【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成28年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素利用等先導研究開発事業/エネルギーキャリアシステム調査・研究/溶融塩を用いた水と窒素からのアンモニア電解合成」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、多孔質構造体は、例えば、溶融塩中で気体を電気化学的に酸化または還元する電極や、安定的に気泡を発生させるための部材として利用されている。
【0003】
特開2009−84615号公報(特許文献1)には、溶融塩に微細化された水蒸気と窒化物イオン(N
3−)とを供給することによってアンモニアを合成するアンモニア電解合成装置が記載されている。このアンモニア電解合成装置では、反応を効率的に進行させるため、溶融塩に供給される水蒸気として微細化した水蒸気気泡が用いられている。一方、溶融塩に供給されるN
3−は、窒素ガスを電気化学的に還元する陰極により生成される。陰極の材質としてはニッケルが、形状としては多孔質が例示されており、窒素ガスの陰極還元反応を進行し易くするために、前記多孔質ニッケル電極の内部に直接窒素ガスを吹き込むのが好ましいとしている。
【0004】
また、特開2010−53425号公報(特許文献2)には、炭酸イオンを含む溶融塩からなる電解浴に、陰極と陽極を配置し、多孔質材料を通過させることにより気泡化させた二酸化炭素を電解浴中に吹き込むとともに、陰極と陽極の間に炭酸イオンが還元される電圧を印加して通電するステップを含む二酸化炭素中の炭素の固定方法が記載されている。この固定方法では、二酸化炭素から生じた炭酸イオンは、不活性ガスによるバブリング効果(ガスリフト)により生じた溶融塩の循環流に乗って陰極へ運ばれ、陰極還元反応により炭素と酸化物イオンを生成することが記載されている。
【0005】
また、特開2013−95961号公報(特許文献3)には、多孔質体によって形成されている陽極と、多孔質体によって形成されている陰極と、溶融塩からなる電解質を準備するステップと、陰極に窒素ガスを供給するステップと、電解質中に酸素ガスを供給するステップと、陰極と陽極の間に、陰極において窒素が還元されて窒化物イオンが生成し、陽極において酸化物イオンが酸化されて酸素が発生する電圧を印加するステップと、生成された窒化物イオンと供給された酸素とを接触させるステップとを含み、陰極は、陰極に供給された窒素ガスを電解質にまで供給することが可能であるように構成されている、電解窒素固定方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、溶融塩等の液体中に配置した多孔質構造体に対して、多孔質構造体の内部に直接気体を供給するのではなく、あらかじめ微細化した気泡を多孔質構造体外部の下方から供給し、該構造体の内部へと気泡を導入しようとする場合、浮力によって気泡は上方の多孔質構造体近傍へと移動するものの、多孔質構造体の外周を迂回する流れが生じ、この流れに沿って気泡が移動するため、多孔質体内部に導入されずに目的とする反応等に寄与しない気泡が大量に発生し、気体の利用率(多孔質構造体の下方より供給される気体量に対する、多孔質構造体内部を通って上方へ輸送される気体量の割合)が著しく低下する。
【0008】
例えば、多孔質構造体の下端と、多孔質構造体の下方に配置された気体供給部とが液体を隔てて配置されていると、気体供給部から液体中に供給される気泡化された気体は、浮力によって上方の多孔質構造体の近傍へと移動する。しかし、液体中には、多孔質構造体の下端と気体供給部の間の隙間を通って多孔質構造体の外周を迂回する流れが生じ、気泡はこの流れに沿って移動するので、気体の利用率の低下が生じる。
【0009】
また、多孔質構造体の下方に配置された気体供給部が多孔質構造体の下端に接触しており、気泡化された気体が直接、多孔質構造体に導入される場合にも、気泡は多孔質構造体の側面の孔を通って多孔質構造体から外部へ漏れだし、気体の利用率の低下が生じる。
【0010】
そこで、この発明の目的は、多孔質構造体へ、気体の利用率を向上させつつ気体を導入することが可能な気体導入装置と気体導入方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に従った多孔質構造体への気体導入装置は、液体を収容する槽と、液体に浸漬される多孔質構造体を保持する保持部と、多孔質構造体の上方において液体中に気泡化された第1の気体を供給する第1の気体供給部と、多孔質構造体の下方において液体中に気泡化された第2の気体を供給する第2の気体供給部とを備える。
【0012】
本発明に従った気体導入装置においては、保持部は、少なくとも一部が液体に浸漬される中空の筒を含み、多孔質構造体は中空の筒の下方または内部に保持され、第1の気体供給部は、筒の内部であって多孔質構造体の上方において液体中に第1の気体を供給するように構成されていることが好ましい。
【0013】
本発明に従った気体導入装置においては、筒は、多孔質構造体の上方において筒の内部と外部とが連通するように構成されていることが好ましい。
【0014】
本発明に従った気体導入装置は、構造体の外表面と筒の内表面とが接触する接触部を含み、接触部は、筒の内表面の略全周にわたって存在することが好ましい。
【0015】
本発明に従った気体導入装置においては、液体は溶融塩であることが好ましい。
【0016】
本発明に従った気体導入装置が第2の気体の電気化学的な反応を進行させることを目的とするものである場合、構造体は第2の気体を電気化学的に還元するための陰極または電気化学的に酸化するための陽極として機能するガス電極であることが好ましい。
【0017】
本発明に従った気体導入装置においては、第1の気体は水蒸気を含み、第2の気体は窒素を含むことが好ましい。
【0018】
本発明に従った気体導入装置においては、構造体は金属によって形成されていることが好ましい。また、金属はニッケルを含むことがより好ましい。
【0019】
また、本発明に従ったアンモニア電解合成装置は、上述のいずれかの気体導入装置を備え、液体は溶融塩であり、構造体は第2の気体を電気化学的に還元するための陰極または電気化学的に酸化するための陽極として機能するガス電極であり、第1の気体は水蒸気を含み、第2の気体は窒素を含む。
【0020】
また、本発明に従った多孔質構造体への気体導入方法は、少なくとも一部が液体中に浸漬された多孔質構造体の上方において液体中に気泡化された第1の気体を供給する工程と、構造体の上方において液体中に気泡化された第1の気体を供給する工程とを含む。
【0021】
本発明に従った気体導入方法は、第1の気体を供給する工程が開始された後に、第2の気体を供給する工程が開始されることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、この発明によれば、多孔質構造体へ、気体の利用率を向上させて気体を導入することが可能な気体導入装置と気体導入方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明に従った気体導入装置1は、槽10と、保持部20と、第1の気体供給部30と、第2の気体供給部40とを備える。槽10は、液体100を収容する。
【0026】
保持部20は、多孔質の構造体200を保持する。構造体200は、保持部20によって保持されて、液体100中に浸漬されている。この実施形態においては、保持部20は、中空の筒によって構成されて、少なくとも一部が液体100に浸漬されている。
【0027】
構造体200は、この実施形態では筒状の保持部20の下端から下方に延びるように保持されているが、筒状の保持部20の内部に保持されてもよい。構造体200が筒状の保持部20の内部に保持される場合には、構造体200の外表面と筒状の保持部20の内表面とが接触する接触部を含むことが好ましく、接触部は、筒の内表面の略全周にわたって存在することが好ましい。また、この実施形態においては、筒状の保持部20は、構造体200の上方において、筒の内部と外部とが連通するように開口部21を有するように構成されている。開口部の位置やサイズ、形状について特に制限は無いが、第2の気体41の供給により筒内部に生じた上昇流が、開口部を通じて筒外部へとスムーズに流出するように調節すればよい。
【0028】
第1の気体供給部30は、構造体200の上方において液体100中に気泡化された第1の気体31を供給する。この実施形態においては、第1の気体供給部30は、筒状の保持部20の内部であって構造体200の上方において、液体100中に第1の気体31を供給するように構成されている。
【0029】
第2の気体供給部40は、構造体200の下方において液体100中に気泡化された第2の気体41を供給する。なお、第2の気体41は第1の気体31と異なる気体であってもよく、同一の気体であってもよい。気体供給部40は、構造体200の下端に接触していてもよい。この場合、液体100に多孔質構造体200の側面から構造体200の内部に進入する流れを生じさせるために、筒状の保持部20の下端から下方に伸びる形態であることが好ましいが、気体供給部40に液体の流入部がある場合などは、気体供給部40は必ずしも下方に伸びるような側面を有する形態である必要はない。
【0030】
以上のように構成される気体導入装置の動作について説明する。
【0031】
まず、第1の気体供給部30が液体100中に第1の気体31を供給する工程が開始される。第1の気体31は、筒状の保持部20の内部において構造体200の上方に供給され、
図1に破線の矢印で示すように、保持部20の内部の液体100に上向きの流れを生じさせる。この流れによって、構造体200の下方の液体100が、多孔質体の構造体200の内部を通って上方へ輸送される。気体供給部40が構造体200の下端に接触している場合は、構造体200の側面近傍の液体100が多孔質体の構造体200の内部を通って上方へ輸送される。気体供給部40が構造体200の下端に接触しており、気体供給部40に液体100の流入部がある場合は、気体供給部40の下方の液体100が流入部を通じて、多孔質体の構造体200の内部を通って上方へ輸送される。
【0032】
次に、第2の気体供給部40が液体100中に第2の気体41を供給する工程が開始される。第2の気体41は、構造体200の下方に供給される。
図1に破線の矢印で示すように、第1の気体31によって生じさせられた液体100の上向きの流れによって、第2の気体41は、構造体200の下方の液体100とともに、構造体200の内部を通って、上方へ輸送される。気体供給部40が構造体200の下端に接触している場合は、気泡は液体100とともに、構造体200の内部を通って、上方へ輸送されるので、構造体200の側面から気泡が漏れ出ることが抑制される。
【0033】
なお、第1の気体31を供給する工程が開始された後に、第2の気体41を供給する工程が開始されることが好ましい。第2の気体41を供給する工程が開始された後に第1の気体31が供給する工程が開始されてもよい。ただし、多孔質構造体200の下面において、第2の気体41の気泡が合体して大きな気泡や膜となり、構造体200の内部への気体導入の障害となる可能性が高くなるため、各工程の時間的な間隔は最小限にとどめるのがよい。大きな気泡が生じた場合に備え、多孔質構造体200の下面に傾斜を形成し、大きな気泡を外方へと逃がす工夫があってもよい。
【0034】
構造体200の上方へ輸送された液体100は、
図1に一点鎖線の矢印で示すように、開口部21を通って保持部20の外に流れ出る。このようにして液体100の連続的な循環が可能になる。
【0035】
以上のように、気体導入装置1では、多孔質の構造体200の下方から供給された第2の気体41が構造体200を迂回することを防ぎ、構造体200へ、気体の利用率を向上させつつ第2の気体41を導入することができる。
【0036】
この実施形態のように、多孔質構造体200の下端と、構造体200の下方に配置された第2の気体供給部40とが液体を隔てて配置されている場合、第2の気体供給部40から液体100中に供給される気泡化された気体41は、浮力によって上方の構造体200の近傍へと移動する。構造体200の側面が、非多孔質材料で被覆されているなど、構造体200の側面において構造体200の内部と外部とが連通されていない場合には、構造体200の下方から上方への液体の流れが発生することで、気体の利用率を向上させつつ構造体200へ気体を導入することができる。構造体200の側面において構造体200の内部と外部とが連通されている場合には、構造体200の下方から上方への液体の流れが発生することで、構造体200の側面からも液体が構造体200の内部へ侵入し、構造体200の上方へと抜けていく。構造体200の下方に配置された第2の気体供給部40から液体100中に供給される気泡化された気体41は、上記の流れによって構造体200の内部へと輸送されるので、気体の利用率を向上させつつ構造体200へ気体を導入することができる。
【0037】
また、この実施形態では多孔質構造体200の下端と、構造体200の下方に配置された気体供給部40とが液体を隔てて配置されているが、多孔質構造体の下方に配置された気体供給部が多孔質構造体の下端に接触しており、気泡化された気体が直接、多孔質構造体に導入される場合には、多孔質構造体の側面において多孔質構造体の内部と外部とが連通されていることで、多孔質構造体の側面から液体が多孔質構造体の内部へ輸送され、多孔質構造体の上方へと抜けていく流れが生じ、多孔質構造体の下方に配置された気体供給部から液体中に供給される気泡化された気体は、上記の流れによって多孔質構造体の内部へと輸送されるので、気体の利用率を向上させつつ多孔質構造体へ気体を導入することができる。
【0038】
第1の気体と第2の気体の供給流量については、多孔質構造体の孔径や厚み、筒の内径(多孔質構造体の外径)と第1・第2気体供給部のサイズに応じて適宜調整されればよい。好ましくは、第1の気体の供給流量は第2の気体の供給流量の33%以上、より好ましくは67%以上、さらに好ましくは同等以上である。
【0039】
(第2実施形態)
図2に示すように、アンモニア電解合成装置2は、槽10と、保持部20と、第1の気体供給部30と、第2の気体供給部40と、陽極50と、直流電源60を備える。槽10は、液体の一例として溶融塩300を収容する。溶融塩300は、例えばLiCl−KCl−CsClの組成を有し、400℃に保たれている。なお、溶融塩300の組成や温度は目的に応じて適宜選択されればよい。
【0040】
保持部20は、多孔質金属の一例として多孔質のニッケルからなる構造体200を保持する。構造体200は、保持部20によって保持されて、溶融塩300中に浸漬されている。この実施形態においては、保持部20は、中空の筒によって構成されて、少なくとも一部が溶融塩300に浸漬されている。
【0041】
なお、保持部20に用いられる多孔質金属は、窒素ガスを還元できる金属や合金であればよく、ニッケルや鉄を含むものが好ましく、特にニッケルを含むものが好ましい。また、陰極の形状としては、ラネー触媒やMCFCの電極に用いられるような多孔質、金網状、メッシュ状が好ましく陰極の表面にPt、Ir、Ru等の触媒を担持してもよい。
【0042】
構造体200はこの実施形態においては陰極として用いられ、陽極50と電源60に電気的に接続されている。構造体200は、この実施形態では筒状の保持部20の下端から下方に延びるように保持されているが、筒状の保持部20の内部に保持されてもよい。構造体200が筒状の保持部20の内部に保持される場合には、構造体200の外表面と筒状の保持部20の内表面とが接触する接触部を含むことが好ましく、接触部は、筒の内表面の略全周にわたって存在することが好ましい。また、この実施形態においては、筒状の保持部20は、構造体200の上方において、筒の内部と外部とが連通するように開口部21を有するように構成されている。
【0043】
第1の気体供給部30は、構造体200の上方において溶融塩300中に第1の気体として水蒸気32を供給する。この実施形態においては、第1の気体供給部30は、筒状の保持部20の内部であって構造体200の上方において、溶融塩300中に水蒸気32を供給するように構成されている。
【0044】
陽極50は、一例としてニッケルフェライトによって構成され、少なくとも一部が溶融塩300に浸漬されている。陽極50は陰極である構造体200と電源60に電気的に接続されている。陽極50は、筒状の保持部20の外部の、陰極である多孔質構造体200の近傍に設置すればよく、例えば保持部20よりも内径の大きい円筒状のものが例示できる。また逆に、陽極50の周囲に多孔質構造体(陰極)と水蒸気供給部とが配置されてもよい。
【0045】
なお、陽極としては、不溶性陽極や酸素発生陽極として市販されている電極材料が使用できる。この中でも、ニッケルフェライトなどの導電性セラミックスや導電性ダイヤモンド電極が好ましい。特にNi酸化物とFe酸化物の固溶体からなるニッケルフェライトについては、Ni
XFe
3−XO
4(X=0.1〜2.0)であるものが好ましく、X=0.3〜1.5であるものがより好ましい。
【0046】
以上のように構成されるアンモニア電解合成装置2の動作について説明する。
【0047】
まず、第1の気体供給部30が溶融塩300中に水蒸気32を供給する工程が開始される。水蒸気32は、筒状の保持部20の内部において構造体200の上方に供給され、
図2に破線の矢印で示すように、保持部20の内部の溶融塩300に上向きの流れを生じさせる。この流れによって、構造体200の下方の溶融塩300が、多孔質体の構造体200の内部を通って上方へ輸送される。
【0048】
次に、第2の気体供給部40が溶融塩300中に窒素42を供給する工程が開始される。窒素42は、構造体200の下方に供給される。
図2に破線の矢印で示すように、水蒸気32によって生じさせられた溶融塩300の上向きの流れによって、窒素42は、構造体200の下方の溶融塩300とともに、構造体200の内部を通って、上方へ輸送される。
【0049】
また、陽極50と陰極である構造体200との間に通電する。この際、陰極で窒素還元反応が進行し(例えば溶融塩がLiCl−KCl−CsClである場合、陰極電位が0.5V vs.Li(I)/Liより卑になるように)、陽極で酸素発生反応が進行する(例えば溶融塩がLiCl−KCl−CsClである場合、陽極電位が2.5V vs.Li(I)/Liより貴になるように)電圧もしくは電流を制御すればよい。ここで、Li(I)/Li電位とは、該溶融塩中で金属Liが示す安定な電位を指す。
(陰極反応)1/2N
2+3e
−→N
3− (1)
(陽極反応)3/2O
2−→3/4O
2+3e
− (2)
【0050】
このようにすることにより、構造体200の下方の溶融塩300とともに構造体200の内部を通って上方へ輸送される窒素42は、構造体200の内部を通過する間に還元されて窒化物イオンとなる。
【0051】
窒化物イオンは、溶融塩300の上向きの流れによって構造体200の上方へ輸送されて、構造体200の上方で水蒸気32と反応してアンモニア43を生成する。
N
3−+3/2H
2O→NH
3+3/2O
2− (3)
【0052】
生成したアンモニアは、筒状の保持部20の内部の浴面から気相中へと回収される。ここで、溶融塩300の流れが強い場合、生成したアンモニアが気相中へと回収されずに開口部から保持部20の外部へと直接流出することを防ぐため、保持部20の内部に流路を設け、生成したアンモニアを含む溶融塩が一旦、保持部20の内部の浴面を通過するようにする工夫がされてもよい。
【0053】
なお、上記のように水蒸気32を供給する工程が開始された後に、窒素42を供給する工程が開始される場合、陰極から供給されるN
3−が水蒸気供給部へと到達するまでの間は、供給された水蒸気は反応に寄与せず供給過剰となるので、各工程の時間間隔を可能な限り短くするか、N
3−の供給が開始されるまでは水蒸気ではなくアルゴンや窒素を供給するのが好ましい。または、窒素42を供給する工程が開始された後に速やかに水蒸気32が供給する工程が開始されてもよい。
【0054】
このように、陰極で生成した窒化物イオンが、陰極の上方で直ちに水蒸気と反応してアンモニアを形成するので、従来のアンモニア電解合成槽構造と比較して、よりコンパクトで簡便な装置構成にすることができる。また、第1の気体として反応種となる気体を用いることで、不活性ガスを用いたガスリフトを行う必要がなくなる。すなわち、反応種となる気体を、ガスリフトの駆動源としても使用することができる。
【0055】
構造体200の上方へ輸送された溶融塩300は、
図2に一点鎖線の矢印で示すように、開口部21を通って保持部20の外に流れ出る。このようにして溶融塩300の連続的な循環が可能になる。
【0056】
以上のように、アンモニア電解合成装置2では、多孔質金属からなる構造体200の下方から供給された窒素42が構造体200を迂回することを防ぎ、構造体200へ窒素42を導入することができるので、気体の利用率を向上させつつアンモニア43を生成することができる。
【0057】
なお、この実施形態においてはアンモニアの電解合成を目的としているため、構造体200は窒素42を電気化学的に還元するための陰極として用いられたが、気体導入装置の目的に応じて、例えば第2の気体を電気化学的に酸化するための陽極として機能するガス電極として構成されてもよい。
【0059】
(1)本発明に従った多孔質構造体への気体導入装置は、液体を収容する槽と、液体に浸漬される多孔質の構造体を保持する保持部と、構造体の上方において液体中に気泡化された第1の気体を供給する第1の気体供給部と、構造体の下方において液体中に気泡化された第2の気体を供給する第2の気体供給部とを備える。
【0060】
(2)本発明に従った気体導入装置においては、保持部は、少なくとも一部が液体に浸漬される中空の筒を含み、構造体は中空の筒の下方または内部に保持され、第1の気体供給部は、筒の内部であって構造体の上方において液体中に第1の気体を供給するように構成されていることが好ましい。
【0061】
(3)本発明に従った気体導入装置においては、筒は、構造体の上方において筒の内部と外部とが連通するように構成されていることが好ましい。
【0062】
(4)本発明に従った気体導入装置は、構造体の外表面と筒の内表面とが接触する接触部を含み、接触部は、筒の内表面の略全周にわたって存在することが好ましい。
【0063】
(5)本発明に従った気体導入装置においては、液体は溶融塩であることが好ましい。
【0064】
(6)本発明に従った気体導入装置においては、構造体は第2の気体を電気化学的に還元するための陰極または電気化学的に酸化するための陽極として機能するガス電極であることが好ましい。
【0065】
(7)本発明に従った気体導入装置においては、第1の気体は水蒸気を含み、第2の気体は窒素を含むことが好ましい。
【0066】
(8)本発明に従った気体導入装置においては、構造体は金属によって形成されていることが好ましい。
【0067】
(9)本発明に従った(8)に記載の気体導入装置においては、金属はニッケルであることが好ましい。
【0068】
(10)本発明に従ったアンモニア電解合成装置は、(1)から(9)のいずれかの気体導入装置を備え、液体は溶融塩であり、構造体は第2の気体を電気化学的に還元するための陰極または電気化学的に酸化するための陽極として機能するガス電極であり、第1の気体は水蒸気を含み、第2の気体は窒素を含む。
【0069】
(11)本発明に従った多孔質構造体への気体導入方法は、少なくとも一部が液体中に浸漬された多孔質の構造体の上方において液体中に気泡化された第1の気体を供給する工程と、構造体の下方において液体中に気泡化された第2の気体を供給する工程とを含む。
【0070】
(12)本発明に従った気体導入方法は、第1の気体を供給する工程が開始された後に、第2の気体を供給する工程が開始されることが好ましい。
【実施例】
【0071】
(実施例1)
この発明の気体導入装置と気体導入方法によって、従来の方法と比較して、多孔質の構造体へ気体の利用率を向上させつつ気体を導入することができることを確認した。
【0072】
多孔質の構造体200aとして、ニッケル(住友電気工業株式会社製 セルメット#2)を用いた。構造体200aは、液体として水100aを収容する透明な槽10a内で、筒状の保持部20aによって保持されて水100aに浸漬された。構造体200aの側面と保持部20aの内表面とは構造体200aの全周にわたって接触していた。
【0073】
構造体200aの上方において水100a中に第1の気体として気泡化されたアルゴンを第1の気体供給部から供給し、構造体200aの下方において水100a中に第2の気体として気泡化されたアルゴンを第2の気体供給部40aから供給した。
【0074】
図3(A)に示すように、第1の気体を0.5L/分、第2の気体を1.5L/分の流量で供給した場合、保持部20aの内部を上昇する気泡の量は、構造体200aを迂回して保持部20aの外部を流れる気泡の量よりも明らかに多かった。
【0075】
図3(B)に示すように、第1の気体を1.0L/分、第2の気体を1.5L/分の流量で供給した場合、保持部20aの内部を上昇する気泡の量が
図3(A)に示した場合よりも増加し、保持部20aの外部に迂回する気泡の量が
図3(A)に示した場合よりも減少した。このように、第1の気体の流量を増加させることで、気体の利用率を向上させることができることがわかった。
【0076】
図3(C)に示すように、第1の気体を1.5L/分、第2の気体を1.5L/分の流量で供給した場合、保持部20aの外部に迂回する気泡はほぼ見られなかった。このように、第2の気体の流量に対して第1の気体の流量を増加させることで、気体の利用率の低下をほぼ完全に抑えることができる。
【0077】
(比較例1)
構造体200aの上方において水100a中に第1の気体を供給しないことを除いて、実施例1と同様の実験を行った。第2の気体の供給量は1.5L/分とした。
【0078】
図3(D)に示すように、大量の気泡が保持部20aの外部を上昇しており、気体の利用率の低下が生じた。
【0079】
(実施例2)
図2に示すアンモニア電解合成装置を用いてアンモニアの電解合成を実施した。溶融塩300としては共融組成のLiCl−KCl−CsClを用い酸化物イオン(O
2−)源としてLi
2O(0.8mol%相当)を添加した。溶融塩の温度は400℃とした。構造体(陰極)200としては、多孔質ニッケル(住友電気工業株式会社製 セルメット#2)を用いた。陽極50としてはニッケルフェライト棒を用いた。参照極にはAg(I)/Ag電極を用い、測定された陰極、陽極の電位は、ニッケル線電極上に析出させた金属Liの示す安定な電位(Li(I)/Li電位)を基準に較正した。
【0080】
まず、第1の気体供給部30が溶融塩300中に第1の気体としてアルゴンを供給する工程が開始された。第1の気体であるアルゴンは、筒状の保持部20の内部において構造体200の上方に供給された。
【0081】
次に、第2の気体供給部40が溶融塩300中に窒素42を供給する工程が開始され、直ちに陽極50と陰極である構造体200との間に通電を開始した。0.3Aの電流を印加することで、陰極は窒素の還元反応が、陽極は酸化物イオンの酸化による酸素発生反応が進行する電位を示した。
【0082】
次に、第1の気体をアルゴンから水蒸気に切り替え、第1の気体供給部30から溶融塩300中に水蒸気32を供給する工程が開始された。
【0083】
ここで、水蒸気はアルゴンをキャリアガスとして30℃に保持した恒温水槽を通じて供給した。水蒸気供給量は、恒温水槽の温度における飽和水蒸気量にキャリアガス流量を乗じて算出し、同キャリアガスの流量を調節することによって制御した。
【0084】
筒状の保持部20の内部の雰囲気ガスを回収し、ガスクロマトグラフィーによりアンモニアを分析した結果、
図4に示すように、アンモニアが検出された。この結果から、水蒸気をガスリフト用の気体(第1の気体)として用いることで、窒素の気泡が多孔質ニッケル陰極内部を通過するようになり、この通過の過程で反応式(1)により還元されて生成した窒化物イオン(N
3−)が、多孔質ニッケル陰極の上部へ輸送され、反応式(3)により水蒸気と反応してアンモニアを生成し、保持部20の内部の雰囲気から回収されたことがわかる。
【0085】
このように、本発明の気体導入装置を備えるアンモニア電解合成装置によって、アンモニアを合成できることがわかった。
【0086】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態と実施例ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。