、関心領域全体に重なる画像116をもたらす第2のオプション114が提供され、画像縫合ライン118が実質的に関心領域内の脊椎エリアを走ることになる。
【0126】
当然ながら、視野完成判定エンジンは、3つ以上の視野オプションを提供してもよい。視野完成判定エンジンは、前述の視野の自由度のうちのいずれかを使用してもよい。視野完成判定エンジンは、追加のX線量への被曝と、最適な画像縫合位置とをトレードオフするように構成されてもよい。
【0127】
任意選択で、視野完成判定エンジンは、結合線112又は118を画像の適切な位置に配置可能にするために、患者固有のデータを受信するように構成される。
【0128】
任意選択で、処理ユニット32は、解剖学的モデル及び/又は確率的解剖学アトラスを使用して第1のX線画像データ内の画像結合領域を識別し、画像結合領域にさらに基づいて更新視野状態を生成するようにさらに構成され、第1のX線画像データ及び第2のX線画像データは画像結合領域に沿って結合される。
【0129】
任意選択で、処理ユニット32は、初期及び/又は更新視野状態に基づいて人工的な結合領域マーカを出力画像に付加するようにさらに構成され、結合領域マーカは、出力画像において歪みの可能性のある領域をユーザに示すものである。
【0130】
したがって、画像の特定の領域が2つの視野の合成から生成されていることをユーザに警告することが可能であり、医療専門家が画像のその部分からの情報をより慎重に扱うことが可能になる。
【0131】
人工的な結合領域マーカは、たとえば、出力画像において半透明の棒状領域、又は退色した領域として実現されてもよいことは理解されよう。さらに、結合領域マーカは、出力画像において点線又はテキスト注釈が与えられてもよい。
【0132】
任意選択で、処理ユニット32は、3Dカメラから対象者の3D光学画像データを受信するようにさらに構成され、初期及び/又は更新視野状態は、3D光学画像データにおける対象者の位置にさらに基づく。
【0133】
提案した手法の拡張は、患者皮膚面の光学検知に基づく、視準設定などの視野設定のための技術を組み合わせたものである。そのような手法は、国際公開第2014/033614号パンフレットで論じられている。光学視野設定を使用するそのような手法によって、患者の光学評価(ビデオ又は写真の自動分析によるもの)に基づいて視野設定を位置決めすることが可能になる。しかしながら、患者の光学評価は患者の外部の皮膚面を画定するのみであり、たとえば、肺の大きさは患者皮膚面の位置では完全に決定できないので、肺の位置を完全に推定することは不可能であることが多い。このように、生理的状態が異なる患者は、体内の肺の範囲及び位置が著しく変動する場合がある。そのような自動化システムが誤った過剰な視野補正(たとえば、過剰な視準)であると決定した場合、本手法によって、患者がX線検出器から離れるよう再配置される前に、2回目の照射を行うことが可能になる。
【0134】
任意選択で、処理ユニット32は、入力デバイスから再照射コマンドを受け取るようにさらに構成され、プロセッサは、再照射コマンドが入力デバイスから受け取られるまで第2のX線画像データを取得しないように構成される。
【0135】
オペレータは提案した手法において依然として重要な役割を果たしており、更新視野設定を評価し確認するための法的判断に必要とされることが多い。
【0136】
任意選択で、更新視野設定は、X線撮像システム内の導光体によって提供される視覚的フィードバックによってオペレータに提供することができる。次いで、オペレータは入力デバイスを使用して2回目の照射を許可する。これにより、提案した手法の安全性が高まる。
【0137】
任意選択で、X線撮像装置44は調整可能なコリメータを備え、初期視野状態は第1の調整可能なコリメータ設定を含み、処理ユニット32は、処理ユニットを使用して第2の調整可能なコリメータ位置設定を生成することによって、更新視野状態を生成するように構成され、処理ユニット32は、第2の調整可能なコリメータ位置設定をX線撮像装置の調整可能なコリメータに送信することによって、X線撮像装置の視野を調整するようにさらに構成される。
【0138】
本発明の第2の態様によれば、X線撮像システム35が提供される。X線撮像システム35は、
− 目標位置36に向けて調整可能な視野を有するX線源44と、
− 前述の態様又はオプションのうちの1つに記載した合成視野を有するX線画像を生成するための装置30と、
− X線源から放出されたX線を受けるために目標位置36の背後に配置されるX線検出器50と
を備える。
【0139】
X線撮像システム35は第1のX線画像データを装置30に提供するように構成され、装置30は目標位置の視野を調整可能にするために更新視野状態をX線源44に提供するように構成され、X線撮像システムはX線画像を生成するための装置30に第2のX線画像情報を提供するように構成され、装置30は合成視野を有する関心領域の出力画像を提供するように構成される。
【0140】
任意選択で、X線システム35は、装置30に動作可能に接続されたコンピュータモニタなどの出力閲覧手段54をさらに備える。これにより、第1のX線データ及び第2のX線データを見ることが可能になる。
【0141】
本発明の第3の態様によれば、合成視野を有するX線画像を取得するための方法が提供される。この方法は、
a)X線撮像装置を使用して対象者の関心領域の一部の第1のX線画像データを取得すること(120)であって、第1のX線画像データは、調整可能な視野が初期視野状態に設定されたX線撮像装置を使用して取得される、取得すること(120)と、
b)第1のX線画像データを解剖学的モデルと比較すること(122)と、
c)第1のX線画像データと解剖学的モデルとの比較に基づいて第1のX線画像データに隣接する境界誤り領域を規定すること(124)と、
d)関心領域における境界誤り領域の位置に基づいて更新視野状態を生成すること(126)と、
e)更新視野状態をX線撮像装置に送信すること(128)と、
f)送信された更新視野状態に設定された場合にX線撮像装置を使用して対象者の関心領域の第2のX線画像データを取得すること(130)と、
g)第1のX線画像データ及び第2のX線画像データを結合して合成視野を有する関心領域の出力画像を取得すること(132)と
を含む。
【0142】
任意選択で、解剖学的モデルは複数の解剖学的要素を表す確率的解剖学アトラスを含み、ステップb)は、
b1)第1のX線画像の一部を確率的解剖学アトラス内の解剖学的要素と比較すること
をさらに含む、第3の態様の方法が提供される。
【0143】
任意選択で、第3の態様の方法は、
b2)解剖学的モデル及び/又は確率的解剖学アトラスにおいて、第1のX線画像データから欠落している想定要素又は要素の一部を識別すること
をさらに含み、ステップc)において、関心領域の一部からの解剖学的モデル及び/又は確率的解剖学アトラスの外挿に基づいて、第1のX線画像データ内の境界誤り領域が規定される。
【0144】
任意選択で、第3の態様の方法は、
c1)境界誤り領域の特性に基づいて第1のX線画像データの画像完成指標を生成すること
をさらに含み、ステップf)において、第2のX線画像データは、画像完成指標が画像完成条件を上回った場合に取得される。
【0145】
任意選択で、ステップg)において、画像縫合アルゴリズムを使用して第1のX線画像データ及び第2のX線画像データが結合される、第3の態様の方法が提供される。
【0146】
任意選択で、関心領域において第1のX線画像データに隣接する第2のX線画像データを提供するように、更新された撮像装置コリメータ設定が選択される、第3の態様の方法が提供される。
【0147】
任意選択で、関心領域の少なくとも一部にわたって第1のX線画像データと重なる第2のX線画像データを提供するように、更新された撮像装置コリメータ設定が選択される、第3の態様の方法が提供される。
【0148】
任意選択で、第3の態様の方法は、
c2)解剖学的モデル及び/又は確率的解剖学アトラスを使用して第1のX線画像データ内の画像結合経路を識別することと、
d1)画像結合経路にさらに基づいて、更新された撮像装置コリメータ設定を生成することと
をさらに含み、
ステップG)において、第1のX線画像データ及び第2のX線画像データは画像結合経路に沿って結合される。
【0149】
任意選択で、第3の態様の方法は、
g1)初期の及び/又は更新されたコリメータ設定に基づいて、人工的な結合領域マーカを出力画像に付加することであって、結合領域マーカは、出力画像において歪みの可能性のある領域をユーザに示すものである、追加すること
をさらに含む。
【0150】
任意選択で、第3の態様の方法は、
a1)3Dカメラから対象者の3D光学画像データを受信することであって、初期の及び/又は更新されたコリメータ設定は、3D光学画像データにおける対象者の位置にさらに基づく、受信すること
をさらに含む。
【0151】
任意選択で、第3の態様の方法は、
h)出力画像をユーザに表示すること
をさらに含む。
【0152】
任意選択で、第3の態様の方法は、
e1)ユーザから「再照射」コマンドを受信すること
をさらに含み、ステップf)は、「再照射」コマンドがユーザから受け取られるまで実行されない。
【0153】
第4の態様によれば、第1又は第2の態様で論じた処理ユニット及び/又はX線システムを制御するためのコンピュータプログラム要素であって、この処理ユニット及び/又はシステムによって実行された場合に、第2の態様の方法を実行するように構成される、コンピュータプログラム要素が提供される。
【0154】
第5の態様によれば、第4の態様で論じたコンピュータプログラム要素が記憶された、コンピュータ可読媒体が提供される。他の態様では、前述の実施形態のうちの1つに従って論じた、第2の態様の方法又はその実施形態の方法のステップを適切なシステム上で実行するように構成されることを特徴とする、コンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素が提供される。
【0155】
そのため、コンピュータプログラム要素は、コンピュータユニットに記憶されてもよく、これも一実施形態の一部であってもよい。このコンピューティングユニットは、上述のステップを実行する又は実行を誘発するように構成されてもよい。また、上述の装置の構成要素を動作させるように構成されてもよい。コンピューティングユニットは、自動的に動作するように、及び/又はユーザの命令を実行するように構成することができる。計算プログラムは、データプロセッサのワーキングメモリにロードされてもよい。したがって、第2の態様の方法を実行するために、データプロセッサが装備されてもよい。
【0156】
この例示的な実施形態は、たとえば、最初から本発明を使用するように構成されるコンピュータプログラムと、ソフトウェア更新によって既存のプログラムから本発明を使用するプログラムへと構成されるコンピュータプログラムとの両方を含む。
【0157】
このようにして、コンピュータプログラム要素は、上記で論じた第2の態様に従って必要とされる手順を果たすために必要とされる全ての必要なステップを提供することができる。本発明のさらなる例示的な実施形態によれば、CD−ROMなどのコンピュータ可読媒体が与えられる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータプログラム要素が記憶されたコンピュータ可読媒体を有し、このコンピュータプログラム要素は前のセクションで説明している。
【0158】
コンピュータプログラムは、ハードウェアと共に供給されるか又はその一部である光記憶媒体又は固体媒体などの適切な媒体に記憶され、及び/又はそれによって配布されてもよい。また、コンピュータ可読媒体は他の形態で、たとえば、インターネットを介して、又は他の有線若しくは無線の電気通信システムを介して配布されてもよい。
【0159】
また、コンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブなどのネットワークを介して提供することができ、そのようなネットワークからデータプロセッサのワーキングメモリにダウンロードすることができる。本発明の態様のさらなる例示的な実施形態によれば、コンピュータプログラム要素をダウンロード可能にするための媒体が提供され、このコンピュータプログラム要素は、本発明の前述の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように構成される。
【0160】
本発明の実施形態は異なる主題に関して説明していることに留意されたい。具体的には、方法タイプの特徴に関して説明している実施形態もあれば、装置タイプの特徴に関して説明している実施形態もある。当業者であれば、上記及び下記の説明から、特記のない限り、1つのタイプの主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、1つのタイプの主題に属する特徴の他の任意の組み合わせも、本出願内で開示されているとみなされていると推測するであろう。全ての特徴を組み合わせて、特徴の単純な総和以上の相乗効果を提供することができる。
【0161】
図面及び上記の説明において本発明を詳細に図示及び説明してきたが、そのような図示及び説明は、限定的なものではなく説明的又は例示的なものとみなされるべきである。本発明は開示した実施形態に限定されない。
【0162】
開示した実施形態に対する他の変形例は、本開示、図面、説明、及び従属請求項を検討することから、特許請求した発明を実践する際に、当業者によって理解され実現することができる。
【0163】
特許請求の範囲において、「備える」という語は他の要素又はステップを排除するものではない。不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載のいくつかの項目の機能を果たしてもよい。特定の措置が相異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの措置の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。特許請求の範囲内のいかなる参照符号も、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。