特許第6884311号(P6884311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884311
(24)【登録日】2021年5月14日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】敷設方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/10 20060101AFI20210531BHJP
   H02G 9/02 20060101ALI20210531BHJP
   H01B 7/12 20060101ALI20210531BHJP
   H01B 7/14 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   H02G1/10
   H02G9/02
   H01B7/12
   H01B7/14
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-37210(P2018-37210)
(22)【出願日】2018年3月2日
(65)【公開番号】特開2019-154137(P2019-154137A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2019年11月6日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.平成29年10月4日JFEエンジニアリング株式会社(神奈川県横浜市鶴見区末広町2丁目1番地)にて公開、2.平成29年12月7日〜9日沖縄県八重山郡竹富町字新城島上地及び黒島地内にて実施、3.平成30年1月11日古河電気工業株式会社(東京都大田区羽田空港1−8−8第三綜合ビル)にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】592190028
【氏名又は名称】株式会社関海事工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 貢輔
(72)【発明者】
【氏名】笹本 翔太
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−121418(JP,A)
【文献】 特開昭51−125896(JP,A)
【文献】 特開昭62−110414(JP,A)
【文献】 特開昭62−7317(JP,A)
【文献】 特開平3−143207(JP,A)
【文献】 特開昭52−122890(JP,A)
【文献】 特開昭56−156581(JP,A)
【文献】 特開昭61−65980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/10
H02G 9/02
H01B 7/12
H01B 7/14
G02B 6/50
F16L 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
索状の被敷設物を海底に敷設するための敷設方法であって、
前記被敷設物を収容した敷設船が海岸線に接近可能な限界線又はその付近から前記海岸線までの範囲内において、前記被敷設物を敷設すべき敷設ライン上に複数の浮標を設置する第1ステップと、
前記被敷設物の前記範囲内に敷設すべき第1部分に海水中で浮力を生じる複数のフロートを取り付けたうえで、前記第1部分を前記敷設船から海面に投入して前記第1部分を海面に浮遊させる第2ステップと、
海面に浮遊している前記第1部分を前記範囲内に存する敷設ラインに沿わせつつ、前記複数の浮標それぞれに取り付ける第3ステップと、
前記第1乃至前記第3ステップを行った後で、前記被敷設物の陸地側端部を陸地に引き上げる第4ステップと、
前記第4ステップを行った後で、前記第1部分から前記複数のフロートを取り外す第5ステップと、を備えることを特徴とする、敷設方法。
【請求項2】
前記第2ステップにおいて、前記第1部分に対する前記複数のフロートの取り付けは前記敷設船上で行われ、前記第1部分の海面への投入は前記フロートを取り付けた部分から順に行われる、請求項1に記載の敷設方法。
【請求項3】
前記第2及び前記第3ステップは、平面視において海面に浮遊している前記第1部分により描かれる曲線上の何れの点に関してもその曲率が予め定められた許容可能な最大値を超えないように、前記敷設船よりも前記海岸線に接近可能な作業船を用いて、前記被敷設物が撓むことを規制しつつ行われる、請求項1又は2に記載の敷設方法。
【請求項4】
前記第4ステップにおいて、前記被敷設物の陸地側端部を陸地に存する接続部に接続する、請求項1乃至3のいずれかに記載の敷設方法。
【請求項5】
前記第5ステップにおいて、前記第1部分から取り外された前記複数のフロートを回収する、請求項1乃至4のいずれかに記載の敷設方法。
【請求項6】
前記第5ステップにおいて、前記第1部分から前記複数の浮標を取り外して回収する、請求項1乃至5のいずれかに記載の敷設方法。
【請求項7】
前記複数の浮標は、それぞれ、海水中で浮力を生じる浮標本体と、海底に沈められるアンカーと、前記浮標本体と前記アンカーとを接続する接続部材とを有する、請求項1乃至6のいずれかに記載の敷設方法。
【請求項8】
前記複数のフロートは、それぞれ、海水中で浮力を生じるタイヤチューブである、請求項1乃至7のいずれかに記載の敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、索状の被敷設物を海底に敷設するための敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、海底ケーブルなどの索状の被敷設物を海底に敷設するための敷設方法が知られている。このような敷設方法として、例えば、特開2015−77008号公報(特許文献1)で提案されているケーブル敷設方法がある。
【0003】
特許文献1のケーブル敷設方法は、ケーブル繰り出し部によってケーブルを繰り出し、繰り出されたケーブルの位置を海面よりも上方の監視面で超音波センサによって測定する。また、上記測定したケーブルの位置と、予め記憶部に記憶されているケーブルの位置に応じたケーブルの入水角度の相関情報とに基づき、ケーブルの入水角度が適正となるようにケーブルの位置の許容範囲を設定する。そして、ケーブルの位置が許容範囲内に入るように、ケーブル繰り出し部を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−77008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1及びその他の従来からある敷設方法では、一般に、海底ケーブルなどの被敷設物を収容した敷設船が海岸線に接近可能な限界線が存し、敷設船は当該限界線よりも海岸線に接近することができない。そこで、当該限界線又はその付近から海岸線までの範囲内における敷設作業は、被敷設物の前記範囲内に敷設すべき第1部分に海水中で浮力を生じる複数のタイヤチューブなどを取り付け、当該第1部分を海面に投入して浮遊させたうえで、当該第1部分を敷設船よりも海岸線に接近可能な複数の作業船で牽引して行う必要があった。
【0006】
ここで、海底ケーブルなどの被敷設物は、一般に、その内部に存する配線構造などが損傷しないように、曲率に関して許容可能な最大値が予め定められている。したがって、前記範囲内での敷設作業は、平面視において海面に浮遊している被敷設物の第1部分により描かれる曲線上の何れの点に関してもその曲率が前記許容可能な最大値を超えないように、前記複数の作業船を用いて被敷設物が撓むことを規制しつつ行う必要があった。しかし、特許文献1及びその他の従来からある敷設方法では、上記のように被敷設物が撓むことを規制するのが困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、容易に被敷設物を海底に敷設することが可能な、敷設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る敷設方法は、索状の被敷設物を海底に敷設するための敷設方法であって、前記被敷設物を収容した敷設船が海岸線に接近可能な限界線又はその付近から前記海岸線までの範囲内において、前記被敷設物を敷設すべき敷設ライン上に複数の浮標を設置する第1ステップと、前記被敷設物の前記範囲内に敷設すべき第1部分に海水中で浮力を生じる複数のフロートを取り付けたうえで、前記第1部分を前記敷設船から海面に投入して前記第1部分を海面に浮遊させる第2ステップと、海面に浮遊している前記第1部分を前記範囲内に存する敷設ラインに沿わせつつ、前記複数の浮標それぞれに取り付ける第3ステップと、前記第1乃至前記第3ステップを行った後で、前記被敷設物の陸地側端部を陸地に引き上げる第4ステップと、前記第4ステップを行った後で、前記第1部分から前記複数のフロートを取り外す第5ステップと、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、敷設船が海岸線に接近可能な限界線又はその付近から海岸線までの範囲内において、複数のフロートが取り付けられて海面に浮遊している被敷設物の第1部分は、前記被敷設物を敷設すべき敷設ライン上に設置されている複数の浮標に取り付けられて支持される。したがって、被敷設物のうちで複数の浮標が取り付けられた部分の撓みを規制する必要がなくなり、従来と比較して前記範囲内での敷設作業の負担を軽減することができる。その結果、本発明に係る敷設方法は、容易に被敷設物を海底に敷設することが可能となる。
【0010】
前記第2ステップにおいて、前記第1部分に対する前記複数のフロートの取り付けは前記敷設船上で行われ、前記第1部分の海面への投入は前記フロートを取り付けた部分から順に行われてもよい。
【0011】
上記構成によれば、被敷設物の第1部分を海面に投入して浮遊させる第2ステップを、敷設船上で必要以上に場所を取ることなく効率的に行うことが可能となる。
【0012】
前記第2及び前記第3ステップは、平面視において海面に浮遊している前記第1部分により描かれる曲線上の何れの点に関してもその曲率が予め定められた許容可能な最大値を超えないように、前記敷設船よりも前記海岸線に接近可能な作業船を用いて、前記被敷設物が撓むことを規制しつつ行われてもよい。
【0013】
上記構成によれば、被敷設物を損傷しないように海底に敷設することが可能となる。
【0014】
前記第4ステップにおいて、前記被敷設物の陸地側端部を陸地に存する接続部に接続してもよい。
【0015】
上記構成によれば、確実に被敷設物を海底に敷設することが可能となる。
【0016】
前記第5ステップにおいて、前記第1部分から取り外された前記複数のフロートを回収してもよい。
【0017】
上記構成によれば、複数のフロートが海に放置されないので、環境保全を図ることが可能となる。
【0018】
前記第5ステップにおいて、前記第1部分から前記複数の浮標を取り外して回収してもよい。
【0019】
上記構成によれば、複数の浮標が海に放置されないので、環境保全を図ることが可能となる。
【0020】
前記複数の浮標は、それぞれ、海水中で浮力を生じる浮標本体と、海底に沈められるアンカーと、前記浮標本体と前記アンカーとを接続する接続部材とを有してもよい。
【0021】
上記構成によれば、簡単な構成の浮標を用いて確実に海面に浮遊している被敷設物の第1部分を支持することができる。
【0022】
前記複数のフロートは、それぞれ、海水中で浮力を生じるタイヤチューブであってもよい。
【0023】
上記構成によれば、安価で簡単な構成のフロートを用いて確実に被敷設物の第1部分を海面に浮遊させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、容易に被敷設物を海底に敷設することが可能な、敷設方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る敷設方法の第1ステップを説明するための概略図であり、(A)が平面図、(B)が側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る敷設方法の第2ステップを説明するための概略図であり、(A)が平面図、(B)が側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る敷設方法の第2ステップにおいて、海底ケーブルのうちの海底から海面へと立ち上がる部分を拡大した側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る敷設方法の第3ステップを説明するための概略図であり、(A)が平面図、(B)が側面図である。
図5】本発明の実施形態に係る敷設方法の第4ステップを説明するための概略図であり、(A)が平面図、(B)が側面図である。
図6】本発明の実施形態に係る敷設方法の第5ステップを説明するための概略図であり、(A)が平面図、(B)が側面図である。
図7】本発明の実施形態に係る敷設方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る敷設方法について図面を参照して説明する。なお、本実施形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る敷設方法のステップS1(第1ステップ)を説明するための概略図である。本実施形態に係る敷設方法は、海底ケーブル20(索状の被敷設物)を他方の陸地(図示せず)から一方の陸地Lまでの間の海底に敷設するために実行される。
【0028】
本実施形態では、他方の陸地に存する電柱などの接続部(図示せず)に海底ケーブル20の他方端を接続したうえで、海底ケーブル20を収容した敷設船10が、当該海底ケーブル20を敷設すべき敷設ラインB上に敷設しつつ一方の陸地L側の海岸線Aに接近可能な限界線Kの手前まで航行してきた後の段階について詳細に説明する。
【0029】
なお、図1等において、海岸線Aを紙面上下方向に延びる実線で示し、敷設ラインBを紙面左右方向に延びる破線で示し、且つ、限界線Kを紙面上下方向に延びる一点鎖線で示してある。すなわち、図1等において、海岸線Aを境界として紙面右側が陸地Lであり、同紙面左側が海Sである。図1等に示すように、本実施形態では、前記敷設ラインBは、一方の陸地Lに存する電柱80(接続部)まで至る。
【0030】
(ステップS1)
図1に示すように、海底ケーブル20を収容した敷設船10が海岸線Aに接近可能な限界線Kの手前付近から海岸線Aまでの範囲R内(敷設船が海岸線に接近可能な限界線又はその付近から海岸線までの範囲内)において、海底ケーブル20を敷設すべき敷設ラインB上に複数の浮標30を設置する。
【0031】
図1では、8個の浮標30を上記敷設ラインB上に設置してあるが、この場合に限定されず、設置される浮標30の数は範囲R内に存する敷設ラインBの長さや、潮流、風及び波などに応じて適宜変更されてもよい。
【0032】
複数の浮標30は、それぞれ、海水中で浮力を生じる浮標本体32と、海底に沈められるアンカー34と、浮標本体32とアンカー34とを接続するロープ36(接続部材)とを有する。なお、見た目の煩雑さを避けるため、図1(B)における最も海岸線Aから遠い浮標30にのみ浮標本体32、アンカー34及びロープ36の参照番号を付し、図1(A)、図2(A)乃至図5(B)ではそれらの参照符号を省略してある。本実施形態では、上記のようにして、図7に示すステップS1が行われる。
【0033】
(ステップS2)
図2は、本実施形態に係る敷設方法のステップS2(第2ステップ)を説明するための概略図である。図2に示すように、上記ステップS1を行った後で、海底ケーブル20の範囲R内に敷設すべき第1部分22に海水中で浮力を生じる複数のタイヤチューブ40(複数のフロート)を取り付けたうえで、当該第1部分22を敷設船10から海面に投入して当該第1部分22を海面に浮遊させる。
【0034】
なお、本実施形態では、海底ケーブル20の第1部分22に対する複数のタイヤチューブ40の取り付けは敷設船10上で行われ、前記第1部分22の海面への投入はタイヤチューブ40を取り付けた部分から順に行われてもよい。
【0035】
図3は、本実施形態に係る敷設方法のステップS2において、海底ケーブル20のうちの海底から海面へと立ち上がる部分を拡大した側面図である。図3に示すように、海底ケーブル20のうちの前記部分には、複数の補助フロート50が取り付けられている。なお、当該複数の補助フロート50は、海底ケーブル20のうちの前記部分が海面に投入される直前に、敷設船10上で海底ケーブル20に対して取り付けられてもよい。
【0036】
本実施形態では、海底ケーブル20のうちの海底から海面へと立ち上がる部分に対して、海底ケーブル20のうちのタイヤチューブ40が取り付けられている部分から遠い順に、第1補助フロート50a、第2補助フロート50b、第3補助フロート50c及び第4補助フロート50dが取り付けられている。第1補助フロート50aと海底ケーブル20とを接続するロープが最も長く、第2補助フロート50b、第3補助フロート50c及び第4補助フロート50dの順に前記ロープが短くされている。
【0037】
ここで、海底ケーブル20は、一般に、その内部に存する配線構造などが損傷しないように、曲率に関して許容可能な最大値が予め定められている。本実施形態に係る海底ケーブル20は、上記のように第1補助フロート50a、第2補助フロート50b、第3補助フロート50c及び第4補助フロート50dが取り付けられることで、海底から海面へと徐々に立ち上がっている。その結果、海底ケーブル20は、海底から海面へと立ち上がる部分における曲率が前記許容可能な最大値を超えることが抑制される。本実施形態では、上記のようにして、図7に示すステップS2が行われる。
【0038】
(ステップS3)
図4は、本実施形態に係る敷設方法のステップS3(第3ステップ)を説明するための概略図である。なお、図4(A)では、見た目の煩雑さを避けるため、海岸線Aから最も遠い浮標30乃至3番目目に遠い浮標30は、それぞれ、海底ケーブル20から離間させてあるが、実際には図4(B)に示すように海底ケーブル20に沿って取り付けられていることが好ましい。後述する図5(A)についても同様である。
【0039】
図4に示すように、上記ステップS1及びS2を行った後で、海底ケーブル20の第1部分22を範囲R内に存する敷設ラインBに沿わせつつ、複数の浮標30それぞれに取り付ける。本実施形態では、当該取り付けは、上記ステップS2によって第1部分22の全てが海面に投入されてから行われる。海底ケーブル20の第1部分22は、複数の浮標30それぞれにロープなどを用いて固縛することにより取り付けられてもよい。
【0040】
ここで、上記ステップS2及び本ステップS3において、平面視において海面に浮遊している海底ケーブル20により描かれる曲線は、潮流、風及び波などの影響によって容易に変形し得る。そして、上記のように、海底ケーブル20は、曲率に関して許容可能な最大値が予め定められている。
【0041】
したがって、上記ステップS2及び本ステップS3は、前記曲線上の何れの点に関してもその曲率が前記許容可能な最大値を超えないように、敷設船10よりも海岸線Aに接近可能な小型の作業船60を用いて、海底ケーブル20が撓むことを規制しつつ行われる。本実施形態では、上記のようにして、図7に示すステップS3が行われる。
【0042】
(ステップS4)
図5は、本実施形態に係る敷設方法のステップS4(第4ステップ)を説明するための概略図である。図4に示すように、上記ステップS3を行った後で、海底ケーブル20の陸地側端部20aを陸地Lに引き上げる。
【0043】
本実施形態では、当該陸地側端部20aを陸地Lに存する電柱80(接続部)に接続する。なお、海底ケーブル20は、作業船60によって海岸線A又はその近傍まで牽引されたあと、そこから、例えば電動ウィンチを備える重機などによって電柱80まで牽引されてもよい。本実施形態では、上記のようにして、図7に示すステップS4が行われる。
【0044】
(ステップS5)
図6は、本実施形態に係る敷設方法のステップS5(第5ステップ)を説明するための概略図である。図6に示すように、上記ステップS4を行った後で、海底ケーブル20の第1部分22から複数のタイヤチューブ40を取り外して回収する。さらに、本実施形態では、第1部分22から複数の浮標30を取り外して回収する。上記のように、第1部分22からタイヤチューブ40及び浮標30を取り外して回収する作業は、ダイバー(図示せず)によって行われてもよい。
【0045】
上記のように海底ケーブル20の第1部分22から少なくとも複数のタイヤチューブ40を取り外すことで、図6に示すように、範囲R内における敷設ラインB上の海底に海底ケーブル20の第1部分22が敷設される。これにより、海底ケーブル20を他方の陸地(図示せず)から一方の陸地Lまでの間の海底に敷設することができる。本実施形態では、上記のようにして、図7に示すステップS5が行われる。
【0046】
(効果)
ここで、従来からある敷設方法は、海底ケーブルの曲率が許容可能な最大値を超えないようその撓みを規制するために、多くの作業船が必要となったり、沢山の人手や多大なコストを要したりしてしまうという問題があった。特に、例えば、遠浅の影響で海底ケーブルを収容した敷設船が海岸線に接近可能な限界線から海岸線までの範囲が比較的広かったり、日暮れまでに敷設作業を完了させることができずに海面に浮遊している海底ケーブルの撓みを一晩中規制する必要が生じたりした場合に、上記問題が顕著になり得た。
【0047】
さらに、従来からある敷設方法は、一般に、敷設船などから多くの作業船それぞれに対して移動先を指示する必要があった。しかし、敷設船からの視点では、作業船それぞれの位置を把握することが困難であった。また、平面視において海底ケーブルにより描かれる曲線形状を把握することも難しかった。上記理由などから、多くの作業船それぞれに対して的確に移動先を指示することが困難であった。
【0048】
本実施形態では、前記範囲R内において複数のタイヤチューブ40が取り付けられることで海面に浮遊している海底ケーブル20の第1部分22は、海底ケーブル20を敷設すべき敷設ラインB上に設置されている複数の浮標30に取り付けられて支持される。したがって、海底ケーブル20のうちで複数の浮標30が取り付けられた部分の撓みを規制する必要がなくなり、従来と比較して前記範囲R内での敷設作業の負担を軽減することができる。
【0049】
本実施形態では、海底ケーブル20の第1部分22の海面への投入はタイヤチューブ40を取り付けた部分から順に行われる。これにより、海底ケーブル20の第1部分22を海面に投入して浮遊させるステップS2を、敷設船10上で必要以上に場所を取ることなく効率的に行うことが可能となる。
【0050】
本実施形態では、上記ステップS2及びS3は、敷設船10よりも海岸線Aに接近可能な作業船60を用いて、海底ケーブル20が撓むことを規制しつつ行われる。これにより、海底ケーブル20をその内部に存する配線構造などが損傷しないように海底に敷設することが可能となる。なお、このとき必要となる作業船60の隻数は、海底ケーブル20が複数の浮標30に支持されているので、従来と比較して少なくすることができる。
【0051】
本実施形態では、海底ケーブル20の陸地側端部20aを陸地Lに存する電柱80に接続することで、当該陸地側端部20aが海上に引き戻されることを防止できる。その結果、確実に海底ケーブル20を海底に敷設することが可能となる。
【0052】
本実施形態では、海底ケーブル20の第1部分22から取り外した複数のタイヤチューブ40を回収することで、当該複数のタイヤチューブ40が海Sに放置されないので、環境保全を図ることが可能となる。
【0053】
本実施形態では、海底ケーブル20の第1部分22から複数の浮標30を取り外して回収することで、当該複数の浮標30が海Sに放置されないので、環境保全を図ることが可能となる。
【0054】
本実施形態では、複数の浮標30は、それぞれ、浮標本体32及びアンカー34、並びにそれらを接続するロープ36を有する。これにより、簡単な構成の浮標30を用いて確実に海面に浮遊している海底ケーブル20の第1部分22を支持することができる。
【0055】
本実施形態では、複数のフロートは、それぞれ、海水中で浮力を生じるタイヤチューブ40である。これにより、安価で簡単な構成のフロートを用いて確実に海底ケーブル20の第1部分22を海面に浮遊させることができる。
【0056】
(変形例)
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0057】
上記実施形態では、ステップS1において範囲R内の敷設ラインB上に全ての浮標30(複数の浮標)を設置してから海底ケーブル20の第1部分22を海面に投入して浮遊させるステップS2を行う場合について説明したが、これに限定されない。例えば、範囲R内の敷設ラインB上に全ての浮標30を設置するのを待たずに、設置した浮標30から順に上記ステップS2を行ってもよい。すなわち、ステップS1を行いながら並行してステップS2を行ってもよい。
【0058】
上記実施形態では、ステップS2において海底ケーブル20の第1部分22の全てを海面に投入して浮遊させてから当該第1部分22を複数の浮標30それぞれに取り付けるステップS3を行う場合について説明したが、これに限定されない。例えば、海底ケーブル20の第1部分22の全てを海面に投入して浮遊させるのを待たずに、海面に投入して浮遊させた第1部分22から順に上記ステップS3を行ってもよい。すなわち、ステップS2を行いながら並行してステップS3を行ってもよい。また、ステップS1を行いながら並行してステップS2を行っているときに、さらに並行してステップS3を行ってもよい。
【0059】
上記実施形態では、ステップS4において海底ケーブル20の陸地側端部20aを陸地Lに存する電柱80に接続する場合について説明したが、これに限定されない。すなわち、海底ケーブル20の陸地側端部20aを陸地Lに引き上げたあと、例えば、地面に放置してもよいし、又は重機などを用いて固定してもよい。
【0060】
上記実施形態では、海底ケーブル20の第1部分22から複数の浮標30を取り外して回収する場合について説明したが、これに限定されない。すなわち、浮標30を取り外して回収せずに海底ケーブル20とともに海底に沈めてもよい。これにより、一層容易に敷設作業を行うことが可能となる。
【0061】
上記実施形態に係る敷設方法は、他方の陸地(図示せず)に存する接続部に海底ケーブル20の他方端を接続したうえで、敷設船10が一方の陸地L側の海岸線Aに接近可能な限界線Kの手前まで航行してきた後の段階で用いられる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、本発明に係る敷設方法は、他方の陸地(同前)に存する接続部に海底ケーブル20の他方端を接続する場合においても同様に用いられ得る。
【0062】
上記実施形態では、被敷設物が海底ケーブル20である場合について説明したが、これに限定されない。例えば、被敷設物が海底パイプであってもよいし、海底に敷設される他の被敷設物であってもよい。
【0063】
上記実施形態では、複数の浮標30は、それぞれ、浮標本体32及びアンカー34、並びにそれらを接続するロープ36を有する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の浮標30は、それぞれ、いわゆるDPS(Dynamic Positioning System、自動位置保持システム)によって海上での定点維持が可能であれば、アンカー34及びロープ36を有しない構造であってもよいし、海上での定点維持が可能な他の構造であってもよい。
【0064】
上記実施形態では、複数のフロートは、それぞれ、海水中で浮力を生じるタイヤチューブ40である場合について説明したが、これに限定されない。例えば、複数のフロートは、それぞれ、海水中で浮力を生じるのであれば、他のチューブであってもよいし、直方体形状のフロートであってもよいし、又は他の態様のフロートであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 敷設船
20 海底ケーブル
20a 陸地側端部
22 第1部分
30 浮標
32 浮標本体
34 アンカー
36 ロープ
40 タイヤチューブ
50 補助フロート
50a 第1補助フロート
50b 第2補助フロート
50c 第3補助フロート
50d 第4補助フロート
60 作業船
80 電柱
A 海岸線
B 敷設ライン
K 限界線
R 範囲
L 陸地
S 海
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7