特許第6884303号(P6884303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6884303生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置及びその運用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884303
(24)【登録日】2021年5月14日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置及びその運用方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20210531BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   B09B3/00 304Z
   B09B3/00ZAB
   C02F11/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-115890(P2019-115890)
(22)【出願日】2019年6月5日
(65)【公開番号】特開2020-116562(P2020-116562A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2020年10月1日
(31)【優先権主張番号】特願2019-21076(P2019-21076)
(32)【優先日】2019年1月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510143125
【氏名又は名称】ニイヌマ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】新沼 利英
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 宗一
【審査官】 齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−061807(JP,A)
【文献】 特開2003−260448(JP,A)
【文献】 特開2006−150253(JP,A)
【文献】 特開2000−334433(JP,A)
【文献】 特開2004−105881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
C02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ゴミ、または、生ゴミ及びアルカリ性固形チップの混合物を含む処理対象物を投入する投入口と、撹拌手段と、pHが12以上のアルカリ水を間歇的にシャワーリングする手段と、底部に設けられ、貫通孔を有する底板とを有する撹拌槽と、一方の方向に向けて高さが低くなる隔壁により分割されてなる複数の区画と、前記複数の区画のうちの最も高い隔壁を有する区画に、前記貫通孔を通過した前記処理対象物を含む前記アルカリ水を導入する手段と、前記複数の区画のうちの最も高い隔壁を有する区画を含む少なくとも一つの区画に設けられてなる曝気手段と、前記複数の区画のうちの最も高い隔壁を有する区画以外の区画から、最も高い隔壁を有する区画に、前記貫通孔を通過した前記処理対象物を含む前記アルカリ水を還流する手段と、前記複数の区画のうちの最も低い隔壁を有する区画に接続されてなる沈殿槽とを有する循環曝気分解処理槽を有することを特徴とする、生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置。
【請求項2】
前記貫通孔は内径が0.5〜1.5mmであることを特徴とする、請求項1に記載の生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置。
【請求項3】
前記アルカリ水に溶存するアルカリ性物質は、アルカリ溶出槽に充填した貝殻または卵殻の少なくともいずれかを焼成した材料から溶出してなることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置。
【請求項4】
前記アルカリ性固形チップは、カルシウム化合物またはマグネシウム化合物のいずれかを含む成分を焼成した固形チップであることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のアルカリ水分解溶液化装置。
【請求項5】
前記アルカリ水の1日当たりのシャワーリング量は、処理対象物の重量の10倍以上であり、1日当たりのシャワーリングの回数は、40回以上であることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置の運用方法。
【請求項6】
前記循環曝気分解処理槽の容量は、24L以上であり、前記アルカリ水の還流量は、20L/分以上であることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置の運用方法。
【請求項7】
前記アルカリ性固形チップの投入量は、処理対象物の投入重量の50%以上であることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置の運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用から業務用まで、小規模から大規模の生ゴミ処理装置に関するもので、特に生ゴミをアルカリ水とアルカリ性固形チップを用いて分解し、溶液化して処理する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭での調理はもとより、レストラン、給食センターにおいて、調理は不可欠の行為である。食材である野菜や魚介類は、野菜の場合では、根などの食用に不敵な部分を除き、魚の場合では、頭部や骨などを除いた状態で販売されることが多い。しかしながら、これら食材を扱う調理場においては、野菜や魚介類などの屑の発生を、完全に抑制するのは極めて困難で、生ゴミとして自治体や処理業社などが、収集して処理するのが一般的である。
【0003】
収集した生ゴミは、一部で肥料などとして再利用されることもあるが、焼却や埋め立てなどの方法で処理されることがあり、特に大都市などの、人口が集中している地域では、環境への負荷の問題で、生ゴミの減量が課題となっている。
【0004】
このような課題に対処する技術として、家庭やレストラン、給食センターなど、これら食材を扱う発生源で減量するという方法もある。例えば、特許文献1には、適量の水とともに粉砕した厨芥の処理工程の再検討により、微細生ゴミおよび余剰汚泥の有効利用を可能とする厨芥処理システムが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ディスポーザからの粉砕生ごみを含む排水を中継ポンプ槽を介して固液分離槽に一旦貯留し、上澄み液を曝気処理して下水に放流するとともに、曝気処理された処理水に含まれる汚泥を沈殿させて、固液分離槽に返送する条件を最適化することで、分離流入水量や流入ごみ量の低下時における、臭気の発生や排水処理水質の低下を低コストで比較的簡単な制御により防ぐことが可能な、ディスポーザ排水処理システムが開示されている。
【0006】
しかしながら、ここに開示されている生ゴミ処理システムは、構造的にシンプルな処理システムを特徴としており、大規模な業務用に適用するには、検討の余地があると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−334433号公報
【特許文献2】特開2004−105881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の課題は、シンプルな処理システムで、業務用などにも適用できる大規模な生ゴミ処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
生ごみの大部分は食材の屑である。食事により摂取する栄養素の主なものは、炭水化物、タンパク質、脂肪であり、本発明者らは、これらをアルカリによる加水分解や、酸化による分解で、低分子化することで、微生物を用いることなく、生ゴミを処理する方法を、鋭意検討した結果、本発明をなしたものである。
【0010】
本発明は、処理対象物を投入する投入口と、撹拌手段と、pHが12以上のアルカリ水を間歇的にシャワーリングする手段と、底部に設けられ、貫通孔を有する底板とを有する撹拌槽と、一方の方向に向けて高さが低くなる隔壁により分割されてなる複数の区画と、前記複数の区画のうちの最も高い隔壁を有する区画に、前記貫通孔を通過した前記処理対象物を含む前記アルカリ水を導入する手段と、前記複数の区画のうちの最も高い隔壁を有する区画を含む少なくとも一つの区画に設けられてなる曝気手段と、前記複数の区画のうちの最も高い隔壁を有する区画以外の区画から、最も高い隔壁を有する区画に、前記貫通孔を通過した処理対象物を含む前記アルカリ水を還流する手段と、前記複数の区画のうちの最も低い隔壁を有する区画に接続されてなる沈殿槽とを有する循環曝気分解処理槽を有することを特徴とする生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置である。
【0011】
また、本発明は、前記投入口は、アルカリ性固形チップの投入手段、またはアルカリ性固形チップを混合した生ゴミの投入手段を添えてなることを特徴とする、前記の生ゴミのアルカリ水分解溶液化装置である。
【0012】
また、本発明は、前記貫通孔の内径が0.5〜1.5mmであることを特徴、前記の生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置である。
【0013】
また、本発明は、前記アルカリ水に溶存するアルカリ性物質は、アルカリ溶出槽に充填した貝殻または卵殻の少なくともいずれかを焼成した材料から溶出してなることを特徴とする、前記の生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置である。
【0014】
また、本発明は、前記アルカリ性固形チップは、カルシウム化合物またはマグネシウム化合物のいずれか含む成分を焼成した固形チップであることを特徴とする、前記のアルカリ水分解溶液化装置である。
【0015】
また、本発明は、前記アルカリ水の1日当たりのシャワーリング量は、処理対象物の重量の10倍以上であり、1日当たりのシャワーリングの回数は、40回以上であることを特徴とする、前記の生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置の運用方法である。
【0016】
また、本発明は、前記循環曝気分解処理槽の容量が、24L以上であり、前記アルカリ水の還流量が、20L/分以上であることを特徴とする、前記の生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置の運用方法である。
【0017】
また、本発明は、前記アルカリ性固形チップの投入量は、処理対象物の投入重量の50%以上であることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置の運用方法である。
【発明の効果】
【0018】
タンパク質は、アミノ酸のアミノ基とカルボキシル基とが脱水縮合して形成されるペプチ結合により、多数のアミノ酸が縮合した物質である。ペプチド結合の加水分解により、アミノ酸が得られるが、ペプチド結合は強固な結合であり、分解には触媒などが必要である。
【0019】
生体内に存在する酵素には、ペプチド結合のみを選択的に加水分解するものがあり、ほぼ中性で、生物の体温程度でも、かなりの速度でペプチド結合を加水分解することができるものもある。しかし、強アルカリ性の条件では、前記の酵素が存在しなくとも、加水分解が起こる。
【0020】
また食品の栄養素としての炭水化物は植物に由来し、炭水化物は、アルカリに対しては安定性を備えている。植物を構成する物質の多くは炭水化物であるが、脂質やタンパク質も数%含まれるため、野菜類、豆類、穀類の食品の屑に、強アルカリを作用させることにより、タンパク質のみを加水分解させることで、屑の細分化が可能であると考えられる。
【0021】
従って、本発明の生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置における攪拌槽に、生ゴミを投入して、pHが12以上のアルカリ水をシャワーリングを施すことで、生ゴミが分解され、かつ攪拌装置による機械的な粉砕により細分化が可能である。細分化され、攪拌槽の底部に設けられた貫通孔を通過した生ごみは、循環曝気分解処理槽に導入され、アルカリ成分と酸素により、さらに分解、微細化が可能で、生ゴミは、ほとんど“0”になるまで減量できる。
【0022】
また、本発明の生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置における撹拌槽に、pHが12以上のアルカリ水をシャワーリングすることに加えて、さらにアルカリ性固形チップを投入することで、槽内の強アルカリ状態を維持することにより、分解され、細分化され、撹拌槽の底部に設けられた貫通孔を通過した生ゴミは、強アルカリ状態を維持しながら循環曝気分解処理槽に導入され、アルカリ成分により、さらに分解、細分化が可能で、生ゴミは、ほとんど“0”になるまで減量できる。
【0023】
例えばアルカリ性固形チップとして、ペレット状の金属マグネシウムを用いることにより、生ゴミの分解によって、アルカリ水中のアルカリ成分が消費され、槽内のpHが低下すると、これに対応する状態で、マグネシウムが溶出するので、槽内の強アルカリ状態が維持され、前記の効果が発現される。
【0024】
また、シャワーリングに用いるアルカリ水は、貝殻や卵殻を焼成して得られる粉末を充填したアルカリ溶出槽を、通常の上水を経由させた後、攪拌槽に注入されるので、pHが12以上の強アルカリ性を発現するに十分な濃度の、アルカリ成分を含む。
【0025】
この粉末は、強アルカリ性でありながら、安全性の評価では、急性経口毒性試験、皮膚一次刺激性試験、変異原性試験、皮膚感作性試験などの試験結果により問題ないことが認められている。しかも、悪臭の原因物質である、酢酸ガス、イソ吉草酸ガス、ノネナールガス、硫化水素ガス、アセトアルデヒドガスなどについて、ガス除去性能を示すので、生ゴミに起因する臭気の問題を解消できる。
【0026】
また、アルカリ性固形チップは、カルシウム化合物またはマグネシウム化合物のいずれか含む成分を焼成した固形チップであるので、撹拌槽における生ゴミの細分化の促進につながり、さらに撹拌槽ないしは循環曝気分解処理槽内の強アルカリ状態維持により、生ゴミの分解溶液化の促進が可能で、生ゴミは、ほとんど“0”になるまで減量できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る、生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置の一例を、模式的に示した図。
図2】本発明に係る、生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置を用いて、人参を処理した場合の、経過日数と試料重量及びpHの関係を示す図。
図3】本発明に係る、生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置を用いて、湯煎を施した人参を処理した場合の、経過日数と試料重量及びpHの関係を示す図。
図4】本発明に係る、生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置を用いて、キャベツを処理した場合の経過日数と試料重量及びpHの関係を示す図。
図5】本発明に係る、生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置を用いて、玉うどんを処理した場合の経過日数と試料重量及びpHの関係を示す図。
図6】本発明に係る、生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置を用いて、茶殻を処理した場合の、経過日数と試料重量及びpHの関係を示す図。
図7】本発明に係る、生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置を用いて、米飯を処理した場合の経過日数と試料重量及びpHの関係を示す図。
図8】本発明に係る、生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置を用いて、鰺の開きを処理した場合の経過日数と試料重量及びpHの関係を示す図。
図9】本発明に係る、生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置を用いて、バナナの実を処理した場合の経過日数と試料重量及びpHの関係を示す図。
図10】本発明に係る、生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置を用いて、バナナの皮を処理した場合の、経過日数と試料重量及びpHの関係を示す図。
図11】本発明に係る、生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置を用いて、りんごを処理した場合の、経過日数と試料重量及びpHの関係を示す図。
図12】本発明に係る、生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置を用いて、長いもを処理した場合の、経過日数と試料重量及びpHの関係を示す図。
図13】本発明に係る、生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置を用いて、グレープフルーツを処理した場合の、経過日数と試料重量及びpHの関係を示す図。
図14】本発明に係る、生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置を用い て、オレンジを処理した場合の、経過日数と試料重量及びpHの関係を示す図。
図15】本発明に係る、生ゴミのアルカリ分解溶液化装置を用いて、アルカリ性固形チップを生ゴミ投入量と同量を投入した場合と投入無しの場合の、沈殿物量の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に具体的な図を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る、生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置の一例を、模式的に示した図である。この例においては、上水をアルカリ溶出槽1に導入し、pHを12以上として、シャワーリング用送水管2aにより、攪拌槽4に送水し、シャワーリング用ノズル5を介して攪拌槽4の内部にシャワーリングする。処理対象の生ゴミおよびアルカリ性固形チップは投入口6から、攪拌槽4の内部に投入され、間歇的にシャワーリングされるアルカリ水により、化学的に分解されるとともに、モータ3によって駆動される攪拌手段7により攪拌され、機械的に粉砕され、細分化される。
【0030】
粉砕され、1mm以下となった生ゴミは、底板8の貫通孔を通過して、シャワーリングされたアルカリ水とともに、攪拌処理水排出部9を経由し、攪拌処理水送水管2cにより、循環曝気分解槽10に注入される。ここに示した例では、循環曝気分解槽10は、第一の区画10a、第二の区画10b、第三の区画10c、第四の区画10d、第五の区画10eの五つの区画に分割されている。
【0031】
なお、底板8の貫通孔を通過しても、循環曝気分解槽10の方に流れきれなかった生ゴミは、洗浄用送水管2bを介して攪拌槽4の底部に導入されるアルカリ水により、強制的に循環曝気分解槽10に流し込まれる。
【0032】
細分化された生ゴミを含むアルカリ水は、第一の区画10aに注入され、水位が第一の区画10aを構成する隔壁の高さを超えると、第二の区画10bに流れ込み、以下同様に第五の区画10eまで流れ込む。ここに示した例では、第一の区画10a、第二の区画10b、第三の区画10c、第四の区画10dのそれぞれに、曝気ノズルが設けられ、エアポンプ11から送られるエアにより、それぞれの区画に滞留する、細分化された生ごみを含むアルカリ水が曝気される。これによって生ゴミは、酸素による分解作用により、さらに分解、細分化される。
【0033】
また、ここに示した例では、第二の区画10b、第三の区画10c、第四の区画10dのそれぞれの下部には、循環ポンプ12に接続された循環曝気分解槽排水管2dが配されていて、曝気処理が施されている、生ゴミを含むアルカリ水が、循環送水管2eを経由して、第一の区画10aに戻され、循環曝気分解槽10の内部を循環し、生ゴミのアルカリ水と酸素による分解が継続される。
【0034】
第五の区画10eの下部には、沈殿槽13が設けられ、細分化され沈殿した生ゴミは、アルカリ水とともに、沈殿液輸送管2fにより、投入口5に戻される。また、第五の区画10eには、環境に放流可能な程度の水質となった上澄み液を排出するための放流管14が設けられている。
【0035】
次に、実際に数種類の生ゴミを図1に示した生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置で処理した結果について説明する。容量が5.6Lの攪拌槽4に、ここでは試料の生ゴミを、1日に700g投入し、pHが12のアルカリ水を、30分毎にシャワーリングし、1日の合計量が35Lとなるようにした。
【0036】
攪拌槽4の底板8には、直径が1mmの貫通孔が設けられ、アルカリ水の化学的な作用と攪手段7による機械的な作用により細分化された生ゴミが、貫通孔を通過して循環曝気槽10の第一の区画10aに、アルカリ水とともに注入される。その後は、前記のように、生ゴミの細片を含むアルカリ水は、隔壁から溢流して第二の区画10bから第五の区画10eまで順次送水され、循環しながら、曝気処理を施される。
【0037】
循環曝気槽10の全体の容量は、24Lであり、循環ポンプ12を用いて、生ゴミの細片を含むアルカリ水を、ほぼ1分間で循環還流することにより、1日24時間の循環還流量は、30,000Lとなり、アルカリ水投入量が32L/日であれば、1,000日相当の長時間循環滞留となり、アルカリ水に含まれる生ゴミの分解浄化が進捗する。
【0038】
ここで、生ゴミとして使用した試料は、ディスポーザ標準生ゴミ調整法に準じたもので、にんじん、キャベツ、玉うどん、茶殻、米飯、鯵の開き(干物)、バナナ、リンゴ、長いも、グレープフルーツ、オレンジである。図2ないし図14は、それぞれの試料を本発明に係る生ゴミのアルカリ水分解溶液化処理装置で処理した際の処理日数と試料重量及びpHの関係を示す図である。また、図15は、本発明に係る、生ゴミのアルカリ分解溶液化装置を用いて、アルカリ性固形チップを生ゴミ投入量と同量を投入した場合と投入無しの場合の、沈殿物量の変化を示す図である。表1には、アルカリ性固形チップを投入した場合と、投入しない場合の、処理条件と沈殿物の量の差を示した。図15と表1に示したように、アルカリ性固形チップの投入により、沈殿物の量は、1/4まで減少する結果となった。
【0039】
【表1】
【0040】
これらの図に示した試料重量は、乾燥しないで水を含んだ状態で測定した数値である。これらの結果から、処理を行う期間はアルカリ水のpHは7以上に維持され、試料の重量は、最終的にほぼ0となることが明らかである。
【0041】
以上に、説明したように、本発明によれば、シンプルな処理システムの生ゴミ処理装置の提供が可能となり、生活排水などの環境への負荷を減少することが可能となる。なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、循環曝気槽の区画を増加するような、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・アルカリ溶出槽 2a・・・シャワーリング用送水管
2b・・・洗浄用送水管 2c・・・攪拌処理水送水管
2d・・・循環曝気分解槽排水管 2e・・・循環送水管
2f・・・沈殿液輸送管 3・・・モータ
4・・・攪拌槽 5・・・シャワーリング用ノズル
6・・・投入口 7・・・攪拌手段
8・・・底板 9・・・攪拌処理水排出部
10・・・循環曝気分解槽 10a・・・第一の区画
10b・・・第二の区画 10c・・・第三の区画
10d・・・第四の区画 10e・・・第五の区画
11・・・エアポンプ 11a・・・第一の曝気ノズル
11b・・・第二の曝気ノズル 11c・・・第三の曝気ノズル
11d・・・第四の曝気ノズル 12・・・循環ポンプ
13・・・沈殿槽 14・・・放流口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15